結論
共立メンテナンスは、学生寮・社員寮の運営で国内首位に立ち、そこから生まれたビジネスホテル「ドーミーイン」を第二の柱に育てた会社だ。事業の質は高い。ただ筆者の結論は割高である。10 年先の利益で測った本質価値が、今の時価総額に届かない。
稼ぎの土台は寮にある。全国で 4.7 万室を持ち、期初の稼働率は 98.5% に達する。景気が悪くなっても住む人は住むので、利益は安定している。利益の大半を出すのはドーミーインで、26/03 期は営業利益の約 6 割を占めた。こちらは温泉と朝食で選ばれる代わりに、景気とインバウンドの波を受ける。コロナ禍の 2021/03 期には赤字に落ちた。
筆者が気にしているのは、成長の元手の使い方だ。会社は毎年ホテルと寮を数千室ずつ建て、足りない資金は不動産の売却で回収している。事業が伸びる一方、使った資金に見合う稼ぎ(ROE)は 10 年後に 8% 台へ下がると見る。資本コストをわずかに超える程度で、倍率は大きく付けられない。
中立の 10 年後は営業利益が約 420 億円、純利益が約 270 億円。値上げと新規開業で利益は伸びるが、今の時価総額は 10 年先まで見込んだ成長をすでに織り込んでいる。分かれ目はドーミーインの客室単価がどこまで続くかと、物件を売って資金を回す仕組みが続くかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、寮事業は魅力的な資産だ。1 室から契約できる柔軟さと全国 4.7 万室の規模が、競合に追いつかれにくい堀になる。需要は景気にぶれず、稼働率は 98% 台に張りつく。持ち続けたい事業だと筆者は見る。
ただ、利益の大半はドーミーインから出る。ここは温泉と朝食という強い商品を持つが、競合の多いビジネスホテルであり、景気の波を受ける。2021/03 期の営業赤字がそれを示している。
資本の使い方も気になる。成長のためにホテルと寮を建て続け、自己資本は 10 年で倍以上になる。それでも事業が稼ぐ利益は、積み上がる自己資本の 8% 台にとどまる。資本コストをかろうじて超える程度で、投じたお金が価値を増やしているとは言い切れない。
安全域は薄い。10 年先まで順調に伸びる中立の筋書きでも、今の時価総額の半分に届かない。事業の質は良いが、払う値段に安全域はない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 4 つに分かれる。寮、ドーミーイン、リゾート、そして不動産流動化とシニアライフなどの周辺事業だ。26/03 期の売上は 2,752 億円、営業利益は 248 億円だった。
寮事業は学生会館ドーミーと社員寮の運営である。大学や企業と契約し、食事付きの寮を全国に 520 か所ほど運営する。1 室から契約できる柔軟さが売りで、取引は 2,100 法人に及ぶ。27/03 期の期初は 4.7 万室、稼働率は 98.5%。売上は 579 億円、営業利益は 62 億円で、利益率は 1 割ほどと薄いが、需要がぶれない。
ドーミーインはこの会社の稼ぎ頭だ。社員寮に出張で泊まりたいという声から生まれたビジネスホテルで、大浴場の温泉、朝食ブッフェ、夜に出る夜鳴きそばが特色である。客室は約 2 万室。26/03 期の売上は 922 億円、営業利益は 191 億円で、利益率は 2 割を超える。27/03 期は 6 棟 1,040 室を開く計画だ。
リゾート事業は観光地の高単価の宿で、客室は 4,700 室。売上は 570 億円と大きいが、営業利益は 19 億円と薄い。27/03 期は客室単価の上昇で営業利益 30 億円を見込む。
このほか、建てたホテルや寮を投資家に売って資金を回収する不動産流動化がある。26/03 期は 4 件で売上 350 億円、営業利益 23 億円だった。これは毎年そろう利益ではない。開発の資金を回す手段として使われる。
優良さと弱いところ
最大の強みは寮の規模である。全国 4.7 万室を運営する専業は他になく、大学や企業は 1 室から契約できる使い勝手を理由に選ぶ。寮は景気で需要が崩れにくく、稼働率は 97% を超える。筆者は、寮が会社の利益の下支えになっていると見る。
ドーミーインのブランドも強い。温泉大浴場と朝食で、出張客と観光客の両方に選ばれる。利益率は 2 割と高い。ただ競合は多い。東横イン、アパホテルなど大手のほか、外資系の参入も続く。寮のような専業の堀、つまり他社がまねできない強みは、ホテル側にはない。
資本の使い方は積極的だ。毎年ホテルと寮を数千室ずつ建て、中期経営計画(Rise Up Plan 2028)では売上 2,944 億円・営業利益 288 億円を目指す。投資の元手には、完成した物件を投資家に売る不動産流動化を使う。身軽に伸びられる一方、売却益は年によって揺れる。
財務は改善した。純有利子負債は 906 億円で、自己資本比率は 46% に上がった。主因は 2026 年満期の転換社債 300 億円が株式に変わったことだと筆者は見る(推定)。そのぶん株数は約 17% 増え、1 株の取り分は薄まった。
弱みは 3 つある。景気に弱い(2021/03 期は営業赤字)、物件の賃借や不動産の売却益に利益が左右される、配当性向 20% と株主還元が控えめ。ROE は 10 年後に 8% 台へ下がる見込みで、資本コストをかろうじて超える水準にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
寮の市場は、人口の減少と大学・企業の寮の外注化がせめぎ合う。18 歳人口は減るが、大学が寮を自前で持たず外部に任せる流れと、企業が社員寮を外注に切り替える流れが続く。会社は毎年 2,000 室ほどを増やしており、シェアを取りながら伸びている。筆者は、10 年で 2 割弱の増加を中立に置く。
ホテル市場は需要が強い。2025 年の外国人延べ宿泊者数は約 1.78 億人泊と過去最高で、日本人は約 4.76 億人泊と減った。インバウンドが需要を支える構図で、日本の稼働率は約 8 割と高い。ただし需要の伸びは 2025 年秋をピークに鈍っている。
ドーミーインは全国に出店を続けるが、ビジネスホテルは分散した市場で、東横イン・アパホテルなど大手のほか外資系も増えている。人手不足の下で人件費が上がり、客室単価の上昇が利益率を左右する。
リゾートは稼働率 82% と高いが、利益率は薄い。今期は単価上昇と新規開業で利益が伸びる計画だ。
10 年を見ると、国内客の絶対数は人口で減り、インバウンドの高水準が続くかが焦点になる。韓国や東南アジアの観光地との取り合い、新規ホテルの供給過剰、物価の上昇に客室単価が追いつくかが、分かれ目になる。
資本政策と M&A
配当は性向 20% を目安にしており、26/03 期の年間配当は前期より約 2 割増えた。27/03 期は据え置く計画だ。自社株買いの言及は決算説明資料に見当たらない。還元は控えめで、利益の多くを新しい物件に回している。
財務の方針は、純有利子負債を自己資本の 1 倍以下に保つことだ。26/03 期末は 0.62 倍だった。建てた物件を不動産流動化で売り、資金を早く回収する。この仕組みが回っている間は、借金を増やさずに室数を増やせる。
2026 年満期の転換社債が株式に変わり、株数は約 17% 増えた(推定)。1 株当たりの利益と配当は薄まったが、自己資本は厚くなった。
M&A には積極的ではなく、自社開発で伸びる会社だ。大株主は信託銀行とマイルストーン(9.3%)で、創業家や親会社の支配は確認できない。政策保有株は 12 銘柄で、毎年見直している。時価総額は約 3,000 億円と、買収・TOB の対象になりうる大きさだ。ただ具体的な動きは確認できていない。
株主優待は、100株以上で2千円分の割引券(年2回)と、3年以上で追加。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約4万人(割引額×利用率5割×変動費率5割)から年4億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
寮は人口減の影響を受けない。大学が寮を外部に任せる流れが強まり、会社は毎年 2,000 室以上を増やして 10 年後に 6 万室に届く。稼働率は 98% 台に張りつき、食事と管理の料金も物価以上に上がる。利益率は 12% 台まで上がる。
ドーミーインはブランドの力が強い。温泉と朝食で選ばれ、出張と観光の両方を取り込む。インバウンドの高水準が続けば、客室単価は物価を超えて上がる。客室は 2.7 万室まで増え、利益率は 22% に達する。
リゾートは単価が上がり、稼働率の改善で利益率が 9% に乗る。物件を売る不動産流動化も毎年 4 件のペースで回り、成長の元手を安く調達し続ける。
結果として、営業利益は 600 億円を超え、ROE も 11% に戻る。財務は健全で、株主への還元も増える。競合のホテルが増えても、温泉と朝食の指名買いが続くから単価は下がらない。大学や企業が寮を外注する流れは構造的で、会社の 5 万室の目標も通過点にすぎない。ただし、これだけの筋書きがそろうには、ホテルの供給競争に勝ち続けることが条件になる。
慎重な見方
利益の大半はドーミーインだ。ここは景気とインバウンドの波を受ける。2021/03 期にはコロナ禍で営業赤字に落ち、10 年のうちに同じ打撃が来る可能性は低くない。
ホテルは競合が多い。東横イン、アパホテル、外資系のブランドが各地に増え、供給が過剰になれば客室単価が頭打ちになる。人件費と食材費の上昇で、利益率は削られる。
会社は成長のために物件を建て続け、足りない資金を不動産の売却で回収する。この仕組みは売却益に頼るため、不動産市況が崩れれば止まる。純有利子負債は自己資本比率が上がっても 900 億円あり、金利が 3.5% に上がると利払いが増える(10 年で 23 億円ほど)。
自己資本は 10 年で倍以上に増えるのに、事業が稼ぐ利益は 8% 台にとどまる。資本コストをかろうじて超える程度で、新しい物件がお金を増やしているかは怪しい。今の時価総額は、この成長に高い値段を付けすぎている。景気が一度崩れれば、固定費の重いホテルの利益は大きく落ちる。寮の安定だけでは、その穴を埋めきれない。
どちらに重みを置いたか
寮の安定とドーミーインの強さでは強気の言い分に分がある。一方、資本の使い方と値段の面では慎重な言い分が強い。10 年後の ROE が資本コストをかろうじて超える程度で、倍率を大きく付けられないからだ。
中立でも今の時価総額を大きく下回る。楽観の筋書きでも今の値段に届くかが怪しい。確率は中立に 4 割弱を置き、景気とホテル競争の悪化を、やや悲観と悲観の合計で 3 割強とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,399 円4,002 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 655 円596 億円)。 今の値に割り戻すと 2,483 円2,259 億円、今との差 −27.3%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 7,442 円6,770 億円 | 1,017 円925 億円 | +147.7% | +9.5% | 761 円693 億円 |
| やや楽観 | 23% | 6,279 円5,711 億円 | 855 円778 億円 | +108.9% | +7.6% | 1,641 円1,493 億円 |
| 中立 | 36% | 4,930 円4,484 億円 | 672 円611 億円 | +64.0% | +5.1% | 2,017 円1,834 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,187 円1,990 億円 | 447 円407 億円 | −22.8% | −2.6% | 580 円527 億円 |
| 悲観 | 10% | 293 円267 億円 | 265 円241 億円 | −83.6% | −16.6% | 56 円51 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,399 円4,002 億円 | 655 円596 億円 | +48.0% | +4.0% | 5,054 円4,597 億円 |
今の株価時価総額 3,415 円3,106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% ホテル競争に勝ち続け、寮もホテルも成長する 10 年 利益 403 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 7,442 円6,770 億円
寮は大学・企業の外注化が進み、10 年で 6 万室に届く。食事・管理の料金も物価以上に上がり、利益率は 12% 台に乗る。ドーミーインは温泉と朝食のブランドで単価を物価以上に上げ、客室は 2.7 万室に増える。インバウンドの高水準が続き、利益率は 22% に達する。リゾートは稼働率と単価の改善で 9% の利益率を確保する。物件売却も年 4 件のペースで回り、成長の元手を安く調達し続ける。営業利益は 600 億円を超え、ROE は 11% 台に戻る。全体として、会社の中期計画をそのまま延ばした最良の 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 寮事業(学生寮・社員寮):数量 60,000(寮の室数(室))× 価格 177(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 1,064 億円・営業利益 133 億円。室数 6 万室×1 室 1.38 倍
- ドーミーイン事業(ビジネスホテル):数量 27,500(客室数(室、推定))× 価格 689(1 室当たり年間売上(万円。稼働率と客室単価、宿泊以外の売上を含む))→ 売上 1,894 億円・営業利益 417 億円。客室 2.75 万室×単価 1.42 倍・利益率 22%
- リゾート事業:数量 6,500(客室数(室))× 価格 1,698(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 1,104 億円・営業利益 99 億円。6,500 室×単価 1.40 倍・利益率 9%
- 不動産流動化:数量 4.0(売却件数(件))× 価格 123(1 件当たり売上(億円))→ 売上 490 億円・営業利益 32 億円。年 4 件
- シニアライフ・その他:数量 330(運営拠点数(推定、か所))× 価格 1.54(1 拠点当たり売上(億円、推定))→ 売上 508 億円・営業利益 0 億円。拠点 330 か所
倍率:事業の純利益 403 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.67 倍、時価総額 6,315 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:寮・ホテル・リゾートが同時に計画を上回る必要があり、競合の多いホテル市場で単価を物価以上に上げ続けるのは難しい。
やや楽観 23% 値上げと開業が続き、堅実に伸びる 10 年 利益 340 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 6,279 円5,711 億円
寮は毎年 1,000 室以上を増やし、5.6 万室まで広がる。ドーミーインは 2.5 万室まで増え、単価は物価をわずかに上回る。リゾートは 6,200 室で利益率 7% を確保する。物件売却は年 3〜4 件。中期計画の目標(営業利益 288 億円)を達成し、その後も年 4% ほどで利益が伸びる。ROE は 10% 台に乗る。競合は増えるが、寮の安定とドーミーインのブランドで客を奪われない。財務は健全なまま、還元も性向 25% 台まで上がる。大きな失敗も大きな成功もない、堅実に積み上がる 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 寮事業(学生寮・社員寮):数量 56,500(寮の室数(室))× 価格 175(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 987 億円・営業利益 119 億円。5.65 万室×1.36 倍
- ドーミーイン事業(ビジネスホテル):数量 25,500(客室数(室、推定))× 価格 669(1 室当たり年間売上(万円。稼働率と客室単価、宿泊以外の売上を含む))→ 売上 1,707 億円・営業利益 358 億円。2.55 万室×1.38 倍・利益率 21%
- リゾート事業:数量 6,200(客室数(室))× 価格 1,662(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 1,030 億円・営業利益 77 億円。6,200 室×1.37 倍・利益率 7.5%
- 不動産流動化:数量 3.5(売却件数(件))× 価格 120(1 件当たり売上(億円))→ 売上 420 億円・営業利益 27 億円。年 3.5 件
- シニアライフ・その他:数量 315(運営拠点数(推定、か所))× 価格 1.51(1 拠点当たり売上(億円、推定))→ 売上 475 億円・営業利益 0 億円。拠点 315 か所
倍率:事業の純利益 340 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.2 倍、時価総額 5,168 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:寮の室数増とドーミーインの新規開業は会社の計画どおりに進みやすく、中立よりやや上に振れる余地はある。
中立 36% 寮は伸び、ホテルは物価並みに稼ぐ平凡な 10 年 利益 270 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 4,930 円4,484 億円
寮は 5.3 万室まで増え、食事・管理の料金は物価並みに上がる。ドーミーインは 2.35 万室で、単価は物価並みに上がり、利益率は 2 割弱。リゾートは 6,000 室、利益率は 5% 台にとどまる。物件売却は年 3 件。中期計画の達成後は新規開業が減り、利益の伸びは年 4% 台に落ち着く。営業利益は 410 億円ほど。ROE は 8% 台で資本コストをかろうじて超える程度になる。事業は堅いが、投資に見合う稼ぎは増えない。会社は純有利子負債を自己資本の 1 倍以下に保つ方針を守り、不動産流動化も回り続ける。景気の大きな悪化は起きず、競合との差も縮まらない前提だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 寮事業(学生寮・社員寮):数量 53,000(寮の室数(室))× 価格 172(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 913 億円・営業利益 103 億円。5.3 万室×1.34 倍・利益率 11.3%
- ドーミーイン事業(ビジネスホテル):数量 23,500(客室数(室、推定))× 価格 650(1 室当たり年間売上(万円。稼働率と客室単価、宿泊以外の売上を含む))→ 売上 1,527 億円・営業利益 298 億円。2.35 万室×1.34 倍・利益率 19.5%
- リゾート事業:数量 6,000(客室数(室))× 価格 1,625(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 975 億円・営業利益 54 億円。6,000 室×1.34 倍・利益率 5.5%
- 不動産流動化:数量 3.0(売却件数(件))× 価格 117(1 件当たり売上(億円))→ 売上 352 億円・営業利益 23 億円。年 3 件
- シニアライフ・その他:数量 300(運営拠点数(推定、か所))× 価格 1.47(1 拠点当たり売上(億円、推定))→ 売上 442 億円・営業利益 0 億円。拠点 300 か所
倍率:事業の純利益 270 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.35 倍、時価総額 3,874 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:寮の安定と、ホテルが物価並みに稼ぐ筋書きが最も起こりやすい。物件売却による資金回収も続く前提。
やや悲観 22% ホテルの供給が増え、客室単価が伸び悩む 10 年 利益 155 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,187 円1,990 億円
ホテルの供給が増え、ドーミーインの客室単価の上昇が物価に追いつかない。客室数は 2.15 万室にとどまり、利益率は 15% に下がる。寮は大学の入学者の減少で 4.85 万室で止まり、利益率も 9% 台に下がる。リゾートは稼働率が戻らず利益率 3%。物件売却は年 2 件に減る。営業利益は 250 億円ほどと、今の水準とほぼ並ぶ。ROE は資本コストに届かず、成長しても価値は増えない。ドーミーインの新規開業は止まらないが、開業した物件は利益を出しにくく、投資に見合う稼ぎが減る。会社は配当を守るために自己資本をためこみ、資本の効率が下がる 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.8=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 寮事業(学生寮・社員寮):数量 48,500(寮の室数(室))× 価格 167(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 810 億円・営業利益 77 億円。4.85 万室×1.30 倍
- ドーミーイン事業(ビジネスホテル):数量 21,500(客室数(室、推定))× 価格 606(1 室当たり年間売上(万円。稼働率と客室単価、宿泊以外の売上を含む))→ 売上 1,303 億円・営業利益 196 億円。2.15 万室×1.25 倍・利益率 15%
- リゾート事業:数量 5,300(客室数(室))× 価格 1,553(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 823 億円・営業利益 25 億円。5,300 室×1.28 倍・利益率 3%
- 不動産流動化:数量 2.0(売却件数(件))× 価格 114(1 件当たり売上(億円))→ 売上 228 億円・営業利益 11 億円。年 2 件
- シニアライフ・その他:数量 285(運営拠点数(推定、か所))× 価格 1.43(1 拠点当たり売上(億円、推定))→ 売上 408 億円・営業利益 0 億円。拠点 285 か所
倍率:ROE 5.6% は k 8% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.1 倍で、伸びても価値は増えない。ホテルの供給競争で新規投資が稼がない筋書きなので、上限の約 8 割(9.5 倍)に置いた。
確率:景気の波とホテルの供給競争は 10 年のうちに一度は来る。コロナ前の 2020/03 期にも営業利益が 3 割落ちた実績がある。
悲観 10% 景気の悪化と過剰供給で、ホテルの利益が崩れる 10 年 利益 34 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 293 円267 億円
景気の悪化とホテルの過剰供給が重なる。ドーミーインは客室単価が頭打ちになり、稼働率も落ちて利益率が 8% に崩れる。寮は大学・企業の寮の外注が逆に縮み、4.2 万室へ減って利益率 7%。リゾートは赤字に落ちる。物件売却は不動産市況の悪化で年 1 件に減り、資金回収が詰まる。営業利益は 70 億円ほどで、2023/03 期の水準に近い。賃借物件の家賃が固定費として残り、利益を圧迫する。会社は新規開業を止めて財務の防衛に回り、配当も据え置く。寮の安定は残るが、ホテルの傷を埋めきれず、成長企業ではなくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.5=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 寮事業(学生寮・社員寮):数量 42,000(寮の室数(室))× 価格 157(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 658 億円・営業利益 46 億円。4.2 万室×1.22 倍・利益率 7%
- ドーミーイン事業(ビジネスホテル):数量 19,500(客室数(室、推定))× 価格 534(1 室当たり年間売上(万円。稼働率と客室単価、宿泊以外の売上を含む))→ 売上 1,040 億円・営業利益 83 億円。1.95 万室×1.10 倍・利益率 8%
- リゾート事業:数量 4,800(客室数(室))× 価格 1,395(1 室当たり年間売上(万円))→ 売上 670 億円・営業利益 −13 億円。4,800 室×1.15 倍・赤字
- 不動産流動化:数量 1.0(売却件数(件))× 価格 105(1 件当たり売上(億円))→ 売上 105 億円・営業利益 3 億円。年 1 件
- シニアライフ・その他:数量 250(運営拠点数(推定、か所))× 価格 1.32(1 拠点当たり売上(億円、推定))→ 売上 330 億円・営業利益 0 億円。拠点 250 か所
倍率:ROE 1.4% は k 以下で、上限は 1÷k = 12.1 倍。構造的な負けで純利益 34 億円。床は稼ぐ力(34 億円 ÷ k 8% = 約 410 億円)で測り、PER 8 倍(約 270 億円)に置いた。構造的に負けた姿で利益の振れも大きいので、やや悲観の 9.5 倍より低く置く(1÷k の約 6.5 割)。売れる資産の内訳(自社保有と賃借の比率)が確かめられていないので、資産の床は使わない。
確率:2021/03 期の赤字に近い打撃と過剰供給が重なる構造的な負けで、可能性は低いが 10 年では無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
寮事業(学生寮・社員寮)
学生会館ドーミー・社員寮の運営。食事付きで 1 室から契約できる。
| 数量寮の室数(室) | 価格1 室当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45,082 | 129 | 579 | 62 |
| 10 年後 中立 | 53,000 | 172 | 913 | 103 |
取り方:26/03 期初の室数 45,082(27/03 期初 47,225 から増加分 2,143 を引いた)で売上 579.2 億円を割った。室数は実数、1 室当たり売上は食事・管理の料金で、物価で上がる。
ドーミーイン事業(ビジネスホテル)
温泉大浴場と朝食で知られるビジネスホテル。全国の主要都市と観光地に展開。
| 数量客室数(室、推定) | 価格1 室当たり年間売上(万円。稼働率と客室単価、宿泊以外の売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19,000 | 485 | 922 | 191 |
| 10 年後 中立 | 23,500 | 650 | 1,527 | 298 |
取り方:約 2 万室(中計の進捗)から期中平均を約 1.9 万室と推定し、売上 922 億円を割った。RevPAR(1 室当たり売上)に 365 日を掛けた額に宿泊以外の売上が加わり、稼働率の上下は 1 室当たり売上に入る。
リゾート事業
共立リゾートの名で運営する観光地の高単価ホテル・旅館。
| 数量客室数(室) | 価格1 室当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,700 | 1,213 | 570 | 20 |
| 10 年後 中立 | 6,000 | 1,625 | 975 | 54 |
取り方:中計の進捗 4,700 室で売上 570.3 億円を割った。稼働率 82.1%(26/03 実績)。1 室当たり売上は食事を含む高単価で、物価で上がる。
不動産流動化
開発したホテル・寮を投資家などに売却して資金を回収する取引。
| 数量売却件数(件) | 価格1 件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 88 | 350 | 23 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 117 | 352 | 23 |
取り方:26/03 期は 4 件で売上 350 億円・営業利益 23 億円。件数は毎年そろうとは限らず、開発の資金回収の手段として使う。
シニアライフ・その他
シニア向け住宅やビル管理など。開示が薄く推定で置く。
| 数量運営拠点数(推定、か所) | 価格1 拠点当たり売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1.10 | 330 | 0 |
| 10 年後 中立 | 300 | 1.47 | 442 | 0 |
取り方:連結売上 2,752 億円から 4 セグメントの 2,422 億円を引いた残り約 330 億円。拠点数は推定。営業利益は開示が無く、本部費と合わせて調整欄に置く。
リスクと懸念
ドーミーインの景気・インバウンド依存
利益の約 6 割がドーミーインから出る。景気の悪化や感染症で客室稼働が落ちれば、2021/03 期のように赤字に落ちる。インバウンドが韓国・東南アジアへ流れるリスクも同じ部分に効く。
ホテルの供給過剰と単価の頭打ち
東横イン・アパホテルなどの大手と外資系が各地で開業を続ける。供給が増えれば客室単価の上昇が物価に追いつかず、会社が毎年 1,000 室規模で開く新規ホテルの利益率を削る。人件費と食材費の上昇も重なる。
不動産流動化への依存
完成した物件を投資家に売って資金を回収する仕組みで、26/03 期は 4 件・営業利益 23 億円を稼いだ。不動産市況が崩れて売れなくなれば、借金が増えるか開発を止めるしかない。売却益は毎期あるとは限らない。
賃借の固定費
自社保有と賃借の比率は確認できていない。賃借物件が多ければ、需要が落ちても家賃は払い続ける固定費になる。新リース会計基準(2028/03 期から)で貸借対照表の形も変わり、自己資本比率は見かけ下がる。
寮の大学入学者・企業の寮の縮小
18 歳人口は減り続ける。大学が定員割れで寮を縮小するか、企業が社員寮を廃止して手当に切り替えれば、数量が減る。会社は外注の流れで増やしているが、構造が逆に動けば痛い。
金利上昇と純有利子負債
純有利子負債は 906 億円(自己資本の 0.62 倍)。借り換えのたびに金利が 3.5% 近くへ上がると、10 年で利払いが約 23 億円増える。転換社債の転換で財務は軽くなったが、開発の資金が増えれば再び膨らむ。
今後の分かれ目
- ドーミーインの RevPAR(1 室当たり売上)が物価を超えて上がり続ける
- ホテルの利益率が 2 割を保ち、10 年のやや楽観・楽観に近づく。
- 新規ホテルの開業で稼働率が下がる
- 供給過剰が始まったサインで、10 年のやや悲観に近づく。
- 不動産流動化が年 2 件を割る
- 資金回収が詰まり、開発のペースを落とすか借金が増える。やや悲観の筋書きに寄る。
- 寮の期初稼働率が 97% を割る
- 学生・企業の寮の需要が構造的に落ちた可能性。悲観の筋書きに寄る。
- 配当性向を 30% 超に上げ、自社株買いを始める
- 資本の使い方が改まり、ROE が資本コストを超えて上がる。倍率が上がる方向。
- 景気後退や感染症で宿泊が落ち込む
- 2021/03 期のような赤字に落ち、10 年の悲観に近づく。
見ておくもの
- ドーミーインの RevPAR と稼働率の四半期の推移
- 寮の期初稼働率と室数(5 万室目標)
- 不動産流動化の件数と売却益
- 純有利子負債と自己資本比率の推移
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の 1,455 億円に 10 年の純利益を足し、還元を引いて流した(ROE は結果)。資本コストは基本 7.5% に 4 つの目安の +0.75% を足した 8.25%。長期 g は 4%(k−g ≥ 3.5% を守る)。中立は ROE が k をわずかに超えるので、1÷k の 12.1 倍を下限に、正当化 PER の上限にほぼ重なる 12.2 倍。やや楽観・楽観は上限の約 9 割。やや悲観・悲観は ROE が k 以下で、上限 1÷k の約 8 割と稼ぐ力に置いた。今の PER・PBR・過去の倍率は使っていない。新リース会計基準(2028/03 期)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→15.67 倍・やや楽観 PER 12.5→15.2 倍・中立 PER 12.2→14.35 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。