結論
KKR は、総運用資産 7,965 億ドル(2026 年 6 月末、前年比 16% 増)、手数料を生む運用資産 6,384 億ドル(15% 増)の世界有数のオルタナティブ運用会社で、生命保険・年金のグローバル・アトランティック(運用資産 2,200 億ドル)を連結する。収益は 3 本。(1)運用事業の管理報酬と手数料(手数料関連利益 FRE は直近 12 か月で 42 億ドル、利益率 70%、2026 年 4〜6 月期は 12.1 億ドルで 37% 増)、(2)保険の運用収益と契約者への支払いの差(保険の営業利益 2025 年 11.1 億ドル)、(3)成功報酬・自己投資・戦略保有(2025 年に実現成功報酬と実現投資収益で 9.1 億ドル、戦略保有 1.6 億ドル)。
最初に決めたのは利益の見方である。GAAP 純利益は評価損益で大きく振れ、2025 年は 22.5 億ドル(2024 年 30.8 億ドル)。会社の調整後純利益は 43.8 億ドルで、差の大半は保険の投資損益と未実現の成功報酬、調整後は株式報酬(2025 年 7.2 億ドル)を足し戻した値でもある。そこで、実現ベースの調整後純利益から株式報酬を税引きで引いた「オーナー利益」(2025 年 約 40 億ドル)を軸に置き、GAAP との差は悲観の確率と谷の倍率で受けた。株数は普通株だけでなく交換できる証券と強制転換優先株を含む全体 9.45 億株で、時価総額は約 815 億ドル(台帳の自動計算 772 億ドルの 1.06 倍)。
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、調達と保険という 2 つの資金源の堀は今より厚いと見る。一方で報酬率の低下、個人向けの解約、保険の一般勘定に積んだ私募資産の信用損失という振れがある。資本コスト 9.0%(基本 8.0% + quality 1.0%)で、利益ベースの正当化 PER(資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)の上限の 9 割前後を当てた確率加重の価値は、会社全体の時価総額 815 億ドルに対し約 28% 下(やや割高)。優良さへの評価は高いが、利益の質に疑問が残り、深い安全域は無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。世界の貯蓄が私募へ移る流れは続き、資金の預け先として最上位に近く、さらに保険の資金源を持つ会社は、10 年後も存在し、おそらく今より強い。堀は調達の規模と実績、保険の資金、投資の情報量で、価格を決める力は強くない(報酬率は競争で下がる)。
オーナー利益は、実現ベースの調整後純利益から株式報酬を税引きで引いた値で見る:2025 年 約 40 億ドル、直近 12 か月 約 46 億ドル。GAAP 純利益(2025 年 22.5 億ドル)はそれより小さく、差の中心は保険の投資損益(2025 年に税引き前 21 億ドルの損、一部は評価の振れ)と、未実現の成功報酬・戦略保有の評価益で、保険の損を実損と見るか評価の振れと見るかが評価の分かれ目になる。伸びに要る元手は大きく(保険の資本・自己投資)、事業の ROE は約 14%、株主に返せる利益の割合は長期で 6〜7 割。
安全域の問題は 3 つ:保険の一般勘定の信用損失、成功報酬の振れ、調整後の数字の見かけ。資本コスト 9.0%、長期成長 4.0%、事業の ROE 14%・RONIC 11.3% の利益ベースの式で 10 年目の利益の約 13 倍が正当化され、利益の質からその 9 割の約 12 倍に置くと、オーナー利益に対する今の PER(会社全体で約 16 倍)を下回る。事業の質への確信は高いが、利益の質への確信は中程度で、安全域は小さい。
何で稼ぐ会社か
KKR の収益は大きく 3 つに分かれる。第 1 は運用事業で、ファンドから受け取る管理報酬(2025 年に 41 億ドル、2026 年 4〜6 月期は 12.5 億ドル)、手数料関連の成功報酬、取引手数料(資本市場事業。2025 年は 8 億ドル規模で約 85% が債務案件)が FRE(2025 年 37.1 億ドル、利益率 69%)を生む。手数料を生む運用資産(FPAUM)は 2026 年 6 月末で 6,384 億ドル:プライベート・エクイティ 1,681 億、実物資産(インフラ・不動産)1,753 億、クレジットと流動性戦略 2,950 億ドル。永続資本は運用資産の 42%(手数料を生む分の 50%)。
第 2 は保険のグローバル・アトランティック。年金・生命保険を売って資金(運用資産 2,200 億ドル、うち信用資産 1,640 億)を集め、KKR の運用に回す。利益は運用収益から契約者への支払いを引いた差(スプレッド)で、2025 年の営業利益は 11.1 億ドル、2026 年上期は 5.5 億ドルと前年上期(5.4 億ドル)とほぼ同じ。外部の保険会社向けの運用受託(アイビーなど 620 億ドル)も含む。
第 3 は自己資本を使う投資と成功報酬。実現した成功報酬(2025 年の純額 4.9 億ドル、2026 年上期 4.1 億ドル)、自己資金の実現投資収益、戦略保有(企業の少数株式を長く持つ事業。2025 年の営業利益 1.6 億ドル)。2025 年は過去の成功報酬の返還義務 2.1 億ドルが実現益を押し下げた。2026 年 4〜6 月期は投資の売却(出口)が過去最高の勢いで、純実現成功報酬は前年の約 2 倍になった。
価格にあたる報酬率は、手数料を生む資産に対し管理報酬で約 0.9〜1.0%、まだ手数料を払っていない資産 720 億ドルの平均は約 0.9%。費用の中心は人件費と株式報酬。
優良さと弱いところ
優良さは 4 点で見る。第 1 は資金調達力:直近 12 か月の調達が 1,330 億ドル(2025 年は過去最高の 1,290 億ドル)で、年金・保険・個人投資家に選ばれる最上位の名前。第 2 は保険という資金源で、グローバル・アトランティックの運用資産 2,200 億ドルが運用事業の安定した顧客になり、他の多くの運用会社が持たない資金を生む。ここはアポロ(アテネ)と並ぶ強みである。第 3 は分散:プライベート・エクイティ・インフラ・クレジット・不動産・保険・戦略保有・資本市場と収益の柱が広く、1 本が崩れても他が支える。第 4 は FRE の利益率 70% の軽い費用構造。
弱い所は 5 つ。(1)利益の質:調整後純利益と GAAP 純利益の差が 2 倍近く(2025 年 43.8 億対 22.5 億ドル)あり、保険の投資損益・未実現の成功報酬・戦略保有の評価益が振れる。(2)保険の一般勘定は私募の信用資産が中心で、金利 5% が続く世界で信用事故があると資本を削る。保険の営業利益は 2026 年上期に横ばい。(3)成功報酬は出口の市場に左右される。(4)報酬率は新しい商品で下がりやすい。(5)株式報酬が年 7 億ドルあり、調整後の数字より GAAP のほうが実態に近い。経営はジョー・ベイとスコット・ナタルの共同 CEO の二人体制。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の運用資産は約 147 兆ドルで、オルタナティブはそのうち約 20 兆ドル前後。機関投資家がパッシブから一部をオルタナティブへ移し、個人向けの長期型ファンドは 4 年で 5 倍超の 3,000 億ドル超に膨らんだ。エバーグリーン型の運用資産は 2025 年の 3.2 兆ドルから 2030 年に 5.2 兆ドルの見通し(Ropes & Gray)。
競争は上位に集中する。2026 年 4〜6 月期でブラックストーンの総運用資産は 1.35 兆ドル(11% 増)、アポロは約 1.05 兆ドルで保険会社アテネを持ち、アレスは 6,713 億ドルで調達が過去最高(360 億ドル)、ブルックフィールドは手数料を生む資本 6,720 億ドル。KKR の FRE は 12 億ドルで 37% 増と、伸びでは最上位に近い。保険を抱える点はアポロと同じで、個人向けの販売(K シリーズ)ではブラックストーン・アポロを追う位置にある。
循環の位置は、2026 年は実現した成功報酬が前年の約 2 倍に増えた山に近い。私募クレジットでは非上場 BDC の解約請求が増える局面があり(KKR の FS Income Trust は 1〜3 月期に約 6.3% の請求で、その約 8 割に応じた)、グローバル・アトランティックのソフトウェア向け貸出は約 2.5% と低く、KKR は資本の 9 割超が 8 年以上拘束されていると説明するが、保険の信用資産の質は注視点になる。金利が 5% で続く世界では、レバレッジをかける買収の採算が悪く、資金はインフラ・私募クレジット・保険へ流れる。
資本政策と M&A
還元は配当が小さく、調整後純利益に対する配当性向は 15〜20%。残りは保険の資本・戦略保有・ファンドへの自己投資・買収に回す。自社株買いは 2025 年 12 月〜2026 年 7 月で 3.5 億ドル、約 390 万株(平均取得価格は今の株価とほぼ同じ水準)だが、主に株式報酬で増える株を相殺する買い戻しで、正味の株主還元は配当にほぼ限られる(株式報酬は費用として利益から引いてある)。
買収は 2026 年に運用資産約 160 億ドルのアルクトスを 14 億ドル(追加で最大 5.5 億ドルを株価・業績連動)で 5 月に完了。グローバル・アトランティックは完全に連結し、簿価は 118 億ドル(前年 96 億ドル)。借金は額面 93 億ドル(税引き後の加重平均クーポン約 3%、平均満期約 15 年)、現金と短期投資 53 億ドル、運用事業の投資 86 億ドル、格付けは S&P・フィッチ A。強制転換優先株(Series D)は 2028 年 3 月までに約 2,140 万株に転換する予定。買われる側になる可能性は小さい。 点検:自社株買い(2025 年 12 月〜2026 年 7 月 3.5 億ドル)は株式報酬の相殺が主で、正味の還元に数えていないので、今の株数との二重はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
KKR は、世界の資金が私募へ移る受け皿のうち、最も伸びが速い 1 社である。手数料を生む運用資産は前年比 15% 増の 6,384 億ドル、直近 12 か月の調達 1,330 億ドル、FRE は 37% 増の 12.1 億ドルで、利益率は 70% に達した。永続資本は運用資産の 42%、手数料を生む分の 50% で、管理報酬は景気が悪くても止まりにくい。
保険は安定した資金源で、グローバル・アトランティックの簿価は 1 年で 96 億から 118 億ドルへ増えた。個人向け(K シリーズ)の流入は 2026 年に急増し、約 85% がプライベート・エクイティとインフラに入るため、私募クレジットの解約騒ぎの影響は小さい。アルクトスの買収で、スポーツと GP ソリューション・セカンダリーという新しい柱が加わった。
成功報酬は、対象の運用資産 4,100 億ドルのうち 3,250 億ドルがすでに簿価を超え、出口が戻れば実現していく。2026 年上期の純実現成功報酬は 4.1 億ドルで、通年で 2025 年(4.9 億ドル)を上回る勢い。10 年で運用資産が 2.5 倍、オーナー利益が 2.3 倍以上になれば、利益ベースの倍率でも今の値段を上回る。
慎重な見方
今の利益は見かけが大きい。調整後純利益 43.8 億ドル(2025 年)は、株式報酬 7.2 億ドルと保険の投資損を足し戻した値で、GAAP 純利益は 22.5 億ドルと約半分。2026 年 4〜6 月期の GAAP 純利益は 6.6 億ドルで、調整後の約 15 億ドルの 4 割強。会社が示す数字は実態より良く見える。
保険の営業利益は 2026 年上期に 5.5 億ドルと前年上期とほぼ同じで、運用資産が増えても利ざやが縮み、伸びていない。一般勘定は私募クレジットが中心で、金利 5% が続けば借り手の返済負担が重く、信用事故が出れば資本を削る。非上場 BDC には解約請求が来ており、個人向けも安泰とは言えない。
報酬率は新しい商品で下がり続け、低報酬の保険の受託の比率が上がると収益率が下がる。成功報酬は出口の市場しだいで、2025 年は過去の成功報酬の返還義務で 2.1 億ドル押し下げられた。利益ベースで正当化される倍率(10 年目の利益の約 13 倍、置いたのは約 12 倍)は、今の水準を下回り、安全域は無い。
どちらに重みを置いたか
事業の質と伸びは強気の見方が強いが、利益の質(GAAP との差)と保険の利ざやは慎重な見方が強い。10 年の確率は楽観 9%・やや楽観 23%・中立 30%・やや悲観 23%・悲観 15% と悲観側にやや厚く置いた(同じ領域のブラックストーンより悲観が 1 ポイント厚く、悲観の深さも保険の損失を足して深い)。10 年の構造的な負け 15% は、信用損失・報酬の崩れ・保険の損失で優良な運用会社でなくなる筋書き。確率で加重した価値は今の時価総額(会社全体)を約 28% 下回り、結論は「優良だが、やや割高」。 点検(2026-10-19):自己投資・成功報酬の率 0.14%→0.16% は名目の運用資産に理由なく上げていたので据え置きに直し、利益・還元・式 PER を流し直した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 101.81 ドル962 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 26.67 ドル252 億ドル)。 今の値に割り戻すと 60.34 ドル570 億ドル、今との差 −35.2%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 181.34 ドル1,714 億ドル | 39.23 ドル371 億ドル | +136.9% | +9.0% | 19.85 ドル188 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 144.56 ドル1,366 億ドル | 34.01 ドル321 億ドル | +91.8% | +6.7% | 41.07 ドル388 億ドル |
| 中立 | 30% | 111.13 ドル1,050 億ドル | 29.25 ドル276 億ドル | +50.8% | +4.2% | 42.11 ドル398 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 62.53 ドル591 億ドル | 20.74 ドル196 億ドル | −10.5% | −1.1% | 19.15 ドル181 億ドル |
| 悲観 | 15% | 30.16 ドル285 億ドル | 11.85 ドル112 億ドル | −54.9% | −7.6% | 6.30 ドル60 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 101.81 ドル962 億ドル | 26.67 ドル252 億ドル | +38.0% | +3.3% | 128.49 ドル1,214 億ドル |
今の株価時価総額 93.09 ドル880 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:永続資本と保険が収益の中心になり、報酬率が保たれる 利益 134 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 181.34 ドル1,714 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 1.9 兆ドル(年 11%)。永続資本(今は運用資産の 42%)が 5 割を超え、個人向けとインフラ・保険の受託が調達の中心になる。グローバル・アトランティックは運用資産 4,700 億ドルに育ち、スプレッドが保たれ、外部への再保険枠(アイビーなど)も広がる。報酬率は年 0.5% 下がるにとどまる。手数料関連利益は 137 億ドル、営業利益 178 億ドル、オーナー利益は約 134 億ドル。10 年の正味の還元は 371 億ドル。堀(調達力・保険の資金源・投資の実績)は広がり、共同 CEO 体制も円滑に続く。 自己投資・成功報酬の実現収益率は、運用資産が名目で伸びる分に物価を重ねず、今の 0.14% を基点に実績の上振れ(成功報酬が出やすい相場)で 1.10 倍。
- 資産運用(手数料事業):数量 19,344(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの手数料収益率(管理報酬+手数料関連成功報酬+取引手数料))→ 売上 185 億ドル・営業利益 137 億ドル。手数料を生む資産 年 11.5%(アルクトス・インフラ・個人向け)
- 保険(グローバル・アトランティック):数量 4,681(保険の運用資産(億ドル))× 価格 0.01(運用資産あたりの営業利益率(スプレッド))→ 売上 23 億ドル・営業利益 23 億ドル。保険の運用資産 年 7.5〜10%
- 自己投資・成功報酬・戦略保有:数量 21,974(総運用資産(億ドル))× 価格 0.00(総運用資産あたりの実現収益率)→ 売上 35 億ドル・営業利益 35 億ドル。成功報酬が平常を保つ
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は自己投資と保険を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 17.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 13.1% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.9 倍が上限。利益の質(自己投資と保険の評価損益・成功報酬が市場で振れる)から、上限の 9.2 割の PER 12.8 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1862 億ドル)。
確率:永続資本・個人向け・保険が定着し、グローバル・アトランティックの利ざやも保つ。10 年を通じて実現する確率は 1 割弱。
やや楽観 23% やや楽観:運用資産は年 10%、保険と手数料が安定 利益 111 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 144.56 ドル1,366 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 1.7 兆ドル(年 10%)。個人向けは数年の高い純流入が落ち着き、インフラとクレジットが伸びる。保険はアポロ(アテネ)との競争の中でも一定のシェアを保ち、グローバル・アトランティックの簿価は自己資本の積み上げとともに増える。保険の運用資産は 4,300 億ドル。報酬率は年 1% ずつ下がる。景気後退を 1〜2 回挟み利益が 3〜4 割落ちる年があるが、ならすと年 11.1%。成功報酬は平常を保ち、アルクトスとインフラの上乗せで調達は途切れない。手数料関連利益は 113 億ドル、営業利益 148 億ドル、オーナー利益は約 111 億ドル。10 年の正味の還元は 321 億ドル。 自己投資・成功報酬の実現収益率は、運用資産が名目で伸びる分に物価を重ねず、今の 0.14% を基点に1.05 倍。
- 資産運用(手数料事業):数量 16,985(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの手数料収益率(管理報酬+手数料関連成功報酬+取引手数料))→ 売上 154 億ドル・営業利益 113 億ドル。手数料を生む資産 年 10%
- 保険(グローバル・アトランティック):数量 4,266(保険の運用資産(億ドル))× 価格 0.00(運用資産あたりの営業利益率(スプレッド))→ 売上 21 億ドル・営業利益 21 億ドル。保険の運用資産 年 6.5〜9%
- 自己投資・成功報酬・戦略保有:数量 20,080(総運用資産(億ドル))× 価格 0.00(総運用資産あたりの実現収益率)→ 売上 30 億ドル・営業利益 30 億ドル。成功報酬は平常
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は自己投資と保険を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 15.3%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 12.1% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.4 倍が上限。利益の質(自己投資と保険の評価損益・成功報酬が市場で振れる)から、上限の 9.2 割の PER 12.3 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1486 億ドル)。
確率:おおむね想定どおり伸び、規制も大きくは変わらない。
中立 30% 中立:運用資産は年 8.5%、報酬率は年 1.5% 下がり、ROE は 14% 利益 91 億ドル · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 111.13 ドル1,050 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 1.5 兆ドル(年 9%。前半は 11〜13%、後半は 8.5% に鈍る)。クレジット・インフラ・個人向けが伸びるが、報酬率は年 1.5% 下がり、保険の利ざやは年 1% ずつ薄くなる。保険の運用資産は 4,000 億ドル。この間に景気後退を 2 回挟み、成功報酬が半減する年が出る。手数料関連利益は 93 億ドル(2025 年の 37 億ドルの約 2.5 倍)、営業利益は 122 億ドル、オーナー利益は約 91 億ドル(2025 年の約 2.3 倍)。10 年の正味の還元は 276 億ドル。優良な運用会社の地位は保つが、アポロ(アテネ)・ブラックストーンとの差は縮まらない。 自己投資・成功報酬の実現収益率は、運用資産が名目で伸びる分に物価を重ねず、今の 0.14% を基点に据え置く。
- 資産運用(手数料事業):数量 14,888(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの手数料収益率(管理報酬+手数料関連成功報酬+取引手数料))→ 売上 129 億ドル・営業利益 93 億ドル。手数料を生む資産 年 8.5%(前半は 11〜13%)・報酬率 年 -1.5%
- 保険(グローバル・アトランティック):数量 3,978(保険の運用資産(億ドル))× 価格 0.00(運用資産あたりの営業利益率(スプレッド))→ 売上 19 億ドル・営業利益 19 億ドル。保険の運用資産 年 6%・利ざや 年 -1%
- 自己投資・成功報酬・戦略保有:数量 17,591(総運用資産(億ドル))× 価格 0.00(総運用資産あたりの実現収益率)→ 売上 25 億ドル・営業利益 25 億ドル。成功報酬は平常(景気後退を 2 回挟む)
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は自己投資と保険を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 13.4%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 11.2% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.9 倍が上限。利益の質(自己投資と保険の評価損益・成功報酬が市場で振れる)から、上限の 9.0 割の PER 11.6 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1167 億ドル)。
確率:議論の落としどころ。調達は続くが報酬率は下がり、利益の伸びは年 8〜9% に鈍る。
やや悲観 23% やや悲観:報酬率の低下が速く、保険の利ざやが縮む 利益 57 億ドル · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 62.53 ドル591 億ドル
2035 年末、手数料を生む運用資産は 1.1 兆ドル(年 6%)。機関投資家の交渉力が増し、新しい商品の報酬率は年 2.5% ずつ下がる。個人向けは解約と信用事故で伸びが鈍り、保険は利回り競争(アポロ・ブラックストーン系・年金リスク移転)で利ざやが縮む。手数料関連利益は 59 億ドル、営業利益 79 億ドル、オーナー利益は約 57 億ドル(2025 年の 1.4 倍)。ROE は 10% まで低下。10 年の正味の還元は 196 億ドル。優良な運用会社から普通のオルタナティブ運用会社に近づく。
- 資産運用(手数料事業):数量 11,168(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの手数料収益率(管理報酬+手数料関連成功報酬+取引手数料))→ 売上 87 億ドル・営業利益 59 億ドル。手数料を生む資産 年 5.5%・報酬率 年 -2.5%
- 保険(グローバル・アトランティック):数量 3,291(保険の運用資産(億ドル))× 価格 0.00(運用資産あたりの営業利益率(スプレッド))→ 売上 14 億ドル・営業利益 14 億ドル。保険の運用資産 年 4%・利ざやが縮む
- 自己投資・成功報酬・戦略保有:数量 13,752(総運用資産(億ドル))× 価格 0.00(総運用資産あたりの実現収益率)→ 売上 17 億ドル・営業利益 17 億ドル。成功報酬が薄く自己投資も損失
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は自己投資と保険を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)、事業の ROE 9.9%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 9.4% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=11.5 倍が上限。利益の質(自己投資と保険の評価損益・成功報酬が市場で振れる)から、上限の 9.0 割の PER 10.4 倍に置いた(検査の上限は時価総額 656 億ドル)。
確率:報酬率の低下、アポロ(アテネ)・ブラックストーン・アレスへの取り分の移動、保険の利ざや縮小が重なる展開。起きても不思議はない。
悲観 15% 悲観:構造的に負ける(信用事故・報酬の崩れ・保険の損失) 利益 27 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 30.16 ドル285 億ドル
2035 年末、私募クレジットと保険の一般勘定に積んだ資産で大きな信用損失が出る。グローバル・アトランティックは損失と規制強化(バミューダ再保険の資本要件)で成長が止まり、資本の追加が要る。個人向けは償還制限の連鎖で離反し、機関投資家は報酬率の引き下げを強く求める。手数料を生む運用資産は 7,800 億ドル(年 3%)、報酬率は今の約 3 割減。手数料関連利益は 35 億ドル、営業利益 43 億ドル、オーナー利益は約 27 億ドル(2025 年を下回る)。自己資本は 450 億ドル。10 年の正味の還元は 112 億ドル。もう優良な運用会社ではなくなっている。
- 資産運用(手数料事業):数量 7,809(手数料を生む運用資産(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの手数料収益率(管理報酬+手数料関連成功報酬+取引手数料))→ 売上 58 億ドル・営業利益 35 億ドル。手数料を生む資産 年 3%・報酬率 年 -3%
- 保険(グローバル・アトランティック):数量 2,538(保険の運用資産(億ドル))× 価格 0.00(運用資産あたりの営業利益率(スプレッド))→ 売上 9 億ドル・営業利益 9 億ドル。保険の運用資産 年 2.5%・信用損失で利ざやが崩れる
- 自己投資・成功報酬・戦略保有:数量 8,856(総運用資産(億ドル))× 価格 0.00(総運用資産あたりの実現収益率)→ 売上 8 億ドル・営業利益 8 億ドル。成功報酬が細り自己投資も損
倍率:稼ぐ力で測る(SCHEMA §1-3)。構造的に負けた筋書きで、ROE が k を下回るため PER は 1÷k が上限になる。ROE 6.0% が k 9.00%(基本 8.0%+quality +1.00%)以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で、PER は 1÷k=11.1 倍が上限。上限の 9.5 割の PER 10.6 倍(時価総額 300 億ドルが上限)に置いた。PBR は結果であって根拠ではない。
確率:私募クレジットの大きな信用事故、保険の一般勘定の損失と規制強化、個人マネーの離反、報酬率の崩れが重なる確率を 15% と置く。保険を抱える分、ブラックストーンより悲観を 1 ポイント厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
資産運用(手数料事業)
プライベート・エクイティ・実物資産・クレジットなどの運用。管理報酬、手数料関連の成功報酬、取引手数料が FRE を作る。
| 数量手数料を生む運用資産(億ドル) | 価格残高あたりの手数料収益率(管理報酬+手数料関連成功報酬+取引手数料) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6,041 | 0.01 | 54 | 37 |
| 10 年後 中立 | 14,888 | 0.01 | 129 | 93 |
取り方:2025 年末の手数料を生む運用資産 6,041 億ドルで、手数料収益(FRE 37.14 億ドル ÷ 利益率 69% ≒ 53.8 億ドル。管理報酬 41.0 億ドルを含む)を割った率 0.89%。営業利益は FRE 37.1 億ドル(株式報酬を除く値。株式報酬は全社の調整欄で引く)。2026 年は K シリーズの成功報酬が手数料関連に入る分類変更で率が約 1.0% に上がる。価格は残高に対する率で、残高自体が名目なので物価で掛けない。
保険(グローバル・アトランティック)
年金・生命保険の資金を集めて運用し、運用収益と契約者への支払いの差(スプレッド)を稼ぐ。
| 数量保険の運用資産(億ドル) | 価格運用資産あたりの営業利益率(スプレッド) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,120 | 0.01 | 11 | 11 |
| 10 年後 中立 | 3,978 | 0.00 | 19 | 19 |
取り方:2025 年末の運用資産は約 2,120 億ドル(2026 年 6 月 2,200 億ドルからの推定)で、保険の営業利益 11.09 億ドル(運用収益から契約者への支払いを引いた純額)を割った率 0.52%。収益は純額で置くので営業利益と同じ。金融の事業の借金は純利益の金利調整に入れない。
自己投資・成功報酬・戦略保有
実現した成功報酬(純額)、自己資金の実現投資収益、戦略保有の営業利益。出口の市場で振れる。
| 数量総運用資産(億ドル) | 価格総運用資産あたりの実現収益率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7,439 | 0.00 | 11 | 11 |
| 10 年後 中立 | 17,591 | 0.00 | 25 | 25 |
取り方:2025 年末の総運用資産 7,439 億ドルで、実現成功報酬(純額)4.92 億ドル+実現投資収益 4.13 億ドル+戦略保有の営業利益 1.62 億ドル=10.67 億ドルを割った率 0.14%。成功報酬は連動する報酬費用を引いた純額。2025 年は過去の成功報酬の返還義務 2.1 億ドルを含む。 将来の率は、運用資産が名目で増えるので物価を重ねない(2026-10-19 に直した。中立は今の 0.14% のまま、楽観 1.10 倍、やや楽観 1.05 倍、悲観側は低下)。
リスクと懸念
保険の一般勘定の信用損失
グローバル・アトランティックの運用資産 2,200 億ドルは、私募クレジットなど信用資産が 1,640 億ドル。金利 5% が続く世界で借り手の返済負担が重く、信用事故が出れば保険の資本を削り、KKR 本体の追加資本や運用事業の評判に波及する。保険の営業利益は 2026 年上期に横ばい。
利益の質(GAAP と調整後の差)
2025 年の GAAP 純利益 22.5 億ドルに対し調整後純利益は 43.8 億ドルで、差の中心は保険の投資損益と未実現の成功報酬・評価益。調整後の数字は株式報酬 7.2 億ドルも足し戻す。調整後に基づく倍率や予想 PER は実態より安く見える。
成功報酬の振れ
成功報酬は出口の市場に左右され、2025 年は過去の成功報酬の返還義務 2.1 億ドルが実現益を押し下げた。2026 年は出口が戻り純実現成功報酬が前年の約 2 倍の山で、山の年の利益をそのまま続くと置くと高くつく。
報酬率の低下と個人向けの解約
新しい商品の報酬率は下がりやすく、低報酬の保険の受託の比率が上がると収益率も下がる。個人向け(K シリーズ)や非上場 BDC には解約請求が来ており、市場が崩れると調達が止まる。ブラックストーンの BCRED が 2026 年に解約を制限した例のように、いつでも出せるという前提の商品は、取り付けに弱い。
競争:アポロ・ブラックストーン・アレス
アポロは総運用資産 約 1.05 兆ドルで保険会社アテネを持ち、ブラックストーンは 1.35 兆ドル、アレスは調達が過去最高。KKR の運用資産の伸び(16%)は上位に近いが、保険の年金リスク移転では価格競争があり、利ざやを押し下げうる。シェアが少しずつ移れば、報酬率と調達の両方に効く。
株式報酬と買収の消化
株式報酬は年 7 億ドル超で、調整後株数は 2026 年 6 月に 9.24 億株(2025 年末 9.01 億株)に増えた。アルクトスの買収(14 億ドル+最大 5.5 億ドル)の統合と、成功報酬に連動する報酬の設計も、資本配分の規律が問われる所で、買収の新株の消化が続く。
経営の継承と共同 CEO 体制
経営はジョー・ベイとスコット・ナタルの共同 CEO 体制(アルクトス買収のリリース、2026 年 5 月)。資本配分の規律と、保険と運用の連携という KKR の特徴が引き継がれるかが長期の論点になる。
今後の分かれ目
- 保険の営業利益が運用資産の伸びに沿って増え始め、利ざやが安定したら
- 保険の評価を上げ、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 私募クレジットで大きな信用事故が出て、グローバル・アトランティックの資産に損失が及んだら
- 悲観・やや悲観の確率を上げる。保険の損失は自己資本を削り、運用事業の調達にも波及する。
- 個人向け(K シリーズ)や非上場 BDC の解約請求が 5% 超で続いたら
- 個人向けの流入が止まり、やや悲観の確率を上げる。
- PE と実物資産の出口(売却・上場)が年 2 割以上増えて続いたら
- 成功報酬が戻り、10 年の中立の利益を上げて見る。ただし山と見て倍率は上げない。
- 新しい PE ファンドの報酬率が過去最低を更新し続けたら
- 10 年後の収益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 共同 CEO の交代や、保険の規制(バミューダ再保険の資本要件)が強化されたら
- 資本配分の規律と保険の成長の確信度に反映する。
見ておくもの
- 手数料を生む運用資産の伸びと永続資本の比率(42%・手数料を生む分は 50%)
- 個人向け(K シリーズ)・非上場 BDC の流入と解約請求
- 純実現成功報酬と出口の市場(出口が戻るか)
- グローバル・アトランティックの運用資産と営業利益、利ざや
- 私募クレジットの延滞・信用事故と保険の資産の質
- 新しい PE ファンドの報酬率
- GAAP 純利益と調整後純利益の差、株式報酬、調整後株数
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額(会社全体 815 億ドル)やアナリストの予想 PER を見る前に、手数料を生む運用資産 × 収益率・保険の運用資産 × スプレッド・総運用資産 × 実現収益率から利益を積み上げ、ROE・g・k から利益ベースの正当化 PER を出した。倍率は利益ベース(k 9.0%・g 4.0% の正当化 PER 12.9 倍の 9 割、中立の 10 年後 11.6 倍)。ROE は純利益 ÷ 自己資本で、保険の資本と自己投資が伸びの元手になるため低い。純利益は会社の調整後純利益から株式報酬を税引きで引き、強制転換優先株の配当を戻したオーナー利益(2025 年 約 40 億ドル)で置いた。GAAP は 22.5 億ドルと低いが、差の中心の未実現・投資損益は振れで、保険の損は悲観の確率と谷の倍率で受けた。調整後純利益をそのまま使うと SBC を足し戻すため使っていない。株数は普通株+交換できる証券+強制転換優先株の全体(9.45 億株)で測り、利払いの変化(brief の推定 -4〜-7 億ドルは保険・ファンドの連結の借入を含むため、運用事業の借金 93 億ドルの借り換えだけで -1〜-2 億ドルと置いた)を純利益に入れた。価格は残高に対する収益率で物価を掛けていない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β 1.49 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。自己投資と保険の資産の評価が市場で振れ、成功報酬も出口市場で振れる。この振れを k の quality に入れ、悲観の確率と谷の倍率で重ねては数えない。
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読んだ資料
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