結論
シンシナティ・ファイナンシャル(Cincinnati Financial)は、オハイオ州に本社を置き、独立代理店だけを通じて企業向け・個人向け・E&S(難しいリスクの専門保険)・再保険とロイズ・生命保険を売る損保グループである。2025 年は正味収入保険料が約 101 億ドルで、損保の複合損害率は 94.9%、営業利益(保有株の評価損益を除く)は 12.5 億ドル。GAAP の純利益 23.9 億ドルは、その約 2 倍になるが、差は保有株の評価益で、これは事業の稼ぎではない。今の PER 11 倍は GAAP の純利益で測った見かけの安さで、営業利益で測ると約 21 倍である。
バリュー投資の観点で大事なのは、運用資産の約 4 割(132 億ドル)がアップル・マイクロソフトなどの保有株で、自己資本 167 億ドルの約 8 割にあたることである。そこでこの分析では、引受に要る元手(正味収入保険料と同額)を超える自己資本を「余剰資本」として時価のまま額面どおりに別に扱い、事業の営業利益にだけ利益ベースの倍率を掛けた。保有株の値上がりと GAAP の評価損益を倍率に載せて二重に数えないためである。
強みは、代理店との長い関係と地域の引受権限、借金がほぼ無い(負債比率 4.6%)厚い資本、65 年連続の増配。弱みは、保険料の規模が小さく利益率が平凡なこと(複合損害率の目標は 92〜98%)、個人保険が 2025 年に 103.6% の赤字、中西部の雹・竜巻の大災害、運用の偏り。中立の筋書きでは、10 年で保険料が年 5.8% 伸び、複合損害率は 95% 台で平凡のまま、営業利益は 24 億ドル前後になる。資本コスト 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)、余剰資本は戻り方 0.5 を掛けて足し、倍率は上限の 9 割に置いた。確率で加重した 10 年後の価値は 215 億ドルで、今の時価総額 270 億ドルに対し -20%(総合で「やや割高」)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、シンシナティは「預かった保険料(フロート)を長期の株式に回す」というバークシャーに近い設計の小さな会社である。損失準備金(正味 110 億ドル)と自己資本 167 億ドルの合計約 280 億ドルが運用の元手になっており、複合損害率が 100% を下回る限り、フロートは費用のかからない資金になる。10 年後もこの事業は存在し、代理店との関係と財務の強さは堀として残る。ただし堀は広がるというより、保つ性質で、規模の小ささと価格決定力の弱さから、利益率が平凡なまま推移する。
保有株を別に扱う理由は 3 つある。第一に、GAAP の純利益には保有株の評価損益が入り、2025 年の純利益 23.9 億ドルは営業利益 12.5 億ドルの約 2 倍で、PER 11 倍は見かけにすぎない。第二に、保有株の値動きは市場が決めるもので、事業の倍率を掛けると二重に数えるか、市場の乱高下を倍率に載せてしまう。第三に、保有株は余った元手で、時価のまま額面どおりに数えるのが自然である。ただし全部を余剰とは見ず、格付けと支払い余力のため、引受の元手として正味収入保険料と同額(約 100 億ドル)は残し、含み益にかかる繰延税金は自己資本に反映済みの値を使う。
オーナー利益は、営業利益 12.5 億ドルから、保険料の伸び(年 4〜5%)に要る元手の積み増し(約 4〜5 億ドル)を引いた約 8 億ドルである。経営の資本配分は堅実で、買収で価値を壊さず、配当を毎年増やす。ただし保有株の運用成績は指数並みで、余剰資本がなぜ株で運用されるべきかの理由は弱い。安全域は、悲観(保有株の暴落と大災害が同時)でも還元を合わせて今の時価総額の 87% で、借金が小さい分、深い傷にはならない。予測の確信度は中くらいにとどまる。
何で稼ぐ会社か
シンシナティは、保険商品を独立代理店だけに売らせる。代理店は 2,361 社・3,791 拠点(46 州)で、会社の担当は地域ごとの現地の担当者に引受の権限を持たせる。担当する代理店が扱う保険料は合計約 1,660 億ドルで、会社のシェアは約 5%。2026 年 1〜3 月だけで新規の代理店を 108 社加えた。
事業は 6 つ。第一に商業保険(2025 年の正味収入保険料 50.0 億ドル。中小企業向けの総合・商業自動車・賠償責任・労災・財物で、全体の約 49%)。第二に個人保険(34.3 億ドル。自動車と住宅。高額資産層向けのシンシナティ・プライベート・クライアントが 6 割超)。第三に E&S(7.3 億ドル。標準市場が引き受けない難しいリスク)。第四に再保険とロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバルで 9.25 億ドル)。第五に生命保険(定期・終身。収入保険料 3.3 億ドル、事業の利益 0.65 億ドル)。第六に運用で、債券 約 190 億ドルと保有株 約 132 億ドル(2026 年 6 月末)を持ち、税引前の運用益は 2025 年に 11.65 億ドル。
利益の出どころは二つある。損保の引受益(保険料から保険金と費用を引いた分。2025 年は 5.0 億ドル)と、預かった保険料・自己資本の運用益(税引後 9.65 億ドル)。営業利益 12.5 億ドルの 8 割近くが運用益で、引受益は薄い。会社の経営目標も、複合損害率を 92〜98% の範囲に収めることと、価値創造率(1 株の簿価の伸びと配当)を 5 年平均で年 10〜13% にすることで、2021〜25 年の平均は 13.8% だった。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一に代理店との関係。担当する代理店の中で 10 年超の相手の保険料の取り込みは 7.4% と、2〜5 年の相手(1.5%)より厚く、関係が長いほど取り込みが増える仕組みで、新規の代理店 108 社(四半期)がこれから育つ。代理店への報酬は引受の利益に連動し、平均より高い。第二に財務の強さ。借金は 8.1 億ドル、負債比率 4.6%、親会社が現金と有価証券 57 億ドルを持つ。大災害が重なっても配当と引受を続けられ、65 年の増配が裏づけ。第三に損失準備金の保守性。2025 年末の準備金 110 億ドルは、妥当な範囲(101〜111 億ドル)の 88 パーセンタイル(範囲の上の方)にあたる積み方で、毎年の準備金の好転(2025 年 2 億ドル)が利益を支える。
価格を決める力は弱い。商業・個人とも、物価と大災害の損失の傾向に追いつく値上げを毎年続ける会社で、料率の軟化の局面では数量を絞る力が小さい。シェアは約 5% と小さく、チャブ・トラベラーズ・ハートフォードのような規模の利益も取れない。
資本効率は、営業ベースで自己資本に対して約 8% と低い。これは自己資本の約 8 割が保有株(引受の元手を超える余剰)に回っているためで、引受に要る元手(保険料と同額)に対する利益は約 12%。2025 年の個人保険(103.6%)と 2026 年 4〜6 月の商業(104.1%)のように、大災害の年は引受が赤字になる。保有株がアップル(公開株の 7.2%)・マイクロソフト・ブロードコム・JP モルガン・ラム・リサーチに集中する点は弱みにも強みにもなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の損保は、料率の軟化の初期にある。業界ノートによると、2026 年前半の保険料の伸びは財物の下落で鈍り(トリプル・アイ(Triple-I)らは 2026 年前半の保険料の伸びを −3.7% と見る)、財物の料率は 8 四半期連続で下がっている。一方、賠償責任は約 7% の上昇が続き、商業自動車や超過賠償は硬い。個人自動車は 2025 年の複合損害率が業界で 91.8%、住宅 88.1% と 10 年超で最良だったが、2026 年は料率の伸びが鈍る。
シンシナティの位置は、商業では中小企業向けの総合保険(財物+賠償責任)が中心で、財物の軟化と賠償責任の硬化が混ざる。2026 年 4〜6 月の商業の更新は、低い 1 桁の上の方の値上がりで、損失の傾向(物価+訴訟費用)とほぼ釣り合う。個人保険は自動車と住宅とも高い 1 桁の値上げ。ただし中堅層の競争(ステート・ファーム・オールステート・プログレッシブ)が強く、会社は「利益が先、成長は後」の方針で絞っている。
競合:商業ではトラベラーズ・チャブ・ハートフォード・リバティ・ミューチュアル(Liberty Mutual)・セレクティブ(Selective)が同じ独立代理店を奪い合う。E&S はマーケル・W.R. バークレー・アーチ・ロイズ。個人の高額資産層はチャブが最大。再保険はスイス再保険・ミュンヘン再保険・ハノーバー再保険・エベレスト。気候の面では、中西部の雹・竜巻(シンシナティの商業・個人が集中するオハイオ周辺)と山火事(カリフォルニアは引受を絞り直した)が大災害の傾向線を押し上げている。会社の 1 対 100 年の大災害の損失は自己資本の 4.0%、1 対 250 年で 6.2% と小さい。
数量と価格の見通し:業界の実質の伸びは年 1% 台、価格は物価(3.5%)から軟化の分を引いた 2〜3%。会社は代理店の取り込みでシェアを年 0.5〜1% 伸ばすのが目標で、実際に 2021〜25 年の保険料の年平均成長は 11.4%(業界 8.7%)だったが、これは硬い局面の値上げで押し上がった。
資本政策と M&A
資本配分は「引受に要る元手を残し、残りは配当と保有株で運用する」で、自社株買いはそれを補う位置づけである。配当は 65 年連続で増やし(2025 年は +7%)、2016〜25 年の平均配当性向は純利益に対して 25% と低い。自社株買いは 2025 年の年間で約 2 億ドル、2026 年上半期は約 4.0 億ドル(約 240 万株)と増えた。4〜6 月は簿価の約 1.5 倍の値段で買っている。経営は買い付けの額は「状況による」と述べ、増減がある。
M&A は大きなものを積まない。最近の買収は小さく、成長は代理店の取り込みと自力の新商品が中心。時価総額が約 260 億ドルで、買われる側としては大きく、価格も高い。借金は 8.1 億ドル(負債比率 4.6%)で、金利の上昇で利払いは増えない(借金が小さい)。保有株の売却は上半期に 7.3 億ドルあったが、経営は「再配分で、方針の変更ではない」と説明している。
余剰資本の使い道は、配当を増やすか、保有株を増やすか、自社株買いか。過去の運用の実績(保有株の年間リターンは 2025 年 15.7%・2024 年 16.5%で、S&P 500 の 17.9%・25.0% を下回る)を見ると、保有株を積み増しても指数並みである。株式報酬による株の増加は自社株買いで打ち消される程度(会社全体の価値で見るので考えない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シンシナティは、利益の質が高く、資本の動かし方が堅実な会社で、利益はこれから回復する。2026 年 4〜6 月の営業利益は大災害の損失で前年より減ったが、損保の複合損害率 100.8% のうち大災害が 14.4 点(前年より 2.3 点重い)で、大災害と準備金を除いた当年の複合損害率は上半期で 87.8% と前年(87.7%)と変わらない。つまり本業の収益力は落ちていない。再保険は 87.6%、E&S は 90.5% と好調で、再保険の正味収入保険料は +16%、E&S は +8%。個人保険は自動車・住宅とも高い 1 桁の値上げが入り、複合損害率は前年より 2.1 点改善した。
運用益が最大の追い風で、債券の利回りは 5.08% と前年から 0.15 点上がり、新しく買う債券は 5.66%。債券が満期で入れ替わるほど運用益が積み上がり、上半期の運用益は +12%。営業のキャッシュフローは上半期で +29% の 14 億ドル。親会社の現金 57 億ドルに借金がほぼ無く、余剰資本は約 60 億ドルに積み上がっている。
代理店は 2026 年だけで 100 社超が増え、取り込みは年を追って厚くなる。保有株はアップル・マイクロソフトなどの優良株で、年 6% の値上がりに配当が加わる。資本コスト 8.25% でも、ROE 12% 前後・g 3.4% の中立の筋書きで正当化 PER は 14 倍になる。余剰資本を足した価値が今の時価総額を上回るかは、悲観の確率と余剰資本の戻り方に依る。競合が緩んで損害率を悪化させるほど、規律のある引受の価値は高まる。
慎重な見方
本業の営業利益は落ちていて、今の価格はそれを織り込んでいない。2026 年 4〜6 月の営業利益は 2.24 億ドルで前年(3.11 億ドル)から 28% 減り、商業は複合損害率 104.1% の赤字、シンシナティ・グローバルは 110.8%。大災害は中西部の雹・竜巻と山火事で毎年のように重なり、会社が引受を絞り直した今も、傾向線は年 5〜8% で料率の伸び(低い 1 桁)を上回る。経費率も 4〜6 月に 1.2 点悪化した。
商業の更新は低い 1 桁にとどまり、財物は下落が続く。個人保険は「利益が先」で成長を絞り、中堅層は競合に流れる。2025 年の個人保険は 103.6%、2026 年 4〜6 月も 99.9% と、引受ではほとんど儲けていない。再保険は料率の下落が続き、4〜6 月の保険料の伸びも鈍る。運用益は今の債券の入れ替えで増えるが、金利が下がれば止まる。
最大の弱みは、運用資産の約 4 割(132 億ドル)が株で、アップル・マイクロソフト・ブロードコム・JP モルガン・ラム・リサーチの上位 5 社で公開株の約 4 分の 1 を占めること。株が 3 割下がれば自己資本から約 30 億ドルが消え、GAAP の純利益は大きな赤字になる。 k が 0.5% 上がると倍率は 1〜2 割下がり、価値の大半は 10 年後の倍率に頼る。
どちらに重みを置いたか
事業の質の評価は、強気の見方がやや優勢(財務の強さ・運用益の積み上がり・準備金の保守性・代理店の取り込み)。一方、利益の水準が薄く、大災害と軟調の影響を受けやすい点、保有株への偏りは慎重な見方が当たっている。確率は中立に最も寄せ(10 年 34%)、やや悲観を 24%、悲観を 12%(保有株の暴落を含む)と置いた。悲観の深さは、保有株の下落と引受の損が同時に来る分だけ厚くした。倍率は利益ベースの上限の内側で、軟調は利益率・数量・価格に載せた。結果は 10 年で -20%、総合は「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 207.71 ドル328 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 62.89 ドル99 億ドル)。 今の値に割り戻すと 136.32 ドル215 億ドル、今との差 −23.5%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 313.70 ドル495 億ドル | 72.92 ドル115 億ドル | +116.9% | +8.0% | 30.93 ドル49 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 270.83 ドル427 億ドル | 70.39 ドル111 億ドル | +91.4% | +6.7% | 75.07 ドル118 億ドル |
| 中立 | 34% | 221.43 ドル349 億ドル | 67.22 ドル106 億ドル | +61.9% | +4.9% | 98.14 ドル155 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 144.96 ドル229 億ドル | 57.07 ドル90 億ドル | +13.3% | +1.3% | 48.49 ドル76 億ドル |
| 悲観 | 12% | 107.93 ドル170 億ドル | 41.85 ドル66 億ドル | −16.0% | −1.7% | 17.97 ドル28 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 207.71 ドル328 億ドル | 62.89 ドル99 億ドル | +51.8% | +4.3% | 270.60 ドル427 億ドル |
今の株価時価総額 178.28 ドル281 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:代理店の取り込みが続き、個人・E&S が伸び、複合損害率は 93% 台 利益 31 億ドル · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 313.70 ドル495 億ドル
独立代理店のモデルが、取引を広げた新規の代理店(四半期に 100 社超)の育成で複利で効く。商業は料率が物価並み、個人はシンシナティ・プライベート・クライアントで高額資産層のシェアを 14% 伸ばし、E&S は標準市場からの移行で市場の伸びを大きく上回る。複合損害率は 93% 台、債券の入れ替えと保有株で運用益が伸びる。価値創造率は目標範囲(10〜13%)の上限に近づく。競合のチャブ・トラベラーズとの差が開き、自社株買いは余剰資本から増える。10 年(2035 年 12 月期)の正味収入保険料は 192.9 億ドル(年 6.7%)。商業 89.0・個人 61.2・E&S 18.5・再保険とロイズ 18.8 億ドル、損保の複合損害率は約 93.1%。運用益は税引前 26.7 億ドル。営業利益(税引後・評価損益を除く)は 30.5 億ドル、自己資本は 392 億ドル(引受の元手を引いた余剰資本 199 億ドル)。10 年の配当と自社株買いの合計は 115 億ドル(株式報酬を引いた正味)。
- 商業保険(中小企業向けの事業保険):数量 126(保険契約の件数相当(万件))× 価格 7,047(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 89 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 +12.7%・シェア +12%・価格 ×1.41・複合損害率 93.5%
- 個人保険(高額資産層の自動車・住宅):数量 114(保険契約の件数相当(万件))× 価格 5,365(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 +8%・シェア +14%・価格 ×1.45・複合損害率 95.0%
- エクセス・サープラス(E&S):数量 7.3(保険契約の件数相当(万件))× 価格 25,515(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 +25%・シェア +45%・価格 ×1.40・複合損害率 88%
- 再保険・ロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバル):数量 146(引受リスク量(補償限度額・億ドル相当))× 価格 0.13(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 19 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 +30%・シェア +25%・料率 ×1.25・複合損害率 90%
- 生命保険(シンシナティ・ライフ):数量 2,475(保有契約の保険金額(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。保険金額 +65%・料率 ×1.0・利益率 22%
- 運用(債券と保有株の運用益):数量 753(運用資産の年平均(億ドル))× 価格 0.04(運用益 ÷ 運用資産(税引前の利回り))→ 売上 27 億ドル・営業利益 27 億ドル。運用資産の年平均 753 億ドル(債券等 384・保有株 369)× 利回り 3.54%。債券の利回り 5.21%(買い替えで上昇)・保有株の配当 1.8%
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +0.8%・価格 +1.7% にシェアの変化を加えた約 3.4%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 14%(余った現金を除いた自己資本に対する純利益)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 11.3%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 15.2 倍。余った現金・資本 199 億ドル は戻り方を掛けた 100 億ドル を足す。上限 = 事業の純利益 27.7 × 15.2 倍 + 100 = 521 億ドル。これの 9.5 割の 495 億ドル を置いた(純利益に対する実効 16.2 倍)。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:代理店の取り込みと E&S・個人の成長が複利で効き、複合損害率が長く 93% 台で回る筋書きは 1 割弱。
やや楽観 22% やや強気:保険料は年 6% 弱で伸び、複合損害率は 94% 台 利益 28 億ドル · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 270.83 ドル427 億ドル
商業と個人の保険料は年 5〜6% で伸び、複合損害率は 94〜95% で目標範囲の中央よりやや良い。E&S は標準市場からの移行で伸び、再保険・ロイズは軟調を越えて利益率が戻る。債券の入れ替えが終わり、運用益が積み上がる。保有株は年 7%。競合のハートフォードが商業で引受を緩める間に、代理店との関係で優良な顧客を取る。10 年(2035 年 12 月期)の正味収入保険料は 186.4 億ドル(年 6.3%)。商業 86.7・個人 59.3・E&S 17.4・再保険とロイズ 17.6 億ドル、損保の複合損害率は約 94.2%。運用益は税引前 25.4 億ドル。営業利益(税引後・評価損益を除く)は 27.5 億ドル、自己資本は 359 億ドル(引受の元手を引いた余剰資本 173 億ドル)。10 年の配当と自社株買いの合計は 111 億ドル(株式報酬を引いた正味)。
- 商業保険(中小企業向けの事業保険):数量 124(保険契約の件数相当(万件))× 価格 6,997(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 87 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 +12.7%・シェア +10%・価格 ×1.40・複合損害率 94.5%
- 個人保険(高額資産層の自動車・住宅):数量 112(保険契約の件数相当(万件))× 価格 5,291(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 59 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 +8%・シェア +12%・価格 ×1.43・複合損害率 96.0%
- エクセス・サープラス(E&S):数量 6.9(保険契約の件数相当(万件))× 価格 25,151(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 +25%・シェア +38%・価格 ×1.38・複合損害率 89%
- 再保険・ロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバル):数量 140(引受リスク量(補償限度額・億ドル相当))× 価格 0.13(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 18 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 +30%・シェア +20%・料率 ×1.22・複合損害率 91.5%
- 生命保険(シンシナティ・ライフ):数量 2,430(保有契約の保険金額(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。保険金額 +62%・料率 ×1.0・利益率 21%
- 運用(債券と保有株の運用益):数量 706(運用資産の年平均(億ドル))× 価格 0.04(運用益 ÷ 運用資産(税引前の利回り))→ 売上 25 億ドル・営業利益 25 億ドル。運用資産の年平均 706 億ドル(債券等 372・保有株 334)× 利回り 3.60%。債券の利回り 5.21%(買い替えで上昇)・保有株の配当 1.8%
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +0.8%・価格 +1.7% にシェアの変化を加えた約 3.4%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 13%(余った現金を除いた自己資本に対する純利益)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.9%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 14.9 倍。余った現金・資本 173 億ドル は戻り方を掛けた 86 億ドル を足す。上限 = 事業の純利益 25.1 × 14.9 倍 + 86 = 459 億ドル。これの 9.3 割の 427 億ドル を置いた(純利益に対する実効 15.5 倍)。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:10 年平均が目標範囲の中央(95%)より少し良い。2 割強。
中立 34% 中立:保険料は年 5.8% で伸びるが、複合損害率は 95% 台で平凡 利益 24 億ドル · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 221.43 ドル349 億ドル
商業の保険料は市場の実質 +1.2%・シェア +0.6%・価格 38%増で年 5% 台、個人は高額資産層で年 5% 台、E&S は年 8%、再保険・ロイズは軟調を越えて年 6%。複合損害率は目標範囲の中央付近の 95〜96% で、大災害の傾向線(年 5〜8%)と料率が拮抗する。債券の運用益は 5.3% 台で定着し、保有株は年 6%(配当を含めて約 8%)。経営は大型の買収をせず、配当は年 6% で増やし、自社株買いで余剰資本を返す。競合のトラベラーズ・ハートフォード・W.R. バークレー(W.R. Berkley)と並ぶ位置で、規模の小ささがそのまま利益率の高さにならない。10 年(2035 年 12 月期)の正味収入保険料は 177.3 億ドル(年 5.8%)。商業 81.9・個人 57.5・E&S 16.1・再保険とロイズ 16.6 億ドル、損保の複合損害率は約 95.6%。運用益は税引前 23.9 億ドル。営業利益(税引後・評価損益を除く)は 23.9 億ドル、自己資本は 325 億ドル(引受の元手を引いた余剰資本 148 億ドル)。10 年の配当と自社株買いの合計は 106 億ドル(株式報酬を引いた正味)。
- 商業保険(中小企業向けの事業保険):数量 119(保険契約の件数相当(万件))× 価格 6,897(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 82 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 +12%・シェア +6%・価格 ×1.38・複合損害率 95.5%
- 個人保険(高額資産層の自動車・住宅):数量 110(保険契約の件数相当(万件))× 価格 5,217(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 57 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 +8%・シェア +10%・価格 ×1.41・複合損害率 97.5%
- エクセス・サープラス(E&S):数量 6.5(保険契約の件数相当(万件))× 価格 24,786(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 +25%・シェア +30%・価格 ×1.36・複合損害率 91.5%
- 再保険・ロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバル):数量 135(引受リスク量(補償限度額・億ドル相当))× 価格 0.12(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 17 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 +30%・シェア +15%・料率 ×1.20・複合損害率 93.5%
- 生命保険(シンシナティ・ライフ):数量 2,400(保有契約の保険金額(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。保険金額 +60%・料率 ×1.0・利益率 19.5%
- 運用(債券と保有株の運用益):数量 654(運用資産の年平均(億ドル))× 価格 0.04(運用益 ÷ 運用資産(税引前の利回り))→ 売上 24 億ドル・営業利益 24 億ドル。運用資産の年平均 654 億ドル(債券等 355・保有株 300)× 利回り 3.65%。債券の利回り 5.21%(買い替えで上昇)・保有株の配当 1.8%
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +0.8%・価格 +1.7% にシェアの変化を加えた約 3.4%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 12%(余った現金を除いた自己資本に対する純利益)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.3%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 14.4 倍。余った現金・資本 148 億ドル は戻り方を掛けた 74 億ドル を足す。上限 = 事業の純利益 21.8 × 14.4 倍 + 74 = 388 億ドル。これの 9.0 割の 349 億ドル を置いた(純利益に対する実効 14.6 倍)。中立:引受の利益率が平凡で、大災害と個人保険の赤字を抱えるため、上限の 9 割にとどめた
確率:議論の落としどころ。複合損害率は目標範囲の中央付近、保険料は物価+実質 1〜2%。
やや悲観 24% やや弱気:大災害の傾向線と軟調で複合損害率が 98% に定着 利益 18 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 144.96 ドル229 億ドル
大災害の傾向線が料率を上回り続け、複合損害率が 98% に定着する。商業は賠償責任の準備金の積み増しが数年続き、個人は住宅の引受を絞る(カリフォルニア・フロリダ型)。再保険・ロイズは再保険資本の過剰で利益が薄い。保険料は年 4.7% 伸びるが、利益は運用益に寄る。保有株は年 4.5% で、配当を含めて約 6.3%。競合のトラベラーズが商業で攻め、シェアは横ばい。10 年(2035 年 12 月期)の正味収入保険料は 159.0 億ドル(年 4.7%)。商業 74.3・個人 52.2・E&S 13.5・再保険とロイズ 13.9 億ドル、損保の複合損害率は約 98.0%。運用益は税引前 21.3 億ドル。営業利益(税引後・評価損益を除く)は 18.3 億ドル、自己資本は 287 億ドル(引受の元手を引いた余剰資本 128 億ドル)。10 年の配当と自社株買いの合計は 90 億ドル(株式報酬を引いた正味)。
- 商業保険(中小企業向けの事業保険):数量 111(保険契約の件数相当(万件))× 価格 6,697(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 74 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 +11%・シェア 0%・価格 ×1.34・複合損害率 98.0%
- 個人保険(高額資産層の自動車・住宅):数量 102(保険契約の件数相当(万件))× 価格 5,106(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場 +7%・シェア +3%・価格 ×1.38・複合損害率 99.5%
- エクセス・サープラス(E&S):数量 5.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 24,057(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 +22%・シェア +15%・価格 ×1.32・複合損害率 94%
- 再保険・ロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバル):数量 121(引受リスク量(補償限度額・億ドル相当))× 価格 0.12(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 14 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 +28%・シェア +5%・料率 ×1.12・複合損害率 96%
- 生命保険(シンシナティ・ライフ):数量 2,325(保有契約の保険金額(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。保険金額 +55%・料率 ×1.0・利益率 18%
- 運用(債券と保有株の運用益):数量 580(運用資産の年平均(億ドル))× 価格 0.04(運用益 ÷ 運用資産(税引前の利回り))→ 売上 21 億ドル・営業利益 21 億ドル。運用資産の年平均 580 億ドル(債券等 320・保有株 260)× 利回り 3.68%。債券の利回り 5.21%(買い替えで上昇)・保有株の配当 1.8%
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +0.8%・価格 +1.7% にシェアの変化を加えた約 3.4%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 10%(余った現金を除いた自己資本に対する純利益)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 9.3%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 13.4 倍。余った現金・資本 128 億ドル は戻り方を掛けた 64 億ドル を足す。上限 = 事業の純利益 16.5 × 13.4 倍 + 64 = 286 億ドル。これの 8.0 割の 229 億ドル を置いた(純利益に対する実効 12.5 倍)。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:大災害の傾向線が料率を上回り続ける、または軟調が casualty に広がる筋書きで 2 割強。同じ領域の ACGL(24%)と揃えた。
悲観 12% 悲観:代理店の離反と準備金不足で、保険料が縮み複合損害率が 102% 前後 利益 11 億ドル · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 107.93 ドル170 億ドル
代理店チャネルの価値が薄れ(直販・デジタルの競合と、大手代理店のM&A による集約で代理店の力が落ちる)、商業のシェアが 12% 下がる。賠償責任の準備金不足が数年続き、個人は住宅を引受不能に。再保険・ロイズは再保険資本の過剰で利益がほぼ消える。複合損害率は 102% 前後、保険料は年 2.4% しか伸びない。保有株の運用も年 3% と鈍く、もう優良な損保ではない。ならした利益では見ず、自己資本で測る。10 年(2035 年 12 月期)の正味収入保険料は 128.0 億ドル(年 2.4%)。商業 60.8・個人 42.8・E&S 10.2・再保険とロイズ 9.4 億ドル、損保の複合損害率は約 101.9%。運用益は税引前 17.5 億ドル。営業利益(税引後・評価損益を除く)は 10.8 億ドル、自己資本は 248 億ドル(引受の元手を引いた余剰資本 120 億ドル)。10 年の配当と自社株買いの合計は 66 億ドル(株式報酬を引いた正味)。
- 商業保険(中小企業向けの事業保険):数量 95.0(保険契約の件数相当(万件))× 価格 6,397(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 −1 億ドル。市場 +8%・シェア −12%・価格 ×1.28・複合損害率 101.5%
- 個人保険(高額資産層の自動車・住宅):数量 87.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 4,884(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 43 億ドル・営業利益 −1 億ドル。市場 +5%・シェア −10%・価格 ×1.32・複合損害率 103%
- エクセス・サープラス(E&S):数量 4.5(保険契約の件数相当(万件))× 価格 22,781(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場 +18%・シェア −5%・価格 ×1.25・複合損害率 100%
- 再保険・ロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバル):数量 91.8(引受リスク量(補償限度額・億ドル相当))× 価格 0.10(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 9 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場 +20%・シェア −15%・料率 ×1.00・複合損害率 102%
- 生命保険(シンシナティ・ライフ):数量 2,175(保有契約の保険金額(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。保険金額 +45%・利益率 10%
- 運用(債券と保有株の運用益):数量 481(運用資産の年平均(億ドル))× 価格 0.04(運用益 ÷ 運用資産(税引前の利回り))→ 売上 18 億ドル・営業利益 18 億ドル。運用資産の年平均 481 億ドル(債券等 260・保有株 221)× 利回り 3.65%。債券の利回り 5.21%(買い替えで上昇)・保有株の配当 1.8%
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・事業の ROE 7.1% が k 以下なので PER は 1÷k = 12.1 倍まで(ためた利益の価値は額面を下回る)。余った現金・資本 120 億ドル は戻り方を掛けた 60 億ドル を足す。上限 = 事業の純利益 9.1 × 12.1 倍 + 60 = 171 億ドル。これの 10.0 割の 170 億ドル を置いた(純利益に対する実効 15.8 倍)。悲観:構造的に負けて優良でなくなった会社として最も下。
確率:代理店チャネルの価値が薄れる・準備金不足・保有株の長い低迷が重なる確率を 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
商業保険(中小企業向けの事業保険)
中小企業向けの商業総合・商業自動車・賠償責任・労災・財物。独立代理店だけが売る。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 4,998 | 50 | 4 |
| 10 年後 中立 | 119 | 6,897 | 82 | 4 |
取り方:2025 年の商業保険の正味収入保険料 49.98 億ドル(複合損害率 91.1%・準備金の好転 1.3 億ドル・大災害 3.9 点。引受益は約 4.4 億ドル)を、100 万件相当 × 平均約 5,000 ドルに置いた推定(件数は開示されない)。市場は米国の商業損保のうち、担当の代理店が扱う中小・中堅の分(代理店全体の保険料 1,660 億ドルに対し会社のシェアは約 5%)。数量 = 市場(企業の売上・資産の実質増)× シェア(新規の代理店の取り込み)。競合はトラベラーズ・ハートフォード・チャブ・リバティ・ミューチュアル・セレクティブ。価格は 2026 年は低い 1 桁後半の値上がりで、3 年で 1.085 倍、10 年で 1.38 倍(物価 1.41 倍より低い。料率の軟化と、引受の効率化を価格に全部は転嫁できない分)とした。
個人保険(高額資産層の自動車・住宅)
自動車と住宅の保険。高額資産層向けのシンシナティ・プライベート・クライアントが個人保険の 6 割超。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 92.7 | 3,700 | 34 | −1 |
| 10 年後 中立 | 110 | 5,217 | 57 | 1 |
取り方:2025 年の個人保険の正味収入保険料 34.30 億ドル(複合損害率 103.6%・大災害 22.2 点。引受は 1.2 億ドル弱の赤字)を、約 93 万件相当 × 平均 3,700 ドルに置いた推定。市場は代理店経由の自動車・住宅(高額資産層)で、全米の個人損保(元受保険料で年約 7,000 億ドル前後の推定)のうち数 %。競合はステート・ファーム・オールステート・プログレッシブ・チャブ(高額資産層)。数量 = 市場(世帯数・住宅の実質増)× シェア(高額資産層の新規)。2026 年は自動車・住宅とも高い 1 桁の値上げが続くが、利益を戻すと値上げは鈍る。価格は 3 年で 1.12 倍、10 年で 1.41 倍(住宅の再調達費と修理費の物価)とした。
エクセス・サープラス(E&S)
標準の保険会社が引き受けない難しいリスクを、専門の保険会社として引き受ける。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 18,225 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 24,786 | 16 | 1 |
取り方:2025 年の E&S の正味収入保険料 7.29 億ドル(複合損害率 88.4%)を、約 4 万件 × 平均 1.8 万ドルに置いた推定。米国の E&S 市場は元受保険料で年 1,300 億ドル前後(推定)で、標準市場からの移行で伸びている。会社のシェアは 0.5% 台。競合はマーケル・W.R. バークレー・アーチ・AIG・ロイズ。数量 = 市場の実質増(年 2% 台)× シェアの伸び。価格は財物の軟化と賠償責任の硬化で 3 年 1.07 倍、10 年 1.36 倍とした。
再保険・ロイズ(シンシナティ・リとシンシナティ・グローバル)
再保険(財物・特約)と、ロイズの専門保険の引受。2025 年は引受益 0.88 億ドル。
| 数量引受リスク量(補償限度額・億ドル相当) | 価格保険料 ÷ リスク量(料率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 90.0 | 0.10 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.12 | 17 | 1 |
取り方:2025 年の再保険・ロイズの正味収入保険料 9.25 億ドル(引受益 0.88 億ドル。グローバルの複合損害率は 79.2%)を、補償限度額 約 90 億ドル相当 × 料率約 10.3% に置いた推定(限度額は開示されない)。市場は世界の再保険 約 7,000 億ドルとロイズ。数量 = 市場(補償の実質増)× シェア(上限を決めた参入)。競合はスイス再保険・ミュンヘン再保険・エベレスト・アーチ。価格は財物カタストロフ再保険の 2026 年 1 月 −10〜20%・中途更新約 −15% が 2027 年まで続くため、3 年で 0.90 倍、10 年で 1.20 倍(再保険資本が潤沢で物価 1.41 倍には届かない)とした。
生命保険(シンシナティ・ライフ)
定期・終身・ユニバーサル生命。代理店経由で、損保の顧客に売る。
| 数量保有契約の保険金額(億ドル) | 価格保険料 ÷ 保険金額(料率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 0.00 | 5 | 1 |
取り方:2025 年の生保の収入保険料 3.30 億ドル(生保事業の利益 0.65 億ドル。生保子会社の自己資本は 14.9 億ドル)を、保有契約の保険金額 約 1,500 億ドル × 料率 0.22% に置いた推定。市場は米国の個人向け定期・終身生命。競合は全米の大手生保。数量 = 市場(家計の保障の実質増)× シェア。料率は保険金額あたりでは物価に連動せず、定期保険は死亡率の改善で下がるため価格 1.0 倍(保険金額が物価で増える分は数量に入れる)とした。2026 年上半期の定期保険の収入保険料は +5〜6%。
運用(債券と保有株の運用益)
預かった保険料と自己資本の運用益(税引前)。債券の利息と保有株の配当。保有株の評価損益は入れない。
| 数量運用資産の年平均(億ドル) | 価格運用益 ÷ 運用資産(税引前の利回り) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 317 | 0.04 | 12 | 12 |
| 10 年後 中立 | 654 | 0.04 | 24 | 24 |
取り方:2025 年の税引前の運用益 11.65 億ドル(税引後 9.65 億ドル)を、年平均の運用資産 約 317 億ドル(債券・現金・その他 約 197 億ドル、保有株 約 120 億ドル)× 利回り 約 3.7% に置いた。2026 年 4〜6 月は 3.19 億ドル(前年比 +12%)、債券の利回りは 5.08%、新しく買う債券は 5.66%。債券が満期で入れ替わるぶん運用益は押し上がる。債券 約 197 億ドルは損失準備金 約 110 億ドルと未経過保険料の裏づけ、保有株は余剰資本と事業の元手の一部。保有株の配当利回りは約 1.8%。保有株の値上がり・値下がり(評価損益)は営業利益に入れない。
リスクと懸念
中西部の大災害(雹・竜巻)と山火事
商業・個人の大災害は、2026 年 4〜6 月に保険料の 14.4 点で、前年の 12 点前後より重い。契約が中西部に偏り、傾向線は年 5〜8%。会社の 1 対 100 年の損失は自己資本の 4.0% と小さいが、毎年の積み上がりが複合損害率を数点押し上げる。
保有株への集中と暴落
運用資産の約 4 割(132 億ドル)が株で、上位 5 社(アップル・マイクロソフト・ブロードコム・JP モルガン・ラム・リサーチ)が公開株の約 4 分の 1。含み益は税引前で約 89 億ドル。株が 4 割下がると自己資本から約 40 億ドルが消える。評価損益は営業利益に入らないが、自己資本と GAAP の純利益には直接効く。
個人保険の収益性
個人保険は 2025 年の複合損害率が 103.6%(大災害 22.2 点)で、2026 年 4〜6 月も 99.9%。値上げは高い 1 桁だが、住宅の再調達費と修理費の物価が高く、利益を出すには 98% 台を続ける必要がある。長期では収益の足を引く可能性がある。
商業の賠償責任の準備金
2026 年 4〜6 月に商業の賠償責任で 0.14 億ドルの準備金の不足(古い事故年 1 つ)が出た。社会的インフレ(訴訟費用の上昇)が続けば、2025 年末で妥当な範囲の上位 88% 点に積んだ準備金でも足りなくなる年が来る。
再保険・ロイズの軟調
シンシナティ・グローバルの 2026 年 4〜6 月の複合損害率は 110.8%。再保険は財物の料率が 2026 年に 1 割前後下がり、2027 年まで続く見通し。引受益は 2025 年の 0.88 億ドルから縮む可能性がある。
経費率と代理店チャネル
4〜6 月の経費率は手数料と費用の時期で 1.2 点悪化した。代理店への報酬は引受の利益に連動し平均より高い。直販・デジタルの競合や、大手代理店の統合で代理店の力が落ちれば、会社の独自の強みが薄れる。
資本コストの前提への敏感さ
k は quality で +0.25% 上げて 8.25% とした。k が 0.5% 上がると倍率は約 1〜2 割下がる。価値の大半は 10 年後の倍率に依存するので、悲観の確率と深さを厚めに置いてある。
今後の分かれ目
- 2027 年の更新で財物の料率の下落が止まる
- 商業の複合損害率が 95% 前後で安定し、保険料の伸びが年 5% 台に戻る。強気とやや強気の確率を上げられる。
- 大災害が 2 年続けて保険料の 15 点を超える
- 複合損害率が 98〜100% に張りつき、営業利益が 3 割減る。倍率も 1〜2 倍下がり、やや悲観の確率を上げる。
- 株式市場が 3 割以上下がる
- 自己資本が約 30 億ドル減り、GAAP の純利益は赤字になる。営業利益は配当が少し減るだけで、事業の価値は変わらない。余剰資本の分だけ時価総額が下がる。
- 個人保険の複合損害率が 3 年で 95% 台に改善する
- 個人保険の引受益が 1.5 億ドル規模で増え、営業利益が 1 割増える。シンシナティ・プライベート・クライアントの成長を評価できる。
- 10 年国債が 3% 台へ下がる
- 債券の運用益の押し上げが止まり、営業利益が 10 年で 1 割ほど少なくなる。ただし割引率も下がり、価値の差は小さい。
- 代理店の統合で上位の代理店との契約が一部失われる
- 商業のシェアが年 1% 下がり、保険料の伸びが年 4% 台に鈍る。10 年の筋書きをやや悲観の側へ寄せる。
見ておくもの
- 損保の複合損害率と、大災害・準備金の好転を除いた当年の複合損害率(今は上半期 98.2%・除いて 87.8%)
- 商業の更新料率(低い 1 桁後半)と、財物・賠償責任・商業自動車の別
- 個人保険の複合損害率(今は 99.9%)と、シンシナティ・プライベート・クライアントの保険料の伸び
- シンシナティ・リ(4〜6 月 87.6%)とシンシナティ・グローバル(同 110.8%)の複合損害率
- 債券の利回り(今は 5.08%)と新規購入の利回り(5.66%)、保有株の時価(今 132 億ドル)と含み益
- 新規の代理店の数(2026 年 1〜3 月 108 社)と、10 年超の代理店の取り込みシェア(7.4%)
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP 11 倍・営業利益 21 倍)や時価総額を先に見ず、セグメントごとに数量 × 価格 × 複合損害率で 10 年の営業利益を積み、引受の元手に対する ROE と g(約 3.4%)から利益ベースの正当化 PER を出した。k = 基本 8.0% + quality +0.25% = 8.25%。保有株は別に扱い、倍率を掛けるのは事業の営業利益だけにした。余剰資本は戻り方 0.5 を掛けて足した。中立の 10 年は、上限(事業の純利益 21.8 億ドル × 正当化 PER 14.4 倍 + 余剰資本の戻り方込み 74 億ドル = 388 億ドル)の 9 割、時価総額 349 億ドル(営業利益に対する実効 14.6 倍)。やや悲観・悲観も同じ式の上限に対する割合で置き、過去の PER や PBR の底には寄せていない。総合は -20% で「やや割高」。資本コストへの敏感さには別に注意が要る。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25% = 8.25%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。大災害と料率サイクルで利益が振れるので quality は少し上げた。金融なので負債の補正は quality の debt で見る。保有株の暴落・準備金・代理店の統合のような個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と悲観の確率・深さで表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。