結論
大成建設はスーパーゼネコン4社の一角で、2026年3月期は売上高2兆891億円・営業利益1,879億円(前期比56.4%増)・純利益1,700億円と過去最高益を記録した。土木事業が営業利益率13.3%で全社最大の利益貢献セグメントとなり、建築事業も2023年に発覚した札幌の超高層ビル施工不良問題(損失240億円、2024年3月期の営業利益率を1.5%まで押し下げた)からの回復で利益率が6.1%まで戻った。2025年には海洋土木に強みを持つ東洋建設を約1,600億円でTOB・完全子会社化し、土木事業で国内最大手級の地位を固めている。
ここでは建築・土木・開発事業の3区分で数量と利益率を積み上げ、その時点のROEと資本コストから妥当な倍率を決めた。今は記録的な受注残高と東洋建設の統合効果が追い風だが、会社が掲げた中期経営計画(2026年度目標:営業利益1,200億円・ROE8.5%程度)を2026年3月期の実績がすでに大きく上回っており、今の高水準がどこまで定着するかが論点になる。10年後は半導体・データセンター需要の一巡後、国内の建設投資そのものが人口減で構造的に細るかどうかで株価の分布が大きく広がる。物価3%の世界では工事単価が10年で約1.34倍に上がり売上と利益は名目で伸びるが、今のROE17.9%は施工不良からの反動増益と好採算工事が重なった山で、中立では10年後10%程度にならす。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎ(資本コスト7.5%を超える分の半分が残る)だけとして出す正当化PERは10年中立で約13.8倍。ROEが資本コストを超えるので下限の1÷k=12.5倍を割らせず、約12.5倍に置いた。今のPER10.8倍・PBR1.94倍はこの中立の目安とおおむね並ぶ水準だが、本社費も物価で増やした確率加重の本質価値は今の時価総額を1割ほど下回り、「やや割高」の水準にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、山岳トンネル・ダム・原子力関連施設で蓄積した技術力と、スーパーゼネコン4社の一角という規模が堀として今後も残るとみられる。東洋建設の買収で土木事業のシェアを積み上げ、洋上風力発電という新しい需要の柱に足場を作った点は、資本配分として説得力がある。再投資に回す分を引いた株主のものになる利益は、選別受注による価格転嫁の定着と開発事業の拡大によって増やせる余地があるが、今のROE17.9%は施工不良からの反動増益と好採算工事が重なった山であり、持続力をそのまま信じるべきではない。
一方で、2023年の施工不良問題と2018年のリニア中央新幹線談合事件という2つのガバナンス・品質管理の傷は、資本配分とは別の経営の弱さを示しており、再発防止の実効性を今後の実績で示す必要がある。東洋建設の統合が計画どおり進むか、のれん・統合費用がどこまで利益を圧迫するかも実績が浅く、わからない部分が相応にある分、確信度を下げて考えるべき会社だと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は「土木事業」「建築事業」「開発事業」の3つの報告セグメントに分かれる。土木事業は2026年3月期の売上高7,202億円・営業利益956億円(営業利益率13.3%)で全社最大の利益貢献セグメントとなり、山岳トンネル・ダム・原子力関連施設・都市部の地下工事などで伝統的に高い技術力を持つ。2025年には海洋土木(マリコン)に強みを持つ東洋建設をTOBで完全子会社化し、洋上風力発電関連工事やフィリピンなど東洋建設が持つ海外ネットワークを取り込むことで、土木事業の国内シェアをさらに積み上げる戦略を描いている。
建築事業は売上高1兆2,744億円・営業利益784億円(営業利益率6.1%)で、都心部の超高層ビル・大型再開発・商業施設・データセンターなどの請負施工が主力。2023年に発覚した札幌の超高層ビル施工不良問題で2024年3月期の営業利益率が1.5%まで落ち込んだが、その後の採算管理の徹底で急速に回復している。開発事業は売上高1,933億円・営業利益240億円(営業利益率12.4%)と全社売上の1割弱にすぎないが、オフィス・ホテル・物流施設などを自社で保有・開発・運用する高収益事業で、大成有楽不動産を中核に資産残高を積み上げている。選別受注による価格転嫁が建築・土木の両方で定着し、開発事業による資産運用型の収益を組み合わせる構造が、大成の収益の特徴になっている。
優良さと弱いところ
スーパーゼネコン4社の一角という規模と、山岳トンネル・ダム・原子力関連施設で蓄積した技術力が堀になっている。国内外170カ所以上のダム建設実績(アースダム最大級の中里ダム、複合ダム最大の忠別ダムなど)、シラス地盤のシールドトンネルなど国内で前例のない施工実績は、後発が簡単には追いつけない差別化要因である。東洋建設の買収で土木事業の国内シェアを一段と積み上げ、洋上風力発電という新しい需要の柱にも足場を作った。技能労働者不足・資材高という業界共通の逆風についても、選別受注による値上げが建築・土木の両方で定着し、2024年3月期の営業利益率1.5%から2026年3月期の9.0%(全社)へ急速に回復した実績が、価格決定力の強さを示している。
弱いところは2つある。第一に、2023年に発覚した札幌の超高層ビル施工不良問題(ボルト違い・鉄骨の位置ズレ・コンクリート厚不足など245カ所の不備、さらに施主への虚偽報告も判明)は、損失240億円・2023年4〜6月期は11年ぶりの最終赤字という重い代償を払い、品質管理体制の実効性が今も問われている。第二に、2018年のリニア中央新幹線談合事件で大成建設の法人及び元幹部が独占禁止法違反で有罪が確定(2026年9月に最高裁が上告棄却)しており、鹿島建設と並んで業界の構造的な受注調整の文化という傷を抱える。自己資本比率34.9%・純有利子負債は時価総額比10.3%と財務は健全だが、東洋建設の買収費用(約1,600億円)で負債がやや増えた点は留意が要る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設需要は、都市再開発・半導体工場・データセンターという法人の設備投資が押し上げる「山」の局面にある。上場ゼネコン50社の受注高は2025年度に16兆5,388億円(5期連続増、集計開始以来初の16兆円台)、期末繰越高は過去最高の24兆1,764億円に達した。大成建設はスーパーゼネコン4社の中では鹿島建設に次ぐ規模だが、東洋建設の買収で単純合算売上高が約2兆3,200億円規模となり、2位の大林組に迫る位置につけている。国土強靱化・インフラ更新(2026年度から5年で事業規模約20兆円強)も土木事業の下支えになっている。
一方で2024年問題(残業上限規制)を起点にした技能労働者の高齢化・人手不足は構造的で、業界全体が「取れる仕事を選ぶ・取った仕事の値段を上げる」方向へ転換し、上場ゼネコンの9割近くで完成工事の粗利益率が改善した。大成の建築事業も施工不良問題からの反動で営業利益率が急回復しており、この価格転嫁がどこまで定着するかが、半導体・データセンター投資が一巡した後の利益水準を左右する。競合は鹿島建設・大林組・清水建設の3社で、4社による準寡占が続くが、顧客側の入札・相見積りにより完全な価格決定力にはならない。海外勢の参入は国内の建築基準・施工体制の壁で限定的である。
10年後を見通すと、都市再開発・半導体工場・データセンターという今の需要の柱が一巡した後、国内の建設投資そのものは人口減・世帯数減を背景に実質横ばい〜緩やかな縮小に向かうと考えられ、東洋建設の統合効果・開発事業の拡大という次の成長の柱をどこまで確保できるかが優良さの持続を決める。
資本政策と M&A
株主還元は配当性向30%を目安とし、2026年3月期は前期から大きく増配した。2027年3月期からは「下限付き配当性向40%」へ方針を引き上げ、業績が良い時の上積みを厚くする。2024年11月〜2025年11月には上限1,500億円の自社株買いを実施し、政策保有株式の売却益も還元・成長投資の原資に充てている。政策保有株式は2023年12月末時点で連結純資産の32.8%を占めており、2026年度末までに20%未満とする目標を掲げ、2030年度までに2,000億円規模の売却を計画している。
M&Aでは、2025年に海洋土木(マリコン)に強みを持つ東洋建設を総額約1,600億円でTOBし、同年9月に完全子会社化・上場廃止とした。土木事業で国内ナンバー1級の地位を固めるとともに、洋上風力発電関連工事やフィリピンなど東洋建設の海外ネットワークを取り込む狙いがある。大成自身が買収の対象(TOB)になる可能性は、時価総額1.8兆円規模という規模の大きさから低いとみられる。中期経営計画(2024-2026)では2026年度の数値目標(営業利益1,200億円・ROE8.5%程度)を掲げたが、2026年3月期の実績はこれを大きく前倒しで超過達成している。
見直し(費用点検):セグメント外の項目が中立 0(楽観・やや楽観は +150・+70 億円の収益)になっていたが、今は -100 億円の費用で根拠が無かったので、物価 1.34 倍の -134 億円(楽観 -120・やや楽観 -130・やや悲観 -140)に直し、純利益〜時価総額へ流した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大成は土木事業で全社最大の利益貢献(営業利益率13.3%)を保ちながら、東洋建設の買収で海洋土木・洋上風力発電という新しい需要の柱に足場を作った。単純合算売上高は約2兆3,200億円規模となり、2位の大林組に迫る位置につけている。建築事業は札幌の施工不良問題からの反動で営業利益率が1.5%から6.1%へ急速に回復しており、採算管理の徹底が実を結んでいる。技能労働者不足・資材高という業界共通の逆風も、選別受注による値上げの定着で上回る収益体質に変わった。
開発事業は売上の1割弱にすぎないが営業利益率12.4%の高収益事業で、大成有楽不動産を中核に資産残高を積み上げる余地がある。政策保有株式の売却(2030年度までに2,000億円規模)で得る資金を自社株買い・成長投資に機動的に回せる財務の余力もあり、2027年3月期からの下限付き配当性向40%への引き上げは株主還元の強化を示す。東洋建設の統合効果が計画どおり実現し、半導体工場・データセンター投資が国内で複数回の波を迎えれば、規模・技術・資本配分のすべてで同業に見劣りしない立場を10年後も維持できる。
慎重な見方
大成の今のROE17.9%・過去最高益は、施工不良問題からの反動増益と好採算工事が重なった一時的な山であり、会社自身が中期経営計画で掲げた2026年度目標(営業利益1,200億円・ROE8.5%程度)を大きく上回っている現状は、むしろ持続性への疑問を強める。建築・土木という本業は、顧客(デベロッパー・官公庁)側の入札・相見積りによって完全な価格決定力を持たず、技能労働者不足が一段深刻化すれば、値上げより先に受注そのものを絞らざるを得なくなる。
2023年の札幌の施工不良問題(損失240億円、11年ぶりの最終赤字)は品質管理体制の実効性に疑問を残し、同様の問題が再発するリスクを完全には排除できない。2018年のリニア中央新幹線談合事件で法人として有罪が確定したことも、業界の構造的な受注調整の文化が根深いことを示している。東洋建設の買収(約1,600億円)はのれん・統合費用の重さと、海洋土木・洋上風力発電という需要の不確実性を抱え、期待した統合効果が出なければ資本配分の失敗になる。国内の人口減・世帯数減という構造的な縮小は10年という期間で確実に効いてくるため、今の規模の優位性だけでは10年後の優良さを保証できない。
どちらに重みを置いたか
東洋建設の買収による土木事業の強化と、施工不良問題からの回復には実現性があるが、今のROE17.9%・過去最高益は会社自身の中期経営計画の目標を大きく上回る山であることは否めない。10年後は国内需要の構造的な縮小に土木の技術力と統合効果がどこまで勝つかを軸に、品質管理・統合コストの不確実性も相応に織り込んだ。10年後は国内需要の構造的な縮小に相応の重みを置きながら、土木事業の技術力と東洋建設の統合効果を踏まえて確率をわずかに強気側に寄せた。中立のROEが10年後10%程度にならされるため、今のPER10.8倍・PBR1.94倍はおおむね中立の目安に並ぶ水準で、計算の結論は「適正」に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 18,462 円3.01 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 5,229 円8,525 億円)。 今の値に割り戻すと 12,600 円2.05 兆円、今との差 +12.8%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 35,383 円5.77 兆円 | 6,952 円1.13 兆円 | +279.0% | +14.3% | 6,350 円1.04 兆円 |
| やや楽観 | 25% | 24,413 円3.98 兆円 | 6,081 円9,913 億円 | +173.0% | +10.6% | 7,624 円1.24 兆円 |
| 中立 | 30% | 17,145 円2.79 兆円 | 5,236 円8,535 億円 | +100.4% | +7.2% | 6,714 円1.09 兆円 |
| やや悲観 | 20% | 8,347 円1.36 兆円 | 4,097 円6,679 億円 | +11.4% | +1.1% | 2,489 円4,057 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,385 円3,887 億円 | 2,761 円4,500 億円 | −53.9% | −7.5% | 515 円839 億円 |
| 加重平均 | 100% | 18,462 円3.01 兆円 | 5,229 円8,525 億円 | +112.1% | +7.8% | 23,692 円3.86 兆円 |
今の株価時価総額 11,170 円1.82 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 15% 楽観:東洋建設との統合が完全に奏功し土木・開発が稼ぎの柱に育つ 利益 3,167 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 35,383 円5.77 兆円
10年の間に東洋建設との統合が完全に奏功し、土木事業は海洋土木・洋上風力発電を含めて国内トップ級のシェアを確立する。半導体・データセンター投資は国内で複数回の新しい波を迎え、建築事業の受注の柱として定着し、山岳トンネル・ダムで培った技術力が高度な施工案件の優先的な指名につながる。開発事業は大成有楽不動産を中核に資産残高を積み上げ、純利益の構成比を高めて会社全体の収益構造を保有・運用型へ近づける。技能労働者不足は自動化施工の普及で部分的に克服し、鹿島建設・大林組・清水建設との競争でも価格決定力が一段強まる10年になる。品質管理体制の刷新で施工不良のような問題も再発しない。
- 土木事業:数量 26.7(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質))× 価格 5.0%(大成(東洋建設を含む)のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 13,238 億円・営業利益 2,250 億円。東洋建設統合が完全に奏功
- 建築事業:数量 291(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円、鹿島建設の分析と同じ前提))→ 売上 19,470 億円・営業利益 1,655 億円。半導体・データセンター需要が構造的に定着
- 開発事業:数量 1.6(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 29.0%(資産に対する開発事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 4,605 億円・営業利益 783 億円。資産残高を積み上げ純利益の構成比が高まる
倍率:事業の純利益 3,154 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)872 億円。全体の PER 18.23 倍、時価総額 58,378 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体・データセンター需要の持続と東洋建設の統合効果・開発事業の拡大戦略の実現が重なる組み合わせで、実現すれば優良さが大きく高まるが条件は多い。
やや楽観 25% やや楽観:国内の構造的縮小を土木シェア拡大・開発が補う 利益 2,329 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 24,413 円3.98 兆円
建築・土木は国内の構造的な需要の細りを受けつつも、半導体・データセンター・インフラ更新という下支えで大崩れせず推移する。東洋建設の統合効果で土木事業のシェアは緩やかに積み上がり、洋上風力発電関連の受注も安定した収益源に育つ。開発事業も資産残高の拡大とともに純利益が着実に増える。技能労働者不足は続くが、選別受注と自動化施工への投資で利益率は過去平均より高い水準を保つ。政策保有株式の縮減が一巡した後も、本業・土木シェア拡大・開発の3本で株主還元を続けられる体質に変わっている、起伏の少ない10年になる。
- 土木事業:数量 24.7(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質))× 価格 4.6%(大成(東洋建設を含む)のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 11,242 億円・営業利益 1,686 億円。統合効果でシェアが緩やかに積み上がる
- 建築事業:数量 268(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円、鹿島建設の分析と同じ前提))→ 売上 17,929 億円・営業利益 1,255 億円。下支えで大崩れしない
- 開発事業:数量 1.3(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 29.0%(資産に対する開発事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 3,742 億円・営業利益 561 億円。純利益が着実に増加
倍率:事業の純利益 2,317 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)872 億円。全体の PER 17.03 倍、時価総額 40,327 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東洋建設の統合効果が構造的に続くという前提は実現性が高く、本業の価格転嫁も定着が進む組み合わせ。
中立 30% 中立:国内縮小と東洋建設の統合・開発の拡大が相殺し合う 利益 1,700 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 17,145 円2.79 兆円
半導体工場・データセンターという今の需要の柱が一巡し、国内の建設投資全体は人口減・世帯数減を背景に実質横ばい〜緩やかな縮小に向かう。建築事業は数量の伸びが止まるが価格転嫁の定着分だけ過去平均より高い利益率を保ち、土木事業は東洋建設の統合効果で国内縮小の一部を打ち消す。開発事業は資産残高の拡大が一段落しつつも利益水準は現在より高く定着する。鹿島建設・大林組・清水建設との準寡占は続くが、顧客側の入札・相見積りで価格決定力は完全ではない。技能労働者不足はより深刻化し、選別受注の徹底が数量の重荷になる一方、価格決定力は守られる10年になる。
- 土木事業:数量 22.7(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質))× 価格 4.2%(大成(東洋建設を含む)のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 9,409 億円・営業利益 1,223 億円。統合効果で国内縮小の一部を打ち消す
- 建築事業:数量 242(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円、鹿島建設の分析と同じ前提))→ 売上 16,221 億円・営業利益 973 億円。数量の伸びが止まる
- 開発事業:数量 1.1(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 29.0%(資産に対する開発事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 3,166 億円・営業利益 412 億円。利益水準が高く定着
倍率:事業の純利益 1,687 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)872 億円。全体の PER 15.86 倍、時価総額 27,632 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 15.47 倍・時価総額 26,291 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:国内建設投資の構造的な縮小と、東洋建設の統合・開発事業の拡大がちょうど相殺し合う、業種ノートの中立前提に沿う最も重みを置く筋書き。
やや悲観 20% やや悲観:国内縮小が東洋建設の統合効果を上回る 利益 1,005 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 8,347 円1.36 兆円
国内の人口減・世帯数減が想定より速く進み、半導体工場・データセンター投資も国内から海外立地へ一部シフトすることで、建築事業の数量が大きく細る。東洋建設の統合もシステム統合・文化の違いで想定より手間取り、土木事業のシェア拡大ペースも鈍る。技能労働者不足がさらに深刻化し、選別受注を徹底せざるを得ず土木事業の受注高も伸び悩む。開発事業は不動産市況の足踏みで純利益の拡大ペースが鈍る。政策保有株式の縮減資金も成長投資に回しきれず、株主還元を厚くする守りの資本政策に傾く、優良さの評価がじわじわ下がる10年になる。
- 土木事業:数量 19.7(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質))× 価格 3.8%(大成(東洋建設を含む)のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 7,401 億円・営業利益 740 億円。統合が想定より手間取る
- 建築事業:数量 212(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円、鹿島建設の分析と同じ前提))→ 売上 14,177 億円・営業利益 638 億円。数量が大きく細る
- 開発事業:数量 0.9(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 29.0%(資産に対する開発事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 2,446 億円・営業利益 245 億円。拡大ペースが鈍る
倍率:ROE 6.48%(純利益 1,053 億円 ÷ 自己資本 16,246 億円)。事業の ROE が資本コスト k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍。国内の建設投資が細り統合効果も限定的な局面で、受注の採算も振れ、東洋建設の統合リスクも残るので、上限の 7 割 5 分 の 9.4 倍に置いた。 時価総額は(純利益 − 余った資産 654 億円 × 税後の利息 1.4%)× PER + 余った資産 × 戻り方 0.5 で出した(持ち合い株の含み益。excess_cash_why)。(費用・利益の見直しで再計算:純利益 1005 億円、事業の ROE 6.4%、正当化 PER の上限 12.5 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 9.40 倍)
確率:国内の人口減・技能労働者不足のペースが想定より速く、東洋建設の統合効果がそれを補いきれない組み合わせ。
悲観 10% 悲観:国内は構造的に負け、東洋建設の統合も裏目に出る 利益 110 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,385 円3,887 億円
国内では人口減・技能労働者不足が加速し、建築・土木ともに数量が大きく縮小、価格転嫁もすでに限界に達していて値下げを迫られる。半導体工場・データセンター投資は国内立地の優位性を失い海外へシフトし、次の成長の柱を作れない。東洋建設の買収(約1,600億円)はのれんの一部減損を迫られ、海洋土木・洋上風力発電の需要も伸びず資本配分の失敗として評価される。開発事業は不動産市況の悪化で資産の売却も停滞する。鹿島建設・大林組・清水建設にシェアを奪われ、施工不良・談合事件の記憶も含めガバナンスの評価が戻らないまま、会社全体として構造的に優良さを失った10年になる。
- 土木事業:数量 15.1(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質))× 価格 3.2%(大成(東洋建設を含む)のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 4,853 億円・営業利益 340 億円。統合が裏目に出てのれん減損
- 建築事業:数量 150(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円、鹿島建設の分析と同じ前提))→ 売上 10,077 億円・営業利益 202 億円。構造的な需要蒸発
- 開発事業:数量 0.7(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 29.0%(資産に対する開発事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 1,871 億円・営業利益 94 億円。資産売却も停滞
倍率:ROE 0.8% と谷の利益(純利益 110 億円)では稼ぐ力は 1,400 億円ほどにしかならず、床は売れる資産で測る。構造的に受注の採算が崩れ、東洋建設買収ののれんも一部減損した姿。政策保有株の縮減は 10 年でほぼ終わり、含み益の床への効き目は小さい。開発・賃貸資産の推定 9,000 億円を強制売却で 5 割、政策保有株の税後 1,330 億円を足し、今の純有利子負債 1,905 億円を引いた約 3,900 億円を、今の自己資本 9481 億円に対する PBR 0.41 倍(時価総額 3887 億円)に置いた。谷の年は営業利益 454 億円と小さく、EV ÷ 営業利益では測らない。
確率:国内の縮小が深刻化し、同時に半導体・データセンター需要が海外立地シフトで取り切れず、東洋建設の統合・開発事業も裏目に出る、リーマン級の構造的な劣化を想定。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木事業
山岳トンネル・ダム・原子力関連施設・都市部の地下工事などの土木請負。2025年の東洋建設買収で海洋土木(マリコン)・洋上風力関連を取り込む。
| 数量国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質) | 価格大成(東洋建設を含む)のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 2.9% | 7,202 | 956 |
| 10 年後 中立 | 22.7 | 4.2% | 9,409 | 1,223 |
取り方:国内の土木投資(政府・民間合計で約25兆円、鹿島建設の分析と同じ前提)に対する大成の土木事業売上(約7,202億円)の比率をシェアとした。2025年9月に完全子会社化した東洋建設の売上は2026年3月期に半年程度のみ反映されており、今のシェアはまだ全年度化していない。投資の量は実質、工事単価は物価並みに上がる
建築事業
都心部の超高層ビル・大型再開発・商業施設・データセンターなどの建築請負。
| 数量建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定) | 価格1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円、鹿島建設の分析と同じ前提) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 255 | 50 | 12,744 | 784 |
| 10 年後 中立 | 242 | 67 | 16,221 | 973 |
取り方:建築事業の完成工事高(約1兆2,744億円)を、オフィス・商業施設・データセンターなど大型建築の平均の㎡単価約50万円(鹿島建設の分析と同じ前提)で割って完成床面積を逆算した。単価は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)、床面積は実質。2023年の札幌の施工不良問題からの反動で営業利益率は2024年3月期の1.5%から2026年3月期の6.1%まで急回復している
開発事業
オフィス・ホテル・物流施設などを自社で保有・開発・運用する不動産事業(大成有楽不動産が中核)。
| 数量開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定) | 価格資産に対する開発事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 21.5% | 1,933 | 240 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 29.0% | 3,166 | 412 |
取り方:開発事業の売上(約1,933億円)を、開発・賃貸に回している資産の推定約9,000億円(開示なし、鹿島建設の開発事業等との規模感から推定)で割った比率。売却と賃料は物価並みに上がる
リスクと懸念
施工不良問題の再発
2023年に発覚した札幌の超高層ビル施工不良問題(ボルト違い・鉄骨の位置ズレ・コンクリート厚不足など245カ所の不備、施主への虚偽報告も判明)は損失240億円・11年ぶりの最終赤字という重い代償を払った。品質管理体制は刷新されたが、同様の問題が別の現場で再発すれば、信用と利益の両方に再び打撃となる。
ガバナンス・談合リスクの再発
2018年のリニア中央新幹線談合事件で大成建設の法人及び元幹部が独占禁止法違反で有罪が確定した(2026年9月に最高裁が上告棄却)。鹿島建設と並び業界の構造的な受注調整の文化という傷を抱え、同様の問題が将来再発するリスクを完全には排除できない。
東洋建設買収の統合リスク
2025年に約1,600億円で買収した東洋建設の統合が計画より手間取れば、のれんの償却・減損やシステム統合コストが利益を圧迫する。海洋土木・洋上風力発電という期待した需要の柱が伸びなければ、資本配分の失敗として評価される可能性がある。
半導体・データセンター建設需要の一巡
大成の建築事業の成長は、半導体工場やデータセンターという特定分野の投資拡大にも支えられている。クラウド事業者の投資計画見直しや半導体産業政策の縮小があれば、受注の柱の一つが細り、建築事業の利益率改善の勢いが鈍る。鹿島建設など同業も同じ分野を狙っており、受注競争が激しくなれば単価上昇も止まる。
技能労働者不足の深刻化
2024年問題を起点にした技能労働者の高齢化・人手不足は構造的で、価格転嫁が続く限りは利益率改善の追い風だが、人手不足が受注量そのものを制約する段階に進めば、値上げでは補えない数量減につながる。無理な工期の短縮は施工不良のような品質トラブルの温床にもなりやすく、両面で経営の重荷になりうる。
政策保有株式の縮減一巡後の利益の支え
政策保有株式は2030年度までに2,000億円規模の売却を計画しているが、縮減が一巡した後は売却益による利益の上積みがなくなる。本業の増益でこれをどこまで吸収できるかが、縮減完了後の利益水準を左右する。
国内建設投資の構造的な縮小
人口減・世帯数減を背景に、都市再開発・半導体工場需要が一巡した後の国内建設投資は実質横ばい〜緩やかな縮小に向かうとみられ、東洋建設の統合効果で次の成長の柱を確保できなければ、優良さの評価がじわじわ下がる。
今後の分かれ目
- 東洋建設の統合効果(土木事業のシェア拡大・洋上風力関連の受注)が数値で確認できたら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。資本配分の成功が実証された証拠になる。
- 施工不良・品質問題が別の現場で再発したら
- やや悲観側に重みを移す。品質管理体制の実効性への懸念が強まったことを示す。
- 建築事業の営業利益率が過去最高の水準からさらに改善し、過去平均(9〜11%台)を上回る水準で安定したら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。価格転嫁の定着が実証された証拠になる。
- ラピダス・TSMC関連に続く半導体工場やデータセンターの新規大型案件が相次いで発表されたら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。建築事業の受注の柱がさらに厚みを増す証拠になる。
- 談合・コンプライアンス関連の新たな問題が発覚したら
- やや悲観側に重みを移す。ガバナンスの評価を見直し、優良さの評価を下げる。
- 東洋建設買収のれんの減損を計上したら
- やや悲観側に重みを移す。統合効果が期待どおりに実現していないことを示す。
見ておくもの
- 土木事業・建築事業の受注高と完成工事の粗利率の推移
- 東洋建設統合後の土木事業のシェア・洋上風力関連受注の進捗
- 開発事業の売上・営業利益と開発資産残高
- 政策保有株式の残高・連結純資産比と売却の進捗
- 施工不良・品質管理関連の新たな問題の有無
倍率と資本コストの決め方
数量(建築の完成床面積・国内の土木投資・開発資産=実質)と単価・シェア(物価3%を入れた名目)を積み上げ、鹿島建設の分析と同じ前提(国内土木投資25兆円、建築単価50万円/㎡)を使って物差しを揃えた。土木事業のシェアは東洋建設の統合効果の実現度に応じて楽観〜悲観で変えた(統合が会社固有の変数のため)。今の過去最高益(ROE17.9%)が続くとは置いておらず、中立では10年後10%程度にならしている。倍率は利益で決め、新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC=k 7.5%+1/2×(ROE−k))と長期g 4%(k−g≥3.5%)から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)を出し、上限の8割5分前後(中立はROEがkを超えるので1÷kを割らせない9割余り、やや悲観は7割5分)に置いた。悲観は純利益が谷なので稼ぐ力でなく売れる資産の税後(推定)で測った。k=基本7.5%+quality0.5%(建設の循環)。今の株価は最後に比べただけで、結論は今のPER10.8倍・PBR1.94倍が中立の目安(PER約13〜12倍)とおおむね並ぶため「適正」に近い。 持ち合い株の含み益(税後 872 億円)は利益を生まない余った資産として、戻り方 0.5 で足した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。