結論
ステート・ストリート(State Street、STT)は、保管・管理資産(AUC/A)59.2 兆ドル、運用資産(AUM)6.3 兆ドルを持つ世界有数の保管銀行で、機関投資家の資産の保管・ファンド事務・証券貸付・為替を担う投資サービスと、SPDR ブランドの ETF とインデックス運用の SSGA(ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント)の 2 本柱である。2026 年 7〜9 月期は総収益 40.0 億ドル(前年比 +13%)、手数料 31.4 億ドル(+11%)、純金利収益 8.6 億ドル(+21%)、費用 +8%、税引前利益率 34.6%、ROTCE 25.1% で、11 四半期連続の正のオペレーティング・レバレッジ。
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、規模・規制・切り替えの手間という堀は残る。ただし収益の約 2 割は預金の純金利収益で、高い短期金利が続くかに左右され、SPDR の運用報酬とサービスの手数料は長期に下がる。さらに BNY と比べて運用部門(SSGA)の比重が大きく、報酬率の競争の影響を受けやすい。
中立の筋書きは AUC/A を年 6.5%、AUM を年 6% で伸ばし、手数料率を年 1% 前後下げ、10 年後の純利益を約 65 億ドルとした。倍率は利益ベースの式(k 8.5%=基本 8.0% に quality +0.5%、資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)で、10 年後の中立は上限 PER 約 15.2 倍の 9 割の約 13.7 倍。確率で加重した価値は今の時価総額を 3 割強上回り、結論は『割安』。ただし倍率の高さは k と g に依存し、k を 1% 上げると倍率は 2〜3 割縮む。市場連動と預金の利ざやの振れ、SSGA の報酬率競争を悲観の確率(10 年で悲観 13%・やや悲観 21%)で表し、10 年の悲観では今の時価総額の約 0.5 倍まで下がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。世界の貯蓄は増え、その保管・会計・決済の仕組みは必要であり続ける。ステート・ストリートの堀は、何兆ドルもの資産を預かる信用、世界の多数の市場を結ぶ保管網、基盤を切り替える手間、そして SPDR という世界最大級の ETF の規模にあり、10 年後も残る可能性が高い。ただし堀は『価格を決める力』ではなく『顧客が去らない力』で、手数料率と報酬率は競争で下がる。
次にオーナー利益。保管・運用は設備投資が小さく、伸びに要るのは規制資本と人・システム。有形普通株自己資本の利益率(ROTCE)25.1% は BNY の 29% より低いが、2025 年の 20% から上がった。純金利収益(収益の約 2 割)は金利の水準に依存し、この分の質は低い。株式報酬は小さい。
安全域。k 8.5%、g 4.0%、帳簿の ROE 16.9%(ROTCE 24%)の利益ベースの式で中立の 10 年後 PER は 13.7 倍(上限 15.2 倍の 9 割)。今の PER(GAAP の実績で 10 倍台前半)より高い。確率で加重した価値が今の時価総額を上回るのは、今の値段が利益の質に比べて低いから。ただし利益は市場の水準と預金の利ざやに連動し、10 年の悲観では時価総額が今の半分ほどまで下がりうる。事業への確信は高いが、BNY ほどの利益率ではなく、運用部門の報酬率競争が重しになる。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 2 つ。第 1 は投資サービス(総収益の約 8 割)。機関投資家(運用会社・年金・保険)の資産を預かるカストディ、ファンド会計・事務、証券貸付、為替、ウェルス向けの基盤、そして前線から後方までを一体で提供する統合基盤アルファ(Alpha)からなる。収益は預かり資産に連動するサービス手数料(2026 年 7〜9 月期 14.9 億ドル、前年比 +10%)、顧客の現金預金を運用する純金利収益(8.6 億ドル、+21%)、為替・証券貸付・ソフトウェア収益などである。
第 2 は投資運用の SSGA(総収益の約 2 割)。SPDR シリーズの ETF(SPY・SPYM・金 ETF など)、機関投資家向けのインデックス運用、マルチアセット、短期債とアクティブ運用を持つ。AUM は 6.3 兆ドルで、運用手数料は 2026 年 7〜9 月期に 8.0 億ドル(前年比 +20%)。低料金の S&P 500 連動 ETF の SPYM は四半期の純流入で世界首位の ETF になった(2026 年 1〜3 月期)。
全体の収益は手数料(約 78%)と純金利収益(約 22%)。費用は人件費(約半分)と情報システムで、2026 年は +8% 前後。1 兆ドル規模の手数料を競合と争う、資本を食わない手数料型の銀行である。部門ごとの収益と利益率は開示を確認できず、手数料の比から按分した推定値を使う。
優良さと弱いところ
優良さは 4 つの柱で見る。第 1 は規模とネットワーク。AUC/A 59.2 兆ドルは BNY(63.4 兆ドル)に次ぐ世界 2 位級で、JP モルガン・シティと並ぶ寡占の一角。第 2 は切り替えの手間。何兆ドルもの資産の保管・会計・決済の基盤を乗り換えるには数年かかり、顧客は移さない。第 3 は ETF の規模。SPY は世界最大級の ETF で、SPDR 全体の規模が運用の費用を薄める。第 4 は統合基盤のアルファ。導入待ちの収益が 3.5〜4.4 億ドルあり、運用会社の前線・中核・後方を一体で受ける。
弱い所は 4 つ。(1)手数料率の低下。大手運用会社の値切りと内製化、BNY・JP モルガンとの価格競争で保管の収益率は長期で下がる。(2)SSGA の報酬率。バンガード・ブラックロックとの値下げ競争(SPYM のような低料金商品)が収益率を押し下げ、資金は流入しても収益の伸びが鈍る。(3)預金の利ざやへの依存。NIM は 1.12% で前期より 1bp 縮んでおり、純金利収益の前期比の伸びは 0.5% にとどまる。(4)資本の余力。Tier 1 レバレッジ比率 5.5%、CET1 11.0% で、還元性向は 63% と BNY(86%)より低く、利益の伸びを自社株買いで補う余地が小さい。BNY より ROTCE(25.1%)は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の運用資産は 2025 年に約 147 兆ドル(BCG)で、収益成長の 8 割超は市場の値上がり。保管業界は BNY・ステート・ストリート・JP モルガン・シティの大手の寡占で、ステート・ストリートの AUC/A は 2026 年 7〜9 月期に前年比 +15% の 59.2 兆ドル(BNY は +10% の 63.4 兆ドル)。成長はほぼ自力で、市場の値上がり、純新規の受注(7〜9 月期の新規サービス手数料 0.68 億ドル)、顧客の純流入による。ETF 業界では、2025 年の純流入が過去最高の 1.5 兆ドル、米国の ETF の純資産は 13 兆ドル超で、ブラックロック(iShares)・バンガード・ステート・ストリート(SPDR)の 3 社が大半を占める。
構造の変化は 3 つ。第 1 は金利。短期金利 3.5〜4% が続き、預金の利ざやは保たれるが、預金コストも上がり純金利マージンは頭打ち。第 2 はトークン化。トークン化 MMF・ETF・預金・ステーブルコインの基盤を始めたが、既存の決済・保管を置き換える脅威でもある。第 3 はパッシブ・低料金化。ETF の手数料は 0.03〜0.2% まで下がり、規模を持たない運用会社は撤退し、上位 3 社に資金が集中する。
循環の位置は、2026 年に株式市場が高く、取引量・証券貸付・為替が好調で、山に近い。運用手数料は市場の水準に比例するので、株価の調整で収益が落ちる。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いで、2026 年 7〜9 月期は 6.5 億ドル(配当 2.5 億ドル・自社株買い 4.0 億ドル)、総還元性向は 63%。2025 年は配当と自社株買いの合計が純利益の約 76%。株数は 2014 年から年 4〜5% のペースで減ってきたが、2025 年は純利益の伸びを資本に回して減少は −4.5% に下がった。Tier 1 レバレッジ 5.5%・CET1 11.0% は下限に近く、還元性向を上げるには利益か資本規制の緩和(SLR 見直し)が要る。株式報酬の増発は年 4 億ドル程度と推定し、正味の還元から差し引く。
M&A は近年の大型の買収がなく、費用削減(変革の効果 年約 10 億ドル、2029 年ごろ)とアルファの受注が中心。過去にはミズホの日本の保管事業の取得など、地域を広げる買収があった。CEO のロナルド・オハンリー(Ronald O'Hanley)は 2019 年就任。買われる側になる可能性はほぼなく、ほかの保管銀行との大型統合も規制と顧客集中の観点から可能性が低い。優先株は約 27 億ドル残り、普通株の純利益から配当が引かれる。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 12.0 億ドル(2026 年 1〜9 月、1〜6 月は 10-Q の実額 8.0 億ドル・7〜9 月は決算資料の 4.0 億ドル)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ステート・ストリートは、BNY と並ぶ『見えない基盤』と、世界最大級の ETF(SPDR)の両方を持つ。AUC/A は 59.2 兆ドルで前年比 +15%、AUM は 6.3 兆ドルで +16%。サービス手数料(+10%)と運用手数料(+20%)が同時に伸び、総収益は前年比 +13%、費用は +8% と、5 ポイント超のオペレーティング・レバレッジが 11 四半期続く。税引前利益率は前年同期の 31.1% から 34.6% に、ROTCE は 20.9% から 25.1% に上がり、中期目標(35%・20% 台半ば)にもうすぐ手が届く。
アルファの受注残は 3.5〜4.4 億ドルあり、導入が進めば運用会社への一体提供でサービス手数料が積み上がる。SPYM は世界で最も資金を集めた ETF で、低料金でも資金流入の規模が収益を生む。変革の効果(年約 10 億ドル)が 2029 年にかけて出れば、利益率は 35% を超える。2026 年の見通しは手数料 +13〜14%、純金利収益 +15〜16% に引き上げられた。
この質の事業が PER 10 倍台で売られているのは割安で、10 年後に純利益が約 2.2 倍になれば、利益ベースの倍率 13〜14 倍の下で今の時価総額の約 2.0 倍になる。
慎重な見方
今の利益は、高い市場と高い金利の山である。純金利収益は収益の約 2 割で、2026 年の +21% は一巡し、7〜9 月期は前期比 +0.5%、NIM は 1bp 縮んだ。預金は MMF・ステーブルコインに流れ、利ざやは縮む。手数料のうち『その他手数料』は市場関連の調整で前年比 −29% と、すでに市場の振れが出ている。
手数料率と報酬率は長期の下げ傾向にある。SPYM のような超低料金の ETF が資金を集めるほど、SSGA の収益率は下がる。ブラックロックとバンガードは規模で攻め、報酬の下げ競争に終わりが見えない。保管でも BNY・JP モルガンは価格で攻め、AI で費用が下がっても顧客がその分の値下げを求める。トークン化とステーブルコインは、既存の保管・決済・預金の仲介を置き換える脅威でもある。
資本は Tier 1 レバレッジ 5.5%・CET1 11.0% と下限に近く、還元性向を上げる余地は小さい。ROTCE は BNY より低く、利益率の目標(35%)を達成しても質は BNY に届かない。そして値段。式の倍率は k が 8.5% で成り立っており、k が 1% 上がれば倍率は 2〜3 割縮む。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方がやや強く、10 年の楽観・やや楽観の合計を 35%、悲観・やや悲観を 34% とほぼ並べた(BNY より悲観側をやや厚くした)。ステート・ストリートは BNY より ROTCE が低く、運用部門(SSGA)の報酬率競争と利益の市場連動が大きいため、悲観・やや悲観を BNY より少し厚く置いた。値段は、式どおりの倍率(中立 10 年後 13.7 倍)で測ると強気の見方が勝つ。ただし倍率は k 8.5% と g に敏感で、結論は『割安』でも幅を持って読むべきである。手数料率の低下は中立に織り込み、預金の利ざやの縮小と報酬率の崩れはやや悲観に入れた。10 年の悲観は手数料の崩れ・ETF 報酬のゼロ化・預金流出(確率 13%)に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 308.86 ドル847 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 124.55 ドル342 億ドル)。 今の値に割り戻すと 219.44 ドル602 億ドル、今との差 +30.7%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 527.39 ドル1,446 億ドル | 163.76 ドル449 億ドル | +311.8% | +15.2% | 76.03 ドル208 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 419.43 ドル1,150 億ドル | 145.89 ドル400 億ドル | +236.8% | +12.9% | 135.68 ドル372 億ドル |
| 中立 | 31% | 324.97 ドル891 億ドル | 128.02 ドル351 億ドル | +169.9% | +10.4% | 140.42 ドル385 億ドル |
| やや悲観 | 21% | 187.83 ドル515 億ドル | 107.59 ドル295 億ドル | +76.0% | +5.8% | 62.04 ドル170 億ドル |
| 悲観 | 13% | 76.96 ドル211 億ドル | 71.12 ドル195 億ドル | −11.8% | −1.2% | 19.25 ドル53 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 308.86 ドル847 億ドル | 124.55 ドル342 億ドル | +158.2% | +10.0% | 433.42 ドル1,188 億ドル |
今の株価時価総額 167.84 ドル460 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 11% 楽観:ETF と Alpha で寡占を広げ、税引前利益率 38%、ROTCE 33% 利益 94 億ドル · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 527.39 ドル1,446 億ドル
2035 年末、AUC/A は約 122.1 兆ドル(年 8.5%)、AUM は約 13.5 兆ドル(年 9%)。SPDR(SPY・SPYM・金 ETF)が低料金のなかでも資金を集め、アクティブ ETF とプライベート市場の商品で運用手数料率の低下が止まる。サービス側は Alpha(フロント〜バックの統合基盤)が大手運用会社の標準になり、切り替えの手間でさらに寡占が進む。AI とプラットフォームで費用は収益より遅く増え、税引前利益率は 38% に近づく。総収益は 327 億ドル、税引前利益は 123 億ドル、純利益は約 94 億ドル、ROTCE は 33% 前後。10 年の正味の還元は約 449 億ドル。倍率は利益ベースの式の上限の 9.2 割(PER 15.4 倍)で測る。
- 投資サービス(保管・ファンド事務・アルファ・ウェルス・証券貸付・為替):数量 1,220,900(保管・管理資産 AUC/A(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(手数料+預金の純金利収益。この部門の収益 ÷ AUC/A))→ 売上 263 億ドル・営業利益 98 億ドル。AUC/A 年 8.5%
- 投資運用(SSGA:SPDR ETF・インデックス・マルチアセット):数量 134,900(運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(運用手数料+関連収益))→ 売上 65 億ドル・営業利益 30 億ドル。AUM 年 9%
倍率:純利益は優先配当後、自己資本は優先株・のれん・無形資産(約 80 億ドル超)を含む帳簿の値。有形普通株で見た ROTCE は帳簿の ROE より約 7 ポイント高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 23.8%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 16.1% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=16.7 倍が上限。利益の質(保管の堀は深いが、運用部門の報酬率競争と市場連動、預金の利ざやで振れる)から、上限の 9.2 割の PER 15.4 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1571 億ドル)。
確率:ETF の寡占と Alpha の受注が重なり、費用が下がる展開。10 年通じた実現は 1 割強。
やや楽観 24% やや楽観:AUC/A 年 7.5%、ROTCE 28〜29% を保つ 利益 78 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 419.43 ドル1,150 億ドル
2035 年末、AUC/A は約 111.3 兆ドル(年 7.5%)、AUM は約 11.8 兆ドル。サービスは Alpha の受注と発行体・ウェルス向けの取り込みで伸び、手数料率は年 0.8% 低下にとどまる。SSGA は ETF とマルチアセットで流入が続くが報酬率は下がる。総収益は 286 億ドル、税引前利益は 103 億ドル(利益率 36%)、純利益は約 78 億ドル、ROTCE は 28〜29%。景気後退を 1〜2 回挟んで利益は 2〜3 割落ちるが、ならすと年 7% 弱で伸びる。10 年の正味の還元は約 400 億ドル。
- 投資サービス(保管・ファンド事務・アルファ・ウェルス・証券貸付・為替):数量 1,113,000(保管・管理資産 AUC/A(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(手数料+預金の純金利収益。この部門の収益 ÷ AUC/A))→ 売上 232 億ドル・営業利益 85 億ドル。AUC/A 年 7.5%
- 投資運用(SSGA:SPDR ETF・インデックス・マルチアセット):数量 117,500(運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(運用手数料+関連収益))→ 売上 54 億ドル・営業利益 24 億ドル。AUM 年 7.5%
倍率:純利益は優先配当後、自己資本は優先株・のれん・無形資産(約 80 億ドル超)を含む帳簿の値。有形普通株で見た ROTCE は帳簿の ROE より約 7 ポイント高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 20.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 14.3% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=16.0 倍が上限。利益の質(保管の堀は深いが、運用部門の報酬率競争と市場連動、預金の利ざやで振れる)から、上限の 9.2 割の PER 14.7 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1249 億ドル)。
確率:足元の勢いがおおむね続く。起こりやすい。
中立 31% 中立:AUC/A 年 6.5%、手数料率は低下、ROTCE 24% 前後 利益 65 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 324.97 ドル891 億ドル
2035 年末、AUC/A は約 101.4 兆ドル(年 6.5%)、AUM は約 10.2 兆ドル(年 6%)。手数料率(収益 ÷ 残高)は競争と顧客の値下げ要求で年 1% 前後下がり、純金利収益の追い風も 2026 年から薄れる。ただし費用は変革と AI で収益より遅く増え、税引前利益率は 35% 前後を保つ。総収益は 248 億ドル(2028 年から年 5% 前後)、税引前利益は 86 億ドル、純利益は約 65 億ドル、ROTCE は 24% 前後(中期目標の 20% 台半ばのやや上)。景気後退を 2 回挟み、そのたびに利益は 2〜3 割落ちる。10 年の正味の還元は約 351 億ドル。価格(手数料率)は物価並みには上がらず、名目でも下がる。
- 投資サービス(保管・ファンド事務・アルファ・ウェルス・証券貸付・為替):数量 1,013,700(保管・管理資産 AUC/A(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(手数料+預金の純金利収益。この部門の収益 ÷ AUC/A))→ 売上 203 億ドル・営業利益 72 億ドル。AUC/A 年 6.5%・手数料率 年 −1%
- 投資運用(SSGA:SPDR ETF・インデックス・マルチアセット):数量 102,100(運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(運用手数料+関連収益))→ 売上 45 億ドル・営業利益 19 億ドル。AUM 年 6%・報酬率 年 −1%
倍率:純利益は優先配当後、自己資本は優先株・のれん・無形資産(約 80 億ドル超)を含む帳簿の値。有形普通株で見た ROTCE は帳簿の ROE より約 7 ポイント高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 16.9%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 12.7% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.2 倍が上限。利益の質(保管の堀は深いが、運用部門の報酬率競争と市場連動、預金の利ざやで振れる)から、上限の 9.0 割の PER 13.7 倍に置いた(検査の上限は時価総額 990 億ドル)。
確率:堀は保たれるが、値下げ圧力と預金の高コスト化で利益の伸びは年 5% 前後にとどまる。
やや悲観 21% やや悲観:値下げと SSGA の報酬率低下が速く、ROTCE 18% に落ちる 利益 42 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 187.83 ドル515 億ドル
2035 年末、AUC/A は約 83.9 兆ドル(年 4.5%)、AUM は約 8.4 兆ドル(年 4%)。BNY・JP モルガンが保管の値を下げて顧客を奪い、大手運用会社の内製化と再入札でサービスの手数料率は年 1.5% 下がる。SSGA はバンガード・ブラックロックとの値下げ競争で報酬率が年 1.5% 下がる。預金は MMF やステーブルコインへ流れる。総収益は 188 億ドル、税引前利益は 57 億ドル(利益率 30%)、純利益は約 42 億ドル、ROTCE は 18%。10 年の正味の還元は約 295 億ドル(余った資本は返す)。優良な保管銀行から普通の銀行に近づき、倍率は式の上限の 9 割(PER 12.3 倍)になる。
- 投資サービス(保管・ファンド事務・アルファ・ウェルス・証券貸付・為替):数量 838,600(保管・管理資産 AUC/A(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(手数料+預金の純金利収益。この部門の収益 ÷ AUC/A))→ 売上 155 億ドル・営業利益 50 億ドル。手数料率 年 −1.5%
- 投資運用(SSGA:SPDR ETF・インデックス・マルチアセット):数量 84,400(運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(運用手数料+関連収益))→ 売上 33 億ドル・営業利益 12 億ドル。報酬率 年 −1.5%
倍率:純利益は優先配当後、自己資本は優先株・のれん・無形資産(約 80 億ドル超)を含む帳簿の値。有形普通株で見た ROTCE は帳簿の ROE より約 7 ポイント高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 12.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 10.4% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.6 倍が上限。利益の質(保管の堀は深いが、運用部門の報酬率競争と市場連動、預金の利ざやで振れる)から、上限の 9.0 割の PER 12.3 倍に置いた(検査の上限は時価総額 573 億ドル)。
確率:JP モルガン・BNY との価格競争と、パッシブ運用の報酬率の底割れが同時に進む展開。ステート・ストリートは ETF 運用を併せ持つので、保管の値下げとインデックスの値下げが重なる。
悲観 13% 悲観:構造的に負ける(手数料の崩れ・ETF 報酬のゼロ化・預金流出) 利益 19 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 76.96 ドル211 億ドル
2035 年末、保管・管理の手数料率は競争と内製化で 2025 年の約 7 割まで下がり、SPDR を含むインデックス運用の報酬率はゼロ近くへ向かう。トークン化とステーブルコインで決済・預金・担保の一部が基盤の外へ出て、預金が流出する。AUC/A は約 72.6 兆ドル(年 3%)、AUM は約 7.0 兆ドル(年 2%)に伸びが鈍る。総収益は 135 億ドル、税引前利益は約 27 億ドル(利益率 20%)、純利益は約 19 億ドル、帳簿の ROE は 6.0%。10 年の正味の還元は約 195 億ドル(成長しないので全部返す)。もう寡占の優良事業ではなく、普通の銀行として稼ぐ力の上限の 9.5 割(PER 11.2 倍)で測り、時価総額は今の約 0.5 倍になる。
- 投資サービス(保管・ファンド事務・アルファ・ウェルス・証券貸付・為替):数量 725,700(保管・管理資産 AUC/A(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(手数料+預金の純金利収益。この部門の収益 ÷ AUC/A))→ 売上 113 億ドル・営業利益 26 億ドル。手数料の崩れ・預金流出
- 投資運用(SSGA:SPDR ETF・インデックス・マルチアセット):数量 69,500(運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの収益率(運用手数料+関連収益))→ 売上 22 億ドル・営業利益 5 億ドル。報酬率ほぼゼロへ
倍率:稼ぐ力で測る(SCHEMA §1-3)。構造的に負けた筋書きで、ROE が k を下回るため PER は 1÷k が上限になる。ROE 6.0% が k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で、PER は 1÷k=11.8 倍が上限。上限の 9.5 割の PER 11.2 倍(時価総額 222 億ドルが上限)に置いた。PBR は結果であって根拠ではない。
確率:保管の値下げ、運用報酬のゼロ近くへの低下、預金のステーブルコイン・MMF への流出が同時に来る構造的な負け。BNY より運用部門の比重が大きく、ここがやや厚い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
投資サービス(保管・ファンド事務・アルファ・ウェルス・証券貸付・為替)
機関投資家向けの保管・管理、ファンド会計・事務、証券貸付・為替、統合基盤アルファ、ウェルス向けサービス。顧客の現金預金の純金利収益もここに含む。
| 数量保管・管理資産 AUC/A(億ドル) | 価格残高あたりの収益率(手数料+預金の純金利収益。この部門の収益 ÷ AUC/A) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 540,000 | 0.00 | 113 | 30 |
| 10 年後 中立 | 1,013,700 | 0.00 | 203 | 72 |
取り方:2025 年末の AUC/A を約 54 兆ドルと概算(2025 年 7〜9 月期 51.7 兆ドル、2026 年 7〜9 月期 59.2 兆ドル)。2025 年の総収益は約 140 億ドル、そのうち SSGA(運用手数料と少額の関連収益)を約 27 億ドルと置いて、残りの約 112.5 億ドルを投資サービスとした(部門の開示は確認できず推定)。残高あたりの率は約 2.1bp。営業利益は税引前利益の推定で、利益率 約 27%。
投資運用(SSGA:SPDR ETF・インデックス・マルチアセット)
SPDR の ETF とインデックス運用、機関投資家向けのマルチアセット・短期債・アクティブ運用。
| 数量運用資産 AUM(億ドル) | 価格残高あたりの収益率(運用手数料+関連収益) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 57,000 | 0.00 | 27 | 10 |
| 10 年後 中立 | 102,100 | 0.00 | 45 | 19 |
取り方:2025 年末の AUM を約 5.7 兆ドルと概算(2025 年 7〜9 月期 5.4 兆ドル、2026 年 7〜9 月期 6.3 兆ドル)。2025 年の運用手数料は 7〜9 月期 6.6 億ドル前後の年換算から約 27 億ドルとし、率は約 4.7bp(2026 年 7〜9 月期の年換算では約 5.1bp に上昇)。営業利益は利益率 約 38% と推定(部門の開示は確認できず)。
リスクと懸念
預金の利ざや(純金利収益)への依存
純金利収益は総収益の約 2 割(2026 年 7〜9 月期 8.6 億ドル、前年比 +21%)。ただし前期比は +0.5%、NIM は 1.12%(前期 1.13%)と頭打ち。預金コストの上昇と MMF・ステーブルコインへの預金の流出で縮みうる。2026 年の見通し(+15〜16%)の達成後は伸びが続かない。
手数料率の低下と保管の価格競争
保管・管理の収益率は残高に対し 2bp 前後で、大手運用会社の値切り・内製化と、BNY・JP モルガン・シティとの価格競争で長期に下がる。AI による費用削減の利益は顧客の値下げ要求に移りやすい。収益が残高の伸びより遅く伸びる主因。
SSGA の報酬率の低下(ETF の値下げ競争)
SPYM のような超低料金の ETF に資金が流れ、バンガード・ブラックロックとの値下げ競争が続く。資金が集まっても収益率が下がり、運用手数料の伸びが残高の伸びを下回る。報酬率が 0.03〜0.05% 台に張り付けば、AUM が伸びても収益は伸びない。
市場連動と循環
運用手数料とサービス手数料の大半は残高と取引量に連動し、2026 年は市場が高く為替・証券貸付も好調だった。『その他手数料』は市場関連の調整で前年比 −29%。2008〜09 年は株価が山から約 7 割下がった。危機時は預金が流入するため利益の落ち込みは運用会社より小さいが、AUM 連動の部分は大きく落ちる。
資本の余力と還元の頭打ち
Tier 1 レバレッジ比率 5.5%、CET1 比率 11.0% は下限に近い。7〜9 月期の総還元性向は 63% で、BNY(86%)より低い。資本規制の緩和(SLR の見直し)が追い風だが、厳しくなれば自社株買いが減る。
トークン化・ステーブルコインによる置き換え
トークン化預金・MMF・ステーブルコインの普及で、決済・預金の仲介・担保の受け渡しの一部が既存の銀行網の外に出る。ステート・ストリートはデジタル資産基盤とタウルスとの提携で先に入っているが、収益の源である預金と手数料が減るリスクは残る。
オペレーション・サイバーとアルファの実行
何兆ドルもの決済・保管を担うため、システム障害・サイバー攻撃・オペレーションの失敗は評判と規制の費用が大きい。アルファは導入待ちの収益が大きいが、導入の遅れや費用超過があれば利益率の目標(35%)の達成が遅れる。
今後の分かれ目
- AUC/A の伸びが年 7% を保ち、手数料率の低下が年 1% 以内にとどまったら
- 堀の強さが確認でき、楽観・やや楽観の確率を上げて見る。
- 純金利収益が前期比で連続して減り、NIM が 1.1% を割ったら
- 利益の山を過ぎたと見て、やや悲観の確率を上げ、中立の純利益を 1 割下げて見る。
- 税引前利益率が 35% を超えて定着し、ROTCE が 25% 前後を保ったら
- 変革とアルファの効果が確認でき、中立の利益率を上げ、楽観の確率を上げる。
- SPDR の純流入が続くのに運用手数料の率が年 5% 以上の速さで下がったら
- SSGA の報酬率の低下を年 1.5% 以上に見直し、やや悲観の確率を上げる。
- 株式・債券市場が 2026 年の水準から 2 割以上下がり、取引が細ったら
- やや悲観の確率を上げる。ただし危機時は預金が流入するため、回復後の戻りは早い。
- 資本規制の緩和(SLR 見直し)が確定し、Tier 1 レバレッジの余力が広がったら
- 還元性向を 80% 超へ上げられ、10 年の還元を増やして見る。
- ステーブルコインやトークン化預金に預金の 1 割以上が流出したら
- 預金の利ざやの源が痩せるので、悲観の確率を上げる。基盤が使われる側になるなら確率は動かさない。
見ておくもの
- AUC/A と AUM の伸び(市場・純流入・新規の獲得の別)
- 純金利収益と NIM(預金ベータ・利ざや)
- 手数料率(収益 ÷ AUC/A)と SSGA の運用報酬率
- 税引前利益率(35% を保てるか)と ROTCE(20% 台半ば以上)
- Tier 1 レバレッジ比率・CET1 比率と自社株買いの規模
- アルファの導入待ち収益と新規サービス手数料の受注
- トークン化・ステーブルコイン準備金・デジタル資産基盤の取り扱い高
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP 10 倍台前半)と PBR 1.6 倍を見る前に、2 部門の残高 × 収益率から収益と利益を積み上げ、ROE・g・k から利益ベースの上限 PER を出し、その 9 割に倍率を置いた。中立の 10 年後は PER 13.7 倍(k 8.5%・g 4.0%・帳簿の ROE 16.9%(ROTCE 24%)・RONIC 12.7% の上限 15.2 倍の 9 割)。資本コストは基本 8.0% に quality +0.5%(運用部門の報酬率競争と市場連動)を足した値で、BNY(7.75%)より 0.75 ポイント高く、倍率はその分低い。g は市場(名目 5%)・シェア 0%・手数料率(−1.5%)から出し、ROTCE を成長の根拠にはしていない。金融なので純現金は加算せず、預金は仕入れとして扱った。利払いの変化は brief の推定(10 年 −5 億ドル)を全筋書きの調整に入れた。売上は総収益(手数料+純金利収益)で組み立てた。部門の収益と利益率は推定で、検索で確認できなかった。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 1.26 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。保管の堀は BNY と同じ型だが、運用部門の報酬率競争と市場連動が大きいので、BNY(7.75%)より高く置いた。手数料率の低下・預金の利ざや・トークン化は k に足さず、悲観の確率と利益率で表した。
同じ業種(金融)の AI 分析
読んだ資料
- ステート・ストリート 2026 年 7〜9 月期 決算発表(SEC 8-K)
- ステート・ストリート 2026 年 7〜9 月期 決算プレゼン(SEC 8-K・中期目標)
- ステート・ストリート 2026 年 7〜9 月期 決算説明会の要約(MarketBeat)
- ステート・ストリート 2026 年 7〜9 月期の要約(Panabee)
- ステート・ストリート 2025 年 10〜12 月期・通期の決算説明会(Yahoo Finance)
- ステート・ストリート 2026 年 4〜6 月期の要約(Quartr)
- ステート・ストリートのデジタル資産基盤(PostTrade360)
- 大手保管銀行の AUC/A 比較(PostTrade360)