結論
タマホームは、低価格の注文住宅を全国で建てる創業家支配の会社だ。筆者の結論は、今の値段は10年先の稼ぐ力に対して割高だ、というものだ。いちばんの理由は、本業の注文住宅が4年続けて受注を減らし、直近は住宅事業そのものが赤字になっていることにある。
利益を支えているのは、戸建分譲やオフィスの区分所有権の販売といった不動産事業だ。住宅事業が赤字でも全社は黒字を保った。ただ不動産は物件を仕入れて売る商売で、毎年同じ利益が出る保証はない。
会社は来期に営業利益を倍増させる計画を出した。だが中期計画は2度、大きく引き下げられている。筆者は計画をそのまま使わず、受注は緩やかにしか戻らないものとして10年を組んだ。
良い点もある。純現金があり、借金で行き詰まる会社ではない。低価格帯のブランドは今も強く、持家が減る中でシェアを守れば利益は戻る。ただ、利益が戻っても高い倍率が付く事業ではない。配当は純利益を上回る水準で、純資産は3年続けて減った。
10年の中立では利益は今の数倍に戻る。それでも確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を3割近く下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、タマホームは「わかりやすいが、持ち続けたい会社ではない」に近い。事業は単純だが、堀は薄く、利益は景気と金利と営業人員に左右される。10年後も強いか、と問われると確信を持てない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益で見ると、直近は12億円にすぎない。来期の計画40億円を達成しても、時価総額820億円に対しては20倍だ。10年後の中立で利益が80億円近くまで戻る、という前提でも、払う値段に安全域は取れない。
経営の資本の使い方も評価が分かれる。純利益を超える配当は、株主にやさしく見えて、将来の稼ぐ力を削る。展示場や営業人員への投資より、配当を優先しているようにも映る。
安全域の点では、純現金61億円は時価総額の1割に満たず、悲観の床としては小さい。10年の悲観では、稼ぐ力に見合う価値は今の1割台まで落ちうる。一方、楽観でも今の値段を大きく超えにくい。筆者は、値段に比べて得られるものが少ない会社だと見る。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は、注文住宅、リフォーム、戸建分譲、不動産の4つで、すべて国内向けだ。いちばん大きいのは注文住宅で、「大安心の家」に代表される低価格の商品を全国の加盟店や直営で売る。平均単価は2,400万円前後で、大手ハウスメーカーの半分ほどにとどまる。
この価格帯の強みは、建材を大量に仕入める力と、広告・展示場による集客だ。弱みは、顧客が価格に敏感なことだ。建材や人件費が上がって住宅価格が上がると、真っ先に買い控えが起きる。直近の受注減はこの構図に当てはまる。
稼ぎの中身は、この数年で変わった。住宅事業は赤字に転じ、戸建分譲やオフィスの区分所有権販売を担う不動産事業が全社の利益を支えている。分譲は土地を仕入れて建てて売る商売で、在庫と金利に左右される。注文住宅のように、受注残が先の売上を示してくれる商売ではない。
リフォームや保険の代理店、不動産の管理といった周辺の事業もあるが、利益への貢献はまだ小さく、収益の柱とまでは言えない。会社は「新築住宅着工棟数No.1」を掲げるが、足元の注文住宅の引渡しはピークの6割ほどまで落ちている。
優良さと弱いところ
優良さは平均を少し下回る、というのが筆者の見立てだ。ブランドは全国に通じ、ローコスト住宅の代名詞に近い。ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは厚くない。住宅は施主が複数社を比べて決める買い物で、価格を自分で決める力は大手より弱い。
資本の効率は、好不調の差が極端に大きい。自己資本利益率は2020〜2024年の5期は25%前後だったが、直近は4%まで落ちた。高い数字は、利益が出ていた時期の自己資本が小さかったことの裏返しでもある。営業利益率は最も良い年で5%台と、もともと薄い。
安心できる点は財務だ。純現金があり、自己資本比率は3割台を保つ。支払利息の10倍以上を営業利益で稼げている。借金で潰れる会社ではない。
気になるのは、経営が数字を外し続けていることだ。2021年に作った中期計画は、売上3,200億円・営業利益200億円を掲げたが、最終年度の予想は売上2,090億円・営業利益47億円まで切り下がった。実績はそれも下回った。営業人員の不足を会社自身が理由に挙げており、原因が景気だけではない点が重い。
創業家が株の3割超を持ち、会長と社長を出している。意思決定は速いが、外から経営を正す力は働きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅市場は、数量が縮む成熟産業だ。新設住宅着工は2025年に約74万戸まで減り、うち持家は約20万戸と4年続けて減った。世帯数の減少が続く以上、10年で持家は今より1割以上減ると見るのが自然だ。
その中でタマホームの属する低価格帯は、二重の逆風を受けている。建材・輸送費・人件費の上昇で価格が上がり、住宅ローン金利も上がった。購入者の予算が変わらなければ、買えなくなる層が真っ先に出る。会社自身も、受注低迷の理由に住宅価格の高止まりと金利上昇への懸念を挙げている。
競争は二方向から来る。上からは積水ハウスや大和ハウスなどの大手が、自社の商品を下の価格帯へ広げてくる。横からは、アイダ設計などの同じ低価格帯のメーカーと、地域の工務店がある。差別化できる要素が少ないため、受注は営業人員の数と展示場の集客に左右されやすい。
一方、持家が減る中でも戸建分譲は強い。土地と建物を一体で売るので、買い手の総予算に収まりやすい。タマホームは分譲の引渡しを伸ばしており、国内の持家の縮小を一部で補っている。
2024年問題と呼ばれる技能労働者の不足も、利益率を押し下げる要因だ。建設費が物価を上回って上がる限り、低価格が売りの会社ほど利幅が薄くなる。
資本政策と M&A
資本政策の最大の論点は、配当が純利益を超えていることだ。直近の年間配当は純利益の3倍ほどに当たる。前の期はさらに高く、4倍近かった。配当を保つために純資産が削られ、自己資本は2024年5月期の383億円から297億円まで減った。
自社株買いは目立たない。創業家が株の3割超を持つため、株数を減らして1株の価値を高めるより、配当で還元する性格が強い。買収も大きなものは見当たらず、成長は自力の営業と分譲の仕入れで追う。
M&Aや再編の話は、材料として扱いにくい。創業家が経営を握り、2015年には親族の会社が公開買付けを行った経緯もある。非公開化の可能性はゼロではないが、確かな手がかりはない。
筆者は、配当を純利益の範囲に戻すのが筋だと考える。そうしない限り、利益が戻っても純資産は積み上がらない。
還元の置き方:配当方針の数値は確かめられない。10年の中立は、今の配当(1株125円)を削らず保つ水準(年36億円ほど)で、純利益の合計の84%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注はすでに底を打った。2026年3月の受注は前年を1割上回り、期の後半から回復が始まっている。受注残が薄い今期は引渡しが少ないが、来期から売上は戻り、営業利益は75億円、再来期は80億円へ進む。
住宅ローン減税の延長や、金利の落ち着きで、持家の着工は2026年度に反発する。低価格帯は底堅い需要を持つ。買い手の予算が厳しくなるほど、大手より安いタマホームに客が流れる。シェアは5%近くまで戻り、引渡しは8,000棟に届く。
営業人員の不足は、採用と研修を強めれば解ける。いったん体制が整えば、広告と展示場の固定費が引渡しの増加で薄まり、住宅事業の営業利益率は5%台に戻る。
不動産事業も伸びる。戸建分譲は在庫の回転が早く、都市部の需要が堅い。オフィスの区分所有権販売のような、仕入れと販売を組み合わせた案件が加わり、利益は住宅事業の赤字を十分に埋める。配当は純利益の範囲に収まり、純資産は再び積み上がる。
10年後には利益が今の10倍を超え、ROEは20%を保つ。創業家支配で意思決定が速いことは、立て直しの局面では強みになる。
慎重な見方
受注の減少は景気のせいではなく、会社の構造の問題だ。2021年5月期に1万1千棟を超えた注文住宅の受注は、4年続けて減り、2025年5月期には7千棟台まで落ちた。会社は営業人員の不足を認めており、採用と定着が進まなければ回復の土台がない。
価格の面でも、低価格帯は挟み撃ちに遭う。大手が下の価格帯に商品を広げ、同じ価格帯にはアイダ設計などと工務店が並ぶ。建材高と人件費で単価を上げれば客が離れ、上げなければ利幅が消える。住宅事業はすでに赤字だ。
来期の利益倍増の計画は、不動産の利益頼みだ。会社は中期計画を2度下げ、今期の経常利益の予想も外した。計画を信じる根拠が乏しい。分譲やオフィスの販売は景気と金利で振れ、毎年は続かない。
配当は純利益の3倍ほどで、自己資本は3年で2割以上減った。この水準を続ければ、いずれ配当を削るか、財務が痩せるかのどちらかになる。10年で持家が1割以上減る中、今の稼ぎを維持するだけでも難しい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。受注減は4年続き、住宅事業は赤字で、中期計画は2度下がった。回復の兆しはあるが、利益の戻りを不動産に頼る構造は変わらない。このため、やや悲観と悲観に合わせて4割の確率を置き、楽観側は合計で25%にとどめた。
一方で、純現金があり、ブランドも残るため、悲観の確率は15%に抑えた。中立は受注が緩やかに戻る筋書きで、35%を置く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 3,996 円1,158 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,151 円334 億円)。 今の値に割り戻すと 2,634 円764 億円、今との差 −6.5%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,970 円2,890 億円 | 2,001 円580 億円 | +324.9% | +15.6% | 958 円278 億円 |
| やや楽観 | 17% | 6,689 円1,939 億円 | 1,518 円440 億円 | +191.3% | +11.3% | 1,395 円404 億円 |
| 中立 | 35% | 4,880 円1,415 億円 | 1,311 円380 億円 | +119.8% | +8.2% | 2,167 円628 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,218 円353 億円 | 828 円240 億円 | −27.4% | −3.1% | 511 円148 億円 |
| 悲観 | 15% | 323 円94 億円 | 448 円130 億円 | −72.6% | −12.2% | 116 円34 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,996 円1,158 億円 | 1,151 円334 億円 | +82.7% | +6.2% | 5,147 円1,492 億円 |
今の株価時価総額 2,817 円817 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:受注が戻り、住宅も不動産も稼ぐ 利益 155 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 9,970 円2,890 億円
2026年度の持家反発をきっかけに受注が戻り、営業人員の採用と研修が実を結ぶ。引渡しは8,000棟近くまで増え、広告と展示場の固定費が薄まって住宅事業の営業利益率は5%台に戻る。単価も物価を少し上回って上がる。不動産では戸建分譲が都市部で伸び、オフィスなどの区分所有権の販売が加わって利益が積み上がる。配当は純利益の範囲に収まり、純資産は再び積み上がる。10年後の営業利益は今の6倍を超え、自己資本利益率は20%台を保つ。創業家支配の速い意思決定が、立て直しでは強みになる筋書きだ。この筋書きの前提は、営業人員の問題が一過性で、市場の戻りも早いことだ。会社が2度外した計画の水準に、ようやく届く形になる。競合の大手は上の価格帯に軸足を置いたままで、下の価格帯の客はタマホームに集まる。
- 住宅事業(注文住宅・リフォーム):数量 7,900(年間引渡し棟数(棟、リフォームは棟に換算))× 価格 0.35(1棟あたり平均単価(億円))→ 売上 2,741 億円・営業利益 151 億円。持家の底打ちで引渡し増・固定費が薄まる
- 不動産・その他事業(戸建分譲・不動産):数量 2,500(年間引渡し戸数(戸、戸建分譲に換算))× 価格 0.44(1戸あたり平均単価(億円))→ 売上 1,101 億円・営業利益 88 億円。分譲とオフィス販売が伸びる
倍率:事業の純利益 155 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.61 倍、時価総額 2,890 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の回復と営業人員の立て直しが同時に成功する筋書きで、4年続けて受注が減った実績と中期計画の未達を考えると、重くは置けない。
やや楽観 17% やや楽観:受注は緩やかに戻る 利益 110 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 6,689 円1,939 億円
受注は2〜3年で底を打ち、引渡しは7,000棟弱まで戻る。単価は物価を少し上回って上がる。住宅事業の営業利益率は4%台で、赤字は解消するが、かつてのような高い水準には届かない。不動産事業は戸建分譲を中心に着実に伸びる。ただ、オフィス販売のような単発の利益は続かず、毎年の利益は緩やかに積み上がる形になる。配当は純利益に近い水準へ下がり、自己資本は再び増え始める。会社の計画には届かないが、住宅事業の赤字が解消するだけでも、全社の利益は今の数倍に戻る。配当を無理なく続けられる水準に近づき、財務の不安も薄れる。
- 住宅事業(注文住宅・リフォーム):数量 6,900(年間引渡し棟数(棟、リフォームは棟に換算))× 価格 0.34(1棟あたり平均単価(億円))→ 売上 2,332 億円・営業利益 98 億円。受注が緩やかに戻る
- 不動産・その他事業(戸建分譲・不動産):数量 2,250(年間引渡し戸数(戸、戸建分譲に換算))× 価格 0.44(1戸あたり平均単価(億円))→ 売上 991 億円・営業利益 71 億円。分譲が着実に伸びる
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.61 倍、時価総額 1,939 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画ほどではないが、2026年3月の受注増など回復の兆しがあり、住宅と分譲が部分的に戻る筋書き。
中立 35% 中立:持家は縮み、受注はシェアを保つ程度 利益 78 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 4,880 円1,415 億円
持家の着工は世帯数の減少で10年に1割以上減る。タマホームは営業人員の立て直しでシェアを3%台半ばまで戻すが、それでも引渡しは5,800棟と今とほぼ同じだ。単価は物価並みに上がり、住宅事業は営業利益率3%台で黒字に戻る。不動産事業は分譲を軸に着実で、営業利益率は6%台半ば。会社全体の営業利益は120億円前後と、過去最高の2023年5月期をわずかに下回る。配当は1株125円の据え置き(年36億円ほど)を前提にし、純利益が戻る後半は6割前後に落ち着く。10年の合計では純利益の8割強になり、純資産は緩やかに積み上がる。ROEは17%ほどだ。配当を削らずに続ける前提なので、利益が戻っても純資産の積み上がりは緩やかだ。成長はなく、物価に沿って規模が広がる巡航の10年になる。
- 住宅事業(注文住宅・リフォーム):数量 5,800(年間引渡し棟数(棟、リフォームは棟に換算))× 価格 0.33(1棟あたり平均単価(億円))→ 売上 1,920 億円・営業利益 63 億円。持家が縮む中でシェアを保つ
- 不動産・その他事業(戸建分譲・不動産):数量 1,970(年間引渡し戸数(戸、戸建分譲に換算))× 価格 0.44(1戸あたり平均単価(億円))→ 売上 868 億円・営業利益 56 億円。分譲は着実に伸びる
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.16 倍、時価総額 1,415 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注は底を打つが、持家全体は10年で1割以上縮む。会社の計画達成は難しいが、赤字が続くほど悪くもならない、という最も重く置く筋書き。
やや悲観 25% やや悲観:低価格帯が削られ、住宅は薄利のまま 利益 35 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,218 円353 億円
持家は世帯数の減少に加え、金利の上昇と建築費の高止まりで、10年後に15万戸台まで縮む。タマホームは大手の下方展開と同じ価格帯の競合に押され、シェアが3%ほどにとどまる。引渡しは4,600棟まで減り、単価も競争で物価に届かない。住宅事業の営業利益率は1%台で、固定費の重さが残る。不動産事業は分譲の仕入れ競争と金利で利幅が薄くなる。配当は削られ、純資産は積み上がらない。創業家の経営でも、持家の縮小と値決めの弱さは自力では動かせない。営業人員の問題が長引き、受注の回復が計画より遅れる。会社は広告と展示場への支出を抑えて利益を守ろうとするが、それがさらに受注を細らせる循環に入る。
- 住宅事業(注文住宅・リフォーム):数量 4,600(年間引渡し棟数(棟、リフォームは棟に換算))× 価格 0.33(1棟あたり平均単価(億円))→ 売上 1,495 億円・営業利益 22 億円。受注が減り、薄利のまま
- 不動産・その他事業(戸建分譲・不動産):数量 1,600(年間引渡し戸数(戸、戸建分譲に換算))× 価格 0.43(1戸あたり平均単価(億円))→ 売上 689 億円・営業利益 35 億円。分譲の利幅が薄くなる
倍率:ROE 約12%(純利益 約35億円÷自己資本 約290億円)。k 8%、RONIC=8.5%+1/2×(12%−8.5%)=約10.3%、g 3% で正当化 PER=(1−3/10.3)÷5.5%=約12.9 倍。この筋書きは低価格帯で削られる構造的な負けに近いので、上限の約 8 割に届かない 10 倍に置いた。
確率:受注減が4年続き、住宅事業が赤字になった実績から見ると、回復が遅れる筋書きは十分ありうる。会社計画が2度外れたことも重い。
悲観 15% 悲観:低価格帯で構造的に負け、住宅は赤字が続く 利益 9 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 323 円94 億円
営業人員の確保が進まず、受注は減り続ける。大手の下方展開と工務店に挟まれ、単価を上げれば客が離れ、上げなければ利幅が消える。引渡しは3,300棟まで減り、住宅事業は赤字から抜けられない。不動産事業は金利の上昇で在庫が重くなり、利益率が下がる。会社は展示場と人員の整理に追われ、配当は大幅に削られる。10年後の営業利益は十数億円で、稼ぐ力は今の数分の1に落ちる。純現金と不動産事業が下支えになるため、事業が立ち行かなくなるところまでは行かない。ただ、成長の見込みを失った会社として、利益の少ない縮小均衡に落ち着く。
- 住宅事業(注文住宅・リフォーム):数量 3,300(年間引渡し棟数(棟、リフォームは棟に換算))× 価格 0.31(1棟あたり平均単価(億円))→ 売上 1,023 億円・営業利益 −5 億円。受注が減り続け、赤字が残る
- 不動産・その他事業(戸建分譲・不動産):数量 1,200(年間引渡し戸数(戸、戸建分譲に換算))× 価格 0.41(1戸あたり平均単価(億円))→ 売上 492 億円・営業利益 20 億円。金利で在庫が重く、利幅が下がる
倍率:ROE 約4%(純利益 約9億円÷自己資本 約230億円)で k を下回るため、PER の上限は 1÷k=約 11.8 倍。事業の稼ぐ力が小さく、構造的な負けの筋書きなので、上限を超えない 10.62 倍に置いた。
確率:営業人員の不足と価格競争が解けず、受注が減り続ける筋書き。純現金と不動産事業が下支えになるため、倒産には至らない前提で15%を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅事業(注文住宅・リフォーム)
低価格の注文住宅の請負と、リフォーム。全国の直営店と加盟店で売る。
| 数量年間引渡し棟数(棟、リフォームは棟に換算) | 価格1棟あたり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 5,500 | 0.25 | 1,359 | −11 |
| 10 年後 中立 | 5,800 | 0.33 | 1,920 | 63 |
取り方:住宅事業の売上1,359億円と赤字約11億円は決算要約で確認した。棟数は2025/05期の注文住宅の平均単価(1,335億円÷5,598棟=約2,385万円)を物価で約3.5%上げた0.247億円で割った推定で、リフォームの分も棟に換算して含む。単価は中立で物価並み(10年1.34倍)、棟数は持家の縮小とシェアで決まる。
不動産・その他事業(戸建分譲・不動産)
戸建分譲、マンション、オフィス区分所有権の販売、不動産の管理と仲介など。
| 数量年間引渡し戸数(戸、戸建分譲に換算) | 価格1戸あたり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,880 | 0.33 | 618 | 49 |
| 10 年後 中立 | 1,970 | 0.44 | 868 | 56 |
取り方:全社の売上1,977億円から住宅事業1,359億円を引いた618億円と、全社の営業利益38.4億円に住宅事業の赤字10.7億円を足した49.1億円を、この事業の売上と利益とした(不動産事業の単独の開示は確認できず推定。その他事業と調整額を含む)。戸数は戸建分譲換算の平均単価0.3287億円(約3,300万円)で割った推定。
リスクと懸念
受注の減少が止まらない
注文住宅の受注は4年続けて減った。会社は営業人員の不足を理由の1つに挙げており、採用と定着が進まなければ、市場が戻っても取りこぼす。ここが回復しなければ、10年の筋書き全体が下に動く。
不動産の利益に頼った計画
来期の営業利益倍増は、不動産事業の利益と住宅事業の黒字化に頼る。分譲は仕入れと在庫と金利の三つに左右され、オフィスの販売のような単発の利益は繰り返せない。計画が外れた時の下振れは大きい。
配当が純利益を超えている
年間配当は純利益の3倍ほどで、自己資本は2024年5月期の383億円から297億円まで減った。この水準を続ければ財務が痩せる。配当を削れば株価への影響も出る。どちらに転んでも株主には痛い。
価格競争と大手の下方展開
大手ハウスメーカーが下の価格帯に商品を広げ、同じ価格帯にはアイダ設計などと地域の工務店が並ぶ。価格を上げれば客が離れ、上げなければ利幅が消える。値決めの力が弱い点は構造的な弱みだ。
金利と建築費の上昇
住宅ローン金利が上がると、価格に敏感な低価格帯の買い手が真っ先に離れる。建材と人件費の上昇は、そのまま利益率を削る。分譲の在庫を持つ会社なので、金利が上がると資金負担も重くなる。
創業家支配と経営の統治
創業家が株の3割超を持ち、会長と社長を出している。意思決定は速いが、中期計画が2度外れても経営の責任が問われにくい。外からの規律が働きにくい点を、バリュー投資家は気にする。
今後の分かれ目
- 注文住宅の受注が前年比で2期続けて増えたら
- 営業人員の立て直しが実を結んだ証拠で、やや楽観と楽観の確率を上げてよい。
- 住宅事業が赤字から抜けず、不動産の利益だけで黒字を保つ期が続いたら
- 本業の競争力が戻っていないとみて、やや悲観・悲観に確率を移す。
- 配当が純利益の範囲に戻る方針が示されたら
- 純資産の流出が止まり、中立の自己資本の積み上がりが確実になる。確率は中立〜やや楽観へやや寄せてよい。
- 住宅ローン金利が大きく上がり、持家の着工が20万戸を割り込んだら
- 低価格帯の受注が最も早く落ちるため、悲観側の確率を引き上げる。
- 創業家による非公開化や大型の資本提携の話が出たら
- 買い手が付ければ価値の見直しもありうる。ただし価格と条件を確かめるまでは確率に織り込まない。
- 新しい中期計画が、受注棟数と利益率の目標を現実的な水準で示したら
- 経営の信頼回復の一歩になる。数字が過去の未達を踏まえているかを見る。
見ておくもの
- 注文住宅の受注棟数と受注残の推移(四半期ごとの前年比)
- 住宅事業のセグメント損益(赤字から黒字へ戻るか)
- 不動産事業の利益と、単発の販売益が占める割合
- 年間配当と純利益の比率、自己資本の増減
- 営業人員の数と、新しい中期計画の目標
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から決め、今の株価(PER 約 70 倍・約 20 倍の来期予想)には寄せていない。中立の ROE 21% から正当化 PER を約 16 倍と出し、堀の薄さと利益の質で 12 倍に置いた。今の株価は 10 年後の利益が数倍に戻る前提を先取りしており、確率で重みを付けた価値が今の時価総額を下回ったのは、計算の結果で、割安・割高に寄せていない。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。新リース会計基準(2028/05 期前後から BS に載る)は営業利益と自己資本比率の形を変えるが、PER で測る価値はほぼ変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→18.61 倍・やや楽観 PER 13→17.61 倍・中立 PER 12→18.16 倍・悲観 PER 10→10.62 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。理由は quality_why。個別のリスク(営業人員・創業家支配・配当)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。