結論
ブロックは、個人向けの金融アプリ Cash App(送金・デビットカード・短期の貸出・後払い・預金)と、小規模事業者向けの決済端末と経営ソフト Square を運営する。収益の基準は粗利益(売上のうちビットコインの転売など素通しの分を除く)で、2025 年は 103 億ドル(+17%)、うち Cash App 約 63 億ドル、Square 約 39 億ドル。ただし GAAP の営業利益は 17 億ドル、純利益は 13 億ドルと薄く、株式報酬が年 10 億ドル超の費用として重い。2026 年は Cash App の貸出が急拡大し、4〜6 月期の粗利益は 31.7 億ドル(+25%)、通期見通しは 125.1 億ドル(+21%)に引き上げられた。2 月には約 4,000 人(半分近く)を AI への転換を理由に削減している。
バリュー投資の観点では、伸びは本物でも、収益の質には注意が要る。Cash App の成長は短期の小口貸出が主役で、不況に弱い。Square は決済の成熟市場で競合(Clover・トースト・ストライプ)と値引きを争う。資本コストは基本 8.0% + quality 0.75% の 8.75%。倍率は利益ベースの式(資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)で、のれんを含む帳簿の ROE が 13% と低く、10 年後は正当化 PER 約 13.4 倍の 8.6 割の約 11.5 倍。中立の筋書きは 10 年後に純利益 39 億ドル、時価総額は今の 466 億ドル(台帳。検索では約 442 億ドル)に対して 453 億ドルと、中立でも今の値段にほとんど届かない。楽観側の上振れ(10 年で時価総額 1,240 億ドル台)と悲観側の下振れ(約 51 億ドル)を確率で重ねると総合は約 −30% で、やや割高に出る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず「10 年後も事業は存在し、今より強いか」を問う。Cash App と Square はどちらも 10 年後も存在する可能性が高い。ただし Cash App は個人向けの金融アプリで、チャイム・アップル・銀行と競う。堀は友人どうしのネットワークと信用の履歴だが、銀行の口座や給与の入金を握るほど深くはない。確信度は中程度。
次にオーナー利益。2025 年の GAAP 純利益は 13 億ドル、株式報酬を費用に入れたまま。貸出の拡大に資本(貸出残高 37 億ドル)が要るので、利益の全部が株主に戻るわけではない。会社の言う「調整後」の利益は株式報酬を足し戻すので、バリュー投資ではそのまま使わない。
経営の資本配分は、過去の Afterpay の買収と 2022 年の株価の崩れが重く、いまの自社株買い(枠 61 億ドル)は株式報酬で薄まる分を引くと実力ほど株主に届かない。
値段は、時価総額 466 億ドル(台帳)、GAAP の PER 約 35 倍。中立の筋書き(2035 年の純利益 39 億ドル・利益ベースの PER 11.5 倍)なら、10 年で時価総額は今とほぼ同じで、資本コスト 8.75% には遠く届かない。楽観から悲観までの幅が広く(10 年で約 51 億〜1,240 億ドル台)、確率で重ねると今の値段を 3 割弱下回る。安全域は無く、強い成長を認めても、今の値段は利益ベースでは高いと見る。
何で稼ぐ会社か
収益は 2 つの事業からなる。Cash App は、米国を中心に月間 5,900 万人(2026 年 6 月)が使う個人向けアプリで、送金(無料)、デビットカード(交換手数料)、即時入金(手数料)、短期の貸出(Cash App Borrow:数週間・数十〜数百ドルの小口、手数料を取る)、後払い(Afterpay)、給与の入金、株式・ビットコインの売買を束ねる。粗利益は 2025 年に約 63 億ドル(+21%)、2026 年 4〜6 月期は 19.7 億ドル(+31%)。伸びの主因は貸出で、4〜6 月期の組成額は 189 億ドル(+59%)。利用者数は +3% と鈍く、1 人あたりの収益化で伸ばす形である。
Square は、飲食・小売・サービスの小規模事業者向けに、決済端末、売上・在庫・給与の経営ソフト、融資(Square Loans)、銀行サービスを提供する。粗利益は 2025 年に約 39 億ドル(+9%)、2026 年 4〜6 月期は 11.6 億ドル(+13%、うち 2 ポイントは関税の一回限りの還付)、取扱高(GPV)は 728 億ドル(+13%)。粗利益を取扱高で割った粗利率は 1.5% 前後。大型加盟店向けの決済処理(低利益率)と、自社で売る端末・ソフトの高い粗利益が混ざる。
補助事業はビットコインの売買(粗利益は 4〜6 月期に 0.72 億ドルで −31%、手数料の引き下げが原因)、ビットコイン採掘機の Proto、自己管理の財布 Bitkey、音楽の TIDAL。貸出は一部を銀行子会社(ユタ州の産業貸付会社 Square Financial Services)の預金で賄う。売上高(純収入)は 4〜6 月期に 66 億ドルだが、半分近くをビットコインの転売が占めるので、利益や粗利益で見る方がよい。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 は Cash App の利用者の基盤:月 5,900 万人が送金・カード・給与の入金で使い、友人どうしのネットワーク効果が働く。若い世代と、銀行を使わない(あるいは銀行に不満のある)層に強く、貸出は取引の履歴から信用を判断できる点が低い損失率の理由だと会社は言う。第 2 は Square の加盟店基盤と、決済・端末・ソフト・融資を 1 つの契約で売る束ね売り。第 3 は創業者ジャック・ドーシー氏が築いた技術と、AI 時代に費用を半分近く落とせる組織の柔軟さである。
資本効率は、足元ではまだ薄い。GAAP の ROE は 5.9% で、自己資本 222 億ドルのうち 132 億ドルはのれんと無形資産(買収した Afterpay などの分)。有形の自己資本は約 90 億ドルで、2028 年の純利益が 22 億ドルなら、有形の ROE は 2 割ほど。株式報酬は 2026 年上半期だけで 6 億ドルと、純利益に対して重い。
弱みは 4 つ。貸出が景気に弱い小口で、損失が出ると粗利益から引当金が出る。収益の柱が Cash App の貸出に偏り、しかも利用者数の伸びが +3% と鈍い。Square は競合が多く、粗利率が上がりにくい。そして過去の買収の失敗(大型の Afterpay の後に株価が山から −78% 下げた)から、経営の資本配分の実績は混ざっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
領域は決済・フィンテック。業界ノートでは、取扱高は物価 3.5% + 現金からの移行で年 +7〜8%、フィンテックの粗利率は年 −1% 下がると置く。ブロックはこの平均より速く伸びているが、それは貸出という別の収益源が加わったため。
Cash App の競合は 4 つ。チャイム(Chime)は同じ世代の「手数料の安い銀行口座」で、給与の入金を取り合う。ペイパルのベンモ(Venmo)は送金の相手が多い。アップルは iPhone に組み込んだ Apple Cash とカード。そして銀行が共同で運営する即時送金ゼル(Zelle)。貸出では、アファーム(Affirm)・クラーナなどの後払いと、大手のカード会社が重なる。Square の競合は、トースト(Toast:飲食店)、ストライプ(Stripe)、ペイパル、ショッピファイ(Shopify)、ファイサーブの Clover。Clover は銀行経由で売り、端末の補助と決済料の値引きで押してくる。
循環でみると、2026 年は貸出が急拡大し、会社自身が後半の正常化を予告している段階。景気後退では貸出の損失が先に出る。規制は、産業貸付会社の資本・Cash App の証券口座・後払いの規制が 10-Q のリスクに挙がる。業界全体の見通しは、年 +7〜8% 成長・実効率 −0.5%/年のネットワークとは違い、ブロックの収益化は貸出の損失率という変数に左右される。
資本政策と M&A
還元は主に自社株買い。2025 年 11 月に枠を 50 億ドル積み増し(残りは約 61 億ドル)、2026 年上半期に 7.0 億ドル(約 1,160 万株)を買った。配当は無い。ただし株式報酬が上半期で 6.0 億ドルあり、増える株を打ち消す分を引いた正味の還元は、買い戻し額より小さい。
財務は、現金 64 億ドル、有価証券 5 億ドルに対して、長期債 57 億ドル、貸出用の借入枠 12 億ドル(純負債は 8 億ドルでほぼゼロ)。2026 年上半期に社債 10 億ドルと転換社債 5.75 億ドルを返した。ビットコインの保有は簿価 5.3 億ドルで、評価損益が GAAP 利益を動かす(上半期に 2.6 億ドルの評価損)。借金は借り換えで約 5.75% になるが、純利益への影響はほぼゼロ。
M&A は、2022 年の Afterpay(のれん 120 億ドルの主因)が最大。以後は小型にとどまる。今は買収より、AI による費用削減と貸出の拡大に資本を回している。まだ成立していない買収は無く、買われる側になる可能性も、時価総額 440 億ドル・創業者の議決権(B 株)のもとでは小さい。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 7.0 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ブロックは 2026 年に別の会社になった。約 4,000 人を削減し、粗利益は +21〜25% で伸び、調整後の営業利益は 35 億ドル(2025 年の 1.6 倍)。Cash App の 1 人あたりの粗利益は貸出と預金で毎年増え、Cash App Borrow の貸出残高が 37 億ドルと小さい今は、伸びしろが大きい。利用者の信用の履歴を持つ強みは、アファームやチャイムが持たない。Square は取扱高が +13% で、Clover より速く伸びている。AI で費用が半分近く減ったのだから、粗利益が年 15% 伸びれば、営業利益は粗利益より速く増える。ビザやマスターカードと違い、貸出の損失を含めても 1 人あたりの収益が上がり続ける事業で、使われるほど信用の履歴が溜まる。人員の半分近くを落としても 4〜6 月期に +25% で伸びたことは、費用削減が事業を壊さなかった証拠である。株式報酬も人員削減で減る。10 年後、粗利益 366 億ドル・営業利益 112 億ドルなら、PER 15 倍でも時価総額は 1,250 億ドル台(今の約 2.7 倍)に届く。
慎重な見方
今の PER は GAAP で約 35 倍と高く、2025 年の営業利益 17 億ドルは粗利益の 16% にすぎない。2026 年上半期の GAAP は純損失 2.2 億ドルで、調整後の黒字は株式報酬 6 億ドルと人員削減費を足し戻した数字。伸びの主役は短期の小口貸出で、Cash App の利用者は +3% しか増えていない。貸出の組成が +59% というのは、信用の弱い層への貸出を積み上げているということで、会社自身が後半の正常化を言っている。損失は不況で一度に出る。Square の +13% には関税の一回限りの還付が 2 ポイント含まれ、ビットコインの粗利益は −31%。
さらに、Cash App の競合は増えている。チャイムとアップル、大手銀行の即時決済は、ブロックの利用者の取引口座の座を奪う可能性がある。Square の Clover とトーストは、端末の補助と決済の値引きで押してくる。2022 年に株価が山から −78% 下げた過去は、事業の収益が景気と相場に敏感なことを示す。のれんが 120 億ドルあり、貸出と買収で失敗すれば減損が出る。10 年後に成長が 4% に落ちれば、PER は 12 倍で時価総額は今の約半分にとどまる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、費用の削減と貸出の成長という足元の事実に支えられている。ただし慎重な見方の指摘(株式報酬を引いた GAAP 利益の薄さ、貸出の損失の景気への弱さ、競合の多さ)も具体的で、利益ベースの式で倍率を出すと PER 11〜15 倍にとどまる。確率は楽観・やや楽観を 32%、悲観・やや悲観を 36% として、慎重な見方にやや寄せた。10 年の悲観は 13%。結論は「成長は本物だが、利益ベースの倍率では値段が高く、やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 79.49 ドル475 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 29.82 ドル178 億ドル)。 今の値に割り戻すと 53.96 ドル323 億ドル、今との差 −31.7%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 207.08 ドル1,238 億ドル | 55.70 ドル333 億ドル | +232.6% | +12.8% | 26.28 ドル157 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 116.47 ドル696 億ドル | 43.99 ドル263 億ドル | +103.1% | +7.3% | 35.30 ドル211 億ドル |
| 中立 | 32% | 75.72 ドル453 億ドル | 33.12 ドル198 億ドル | +37.7% | +3.3% | 34.83 ドル208 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 33.94 ドル203 億ドル | 15.56 ドル93 億ドル | −37.4% | −4.6% | 11.38 ドル68 億ドル |
| 悲観 | 13% | 8.60 ドル51 億ドル | 3.01 ドル18 億ドル | −85.3% | −17.5% | 1.51 ドル9 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 79.49 ドル475 億ドル | 29.82 ドル178 億ドル | +38.3% | +3.3% | 109.30 ドル653 億ドル |
今の株価時価総額 79.02 ドル472 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:Cash App が主取引の銀行になり、Square も加盟店の基盤を広げる 利益 82 億ドル · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 207.08 ドル1,238 億ドル
10 年後(FY2035)、Cash App の利用者は 8,300 万人(米国の若い世代と給与の入金をまとめて持つ層)、1 人あたり粗利益は 330 ドル(FY2025 の 3 倍。物価が 1.41 倍、残りは貸出・預金・カードの上乗せ)で粗利益は 274 億ドル。チャイム(Chime)やペイパルのベンモ(Venmo)、アップルに勝ち、米国の消費者向け金融アプリの主役に近づく。Square は取扱高が年 +8.5% の 5,930 億ドル、粗利率 1.55%、粗利益は 92 億ドル。全体で 366 億ドル(FY2025 の 3.5 倍)、営業利益は 112 億ドル、純利益は 81 億ドル。成長は年 9% に落ち着き、長期の g は決まりの 4% で、PER は約 15 倍。
- Cash App(個人向け金融アプリ):数量 8,300(月間取引利用者(万人))× 価格 330(1 人あたり年間粗利益(ドル))→ 売上 274 億ドル・営業利益 90 億ドル。利用者数 × 1 人あたり粗利益
- Square(加盟店決済・経営ソフト・融資):数量 5,930(取扱高 GPV(億ドル))× 価格 0.02(粗利率(粗利益 ÷ 取扱高))→ 売上 92 億ドル・営業利益 26 億ドル。取扱高 × 粗利率
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 24.5%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 332 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 16.6%、g 4.0%(Cash App の利用者 +2%・1 人あたり粗利益は物価+貸出の上乗せ、Square は取扱高 +7%・粗利率 −2%。長期の名目は 4% 前後)。式の値は 16.0 倍で、これが検査の上限になる。Cash App の成長は短期の小口貸出が主役で不況に弱く、Square は競合と値引きを争う。のれんも厚く、上限の中でも低めに置く。 上限の 9 割の 15.2 倍に置いた。
確率:Cash App が米国の若い世代の主取引口座になる筋書き。競合の多い市場なので 10% に置いた。
やや楽観 22% やや楽観:Cash App の貸出と預金が育ち、Square は市場並みを少し上回る 利益 53 億ドル · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 116.47 ドル696 億ドル
Cash App は 7,600 万人、1 人あたり粗利益 255 ドルで粗利益 194 億ドル。貸出と預金は育つが、競合(チャイム・ベンモ・アップル・銀行のゼル)が取り分を削り、伸びは物価の 2 倍ほどにとどまる。Square は取扱高が年 +7.3% の 5,300 億ドル(市場の名目 +6% に小さなシェア増)、粗利率 1.52%、粗利益 81 億ドル。ストライプ(Stripe)やトースト(Toast)に大型・飲食の加盟店を取られる分を、小規模事業者の融資と銀行サービスの束ね売りが埋める。全体は 274 億ドル(FY2025 の 2.7 倍)、営業利益は 74 億ドル(粗利益比 27%)、純利益は 53 億ドル。成長が年 7.5% に落ち着き、PER は約 13 倍。
- Cash App(個人向け金融アプリ):数量 7,600(月間取引利用者(万人))× 価格 255(1 人あたり年間粗利益(ドル))→ 売上 194 億ドル・営業利益 58 億ドル。利用者数 × 1 人あたり粗利益
- Square(加盟店決済・経営ソフト・融資):数量 5,300(取扱高 GPV(億ドル))× 価格 0.02(粗利率(粗利益 ÷ 取扱高))→ 売上 81 億ドル・営業利益 20 億ドル。取扱高 × 粗利率
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 16.9%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 316 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 12.8%、g 4.0%(Cash App の利用者 +2%・1 人あたり粗利益は物価+貸出の上乗せ、Square は取扱高 +7%・粗利率 −2%。長期の名目は 4% 前後)。式の値は 14.5 倍で、これが検査の上限になる。Cash App の成長は短期の小口貸出が主役で不況に弱く、Square は競合と値引きを争う。のれんも厚く、上限の中でも低めに置く。 上限の 9 割の 13.0 倍に置いた。
確率:貸出と預金は育つが競争で取り分が削られる、最も起きやすい筋書きの 1 つ。
中立 32% 中立:Cash App は若い世代の主要な金融アプリのまま、収益化は物価並みプラスアルファ 利益 39 億ドル · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 75.72 ドル453 億ドル
Cash App は 7,200 万人(年 +2.2%)、1 人あたり粗利益は 220 ドル(FY2025 の 2.0 倍。物価 1.41 倍+貸出・預金の上乗せ 1.4 倍)で、粗利益は 158 億ドル。Square は取扱高が年 +7.0% の 5,100 億ドル、粗利率は 1.46%(Clover・トースト・ストライプとの競争で 2% ほど下がる)で粗利益は 74 億ドル。全体は 233 億ドル(FY2025 の 2.3 倍)、営業利益は 55 億ドル(粗利益比 24%)、純利益は 39 億ドル。成長は年 6.5% からその先は 4% に落ち、帳簿の ROE 13% の式で PER は約 11.5 倍。
- Cash App(個人向け金融アプリ):数量 7,200(月間取引利用者(万人))× 価格 220(1 人あたり年間粗利益(ドル))→ 売上 158 億ドル・営業利益 43 億ドル。利用者数 × 1 人あたり粗利益
- Square(加盟店決済・経営ソフト・融資):数量 5,100(取扱高 GPV(億ドル))× 価格 0.01(粗利率(粗利益 ÷ 取扱高))→ 売上 75 億ドル・営業利益 16 億ドル。取扱高 × 粗利率
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 13.1%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 300 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 10.9%、g 4.0%(Cash App の利用者 +2%・1 人あたり粗利益は物価+貸出の上乗せ、Square は取扱高 +7%・粗利率 −2%。長期の名目は 4% 前後)。式の値は 13.4 倍で、これが検査の上限になる。Cash App の成長は短期の小口貸出が主役で不況に弱く、Square は競合と値引きを争う。のれんも厚く、上限の中でも低めに置く。 上限の 9 割の 11.5 倍に置いた。
確率:議論の落としどころ。業界ノートの中立(フィンテックは取扱高 +8%・粗利率 −1%/年)に、Cash App の貸出という成長の足を加えた形。
やや悲観 23% やや悲観:競合に実効の値下げと損失で押され、成長が 1 桁前半に落ちる 利益 21 億ドル · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 33.94 ドル203 億ドル
貸出の損失率が上がり、競合への値引きが続く。Cash App は 6,500 万人にとどまり、1 人あたり粗利益は 168 ドルで 109 億ドル。Square は取扱高が年 +5.6% の 4,500 億ドル、粗利率は 1.35% に下がり粗利益は 61 億ドル。全体は 170 億ドル(FY2025 の 1.6 倍で、物価の 1.41 倍を少し上回る程度)、営業利益は 30 億ドル(粗利益比 18%)、純利益は 21 億ドル。貸出の損失を引くと、利益率は 2025 年から上がらない。成長は年 4% に落ち、ROE が資本コストを下回るので、PER は 1÷k の約 11 倍の 8.5 割、約 9.7 倍。ブロックは優良な成長株でなく、景気に敏感な中堅の金融会社として値付けされる。
- Cash App(個人向け金融アプリ):数量 6,500(月間取引利用者(万人))× 価格 168(1 人あたり年間粗利益(ドル))→ 売上 109 億ドル・営業利益 24 億ドル。利用者数 × 1 人あたり粗利益
- Square(加盟店決済・経営ソフト・融資):数量 4,500(取扱高 GPV(億ドル))× 価格 0.01(粗利率(粗利益 ÷ 取扱高))→ 売上 61 億ドル・営業利益 10 億ドル。取扱高 × 粗利率
倍率:事業の ROE 7.5%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 279 億ドル)が k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)以下なので、PER は 1÷k = 11.4 倍まで(ためた利益は額面未満の価値。SCHEMA §1-1)。Cash App の成長は短期の小口貸出が主役で不況に弱く、Square は競合と値引きを争う。のれんも厚く、上限の中でも低めに置く。 上限の 8 割の 9.7 倍に置いた。
確率:貸出の損失の増加と競合への値引きが続く展開。10 年で起きても不思議はないので 23% と厚めにした(SBC が重い、貸出が景気に弱い、収益の柱が 2 つに偏る)。
悲観 13% 悲観:Cash App も Square も選ばれなくなり、貸出の損失で優良事業でなくなる 利益 5 億ドル · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 8.60 ドル51 億ドル
Cash App は主な取引口座の座を、アップル・チャイム・大手銀行の即時決済(ゼルやステーブルコイン経由)に奪われ、利用者は 5,200 万人、1 人あたり粗利益は 100 ドルで 52 億ドル。貸出は損失が収益を食い、規制(産業銀行・後払い)も重い。Square も Clover とトーストに加盟店を奪われ、取扱高は 3,800 億ドル、粗利率は 1.1% に下がり粗利益は 42 億ドル。全体は 94 億ドル(FY2025 の 9 割)。人員と費用を削っても貸出の損失と値引きで営業利益は 11 億ドル(粗利益比 12%)、純利益は 4.5 億ドルにとどまる。のれんの大半(約 120 億ドル)は減損され、自己資本は 152 億ドルへ縮む。ROE は 3% で資本コストを下回るので、稼ぐ力(純利益 ÷ k)の約 11 倍で測り、時価総額は約 51 億ドル、今の約 1 割。
- Cash App(個人向け金融アプリ):数量 5,200(月間取引利用者(万人))× 価格 100(1 人あたり年間粗利益(ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 9 億ドル。利用者数 × 1 人あたり粗利益
- Square(加盟店決済・経営ソフト・融資):数量 3,800(取扱高 GPV(億ドル))× 価格 0.01(粗利率(粗利益 ÷ 取扱高))→ 売上 42 億ドル・営業利益 6 億ドル。取扱高 × 粗利率
倍率:事業の ROE 3.0%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 152 億ドル)が k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)以下なので、PER は 1÷k = 11.4 倍まで(ためた利益は額面未満の価値。SCHEMA §1-1)。Cash App の成長は短期の小口貸出が主役で不況に弱く、Square は競合と値引きを争う。のれんも厚く、上限の中でも低めに置く。 上限の 10 割の 11.4 倍に置いた。
確率:構造的な負け(消費者向け金融アプリの競争・貸出の損失・規制)にリーマン級の景気後退が重なる展開。2022 年に山から −78% の下げ、PER が付かない時期も長く、Afterpay の大型買収のあと 120 億ドルののれんを抱えるため、ビザ・マスターカードの 11〜12% より厚い 13% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
Cash App(個人向け金融アプリ)
送金・デビットカード・短期貸出(Cash App Borrow)・後払い(Afterpay)・預金・ビットコイン売買から得る粗利益。
| 数量月間取引利用者(万人) | 価格1 人あたり年間粗利益(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,800 | 109 | 63 | 15 |
| 10 年後 中立 | 7,200 | 220 | 158 | 43 |
取り方:収益は売上でなく粗利益(売上の半分近くはビットコインの転売で素通し)で置く。FY2025 の Cash App の粗利益は約 63 億ドル(10-K)を、月間取引利用者(2025 年は約 5,800 万人、2026 年 6 月は 5,900 万人で +3%)で割ると 1 人あたり約 109 ドル。数量(利用者)は市場(米国の成人の金融アプリ利用の広がり)の伸びとシェアで増える。価格(1 人あたり粗利益)は物価で 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍が基本で、それを超える分は貸出・預金・カードの深まり。営業利益 14.5 億ドルは、全社 17 億ドルを粗利益と事業の重さで割り振った推定(開示は無く、株式報酬・本社費は粗利益の比で配った)。競合はチャイム(利用者約 900 万人)・ペイパルのベンモ・アップル・銀行のゼル。
Square(加盟店決済・経営ソフト・融資)
決済手数料・端末・ソフト・融資・銀行サービスから得る粗利益。
| 数量取扱高 GPV(億ドル) | 価格粗利率(粗利益 ÷ 取扱高) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,620 | 0.01 | 39 | 6 |
| 10 年後 中立 | 5,100 | 0.01 | 75 | 16 |
取り方:FY2025 の Square の粗利益は約 39 億ドル(10-K)、取扱高は約 2,620 億ドル(2026 年 4〜6 月期 728 億ドル・+13% から逆算した推定)で、粗利率は 1.49%。数量は市場(米国の小規模事業者の決済、名目 +6.5%)× シェアで増える。価格(粗利率)は物価で上げず、競合(Clover・トースト・ストライプ)の値引きで年 −0.3〜−0.5% ずつ下がると置く(業界ノートの中立:フィンテックの粗利率 −1%/年)。営業利益 5.5 億ドルは、全社の営業利益 17 億ドルを割り振った推定。本社費など共通の分は調整に −3 億ドルとして置く。
リスクと懸念
貸出の損失と景気
Cash App Borrow は数週間・小口の貸出で、信用の弱い層を含む。2026 年 4〜6 月期の組成額は 189 億ドル(+59%)と急拡大した。景気が悪化し延滞が増えると、損失が先に出て引当金が粗利益を削る。会社自身も後半の正常化を予告している。2022 年に株価が山から −78% 下げた記憶は新しい。
株式報酬(SBC)が重く、GAAP の利益が薄い
株式報酬は 2026 年上半期だけで 6 億ドル。調整後の営業利益(2026 年見通し 34.7 億ドル)は SBC などを足し戻した値で、GAAP の営業利益は 2025 年で 17 億ドルと小さい。自社株買いは SBC で増える株を打ち消す分を引くと正味の還元が小さい。
Cash App の利用者の伸びの鈍さと競合
月間利用者は 5,900 万人で +3%。伸びは 1 人あたりの貸出・預金に頼る。チャイム(手数料の安い口座)・アップル・ゼルが給与の入金を取りに来る。取引口座の座を奪われると、貸出の判断に使う取引の履歴も細り、貸出の優位も崩れる。
Square の競争と粗利率
Clover(ファイサーブ)は銀行経由で端末を補助し決済料を下げて押し、トーストは飲食店に強く、ストライプは大型の事業者を取る。Square の 2026 年 4〜6 月期の +13% には関税の一回限りの還付が約 2 ポイント含まれ、実力の伸びはそれより低い。
規制(産業貸付会社・後払い・証券口座)
貸出の一部は銀行子会社 Square Financial Services(ユタ州の産業貸付会社)の預金で賄われ、10-Q は親会社が資本の支えになる義務を挙げる。後払い(BNPL)の規制、Cash App Investing の証券会社としての資本規制、各州の貸出金利の規制が強まれば、貸出の収益化が制約される。
ビットコインの価格と戦略の重なり
ビットコインの保有(簿価 5.3 億ドル)の評価損益が GAAP 利益を動かす。上半期は 2.6 億ドルの評価損。ビットコインの粗利益は 4〜6 月期に −31%(手数料の引き下げ)。Proto・Bitkey など収益の薄い新事業への投資も続く。
人員 4 割減の実行リスク
2026 年 2 月に約 4,000 人を削減し、AI で補う方針。顧客対応・不正対策・貸出の審査・法令順守の質が落ちれば、損失や規制の問題として出る。削減費用の総額は確かめられておらず、実行の傷はこれから出る可能性がある。
今後の分かれ目
- Cash App Borrow の損失率(延滞率)が目に見えて上がったら
- 貸出の粗利益から引当金が出て、Cash App の伸びが止まる。やや悲観・悲観の確率を上げ、貸出の粗利益の伸びを下げて見る。
- 2026 年後半以降も貸出の組成が +30% 以上で、損失率が安定していたら
- 1 人あたり粗利益が楽観側へ寄る。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- Cash App の月間利用者が 6,300 万人を超え、+5% 台へ加速したら
- 数量の伸びが加わり、利用者の基盤が広がる。やや楽観・楽観を厚くする。
- Square の粗利率が 1.4% を割り、取扱高の伸びも市場並みに落ちたら
- Clover・トーストとの値引き競争が本格化している。Square の粗利益を下げ、やや悲観を厚くする。
- AI で費用を半分にした後も、顧客対応・不正対策の問題が出ず、営業利益率が粗利益比で 25% を超えて続いたら
- 利益率の上振れが確認される。楽観・やや楽観の利益率を上げてよい。
- 景気が後退し、失業率が上がって延滞が 2 桁の増加を示したら
- 10 年の悲観が実現に近い。のれん(120 億ドル)の減損も視野に入り、自己資本で測った値が床になる。
見ておくもの
- Cash App の月間取引利用者と 1 人あたり粗利益、貸出の組成額と損失率(延滞率)
- Square の取扱高の伸びと粗利率(一回限りの要因を除く)
- GAAP の営業利益と株式報酬(調整後との差)
- 自社株買いの額から、株式報酬で増える株の分を引いた正味の還元
- 人員削減後の顧客対応・不正対策の質(規制当局の指摘)
- ビットコインの評価損益と産業貸付会社の資本
倍率と資本コストの決め方
今の PER 約 35 倍(GAAP)を見る前に、Cash App を「利用者 × 1 人あたり粗利益」、Square を「取扱高 × 粗利率」で粗利益に積み上げ、営業利益率を置き、帳簿の ROE・成長・k から倍率を決めた。k は基本 8.0% + quality 0.75% の 8.75%。長期の g は 4%(k − g は 4% 以上)。倍率は利益ベースの正当化 PER の 8.6〜9.5 割で、中立の 10 年 11.5 倍(式の上限 13.4 倍。ROE が k を超える会社の中立の PER は 1÷k = 11.4 倍を下回らせない)。のれん 120 億ドルを含む帳簿の ROE が低く、式の倍率も低くなる。今の PER 約 35 倍には寄せていない(楽観でも 10 年 15.2 倍)。調整後の利益(株式報酬を足し戻した値)は使わず GAAP の純利益で測った。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%。内訳は cycle +0.25・pricing +0.25・debt +0.00・life +0.25(%)で、理由は quality_why。β は使わない。個別の懸念(貸出の損失・Afterpay ののれん・規制)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。