結論
ブラデスコ銀行は、ブラジルの家計と企業から預金を集め、貸出、決済、資産運用、保険で稼ぐ金融グループである。筆者の結論は、2026年10月23日の基準時価総額に対して割安、ただし長期保有に高い確信を持てるほど堀が広いわけではない、というものだ。全国の販売網と保険の首位級の地位は価値がある。一方、低コスト預金と顧客接点では、イタウ銀行やヌーバンクとの争いが厳しさを増している。
2025年の純利益は42.4億ドル、自己資本利益率は13.0%だった。2026年7〜9月期には四半期の経常純利益が約13.7億ドルとなり、前年同期から14.6%増えた。効率化が実際に利益へ表れ始めた反面、90日超延滞率は4.6%に悪化している。回復している利益のどこまでが恒久的な改善で、どこからが信用循環の追い風なのかを見極める必要がある。
10年後の中立では、保険と手数料収入が貸出の波を和らげ、純利益は86億ドル、自己資本利益率は約15.9%になると考える。楽観側では規模の利益が広がるが、悲観側では預金競争と貸倒によって稼ぐ力が著しく低下する。5つの筋書きと正味の株主還元を資本コスト8.75%で評価した本質価値は、会社全体で約654億ドルとなる。指定された基準時価総額431億ドルに対して約52%の安全域がある。
ただし、10月26日のブラジル大統領選挙後の市場急落は軽視できない。基準日以降の株価下落は見かけの割安さをさらに広げたが、同時に財政運営と通貨の不確実性も大きくした。ドル建てADRの株主は、銀行の利益だけでなくブラジルの制度と為替を引き受けることになる。十分な安全域が必要な銘柄である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まずブラジルで銀行と保険が10年後も必要かを考える。融資、決済、医療保険、老後資金の管理は必要であり、需要そのものが消えるとは考えにくい。ただし、必要なサービスを提供していることと、今の銀行が高い収益を取り続けられることは別の問題である。顧客との関係は残っても、取引を担当する会社は変わりうる。
オーナーが注目すべきなのは、利益からどれだけ資本を積み増す必要があるかだ。銀行の貸出を伸ばすには自己資本が要る。利益を全額配れば成長の余力を失い、利益を全額残しても資本コスト以下で運用すれば価値は生まれない。中立では、10年の利益累計を約642億ドル、増資を差し引いた正味還元を約428億ドルと見込み、自己資本が約540億ドルへ増える筋道を考えた。
保険のシェアと銀行の顧客基盤には、少数株主にとって支払う価値のある強みがある。一方、2023年には自己資本利益率が8%台まで低下した。2016年の大型買収、複雑な保険と決済の再編、議決権の弱い優先株という条件を踏まえると、経営の判断を無条件に信用することはできない。
筆者が重視する安全域は、2026年に改善した利益をそのまま10年間延ばしたものではない。貸倒が増え、デジタル銀行に顧客を奪われても、事業が存続し、配当が戻るかを確かめる。現在の基準価格には魅力があるが、ブラジルの通貨と政治の見通しまで分かるわけではない。強い保険事業を持つ循環的な銀行として、慎重な価格で所有するのが適切だと判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの第一の柱は銀行貸出である。個人の給与口座、住宅、自動車、カード、農業、企業の運転資金を扱い、預金と市場調達で集めた資金を貸し付ける。利益を決めるのは、貸出残高と金利だけではない。調達費用、延滞、貸倒引当を差し引いた後にどれだけ残るかが肝心だ。2026年9月末の拡大貸出残高は約1兆1,495億レアルで、前年同月から11.1%増えた。
第二の柱は証券運用と銀行間取引である。国債やその他の債券、金融機関向け運用、中央銀行預け金から金利収入を得る。運用利回りが上がっても、預金金利と市場調達の費用も上がれば利益は増えない。2025年には貸出以外の利息資産が大きな収益源だったが、粗い金利収入をそのままオーナー利益と考えることはできない。
第三の柱はブラデスコ・セグロスの保険、年金、医療保険、積立商品である。保険料と拠出金を集め、保障を提供し、責任準備金を運用する。銀行窓口から販売できるため、新規顧客の獲得費用を抑えやすい。2025年の保険・年金・積立分野の市場シェアは約22.8%であり、銀行貸出より明瞭な競争上の強みを持つ。2026年には医療保険関連事業の再編も進めた。
第四の柱はカード、決済、口座サービス、資産運用の手数料である。手数料は取扱件数、管理する資産、実際に利用する顧客に応じて入る。2026年9月末のグループ顧客は約7,510万人に達したが、全員が同じ手数料を払うわけではない。収益を伸ばすには顧客数よりも、利用頻度と顧客当たりの取引を増やす必要がある。AIエージェントが代替する人月課金や席課金のソフトを主業とする会社ではないが、銀行の操作画面と単純な事務手数料には自動化による圧力が及ぶ。
優良さと弱いところ
最大の堀、つまり競争相手が容易に奪えない強みは、全国に広がる顧客との関係と保険の販売網である。銀行口座、給与振込、融資、カード、医療保険を一緒に利用する顧客は、すべてを別の会社へ移すのに手間がかかる。銀行の許認可、審査に蓄積した情報、保険の引受実績も参入障壁になる。保険市場で2割を超えるシェアを維持していることは、その強みを裏付ける。
しかし、預金の堀は昔ほど強くない。無利息の要求払預金は減り、高い金利を払う定期性預金が増えている。スマートフォンだけで使えるヌーバンクは、店舗を持つ銀行より低い費用で顧客を獲得できる。イタウ銀行も規模、信用審査、富裕層との関係で強い。ブラデスコが過去の顧客数だけを頼りに価格を上げれば、資金と利用頻度は競合へ流れる。
経営改革には具体的な成果がある。2026年7〜9月期には経費率が前年から改善し、店舗は減少した一方でデジタル接点が広がった。同行の自動応答と生成AIは、問い合わせ処理と事務費の削減に役立つ。ただし競合も同じ技術を使うため、費用削減の全額が長く株主のものになるとは限らない。
2025年の自己資本利益率13.0%は資本コストを超えるが、過去には8%台まで落ちた。2026年の回復が続けば再投資は価値を生む。それでも、貸出の拡大で利益が増える前に延滞と必要資本が増える危険がある。保険には比較的強い堀がある一方、グループ全体の堀は普通の水準と判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ブラジルの銀行業は、米国の銀行と同じ物差しだけでは測れない。国内の政策金利は2026年9月末で13.75%と高く、金利収入も調達費用も大きい。国内の信用成長は名目では速く見えるが、高い物価上昇を除いた実質の貸出数量はそれほど急には増えない。2026年の会社見通しも、貸出残高の前年比増加率を8.5〜10.5%としている。10年先には、価格上昇と実際の貸出・契約の増加を区別する必要がある。
貸出市場では、連邦貯蓄銀行カイシャ、ブラジル銀行、イタウ銀行、ブラデスコが主要な競争相手である。中央銀行の2025年末の貸出統計では、カイシャが約19%、ブラジル銀行が約15%、ブラデスコとイタウがそれぞれ約11%を占める。ただし会社が公表する拡大貸出のシェアは約10.4%であり、債権の範囲が異なるため単純に足し合わせない。中立では市場が実質で成長しても、同行のシェアが大幅には上がらないと考える。
保険・年金・積立市場は2025年のブラデスコの年間取扱額とシェアから、年間約5,200億レアルと概算できる。銀行が融資先に保険を案内する仕組みは強いが、ポルト・セグロやブラジル銀行系の保険会社との競争が続く。医療費の上昇は保険料単価を押し上げる半面、保険金の支払も増やすため、単価上昇がそのまま利益になるわけではない。
最も大きな構造変化は店舗からデジタルへの移行である。ヌーバンクはブラジル国内で1億人を超える顧客を抱え、若年層の口座と決済を取り込んでいる。ブラデスコの顧客基盤は巨大だが、利用が減れば預金と手数料の両方が失われる。政府の財政方針、消費者信用の規制、即時決済PIXの普及も金融機関の値決め力を変える。
2026年10月の大統領選挙後には市場が急落した。長期の貸出需要だけでなく、ブラジル国債への信頼、預金金利、レアルの購買力も株主価値を動かす。ドル建て評価では為替を全筋書きで固定するが、その前提が崩れた場合は悲観側を厚くして考える。
資本政策と M&A
資本配分では、買収よりも既存事業の立て直しと健全な融資成長が当面の優先事項である。2016年のHSBCブラジル事業の取得は全国の顧客基盤を広げたが、その後も銀行部門の収益力が自動的に高まったわけではない。2024年のシエロ非公開化や、2026年の医療保険関連事業の再編は、販売と決済の結び付きを強める試みである。複雑なグループ内再編が少数株主の利益に結び付くかは、今後の収益で判断したい。
2025年の配当は約21.2億ドルで、自社株買いは小さかった。定款上は調整後利益の30%以上を配当する仕組みがあり、ブラジル特有の株主資本利子による還元も使う。ただし銀行の利益は、貸出を増やすための規制資本でもある。還元を急げば自己資本が薄くなるため、配当性向を高くし続けることが常に正解ではない。
2026年10月には約100億レアル、ドル換算で約19億ドルの増資が完了した。既存株主も払込資金を負担しているため、将来の正味還元額から増資分を差し引く。2026年9月末の普通株式等Tier1比率は12.1%であり、今回の調達は成長余力を高める一方、資本が無尽蔵ではないことも示す。
ファンダソン・ブラデスコは直接・間接で資本の約31.5%を保有し、普通株の議決権に大きな影響力を持つ。BBDは優先株ADRで、通常の議決権がない一方、普通株より配当条件が有利である。2026年の会社見通しは貸出、利ざや、経費、保険収益について公表されているが、2035年の利益率や還元総額について数字の約束はない。親銀行の買収合意、非公開化合意、上場廃止予定、継続企業の前提を疑わせる注記は確認されなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ブラデスコの利益回復は、単なる金利上昇の恩恵だけではない。2026年7〜9月期の四半期経常純利益は約13.7億ドルに増え、経費率も改善した。店舗を減らしながらデジタル顧客を増やす改革が、収益に実際に表れている。2026年9月末の貸出残高は前年から11.1%増えており、成長のための需要もまだある。延滞率は悪化しているが、貸倒費用を負担した後でも利益が増えていることは心強い。
保険事業は、同行を単なる貸出銀行と区別する。保険・年金・積立市場で約22.8%のシェアを持ち、銀行窓口とデジタル接点を併用して販売できる。医療保険の再編が進めば、販売、保険金査定、顧客管理の重複費用を減らせる。融資で得た顧客との関係が保険契約を生み、保険契約が銀行口座との関係を長持ちさせる。この循環は新興デジタル銀行が短期間ではまねしにくい。
銀行貸出では、現在の約10〜11%のシェアを守るだけでも、ブラジル全体の信用拡大を取り込める。イタウ銀行に近い費用効率へ改善できれば、利益率の差は相当縮まる。保険が安定収益を供給し、貸出の信用費用が正常な範囲に収まれば、自己資本利益率は高い十数%から20%近辺に届きうる。
2026年の増資は当面の株主負担だが、十分な自己資本があれば不況時にも良質な融資を続けられる。ブラジルの大手銀行は規模、ブランド、監督上の信用が重視される。国内の政治不安が収まれば、実体経済の融資需要は戻る。10年を通して収益力を回復できる事業として評価する余地は大きい。
慎重な見方
最大の弱点は、成長に見える数字の中に高い国内金利と信用リスクが混じっていることだ。貸出残高が増えても、延滞した債権まで増えれば株主利益は減る。2026年9月末の90日超延滞率は4.6%で、前年の4.1%より悪い。貸倒引当と不良債権の処理は、経費削減だけでは埋められない。ブラジル経済の悪化が長引けば、銀行は利益を配当できず、資本の補強を繰り返す可能性がある。
資金調達の堀も削られている。預金者は、口座を持つためだけに大手銀行へ資金を預ける必要がなくなった。ヌーバンクのようなデジタル事業者に顧客が移り、国債や高金利商品が預金を奪う。ブラデスコは従来の店舗網と人員をなお負担し、価格を上げれば顧客が逃げ、価格を守れば利ざやが縮む。イタウ銀行との競争でも圧倒的な規模の差はない。
保険にも別の危険がある。医療費が想定以上に上がると、保険料を引き上げても保険金の支払が追いつかない。医療保険や年金商品の準備金は、運用資産のように見えても自由に株主へ返せる現金ではない。グループ内の再編が増えるほど、利益の移転と少数株主の取り分の確認は難しくなる。
議決権の弱いBBDの保有者は、財団と支配株主の資本配分を直接変えにくい。2026年の増資は、配当を受け取りながら一方で新しい資金を拠出するという銀行株の現実を示した。さらにブラジルの政治と財政を巡る不安は、ドル建てで測る資本の価値を変える。銀行が存続しても、競争力を失った普通の金融機関になる筋書きは十分にありうる。
どちらに重みを置いたか
保険事業の地位と2026年の利益回復には説得力があるが、信用循環、預金競争、支配株主、通貨の問題は独立した危険である。5つの筋書きでは楽観側を29%、悲観側を38%とし、慎重な見方をやや厚くした。米国の大手銀行と違い、ブラジルの政治と金利が収益力にもドル建て評価にも及ぶためだ。
それでも、保険と融資の双方が同時に大きく傷む場合を別に考えれば、中立の事業には十分な稼ぐ力がある。正味の配当と将来の時価総額を割り引いた価値は、指定された基準時価総額より約52%高い。株価の下落だけを理由とせず、利益と資本の道筋から割安と判断する。ただし2026年10月の政治的な変化は今後の確率を見直す材料である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 9.07 ドル961 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 3.42 ドル363 億ドル)。 今の値に割り戻すと 6.17 ドル654 億ドル、今との差 +141.9%、 期待の年率 +21.7%(資本コスト 8.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 16.65 ドル1,764 億ドル | 4.88 ドル518 億ドル | +744.3% | +29.8% | 1.94 ドル205 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 13.80 ドル1,463 億ドル | 4.41 ドル468 億ドル | +614.3% | +27.3% | 3.64 ドル386 億ドル |
| 中立 | 33% | 10.47 ドル1,109 億ドル | 4.04 ドル428 億ドル | +468.8% | +24.3% | 4.79 ドル507 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 4.81 ドル510 億ドル | 2.87 ドル305 億ドル | +201.3% | +15.4% | 1.77 ドル187 億ドル |
| 悲観 | 15% | 1.65 ドル175 億ドル | 0.71 ドル75 億ドル | −7.5% | −0.9% | 0.35 ドル38 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 9.07 ドル961 億ドル | 3.42 ドル363 億ドル | +389.7% | +21.7% | 12.49 ドル1,323 億ドル |
今の株価時価総額 2.55 ドル270 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:保険の優位と銀行の効率改善が両立する 利益 120 億ドル · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 16.65 ドル1,764 億ドル
ブラジルの金融市場が実質で拡大し、ブラデスコはイタウ銀行との競争で預金と企業融資のシェアを少し取り戻す。実質の平均貸出量は1,770億ドル相当となり、収益の単価も改善する。証券運用では資金調達費用を抑え、高い粗利息収入を株主利益へ転換できる。貸出の延滞率は改善し、信用損失を負担した後の利益率が高まる。
保険ではポルト・セグロやブラジル銀行系の競争に耐え、約2割超のシェアを維持する。医療保険の再編とデータ活用が事務費を減らし、契約取扱額が実質で約4割増える。決済・資産運用も顧客数と利用頻度が増え、ヌーバンクへの顧客流出が限定的にとどまる。保険と銀行の相互販売は、販促費を抑えながら顧客との関係を深める。
この場合、2035年の純利益は120億ドル、自己資本は620億ドルとなる。保険を含む顧客基盤への追加投資が資本コストを十分上回る。期間の正味株主還元は約518億ドルに達するが、2026年の増資負担は差し引いている。大型の高値買収に依存せず、既存事業の回復で価値を広げる展開である。
- 銀行貸出の利息収益:数量 1,770(平均貸出債権の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.21(貸出残高に対する年間利息収益率。将来は物価と貸出金利・商品構成の変化を含む)→ 売上 375 億ドル・営業利益 66 億ドル。実質貸出量が増え、優良顧客の比率上昇と信用費用低下で採算改善
- 債券・銀行間運用・市場業務:数量 2,550(貸出以外の平均利息資産の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.14(利息資産残高当たりの金融収益率。金融取引等の非金利収益も含む近似値)→ 売上 349 億ドル・営業利益 54 億ドル。運用残高が増加し、預金・市場調達費用との差が改善
- 保険・医療・年金・積立:数量 299(年間保険料・年金拠出・積立取扱額の2025年価格換算値(億ドル))× 価格 0.70(総取扱額当たりIFRS認識収益係数。契約単価・保障の構成と認識時期を含む)→ 売上 209 億ドル・営業利益 61 億ドル。保険シェア約23%を維持し、医療費管理と再編効果で利益率上昇
- 決済・口座・資産管理手数料:数量 91.0(グループ顧客数(百万人、非口座保有者を含む))× 価格 1.00(顧客百万人当たり年間手数料収益(億ドル))→ 売上 91 億ドル・営業利益 23 億ドル。顧客数増加と資産運用・カード取引の利用率改善
倍率:kは8.75%、長期gは4.0%。2035年の帳簿ROEは120÷620=19.35%。2025年Form 20-Fの無形資産・のれんが自己資本の約14%に相当するため、有形自己資本ROEは帳簿値より高いが、上限を緩めないよう帳簿ROEを保守的な代理値とする。堀は普通、超過利益の残存割合は1/2で、RONIC=8.75%+(19.35%−8.75%)÷2=14.05%。来年利益に対する正当化PERに1.04を掛けた上限は約15.66倍。その約94%の14.7倍とした。gの4%は貸出・保険市場の実質成長約1.2%、シェア改善約0.2%、名目の単価・取扱額の増加約2.6%に由来し、ROEから成長率を逆算していない。時価総額=120×14.7=1764億ドル。
確率:保険のシェア維持・融資シェアの小幅拡大・信用費用の正常化・デジタル改革の成功が同時に続く必要がある。ブラジルの信用循環と政治的な変動を考えると可能性はあるが、10年にわたる達成確率は1割弱とした。
やや楽観 20% やや楽観:銀行の回復が定着し、保険が成長を支える 利益 103 億ドル · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13.80 ドル1,463 億ドル
ブラデスコは店舗の整理とデジタル化を継続し、個人と企業の融資を増やす。貸出市場全体の実質成長にほぼ沿って残高を拡大し、イタウ銀行との差を縮める。ヌーバンクは若い顧客を取り込むが、企業融資や複数商品を持つ家計との関係は維持できる。信用費用は一時的に増えても、10年でならせば経営の計画の範囲へ戻る。
保険は銀行からの販売と医療保険の改善で収益を伸ばす。市場シェアは約22%前後で推移し、契約額の成長が保険金の増加を上回る。証券運用は高い国内金利の恩恵を受ける一方、預金コストも高いため、収益性の改善は緩やかである。カードと資産運用は顧客の利用拡大から増収になる。
2035年の純利益は103億ドルとなり、銀行の改革前より厚い利益を生む。自己資本は585億ドルまで増え、余剰資本の大半を配当などで返せるようになる。10年の正味還元は約468億ドルと見込む。増資に頼る成長を続けず、既存の全国網と保険をより効率よく使う姿である。
- 銀行貸出の利息収益:数量 1,680(平均貸出債権の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.20(貸出残高に対する年間利息収益率。将来は物価と貸出金利・商品構成の変化を含む)→ 売上 338 億ドル・営業利益 55 億ドル。信用費用を抑えつつ市場の成長を取り込み、シェアを微増
- 債券・銀行間運用・市場業務:数量 2,430(貸出以外の平均利息資産の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.14(利息資産残高当たりの金融収益率。金融取引等の非金利収益も含む近似値)→ 売上 328 億ドル・営業利益 49 億ドル。調達競争は続くが、金利管理と資産構成が改善
- 保険・医療・年金・積立:数量 277(年間保険料・年金拠出・積立取扱額の2025年価格換算値(億ドル))× 価格 0.68(総取扱額当たりIFRS認識収益係数。契約単価・保障の構成と認識時期を含む)→ 売上 189 億ドル・営業利益 53 億ドル。保険の大きなシェアを保ち、商品構成と事務効率が改善
- 決済・口座・資産管理手数料:数量 86.0(グループ顧客数(百万人、非口座保有者を含む))× 価格 0.94(顧客百万人当たり年間手数料収益(億ドル))→ 売上 81 億ドル・営業利益 19 億ドル。デジタル取引増が単純な手数料率低下を上回る
倍率:k8.75%、帳簿ROE=103÷585=17.61%、g=3.75%、堀の残存割合1/2からRONIC約13.18%。有形自己資本を使えばROEはさらに高くなるが、保守的に帳簿値を用いる。10年目利益に対する正当化PERの上限は約14.85倍で、信用循環の影響を考えて約95.6%の14.2倍を採用。長期gは融資市場の実質成長約1.0%、シェア約0.1%、保険・手数料の価格と取扱額の名目増加約2.65%の合成。時価総額=103×14.2=1462.6億ドル。
確率:2026年の経費率改善と保険の収益力が定着する可能性は比較的高い。ただし貸出の延滞が悪化しており、保険と銀行の双方で利益率が良くなる条件が必要なため、中立より低い20%とした。
中立 33% 中立:保険を支えに銀行の採算が穏やかに回復する 利益 86 億ドル · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10.47 ドル1,109 億ドル
ブラジルの貸出市場は、人口、金融利用、企業の設備投資とともに実質で緩やかに増える。ブラデスコは市場全体の拡大を取り込むが、イタウ銀行とヌーバンクに顧客を奪われる分もあり、シェアはほぼ横ばいとなる。2026年の改革で経費は減るものの、貸倒費用が繰り返し増えるため、銀行の利益率は急には高まらない。
証券運用では預金の高コスト化が続き、粗い金利収入ほどの利益は残らない。保険では約2割のシェアを守り、医療保険と年金の販売を増やす。保険金と医療費も増えるが、契約管理の改善が費用を抑える。カードや資産運用の顧客数は増えても、PIXとデジタル銀行との競争で手数料単価を大きく上げることは難しい。
2035年の純利益は86億ドル、自己資本は540億ドルとなる。2025年からの10年の純利益累計は約642億ドル、増資の払込を差し引いた正味還元は約428億ドルである。2026年の資本増強を生かし、無理な買収を避けながら利益を積み上げる。保険の堀は残るが、銀行全体としては普通の競争環境にある成熟した大手金融機関という姿である。
- 銀行貸出の利息収益:数量 1,540(平均貸出債権の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.19(貸出残高に対する年間利息収益率。将来は物価と貸出金利・商品構成の変化を含む)→ 売上 296 億ドル・営業利益 46 億ドル。実質残高は2025年比約1.21倍。国内金利の正常化で利率の名目上昇は物価以下
- 債券・銀行間運用・市場業務:数量 2,310(貸出以外の平均利息資産の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.13(利息資産残高当たりの金融収益率。金融取引等の非金利収益も含む近似値)→ 売上 305 億ドル・営業利益 41 億ドル。運用資産は増えるが、預金・市場調達費用が利益率を抑える
- 保険・医療・年金・積立:数量 263(年間保険料・年金拠出・積立取扱額の2025年価格換算値(億ドル))× 価格 0.64(総取扱額当たりIFRS認識収益係数。契約単価・保障の構成と認識時期を含む)→ 売上 168 億ドル・営業利益 45 億ドル。保険のシェアはおおむね22%で、医療費上昇と契約管理効率が均衡
- 決済・口座・資産管理手数料:数量 82.0(グループ顧客数(百万人、非口座保有者を含む))× 価格 0.90(顧客百万人当たり年間手数料収益(億ドル))→ 売上 74 億ドル・営業利益 16 億ドル。顧客利用率は改善するが、PIXとデジタル競争で単価の上昇は限定的
倍率:k=8.75%、帳簿ROE=86÷540=15.93%、長期g=3.5%。無形資産を控除した有形普通株式資本のROEは帳簿値より高くなるが、2025年の無形資産残高を参考に帳簿ROEを保守的な下限代理値として使う。堀は普通で残存割合1/2、RONIC=8.75%+(15.93%−8.75%)÷2=12.34%。正当化PERの10年目利益基準の上限は約14.12倍。その約91%の12.9倍を採用し、貸倒やブラジルの金融循環による利益の不確実性を反映する。長期g3.5%は市場の実質数量成長約1.0%、シェア横ばい、手数料率・金利構成を含めた名目単価増加約2.5%に由来する。物価3.5%に価格が完全には追いつかないのは、国内貸出金利の構成変化と決済手数料の競争を想定するため。時価総額=86×12.9=1109.4億ドル。
確率:保険の市場地位と銀行の全国顧客基盤は残る一方、貸出シェアを大幅に伸ばす証拠はない。2026年の利益回復を認めつつ、信用費用と預金競争が改善を相殺する展開が最も起こりやすいとみる。
やや悲観 23% やや悲観:預金コストが高止まりし、保険の利益も伸び悩む 利益 49 億ドル · PER 10.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.81 ドル510 億ドル
ブラジルの貸出市場は拡大するが、ブラデスコはヌーバンクなどのデジタル事業者に個人顧客を奪われる。企業融資ではイタウ銀行やブラジル銀行がシェアを維持し、同行の実質貸出量は中立より少なくなる。市場調達と定期預金の金利が高く、貸出で取った収益を資金の仕入れに使わざるを得ない。90日超延滞率は高いまま推移し、信用費用が利益を圧迫する。
保険市場では医療費の上昇と競合の値付けによって採算が落ちる。保険料の引き上げを試みても、解約を避けるために十分な値上げができない。資産運用と決済も、顧客の増加に見合う手数料を得られず、全国の店舗網は固定費として残る。経費削減は続くが、収益の落ち込みを埋めきれない。
2035年の純利益は49億ドル、自己資本は478億ドルとなる。10年の正味還元は約305億ドルで、利益の拡大よりも既存資本の維持が優先される。2026年の増資は必要な備えになるが、その後の還元余力は限定的だ。保険の堀は弱まり、銀行全体は資本コストをわずかに上回る程度の収益力にとどまる。
- 銀行貸出の利息収益:数量 1,400(平均貸出債権の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.17(貸出残高に対する年間利息収益率。将来は物価と貸出金利・商品構成の変化を含む)→ 売上 237 億ドル・営業利益 24 億ドル。イタウとデジタル銀行にシェアを奪われ、信用費用が上昇
- 債券・銀行間運用・市場業務:数量 2,110(貸出以外の平均利息資産の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.11(利息資産残高当たりの金融収益率。金融取引等の非金利収益も含む近似値)→ 売上 241 億ドル・営業利益 28 億ドル。定期預金の高コスト化と資金流出で利ざやが縮小
- 保険・医療・年金・積立:数量 239(年間保険料・年金拠出・積立取扱額の2025年価格換算値(億ドル))× 価格 0.58(総取扱額当たりIFRS認識収益係数。契約単価・保障の構成と認識時期を含む)→ 売上 138 億ドル・営業利益 31 億ドル。医療費と保険金が上昇し、保険シェアも緩やかに低下
- 決済・口座・資産管理手数料:数量 76.0(グループ顧客数(百万人、非口座保有者を含む))× 価格 0.77(顧客百万人当たり年間手数料収益(億ドル))→ 売上 59 億ドル・営業利益 11 億ドル。名目手数料は物価に追いつかず、顧客当たり利用収益が減る
倍率:k8.75%、帳簿ROE=49÷478=10.25%、長期g2.5%、堀の残存割合1/2。RONIC約9.50%、10年目利益の正当化PER上限は約12.08倍となる。しかし保険と預金の競争優位が薄れる筋書きなので、その約86%の10.4倍で評価する。中立の12.9倍より明確に低い。悲観側を過去のPBRや市場PERに合わせて持ち上げていない。時価総額=49×10.4=509.6億ドル。ROEは資本コストを上回るため利益の現在価値を主に使い、自己資本をそのまま床にしていない。
確率:2026年に延滞率が上がっていることと、デジタル銀行の顧客獲得速度を重視した。ブラジルの金利・信用循環では銀行収益が長期間低迷する展開も珍しくないため、同業米国大手より高めの確率とした。
悲観 15% 悲観:信用危機と顧客流出で銀行の堀が崩れる 利益 18 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.65 ドル175 億ドル
ブラジルの財政不安が信用市場へ波及し、企業と家計の延滞が急増する。高金利の資金調達が続くなか、ブラデスコは安全な顧客だけに融資を絞り、貸出市場のシェアを失う。イタウ銀行や国有銀行は優良顧客を維持するが、ブラデスコは預金を守るため高い金利を払い続ける。過去の店舗網は費用負担になり、デジタル競争に追いつけない。
保険でも医療費と保険金が急増し、ポルト・セグロなどへの契約流出が進む。金融資産の評価損、保険責任準備金の積み増し、貸倒引当によって、2027〜2029年には累計で大きな純損失が発生する。その後は回復しても、顧客シェアと低コスト預金の基盤は元に戻らない。新しい買収や増資が少数株主の取り分を薄める危険も残る。
2035年の純利益は17.5億ドル、自己資本は390.6億ドルである。2026年に約45億ドルの利益を確保しても、2027〜2029年の合計で約55億ドルの損失を出し、2030〜2035年の合計約150億ドルで立て直すため、10年間の純利益累計は約140億ドルにとどまる。正味還元は75億ドルに縮み、事業は存続しても資本コストを稼げない銀行になる。
- 銀行貸出の利息収益:数量 1,150(平均貸出債権の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.14(貸出残高に対する年間利息収益率。将来は物価と貸出金利・商品構成の変化を含む)→ 売上 161 億ドル・営業利益 8 億ドル。預金流出・融資シェア低下・不良債権増加で稼ぐ力を失う
- 債券・銀行間運用・市場業務:数量 1,750(貸出以外の平均利息資産の2025年価格換算残高(億ドル))× 価格 0.10(利息資産残高当たりの金融収益率。金融取引等の非金利収益も含む近似値)→ 売上 168 億ドル・営業利益 13 億ドル。保有資産の縮小と調達費用増加で利ざやが薄くなる
- 保険・医療・年金・積立:数量 213(年間保険料・年金拠出・積立取扱額の2025年価格換算値(億ドル))× 価格 0.51(総取扱額当たりIFRS認識収益係数。契約単価・保障の構成と認識時期を含む)→ 売上 108 億ドル・営業利益 20 億ドル。契約シェア低下に加え医療保険金・準備金が増加
- 決済・口座・資産管理手数料:数量 67.0(グループ顧客数(百万人、非口座保有者を含む))× 価格 0.62(顧客百万人当たり年間手数料収益(億ドル))→ 売上 42 億ドル・営業利益 6 億ドル。利用顧客減少、即時決済・デジタル競争で手数料単価も下落
倍率:2035年ROE=17.5÷390.6=4.48%でk8.75%を大きく下回る。超過利益の成長は価値を生まないためPER上限は1÷k=11.43倍である。信用危機後の経営と貸出資産の質を考えて10.0倍とし、時価総額は17.5×10=175億ドル。構造的な負けの筋書きの稼ぐ力は17.5÷8.75%=200億ドルで、税後の売却可能資産の床165.6億ドルとの大きい方を超えていない。現在の自己資本に過去の谷のPBRを掛けたものではなく、将来の積み上がった自己資本390.6億ドルに資産の床を掛けてもいない。時価総額175億ドルは正の数であり、正味還元75億ドルを足しても基準時価総額431.3億ドルを下回る。
確率:国内財政への信認低下、信用損失の深刻化、デジタル銀行への預金流出、保険金支払の増加が重なる展開。危機が10年間の資本収益を損ねる確率として15%を採用した。米国大手銀行より悲観の確率を厚くしたのはブラジルの信用・通貨・支配株主リスクによる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
銀行貸出の利息収益
個人・法人・農業・カード向けの貸出で利息を得る。利益は貸出の金利収入から預金等の資金コスト、貸倒費用、経費を引いた残りである。
| 数量平均貸出債権の2025年価格換算残高(億ドル) | 価格貸出残高に対する年間利息収益率。将来は物価と貸出金利・商品構成の変化を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,270 | 0.17 | 213 | 15 |
| 10 年後 中立 | 1,540 | 0.19 | 296 | 46 |
取り方:2025年Form 20-FのIFRS平均顧客貸出債権7,144億レアル、利息収入1,199億レアル、平均利回り16.8%を使用。添付factsの2025年全社ドル表示との整合を図るため、平均残高を約1,270億ドルへ換算した。貸出市場の規模はブラジル中央銀行統計と会社の拡大貸出シェア約10.4%を照合した。将来のvolumeはインフレを除いた実質債権量、priceは名目金利・インフレ・融資構成とする。営業利益は独立開示のない配賦推計で、資金費用と貸倒費用を反映した後の値である。
債券・銀行間運用・市場業務
ブラジル国債、金融機関向け運用、準備預金、その他の金融資産から利息や市場取引収益を得る。銀行と保険の調達費用や準備金負担が利益を左右する。
| 数量貸出以外の平均利息資産の2025年価格換算残高(億ドル) | 価格利息資産残高当たりの金融収益率。金融取引等の非金利収益も含む近似値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,015 | 0.13 | 267 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2,310 | 0.13 | 305 | 41 |
取り方:2025年Form 20-FのIFRS平均利息資産1兆8,497億レアルから平均顧客貸出7,144億レアルを除き、貸出以外の約1兆1,353億レアルを約2,015億ドルに換算した。利息収入の貸出以外の部分に金融商品の評価・為替等の収益を加え、全社収益との整合を取るため収益率13.255%を使用した。これは市場運用の純利ざやではなく粗収益の代理値であり、資金調達費用、保険責任準備金の金融費用、ヘッジの効果は営業利益率に織り込む。
保険・医療・年金・積立
生命保険、医療保険、損害保険、年金、積立商品を銀行窓口と直接販売で扱う。保障サービスの対価、契約に伴う運用収益から保険金・事業費を引いて稼ぐ。
| 数量年間保険料・年金拠出・積立取扱額の2025年価格換算値(億ドル) | 価格総取扱額当たりIFRS認識収益係数。契約単価・保障の構成と認識時期を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 211 | 0.52 | 109 | 23 |
| 10 年後 中立 | 263 | 0.64 | 168 | 45 |
取り方:2025年Form 20-Fの保険料・年金拠出・積立取扱額約1,185億レアルを約210.7億ドルとした。IFRS認識保険・年金収益約611億レアルを総取扱額で割った係数が約0.516である。保険料総額とIFRS収益は同じ概念ではないため、この係数を販売単価と会計上の認識の合成指標とした。保険市場全体の総取扱額は同社のシェア22.8%から約5,200億レアルと推定。主な競合はポルト・セグロ、ブラジル銀行系保険、独立系保険会社である。
決済・口座・資産管理手数料
カード、送金、決済、口座サービス、資産運用、信託、その他顧客サービスから手数料を得る。取扱頻度と管理資産の厚みが収益を決める。
| 数量グループ顧客数(百万人、非口座保有者を含む) | 価格顧客百万人当たり年間手数料収益(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 74.3 | 0.74 | 55 | 11 |
| 10 年後 中立 | 82.0 | 0.90 | 74 | 16 |
取り方:2025年Form 20-FのIFRS手数料収益約311億レアルとグループ顧客約7,430万人を照合し、総額約55.1億ドルを顧客数で割った。顧客には保険利用のみの人もいるため、顧客1人当たり料金を直接開示した数字ではなく収益密度の代理値である。今後のvolumeは市場の利用人口と顧客シェア、priceは利用頻度・サービス構成・手数料単価から組み立てる。2025年の4部門の配賦営業利益合計は約61億ドルで、全社実績50.7億ドルとの差約10.3億ドルは本社・システム・共通費用に当たる。
リスクと懸念
貸倒・延滞の長期悪化
2026年9月末の90日超延滞率は4.6%で、前年の4.1%より上昇した。拡大貸出残高は増加しているが、資金調達費用が高く、借り手の返済余力は強くない。融資の成長率だけでは銀行の質を判断できない。法人債権とカード債権の引当が同時に増えると、貸出収益を増やしても純利益と自己資本が削られる。信用危機が長引けば追加増資も必要になる。
低コスト預金の流出
預金の調達費用は、銀行の価格決定力を最も直接的に示す。要求払預金が減り、高金利の定期性預金へ置き換われば、貸出の金利収入が増えても利ざやは縮む。イタウ銀行、ヌーバンク、国債などの運用商品との競争が強まれば、顧客数を維持しても預金の採算が悪化する。長く続いた銀行網の優位が崩れれば、資本コストを上回る利益を維持できない。
保険金・医療費の上昇
保険はグループの利益を安定させる柱だが、医療保険の保険金支払は物価以上に増える可能性がある。規制や契約条件で保険料を十分に引き上げられなければ、加入者が増えても引受採算は下がる。年金・積立商品の責任準備金は契約者への負債でもあり、資産が大きいことを余剰現金と誤認できない。再編の成果は、保険事業の利益率と資本効率で確かめる必要がある。
ブラジルの財政・金利・レアル
2026年10月の選挙後にはブラジルの金融市場が大きく下落した。政策変更への懸念は国債、銀行の調達コスト、顧客の信用力に同時に作用する。分析上のドル建て為替と米国の名目物価は全筋書きで固定したが、実際のレアル安はADR株主のドル建て資産価値を減らす。通貨リスクは国内融資の成長と独立しておらず、景気後退と同時に顕在化しやすい。
議決権と少数株主の取り分
BBDは優先株を裏付けとするADRで、普通株と同じ議決権を持たない。ファンダソン・ブラデスコは直接・間接で資本の約31.5%を保有し、普通株を通じて経営に強い影響力を及ぼす。2026年の増資では支配株主も払い込んだが、すべての株主にとって有利な資本配分だったとは自動的に言えない。大型買収やグループ内再編が続けば、利益の帰属と資本効率を追う必要がある。
AI・デジタル銀行・手数料競争
銀行の本業は人月や席数で販売するサービスではないため、AIエージェント代替の縮小係数を全社に適用する対象ではない。しかし、問い合わせ、口座管理、融資手続き、資産運用の案内は自動化され、利用者は銀行の画面を通さずサービスを使えるようになる。ブラデスコにも事務費削減の機会があるが、ヌーバンクなどの競合も同じ技術を利用する。単純な手数料と預金顧客の囲い込みは縮小しうる。
増資と銀行特有の現金の錯覚
2026年の約100億レアルの増資は貸出成長を支えるが、既存株主が払い込んだ資金を将来の配当と同じ収益として扱うことはできない。2025年の現金等は約274.7億ドルあった一方、有利子負債は約1,444億ドルだった。ただし銀行の負債は仕入れでもあり、一般事業会社の純負債と同じ倒産指標にはならない。必要なのは預金と保険契約者への支払能力、流動性、規制資本の検証である。
今後の分かれ目
- 90日超延滞率が5%を超え、貸倒引当が2四半期以上連続で増えたら
- 貸出残高の成長率より信用費用を優先して見る。2035年の銀行貸出部門の利益率を下げ、やや悲観の確率を高める。資本不足の兆候があれば、正味還元をさらに減らす。
- 90日超延滞率が4%以下へ戻り、経費率の改善が四半期をまたいで続いたら
- 2026年の収益改善が構造的であるとの確信を高める。貸出部門の利益率と自己資本利益率を上方修正し、やや楽観・楽観の確率を増やす。
- 要求払預金の流出が止まり、総預金に対する調達費用が競合より改善したら
- 預金基盤の堀が維持されている証拠になる。証券運用と銀行貸出の利ざやを改善させ、中立の利益を引き上げる。単なる高金利の金利収入増とは区別する。
- 保険の市場シェアが20%を継続して下回り、医療保険の損害率も上昇したら
- グループ最大の差別化要因が弱まるため、保険部門の数量と利益率をともに引き下げる。楽観側の確率を減らし、悲観の床も保険資産の回収可能性に合わせて点検する。
- 2026年の増資後もCET1比率が持続的に低下し、再度の大型増資が必要になったら
- 成長のための再投資利回りが十分でない疑いが強まる。株主の正味還元から新たな払込額を控除し、追加で積み増す自己資本に見合う利益が得られるか検証する。
- デジタル取引が増えても手数料収益が横ばいとなり、顧客当たり収益が低下したら
- 利用者の増加が株主利益につながっていないと判断する。決済・資産管理部門の価格前提を下げ、ヌーバンクなどへの顧客接点の移動を悲観側に織り込む。
- ブラジルの財政不安によってレアルが持続的に下落し、国債調達金利も上昇したら
- ドル建ての利益と自己資本の換算価値を別途再評価する。固定為替による比較が現実と乖離するため、ブラジル固有の収益悪化と通貨の減価を分けて見積もり直す。
見ておくもの
- 90日超延滞率、信用損失率、ステージ3債権、引当金のカバー率
- 拡大貸出残高の前年比伸び率とブラジル貸出市場に対するシェア
- 顧客預金の種類別残高、調達金利、預金構成、預金流出入
- 貸倒引当後の顧客純金利収益と銀行業務の経費率
- 保険・年金・積立分野の市場シェア、医療保険の保険金支払率
- 普通株式等Tier1比率、増資額、配当と株主資本利子、実際の株数
- デジタル顧客の活動率、顧客当たり手数料、資産運用残高
- イタウ銀行・ヌーバンク・ブラジル銀行との競争、PIXによる手数料の変化
- ブラジル政策金利、国債利回り、レアルの動き、財政政策
- 支配株主と少数株主の間の資本配分、グループ内再編の対価
倍率と資本コストの決め方
基準の2025年財務と2026年7〜9月期の開示から、貸出・証券運用・保険・手数料の数量と価格を先に組み立てた。中立の2035年純利益86億ドルと自己資本540億ドルからROE約15.9%を算出し、k8.75%、長期g3.5%、普通の堀によるRONIC約12.34%を使って正当化PERの上限約14.12倍を求めた。信用循環を考慮してPER12.9倍とした。現在や過去のPER・PBR、同業の市場倍率から逆算していない。10月23日の指定基準時価総額431.3億ドルとの比較から、本質価値約653.6億ドル、差約+51.6%、割安となる。一方、10月27日の市場情報上の時価総額は約326.3億ドルに下落した。これを使って利益や倍率を引き上げることはせず、基準日の違い、選挙後の変動、10月の増資と株式クラス差を明記した。IFRS純利益には株式報酬と償却を含み、二重の足し戻しをしていない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国上場株の共通基準8.0%に、景気・信用循環のquality+0.75%を加えた8.75%。同じ領域のJPモルガン7.75%、シティグループ8.5%より高い。同行には保険の強みがある一方、ブラジルの貸倒と収益の振れが大きい。預金など金融事業の資金調達を一般事業会社の純有利子負債と同じように加算せず、国内金利と信用費用を各部門の利ざやと利益率で扱う。