結論
マーキュリー・ゼネラルは、カリフォルニア州の自動車保険と住宅保険を主力とする地域密着の損害保険会社である。筆者は、足元の利益回復は本物でも、その好調が10年間続く前提を払うには現在の値段に安全域が足りず、やや割高と判断する。2025年の保険料収入は値上げで伸びたが、売上の約8割を一つの州に頼る構造は変わっていない。
良い材料は明確だ。2026年上期の保険引受の合算比率は89.6%に改善し、純利益は約4.54億ドルに達した。住宅保険では規制当局が災害モデルと再保険費用を料率に反映する仕組みを認め、契約を増やす余地ができた。再保険契約も拡充され、通常の山火事一件で全損を直接抱える状態ではない。
ただし2025年はロサンゼルスの大規模火災で保険損失が膨らみ、2026年も過去の火災の損失見積もりが増えた。強い保険料率と事故件数の少なさは循環の好局面でもあり、プログレッシブなどとの競争が戻れば利益率は薄まる。さらに2026年8月に創業者が死去し、家族支配下での長期の資本配分には新しい不確実性が生まれた。
10年後も保険は必要だが、必要な事業と株主の取り分が大きい事業は別である。五つの筋書きの価値を資本コスト8.5%で現在に戻すと約49.1億ドルとなり、2026年10月23日の時価総額約57.0億ドルを約13.7%下回る。長く保有するなら契約件数より、山火事を含む平年の引受採算と自由に還元できる資本を確かめたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、保険は契約者から受け取る資金を長く預かり、保険金の支払いが少なければ運用利益も得られる優れた商売になり得る。ただし、その資金は株主の預金ではない。保険金準備金と未経過保険料を負債として約束した上で、事故と火災を引き受ける価格が正しい場合に限り、浮いた資金が株主の味方をする。
筆者が最も重視するのは、投資益が好調な年でなく、火災と訴訟費用を含めた長い期間の合算比率である。2025年の自動車保険は高収益だったが、同時期の住宅の大火災と事業用総合保険の赤字を切り離すべきではない。元受保険料を増やしながら平年の合算比率を95%前後に収められれば、10年後も運用と引受の二つの利益源が残る。
残る利益をどこへ置くかも問われる。2025年の帳簿上の自己資本は約24億ドル、税引後の年間純利益は約5億ドルだった。しかし今の高い利益率をそのまま10年伸ばしても、資本を増やし続けるなら自己資本利益率が下がる。保険は価格が悪ければ契約を取らない方がよく、増えた剰余金を無理な値下げに使ってはならない。
保守的に見るべき不確実性は地域災害と規制に集中する。2026年に再保険が厚くなり保険格付けが安定した点は評価するが、それは巨額の災害が消えたという意味ではない。長い保有に耐える企業だとしても、株主が十分に報われるには利益が良い年と普通の年の差を吸収できる買値が要る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は保険契約を集め、先に受け取った保険料から事故や災害の保険金、代理店手数料、管理費を払った残りである。最大の商品は個人向け自動車保険で、2025年の元受保険料は約35.9億ドル。住宅保険は約16.3億ドル、事業用自動車が約3.9億ドル、残りは事業用総合保険やアンブレラ保険などである。開示上は一つの損害保険セグメントだが、損害率の性質が違うため商品別に考える。
契約は独立代理店を通すものが多く、2025年の元受保険料の約88%は独立代理店経由だった。顧客を一度つかむと更新されやすく、カリフォルニアの個人自動車保険の更新承諾率は2025年に約99%に達した。ただし代理店は複数社を比較して販売できるため、顧客関係を会社が独占しているわけではない。2026年6月末の保有契約は個人自動車107万件、住宅93.8万件、事業用自動車3.4万件、その他31.8万件だった。
住宅は高い保険料が得られる一方、山火事や暴風雨で何年分もの保険引受益を一度に失い得る。事業用自動車は人身事故の賠償額が重く、事業用総合保険の採算はなお悪い。2025年の自動車保険の合算比率は89.5%だったが、住宅は山火事込みで105%、事業用総合保険は140.9%だった。単純に全社の利益率を各商品に配ると、この差を見失う。
もう一つの収益源は保険契約者に将来支払う資金を含む運用資産である。2025年の運用収益は約3.3億ドルで、投資資産からの利息・配当が中心だ。株式や債券の評価損益も米国会計では純利益を動かすが、毎年決まって生まれる利益とは見ない。保険負債を裏付ける現金と証券は、非金融企業の余剰現金のように全額を株主に配れるわけではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が簡単に奪えない強みは、地元の代理店網、長く蓄えた事故データ、州ごとの料率申請の実務、保険金の支払い能力にある。創業以来のカリフォルニアの運転者向け引受経験は有効で、2025年の同州個人自動車保険シェアは約6.3%だった。住宅保険では約7.4%で州内第3位にあり、両商品をまとめる提案が継続率を支える。2026年には保険会社の格付け見通しも安定的へ改善した。
しかし広い堀ではない。同州の自動車保険ではステート・ファーム、GEICOを擁するバークシャー、オールステート、プログレッシブに規模で劣る。とりわけプログレッシブは事故データ、直販、広告の機動力が強い。マーキュリーは値上げを通して採算を立て直したが、料率には州の事前承認が必要だ。価格決定力は規制と競合に二重に制約される。
資本効率の数字も山と谷をならして見る。2025年のROEは22.4%だが、2022年は大きな損失で自己資本が削れ、過去10年の中央値は9.9%にすぎない。現在の高ROEを新規に積む資本にも永続的に稼げる利回りとして使うべきではない。むしろ2026年上期の法定剰余金27.7億ドルを、次の巨大災害でも守れるかが先決である。
保険金支払いへの信用力は価値を持つが、気候災害への地理的集中は容易に解消しない。2026年の再保険は手厚くなった半面、年間約2.3億ドルの再保険料という継続費用を伴う。規律を守りながら自動車の契約を増やし、住宅の災害料率を取れた時だけ、地域ブランドは強い堀に近づく。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の損害保険料は、おおむね保有する自動車・住宅などの件数に単価を掛けた額で決まる。成熟した個人向け市場の実質数量は大きく伸びず、修理費、建設費、医療費、訴訟費用の上昇が名目保険料を押し上げる。業界ノートの中立では保険料全体が年約4%伸びるが、利益は損害額と再保険価格の循環でそれ以上に振れる。物価3.5%が続けば、単価を上げても実質的に取り分が増えたとは限らない。
カリフォルニア州の2025年の個人自動車保険市場は元受保険料で約484億ドル、住宅保険は約164億ドルである。自動車ではステート・ファームが約13.8%、GEICO系が10.9%、オールステートが9.2%、プログレッシブが7.6%を占め、マーキュリーは6.3%。住宅ではステート・ファーム20.1%、ファーマーズ15.4%、マーキュリー7.4%という順だ。マーキュリーは地域の有力社だが、市場を動かせる首位企業ではない。
州のプロポジション103は値上げを事前審査するため、事故費用が急増しても保険料にすぐ転嫁できなかった。この仕組みが好転しつつある。州当局は住宅保険で予測災害モデルと再保険の正味費用を採用する制度を進め、マーキュリーは長期で約3.8万件超の新規住宅契約を引き受ける方針を示した。しかし高危険地区への供給を増やす以上、災害モデルの誤差を株主が負う。
2025年の火災ではパリセーズとイートンの損害が再保険前に約22億ドルに及んだ。回収見込みと再保険で負担は減ったが、その見積もり自体に不確実性が残る。2026年7月からの巨大災害再保険は自己負担2億ドル超の損失に対し約27.9億ドルの枠を持つ。それでも複数回の災害、再保険枠の再設定費、カリフォルニアの地震除外は利益の上限を制約する。自動運転と安全装置は長期では事故頻度を下げる一方、保険料市場そのものを小さくする力になる。輸入部品への関税や物流の混乱も修理費を通じて保険金額を押し上げる。
同社が売るのは保険というリスクの引受であり、人月や席課金の業務ソフトなどAIエージェント代替の指定事業型には当たらない。とはいえ募集や保険金査定の自動化が大手の費用優位を広げる危険は残る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心である。かつては年約1.4億ドルを配っていたが、2022年の引受悪化後に減らし、2023年から2025年までは各年約0.7億ドルだった。2026年8月に決めた四半期配当も現行水準を維持している。過去10年は目立った自社株買いがなく、株数もほぼ横ばいだ。配当性向が小さいのは魅力でも、保険会社の利益留保には法定資本を満たすという理由がある。
大型買収で契約数を追う経営ではない。過去の買収には販売代理店AISや保険子会社オリオンの取得があるが、近年の成長の主役は買収より保険契約と料率の改善だ。2025年には不採算の保険ラインを絞る判断も進めた。2026年6月には利率6.25%の2036年満期社債を5.25億ドル発行し、古い社債と銀行借入の借り換えに充てた。これは増資ではなく、将来の利払いを引受と運用の利益から賄う約束である。
経営と支配権には転換点が来た。2026年3月の委任状では創業者と配偶者の保有分を合わせて約51.8%だったが、創業者は8月に死去した。会社は家族保有と経営継続を表明したものの、相続後の議決権運用や少数株主への還元方針はなお検証が要る。非公開化の合意や上場廃止予定は確認されず、買収上乗せは価値に含めない。
純利益を積み増すだけで配当を長く抑えれば、自己資本が膨らみROEは低下する。資本コスト以上で書ける保険契約を増やすか、剰余金を規律を持って戻すかが資本配分の核心である。数値を伴う10年の増配・自社株買いの約束はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自動車保険の改善は一時的な値上げ益にとどまらない。2025年の自動車の合算比率は89.5%で、2026年上期も全社で89.6%だった。会社は事故頻度の減少、引受条件の改善、更新率の高さを同時に示している。独立代理店網が地元の顧客を維持し、約100万件規模の自動車契約から住宅を組み合わせて売る余地もある。プログレッシブに全国シェアで負けても、カリフォルニアの中所得層に合った商品では十分に戦える。
住宅保険では需給環境が以前より良い。州政府は保険の空白を埋めようとしており、災害モデルと再保険費用を料率に認めた。マーキュリーは住宅の契約を長期で3.8万件超増やす計画を示したが、これは2026年6月の約94万件から見れば出発点にすぎない。競合の撤退や厳しい引受条件が続けば、良い危険を選びながら住宅シェアを伸ばせる。価格と数量の両方が増え、火災リスクを織り込んだ引受益が生まれる。
再保険の増額は自己資本を守る手段にもなる。2026年7月からの巨大災害契約は保護枠を拡大し、年間の再保険料は前年より下がった。格付け会社も保険子会社のA格を維持し、見通しを安定的に戻した。さらに保有証券の利息は長期金利5%前後の世界で徐々に増える。自動車で持続的に利益を得ながら住宅を選別して育てれば、純利益と配当の両方が増える。2026年の創業者死去を機に家族が資本効率を重視すれば、留保の多さも投資家に返る可能性がある。
慎重な見方
株主が払わされる損失は、年平均でなく最悪の時に起きる。2025年のロサンゼルス山火事は再保険前に約22億ドルの損害を生み、再保険の回収見込みと電力会社等への求償が決算を大きく左右した。2026年上期も過去の火災の総損害見積もりが増えている。これほどの変動要因が一つの州に集中している保険会社を、全国に分散した大手と同じ質だと考えるのは危うい。
自動車の現在の利益は、過去の値上げが事故費用に追いついた後の好局面かもしれない。州の認可手続きは再び料率調整を遅らせる恐れがある。プログレッシブの精緻な危険選別やGEICOの低コスト販売と競うほど、良い契約者ほど他社に移る。住宅は保険料が上がっても火災・再保険・建築費の上昇で利益が消える。事業用総合保険は火災を除いてもなお大幅赤字で、今の高い全社利益をそのまま長期へ延ばす理由にはならない。
財務も単純な純現金企業ではない。2025年末の現金13億ドルに対し、保険金準備金だけで約36億ドル、未経過保険料も約23億ドルある。新社債の6.25%は保険契約者の資金が潤沢でも持株会社の借り換えに費用がかかる証拠だ。創業者死去後の家族支配は安定要因である半面、一般株主が配当増額や企業再編を促しにくい。強い年のROEを信じて払うと、10年間のうち数度の大災害だけで安全域が消え得る。
どちらに重みを置いたか
2026年上期の実績と再保険枠の拡大は強い証拠であり、企業の存続そのものを疑う必要は小さい。しかし地域集中は客観的で、2025年の災害と2026年の見積もり増加が、平年の高収益をそのまま外挿できないことを示した。したがって楽観・やや楽観は合計29%、中立34%、やや悲観・悲観は37%と慎重側へ寄せる。過去の損失を中立利益率と悲観の両方に同じ大きさで重ねず、悲観では競争と災害が構造化する場合だけ深くする。価値は約49.1億ドルで現在の約57億ドルを下回り、評価はやや割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 156.65 ドル87 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 29.21 ドル16 億ドル)。 今の値に割り戻すと 88.71 ドル49 億ドル、今との差 −13.4%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 384.55 ドル213 億ドル | 68.61 ドル38 億ドル | +342.5% | +18.1% | 40.78 ドル23 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 246.76 ドル137 億ドル | 45.14 ドル25 億ドル | +185.0% | +12.3% | 58.38 ドル32 億ドル |
| 中立 | 34% | 159.24 ドル88 億ドル | 27.08 ドル15 億ドル | +81.9% | +6.7% | 63.35 ドル35 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 62.61 ドル35 億ドル | 18.05 ドル10 億ドル | −21.2% | −2.6% | 19.36 ドル11 億ドル |
| 悲観 | 13% | 27.09 ドル15 億ドル | 3.61 ドル2 億ドル | −70.0% | −11.9% | 3.99 ドル2 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 156.65 ドル87 億ドル | 29.21 ドル16 億ドル | +81.5% | +6.8% | 185.86 ドル103 億ドル |
今の株価時価総額 102.42 ドル57 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:住宅も危険に見合う料率が通り、引受と運用の複利が続く 利益 14 億ドル · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 384.55 ドル213 億ドル
カリフォルニアで住宅の新しい料率算定が根づき、危険に見合う保険料が認められる。住宅保有契約は132万件となり、州内シェアを高める。個人自動車もプログレッシブとGEICOに対抗し、契約数を130万件へ増やす。料率は自動車が約52%、住宅が約63%上がり、修理費と再保険費を上回る。住宅の合算比率は91%、自動車は90%で維持できる。
再保険と危険地域の選別が奏功し、複数の山火事でも法定資本は守られる。事業用総合保険は保険条件を絞って黒字に戻る。運用資産は135億ドルに積み上がり、収益率は税前5.5%へ改善する。社債の利払いは増えるが、GAAP純利益は14.2億ドルとなる。
10年間のGAAP純利益累計は98億ドル、正味の配当・買い戻しは38億ドルとなり、自己資本は84.2億ドルへ積み上がる。経営陣が過大な買収に走らず、余剰となった法定資本を段階的に戻す場合である。創業家の議決権は続くが少数株主への分配にも配慮する。
- 個人自動車保険:数量 130(保有契約(万件。2026年6月末107万件を2025年売上への代理変数に使用))× 価格 5,046(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 66 億ドル・営業利益 7 億ドル。州内シェア拡大、合算比率90%
- 住宅保険:数量 132(保有契約(万件。2026年6月末93.8万件を近似使用))× 価格 2,191(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 29 億ドル・営業利益 3 億ドル。適正な災害料率、合算比率91%
- 事業用自動車保険:数量 4.4(保有契約(万件。2026年6月末3.4万件を近似使用))× 価格 16,500(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。引受選別が成功し合算比率93%
- 事業用総合・アンブレラ・機械保証等:数量 36.0(その他保有契約(万件。2026年6月末31.8万件を近似使用))× 価格 1,600(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。事業用総合の赤字解消
- 保険フロートの資産運用:数量 135(平均運用資産簿価(億ドル。2025年))× 価格 0.06(運用資産1ドル当たり税前利息・配当率(現金利息を含む、割合))→ 売上 7 億ドル・営業利益 7 億ドル。留保資本・フロート拡大と再投資
倍率:2035年自己資本84.2億ドルに対するGAAP ROEは16.9%。gは市場実質数量+0.7%、シェア+0.3%、名目保険料・投資収益に由来する価格+3.0%で年4.0%。k8.5%、通常の堀の残存率1/2からRONIC12.7%。正当化PER=(1-0.04/0.127)/(0.085-0.04)×1.04=約15.8倍。引受成績が良い条件下でも大災害は消えないため上限の約95%に当たる15.0倍。GAAP純利益に適用し、現金は追加で足さない。
確率:州の新料率制度が機能し、再保険の費用が落ち着き、競合から契約を奪う条件が重なるため1割未満。災害を無視した楽観ではない。
やや楽観 20% やや楽観:新制度が定着し、地元の有力保険会社として堅調 利益 10 億ドル · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 246.76 ドル137 億ドル
自動車契約は118万件、住宅は120万件へ増える。州の住宅市場は危険の高い地域ほど保険料が上がるが、会社は代理店と組み合わせ販売で良い危険を選ぶ。個人自動車の保険料は10年で約46%、住宅は約50%上がる。ステート・ファームやファーマーズが供給を絞る住宅ではシェアを伸ばすが、プログレッシブの伸びで自動車の上積みは控えめとなる。
合算比率は自動車92%、住宅94%まで収まり、事業用自動車とその他の商品も小幅黒字になる。運用資産は115億ドルに増えるが、税前利回りは5.1%にとどまる。株式評価益を平年の成長力には算入せず、2026年に調達した6.25%社債の利払いも含める。GAAP純利益は約10.05億ドルとなる。
10年間の累計純利益78億ドルから、配当や小規模な自社株買いで25億ドルを戻す。自己資本は77.2億ドルで、2035年のROEは約13.0%。家族の支配権は残るが、少数株主にも留保利益の一部が還元され、買収に無理をしない筋書きである。
- 個人自動車保険:数量 118(保有契約(万件。2026年6月末107万件を2025年売上への代理変数に使用))× 価格 4,847(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 57 億ドル・営業利益 5 億ドル。契約増と料率改善、合算比率92%
- 住宅保険:数量 120(保有契約(万件。2026年6月末93.8万件を近似使用))× 価格 2,016(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 1 億ドル。山火事費用を料率に反映、94%
- 事業用自動車保険:数量 4.0(保有契約(万件。2026年6月末3.4万件を近似使用))× 価格 15,500(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。賠償コストを選別で抑える
- 事業用総合・アンブレラ・機械保証等:数量 34.0(その他保有契約(万件。2026年6月末31.8万件を近似使用))× 価格 1,580(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。不採算種目の絞り込み
- 保険フロートの資産運用:数量 115(平均運用資産簿価(億ドル。2025年))× 価格 0.05(運用資産1ドル当たり税前利息・配当率(現金利息を含む、割合))→ 売上 6 億ドル・営業利益 6 億ドル。フロート増、利回り5.1%
倍率:GAAP ROE=10.05/77.2=13.0%。gは実質市場数量+0.5%、シェア+0.2%、保険料価格+3.1%で3.8%。k8.5%、堀は通常(残存率1/2)でRONIC約10.8%。正当化PER=(1-0.038/0.108)/(0.085-0.038)×1.038=約14.3倍。その約95%の13.6倍。カリフォルニア集中と大型災害を考え上限一杯にはしない。現金別建てなし。
確率:住宅の供給不足と既存の代理店関係が追い風になるが、同時に再保険と修理費を制御しなければならず、2割に抑える。
中立 34% 中立:保険料は物価に沿うが、損害率が平常化する 利益 7 億ドル · PER 12.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 159.24 ドル88 億ドル
市場の自動車契約数は人口と保有台数に沿って小幅に増え、プログレッシブへの一部流出を差し引くとマーキュリーの自動車契約は110万件となる。平均保険料は物価並みの約41%上昇を確保する。住宅契約は州の新制度のもとで109万件に増え、保険料も物価並みの約41%上がる。これは良い災害リスクだけを引き受ける慎重な拡大である。
会社全体の高収益は平年に戻る。自動車の合算比率は94%、住宅は96%とし、事業用自動車は薄利、事業用総合などの小口保険はなお赤字となる。2025年の巨額火災が毎年繰り返されるわけではないが、再保険料と災害損失は継続費として残る。運用資産は約105億ドル、利回りは4.9%へ収まり、GAAP純利益は7.2億ドルになる。
10年間の累計純利益は63億ドル、正味還元は15億ドルと見込む。自己資本は72.2億ドルとなり、ROEは約10%に正常化する。社債の借り換えは利払いの増加として含む。小規模買収があっても資本の大きな移転はなく、上場は継続する。
- 個人自動車保険:数量 110(保有契約(万件。2026年6月末107万件を2025年売上への代理変数に使用))× 価格 4,681(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 51 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質契約+3%、価格+41%、合算比率94%
- 住宅保険:数量 109(保有契約(万件。2026年6月末93.8万件を近似使用))× 価格 1,895(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 1 億ドル。州新制度で契約+16%、合算比率96%
- 事業用自動車保険:数量 3.6(保有契約(万件。2026年6月末3.4万件を近似使用))× 価格 15,941(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。料率は物価並み、合算比率99%
- 事業用総合・アンブレラ・機械保証等:数量 31.0(その他保有契約(万件。2026年6月末31.8万件を近似使用))× 価格 1,365(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。CMPの赤字がなお残る
- 保険フロートの資産運用:数量 105(平均運用資産簿価(億ドル。2025年))× 価格 0.05(運用資産1ドル当たり税前利息・配当率(現金利息を含む、割合))→ 売上 5 億ドル・営業利益 5 億ドル。契約増と留保で投資残高増、利回り4.9%
倍率:2035年GAAP ROE=7.2/72.2=10.0%、k8.5%。gは米国保険対象の実質需要+0.5%、当社シェア-0.4%、名目料率+3.5%=3.6%。堀を通常(超過ROE残存率1/2)とするとRONIC9.24%。翌年利益の式(1-0.036/0.0924)/(0.085-0.036)に(1+g)を掛け、2035年純利益に対する正当化PERは約12.9倍。価格競争と災害で利益の質を控除し、上限の95%に相当する12.25倍。保険契約者の運用資産を余剰現金として別加算しない。
確率:2026年の改善は確認できる一方、保険料の急騰と事故頻度低下は固定できない。料率制度は前進し、地理的集中は続く折衷を最多の34%とする。
やや悲観 24% やや悲観:値上げが追いつかず、地域の採算が恒常的に劣後 利益 3 億ドル · PER 10.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 62.61 ドル35 億ドル
自動車保険の優良契約者がプログレッシブとGEICOに移り、契約は94万件に減る。会社は値上げを続けるが、物価と修理・医療費に追いつかず、10年間の料率上昇は約29%にとどまる。住宅は州の新制度が十分に機能せず、火災の多い地域で引受を絞るため83万件に縮む。料率の上昇も約34%に抑えられる。
自動車の合算比率は97%、住宅は101%、事業用自動車104%、その他105%となる。積み上がる運用資産は85億ドルにとどまり、利回り4.6%で損失を一部補う。ここでは保険契約の数量と利益率の両方が悪く、構造的な弱体化が起きている。GAAP純利益は3.4億ドルまで低下する。
前半に2026年の好業績があるため10年間の累計純利益は44億ドル残るが、後半は配当の余力が乏しく正味還元は10億ドルとなる。2035年自己資本は58.2億ドル、ROEは5.8%で株主資本コストを下回る。経営は買収で挽回せず、法定資本を優先する。
- 個人自動車保険:数量 94.0(保有契約(万件。2026年6月末107万件を2025年売上への代理変数に使用))× 価格 4,283(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 1 億ドル。契約-12%、料率+29%、合算比率97%
- 住宅保険:数量 83.0(保有契約(万件。2026年6月末93.8万件を近似使用))× 価格 1,801(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約縮小と料率遅れで101%
- 事業用自動車保険:数量 3.0(保有契約(万件。2026年6月末3.4万件を近似使用))× 価格 13,200(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。賠償額の上昇、104%
- 事業用総合・アンブレラ・機械保証等:数量 28.0(その他保有契約(万件。2026年6月末31.8万件を近似使用))× 価格 1,320(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。不採算が続き105%
- 保険フロートの資産運用:数量 85.0(平均運用資産簿価(億ドル。2025年))× 価格 0.05(運用資産1ドル当たり税前利息・配当率(現金利息を含む、割合))→ 売上 4 億ドル・営業利益 4 億ドル。運用原資と利回りが伸びない
倍率:GAAP ROEは3.4/58.2=5.8%とk8.5%を下回るため、成長に資本を投じても超過利益はない。利益価値は3.4/0.085=40.0億ドル以下に限られる。保険子会社の配当制限と資本毀損の危険を反映して、平常の利益3.4億ドルに10.2倍=34.68億ドルとする。中立12.25倍より低い。清算可能資産の税後床20億ドルは下回らず、過去の谷の株価倍率は用いていない。
確率:保険料率認可の遅れと競争のどちらかが長引けば起こり得る。大災害が連続しなくてもROEが資本コストを割る事態として24%。
悲観 13% 悲観:相次ぐ大火災で資本を失い、保険引受の規律も崩れる 利益 −2 億ドル · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 27.09 ドル15 億ドル
複数の大規模山火事と求償回収の不足が続き、州政府の料率認可が損害コストに追いつかない。個人自動車は75万件へ減り、料金は10年で約20%しか上がらない。住宅は高危険地域から撤退して65万件に減り、保険料は27%上がるだけとなる。プログレッシブとステート・ファームに優良顧客を奪われ、住宅市場でも採算の悪い契約だけが残る。
自動車の合算比率は105%、住宅118%、事業用自動車114%、その他120%に悪化する。投資資産は63億ドルまで減り、運用益では引受赤字を埋められない。再保険は契約ごとの自己負担や非対象災害をすべて除いてはくれず、資本再建のため配当を早期に停止する。2035年のGAAP純損失は2億ドルとなる。
期間中には火災と準備金の見直しで累計約22億ドルの損失が集中する数年があり、それ以外の年の利益約17億ドルと相殺すると10年累計は5億ドルの赤字になる。累計還元は初期に支払った2億ドルだけで、自己資本は17.2億ドルへ縮む。新株調達や買収による救済は前提にせず、保険金と社債を優先した処分可能資産だけが株主の床となる。
- 個人自動車保険:数量 75.0(保有契約(万件。2026年6月末107万件を2025年売上への代理変数に使用))× 価格 3,984(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 −1 億ドル。シェア喪失、合算比率105%
- 住宅保険:数量 65.0(保有契約(万件。2026年6月末93.8万件を近似使用))× 価格 1,707(1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 −2 億ドル。山火事と規制で合算比率118%
- 事業用自動車保険:数量 2.4(保有契約(万件。2026年6月末3.4万件を近似使用))× 価格 12,200(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。高額賠償で114%
- 事業用総合・アンブレラ・機械保証等:数量 23.0(その他保有契約(万件。2026年6月末31.8万件を近似使用))× 価格 1,200(1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 −1 億ドル。撤退費用が続き120%
- 保険フロートの資産運用:数量 63.0(平均運用資産簿価(億ドル。2025年))× 価格 0.04(運用資産1ドル当たり税前利息・配当率(現金利息を含む、割合))→ 売上 3 億ドル・営業利益 3 億ドル。損失支払で資産減、利回り4.2%
倍率:最終年は赤字でPERを使えないため処分可能な純資産を評価。今の自己資本24.2億ドルに0.62を掛けると15.004億ドルになる。倍率は過去の株価の谷でなく、保険準備金・社債・処分税を引いた売れる資産約15億ドルから逆算した表示上のPBRである。2035年自己資本17.2億ドルの積み上がりに床倍率を掛けていない。構造的に赤字なので中立より小さく、時価総額をゼロにもしていない。
確率:2025年に実際に起きた巨額火災、州への集中、再保険回収・求償の不確実性を踏まえ13%。同時多発火災と規制の失敗が必要なので基本筋書きにはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
個人自動車保険
主としてカリフォルニアの運転者に賠償責任、車両損害などを補償する。独立代理店と一部直販から契約を集める。
| 数量保有契約(万件。2026年6月末107万件を2025年売上への代理変数に使用) | 価格1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 107 | 3,320 | 36 | 3 |
| 10 年後 中立 | 110 | 4,681 | 51 | 3 |
取り方:2025年10-Kの保険種類別正味既経過保険料を直接採用:個人自動車35.526億ドル(元受保険料35.912億ドル)。2026年6月末の107万件を近似母数にすると1件年3,320ドル。2025年平均件数は非開示のため単価は推計。2025年の個人自動車合算比率89.5%は会社の法定会計ベースの開示であり、GAAPとのずれも考えて引受利益3.47億ドルと推定。カリフォルニア個人自動車市場約484億ドル、同社6.32%、首位ステート・ファーム13.83%、プログレッシブ7.58%(州保険局2025 Market Share、https://www.insurance.ca.gov/01-consumers/120-company/04-mrktshare/2025/index.cfm)。
住宅保険
住宅・家財・個人賠償を引き受ける。州内の供給不足は商機だが、山火事と再保険費用が主な負担。
| 数量保有契約(万件。2026年6月末93.8万件を近似使用) | 価格1契約当たり年間の再保険控除・経過期間調整後保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 93.8 | 1,344 | 13 | −1 |
| 10 年後 中立 | 109 | 1,895 | 21 | 1 |
取り方:2025年10-Kの住宅保険の正味既経過保険料12.609億ドルを直接採用(元受16.309億ドル)。再保険と保険料の発生時期により元受と乖離し、全社係数で割り振らない。2026年6月末93.8万件を用いる年1件約1,344ドルは推計。会社2025年年次報告(https://www.mercuryinsurance.com/assets/pdf/Mercury-General-Corp-Annual-Report-2025.pdf)の住宅合算比率105%と約0.75億ドルの火災込み引受損失を基礎とするが、GAAP全社利益に合うよう概算。州の住宅市場164億ドル、同社7.39%で3位、ステート・ファーム20.09%、ファーマーズ15.43%。
事業用自動車保険
事業者の車両と対人・対物賠償を補償する。訴訟・医療費の上昇で採算が変わりやすい。
| 数量保有契約(万件。2026年6月末3.4万件を近似使用) | 価格1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.4 | 11,306 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.6 | 15,941 | 6 | 0 |
取り方:2025年10-Kの事業用自動車正味既経過保険料3.844億ドルを直接採用(元受3.874億ドル)。2026年6月末の3.4万契約で割った年間単価約11,306ドルは推計で、保険対象車両の台数とは違う。2025年年次報告で同種の合算比率96.4%が示されたため引受益約0.13億ドルとした。カリフォルニア事業用自動車市場約64.7億ドル、同社4.66%、プログレッシブ12.67%、トラベラーズ8.38%。
事業用総合・アンブレラ・機械保証等
事業用総合保険とその他小口の損保契約を含む。赤字の事業用総合保険が採算の足を引く。
| 数量その他保有契約(万件。2026年6月末31.8万件を近似使用) | 価格1契約当たり年間の正味既経過保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 31.8 | 968 | 3 | −1 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 1,365 | 4 | 0 |
取り方:2025年10-Kに明記されたその他保険の正味既経過保険料3.077億ドル(元受保険料3.730億ドル)を使用。2026年6月末の31.8万契約で割ると年間平均約968ドル。事業用総合・機械保証・アンブレラの混合なので単価は目安。同じ会社2025年年次報告で2025年の事業用総合保険(CMP)の合算比率140.9%、火災を除くと127.3%。その他全体には他種目も入るため、引受損失約0.82億ドルは全社GAAP合算比率96.3%との整合を含む推定。市場全体の独立シェアは開示なし。
保険フロートの資産運用
契約者資金と自己資本を支える債券・株式を保有し、利息と配当を得る。評価益は毎年の安定利益と区別する。
| 数量平均運用資産簿価(億ドル。2025年) | 価格運用資産1ドル当たり税前利息・配当率(現金利息を含む、割合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 59.7 | 0.06 | 3 | 3 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.05 | 5 | 5 |
取り方:2025年10-Kの平均投資簿価59.686億ドルと正味運用益3.287億ドルから実効率5.51%を逆算。会社の表示する運用利回り4.7%は現金利息を含まないため差が生じる。投資資産の半分超は地方債などで、保険準備金の裏付けである。将来のvolumeは保険料と留保利益から増える運用原資、priceは市場金利5%程度へ順次再投資する際の税前収益率。株価評価損益はここに恒常成長として含めない。
リスクと懸念
カリフォルニア州と山火事への集中
2025年の元受保険料の82%をカリフォルニア州で稼ぎ、2025年の大火災では再保険前の損失が約22億ドルに達した。1件の火災は再保険で分けられても、複数回の災害と見積もり変更は株主資本を削る。住宅契約を増やすほど、この集中をどう薄めるかが重くなる。
料率認可と損害インフレの時間差
州の事前認可制度のため、修理費、医療費、訴訟費用が上がっても保険料を直ちには引き上げられない。2024〜25年の大幅値上げが通った事実は強みだが、次のインフレ局面で同じ速さで認められるとは限らない。合算比率が数ポイント悪化するだけで引受利益は大きく減る。
再保険と求償の回収危険
2025年のパリセーズ・イートン火災では再保険と電力会社等からの求償回収見込みを使って純損失を計算した。相手方の支払い、法廷判断、再保険の例外条項で実収額が減れば損失見積もりを積み増す。2026年からの保護枠拡大も無償ではなく、年間保険料と再設定費用がかかる。
プログレッシブとGEICOの価格競争
自動車保険の顧客は更新時に代理店やネットで容易に比較できる。プログレッシブがデータと直販で優良運転者を選び取り、GEICOが価格で反攻すると、マーキュリーは更新率を保つための値下げを迫られる。事故頻度が下がれば業界全体の保険料総額も伸びにくくなる。
契約者資金の誤認と資本制約
2025年末は現金等約13億ドル、有利子負債約6億ドルで金融上は純現金だった。しかし保険金準備金約36億ドルと未経過保険料約23億ドルが先に支払うべき義務である。保険子会社から持株会社への配当も法定資本の制約を受け、見かけの現金を株主価値にもう一度加算できない。
創業家の支配と後継の判断
2026年8月に創業者が死去した。2026年春の委任状上は創業者と配偶者を合わせて議決権の過半を握っていたため、保有移転や相続後の方針が少数株主の取り分に影響する。家族が長期の保険引受規律を保つことは良いが、過大な留保や関連取引を株主が是正しにくい。
運用債券と利払いの固定化
地方債を中心とした運用資産は金利上昇時の評価損と自治体の信用悪化にさらされる。2026年に発行した2036年満期の6.25%社債は、旧債より利息が高い。運用利回りが予定どおり上がらなければ収益差が縮み、引受損失を運用益で埋められない時期が長引く。
今後の分かれ目
- 自動車の契約数が年間3%以上伸び、災害を除く合算比率が92%以下を3年保つ
- 地域の代理店網と事故データが競争に勝っている証拠となる。中立からやや楽観への比重を増やし、増分の引受ROEと配当余力を再確認する。
- 住宅契約が州の新制度に沿って増え、巨大災害を含めた複数年の合算比率が95%以下になる
- 住宅を増やしても資本を破壊していないと判断できる。数量の長期見通しと収益率を引き上げる根拠になる。
- カリフォルニアの自動車保険の元受シェアが6%を割り込み、単価も物価を下回って伸びる
- プログレッシブなどへの優良契約流出を疑い、やや悲観の数量と価格へ寄せる。
- 大火災後の再保険回収・求償債権が大幅に減額され、法定剰余金が20億ドルを割る
- 現金の株主還元を止める必要が高まり、悲観シナリオの確率と資本毀損額を増やす。
- 2026年からの再保険更新で年間費用が保険料の5%を超え、かつ自己負担上限が上がる
- 住宅の採算と成長可能量を下げ、住宅保険の合算比率が高止まりする筋書きを重くする。
- 創業家の相続後に独立社外取締役が還元計画を示し、法定剰余金が十分な間に増配・買い戻しを始める
- 内部留保だけで自己資本を膨らませるリスクが下がる。累計還元を上げ、長期ROEの分母の増大を抑える見方に変える。
- A.M.ベストの保険財務格付けがAから引き下げられる
- 代理店での販売競争と再保険条件に悪影響が生じるため、契約数量と利益率を一段低い筋書きに改める。
見ておくもの
- 四半期の個人自動車・住宅保有契約数と州内市場シェア
- 商品別合算比率と、異常災害を除く基礎合算比率
- 住宅・自動車の料率認可の申請日・承認率・発効日
- パリセーズ・イートン火災の求償回収額と損失準備金の変動
- 年間再保険料、1事故自己負担2億ドル、巨大災害の補償枠
- 法定剰余金、正味保険料/剰余金、A.M.ベストの格付け
- 運用利回り、投資資産、社債利息と持株会社への現金移動
- 創業家の議決権保有状況、配当額、自社株買い方針
- 2026年11月3日公表予定の2026年第3四半期決算
倍率と資本コストの決め方
先に契約数と商品別保険料を推計し、商品ごとに自動車・住宅・事業用の合算比率と運用資産の利回りを組み立てた。利益が強い2025年と2026年上期を、そのまま2035年の正常利益とはしない。kは基本8.0%とquality+0.5%の合計8.5%、gは市場数量・シェア・価格から組み、2035年GAAP利益に対する正当化PERの上限に0.95程度を掛けた。現時価総額や過去・競合のPER、PBRからは逆算していない。2025年の時価総額起点は56.97億ドルで、確率を掛けた2035年時価総額86.77億ドルと期間還元16.18億ドルを割り引くと49.14億ドルとなる。保険引受の負債があるため見かけの純現金7.3億ドルは別加算しない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にqualityの合計+0.5%を足して8.5%。存続が直ちに危うい状態ではないためextraは0。β、過去・同業の株価倍率、経営者個人への懸念で上乗せしない。