結論
T・ロウ・プライス(T. Rowe Price、TROW)は 1937 年創業、ボルチモアに本社を置く独立系のアクティブ運用会社で、2026 年 9 月末の運用資産(AUM)は 1.86 兆ドル。内訳は株式 8,960 億ドル、マルチアセット(ターゲットデートが中心)6,810 億ドル、債券・MMF 2,220 億ドル、オルタナティブ 640 億ドル。収益の約 9 割が運用手数料で、運用資産の約 3 分の 2 が退職金制度(401(k) など)に関わる。
ただし顧客はアクティブ株式から出続けている。2025 年の純流出は 569 億ドル(株式が約 750 億ドル)、2026 年は 4〜6 月期が 65 億ドル、7〜9 月期が 283 億ドル。実効手数料率は 2024 年 41.0bp、2025 年 39.4bp、2026 年 4〜6 月期 38.1bp と下がっている。それでも市場の値上がりで AUM は増え、現金と投資は 73 億ドル(裁量分 44 億ドル)と厚く、営業利益率は会社の調整後で 37%、GAAP で 30% 台前半を保つ。
バリュー投資の観点では、10 年後も事業は残るが、堀は広がらず狭まる側にある。中立の筋書きは 2035 年の純利益を 24.6 億ドル(2025 年の経済の値 19.9 億ドルから年 2% 台の伸び)とし、倍率は利益ベースの式(k 9.0%=基本 8.0% に quality +1.0%。資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)の上限 PER 約 14.3 倍(純現金を 1 ドルで足した値)の 9 割(12.9 倍)。確率で加重した価値は今の時価総額を 1 割台半ば上回り、結論は「やや割安」。ただし市場の値付け(GAAP の PER 約 11 倍)は流出の継続を織り込んでおり、悲観(確率 17%)では時価総額は今の約 0.4 倍に下がる。幅を持って読むべき結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。退職の貯蓄は積み上がり、401(k) を通じた運用は必要であり続ける。ただしそこで T・ロウ・プライスが今の位置を保てるかは別で、手数料率は 2 年で 7% 下がり、アクティブ株式は 2025 年に 750 億ドル出た。堀は「去らない力」で、価格を決める力ではない。10 年後に今より強いとは言えず、今より少し弱い中立を置く。
次にオーナー利益。資産運用は設備投資が小さく、事業の ROE(現金を除く)は 27% 前後。伸びに要るのは人とシード投資で、利益の大半を株主に返せる。ただし株式報酬は年 1.8 億ドルあり、費用として見る。GAAP の純利益には、シード投資の評価益・繰延報酬のヘッジ益・連結投資商品の益が毎期混じり、2026 年 4〜6 月期は営業外 3.69 億ドルが純利益の約 4 割を占めたので、それらは除いて見た。
資本配分は、純現金を厚く持ち、買収は慎重で、配当を重んじる。PER 11 倍前後の今の自社株買いは、中立の本質価値より安く買っている。安全域は、時価総額の約 2 割が純現金であることと、事業の倍率がすでに低い(純現金を除くと GAAP の PER 約 9 倍)こと。わからない所は、流出がいつ止まるかで、確信度は中程度。
何で稼ぐ会社か
収益は運用資産に手数料率をかけた運用手数料が中心で、2025 年の純収益 73.1 億ドルのうち約 9 割が運用手数料、残りが管理・販売手数料とオルタナのキャリー(資本配分型収益)。運用資産は 4 つの塊で見る。第 1 は株式(2026 年 9 月末 8,960 億ドル)。独自のリサーチを使うアクティブ運用が中心で、手数料率は最も高い(推定で約 48bp)。2026 年にはリサーチと運用を一体にした統合株式戦略(約 2,000 億ドル、年初来の流入 160 億ドル)と株式 ETF が伸びている。第 2 はマルチアセット(6,810 億ドル)。ターゲットデート退職ポートフォリオ(6,140 億ドル)が中心で、401(k) の企業年金制度に標準の投資先として採用されるため、長く積み上がる。手数料率は低い(推定で約 27bp)。第 3 は債券と MMF(2,220 億ドル)。第 4 はオルタナティブ(640 億ドル)。2021 年末に買収したオーク・ヒル・アドバイザーズ(OHA)の私募クレジットが核で、まだ小さいが手数料率は高い。
販売経路は、退職金制度の記録管理会社と企業年金、証券会社・銀行の助言、機関投資家、直販。商品の器は投信から ETF(2026 年 6 月末で 34 本・300 億ドル)、SMA(運用一任口座、200 億ドル・43 商品)、CIT(集団信託)へ移りつつあり、手数料率の低い器への入れ替えが収益を削る。
費用の大半は人件費で、約 3 分の 1 が市場に連動(ボーナス・繰延報酬)、約 3 分の 2 が裁量。2026 年の調整後費用は 2025 年の 46 億ドルから 4〜7% の伸びが計画。社員数は 7,544 人(前年比 6.4% 減)。バランスシートは現金 32 億ドル、投資 41 億ドル(うち繰延報酬のヘッジとシード投資を含む)、有利子負債は小さい。決算は 12 月期。
優良さと弱いところ
優良さの柱は 4 つある。第 1 は退職金制度での存在感。ターゲットデートは企業年金の標準の投資先として長い実績があり、記録管理会社・制度の運営者との関係は切り替えに手間がかかる。第 2 は独自のリサーチを持つ運用力。「統合株式戦略」への年 160 億ドルの流入は、その一部が顧客に評価されている証拠である。第 3 は資本の厚さ。純現金は時価総額の約 2 割、有利子負債は小さく、配当と自社株買いを不況でも続けられる。第 4 は利益率。営業利益率は GAAP で 30% 台前半、調整後で 37% と、業界平均の約 30%(BCG)を上回る。
弱い所は 4 つ。(1)堀の質。ブランドは強いが、顧客が「去らない力」は運用成績が悪い時に脆く、アクティブ株式の流出は 2025 年に約 750 億ドルと大きい。ターゲットデートも、2026 年 9 月に大型の流出があった。(2)価格を決める力が無い。実効手数料率は 2 年で 41.0bp から 38.1bp まで下がり、ETF・CIT への器の入れ替えが続く。(3)ブラックロック・バンガード・フィデリティに比べて規模が小さく、パッシブの低コストに対抗できない。(4)オルタナは小さく(640 億ドル)、ブラックストーン・アポロなど専業大手との競争に勝てるかはこれから。2026 年にエリック・ベイエル社長、セバスチャン・ペイジ共同 CIO の体制に移り、戦略の実行力は未知数。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の運用資産は 2025 年に約 147 兆ドル(BCG)で、収益成長の 8 割超が市場の値上がり、業界の利益率は 2010 年以来約 30% で横ばい。収益の伸び年 5.1% に対し費用は 5.4%(負のオペレーティング・レバレッジ)。機関投資家の手数料は年 3% 下がり、ETF は 2025 年に過去最高の 1.5 兆ドルの純流入、純資産は 13 兆ドル超。世界の規制ファンドの純資産は約 88 兆ドル(ICI)。純流入の大半はパッシブ・ETF に向かう。
T・ロウ・プライスの競争相手は 3 種類。(1)パッシブの大手(ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート)は、手数料率 0.03〜0.2% で株式の純流入を取る。(2)アクティブの競合(フィデリティ、キャピタル・グループ、JP モルガンなど)は、退職金制度のターゲットデートと同じ顧客を取り合う。(3)オルタナ専業(ブラックストーン、アポロ、KKR、アレス)は私募の資金調達を大手に集中させ、個人向け長期型ファンドは 4 年で 5 倍超の 3,000 億ドル超に育った。
構造の変化は 4 つ。第 1 はパッシブ化で、アクティブ株式の手数料率が 0.4〜0.7% から 0.2% 台に崩れる恐れがある。第 2 は器の入れ替え(投信 → ETF・CIT・SMA)で、手数料率が下がる。第 3 は私募の個人向け開放と、ターゲットデートに私募を入れる動き(ゴールドマン・サックスとの提携もその一例)。第 4 は AI による費用低下で、顧客はその分の値下げを求める。循環の位置は、2026 年に市場が高く AUM は過去最高の水準で、経営陣は後半の純流出が前半より厳しいと述べた。山に近い。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2025 年は合計 18 億ドル(配当約 12 億ドル、自社株買い 6.25 億ドル)、純利益の 9 割弱。2026 年は 1〜6 月に自社株買い 4.97 億ドル(発行済み株の約 2.5%)、4〜6 月期の還元は 4.41 億ドル。配当は毎年引き上げてきた。株式報酬は上半期で約 0.9 億ドル(年約 1.8 億ドル)で、正味の還元(payout_oku)から差し引く。株数は 2025 年に 1.3% 減った。
現金と裁量投資は 44 億ドルで、「事業の成長と M&A の機会に残す」と会社は説明している。筋書きでは現金を 1 ドルで数え、利益から純現金の受取利息を分けて倍率を掛ける。M&A は 2021 年末のオーク・ヒル・アドバイザーズ(OHA)買収が最大で、経営陣はオルタナの追加買収に余地があるとする。買収で価値を壊すか生むかは、オルタナの運用資産と報酬率の伸びで決まる。2025 年に再編費用 1.77 億ドルを計上(一時的なので除く)。2025 年 9 月にゴールドマン・サックスが市場で最大 10 億ドル(持ち分 3.5% まで)の株を買う意向を表明した。新株ではなく市場の買いで、会社の株数には影響しない。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 5.0 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
T・ロウ・プライスは、流出が見える会社であるがゆえに値段がすでに下がっている。GAAP の PER は約 11 倍、純現金を除くと約 9 倍で、運用手数料の 9 割を稼ぐ事業としては、成長がマイナスに入る前提の値付けである。その流出は、ある一部の株式戦略の話だ。リサーチと運用を一体にした統合株式戦略(約 2,000 億ドル)は、年初来で 160 億ドルが流入し、ETF は 34 本・300 億ドルで 4〜6 月期に 44 億ドル、SMA は 200 億ドル。2026 年の総流入額(グロス)は過去最高の見込みで、純流出は解約が増えている分にすぎない。
ターゲットデートは 6,140 億ドルで、企業年金の標準の投資先として毎月の拠出が入り続ける。2026 年 7 月にはゴールドマン・サックスと私募入りの商品(インターバル型ファンド)を始め、私募を入れたターゲットデート CIT も運用の準備が済んでいる。他社にない差別化になりうる。債券・オルタナにも年 +3〜4% の流入があり、OHA の私募クレジットは手数料率が高い。
費用では、裁量費用を 2026〜27 年に低い 1 桁の伸びに抑え、社員は前年比 6.4% 減。市場の値上がりが運用資産を押し上げる限り、利益率 35% 前後は守れる。純現金は時価総額の約 2 割で、配当と自社株買いは不況でも続く。利益ベースの中立(事業の PER 11.1 倍に純現金を足す)でも、10 年後の時価総額は今の約 1.35 倍で、配当と自社株買いも入る。
慎重な見方
流出は一過性ではなく構造である。2025 年に 569 億ドル、2026 年は 4〜6 月期が 65 億ドル、7〜9 月期が 283 億ドル(9 月は大型のターゲットデートの流出を含む)と、むしろ加速している。経営陣自身が「後半の純流出は前半よりかなり厳しい」と述べた。流出する先は、手数料率が 0.2% 台のパッシブ・ETF で、アクティブ株式の収益の源(約 48bp)が置き換わる。手数料率は 2 年で 41.0bp から 38.1bp に下がり、今後も年 2.5〜3% 下がる。市場が 5.5% 上がっても、流出 4〜5% と値下げ 2.5〜3% で、収益は年 3% 台しか伸びず、費用が 4〜7% 伸びる計画のままなら利益率は下がる。
ターゲットデートも安泰ではない。2026 年 9 月に大型の流出があり、バンガード・フィデリティ・ブラックロックは手数料の低い商品で取りに来る。私募入りのターゲットデートは、規制(労働省の指針・訴訟)と手数料の高さで、広がらない恐れがある。OHA の私募クレジットは 2025 年に信用事故が出た分野で、買収の価値を壊しうる。
今の利益には市場高の追い風も混じる。2026 年上半期の GAAP 純利益 11.3 億ドルの約 3 割は営業外のシード投資・ヘッジ・連結投資商品の益である。倍率は「g が 2% で ROE が 27%」に敏感で、g が −2% なら事業の PER は 9 倍を下回る。株価が低いのは、市場が正しく価格を付けているからかもしれない。
どちらに重みを置いたか
事業の質は慎重な見方がやや強い。純流出が加速し、手数料率が 2 年で 7% 下がり、経営陣が後半の悪化を認めている事実は重い。そこで 10 年の悲観・やや悲観の合計を 43%、楽観・やや楽観の合計を 27% と、同じ領域の他社(悲観寄りでも 3 割台)より悲観に寄せ、悲観の確率は 17% と厚くした。一方、値段は利益ベースの倍率(中立 10 年後の PER 12.9 倍、純現金は 1 ドル)で測っても強気の見方がやや勝つ。流出を中立と悲観の筋書きに織り込んだうえでも、価値が今の時価総額を上回るからである。結論は「やや割安」で、悲観の確率を厚く置いた上でのものだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 139.38 ドル307 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 87.72 ドル193 億ドル)。 今の値に割り戻すと 115.88 ドル255 億ドル、今との差 +12.0%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 299.14 ドル659 億ドル | 128.01 ドル282 億ドル | +312.9% | +15.2% | 29.90 ドル66 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 221.52 ドル488 億ドル | 110.76 ドル244 億ドル | +221.2% | +12.4% | 66.45 ドル146 億ドル |
| 中立 | 30% | 143.89 ドル317 億ドル | 92.60 ドル204 億ドル | +128.6% | +8.6% | 70.95 ドル156 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 92.15 ドル203 億ドル | 77.62 ドル171 億ドル | +64.1% | +5.1% | 44.14 ドル97 億ドル |
| 悲観 | 17% | 41.22 ドル91 億ドル | 50.84 ドル112 億ドル | −11.0% | −1.2% | 15.65 ドル34 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 139.38 ドル307 億ドル | 87.72 ドル193 億ドル | +119.5% | +8.2% | 227.09 ドル500 億ドル |
今の株価時価総額 103.45 ドル228 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:アクティブ ETF・統合株式・私募で流出を止め、手数料率の低下も小さい 利益 44 億ドル · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 299.14 ドル659 億ドル
市場が年 7.5% で上がり、アクティブ株式の流出は年 2% にとどまる。アクティブ ETF・SMA・統合株式戦略が顧客の入れ替えを吸収し、手数料の高い独自のリサーチを売れる範囲を保つ。ターゲットデートはゴールドマン・サックス提携の私募入りの商品で大手との差別化に成功し、年 2.5% の流入。債券・オルタナはオーク・ヒルの私募クレジットが育ち年 6%。手数料率の低下は年 1% 以内。AI と組織の簡素化で費用は収益より遅く増え、利益率は 39%。 2035 年の平均 AUM は 3.76 兆ドル(株式 1.38・マルチアセット 1.53・債券とオルタナ 0.85)、実効手数料率は 34.3bp(2026 年 4〜6 月期は 38.1bp)、純収益は 144.3 億ドル。 営業利益は 56.3 億ドル(経済の利益率 39.0%)、純利益は 44.2 億ドル(純現金の受取利息 2.2 億ドルを含む)。2026〜35 年の正味の還元は 282 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 13,814(株式の平均運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 59 億ドル・営業利益 24 億ドル。株式 AUM と手数料率
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分)の運用手数料:数量 15,260(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 37 億ドル・営業利益 13 億ドル。ターゲットデート等
- 債券・MMF・オルタナティブの運用手数料:数量 8,496(債券・MMF・オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF・オルタナの実効手数料率)→ 売上 33 億ドル・営業利益 12 億ドル。債券・オルタナ
- 管理・販売・その他の手数料、成功報酬・キャリー:数量 37,570(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる管理等の手数料率)→ 売上 16 億ドル・営業利益 8 億ドル。管理・成功報酬
倍率:純利益と自己資本は優先株がなく、そのまま普通株の値。純現金(約 29 億ドル)は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 33.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 21.1% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=16.2 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、アクティブ運用の流出と報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.2 割の PER 14.9 倍に置いた(検査の上限は時価総額 717 億ドル)。
確率:流出が止まり、新しい商品が育ち、手数料の低下も小さい展開。アクティブ運用会社の過去 10 年の趨勢(流出と値下げ)と逆なので 1 割未満。
やや楽観 20% やや楽観:株式の流出は縮み、ターゲットデートと債券・オルタナで伸びる 利益 34 億ドル · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 221.52 ドル488 億ドル
市場が年 6.5%、株式の流出は年 3%、マルチアセットと債券・オルタナが年 1.5〜5% で伸びる。ETF と SMA が成長の主力になり、アクティブ株式は縮むが残る。手数料率は年 1.7% 下がり、物価並みには上がらない。費用は裁量分を年 2〜3% に抑え、利益率は 37%。景気後退を 2 回挟み、そのたびに利益は 2〜3 割落ちるが、均すと年 5% 台で伸びる。 2035 年の平均 AUM は 3.21 兆ドル(株式 1.17・マルチアセット 1.31・債券とオルタナ 0.73)、実効手数料率は 32.5bp(2026 年 4〜6 月期は 38.1bp)、純収益は 117.0 億ドル。 営業利益は 43.3 億ドル(経済の利益率 37.0%)、純利益は 34.3 億ドル(純現金の受取利息 2.2 億ドルを含む)。2026〜35 年の正味の還元は 244 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 11,737(株式の平均運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 47 億ドル・営業利益 18 億ドル。株式 AUM と手数料率
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分)の運用手数料:数量 13,051(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 29 億ドル・営業利益 10 億ドル。ターゲットデート等
- 債券・MMF・オルタナティブの運用手数料:数量 7,301(債券・MMF・オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF・オルタナの実効手数料率)→ 売上 28 億ドル・営業利益 10 億ドル。債券・オルタナ
- 管理・販売・その他の手数料、成功報酬・キャリー:数量 32,089(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる管理等の手数料率)→ 売上 13 億ドル・営業利益 6 億ドル。管理・成功報酬
倍率:純利益と自己資本は優先株がなく、そのまま普通株の値。純現金(約 29 億ドル)は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 26.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 17.6% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.5 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、アクティブ運用の流出と報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.2 割の PER 14.2 倍に置いた(検査の上限は時価総額 530 億ドル)。
確率:一部の商品(ETF・SMA・統合株式・私募)が育って流出を相殺する展開。道筋は見えているが、10 年続けるのは難しい。
中立 30% 中立:アクティブ株式は流出が続き、手数料率は年 2.5% 前後下がり、利益は年 2% 台で伸びる 利益 25 億ドル · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 143.89 ドル317 億ドル
市場は名目 5.5%(物価 3.5% + 実質 2%)で、運用資産は 2026 年の水準から年 4% ほど増える。株式は年 4% の流出が続く一方、ターゲットデートは年 0.5%、債券・オルタナは年 3.5% の流入。手数料率は年 2.5% 前後下がり、株式の ETF・CIT への移行と値下げが続く(物価並みには上がらない)。利益率は 33% まで緩やかに下がる。景気後退を 2 回挟み、そのたびに利益は 2〜3 割落ちる。 2035 年の平均 AUM は 2.71 兆ドル(株式 0.99・マルチアセット 1.11・債券とオルタナ 0.60)、実効手数料率は 30.4bp(2026 年 4〜6 月期は 38.1bp)、純収益は 92.5 億ドル。 営業利益は 30.5 億ドル(経済の利益率 33.0%)、純利益は 24.6 億ドル(純現金の受取利息 2.1 億ドルを含む)。2026〜35 年の正味の還元は 204 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 9,942(株式の平均運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 37 億ドル・営業利益 13 億ドル。株式 AUM と手数料率
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分)の運用手数料:数量 11,130(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 23 億ドル・営業利益 7 億ドル。ターゲットデート等
- 債券・MMF・オルタナティブの運用手数料:数量 6,018(債券・MMF・オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF・オルタナの実効手数料率)→ 売上 22 億ドル・営業利益 7 億ドル。債券・オルタナ
- 管理・販売・その他の手数料、成功報酬・キャリー:数量 27,090(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる管理等の手数料率)→ 売上 10 億ドル・営業利益 4 億ドル。管理・成功報酬
倍率:純利益と自己資本は優先株がなく、そのまま普通株の値。純現金(約 29 億ドル)は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 19.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 14.1% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.3 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、アクティブ運用の流出と報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.0 割の PER 12.9 倍に置いた(検査の上限は時価総額 353 億ドル)。
確率:流出と値下げが続くが、市場の値上がり(名目 5.5%)が運用資産を押し上げる。落ち着く先として最も起こりやすい。
やや悲観 26% やや悲観:流出と値下げが速く、運用資産が伸びず利益が今を下回る 利益 17 億ドル · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 92.15 ドル203 億ドル
市場が年 4.5% と伸びず、株式の流出は年 5.5%、マルチアセットも年 1%、大手のターゲットデート取引を失う。手数料率は年 3.3% 下がり、ETF・CIT への移行が重い。AI と人員削減で費用を下げても収益の落ち込みに追いつかず、利益率は 30% に下がる。純利益は 2025 年の水準を下回り、自社株買いは配当を維持する程度になる。 2035 年の平均 AUM は 2.21 兆ドル(株式 0.80・マルチアセット 0.91・債券とオルタナ 0.49)、実効手数料率は 28.2bp(2026 年 4〜6 月期は 38.1bp)、純収益は 70.2 億ドル。 営業利益は 21.1 億ドル(経済の利益率 30.0%)、純利益は 17.4 億ドル(純現金の受取利息 2.0 億ドルを含む)。2026〜35 年の正味の還元は 171 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 8,043(株式の平均運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 28 億ドル・営業利益 9 億ドル。株式 AUM と手数料率
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分)の運用手数料:数量 9,084(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 18 億ドル・営業利益 5 億ドル。ターゲットデート等
- 債券・MMF・オルタナティブの運用手数料:数量 4,938(債券・MMF・オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF・オルタナの実効手数料率)→ 売上 17 億ドル・営業利益 5 億ドル。債券・オルタナ
- 管理・販売・その他の手数料、成功報酬・キャリー:数量 22,065(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる管理等の手数料率)→ 売上 8 億ドル・営業利益 3 億ドル。管理・成功報酬
倍率:純利益と自己資本は優先株がなく、そのまま普通株の値。純現金(約 29 億ドル)は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 13.8%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 11.4% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.0 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、アクティブ運用の流出と報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.0 割の PER 11.7 倍に置いた(検査の上限は時価総額 226 億ドル)。
確率:アクティブ株式の流出が止まらず、手数料率が年 3% 超で下がる展開。2022 年以降の実績(流出 569 億ドル・手数料率 −1.6bp)の延長にあたり、厚く置く。
悲観 17% 悲観:構造的に負ける(アクティブ株式の縮小・ターゲットデートの喪失・手数料の崩れ) 利益 9 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 41.22 ドル91 億ドル
市場が年 4% しか伸びず、株式の流出は年 7.5%、マルチアセットも年 3% 流出する。ターゲットデートは大手運用会社に取られ、アクティブ株式はパッシブに置き換わる。手数料率は年 4.5% 下がって 2025 年の 7 割台前半(株式 31bp 台)となる。オルタナ(オーク・ヒル)も報酬率の低下と私募の信用事故で伸びず、費用は下げきれず利益率は 19%。優良な資産運用会社ではなくなり、倍率は稼ぐ力の上限の 9.5 割(PER 10.6 倍)で、時価総額は今の約 0.4 倍。 2035 年の平均 AUM は 1.81 兆ドル(株式 0.65・マルチアセット 0.74・債券とオルタナ 0.42)、実効手数料率は 25.6bp(2026 年 4〜6 月期は 38.1bp)、純収益は 52.4 億ドル。 営業利益は 9.8 億ドル(経済の利益率 18.7%)、純利益は 8.6 億ドル(純現金の受取利息 2.0 億ドルを含む)。2026〜35 年の正味の還元は 112 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 6,472(株式の平均運用資産 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 20 億ドル・営業利益 4 億ドル。株式 AUM と手数料率
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分)の運用手数料:数量 7,378(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。ターゲットデート等
- 債券・MMF・オルタナティブの運用手数料:数量 4,202(債券・MMF・オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF・オルタナの実効手数料率)→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。債券・オルタナ
- 管理・販売・その他の手数料、成功報酬・キャリー:数量 18,053(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる管理等の手数料率)→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。管理・成功報酬
倍率:稼ぐ力で測る(SCHEMA §1-3)。構造的に負けた筋書きで、ROE が k を下回るため PER は 1÷k が上限になる。ROE 6.1% が k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で、PER は 1÷k=11.1 倍が上限。上限の 9.5 割の PER 10.6 倍(時価総額 96 億ドルが上限)に置いた。PBR は結果であって根拠ではない。
確率:ターゲットデートの退職制度の取引が大手運用会社(バンガード・フィデリティ・ブラックロック)に移り、株式はパッシブへ流れ、オルタナも育たない構造的な負け。業界ノートの悲観(パッシブ化・報酬率の崩れ・AI による費用低下)をそのまま当てる。同じ領域の他社(1 割台前半)より厚い 17%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料
アクティブ株式(グロース・バリュー・リサーチ・統合株式)と株式 ETF の運用手数料。株式 AUM に手数料率をかけた収益。
| 数量株式の平均運用資産 AUM(億ドル) | 価格株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,300 | 0.00 | 40 | 14 |
| 10 年後 中立 | 9,942 | 0.00 | 37 | 13 |
取り方:2025 年の平均 AUM を約 0.83 兆ドルと置いた(年末 0.88 兆ドル。年間の純流出 569 億ドルの大半が株式で約 750 億ドル)。実効手数料率は全体で 39.4bp(2024 年 41.0bp)で、株式は約 48.5bp と推定(部門別の開示なし。全体の率に合わせた推定)。 営業利益は GAAP の営業利益(買収償却と留保報酬を含み、再編費用 1.77 億ドルを除く)に、ヘッジ益で戻る繰延報酬の市場連動費用を足し戻した経済の値で、全体 24.9 億ドル(利益率 34%)を手数料の重い塊ほど高く配った推定。
マルチアセット(ターゲットデート・資産配分)の運用手数料
退職金制度向けのターゲットデート(CIT・投信)、資産配分型の運用手数料。
| 数量マルチアセットの平均 AUM(億ドル) | 価格マルチアセットの実効手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,900 | 0.00 | 16 | 5 |
| 10 年後 中立 | 11,130 | 0.00 | 23 | 7 |
取り方:2025 年の平均 AUM を約 0.59 兆ドルと置いた(年末 0.627 兆ドル、ターゲットデート退職ポートフォリオは 5,610 億ドル)。手数料率は株式より低い約 27bp と推定(全体の率に合わせた推定)。 営業利益は GAAP の営業利益(買収償却と留保報酬を含み、再編費用 1.77 億ドルを除く)に、ヘッジ益で戻る繰延報酬の市場連動費用を足し戻した経済の値で、全体 24.9 億ドル(利益率 34%)を手数料の重い塊ほど高く配った推定。
債券・MMF・オルタナティブの運用手数料
債券・マネー・マーケット・ファンド・私募クレジット(オーク・ヒル)・私募の運用手数料。
| 数量債券・MMF・オルタナの平均 AUM(億ドル) | 価格債券・MMF・オルタナの実効手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 0.00 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 6,018 | 0.00 | 22 | 7 |
取り方:2025 年の平均 AUM を約 0.25 兆ドル(債券・MMF 約 0.20、オルタナ約 0.055)と置いた。年末は債券 2,116 億ドル・オルタナ 585 億ドル。債券は低く私募クレジットは高いので全体で約 40bp と推定。 営業利益は GAAP の営業利益(買収償却と留保報酬を含み、再編費用 1.77 億ドルを除く)に、ヘッジ益で戻る繰延報酬の市場連動費用を足し戻した経済の値で、全体 24.9 億ドル(利益率 34%)を手数料の重い塊ほど高く配った推定。
管理・販売・その他の手数料、成功報酬・キャリー
ファンドの管理・販売・サービス手数料と、オルタナの成功報酬・キャリー(資本配分型収益)。AUM 全体にかかる率で置く。
| 数量運用資産全体の平均 AUM(億ドル) | 価格運用資産全体にかかる管理等の手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16,700 | 0.00 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 27,090 | 0.00 | 10 | 4 |
取り方:2025 年の純収益 73.15 億ドルから運用手数料(推定 66.2 億ドル)を引いた約 6.95 億ドル(管理・販売等の手数料に、オルタナのキャリー・資本配分型収益を含む)を、AUM 全体 1.67 兆ドルに対する約 4.2bp と置いた。2026 年 4〜6 月期の管理・販売等は 1.44 億ドルで年換算約 5.8 億ドル。 営業利益は GAAP の営業利益(買収償却と留保報酬を含み、再編費用 1.77 億ドルを除く)に、ヘッジ益で戻る繰延報酬の市場連動費用を足し戻した経済の値で、全体 24.9 億ドル(利益率 34%)を手数料の重い塊ほど高く配った推定。
リスクと懸念
アクティブ株式の流出の加速
株式の純流出は 2025 年に約 750 億ドル、2026 年も 4〜6 月期に 135 億ドル、7〜9 月期の純流出は全体で 283 億ドル。経営陣は後半が前半よりかなり厳しいと述べた。流出先はパッシブ・ETF・大手のアクティブで、運用成績が戻らなければ止まらない。収益の源(手数料率の高い株式)が縮み、利益率と配当の余力に響く。
実効手数料率の低下
実効手数料率は 2024 年 41.0bp、2025 年 39.4bp、2026 年 4〜6 月期 38.1bp。投信から ETF・CIT・SMA への器の入れ替え、機関投資家の値引き、高い手数料の株式からの解約が重なり、年 3% 前後下がる。AI による費用削減の利益は顧客の値下げ要求に移りやすい。
退職金制度(ターゲットデート)での取引の喪失
ターゲットデート(6,140 億ドル)は 401(k) の標準の投資先で収益の柱だが、企業年金の運営者が大手の低コスト商品や私募入りの商品に切り替える動きがある。2026 年 9 月に大型の流出があった。一度の取引の喪失が運用資産の 1% 以上を動かす。
市場連動と運営のてこ
運用手数料は残高に連動し、費用の約 3 分の 2 は裁量だが人件費中心で下げにくい。2008〜09 年に株価は山から約 64% 下がり、2022 年も約 50% 下がった。株式市場が 3〜4 割下がると、収益は 2〜3 割減る一方、費用は固定的で利益が大きく落ちる。2026 年は市場高の追い風もあり、利益は山に近い。
オルタナ・私募クレジットの信用事故
2021 年末に買収したオーク・ヒル・アドバイザーズ(OHA)の私募クレジットは、運用資産がまだ 640 億ドルと小さいが、会社が成長の柱に据える。2025 年に米国の自動車・ノンバンク貸出の破綻が連鎖した。信用事故が起きれば、キャリー(成功報酬)が消え、個人向けファンドの解約が起きる。ゴールドマン・サックス提携の私募入り商品の信頼にも響く。
経営の移行と買収の失敗
2026 年にエリック・ベイエル社長、セバスチャン・ペイジ共同 CIO の体制に移った。戦略は ETF・SMA・オルタナへの重心の移動だが、アクティブ株式をどう守るかが定まっていない。オルタナの追加買収に余地があると明言しており、割高な買収で価値を壊す恐れがある(過去最大の OHA 買収の成否も確定していない)。
GAAP の利益のぶれと一時的な益
GAAP の純利益には、シード投資の評価損益、繰延報酬のヘッジ益、連結投資商品の益が毎期混じる。2026 年 4〜6 月期は営業外 3.69 億ドルが純利益の約 4 割を占めた。これらは市場の水準次第で、除いて見ないと利益を過大に読む。調整後の数字は買収償却と留保報酬を戻しており、そのまま使えない。
今後の分かれ目
- 株式の純流出が 3 四半期連続で縮小し、統合株式戦略の流入が流出の 5 割以上を相殺したら
- 堀が保たれていると見て、中立と楽観の確率を上げ、中立の株式の流出を年 5% から 4% に直して見る。
- 実効手数料率が 37bp を下回り、株式の手数料率の低下が年 3% を超えて続いたら
- 価格を決める力がないと確認できる。やや悲観の確率を上げ、中立の利益率を 1〜2 ポイント下げる。
- ターゲットデートの大型の取引が他社に移り、ターゲットデートの AUM が 2 四半期連続で純流出となったら
- 収益の柱が崩れる兆し。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- ゴールドマン提携の私募入りターゲットデートが大手の制度に採用され、ターゲットデートの純流入が戻ったら
- 差別化に成功した筋書きに近づく。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 株式・債券市場が 2026 年の水準から 3 割以上下がったら
- やや悲観の確率を上げる。ただし純現金(約 38 億ドル)と配当が下の床で、回復後の戻りは早い。
- オルタナの追加買収(数十億ドル規模)が現金でなく新株や借入で発表されたら
- 買収の価格と OHA の報酬率の伸びを見て、価値を壊すなら悲観側の確率を上げる。
- 私募クレジットで大きな信用事故が出て、個人向けの解約が増えたら
- オルタナの成長の筋書きを下げ、手数料率の高い収益(キャリー)を中立から減らす。
見ておくもの
- 月次の AUM と純流入(株式・マルチアセット・債券・オルタナ別、毎月 10 日前後に発表)
- 実効手数料率(成功報酬を除く。38.1bp から下がる速さ)
- 統合株式戦略・ETF・SMA の流入の大きさと、投信の純流出
- ターゲットデート(退職ポートフォリオ)の純流入と大型取引の動き
- 営業利益率(GAAP・調整後)と費用の伸び(2026 年は 4〜7%)、社員数
- ゴールドマン提携の商品の運用資産(5 億ドルに接近する model portfolio など)と私募入りターゲットデートの採用
- 現金と裁量投資(44 億ドル)、自社株買いの規模、M&A の発表
- 7〜9 月期決算(2026-10-29)の純流出と費用の見通し
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP で約 11 倍、純現金を除くと約 9 倍)と PBR 2.05 倍を見る前に、4 つの塊(株式・マルチアセット・債券とオルタナ・管理等)の「平均 AUM × 手数料率」で収益を積み上げ、経済の営業利益率(ヘッジ益で戻る繰延報酬の費用を足し戻し、再編費用を除く)から GAAP の利益を組み、現金を 1 ドルで分けた。倍率は利益ベースの上限 PER(k 9.0%=基本 8.0% に quality +1.0%・g は 4%・RONIC は ROE と k の中間、純現金を 1 ドルで足した値)の 9 割に置いた。結論の「やや割安」は、流出の継続を中立の g 2.1% と悲観に織り込んだうえで、2025 年の経済の利益(19.9 億ドル)から出発したことに依存する。今の市場の値付けに寄せず、悲観の確率を 17% と厚くしたうえでもやや割安に出たので、そのまま書いた。GAAP の 2025 年の純利益 20.9 億ドルでなく、シード・ヘッジの益を除いた 19.9 億ドルから出発した。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β 1.30 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。市場連動の収益に、アクティブ運用の流出と報酬率の低下が重なるので、保管銀行(7.75〜8.5%)より高く置いた。ただし無借金で現金が厚い(自己資本比率 74%)ので、上乗せは 1.0% にとどめた。流出の行方は k に足さず、筋書きの運用資産と悲観の確率で表した。