結論
リンカーン・ナショナルは、米国で年金、生命保険、従業員向け団体保障、企業年金の運営を手掛ける保険会社だ。筆者は、団体保障の収益力と再建後の年金利益を認めながらも、過去の保証契約と資本の薄さを理由に慎重な評価が必要だと考える。株価の安さだけでは、保険負債の重さは消えない。
2025年の会社全体の純利益は11.8億ドルだった。2026年4〜6月期には純利益13.3億ドルを計上したが、変額年金保証の時価評価が大きく作用した。四半期の調整後利益は4.5億ドルであり、一時的な会計益を10年先に延ばすことはできない。生保と退職年金の利益が改善し、団体保障は堅調だった一方、既存の変額年金からの資金流出は続く。
この会社の勝ち筋は、年金の新規販売を利ざや型へ移し、団体保障の給付率を管理しながら、旧来の生命保険の準備金負担を軽くすることだ。長期金利が5%の世界なら、新しく買う債券の利回りは上がる。しかし契約者に払う利率も上がり、信用損失も増えるため、金利の高さだけを利益にしてはならない。
2025年にはベイン・キャピタルへ普通株を9.9%相当発行して資本を厚くした。これで上場企業としての存続不安は和らいだが、株主の取り分が希薄化した歴史は消えない。保険会社の預かり資産に対応する現金は自由に配れる現金ではない。損失の深い筋書きも含めて測ると、今の時価総額には長期の安全域があるものの、他の大手生保ほど確かな資本配分とは言い切れない。確率を加重した10年の価値は今の時価総額を約29%上回り、判定はやや割安だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を単なる低い株価純資産倍率の保険株とは呼べない。保険会社の利益は、今日受け取った保険料から何十年も先の給付を差し引いて初めて株主のものになる。だから保険料が伸びていても、保証の値付けを間違えていれば資産の増加は価値の増加ではない。
団体保障は比較的理解しやすい。更新時に給付率を観察し、料率を直し、契約を長く保つ。ここには持続する顧客関係と引受規模がある。年金の新商品も、危険を取る対価として適正な利ざやを確保できれば価値がある。しかし既存の変額年金と古い生命保険は、死亡率、解約、株価と金利という複数の変数がからむ。予測できない損失に高い倍率は払えない。
経営は2010年代に株式を減らしたが、2025年には新株を大量発行して資本を調達した。長い間に行った資本配分の評価は、発行した資本から十分な利益が生まれるかで決まる。これからの還元は、保険債務を覆う資本を守った後にだけ行うべきだ。筆者は普通株の正味の取り分を優先株と契約者資産から切り離し、悲観で失う額を十分に認めてから、安全域を考える。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は四つある。年金は変額年金、固定年金、指数連動型年金を金融機関や助言者を通じて売る。2025年末の再保険控除後の年金口座残高は約1754億ドルだ。収入の中心は残高にかかる保証・管理手数料と一般勘定の運用収益で、売上の中には契約者へ再び支払う利息や給付の原資も含まれる。保険料収入と顧客の預入額は同じものではない。
生命保険はユニバーサル保険、変額終身型、長期介護保障付きのマネーガード、定期保険、企業役員向け保障を扱う。保障額の残高は2025年末に約1.06兆ドルで、2023年より減った。契約期間が長く、すでに約束した死亡・長寿・金利の条件を後から変えられない。2025年の新契約販売額は会社定義で6.57億ドルだが、全額が直ちに売上になるわけではない。
団体保障は雇用主の福利厚生として生命、短期・長期就労不能、歯科保障を引き受ける。2025年の保険料54.9億ドルのうち就労不能が31.4億ドルで、働く人の所得を守る契約が稼ぎ頭だ。給付率を一ポイント動かすだけで年間の税引後利益が約0.4億ドル動く。第三者の管理事務収入は約2.4億ドルで、保険引受と分けて見る。
退職年金サービスは401(k)や403(b)など企業年金口座の記録、投資商品、一般勘定での利ざやを扱う。2025年末の管理口座残高は約1240億ドルだった。うち手数料収入は3.0億ドルで、残りの収入の多くは運用利息に対応する。操作画面を席ごとに売るソフトではないが、記録管理と事務の一部はAIで安くなる。
優良さと弱いところ
本物の強みは団体保障の引受データと販売網にある。米国の長期就労不能保険でリンカーンは保有保険料が業界上位の三位に入り、メットライフ、ハートフォード、ユーナムと競う。大企業との契約、給付管理、法令対応の経験は一朝一夕に作れない。既存年金の解約控除や生命保険の健康審査も、顧客が簡単に乗り換えられない理由だ。
ただし乗り換えにくさと値決めの強さは同じではない。新しい年金の募集では助言者がアテネ、アライアンス、コアブリッジなどの商品と利回りを比較する。既存の変額年金は保証が複雑で、利益を稼ぐだけでなく長期の損失を肩代わりする危険がある。生命保険の保障残高も縮み始めており、強い堀が全事業に及ぶとは言えない。団体保障の2025年利益は更新保険料の改善を含み、給付が平年に戻れば高い収益率が固定される保証はない。複雑な保険契約の情報優位は顧客より保険会社にあるように見えても、契約締結時の予測が外れれば逆に株主の弱みになる。
増分の自己資本利益率を無条件に高く見てはならない。団体保障は更新時の料率改善で資本コストを超える余地があるが、旧来の生命保険では準備金の積み増しが利益を食う。2025年の保険会社全体の自己資本比率は2.8%にすぎず、債券評価損と優先株を除いた普通株の安全域は帳簿の数字ほど厚くない。経営陣が高い利回りを追って信用リスクを増やせば、今の収益改善は逆回転する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の個人年金販売は2025年に約4613億ドルと過去最高になった。リンカーンの年金預入額は約172億ドルで、定義の違いを承知の概算シェアは4%弱だ。十年前と比べて指数連動型年金の存在感が増え、資産運用会社系のアテネやグローバル・アトランティックが利回り競争を強めている。2035年には退職世代の大きさが需要を支えるが、新契約の利ざやは競争相手次第で細る。
生命保険では、米国の2025年の新規年換算保険料が175億ドルを超えた。リンカーンの2025年販売指標は6.57億ドルだが、役員保障の大型案件が含まれるため市場シェア4%前後という単純比較は上限寄りの目安にすぎない。健康状態の審査の自動化は新契約の費用を下げる一方、他社にも広がって料率差を縮める。
団体保障は年金より優位がはっきりしている。2025年の米国団体就労不能保険の調査参加社合計保有保険料は244億ドルで、リンカーンの対象商品の規模は概ね13%に当たる。長期就労不能で三位、短期でも三位と、ハートフォードやメットライフに近い規模だ。市場の被保険者数は急増しないが、賃金と給付費用の上昇を更新料率へ反映できれば名目収入が増える。
退職年金の確定拠出型市場は2025年末に14.2兆ドルだった。リンカーンの口座残高約1240億ドルは1%弱で、フィデリティ、バンガード、エンパワーなどの巨大な記録管理業者より小さい。運用管理の手数料競争とAIによる事務省力化が進むため、名目残高の増加ほど利益は増えない。市場金利5%、物価3.5%、為替一定は五つの筋書きに共通とする。
資本政策と M&A
資本配分には二つの時代がある。2014〜2022年は配当と自社株買いを続けて株数を減らしたが、2022年の金利上昇と保障負債の負担で普通株の余力が細った。2023年以降は自社株買いを止め、普通株配当を優先している。2025年の配当は約3.3億ドルで、利益が戻っても買い戻しを機械的に再開しない判断は妥当だ。
2025年6月にはベイン・キャピタルへ約1880万株を8.25億ドルで発行した。新株の払い込みは資本を強めたが、既存株主には約一割の希薄化だった。2024年の富裕層向け証券・資産管理部門の売却と、フォーティテュード・リなどへの再保険移転は、複雑な保証負債を軽くするための再編だ。自社のバミューダ再保険会社への移転はグループ内取引であり、最終的な保険リスクが消えるわけではない。
2026年6月末の子会社規制資本比率は会社推定で420%超、持株会社の自由な流動性は優先株等の返済準備を除き9.03億ドルだった。新たな5億ドルの劣後債発行は優先株の買い戻し・償還の柔軟性を確保するものだ。優先株の償還を普通株主への還元とは数えない。長期の数字で約束された買戻し枠や普通株の総還元目標は確認できず、利益と規制資本を満たした後の裁量と見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
立て直しは数字に現れ始めた。2026年4〜6月期の生命保険の営業利益は前年同期を上回り、退職年金サービスも約三割増えた。団体保障は一時的な給付費用の増加があっても二桁近い利益率を確保している。とりわけ企業の就労不能保障では上位の保険料残高を持ち、更新時に価格を修正する仕組みがある。新規参入者が簡単に同じ引受データを集めることはできない。
年金の口座残高は2026年6月末に1820億ドルへ増えた。販売の六割強が従来より利ざやで稼ぐ商品へ移ったことは、株価や保証の時価評価に左右されにくい利益への転換を示す。ベイン・キャピタルとの資産運用提携は、十分な信用審査を前提に債券の調達力を高められる。金利が5%のままなら、新しい運用資産の利回り改善も時間をかけて効く。
2025年に普通株を発行して得た8.25億ドルを、資本コスト以上で運用できれば、既存株の希薄化を上回る価値が生まれる。2026年には規制資本比率420%超が維持され、持株会社の流動性も改善した。数年後に優先株を借り換え、収益と資本の両方が安定すれば、自社株買いも再開できる。こうした成果が続けば、団体保障と年金で生まれる利益は2035年に大きく育つ。
慎重な見方
2026年の純利益は見かけほど強くない。4〜6月期の純利益には市場リスク給付という変額年金保証の評価変動が大きく入り、調整後利益とは約9億ドルも違った。2025年の会社全体の純利益も、2024年より大きく減っている。将来の保険債務に対する予測の誤りは、数四半期の好業績を一気に覆し得る。
もっと深い問題は、ほぼ4000億ドルの総資産に対して2025年末の自己資本が109億ドルしかないことだ。約41億ドルのその他包括損失が残り、優先株には普通株より先に約10億ドルの請求権がある。現金95億ドルと有利子負債63億ドルの差を自由資金とみなすのは誤りである。多額の保険料や給付に対応する資金が含まれるからだ。
競争相手のアテネやコアブリッジは年金販売で高い利回りを提示でき、契約者の乗り換えは続く。退職年金の記録管理はフィデリティなどに規模で劣り、事務の自動化は料金を圧迫する。団体保障も障害給付が悪化すれば利益が縮む。保険負債の再評価で損失が続けば規制当局は配当を制限し、株主は増資で再び希薄化される可能性がある。2025年のベインへの株式売却が示すのは、保険会社が新しい資本を必要とするとき、長期保有の普通株主であっても資本調達の価格を選べないということだ。旧契約の負債が解けるまでの期間を甘く見てはならない。
どちらに重みを置いたか
団体保障の強さと資本の回復を認めるが、過去の保険負債と再保険の相手先を十分に見通すことはできない。そこで楽観とやや楽観を計25%、中立を30%とし、やや悲観と悲観を計45%にした。大手生保の中でも悪い側に厚いのは、2022年の自己資本急減、2025年の増資、変額年金の保証残高があるためだ。AIの影響は小さな管理事務の数量と価格に織り込み、同じ理由で資本コストを重ねて上げていない。慎重な立場が確率では優勢だが、残る事業の稼ぐ力にはなお価値がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 85.03 ドル164 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 22.42 ドル43 億ドル)。 今の値に割り戻すと 51.49 ドル99 億ドル、今との差 +25.6%、 期待の年率 +11.7%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 223.89 ドル432 億ドル | 53.92 ドル104 億ドル | +577.4% | +25.3% | 19.45 ドル38 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 155.27 ドル299 億ドル | 37.33 ドル72 億ドル | +369.6% | +19.7% | 34.67 ドル67 億ドル |
| 中立 | 30% | 106.23 ドル205 億ドル | 25.41 ドル49 億ドル | +221.0% | +14.3% | 39.49 ドル76 億ドル |
| やや悲観 | 28% | 30.28 ドル58 億ドル | 13.48 ドル26 億ドル | +6.7% | +0.8% | 12.25 ドル24 億ドル |
| 悲観 | 17% | 6.22 ドル12 億ドル | 3.11 ドル6 億ドル | −77.2% | −15.6% | 1.59 ドル3 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 85.03 ドル164 億ドル | 22.42 ドル43 億ドル | +162.0% | +11.7% | 107.45 ドル207 億ドル |
今の株価時価総額 41.01 ドル79 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 利ざや型年金と団体保障が育つ 利益 34 億ドル · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 223.89 ドル432 億ドル
2035年には利ざや型年金が新規販売の主役になり、既存の変額年金の資金流出を補って保有口座の実質量が2025年より約37%増える。単位収入は約28%高まり、年金の利益も広がる。アテネやコアブリッジと競う中でも、契約を無理な利率で集めず、ベインとの運用提携で安全な資産を得る。
団体保障は就労不能の上位シェアを保ち、実質の保障量が約31%増える。更新保険料は賃金と医療費の上昇を反映し、利益率が改善する。生命保険は古い保証負債の再保険移転と請求管理が進み、新契約の収益性も上がる。退職年金では大手記録管理業者との価格競争が続くが、残高増と利ざやが勝つ。小さな事務受託はAIで数量が一割減るものの全社への影響は限定的だ。
GAAPの普通株利益は34億ドルとなり、10年累計は218億ドルになる。配当約50億ドル、買戻し約65億ドルから株式報酬等約11億ドルを引いた正味還元104億ドルを行い、普通株自己資本は約213億ドルとなる。大型買収はなく、資本コストを上回る引受先に集中する。
- 個人年金:数量 2,400(2025年価格換算の再保険控除後年金口座残高(億ドル))× 価格 0.04(運用・手数料を含む口座残高当たり年収入率(名目))→ 売上 88 億ドル・営業利益 25 億ドル。米国年金市場の実質成長とシェア維持、利ざや型比率上昇。
- 個人生命保険:数量 11,000(2025年時点の保有保障額(億ドル、保障単位))× 価格 0.01(保障額当たり保険料・手数料・運用収入の年率)→ 売上 91 億ドル・営業利益 7 億ドル。古い保証負債を軽くし、保障額横ばいでも料率構成改善。
- 団体保障の引受:数量 72.0(2025年価格換算の団体保険保有保険料相当額(億ドル、実質))× 価格 1.50(同一保障量の年保険料・運用収入の名目指数)→ 売上 108 億ドル・営業利益 16 億ドル。雇用の伸びと大口団体の更新で数量を取り、給付率を抑える。
- 団体保障の第三者事務受託:数量 90.0(外部事務契約に伴う年間処理件数の2025年指数(2025年=100))× 価格 0.03(処理件数指数1単位当たりの手数料(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。AI代替で処理量0.90倍、単価は1.31倍まで。
- 企業退職年金サービス:数量 1,950(2025年価格換算の企業年金管理残高(億ドル))× 価格 0.01(管理残高当たり管理料と投資収益の名目年率)→ 売上 28 億ドル・営業利益 5 億ドル。DC制度への拠出増で残高実質1.57倍、管理率は圧縮。
倍率:利益ベースの正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)。米国の資本コストk=8.75%、普通の堀なので超過ROEの残存率は1/2。2035年の普通株利益34.0億ドル÷普通株自己資本213.24億ドルでROE15.9%、RONIC12.35%。長期gは3.0%:市場数量の実質成長は年0〜1%、シェアは年金と生命保険で微減、価格は物価3.5%から新契約の競争と管理手数料圧縮を引く。数式上の上限は13.56倍、利益の質と保証契約の変動からその94%の12.70倍にした。現在・過去・同業の市場PERやPBRは倍率の根拠に用いない。GAAPの普通株帰属利益を使い株式報酬や無形資産償却は足し戻さない。
確率:変額年金から利ざや型への転換と団体保障の値決め改善が同時に10年続くには、信用損失の抑制と再保険の成功を要するため7%。
やや楽観 18% 資本の回復と穏やかな成長 利益 27 億ドル · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 155.27 ドル299 億ドル
年金販売の構成が改善して、2025年より保有契約の実質量が二割強増える。収入率も物価に近いところまで回復するが、変額年金の出金と競合の利回り競争は残る。生命保険では役員保障や介護保障付きの販売を重視し、保障額はほぼ横ばいでも古い契約より高い利益を確保する。
団体保障はハートフォードとメットライフに対して就労不能の存在感を維持する。保険料の更新で費用上昇を回収し、給付率を大きく悪化させずに成長する。退職年金は顧客の拠出と市場の実質拡大に沿って残高を伸ばすが、記録管理の手数料はフィデリティとの競争で薄まる。事務受託はAIにより処理量が22%減る。
規制資本が安定し、普通株配当は徐々に増える。旧契約の再保険と自社内バミューダ再保険の運営が無難に進み、大型の買収は行わない。10年間の普通株純利益190億ドルから、配当46億ドルと買戻し38億ドルを行い、株式報酬など12億ドルを除いた正味還元72億ドルとなる。
- 個人年金:数量 2,150(2025年価格換算の再保険控除後年金口座残高(億ドル))× 価格 0.04(運用・手数料を含む口座残高当たり年収入率(名目))→ 売上 76 億ドル・営業利益 21 億ドル。RILAと固定型販売が伸びて実質残高1.23倍。
- 個人生命保険:数量 10,500(2025年時点の保有保障額(億ドル、保障単位))× 価格 0.01(保障額当たり保険料・手数料・運用収入の年率)→ 売上 84 億ドル・営業利益 5 億ドル。新契約と準備金適正化で税前利益を増やす。
- 団体保障の引受:数量 69.0(2025年価格換算の団体保険保有保険料相当額(億ドル、実質))× 価格 1.47(同一保障量の年保険料・運用収入の名目指数)→ 売上 101 億ドル・営業利益 13 億ドル。就労不能のシェアを維持し、更新時の価格が物価並みに近づく。
- 団体保障の第三者事務受託:数量 78.0(外部事務契約に伴う年間処理件数の2025年指数(2025年=100))× 価格 0.03(処理件数指数1単位当たりの手数料(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替で処理量0.78倍、価格1.26倍。
- 企業退職年金サービス:数量 1,750(2025年価格換算の企業年金管理残高(億ドル))× 価格 0.01(管理残高当たり管理料と投資収益の名目年率)→ 売上 25 億ドル・営業利益 4 億ドル。競争に耐えながら実質残高約1.41倍。
倍率:利益ベースの正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)。米国の資本コストk=8.75%、普通の堀なので超過ROEの残存率は1/2。2035年の普通株利益26.5億ドル÷普通株自己資本217.24億ドルでROE12.2%、RONIC10.47%。長期gは3.0%:市場数量の実質成長は年0〜1%、シェアは年金と生命保険で微減、価格は物価3.5%から新契約の競争と管理手数料圧縮を引く。数式上の上限は12.78倍、利益の質と保証契約の変動からその88%の11.30倍にした。現在・過去・同業の市場PERやPBRは倍率の根拠に用いない。GAAPの普通株帰属利益を使い株式報酬や無形資産償却は足し戻さない。
確率:団体保障の保有契約が伸び、生命保険の古い契約負担が徐々に減る現実的な上振れとして18%。ただし業績の大半が順調な時期に依存する。
中立 30% 団体保障が下支えし旧契約も徐々に軽くなる 利益 21 億ドル · PER 9.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 106.23 ドル205 億ドル
2035年にも年金・生命保険・団体保障の需要は残る。年金の実質管理残高は約11%増えるが、販売ではアテネやグローバル・アトランティックに一部の顧客を奪われる。固定型と指数連動型の増加が変額年金の流出を補い、単位収入は物価上昇より小さい約20%の増加にとどまる。商品の条件を守るため利益率は2025年より低くなる。
生命保険は古い保障額が縮み、全体の保障額は約6%減る。単位収入の改善は新契約の質と運用資産の入れ替わりから生じる。団体保障では実質の保険料相当数量が約18%増え、値上げを通して給付費用を回収する。長期就労不能保険の市場シェアは概ね維持する。退職年金は実質残高が二割ほど伸びても、記録管理の単位報酬は圧縮される。第三者事務受託はAI代替のため、数量を0.65倍、単位価格を1.25倍とする。
GAAPの普通株利益は20.8億ドル、期間累計160億ドルとなる。普通株配当約42億ドルと買戻し約19億ドルから株式報酬等12億ドルを引いた正味還元49億ドルで、普通株自己資本は約210億ドルへ積み上がる。追加の大型買収を想定せず、再保険の効果は利益率の改善だけに反映する。
- 個人年金:数量 1,950(2025年価格換算の再保険控除後年金口座残高(億ドル))× 価格 0.03(運用・手数料を含む口座残高当たり年収入率(名目))→ 売上 67 億ドル・営業利益 17 億ドル。保有口座の実質量1.11倍、単位収入1.20倍。
- 個人生命保険:数量 10,000(2025年時点の保有保障額(億ドル、保障単位))× 価格 0.01(保障額当たり保険料・手数料・運用収入の年率)→ 売上 78 億ドル・営業利益 4 億ドル。保障額0.94倍、残存契約の質と投資収益は改善。
- 団体保障の引受:数量 65.0(2025年価格換算の団体保険保有保険料相当額(億ドル、実質))× 価格 1.43(同一保障量の年保険料・運用収入の名目指数)→ 売上 93 億ドル・営業利益 12 億ドル。実質保障量1.18倍、価格指数は1.34倍で物価並み。
- 団体保障の第三者事務受託:数量 65.0(外部事務契約に伴う年間処理件数の2025年指数(2025年=100))× 価格 0.03(処理件数指数1単位当たりの手数料(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替のBPO型。数量0.65倍、価格1.25倍、長期g0%。
- 企業退職年金サービス:数量 1,520(2025年価格換算の企業年金管理残高(億ドル))× 価格 0.01(管理残高当たり管理料と投資収益の名目年率)→ 売上 20 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質口座残高1.23倍、単位収入は1.22倍。
倍率:利益ベースの正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)。米国の資本コストk=8.75%、普通の堀なので超過ROEの残存率は1/2。2035年の普通株利益20.8億ドル÷普通株自己資本210.24億ドルでROE9.9%、RONIC9.32%。長期gは3.0%:市場数量の実質成長は年0〜1%、シェアは年金と生命保険で微減、価格は物価3.5%から新契約の競争と管理手数料圧縮を引く。数式上の上限は12.15倍、利益の質と保証契約の変動からその81%の9.85倍にした。現在・過去・同業の市場PERやPBRは倍率の根拠に用いない。GAAPの普通株帰属利益を使い株式報酬や無形資産償却は足し戻さない。
確率:団体保障は必要とされ続けるが、変額年金と生命保険の保証負担は簡単には消えない。市場成長と費用改善がほどほどに実現する筋書きとして30%。
やや悲観 28% 年金流出と生命保険の収益低迷 利益 8 億ドル · PER 7.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 30.28 ドル58 億ドル
変額年金の解約が続き、金利の高い商品を出すアテネや他社に新規販売を奪われる。年金の実質口座残高は2025年より小さくなり、単位収入もほぼ上がらない。生命保険では死亡率の悪化と保障契約の高齢化が重なり、保有保障額は約22%減る。介護保障付き契約の想定給付も上振れし、部門の利益は小さくなる。
団体保障は顧客基盤を維持するが、雇用環境の悪化と長期就労不能給付の増加で利益率が落ちる。2025年より加入者の実質量はほぼ横ばいで、単価は物価に追いつかない。退職年金ではフィデリティやエンパワーとの競争による大口解約が続き、資産残高が減る。第三者事務はAI代替でほぼ半減する。
2027〜2030年の準備金再評価と信用損失約30億ドルが、通常の保険利益の累計約100億ドルから差し引かれる。10年のGAAP普通株利益累計は70億ドルにとどまる。買戻しは再開せず、普通株配当29億ドルから希薄化相当3億ドルを引いた正味還元は26億ドル。普通株自己資本は約143億ドルあっても、資本コストに届かない事業の価値は帳簿より低い。
- 個人年金:数量 1,650(2025年価格換算の再保険控除後年金口座残高(億ドル))× 価格 0.03(運用・手数料を含む口座残高当たり年収入率(名目))→ 売上 47 億ドル・営業利益 9 億ドル。解約率高止まりで実質残高0.94倍。
- 個人生命保険:数量 8,300(2025年時点の保有保障額(億ドル、保障単位))× 価格 0.01(保障額当たり保険料・手数料・運用収入の年率)→ 売上 53 億ドル・営業利益 0 億ドル。既契約の長寿・死亡率前提悪化で利益率低下。
- 団体保障の引受:数量 54.0(2025年価格換算の団体保険保有保険料相当額(億ドル、実質))× 価格 1.26(同一保障量の年保険料・運用収入の名目指数)→ 売上 68 億ドル・営業利益 6 億ドル。保有契約量横ばい、給付率悪化で引受益減。
- 団体保障の第三者事務受託:数量 52.0(外部事務契約に伴う年間処理件数の2025年指数(2025年=100))× 価格 0.03(処理件数指数1単位当たりの手数料(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替で処理量0.52倍、価格1.14倍。
- 企業退職年金サービス:数量 1,200(2025年価格換算の企業年金管理残高(億ドル))× 価格 0.01(管理残高当たり管理料と投資収益の名目年率)→ 売上 13 億ドル・営業利益 1 億ドル。大口解約で実質残高0.97倍、管理単価低下。
倍率:この筋書きの普通株ROEは5.6%で資本コスト8.75%未満なので、正当化PERの上限は1/k=11.43倍。保障負債の誤算・解約・信用損失により将来の超過収益を生まないため、2035年のGAAP利益8.0億ドルに対して7.3倍だけを認める。変額保証の旧契約が満期・解約で縮むため、永続的な利益を暗黙に認める1/kより大幅に低い倍率を使う。同業の谷のPERや帳簿純資産の倍率から逆算しない。余剰現金は契約者の資産と区別できずゼロ加算。
確率:生命保険の古い保障契約と変額年金の資金流出は数年間残るため28%。団体保障が支えるので直ちに破綻には至らないが、株主利回りは弱くなる。
悲観 17% 保証契約と信用損失で構造的に負ける 利益 2 億ドル · PER 6.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.22 ドル12 億ドル
契約者が高い金利を求めて変額年金から離れ、既契約を守るヘッジ費用と解約費用が重なる。年金の実質口座残高は2025年から約29%減り、単位収入も約16%下がる。生命保険の保障額は大幅に減るのに古い最低保証の債務は残り、部門は赤字に転落する。アテネなどの運用会社系に販売網を奪われ、商品の新規販売を高利回りの約束で取り返すこともできない。
団体保障でも雇用主が更新を減らし、ハートフォードやメットライフとの価格競争で保有保険料の実質量が27%減る。給付率が高止まりして利益率は5%未満となる。退職年金は大手記録管理会社にシェアを奪われ、第三者事務はAIエージェントに置き換わって契約処理件数が0.38倍に縮む。自社のバミューダ再保険は社内移転にとどまり、外部の信用損失を消せない。
2027〜2029年に信用損失と古い保証・再保険債権の再評価で約76億ドルの一時損失が生じ、それ以外の年の利益合計約23億ドルを相殺する。10年間の純利益累計はマイナス53億ドル、正味還元は配当7億ドルから希薄化1億ドルを引いた6億ドルにすぎない。普通株自己資本は約40億ドルに減り、2035年の純利益は2億ドルだけ残る。監督当局の管理下で配当・買戻しは止まり、大型買収による救済は想定しない。
- 個人年金:数量 1,250(2025年価格換算の再保険控除後年金口座残高(億ドル))× 価格 0.02(運用・手数料を含む口座残高当たり年収入率(名目))→ 売上 30 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質残高0.71倍、利ざや・手数料率が縮小。
- 個人生命保険:数量 6,000(2025年時点の保有保障額(億ドル、保障単位))× 価格 0.00(保障額当たり保険料・手数料・運用収入の年率)→ 売上 29 億ドル・営業利益 −3 億ドル。保証負債の損失が長期化し税前部門赤字。
- 団体保障の引受:数量 40.0(2025年価格換算の団体保険保有保険料相当額(億ドル、実質))× 価格 1.13(同一保障量の年保険料・運用収入の名目指数)→ 売上 45 億ドル・営業利益 2 億ドル。シェアと雇用の減少、給付率悪化で細る。
- 団体保障の第三者事務受託:数量 38.0(外部事務契約に伴う年間処理件数の2025年指数(2025年=100))× 価格 0.03(処理件数指数1単位当たりの手数料(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替で量0.38倍、価格1.06倍、事業は赤字化。
- 企業退職年金サービス:数量 900(2025年価格換算の企業年金管理残高(億ドル))× 価格 0.01(管理残高当たり管理料と投資収益の名目年率)→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質口座残高0.73倍、運用利ざやも縮む。
倍率:この筋書きの普通株ROEは5.0%で資本コスト8.75%未満なので、正当化PERの上限は1/k=11.43倍。保障負債の誤算・解約・信用損失により将来の超過収益を生まないため、2035年のGAAP利益2.0億ドルに対して6.0倍だけを認める。変額保証の旧契約が満期・解約で縮むため、永続的な利益を暗黙に認める1/kより大幅に低い倍率を使う。同業の谷のPERや帳簿純資産の倍率から逆算しない。余剰現金は契約者の資産と区別できずゼロ加算。
確率:長期の保証契約で準備金不足、私募信用資産で損失、再保険先への不信が重なる確率を17%とする。2022年以降の資本の揺れから無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
個人年金
変額・固定・登録指数連動型年金。口座残高への管理・保証手数料と一般勘定の運用収益から契約者付利・ヘッジ費用を差し引く。
| 数量2025年価格換算の再保険控除後年金口座残高(億ドル) | 価格運用・手数料を含む口座残高当たり年収入率(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,754 | 0.03 | 50 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,950 | 0.03 | 67 | 17 |
取り方:2025年10-Kの別勘定1229.45億ドルと一般勘定524.43億ドルの合計1753.88億ドルを数量。営業収入49.90億ドル÷残高=2.845%で価格を作る。営業収入は手数料24.06、運用19.66、その他・一時払保険料6.18億ドルで構成される。2025年の新規預入は約171.8億ドル。LIMRAの米国個人年金販売4613億ドルに対する概算シェアは3.7%だが、預入と販売の定義差がある。将来の数量はインフレ分を除いた保有契約実質価値、価格は単位収益に織り込む。
個人生命保険
ユニバーサル・変額・介護保障付き・定期・役員保障。保有保障額と保険料・口座手数料に運用収益を合わせ、死亡率と準備金が利益を決める。
| 数量2025年時点の保有保障額(億ドル、保障単位) | 価格保障額当たり保険料・手数料・運用収入の年率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10,646 | 0.01 | 64 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10,000 | 0.01 | 78 | 4 |
取り方:10-Kの2025年末保有保障額1,064,592百万ドル=10645.92億ドルを数量とし、部門収入64.42億ドルを割った約0.605%を単位収入率とする。保険料10.72、手数料27.65、投資収益24.46億ドルほかを含む。2025年の新契約販売指標6.57億ドルには役員保障が含まれ、LIMRAの米国の新規年換算175億ドルとの比較から販売シェアは約2〜4%の概算で、既契約保障額の市場占有率ではない。長期保険の既契約料率は物価どおりには上げられない。
団体保障の引受
雇用主経由の団体生命・就労不能・歯科。保険料と給付の差、運用収益が利益。第三者の事務受託と分離する。
| 数量2025年価格換算の団体保険保有保険料相当額(億ドル、実質) | 価格同一保障量の年保険料・運用収入の名目指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 54.9 | 1.07 | 59 | 6 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 1.43 | 93 | 12 |
取り方:10-Kの2025年団体保険料54.90億ドル(生命21.58、就労不能31.42、歯科1.90)を2025年価格の保障量として固定し、保険料と運用収入合計58.66億ドルを除算して価格指数1.0685とした。Millimanの2025年団体就労不能市場参加社保有保険料244億ドル、リンカーンのLTD・STD・PFML約32.7億ドルから、同領域シェア約13%。保険料は金額表示だが数量の将来値は物価を除いた等価加入者と考える。税引前部門利益6.73億ドルから事務受託の推定0.35億ドルを控除する。
団体保障の第三者事務受託
他社・事業主への保険請求・加入管理の事務。人による処理をAIエージェントが代替し得る非保険リスクの小さな部分。
| 数量外部事務契約に伴う年間処理件数の2025年指数(2025年=100) | 価格処理件数指数1単位当たりの手数料(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 0.03 | 2 | 0 |
取り方:10-KのGroup Protection部門「Other revenues」2.36億ドルは第三者への管理事務対価と明記される。処理件数の実数は非開示なので2025年契約業務量を100とした指数を数量に用い、単位手数料は2.36/100。税引前利益0.35億ドルは売上に15%の事務寄与率を仮定し、団体本体の利益から控除した推計であり会社開示ではない。AIエージェント代替の人月・BPO型に分類し、中立数量0.65倍、価格1.25倍、2035年以降の成長0%とする。業界共同基盤、解約率5%未満、値上げの定着など「記録の正本」の証拠が二つ開示されていないため上位の型へ移さない。
企業退職年金サービス
401(k)、403(b)などの記録管理と固定口座の運用・付利。口座残高に対する利息、手数料と契約者の付利差を稼ぐ。
| 数量2025年価格換算の企業年金管理残高(億ドル) | 価格管理残高当たり管理料と投資収益の名目年率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,240 | 0.01 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,520 | 0.01 | 20 | 3 |
取り方:2025年10-Kの別勘定231.36億ドル、一般勘定238.43億ドル、投信口座770.61億ドルの合計1240.40億ドル。収入13.53億ドル(運用10.22、管理料3.01ほか)を残高で割って1.091%。米国の2025年末DC資産14.2兆ドル(ICI)に対する残高シェア約0.87%だが、DC以外もわずかに含む。フィデリティ・バンガード・エンパワーより小さく、記録管理費はAIと競争で圧縮。年金残高に基づく金融サービスであり、席課金SaaSとは異なる。
リスクと懸念
変額年金保証と長寿・解約の前提違い
変額年金の最低保証は株価、金利、解約率が同時に悪化すると損失が膨らむ。2026年4〜6月期にはこの保証の時価評価によってGAAP利益が調整後利益から約9億ドル上振れしたが、逆方向にも動く。年金口座の流出率が高いままだと新商品の利ざや増加が古い保証の費用に食われる。
保険資本と隠れた先順位請求権
2025年末の自己資本比率は2.8%と薄く、保険契約者に対する負債の規模が極めて大きい。約41億ドルのその他包括損失に加え、優先株約9.9億ドルは普通株より先に取り分を持つ。持株会社の流動性が改善しても、監督当局の規制資本と子会社の配当能力が低下すれば普通株への還元は止まる。
信用損失とベインの資産運用提携
高い利回りを得ようとして私募の信用資産、不動産担保ローン、証券化商品に偏ると、景気後退時に運用利益と自己資本を同時に失う。ベインとの提携は投資先の調達力を増やすが、信用審査が競争の激しい市況に追いつかなければ不利になる。再保険やバミューダ子会社へ移した資産も、信用リスクを無条件には消さない。
団体就労不能保障の給付率
団体保障の2025年保険料は約55億ドルあり、就労不能の保険料が半分超を占める。会社によると給付率が1ポイント悪化すると年間の税引後利益が約0.4億ドル減る。景気後退で長期障害の給付期間が伸び、更新時の値上げを顧客が拒めば、収益を支える事業の利益率が簡単に縮む。
AIエージェント代替と年金管理手数料
第三者向けの団体保険管理事務約2.36億ドルは、定型的な請求・加入処理という人手の仕事が含まれるためAIエージェント代替のBPO型に当たる。中立で処理量を10年で35%減らし、単位料金を物価以下にした。企業年金の記録管理は資産残高に基づく金融契約で席課金SaaSではないが、画面操作や事務が自動化されれば管理料は圧迫される。
普通株の希薄化と資本配分の再失敗
2025年にはベイン・キャピタルへ約1880万株を発行し8.25億ドルを調達した。普通株の持ち分が希薄化しても保険資本を厚くした合理性はあるが、同じことを低迷局面で繰り返せば既存株主の取り分は失われる。優先株の借り換えは普通株還元とは違い、借入金利と優先株配当の差まで見なければ価値は増えない。
競争と長期契約の非対称性
アテネやグローバル・アトランティックは利回りを武器に新規年金契約を奪い得る。フィデリティやエンパワーは企業年金の管理コストで優位に立つ。一方でリンカーンは古い生命保険の死亡率や利率の約束を直ちに改められない。新契約を失っても過去の保証は残るため、数量の縮みが利益に非対称に響く。
今後の分かれ目
- 年金の新規販売で利ざや型商品の比率が2年連続65%以上、再保険控除後残高も実質で増える
- 年金の数量成長と収益の質が改善したと判断する。やや楽観の確率を増やし、変額保証の評価損の持続性を確認してからGAAP利益を上方修正する。
- 生命保険の営業利益が4四半期続けて黒字拡大し、保障残高の減少を上回る
- 旧契約の準備金負担が構造的に軽くなったと見て、生命保険の税前利益率と中立の最終利益を引き上げる。再保険に伴う将来の費用も同時に点検する。
- 団体保障の就労不能給付率が通年で2ポイント以上悪化する
- 会社公表の感応度から税引後利益が約0.8〜0.9億ドル減る恐れがある。更新値上げが通らなければ、団体の利益率と中立の数量を引き下げる。
- 子会社の規制資本比率が400%を割り、持株会社の自由流動性も減少する
- 普通株買戻しの再開をゼロとして見直し、配当の制約と再増資の可能性を悲観確率へ反映する。保険一般勘定の現金を穴埋め財源と扱わない。
- 年金口座の解約流出率が連続2年で13%超となり、利ざやが縮む
- 2025年の流出率12%からの悪化は新契約増を相殺し得る。アテネや他社へのシェア流出を数量に反映し、やや悲観の重みを増やす。
- AIによる団体の第三者事務委託収入が前年比15%以上減り、利益が赤字になる
- BPO型の処理量の縮小が前倒しになったとみる。直接の売上影響は小さいが、企業年金の管理料へ波及するかを確認し、該当部分の長期成長をゼロ以下に保つ。
- 私募信用資産または再保険回収債権に損失が生じ、普通株自己資本が2割超減る
- 一時的な時価変動でなく損失の回収可能性と法定資本への波及を確認する。悲観時の利益累計と売却可能資産の床を下方修正し、増資の負担を正味還元から引く。
見ておくもの
- 変額年金と指数連動・固定年金の新規販売比率、再保険控除後残高、解約・死亡等による流出率
- 生命保険の保障額と営業利益、介護保障の準備金前提、年間仮定見直し額
- 団体保障の就労不能給付率・更新料率・長期就労不能の保険料市場順位
- 企業退職年金の純流入・管理残高、フィデリティ等との手数料差と契約解約
- 第三者管理事務の受注件数・手数料、AIエージェント代替による単価下落
- 債券AOCI・信用損失・再保険回収債権・バミューダ子会社の規制変更
- 保険子会社RBC比率420%超の継続、持株会社の配当可能流動性、優先株の借り換え
- 普通株への純還元(配当+買戻し-株式報酬・増資)とGAAP普通株利益の差
倍率と資本コストの決め方
2035年の価値は現在の株価や過去の安値のPBRから逆算していない。まず2025年10-Kの年金口座、生命保障額、団体保険料、企業年金管理残高と外部事務収入を実質数量として分け、契約当たり名目収入と引受利益率を将来へ伸ばした。4部門の2025年営業収入合計188.87億ドルは、その他事業と評価・連結調整を通じてfactsの全社売上187.9億ドルにほぼつながる。2026年4〜6月期の大きなGAAP利益は変額保証の評価益が中心であり、一時的な利益を年率換算しない。
自己資本は総額109.1億ドルから優先株9.86億ドルを除く普通株帰属資本を始点とし、10年間のGAAP普通株利益累計と正味の還元で繰り越した。中立のROEは普通株利益20.8億ドル÷普通株資本約210億ドルで約9.9%。k8.75%、長期g3.0%、普通の堀の残存率1/2から導く正当化PERは約12.2倍であり、変額年金の保証と利益の質を考え約8割に抑えた。悲観は保険資産を契約者債務で相殺した後の床と、ROEがkに届かない稼ぐ力の上限の両方で検査した。現金95億ドルを余剰現金として加算していない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国基本8.0%にquality+0.75%を加え8.75%。LNCはメットライフ8.25%やプルデンシャル・ファイナンシャル8.5%より、変額保証の損益変動と新規年金の価格競争が強い。生き残りの危機を機械的な上乗せにはせず、悲観の厚さで扱う。