結論
横浜冷凍(通称ヨコレイ)は、魚や肉、冷凍食品を冷やして預かる冷蔵倉庫の会社である。売上の7割は水産物や畜産物の売買だが、利益の大半は倉庫が稼ぐ。
筆者の結論は、今の値段は大きく割高というものだ。本業が悪いのではない。倉庫は満杯に近く、料金も上がっている。だが、その倉庫を借金で建て続けた結果、稼ぐ利益が資本コストに見合っていない。
2025年9月期の営業利益は42億円。純有利子負債は1,048億円で、時価総額とほぼ同じだ。会社は今期の営業利益を70億円と見込むが、新しい倉庫の償却が重く、金利も上がる。
今期の純利益63億円には、物流センターの売却益60億円が入っている。繰り返せる利益ではない。
10年後の中心は、営業利益110億円ほどだ。それでも借り換えで利払いが膨らみ、純利益は50億円台にとどまる。
強気なら営業利益150億円まで伸びる。慎重に見れば、倉庫の供給過剰で60億円台に沈む。
筆者が重く見るのは、金利である。借金が今の低い金利のまま続く保証はない。今回の資産売却がどこまで借金を減らすかが、評価の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は倉庫のよさを借金が食いつぶしている姿に見える。
稼ぐ力はある。倉庫は立地が良く、占有率も高い。冷凍の保管需要は景気に左右されにくい。会社のオーナーとして持っていたい種類の資産ではある。
問題は、その資産に払った値段だ。会社全体の資産は2,090億円。そこから出る営業利益は42億円、今期の見込みでも70億円である。借金の金利が3.5%まで上がると、純利益は薄くなる。
10年の中心で見ても、営業利益は110億円ほどだ。純利益は50億円台で、自己資本利益率は6%に届かない。株主が求める8.5%に及ばない。事業が稼ぐのに、株主には資本コスト以下しか残らない。
バリュー投資家が重く見るのは、新しく投じたお金が稼ぐ利回りだ。長岡とタイの2件に約630億円を投じる。回収できるかは、料金が上がり続けるかにかかっている。供給が増えれば、その前提は崩れる。
食品販売は、薄利で相場任せの商売だ。経営の努力で利益率は改善してきたが、事業の質は変わらない。
安全域は薄い。今の値段は、料金の上昇と借金の圧縮が両方うまくいく前提でも届かない。それが筆者の見立てである。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく2つある。冷蔵倉庫と食品販売だ。
冷蔵倉庫は、荷主から冷凍食品や魚、肉を預かり、保管料と出し入れの手数料を受け取る。国内に29拠点、海外にタイとベトナムの4拠点を持ち、連結の保管能力は123万トンある。2025年9月期の売上は377億円、利益は74億円だった。売上の割に利益が厚く、会社の稼ぎ頭である。
荷主は冷凍食品メーカーや商社、スーパーなどだ。倉庫は港や大消費地の近くに建てる。立地を押さえた倉庫は簡単に増やせない。ここが事業の強みだ。
食品販売は、水産物、畜産物、農産物の仕入れと販売である。売上は878億円で全体の7割を占めるが、利益は12億円と薄い。相場の上げ下げで利益が大きく振れる。近年は低採算の取引を減らし、在庫を絞る方針に切り替えた。
本社経費などの配賦されない費用が44億円ほどある。2つの事業の利益を足すと87億円だが、会社全体の営業利益は42億円に縮む。
直近の2年で、国内5か所とベトナム1か所の倉庫が稼働した。さらに長岡、大井川、タイのスワンナプームで建設が進む。3件で約690億円の投資になる。
倉庫は建てたあと何十年も使える。ただ、その投資は借入と社債でまかなった。次の章で見るとおり、ここが評価の難所である。
優良さと弱いところ
筆者は、冷蔵倉庫の質は高いが、会社の質は平凡と見る。
倉庫の強みは立地と稼働率だ。港湾や首都圏の倉庫は、土地が取れず新設が難しい。業界団体の調べでは、主要12都市の庫腹の占有率は91.8%と満杯に近い。荷主が倉庫を探す側にまわり、料金改定の交渉は貸し手に有利に進んでいる。
冷凍食品は景気で量が減りにくい。人口は減るが、共働きと輸入の増加で冷凍で預かる品は増えてきた。倉庫の需要は底堅い。
弱いのは資本効率だ。過去10年の自己資本利益率(ROE)は中央値で4.3%にとどまる。売上が増えても利益の伸びは鈍かった。倉庫は建てるのに金がかかり、稼ぐまでに時間がかかるからだ。
食品販売には強みと呼べるものが少ない。水産物や肉の売買は相場に左右され、仕入れ先も買い手も代えがきく。利益が出る年と出ない年の差が大きい。
財務は重い。純有利子負債は自己資本の1.3倍で、営業利益が支払利息の4.9倍にとどまる。金利が上がる局面では、利益が削られる余地が大きい。
政策保有株は上場が118億円、非上場が165億円ある。会社は順次売る方針だが、資産の中身には長期の貸付金や、全額引き当てた債権もある。管理の質には疑問が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
冷蔵倉庫は、いま売り手市場にある。ただ筆者は、この状態が10年続くとは見ていない。
需要の側は堅い。冷凍食品の消費が増え、輸入食品も伸びている。業界団体によれば、主要都市の占有率は9割を超え、港湾部では90%台後半の地区もある。荷主は空きを探すのに苦労している。
供給の側が問題だ。倉庫が満杯なら、各社は新設に走る。ヨコレイだけでなく、大手物流会社や不動産ファンドも冷蔵倉庫に資金を入れている。数年後に新設が一斉に稼働すれば、需給は緩む。料金の上昇が止まり、場所によっては下がる。
電気代も重い。冷やし続ける事業なので、電力料金の上昇は直撃する。業界団体の会長も、エネルギー価格の高騰を「死活問題」と警戒している。料金に転嫁できるかどうかで、利益は分かれる。
競合は、ニチレイロジグループや日本水産系など、規模の大きな会社だ。大手は荷主との関係が深く、自動化への投資も厚い。ヨコレイは中堅で、立地の取り合いでは不利にならない一方、規模の差は埋めにくい。
食品販売の側では、水産物は漁獲の振れが大きい。直近はサバとイワシの豊漁が利益を押し上げたが、エビ、タコ、イカは荷動きが鈍い。畜産も輸入価格の高騰で数量が減った。
人口が減る日本では、食品の量は長い目で横ばいから微減だ。倉庫は預かる量でなく、1トンあたりの料金で伸びる。数量は能力の増設と占有率で決まる。
資本政策と M&A
資本政策は、いま転換点にある。
これまでの10年は、倉庫の新設に資金を回し、配当は控えめだった。結果、純有利子負債は2014年の338億円から1,048億円へ3倍になった。
転機は2025年に来た。ベントール・グリーンオークという不動産投資会社と、戦略的パートナーシップの基本合意を結んだ。新しい倉庫の共同開発と、保有する資産の一部の流動化を進め、借金の圧縮に充てる計画だ。
実際に、羽田、加須、つくばの3つの物流センターを信託受益権の形で譲渡し、60億円の売却益を出した。一方で気仙沼の倉庫資産には22億円の減損を入れた。
会社は中期計画の目標も下げた。売上1,500億円、営業利益65億円の目標を、1,180億円と48億円に引き下げた。低採算の食品販売を減らす判断である。
株主は2025年に入り、株式会社松岡が約10%を持つ主要株主になった。中身は開示の範囲しか確認できていない。
配当は増配が続く見通しで、自社株買いは目立たない。
筆者が見たいのは、売って減らした借金の額と、売った倉庫を借り直す家賃の重さだ。売っても家賃が残れば、利払いが家賃に替わるだけである。
点検済み:中立の営業利益率6.5%が会社予想(26・27年9月期5.6%)と過去最高(3.8%)を超え、倉庫が今の約20%から24.5%へ上がる前提だったため、倉庫22%に置き直した(全社5.6%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
倉庫は10年に1度の売り手市場にあり、その恩恵はこれからが本番だ。
占有率は9割を超え、料金改定の交渉は進んでいる。ほとんどの荷主が値上げを受け入れ、冷蔵倉庫の部門は中間期として過去最高益を更新した。新しい倉庫の償却が終われば、利益率はさらに上がる。
資産の価値も見直される。ベントール・グリーンオークとの提携で、倉庫を高い値段で売り、借金を減らして運営だけを続ける形に進める。3つの倉庫の売却益が60億円出たのは、含み益が大きい証拠だ。
食品販売も変わった。低採算を切り、在庫を絞り、今期の部門利益は3倍近くに伸びている。
アジアでも倉庫を増やしている。タイとベトナムの需要は日本よりずっと伸びる。海外の倉庫が稼働すれば、売上の質が変わる。
10年後に倉庫の能力は165万トンまで増え、営業利益は150億円に届く。借金も減り、今の値段でも十分に正当化される。
加えて、政策保有株や遊休の土地を売れば、まだ借金を減らせる余地がある。会社が資本効率に目を向けた今は、評価が切り上がる入り口だ。
慎重な見方
この会社の問題は、事業でなく資本構造にある。利益が増える前に、借金の利息が増える。
純有利子負債は1,048億円で、時価総額と同じだ。金利が今の1%台から3.5%に上がれば、利払いだけで26億円増える。今期の営業利益70億円のうち、かなりの部分が利息で消える。
今期の純利益63億円は、倉庫の売却益60億円を含む。これを除いた本業の純利益は、30億円台にとどまる。それで時価総額1,000億円は、30倍近い値付けだ。
倉庫の売り手市場は永遠ではない。各社が新設に走っており、数年後に供給が増える。料金の上昇が止まれば、新しい倉庫は借金を返せるほど稼げない。気仙沼の22億円の減損は、その前触れに見える。
ベントール・グリーンオークとの提携も、売って借り直せば家賃が固定費として残るだけだ。利払いが家賃に替わっても、重さは変わらない。
食品販売は、豊漁という一時の追い風で利益が出ている。相場が戻れば、利益は薄い水準に戻る。
10年後に営業利益は110億円がいいところで、利払いを引けば純利益は50億円台だ。資本コストを下回る事業に、今の値段は払えない。
どちらに重みを置いたか
重いのは慎重な見方だ。強気の主張は、料金上昇という外の追い風に頼っている。
倉庫の需給がきつい今は、料金が上がる。この点は認める。ただ、10年を見るなら、新設の波と金利の上昇が確実に来る。借金を減らす道筋も、まだ実行の段階にない。
確率は、中心の筋書きに38%を置き、慎重な側に寄せた。やや悲観を24%、悲観を10%とし、強気とやや強気は合わせて28%にとどめた。
強気がすべて当たっても、10年後の価値は今の時価総額に届かない。結論は、事業の質でなく、投じた資本の稼ぎの低さから出ている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した株価時価総額 878 円519 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 345 円204 億円)。 今の値に割り戻すと 618 円366 億円、今との差 −63.9%、 期待の年率 −3.3%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,737 円1,027 億円 | 541 円320 億円 | +33.1% | +2.9% | 182 円108 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,379 円816 億円 | 440 円260 億円 | +6.3% | +0.6% | 364 円215 億円 |
| 中立 | 38% | 992 円586 億円 | 349 円207 億円 | −21.6% | −2.4% | 510 円301 億円 |
| やや悲観 | 24% | 320 円189 億円 | 304 円180 億円 | −63.5% | −9.6% | 150 円89 億円 |
| 悲観 | 10% | 96 円57 億円 | 85 円50 億円 | −89.5% | −20.2% | 18 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 878 円519 億円 | 345 円204 億円 | −28.5% | −3.3% | 1,223 円724 億円 |
今の株価時価総額 1,711 円1,012 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 倉庫の需給がきつい状態が続き、借金も減る 利益 84 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,737 円1,027 億円
新設の波がゆるやかで、占有率は9割台が続く。料金は物価を超えて上がり、海外の倉庫も計画どおり稼働する。能力は165万トンに伸びる。
倉庫の営業利益率は26%まで上がる。新しい倉庫の償却が負担でなくなり、古い倉庫は料金だけが上がる。食品販売も低採算を切った体質が定着し、薄利ながら安定する。
ベントール・グリーンオークとの提携が進み、売る倉庫と残す倉庫の線引きが利く。借金は減り、利払いの増え方は小さく収まる。
営業利益は150億円ほど、純利益は84億円になる。ただ、自己資本利益率は8%台で、資本コストをわずかに下回る。事業が良くなっても、積み上げた資産が大きく、株主への見返りは資本コストに届かない。
- 冷蔵倉庫事業:数量 165(連結の冷蔵能力(万トン・期末))× 価格 4.43(1万トンあたり売上(億円・名目)。料金改定・稼働率・物価を含む)→ 売上 731 億円・営業利益 190 億円。165万トン×1万トンあたり4.43億円(今の1.45倍)、営業利益率26%
- 食品販売事業:数量 12.6(取扱数量(万トン・推定))× 価格 94(1万トンあたり売上(億円・名目)。平均単価70万円/トンの推定を含む)→ 売上 1,182 億円・営業利益 21 億円。12.6万トン×93.8億円(今の1.34倍)、営業利益率1.8%
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 988 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8%。倉庫の売り手市場が長引き、資産の流動化で借金が大きく減る必要がある。両方が重なる確率は低く、1割に届かないと見た。
やや楽観 20% 料金は物価を上回って上がり、増設も順調 利益 66 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,379 円816 億円
需給のきつい状態が数年続き、料金は物価を3%ほど上回って上がる。長岡とタイの倉庫は予定どおり稼働し、能力は155万トンになる。
倉庫の営業利益率は25.5%。食品販売は、豊漁頼みでなく、低採算を切った効果で1.6%の利益率を保つ。
借金は売却で一部減るが、増設の投資と相殺され、純有利子負債は今とあまり変わらない。利払いは借り換えで増える。
営業利益は130億円ほど、純利益は66億円。自己資本利益率は7%近くまで上がるが、資本コストには届かない。
中心の筋書きより良い姿だが、強気ほどは借金が減らない。新設の波が来る前に、稼働した倉庫をどれだけ早く埋められるかで、この筋書きに入れるかが決まる。
- 冷蔵倉庫事業:数量 155(連結の冷蔵能力(万トン・期末))× 価格 4.22(1万トンあたり売上(億円・名目)。料金改定・稼働率・物価を含む)→ 売上 655 億円・営業利益 167 億円。155万トン×1万トンあたり4.22億円(今の1.38倍)、営業利益率25.5%
- 食品販売事業:数量 12.4(取扱数量(万トン・推定))× 価格 94(1万トンあたり売上(億円・名目)。平均単価70万円/トンの推定を含む)→ 売上 1,163 億円・営業利益 19 億円。12.4万トン×93.8億円、営業利益率1.6%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 776 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。占有率の高さと料金改定の進み方からみて、中心より少し上の姿は十分に起こりうる。ただ新設の増える時期と重なる。
中立 38% 能力は1.2倍、料金は物価+αで伸び、利払いが利益を削る 利益 47 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 992 円586 億円
倉庫の能力は145万トンに伸びる。建設中の3件が稼働し、その後の増設は絞られる。料金は物価を5%ほど上回って上がるが、新設の増える年は伸びが鈍る。
倉庫の営業利益率は22%(今は約20%)。古い倉庫は償却が終わるが、新しい倉庫の償却と人件費、電気代が重い。食品販売は1.5%の薄利で、相場に振られながら横ばいだ。
配賦されない費用は56億円ほど。営業利益は100億円弱になる。
利払いは借り換えで増える。売却で借金は減るが、増設の投資が続き、純有利子負債は1,000億円前後で落ち着く。純利益は47億円ほど。
自己資本は940億円で、自己資本利益率は5%ほど。強みの倉庫が育っても、積み上げた資産に見合う利益は出ない。
- 冷蔵倉庫事業:数量 145(連結の冷蔵能力(万トン・期末))× 価格 4.31(1万トンあたり売上(億円・名目)。料金改定・稼働率・物価を含む)→ 売上 624 億円・営業利益 137 億円。145万トン×1万トンあたり4.31億円(今の1.41倍)、営業利益率22%
- 食品販売事業:数量 12.0(取扱数量(万トン・推定))× 価格 94(1万トンあたり売上(億円・名目)。平均単価70万円/トンの推定を含む)→ 売上 1,126 億円・営業利益 17 億円。12.0万トン×93.8億円、営業利益率1.5%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 547 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%で最も厚く置いた。倉庫は堅調だが新設の波が来る。借金は売却と返済で止まるが、金利は上がる。この中間の姿が最もありそう。
やや悲観 24% 新設の波で料金が頭打ちになり、利払いが重く残る 利益 18 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 320 円189 億円
各社の新設が数年後に一斉に稼働し、占有率は8割台に下がる。料金は物価に届かず、実質で3%下がる。ヨコレイの能力は135万トンに伸びるが、新しい倉庫は思うように埋まらない。
倉庫の営業利益率は20%に下がる。電気代の上昇を料金に転嫁しきれない。食品販売は豊漁が終わり、1%の薄利に戻る。
売却を進めても借金は減りきらない。利払いは借り換えで増え、営業利益64億円のうち、半分以上が利息で消える。純利益は18億円。
自己資本は815億円で、自己資本利益率は2%台に落ちる。配当は増やせず、10年のあいだ成長のない会社になる。
- 冷蔵倉庫事業:数量 135(連結の冷蔵能力(万トン・期末))× 価格 3.98(1万トンあたり売上(億円・名目)。料金改定・稼働率・物価を含む)→ 売上 537 億円・営業利益 107 億円。135万トン×1万トンあたり3.98億円(今の1.30倍)、営業利益率20%
- 食品販売事業:数量 11.5(取扱数量(万トン・推定))× 価格 94(1万トンあたり売上(億円・名目)。平均単価70万円/トンの推定を含む)→ 売上 1,079 億円・営業利益 11 億円。11.5万トン×93.8億円、営業利益率1.0%
倍率:事業の純利益18億円、事業ROE約2.2%はk 8.5%を大きく下回る。上限は1÷k=11.8倍。構造的に稼ぐ力が削られる筋書きなので、上限の約7割弱の8.0倍に置いた。PBRは約0.18倍で、中心のPBRより低い。
確率:24%。倉庫の新設が各社で重なる可能性は高く、料金の上昇が止まる姿は中心の次に起こりやすい。借金の重さもこちらに働く。
悲観 10% 倉庫が供給過剰になり、借金だけが残る 利益 −25 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 96 円57 億円
冷蔵倉庫の新設が行き過ぎて、占有率は7割台に落ちる。料金は値下げ競争になり、実質で1割以上下がる。電気代の上昇は料金に乗らない。気仙沼のような立地の弱い倉庫の減損が続く。
倉庫の営業利益率は12%に沈み、食品販売はほぼ利益が出ない。借金は金利が上がる中で借り換えを迎え、利払いが営業利益を超える。純損益は赤字になる。
能力は125万トンにとどまり、増設は止まる。配当は大きく削られ、配当50億円は赤字の中から払えないので、資産の売却で払う。売った倉庫の家賃が固定費として残れば、赤字は深くなる。
それでも倉庫と土地、投資有価証券は残る。借金を引いた売れる資産の価値は100億円ほどで、配当50億円を売却で払うので、株主に残るのは50億円ほどだ。
- 冷蔵倉庫事業:数量 125(連結の冷蔵能力(万トン・期末))× 価格 3.61(1万トンあたり売上(億円・名目)。料金改定・稼働率・物価を含む)→ 売上 451 億円・営業利益 54 億円。125万トン×1万トンあたり3.61億円(今の1.18倍)、営業利益率12%
- 食品販売事業:数量 10.5(取扱数量(万トン・推定))× 価格 89(1万トンあたり売上(億円・名目)。平均単価70万円/トンの推定を含む)→ 売上 936 億円・営業利益 3 億円。10.5万トン×89.1億円、営業利益率0.3%
倍率:赤字の筋書きで利益から値が出ない。床は、稼ぐ力でなく売れる資産の税引後から借金を引いた額(約105億円から、売却で払う配当50億円を引いた約55億円。二重に数えない)。今の自己資本807億円に0.07倍を掛けた。営業利益がほぼ無くEV÷営業利益では測れないので、売れる資産から借金を引く形で見た。
確率:10%。供給過剰と電気代の高騰、金利上昇が重なる姿。倉庫の需給は数年で反転しうるが、10年先まで続くのは1割ほどと見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
冷蔵倉庫事業
冷凍食品・水産・畜産物を預かり、保管料と入出庫の手数料を受け取る。国内29拠点・海外4拠点。
| 数量連結の冷蔵能力(万トン・期末) | 価格1万トンあたり売上(億円・名目)。料金改定・稼働率・物価を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 123 | 3.06 | 377 | 74 |
| 10 年後 中立 | 145 | 4.31 | 624 | 137 |
取り方:有価証券報告書の連結冷蔵能力 1,232,703 トンを数量(実質の置き場の大きさ)とし、セグメント売上377.2億円を割って1万トンあたり3.06億円。稼働率の変化と料金は価格の側に入れた。先の数量は建設中の長岡・大井川・タイの増設と、既存の稼働を加味して置く。
食品販売事業
水産物・畜産物・農産物の仕入れと販売。通関などのその他を含む。
| 数量取扱数量(万トン・推定) | 価格1万トンあたり売上(億円・名目)。平均単価70万円/トンの推定を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 12.5 | 70 | 878 | 12 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 94 | 1,126 | 17 |
取り方:取扱数量は開示がないので推定。売上878.1億円を、水産・畜産・農産の平均単価を1トン70万円と見て割り、12.5万トンとした。この単価は魚・肉・芋の相場からの目安で、誤差は大きい。数量は実質、物価の3%と相場は価格の側に入れる。
リスクと懸念
借り換えで利払いが膨らむ
純有利子負債は1,048億円で、営業利益を支払利息で割ると4.9倍しかない。借金の多くが低い金利で調達されており、借り換えのたびに金利が上がる。純負債を3.5%で借り換えると、利益は税引前で年26億円ほど減る。今期の営業利益70億円と比べても大きい。
冷蔵倉庫の新設ラッシュ
占有率が9割を超える今は料金が上がるが、その状態を見て各社が増設している。ヨコレイ自身も長岡、大井川、タイで約690億円を投じる。数年後に供給が増えれば、料金は頭打ちになる。新しい倉庫は借金を返せるほど稼げない恐れがある。
電気代の上昇を転嫁できない
冷蔵倉庫は電力で冷やし続ける事業で、電気代は大きな費用だ。業界団体は値上げを警戒している。荷主との料金交渉で転嫁が遅れれば、占有率が高くても利益は伸びない。2025年9月期は電気代などの上昇で営業利益が減った。
売った倉庫の家賃
羽田・加須・つくばの物流センターを信託受益権で譲渡し、60億円の売却益を出した。運営を続けるなら、買い手に家賃を払う可能性がある。その場合、借金は減っても固定費が増える。契約の中身は未確認で、確かめる必要がある。
食品販売の相場リスク
食品販売は売上の7割を占めるが、利益は薄い。今期はサバやイワシの豊漁が利益を押し上げた。エビ、タコ、イカは荷動きが鈍い。豊漁が続く保証はなく、相場が戻れば利益は薄い水準に戻る。
海外投資の回収
タイのスワンナプームの倉庫には357億円を投じる。ベトナムの倉庫は4.5万トンと、グループ最大級だ。海外は需要が伸びるが、為替と現地の電力料金、競合の動きに左右される。回収に時間がかかれば、借金の重さが残る。
今後の分かれ目
- 主要都市の庫腹占有率が2期続けて85%を割ったら
- 需給が緩み始めた合図。やや悲観の筋書きに重みを移す。料金改定の交渉が止まっていないかも併せて見る。
- 資産の流動化で純有利子負債が800億円台に下がったら
- 利払いの増え方が小さくなる。中心の筋書きの純利益を上げ、強気の側に重みを寄せる。ただし売却後の家賃の額を必ず確かめる。
- 売却した倉庫の賃借料が営業利益の1割を超えると分かったら
- 借金が家賃に替わっただけで、軽くなっていない。やや悲観に寄せる。
- 電気代の上昇を料金に完全に転嫁できると示されたら
- 倉庫の利益率の下振れが小さくなる。中心の営業利益率を上げて見直す。
- 食品販売の営業利益率が2%を超えて保たれたら
- 低採算を切った効果が定着した合図。部門利益の見通しを上げる。
- 株式会社松岡など大株主が経営への関与や提案を強めたら
- 資産売却や還元が速まる可能性がある。ただし材料は開示で確認してから使う。
見ておくもの
- 主要都市の庫腹占有率と、冷蔵倉庫事業の営業利益率
- 純有利子負債の額と、利払いの増え方
- 売却した倉庫の賃借料の開示
- 長岡・大井川・スワンナプームの稼働と埋まり方
- 食品販売の営業利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と資本コスト8.5%(基本7.5%、quality +1.0%)・長期成長g 4%から求めた上限の6〜9割に置いた。ROEがk以下なので上限は1÷k。確率は、筋書きの起こりやすさで置き、今の株価に寄せていない。今の株価が高いのは、倉庫の売り手市場と資産の売却益への期待が先に入っているためとみて、期待の分は筋書きに入れた。金利の上昇は純利益に入れた(brief推定の-26億円から、売却後の借金の動きで-28億円)。10年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益と純負債の形が変わる点は考慮している。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→11.76 倍・やや楽観 PER 10.6→11.76 倍・中立 PER 10→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality合計+1.0%を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表した。