結論
ベルーナは、カタログ通販から出発した総合通販の会社だ。いまの利益を稼ぐのは通販ではない。ホテルを中心とするプロパティ事業と、カードローンの貸金を含むデータベース活用事業の2つで、営業利益165億円の大半を占める。筋書きの中心は、借入でホテルを増やし続ける路線がどこまで報われるかである。
筆者の結論は、今の1,016億円という時価総額は10年先の価値と大きくは離れていない、というものだ。中立で見れば価値はおおむね今の水準に収まり、確率で重みをつけるとやや下回る。割安とは言えないが、割高と切り捨てる水準でもない。
強みは、通販で集めた顧客の名簿と、それを現金に変える仕組みを持つことだ。貸金は規制に守られた安定収益で、ホテルは訪日客の波に乗った。だがアパレル通販は競争が厳しく、利益はほぼゼロだ。呉服も市場が縮んでいる。
気になるのは資本の使い方だ。純有利子負債は1,093億円で、時価総額を上回る。年間の設備投資は359億円と、営業キャッシュフローを大きく超えた。ホテルは景気と為替に左右される商売で、借金で買う分だけ下振れが重い。
創業者が率いる会社で、フレンドステージが約43%を持つ。経営の意思決定は速いが、少数株主の目線で資本効率を問う力は弱い。中計は営業利益250億円を掲げるが、10年かけてそこへ届くかどうか、というのが筆者の見方だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を買い増したくなる理由と、待ちたくなる理由が同居している。
魅力は、通販の顧客名簿から貸金と受託という現金を生む事業を作ったことだ。貸金は規制の内側で長く稼ぐ。ホテルも、立地のいい資産を自前で持てば、物価の上昇とともに収益が伸びる。
待ちたくなる理由は、資本の使い方にある。稼いだ利益のほとんどを、借入を足してホテルにつぎ込んでいる。ホテルの利回りが借入の金利を十分に上回る保証はない。金利が上がる世界では、なおさら慎重になる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、目に見える営業利益よりずっと小さい。ホテルの設備投資で、稼いだ現金がほぼ消えているからだ。
安全域という点でも物足りない。資産は厚いが、その分借金も厚い。ホテルが不況で稼働を落とすと、利益が借金の利払いに吸われる。筆者は、中立の価値が今と同じ水準で、悪いほうに重みがある以上、安全域は小さいとみる。
10年後にもこの会社が存在するのは確かだ。ただ、今より強い会社になっているかは、ホテルの採算と、貸金の規制次第である。
何で稼ぐ会社か
ベルーナは、女性向けファッションを軸に、食品、化粧品、看護師向け用品、呉服まで扱う総合通販の会社だ。カタログとネットで買い手を集め、同じ顧客に次々と別の商品を売る。ここで貯まる顧客の名簿が、会社全体の土台になっている。
いま最大の売上は、アパレル・雑貨事業の約690億円だ。ただ利益はほぼゼロ。次に大きいのがプロパティ事業の約500億円で、こちらは営業利益86億円と、全社の稼ぎ頭になった。国内外のホテルを自社で持ち、運営する。「グランベルホテル」のブランドで札幌・小樽・大阪の都市型と、温泉地のリゾート型を展開し、年2軒ほどのペースで増やす意向を社長が示している。不動産の賃貸・再生、ゴルフ場、地熱発電もここに入る。
データベース活用事業は売上179億円で営業利益45億円と、利益率が際立って高い。中身は、カタログの封入・同送サービス、通販の物流とコールセンターの受託、そして子会社サンステージの貸金(カードローン)だ。利益の大半は貸金だとみられる。
このほか、グルメ(焼肉店の運営も含む)、化粧品・健康食品、看護師向けのナース関連、呉服のさが美がある。数は多いが、1つ1つは小さい。
つまりこの会社は、通販の名簿を使って、ホテルと貸金という別の稼ぎ方に資本を移している最中だ。通販の会社として見ると誤る。
優良さと弱いところ
事業の質は、まだら模様だ。いちばん強いのは貸金で、残りは普通かそれ以下である。
貸金は、通販で集めた顧客を相手に新規客を安く獲得でき、利益率が高い。ただ、貸金業法の総量規制や上限金利の見直しで、制度が変われば利益が削られる。強さの源は堀というより、規制の枠内で積み上げた運用の腕だ。
ホテルは、立地と運営力が勝負になる。札幌と大阪の都市型は好調で、リゾートも取得が進んだ。だが、ホテルは同業の参入が続き、値段は市場が決める。他社にまねされにくい強みとは言いにくい。
アパレル通販は、ZOZOやSHEIN、ユニクロのような相手と戦う。紙のカタログで稼ぐ時代は終わりに近づき、利益が出ない状態が続く。呉服は和装の需要が減り続けている。
資本効率は並みだ。自己資本利益率は過去10年の中央値で約7%、いまは7.6%。資本コストを下回る年も多い。借入で資産を積み、利益を乗せる経営だから、数字は派手にならない。
経営はオーナー色が強い。決断は速く、M&Aも多かった。ただ、買った事業の中には、さが美やアパレルの買収のように、期待ほど稼げていないものもある。筆者は、この会社が資本を大事に使うかどうかを、設備投資の採算で確かめたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社には、1つの業界が当てはまらない。事業ごとに景色が違う。
アパレル通販は、国内の物販EC市場が約15兆円で、EC化率は10%に届かない。市場は伸びるが、勝つのはZOZOやアマゾンのような大きな場だ。ベルーナが得意とする中高年向けのカタログ通販は、千趣会などと同じく、紙の縮小という逆風にある。買い手の人口も減る。
ホテルは、訪日客の増加が追い風だった。ただ、客室の新設が続く都市部では、為替や景気が崩れた時に稼働と単価が同時に落ちる。物価が年3%で上がる世界では、宿泊単価も上がりやすい。一方で、人件費と水光熱費も同じように上がる。運営力の差が利益率の差になる。
貸金は、消費者金融の市場が成熟している。規制の枠が固定されているので、伸びは鈍いが安定している。新規客を安く取れる会社だけが利益を出せる。通販の顧客名簿は、その点で有利だ。
呉服は、和装の需要が長期で縮んでいる。さが美を傘下に持つが、ここは成長の事業ではない。
業界再編の動きも見ておきたい。通販やアパレルでは弱い会社の統合が続く。ホテルは、不動産ファンドや異業種の参入で、買い手が増えて取得価格が上がった。ベルーナは買う側だが、高値づかみのリスクを抱える。
資本政策と M&A
還元の方針は、純資産に対する配当率(DOE)1.5%を下限とし、配当性向は35%をめどとする。2026年3月期の配当性向は約32%で、8期続けて増やす予定だ。自社株買いは、2025年3月期にわずかにあったが、2026年3月期はなかった。
投資の中心はホテルだ。2026年3月期の設備投資は359億円で、うち国内ホテルが342億円。営業キャッシュフローの185億円を大きく上回り、差は借入で埋めた。借入には、純資産を前期末の75%以上に保つ約束がついている。
M&Aは多い。2018年にさが美グループをTOBで傘下に入れ、2021年にセレクト、2022年に物流のレーベルを買った。2023年には地熱発電の最上ジオエナジーに出資した。
筆頭株主はフレンドステージで、持ち株は約43%。これは創業者の安野清社長が代表を務める会社だ。第三者に買収される可能性は低い。政策保有株や不動産に隠れた含み益があるかどうかは、開示から確かめられなかった。
株主優待は年約1.1億円(会社の費用ベース。優待1,000円相当×年2回×株主約7.6万人(額面1.5億円)×使われ率7割)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+11億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホテルが利益の柱として定着する。札幌・小樽・大阪の都市型は稼働が高く、温泉地のリゾートも買収後の改装で単価が上がる。年2軒のペースで増やしても、運営の型ができているので、採算は崩れない。客室は10年で倍になり、営業利益率も17%台を保てる。
貸金は、新規客の獲得が効率的で、貸付残高が伸び続ける。規制が現状から大きく変わらなければ、利益は安定して積み上がる。受託事業は、物流とコールセンターで新しい荷主を取り込み、通販のカタログが縮んでも補える。
アパレルは、赤字の事業を絞り込むことで、利益が出る事業に変わる。ナース関連やグルメなど、小さくても利益が出る事業は着実に伸びる。中計の営業利益250億円は、10年の途中で達成され、その先も伸びが続く。
創業者が大株主だから、意思決定は速い。ホテルの取得も、機会が来た時に素早く動ける。借入で買った資産は物価とともに価値が上がり、含み益が積み上がる。配当は毎年増える。
この見立てでは、10年後の営業利益は380億円を超え、時価総額は3,000億円近くになる。今の水準からは3倍に近い。
慎重な見方
ホテルは、買った時が天井だった可能性がある。訪日客の増加は、為替と景気で簡単に止まる。都市部で客室が増え続ければ、単価は上がりにくくなる。物価が上がれば、人件費と光熱費は先に上がる。利益率は17%から大きく下がるだろう。
借入はすでに1,500億円で、金利が上がる世界では利払いが重くなる。純資産を前期末の75%以上に保つ約束があるため、資産の減損が出れば、追加の資金調達や売却を迫られる。
貸金は規制が命綱だ。総量規制や上限金利の見直しで、収益の源が突然細る。データベース活用事業の営業利益は、前期に12.5%減っている。受託の事業も、人件費の上昇と新設コールセンターの費用で減益だった。
アパレルは、赤字からなかなか抜け出せない。SHEINやZOZOに勝つ道筋が見えず、カタログという媒体は縮む。呉服は人口とともに縮む。
大株主が43%を持つ会社では、少数株主の声は届きにくい。投資の採算が悪くても、拡大路線は止まらない。10年後、ホテルの含み損と貸金の縮小が重なれば、今の時価総額を下回る価値になる。
どちらに重みを置いたか
中立は、今の時価総額に近い価値になる。上振れの理由は具体的だが、下振れの理由も同じくらい具体的だ。決め手は、借入の重さと、ホテルの景気への弱さにある。強気は物価とともにホテルの価値が上がるとみる。慎重な見方は、金利と減損のリスクを突く。
筆者は、悪いほうに少し重みを置いた。ホテルは参入が続き、貸金は規制の影響を受けやすく、通販は縮む。強みが1つに偏っている会社は、悪い筋書きの傷が深い。だから、やや悲観と悲観の確率を合わせて4割近くとした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,853 円1,784 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 473 円455 億円)。 今の値に割り戻すと 1,180 円1,136 億円、今との差 +15.3%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,416 円3,288 億円 | 739 円711 億円 | +306.1% | +15.0% | 332 円320 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,771 円2,667 億円 | 635 円611 億円 | +232.9% | +12.8% | 681 円656 億円 |
| 中立 | 34% | 2,260 円2,176 億円 | 541 円521 億円 | +173.9% | +10.6% | 953 円917 億円 |
| やや悲観 | 26% | 796 円766 億円 | 320 円308 億円 | +9.1% | +0.9% | 290 円279 億円 |
| 悲観 | 12% | 416 円400 億円 | 162 円156 億円 | −43.5% | −5.6% | 69 円67 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,853 円1,784 億円 | 473 円455 億円 | +127.3% | +8.6% | 2,325 円2,239 億円 |
今の株価時価総額 1,023 円985 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% ホテルと貸金がそろって伸びる 利益 246 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,416 円3,288 億円
ホテルの運営力が評価され、客室は倍の1万室規模に届く。価格は物価を上回って上がり、営業利益率は17%を保つ。貸金は残高が約2割増え、規制も現状のまま続く。通販は不採算を整理し、小さな黒字になる。ナース関連、グルメ、化粧品は着実に伸びる。借入は増えるが、利益の伸びがそれを上回り、ROEは9%近くまで戻る。中計の250億円は途中で超え、配当は毎年増える。創業者の資本配分が結果として報われる姿である。この筋書きでは、買収で積み上げた資産が物価とともに値上がりし、借入の重さがむしろ武器になる。貸金は規制が動かず、通販の名簿は新しい事業を育てる土台であり続ける。
- アパレル・雑貨:数量 560(購入顧客数(万人・推定))× 価格 1.61(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 899 億円・営業利益 32 億円。数量-3%・価格+34%
- 専門通販(グルメ・化粧品・ナース・その他):数量 440(購入顧客数(万人・推定))× 価格 2.31(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 1,014 億円・営業利益 61 億円。数量+26%・価格+34%
- 呉服関連:数量 34.0(取引顧客数(万人・推定))× 価格 7.57(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 257 億円・営業利益 18 億円。数量-15%・価格+34%
- プロパティ(ホテル・不動産):数量 10.0(客室数(千室・推定))× 価格 137(1室あたり年間売上(億円/千室、不動産などの売上を含む))→ 売上 1,372 億円・営業利益 233 億円。数量+100%・価格+38%
- データベース活用(貸金・受託):数量 400(貸付残高相当(億円・実質、推定))× 価格 0.75(残高あたり年間売上(億円))→ 売上 300 億円・営業利益 81 億円。数量+25%・価格+34%
倍率:事業の純利益 246 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.97 倍、時価総額 3,191 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の材料は具体的だが、借入の重さと制度リスクがあり、確率は低く置いた。
やや楽観 20% ホテルは順調、貸金も堅調 利益 205 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,771 円2,667 億円
ホテルは年1軒ほどのペースで増え、客室は8割増える。単価は物価並みに上がり、利益率は16%になる。貸金は残高が2割弱伸び、受託事業は新規荷主で減益を止める。アパレルは小幅の黒字、専門通販は利益率を5%台に上げる。中計の250億円は10年のうちにほぼ達成され、ROEは8%まで改善する。借入は残るが、金利の上昇で利益が削られる分は想定内に収まる。会社の計画が大きく外れず、ホテルの拡大と貸金の安定がかみ合う。通販の縮小は別の事業の伸びで穴埋めされ、経営の資本配分も及第点を保つ。10年たつと、ホテルは会社の最大の稼ぎ手になり、通販は名簿を供給する土台という位置づけに変わっている。
- アパレル・雑貨:数量 545(購入顧客数(万人・推定))× 価格 1.58(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 862 億円・営業利益 24 億円。数量-5%・価格+32%
- 専門通販(グルメ・化粧品・ナース・その他):数量 410(購入顧客数(万人・推定))× 価格 2.31(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 945 億円・営業利益 51 億円。数量+17%・価格+34%
- 呉服関連:数量 36.0(取引顧客数(万人・推定))× 価格 7.57(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 273 億円・営業利益 18 億円。数量-10%・価格+34%
- プロパティ(ホテル・不動産):数量 9.0(客室数(千室・推定))× 価格 135(1室あたり年間売上(億円/千室、不動産などの売上を含む))→ 売上 1,217 億円・営業利益 195 億円。数量+80%・価格+36%
- データベース活用(貸金・受託):数量 390(貸付残高相当(億円・実質、推定))× 価格 0.75(残高あたり年間売上(億円))→ 売上 292 億円・営業利益 73 億円。数量+22%・価格+34%
倍率:事業の純利益 205 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.52 倍、時価総額 2,567 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルが順調に増え、貸金が堅調という、会社が掲げる計画に近い筋書き。
中立 34% ホテルは増えるが、資本コスト並みの稼ぎ 利益 166 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,260 円2,176 億円
ホテルは客室が5割増え、単価は物価並みに上がるが、競合が増えて利益率は15%台に落ち着く。貸金は伸びが鈍く、利益は穏やかに増える。アパレルはほぼ収支とんとん、呉服は縮む。専門通販はナースとグルメが支え、利益率は5%に届かない。全社の営業利益は263億円。借入の金利が上がり、純利益の伸びは営業利益より小さい。稼いだ利益の大半をホテルなどに再投資するため、ROEは7%弱で資本コストにわずかに届かない。会社の計画ほどは伸びないが、悪くもない。ホテルの稼ぎは借入の金利と釣り合う程度で、株主にとっては、持ち続けて配当を受け取る程度の味わいになる。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.1億円×10年)を足している。
- アパレル・雑貨:数量 520(購入顧客数(万人・推定))× 価格 1.56(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 810 億円・営業利益 16 億円。数量-10%・価格+30%
- 専門通販(グルメ・化粧品・ナース・その他):数量 385(購入顧客数(万人・推定))× 価格 2.31(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 887 億円・営業利益 43 億円。数量+10%・価格+34%
- 呉服関連:数量 32.0(取引顧客数(万人・推定))× 価格 7.57(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 242 億円・営業利益 15 億円。数量-20%・価格+34%
- プロパティ(ホテル・不動産):数量 7.5(客室数(千室・推定))× 価格 133(1室あたり年間売上(億円/千室、不動産などの売上を含む))→ 売上 999 億円・営業利益 155 億円。数量+50%・価格+34%
- データベース活用(貸金・受託):数量 380(貸付残高相当(億円・実質、推定))× 価格 0.75(残高あたり年間売上(億円))→ 売上 285 億円・営業利益 70 億円。数量+19%・価格+34%
倍率:事業の純利益 166 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,075 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルは増えるが利益率は競争で落ち着き、通販は縮む。最も起こりやすい姿。
やや悲観 26% ホテルの買い過ぎと貸金の規制が重なる 利益 75 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 796 円766 億円
訪日客と景気が伸び悩み、ホテルは客室が増えず、単価も物価に追いつかない。利益率は11%に下がる。貸金は規制の影響で残高が伸びず、金利も下がる。アパレルは赤字が続き、通販のカタログは縮む。借入は減らず、金利の上昇が純利益を大きく削る。配当は最低限に抑え、自己資本は減損で伸びない。ROEは3%台で、資本コストを大きく下回る。投資家は、利益の質に厳しい目を向ける。悪い材料が1つ起きただけでも、借入の重さのせいで傷が深くなる。ホテルの含み損の議論が表に出て、経営が拡大から守りに切り替わる。守りに入った会社は配当を最低限にとどめ、借入の返済を急ぐため、株主が受け取る額も細くなる。
- アパレル・雑貨:数量 480(購入顧客数(万人・推定))× 価格 1.46(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 702 億円・営業利益 −4 億円。数量-17%・価格+22%
- 専門通販(グルメ・化粧品・ナース・その他):数量 340(購入顧客数(万人・推定))× 価格 2.20(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 748 億円・営業利益 28 億円。数量-3%・価格+28%
- 呉服関連:数量 28.0(取引顧客数(万人・推定))× 価格 7.00(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 196 億円・営業利益 8 億円。数量-30%・価格+24%
- プロパティ(ホテル・不動産):数量 6.0(客室数(千室・推定))× 価格 124(1室あたり年間売上(億円/千室、不動産などの売上を含む))→ 売上 746 億円・営業利益 82 億円。数量+20%・価格+25%
- データベース活用(貸金・受託):数量 340(貸付残高相当(億円・実質、推定))× 価格 0.67(残高あたり年間売上(億円))→ 売上 228 億円・営業利益 46 億円。数量+6%・価格+20%
倍率:事業の純利益75億円、ROE 3.5%。ROEがkを大きく下回るので、上限の1/kの6割ほどに置いた。稼ぐ力(75億円÷k)の880億円を下回る値で、稼ぐ力の範囲に収まる。
確率:ホテルの参入増と金利上昇、貸金の規制強化のどれかが効く筋書き。強みが偏る会社なので重めに置いた。
悲観 12% 借入で買ったホテルが重荷になり、貸金も細る 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 416 円400 億円
ホテルは都市部の供給過剰と為替の逆転で稼働が落ち、減損が出る。借入の約束を守るため、いくつかを売却に出す。貸金は総量規制や上限金利の見直しで、残高と利益率が縮む。アパレルは大きな赤字で、カタログ事業は撤退に向かう。呉服は利益が消える。金利の上昇で利払いが重く、純利益はほぼゼロになる。配当は減らさざるを得ない。ホテル・不動産・貸付金を売って借入を返したあとの株主の取り分が、価値の下限になる。この筋書きでは、いったん拡大した事業の多くが重荷に変わり、10年のあいだに会社の姿が大きく変わる。創業者支配のもとで再建の判断が遅れることも、傷を深くする。
- アパレル・雑貨:数量 400(購入顧客数(万人・推定))× 価格 1.32(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 527 億円・営業利益 −16 億円。数量-30%・価格+10%
- 専門通販(グルメ・化粧品・ナース・その他):数量 300(購入顧客数(万人・推定))× 価格 1.89(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 567 億円・営業利益 11 億円。数量-14%・価格+10%
- 呉服関連:数量 22.0(取引顧客数(万人・推定))× 価格 6.00(1人あたり年間購入額(万円))→ 売上 132 億円・営業利益 0 億円。数量-45%・価格+6%
- プロパティ(ホテル・不動産):数量 5.5(客室数(千室・推定))× 価格 111(1室あたり年間売上(億円/千室、不動産などの売上を含む))→ 売上 612 億円・営業利益 37 億円。数量+10%・価格+12%
- データベース活用(貸金・受託):数量 280(貸付残高相当(億円・実質、推定))× 価格 0.56(残高あたり年間売上(億円))→ 売上 157 億円・営業利益 22 億円。数量-12%・価格+0%
倍率:構造的な負けの筋書き。稼ぐ力(純利益÷k)は小さく、価値の下限は売れる資産を処分して借入を返したあとの株主の取り分で決まる。今の自己資本1,513億円に、投げ売りと減損の後に残る約26%を掛けた。EV÷営業利益は約51倍に達するが、これは利益が小さいためで、EVの面でも倍率は意味を持たず、借金の重さがそのまま価値を削る。
確率:借入が重く、ホテルの景気への弱さと貸金の規制が重なる構造的な負け。景気の谷だけでなく10年の間に起こる確率を見た。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アパレル・雑貨
女性向けを中心とした総合通販。カタログとネットで衣料・雑貨を売る。
| 数量購入顧客数(万人・推定) | 価格1人あたり年間購入額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 575 | 1.20 | 689 | −4 |
| 10 年後 中立 | 520 | 1.56 | 810 | 16 |
取り方:顧客数は未開示。売上689億円を、1人あたり年間購入額を1.2万円前後と推定して割り戻した。営業利益は有報のセグメント利益(−4億円)。
専門通販(グルメ・化粧品・ナース・その他)
食品、化粧品・健康食品、看護師向け用品、焼肉店などの運営。
| 数量購入顧客数(万人・推定) | 価格1人あたり年間購入額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 1.72 | 602 | 25 |
| 10 年後 中立 | 385 | 2.31 | 887 | 43 |
取り方:グルメ337億円、化粧品健康食品114億円、ナース関連123億円、その他28億円の合計。顧客数は未開示で、1人あたり約1.7万円と推定。営業利益は4事業の合計。
呉服関連
さが美などの呉服・和装の販売。
| 数量取引顧客数(万人・推定) | 価格1人あたり年間購入額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 5.65 | 226 | 14 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 7.57 | 242 | 15 |
取り方:売上226億円、利益14億円(有報)。単価の高い商品なので、顧客数を40万人、1人5.65万円と推定。
プロパティ(ホテル・不動産)
国内外のホテル運営、不動産の賃貸・再生、ゴルフ場、地熱発電。
| 数量客室数(千室・推定) | 価格1室あたり年間売上(億円/千室、不動産などの売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 99 | 497 | 86 |
| 10 年後 中立 | 7.5 | 133 | 999 | 155 |
取り方:客室数は未開示。札幌605室、小樽159室などの規模感から約5千室と推定。売上497億円には不動産・ゴルフ・発電も含むため、1室あたりの数字は高めに出る。営業利益は有報(86億円、前年比+63%)。 数量は実物(客室数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
データベース活用(貸金・受託)
貸金(カードローン)と、カタログ封入・通販の物流・コールセンターの受託。
| 数量貸付残高相当(億円・実質、推定) | 価格残高あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 320 | 0.56 | 179 | 45 |
| 10 年後 中立 | 380 | 0.75 | 285 | 70 |
取り方:営業貸付金は2024年3月末で約317億円(開示)。受託の売上も含むため、残高あたり売上は便宜上の比率。営業利益は有報(45億円、前年比−12.5%)。
リスクと懸念
借入の重さと金利
有利子負債は約1,500億円で、現金366億円を引いても時価総額を上回る。ホテルの設備投資は営業キャッシュフローを超え、借入で埋めてきた。借り換えで金利が上がると、利益が削られる。純資産を前期末の75%以上に保つ財務の約束もあり、減損が出ると身動きが取りにくくなる。
ホテルの景気・為替への弱さ
ホテルは、訪日客と国内の旅行需要に利益が左右される。都市部では新設が続き、単価が下がる可能性がある。為替が円高に振れると、訪日客の増加が止まりやすい。人件費と光熱費の上昇も利益率を圧迫する。
貸金の規制
貸金は、総量規制や上限金利の見直しといった制度の変更に弱い。利益の大半を占めるため、規制が強まれば全社の利益が大きく崩れる。データベース活用事業の利益は前期に12.5%減っている。
アパレル通販の赤字体質
アパレル・雑貨は売上の3割を占めるが、利益はほぼゼロ。SHEIN、ZOZO、ユニクロなどの競合に対し、紙のカタログに頼る買い手層が縮んでいる。撤退や縮小のコストが先に出る恐れがある。
創業者支配とガバナンス
フレンドステージが約43%を持ち、代表は創業者の社長。意思決定は速いが、少数株主の目線で資本効率が厳しく問われにくい。ホテル拡大が採算より先に進むリスクがある。
M&Aの実行
さが美やセレクトなど、買収した事業には利益の出ていないものがある。ホテルの取得も、価格の上昇で割高になる恐れがある。減損が出れば、財務の約束にも響く。
今後の分かれ目
- ホテルの稼働と単価が物価を上回って伸び続けた場合
- 営業利益率は17%台を保ち、中計の250億円は早期に達成できる。強気の筋書きに近づく。
- 貸金の規制が強化され、上限金利や総量規制が見直された場合
- データベース活用の利益が大きく縮み、やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- 金利が想定以上に上がった場合
- 借入の利払いが利益を削り、ホテルの拡大を止める必要が出る。やや悲観に寄る。
- アパレルが不採算の整理を進めて黒字化した場合
- 全社の利益が数十億円押し上げられ、やや楽観に近づく。
- 自社株買いや配当を大きく増やす方針に転じた場合
- 資本効率への意識が高まり、ROEの改善が早まる。
- ホテルの取得を止めて、借入の返済を優先した場合
- 成長は鈍るが、財務の安全域が広がり、悪い筋書きの確率が下がる。
見ておくもの
- ホテルの稼働率・客室単価・新規取得の件数
- 営業貸付金の残高と貸金の規制の動き
- 有利子負債と財務の約束(純資産75%)の余裕
- アパレル・雑貨の営業利益
- 配当性向・DOEと自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額(約1,016億円)や市場のPERを見て倍率を決めていない。先にセグメントごとに数量と価格を積み、10年後のROEと資本コスト8%(基本7.5%+quality 1.0%)から、正当化PERの上限を計算して、利益の質に応じて置いた。ROEが資本コストを下回る筋書きでは、PERは1/kまでとした。結果として中立は今と近い水準になったが、これは寄せたのではなく、ホテルの稼ぎが資本コスト並みという計算の帰結である。新リース会計は2028年3月期から効くが、ホテルは自社保有が中心で影響は小さい。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→12.97 倍・やや楽観 PER 10→12.52 倍・中立 PER 9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality 合計+1.0%を加えた。個別のリスクは筋書きと確率に入れた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。