結論
フランクリン・リソーシズ(フランクリン・テンプルトン、BEN)は 1947 年創業、サンマテオ(カリフォルニア)に本社を置く総合運用会社で、2026 年 6 月末の運用資産(AUM)は 1.79 兆ドル。内訳は株式 7,569 億ドル、債券 4,414 億ドル、オルタナティブ 2,942 億ドル(過去最高)、マルチアセット 2,186 億ドル、現金運用 805 億ドル。創業家のジョンソン家が経営と株主の中心にいる。決算期は 9 月(台帳は 2025/12 と表記)。
2020 年のレッグ・メイソン、2022 年のレキシントン、2024 年のパトナムと買収で大きくなった会社で、自己資本 117 億ドルのうち、のれんと無形資産が 103 億ドルを占める。2024〜25 年は債券運用のウエスタン・アセットの元 CIO の不正で 2025 年度に 1,419 億ドルが流出し、GAAP の営業利益率は 6.9% まで落ちた。2026 年 6 月に SEC と 1 億ドルの民事罰で和解、ウエスタンの流出は止まり、全社で 2026 年度の 9 か月に 633 億ドルの純流入に戻った。
バリュー投資の観点では、堀は広くないが、オルタナ(私募)という伸びる部門を持ち、利益率が回復している。中立の筋書きは 2035 年の純利益を 20.5 億ドル(2026 年度の経済の値 12.7 億ドルから年 5% 台)とし、倍率は利益ベースの式(k 9.25%=基本 8.0% に quality +1.25%。資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)の上限 PER 約 12.8 倍の 9 割(11.6 倍)。確率で加重した価値は今の時価総額を 1 割弱上回るにとどまり、結論は「適正」。ただし同社は 3 年続けて買収の減損を出しており、悲観の確率を厚くした上での結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。運用会社は残るが、フランクリンが今より強いとは言えない。堀は広くなく、顧客の去らない力は商品ごとにまだらで、ウエスタンの 1 年 1,400 億ドルの流出がそれを示した。一方、オルタナの専門会社(レキシントン、クラリオン、ベネフィット・ストリート)は、資金が長く固定され、今より強くなる側にある。全体としては、堀はやや狭まる中でオルタナが補う中立を置く。
次にオーナー利益。運用会社は設備投資が小さく、利益の大半を株主に返せる。ただし同社は買収で大きくなったため、自己資本の 9 割近くがのれんと無形資産で、買収の償却と減損を費用として見ると、2025 年度の GAAP 純利益は 5.2 億ドル、経済の利益は 7.6 億ドルにすぎない。2026 年度はウエスタンの流出が止まり、償却と買収関連の報酬が減り、経済の利益は 12.7 億ドル前後に戻る見込み。株式報酬は年 2 億ドルで、費用として見る。
資本配分は評価が分かれる。3 年続けて減損を出したのは買収で価値を壊した証拠だが、現金と投資 54 億ドルに対し借入 24 億ドルと財務は健全で、PER 10 倍台で自社株買いを増やしている点は評価できる。安全域は、事業の PER が純現金を除くと 10 倍前後と低いこと。わからない所は、オルタナの手数料率と私募クレジットの信用で、確信度は中程度。
何で稼ぐ会社か
収益は運用資産に手数料率をかけた運用手数料が中心で、2025 年度の営業収益 87.7 億ドルのうち運用手数料が 69.8 億ドル(80%)、販売代行手数料 14.7 億ドル、株主サービス 2.6 億ドル。販売代行は通し費用で、費用側の販売費 20.1 億ドルとほぼ相殺され、利益にはほとんど残らない。運用資産は 4 つの塊で見る。
第 1 は株式(2026 年 6 月末 7,569 億ドル)。フランクリン、テンプルトン、クリアブリッジ、マーティン・カーリー、ロイス、パトナムの株式戦略で、手数料率は推定で約 48bp。第 2 は債券・MMF(5,219 億ドル)。ウエスタン・アセット(2026 年 4 月末で約 2,160 億ドル)、ブランディワイン、フランクリンの債券と、現金運用 805 億ドル。手数料率は約 23bp と低い。第 3 はオルタナティブ(2,942 億ドル)。レキシントン(私募株式のセカンダリー)、クラリオン(不動産)、ベネフィット・ストリート(私募クレジット、約 790 億ドル)、アルセントラ、K2(ヘッジファンドの組み合わせ)が核で、手数料率は約 70bp と最も高い。第 4 はマルチアセット(2,186 億ドル)で、パトナムのターゲットデートと資産配分、フランクリンの SMA・モデルポートフォリオ。
販売経路は、米国の証券会社・銀行の助言網、退職金制度、機関投資家、海外(運用資産の 29% が米国外で、欧州・中東・アフリカ 2,323 億ドル、アジア太平洋 1,911 億ドル)。費用は人件費が約 5 割で、2026 年度は 2025 年度比 3〜3.5% の増加が計画。バランスシートは現金 27 億ドル、投資 27 億ドル、会社の借入 24 億ドル。連結ファンド(CIP)は非遡及で、会社の価値には現金と同じ重さでは数えない。
優良さと弱いところ
優良さの柱は 4 つある。第 1 は広さ。株式・債券・オルタナ・マルチアセットを世界の主要市場で売り、特定の商品が不調でも全体で数字が残る(2026 年度の 9 か月は債券の流出を、オルタナとマルチアセットの流入が上回った)。第 2 はオルタナの専門会社を持つこと。レキシントンは私募株式のセカンダリーの大手、クラリオンは不動産、ベネフィット・ストリートは私募クレジットで、いずれも運用資産を長い期間固定でき、手数料率が高い。第 3 は資本の余力。会社の現金と投資 54 億ドルに対し借入は 24 億ドル。第 4 は創業家が長期の目線で経営していること。
弱い所は 4 つ。(1)堀の質。買収した会社の寄せ集めで、顧客が去らない力は商品ごとに違う。アクティブ株式は手数料率が下がり、ウエスタンの不祥事で 1 年に 1,400 億ドルが抜けた事実は、運用会社の看板が一つの不祥事で崩れうることを示す。(2)資本配分。2024 年度 3.9 億ドル、2025 年度 2.3 億ドル、2026 年度 0.3 億ドルと、買収した無形資産の減損を 3 年続けて出した。のれんと無形資産は自己資本の 9 割近く。(3)価格を決める力がない。手数料率は年 1〜2% 下がる。(4)費用の伸びが速く、利益率が運用資産の伸びほど上がらない。ウエスタンの事件は SEC 和解で区切りがついたが、元 CIO の刑事裁判は続く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の運用資産は 2025 年に約 147 兆ドル(BCG)で、同社の持ち分は約 1.2%。収益成長の 8 割超が市場の値上がりで、業界の利益率は 2010 年以来約 30% で横ばい。収益の伸び年 5.1% に対し費用は年 5.4%(負のオペレーティング・レバレッジ)。機関投資家の手数料は年 3% 下がり、ETF は 2025 年に過去最高の 1.5 兆ドルの純流入、純資産は 13 兆ドル超。個人向けの長期型プライベートファンドは 4 年で 5 倍超の 3,000 億ドル超に育った。
フランクリンの競合は 3 種類。(1)パッシブの大手(ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート)は、手数料率 0.03〜0.2% で株式の純流入を取る。同社のアクティブ株式はこの流れで手数料率が削られる側。(2)アクティブの競合(キャピタル・グループ、フィデリティ、T・ロウ・プライス、JP モルガン)は、助言網と退職金制度で同じ顧客を取り合う。T・ロウ・プライスはアクティブ株式の流出と手数料率の低下が続く会社で、フランクリンの株式部門の将来の姿を映す。(3)オルタナ専業(ブラックストーン、アポロ、KKR、アレス)は私募の資金調達を大手に集中させ、個人向けの窓口(ウェルス)で同じ顧客を取りに来る。フランクリンの私募は 2026 年度に 400 億ドルの調達見込みで、当初の目標 250〜300 億ドルを上回る。
構造の変化は 4 つ。パッシブ化、器の入れ替え(投信から ETF・SMA)、私募の個人向け開放、AI による費用削減(その分は顧客が値下げを求める)。循環の位置は、2026 年に市場が高く AUM は過去最高。会社は 2027 年度の調整後営業利益率を 29〜30%(相場の横ばいを前提)としている。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2025 年度は合計 9.3 億ドル(純利益の約 2 倍)。2026 年 4〜6 月は 5.2 億ドル(自社株買い 3.5 億ドル、配当 1.7 億ドル)と、買い戻しを増やしている。株式報酬は 9 か月で 1.5 億ドル(年 2 億ドル)で、正味の還元(payout_oku)から引く。創業家の持ち分が大きく、買収の判断は創業家の意向が強く出る。
M&A は 2020 年のレッグ・メイソン(のれんの大半)、2022 年のレキシントンとアルセントラ、2024 年のパトナム。買収の無形資産の減損は 2024 年度 3.9 億ドル、2025 年度 2.3 億ドル、2026 年度 0.3 億ドル。償却は 2025 年度 4.1 億ドルから 2026 年度 約 2.1 億ドルへ下がり、GAAP の利益を押し上げる(現金では動かない)。次の買収は私募に向かう見込みで、筋書きでは強気ほど買収(10 億ドル)を入れ、現金を使う。買収の失敗は倍率でなく利益率と確率で表す。
今回の和解費用 1 億ドル、特別退職給付 1.2 億ドル(9 か月)は、除いて見る。ただし退職給付は 2 年続けて出ており、平常費用として利益率に 1 ポイントほど織り込んだ。連結ファンド(CIP)の評価損益は、非支配持分が打ち消すので除く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フランクリンは、不祥事の底から戻る途中にある会社で、値段はまだ戻っていない。2026 年 6 月に SEC と DOJ の問題は区切りがつき、ウエスタンの流出は 4〜6 月に 11 億ドルまで縮み、全社の長期純流入は 9 か月で 633 億ドルに戻った。株式・債券・オルタナ・マルチアセットのすべてで流入がある。
伸びるのはオルタナである。運用資産は 2,942 億ドルで過去最高、2026 年度の私募の資金調達は 400 億ドルの見込み(当初目標は 250〜300 億ドル)で、そのうち個人向け(ウェルス)が約 2 割。レキシントンは私募株式のセカンダリーの大手で、手数料率は約 70bp。個人向けのセカンダリーと私募クレジットの需要が伸びれば、運用資産は年 9〜12% で増え、手数料率が年 1% 下がっても収益は 2 桁に近い。
費用面では、2026 年度の調整後営業利益率は 27% 以上、2027 年度は 29〜30%、長期は 30% 超の目標。償却が 4.1 億ドルから 2.1 億ドルへ下がり、買収関連の報酬も減るため、GAAP の利益は運用資産の伸び以上に増える。純現金の余力があり、PER 10 倍台で自社株買いを増やせる(2026 年 4〜6 月は 3.5 億ドル)。利益ベースの中立(PER 11.6 倍)でも、10 年後の時価総額は今の約 1.5 倍で、配当と自社株買いも入る。強気の見方では、ウエスタンが落ち着き、オルタナが 2 割を超える部門に育てば、利益は 2035 年に 30 億ドルに届く。
慎重な見方
流出は一過性でなく、ウエスタンの不祥事は数字の表れにすぎない。同社は買収で大きくなった会社で、買収した無形資産の減損を 2024 年度に 3.9 億ドル、2025 年度に 2.3 億ドル、2026 年度に 0.3 億ドルと 3 年続けて出した。のれんと無形資産は自己資本の 9 割近く。買収した運用会社の看板が傷むたびに価値が削られる構造である。
オルタナは競争が最も激しい分野に入っている。レキシントンのセカンダリー、ベネフィット・ストリートの私募クレジットは、ブラックストーン、アポロ、KKR、アレスと個人向けの窓口で同じ顧客を取り合い、これらの専業は規模と資金調達力で上回る。2025 年に起きた私募クレジットの信用事故と同種の問題が出れば、手数料率の低下と解約が同時に来る。セカンダリーの時価評価の甘さも、経営陣自身が「割引の戻りは総リターンの 2〜2.5 割」と述べるほど利益に効く。
株式部門はアクティブ株式の流出と手数料率の低下(業界は年 3% 下がる)の側にある。2026 年 4〜6 月の長期純流入 184 億ドルのうち、オルタナが約半分(91 億ドル)を占め、株式は 4〜6 月で 20 億ドルとほぼゼロ。調整後営業利益率 27% は、営業収益ではなく通し費用を除いた収益に対する値で、GAAP の経済の利益率は 16% にとどまる。2027 年度の目標は相場の横ばいが前提で、相場が下がれば届かない。創業家の経営で、買収の判断が資本効率より規模に向かう懸念もある。
どちらに重みを置いたか
事業の質は慎重な見方がやや強い。買収の減損を 3 年続けた事実と、株式の流出、競争の激しいオルタナ、通し費用を除く利益率の見かけは重い。そこで 10 年の悲観・やや悲観の合計を 41%、楽観・やや楽観の合計を 27% と、同じ領域の T・ロウ・プライス(悲観寄り 43%)より少しだけ軽く、アメリプライズやブラックロック(悲観寄り 3 割台前半)より厚く置いた。一方、値段は利益ベースの倍率で測ると強気と弱気がほぼ釣り合う。流出が止まり、利益率が戻りつつあり、償却が下がるので、中立でも 10 年後の時価総額は今の約 1.5 倍になる。結論は「適正」で、悲観の確率を厚く置いた上でのものだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 40.08 ドル207 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 25.61 ドル133 億ドル)。 今の値に割り戻すと 33.00 ドル171 億ドル、今との差 +4.7%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 9.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 74.41 ドル385 億ドル | 33.05 ドル171 億ドル | +240.9% | +13.0% | 7.52 ドル39 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 59.14 ドル306 億ドル | 30.54 ドル158 億ドル | +184.5% | +11.0% | 17.94 ドル93 億ドル |
| 中立 | 32% | 45.81 ドル237 億ドル | 28.02 ドル145 億ドル | +134.2% | +8.9% | 23.63 ドル122 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 27.06 ドル140 億ドル | 23.00 ドル119 億ドル | +58.8% | +4.7% | 12.51 ドル65 億ドル |
| 悲観 | 16% | 10.13 ドル52 億ドル | 15.46 ドル80 億ドル | −18.8% | −2.1% | 4.09 ドル21 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 40.08 ドル207 億ドル | 25.61 ドル133 億ドル | +108.4% | +7.6% | 65.69 ドル340 億ドル |
今の株価時価総額 31.52 ドル163 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:不祥事の流出が止まり、オルタナが育って利益率が 24% に届く 利益 30 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 74.41 ドル385 億ドル
市場が名目 6.5% で上がり、ウエスタンの流出は止まり、株式の流出も年 1% に縮む。オルタナは個人向けの長期型ファンドと私募クレジットで年 12% で増える。レキシントンの個人向けセカンダリーがブラックストーン・アポロとの競争に負けず、オルタナの経済の営業利益は 18.4 億ドル(全体の 46%)に育つ。会社の長期目標(調整後 30% 超)を上回り、買収(私募の専門会社に 10 億ドル)も成功する。
2035 年度の平均 AUM は 3.31 兆ドル(株式 1.17・債券 0.91・オルタナ 0.78・マルチ 0.45)、実効手数料率は 40.4bp(2026 年度は 43bp)、営業収益 166 億ドル、経済の営業利益 39.8 億ドル(利益率 24.0%)、純利益 30.1 億ドル(純現金の受取利息 0.6 億ドルを含む)。2026〜35 年度の正味の還元は 171 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 11,738(株式の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 49 億ドル・営業利益 15 億ドル。株式 AUM と手数料率
- 債券・MMF の運用手数料:数量 9,077(債券・MMF の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF の実効手数料率)→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。債券・MMF
- オルタナティブ(私募・不動産・私募クレジット)の運用手数料:数量 7,792(オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.01(オルタナの実効手数料率)→ 売上 50 億ドル・営業利益 18 億ドル。オルタナ
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分・SMA)の運用手数料:数量 4,496(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 16 億ドル・営業利益 4 億ドル。マルチアセット
- 販売代行・株主サービスなどの手数料と通し費用:数量 33,104(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる販売代行等の手数料率)→ 売上 32 億ドル・営業利益 −1 億ドル。販売代行等(通し)
倍率:純利益は買収した無形資産の償却と株式報酬を費用に入れ、減損・和解を除いた経済の値。自己資本はのれん・無形資産(103 億ドル)を含む帳簿の値。純現金は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.25%(基本 8.0%+quality +1.25%)、事業の ROE 20.3%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 14.8% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.9 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、不祥事の流出・買収した無形資産の減損・報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.2 割の PER 12.8 倍に置いた(検査の上限は時価総額 418 億ドル)。
確率:ウエスタンが落ち着き、オルタナが私募の大手と並ぶ速さで育ち、買収も成功する展開。T・ロウ・プライスの流出の過去 10 年とは逆の道で、1 割に届かない。
やや楽観 20% やや楽観:オルタナが主役になり、株式の流出は縮む 利益 25 億ドル · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 59.14 ドル306 億ドル
市場が名目 6% で上がり、株式の流出は年 1.5% に縮み、ETF・SMA の流入が相殺する。オルタナは年 10.5% で増え、経済の営業利益は 15.3 億ドル(全体の 47%)。競合に一部は取られるが、ウェルス経由の資金調達が目標を上回り続ける。買収は 5 億ドルの小さなものにとどまる。
2035 年度の平均 AUM は 3.00 兆ドル(株式 1.08・債券 0.83・オルタナ 0.69・マルチ 0.40)、実効手数料率は 39.3bp(2026 年度は 43bp)、営業収益 146 億ドル、経済の営業利益 32.7 億ドル(利益率 22.3%)、純利益 24.8 億ドル(純現金の受取利息 0.6 億ドルを含む)。2026〜35 年度の正味の還元は 158 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 10,774(株式の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 44 億ドル・営業利益 12 億ドル。株式 AUM と手数料率
- 債券・MMF の運用手数料:数量 8,338(債券・MMF の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF の実効手数料率)→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。債券・MMF
- オルタナティブ(私募・不動産・私募クレジット)の運用手数料:数量 6,902(オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.01(オルタナの実効手数料率)→ 売上 43 億ドル・営業利益 15 億ドル。オルタナ
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分・SMA)の運用手数料:数量 3,969(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。マルチアセット
- 販売代行・株主サービスなどの手数料と通し費用:数量 29,983(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる販売代行等の手数料率)→ 売上 29 億ドル・営業利益 −1 億ドル。販売代行等(通し)
倍率:純利益は買収した無形資産の償却と株式報酬を費用に入れ、減損・和解を除いた経済の値。自己資本はのれん・無形資産(103 億ドル)を含む帳簿の値。純現金は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.25%(基本 8.0%+quality +1.25%)、事業の ROE 17.8%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 13.5% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.4 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、不祥事の流出・買収した無形資産の減損・報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.2 割の PER 12.3 倍に置いた(検査の上限は時価総額 333 億ドル)。
確率:オルタナと ETF・SMA で流出を相殺し、利益率が会社の目標(30% 超)の手前まで戻る展開。2026 年度の流入が続く根拠はあるが、10 年続くかは別なので 2 割。
中立 32% 中立:株式は細り、オルタナが伸び、利益は年 5% 台で増える 利益 21 億ドル · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 45.81 ドル237 億ドル
市場は名目 5.5%(物価 3.5% + 実質 2%)で、株式は年 2% の流出が続き AUM は年 3.5%、債券・MMF は年 4.5%、マルチアセットは年 6.5%、オルタナは年 9% で増える。手数料率は物価並みには上がらず年 1.5〜2% 下がる(器の入れ替えと機関投資家の値引き)。オルタナが経済の営業利益 12.7 億ドル(全体の 47%)、競合のブラックストーン・アポロに資金調達の大半を取られる分は織り込む。景気後退を 2 回挟み、利益は 2〜3 割落ちる年がある。
2035 年度の平均 AUM は 2.73 兆ドル(株式 0.99・債券 0.77・オルタナ 0.61・マルチ 0.36)、実効手数料率は 38.2bp(2026 年度は 43bp)、営業収益 130 億ドル、経済の営業利益 26.9 億ドル(利益率 20.7%)、純利益 20.5 億ドル(純現金の受取利息 0.6 億ドルを含む)。2026〜35 年度の正味の還元は 145 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 9,881(株式の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 40 億ドル・営業利益 10 億ドル。株式 AUM と手数料率
- 債券・MMF の運用手数料:数量 7,653(債券・MMF の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF の実効手数料率)→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。債券・MMF
- オルタナティブ(私募・不動産・私募クレジット)の運用手数料:数量 6,103(オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.01(オルタナの実効手数料率)→ 売上 37 億ドル・営業利益 13 億ドル。オルタナ
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分・SMA)の運用手数料:数量 3,649(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。マルチアセット
- 販売代行・株主サービスなどの手数料と通し費用:数量 27,286(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる販売代行等の手数料率)→ 売上 25 億ドル・営業利益 −1 億ドル。販売代行等(通し)
倍率:純利益は買収した無形資産の償却と株式報酬を費用に入れ、減損・和解を除いた経済の値。自己資本はのれん・無形資産(103 億ドル)を含む帳簿の値。純現金は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.25%(基本 8.0%+quality +1.25%)、事業の ROE 15.3%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 12.3% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.8 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、不祥事の流出・買収した無形資産の減損・報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.0 割の PER 11.6 倍に置いた(検査の上限は時価総額 263 億ドル)。
確率:株式の流出と手数料率の低下は続くが、市場の値上がり(名目 5.5%)とオルタナの伸びで運用資産が年 5% 台で増える展開。落ち着き先として最も起こりやすい。
やや悲観 25% やや悲観:オルタナの伸びが鈍り、手数料率の低下が利益率の回復を打ち消す 利益 14 億ドル · PER 10.2 倍 · 株価時価総額 27.06 ドル140 億ドル
市場が名目 5%、株式は年 3.5% の流出で AUM は年 1.5% しか増えず、オルタナも競合に取られて年 6% にとどまる。手数料率は年 2〜2.5% 下がり、費用の伸びが収益を上回って利益率の回復が止まる。オルタナの経済の営業利益は 8.6 億ドル(全体の 49%)。買収の減損が 1〜2 回出る。
2035 年度の平均 AUM は 2.27 兆ドル(株式 0.83・債券 0.67・オルタナ 0.47・マルチ 0.29)、実効手数料率は 36.0bp(2026 年度は 43bp)、営業収益 102 億ドル、経済の営業利益 17.7 億ドル(利益率 17.4%)、純利益 13.7 億ドル(純現金の受取利息 0.6 億ドルを含む)。2026〜35 年度の正味の還元は 119 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 8,290(株式の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 32 億ドル・営業利益 7 億ドル。株式 AUM と手数料率
- 債券・MMF の運用手数料:数量 6,720(債券・MMF の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF の実効手数料率)→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。債券・MMF
- オルタナティブ(私募・不動産・私募クレジット)の運用手数料:数量 4,747(オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.01(オルタナの実効手数料率)→ 売上 28 億ドル・営業利益 9 億ドル。オルタナ
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分・SMA)の運用手数料:数量 2,946(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。マルチアセット
- 販売代行・株主サービスなどの手数料と通し費用:数量 22,703(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる販売代行等の手数料率)→ 売上 20 億ドル・営業利益 −1 億ドル。販売代行等(通し)
倍率:純利益は買収した無形資産の償却と株式報酬を費用に入れ、減損・和解を除いた経済の値。自己資本はのれん・無形資産(103 億ドル)を含む帳簿の値。純現金は余った現金として別に足す。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.25%(基本 8.0%+quality +1.25%)、事業の ROE 10.6%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 9.9% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=11.4 倍が上限。利益の質(市場連動の運用報酬に、不祥事の流出・買収した無形資産の減損・報酬率の低下が重なる)から、上限の 9.0 割の PER 10.2 倍に置いた(検査の上限は時価総額 156 億ドル)。
確率:オルタナの競争が激しく手数料率の低下が止まらず、利益率の回復が途中で止まる展開。買収の減損が続いた同社の履歴から、中立に近い厚さを置く。
悲観 16% 悲観:構造で負け、運用会社としての優良さを失う 利益 5 億ドル · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 10.13 ドル52 億ドル
構造で負ける。アクティブ株式はパッシブに置き換えられて AUM が年 1% 縮み、ウエスタンの後遺症で債券の伸びも 1% にとどまる。オルタナは私募クレジットの信用事故とブラックストーン・アポロとの競争で年 2% の伸びに落ち、手数料率が年 3% 下がる(運用会社として値を決める力を失う)。のれんの減損 8 億ドルを含め、利益率は 8.5% まで下がる。
2035 年度の平均 AUM は 1.77 兆ドル(株式 0.66・債券 0.56・オルタナ 0.34・マルチ 0.21)、実効手数料率は 32.1bp(2026 年度は 43bp)、営業収益 72 億ドル、経済の営業利益 6.1 億ドル(利益率 8.5%)、純利益 5.1 億ドル(純現金の受取利息 0.6 億ドルを含む)。2026〜35 年度の正味の還元は 80 億ドル。
- 株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料:数量 6,623(株式の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM))→ 売上 23 億ドル・営業利益 3 億ドル。株式 AUM と手数料率
- 債券・MMF の運用手数料:数量 5,632(債券・MMF の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(債券・MMF の実効手数料率)→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。債券・MMF
- オルタナティブ(私募・不動産・私募クレジット)の運用手数料:数量 3,358(オルタナの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.01(オルタナの実効手数料率)→ 売上 18 億ドル・営業利益 4 億ドル。オルタナ
- マルチアセット(ターゲットデート・資産配分・SMA)の運用手数料:数量 2,070(マルチアセットの平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(マルチアセットの実効手数料率)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。マルチアセット
- 販売代行・株主サービスなどの手数料と通し費用:数量 17,684(運用資産全体の平均 AUM(億ドル))× 価格 0.00(運用資産全体にかかる販売代行等の手数料率)→ 売上 15 億ドル・営業利益 −2 億ドル。販売代行等(通し)
倍率:稼ぐ力で測る(SCHEMA §1-3)。構造的に負けた筋書きで、ROE が k を下回るため PER は 1÷k が上限になる。ROE 5.7% が k 9.25%(基本 8.0%+quality +1.25%)以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で、PER は 1÷k=10.8 倍が上限。上限の 9.5 割の PER 10.3 倍(時価総額 55 億ドルが上限)に置いた。PBR は結果であって根拠ではない。
確率:私募クレジットの信用事故、ウエスタンの後遺症、アクティブ株式の縮小が重なり、買収の減損も続く展開。業界の目安(1 割)より厚く、同社の過去の下げ(リーマン −65%)も考えて 16%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
株式(アクティブ株式・株式 ETF)の運用手数料
フランクリン、テンプルトン、クリアブリッジ、マーティン・カーリー、ロイス、パトナムの株式戦略と株式 ETF の運用手数料。
| 数量株式の平均 AUM(億ドル) | 価格株式の実効手数料率(収益 ÷ 平均 AUM) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6,250 | 0.01 | 31 | 4 |
| 10 年後 中立 | 9,881 | 0.00 | 40 | 10 |
取り方:2025 年度の平均 AUM を約 0.625 兆ドルと置いた(年末 6,862 億ドル、運用資産全体の平均 1.607 兆ドルに合わせた推定)。手数料率は全体の運用手数料 0.43% と、株式が最も高く債券が最も低いことから約 50bp と推定(開示なし)。営業利益は GAAP の営業利益 6.0 億ドルに減損 2.3 億ドル・特別退職給付 0.7 億ドルを足し戻した経済の値 9.0 億ドルを、手数料の重い塊ほど高く配った推定(償却と買収関連の報酬は費用のまま)。
債券・MMF の運用手数料
ウエスタン・アセット、ブランディワイン、フランクリンの債券と現金運用(MMF)の運用手数料。
| 数量債券・MMF の平均 AUM(億ドル) | 価格債券・MMF の実効手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,520 | 0.00 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7,653 | 0.00 | 15 | 3 |
取り方:2025 年度の平均 AUM を約 0.55 兆ドル(債券 0.475、現金 0.077)と置いた。年末は債券 4,387 億ドル・現金 785 億ドルで、ウエスタンの流出(年 1,419 億ドル)で期中に減った。手数料率は債券が約 25bp、MMF が約 10bp で全体で約 24bp と推定。利益率は経済の営業利益の配分(推定)。
オルタナティブ(私募・不動産・私募クレジット)の運用手数料
レキシントン(私募株式のセカンダリー)、クラリオン(不動産)、ベネフィット・ストリート(私募クレジット)、アルセントラ、K2 などの運用手数料。
| 数量オルタナの平均 AUM(億ドル) | 価格オルタナの実効手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,450 | 0.01 | 18 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6,103 | 0.01 | 37 | 13 |
取り方:2025 年度の平均 AUM を約 0.245 兆ドルと置いた(年末 2,639 億ドル、2026 年 6 月末 2,942 億ドル)。手数料率は約 72bp と推定(私募は管理報酬 1〜1.6%、不動産・クレジットは 0.5〜0.8% の混合)。成功報酬は少ないので含めない。営業利益は経済の営業利益の配分(推定)。
マルチアセット(ターゲットデート・資産配分・SMA)の運用手数料
パトナムのターゲットデートと資産配分、フランクリンの SMA・モデルポートフォリオ・マルチアセット ETF の運用手数料。
| 数量マルチアセットの平均 AUM(億ドル) | 価格マルチアセットの実効手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,850 | 0.00 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,649 | 0.00 | 12 | 2 |
取り方:2025 年度の平均 AUM を約 0.185 兆ドルと置いた(年末 1,939 億ドル、2026 年 6 月末 2,186 億ドル)。手数料率はパトナムの資産配分と SMA の混合で約 42bp と推定。営業利益は経済の営業利益の配分(推定)。
販売代行・株主サービスなどの手数料と通し費用
販売代行手数料(2025 年度 14.7 億ドル)、株主サービス手数料(2.6 億ドル)、その他(0.5 億ドル)。同額近い販売費が費用に立つ通し収益。
| 数量運用資産全体の平均 AUM(億ドル) | 価格運用資産全体にかかる販売代行等の手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16,067 | 0.00 | 18 | −2 |
| 10 年後 中立 | 27,286 | 0.00 | 25 | −1 |
取り方:2025 年度の営業収益 87.7 億ドルから運用手数料 69.8 億ドルを引いた約 17.9 億ドルを、AUM 全体 1.607 兆ドルに対する約 11bp と置いた。費用側の販売・流通費 20.1 億ドルが通し分を超えるので、利益はわずかな赤字(−8.5%)とし、本社の共通費の配賦とともにここに入れた。
リスクと懸念
オルタナの競争と信用
レキシントン、ベネフィット・ストリートは、ブラックストーン・アポロ・KKR・アレスと個人向けの窓口で同じ顧客を取り合う。私募クレジットは 2025 年にファースト・ブランズなど信用事故が出た分野で、延滞が増えれば解約と手数料率の低下が同時に来る。運用資産の 2,942 億ドル(16%)が最も収益性の高い部門であり、ここが崩れると経済の利益の 4 割近くが消える。
買収した無形資産の減損の繰り返し
2024 年度 3.9 億ドル、2025 年度 2.3 億ドル、2026 年度 0.3 億ドルと、買収した無形資産の減損が 3 年続いた。のれんと無形資産は 103 億ドルと自己資本の 9 割近くで、運用会社の流出や手数料率の低下が続けば追加の減損が出る。現金ではなく会計の損失だが、買収で価値を壊した証拠として読む。
ウエスタン・アセットの後遺症
SEC との和解(民事罰 1 億ドル)と DOJ の対象外で区切りはついたが、元 CIO の刑事裁判は続く。運用資産は約 2,160 億ドルまで縮み、顧客の返還を求める訴訟、他の戦略への波及、人材流出が残る。2025 年度の流出 1,419 億ドルのうち、取り戻せた分は少ない。
アクティブ株式の流出と手数料率の低下
株式は運用資産 7,569 億ドルで最大の部門だが、純流入は 2026 年 4〜6 月に 20 億ドルとほぼゼロ。アクティブ株式の手数料率は ETF・SMA への器の入れ替えと機関投資家の値引きで年 2% 前後下がる。T・ロウ・プライスと同じ圧力で、市場の値上がりに頼る伸びが続く。
利益率の回復が途中で止まる
調整後営業利益率の目標(2027 年度 29〜30%)は相場の横ばいが前提で、相場の下落には弱い。費用は 2026 年度に 3〜3.5% 増え、販売費と賞与が運用資産の伸びと連動する。特別退職給付(2025 年度 0.7 億ドル、2026 年度 9 か月 1.2 億ドル)が 2 年続いた点も、構造の費用が残る兆しである。
資本配分と創業家の影響
創業家が経営の中心で、買収は規模を優先しやすい。次の買収が私募の専門会社なら、高い買収価格でのれんが増える。自社株買いは PER 10 倍台で増やしているが、買収と競合した場合に株主の取り分が減る。のれんは自己資本の 9 割近くあり、次の買収が割高なら減損の余地がさらに増える。
今後の分かれ目
- オルタナの純流入が 4 四半期連続で年 10% 超(年 400 億ドル超)を保ち、私募の調達が目標を上回り続ける
- 強気の見方が強くなると見て、楽観とやや楽観の確率を上げ、オルタナの AUM の伸びを年 9% から 12% に直して見直す。
- ウエスタンの流出が再び月 10 億ドルを超える、または元 CIO の裁判で運用側に新たな責任が及ぶ
- 後遺症が長引くと見て、債券の AUM の伸びを下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 調整後営業利益率が 2027 年度に 30% 近くに届かず 27% 前後で止まる
- 経済の利益率の回復が途中で止まると見て、中立の利益率を 20.7% から 19% に直し、利益を 1 割ほど下げる。
- 私募クレジットの延滞が増え、ベネフィット・ストリートの運用資産が減少に転じる
- オルタナの手数料率と AUM の伸びを同時に下げ、悲観の確率を 16% から 22% に上げる。
- 新たな買収(私募の専門会社)を 10 億ドル超で発表する
- 買収の価格と、運用資産・手数料率の伸びの上乗せを比べる。高値なら楽観の筋書きでも利益率の上乗せは小さく、のれんが増えて減損の余地が増える。
- 株式の純流出が年 5% 超に戻り、手数料率が 38bp を割る
- アクティブ株式が T・ロウ・プライス型の縮小に入ったと見て、株式の AUM の伸びを年 3.5% から 1.5% に下げる。
見ておくもの
- 月次の AUM と純流入(株式・債券・オルタナ・マルチアセット別、毎月 4〜5 日前後に発表。2026 年 9 月末分と決算は 2026-11-06 予定)
- オルタナの純流入と私募の資金調達(2026 年度 400 億ドルの見込み)、ウェルス経由の割合
- ウエスタン・アセットの純流入出と AUM(2,160 億ドルの前後)、元 CIO の刑事裁判の行方
- 調整後営業利益率(2026 年度 27% 以上、2027 年度 29〜30% の目標)と費用の伸び(3〜3.5%)
- 無形資産の減損・特別退職給付の有無(平常費用として織り込み済みか)
- 自社株買いの規模(2026 年 4〜6 月 3.5 億ドル)と買収の発表(私募の専門会社)
- 私募クレジットの延滞率と、セカンダリーの割引・評価の動き
- 株式の純流出と実効手数料率(43bp 前後からの低下の速さ)
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP で 34 倍、経済の利益で約 21 倍、2026 年度見込みで 12.6 倍)を見る前に、4 つの塊(株式・債券・オルタナ・マルチアセット)と通し費用の「平均 AUM × 手数料率」で収益を積み、経済の営業利益率(減損・退職給付・和解を除き、償却と買収関連の報酬は費用のまま)から利益を組んだ。倍率は利益ベースの上限 PER(k 9.25%=基本 8.0% に quality +1.25%、g は 4%、RONIC は ROE と k の中間)の 9 割に置いた。結論の「適正」は、2026 年度に入った利益率の回復が続くこと(調整後 27%→30%)に依存する。この点は悲観の確率 16% とやや悲観 25% で厚く織り込んだ。2025 年度の GAAP 純利益 5.2 億ドルでなく、減損・退職給付を除き償却は費用のままの 7.6 億ドルから出発した。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β 1.38 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.25% = 9.25%。市場連動の収益に、不祥事による流出・買収で膨らんだ無形資産の減損・アクティブ運用の報酬率の低下が重なるので、T・ロウ・プライス(9.0%)より高く置いた。不祥事の後遺症は k に足さず、筋書きの数量・手数料率と悲観の確率で表した。