結論
マーケル・グループは、特殊な損害保険で受け取った資金を運用し、建設資材や園芸などの事業へ再投資する複合企業である。筆者は10年保有の目線では「やや割高」と見る。理由は、保険の引受改善は進んでも、増えた自己資本を資本コスト以上の利回りで使い続けられるか、まだ確証がないからだ。
2025年の純利益は22億ドル弱、自己資本は186億ドルだった。保険契約者に将来払うお金を抱えるため、多額の運用証券をそのまま余剰現金と呼ぶことはできない。2025年に世界の再保険の更新権を売り、2026年上期には残った特殊保険の実質的な新規保険料が前年同期比10%伸びた。採算を優先する再編には意味がある。
ただし2026年4〜6月期、保険を他社へ引き受けてもらう取引先の破綻で、金融事業に約2.1億ドルの信用損失引当が生じた。保険引受の改善と、見えにくい再保険相手先リスクが同居している。株式運用の含み益も純利益を揺らすため、好況年の数字だけを将来に伸ばすのは危うい。
中立では特殊保険の保障量と値上げで収益が増え、工業・消費関連の子会社も着実に成長する。しかし10年後の連結ROEは9%弱で、過去の優れた時期ほど高くない。五つの筋書きと還元の現在価値は約202億ドルとなり、台帳の時価総額約237億ドルを約15%下回る。優れた経営文化と割安な取得価格は別の話である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、マーケルを単なる保険会社や投資持株会社として値付けするのは誤る。保険は引受で利益を出し、事故が起きるまで預かる資金を運用できる点に魅力がある。しかし保険会社の証券や現金は、将来の保険金と再保険債権に結び付いている。保有証券を丸ごと時価総額に足し、その利息まで何十年分も利益として買うのは二重計算だ。
所有者の立場で欲しいのは、競争しても残る引受利益と、設備・人員を維持した後に子会社から上がる現金である。金融部門が高い利益率を続けるなら複利は魅力的だが、破綻した取引先を一件抱えただけで利益が飛ぶ構造には慎重になる。2025年の株式評価益を毎年の確定収入として扱うこともしない。過去の上昇率より、保険料の数量と適正な料率が続くかを問う。
強みは、長く事業を保有できる資本と経営文化にある。安い時に良い会社を買えれば、保険の引受規律と同じように資本配分でも高い収益率を維持できる。中立の筋書きでは、その成功を全社で当然とはせず、利益の伸びに自己資本の増加が追いつき過ぎる姿を考える。今の価格には一定の事業の質が織り込まれており、10年間の悪い年まで引き受ける十分な安全域はまだ見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は特殊損害保険である。一般の自動車保険より複雑な企業賠償、専門職の責任、海上・エネルギー、特定の事故に備える保険を、卸売ブローカーや代理店を通じて売る。2025年の保険事業の正味既経過保険料は84億ドル、引受利益は約4.6億ドルだった。保険料のうち当面支払わない資金を債券と株式に投じ、利息・配当をさらに稼ぐ。
保険は米国の卸売・特殊保険、プログラム商品、海外保険に分かれる。2025年の総引受保険料は米国約31億ドル、プログラム約37億ドル、海外約28億ドルで、別に再保険の残存契約約10億ドルがあった。再保険の新規更新権はネーションワイドへ売却済みで、古い契約の請求責任だけが数年残る。ネフィラ向けのフロンティング、つまり別の資金提供者の代わりに保険証券を発行し手数料を取る商売もある。
保険外の子会社は2025年から工業、金融、消費・その他という三つの報告区分になった。工業は建設資材、消防・安全設備、車両輸送装置、食品工場用設備などを販売する。金融はステート・ナショナルの保険プログラム受託やネフィラの保険連動証券運用が主力だ。消費・その他にはコスタ・ファームズの植物、住宅、手工品、教師派遣、ITコンサルティングと小売調査が入る。
2025年の連結売上約166億ドルには、約11億ドルの株式評価益が含まれる。これは保険契約の数量で生まれた売上ではないので、継続的な事業収益とは分けて扱う。工業・消費部門の売上には件数や販売台数の統一開示がないため、各部門の2025年価格で換算した実質販売量を使い、株式評価損益は別の調整項目に残した。
優良さと弱いところ
最大の堀、つまり他社が簡単には奪えない強みは、扱いにくい危険を引き受ける経験と、卸売ブローカーが頼る契約・査定の網である。専門職賠償や海上保険では、単に安い料率よりも事故が起きた時の支払い能力が重い。許認可、引受データ、過去の事故記録も新規参入を難しくする。2026年上期に条件を見直した既存部門の保険料が実質10%伸びたことは、選別した顧客との関係が残る証拠だ。
一方、全社を強い独占企業とまでは呼べない。米国の専門職賠償や商業財物では十分な保険料が取れず、経営は商品の撤退と再保険更新権の売却を選んだ。引受規律は長所だが、価格を無制限に上げられる証拠ではない。チャブやW.R.バークレー、アーチ・キャピタルは規模と販売網で競争し、保険料が下がる局面では顧客が動く。
保険の過去5年平均ROEは会社開示で13%と悪くないが、連結の過去10年中央値は8.9%にとどまる。工業事業の営業利益率は2025年に約9%で、2026年上期は製品構成と費用増からさらに落ちた。利益を生む資産を保有することと、新たに買う事業から高い増分利益を得ることは同じではない。中立の10年間では留保利益に対する増分利回りが資本コストを下回る可能性を中心に考える。
長期保有に向く文化も残っている。現場の経営者に裁量を与え、持株会社が資本を配る仕組みは、景気の違う事業の資金を回せる。ただし保険の運用証券は保険金支払いの裏付けでもあり、自由な買収資金ではない。2026年の相手先信用損失は、その違いを忘れてはならない実例だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の超過・非標準の損害保険市場は2025年に約1,433億ドルの保険料を集めた。業界団体の調査では前年比約10%増だが、財物保険の料率はすでに軟化している。マーケルの米国卸売・特殊保険の総引受保険料31億ドルを単純に割ると約2%だが、同社には認可保険も混じるため厳密な市場シェアではない。市場全体の実質保障量は年0.5〜1%程度伸びても、料率の循環で売上は一時的に縮む。
企業賠償は訴訟費用の上昇が値上げを支える。反対に、商業財物は競争資本が戻って料率が下がり、再保険更新市場も2026年には大きく軟化した。競争相手はチャブ、トラベラーズ、W.R.バークレー、アーチ・キャピタル、ロイズの引受団である。マーケルは小口の特約と非標準リスクに集中し、数量の伸びよりコンバインドレシオ、すなわち保険料100に対する保険金・経費の合計を重視する方がよい。
金融サービスの比較対象は、2024年に約1,108億ドルへ拡大した米国プログラム保険市場である。ステート・ナショナルの2025年フロンティング保険料約39億ドルは単純比で3%台だが、元受会社ごとの範囲が違うため参考値にすぎない。レートの下落に加えて、再保険の引受手から回収できない信用リスクが重要になった。2026年の損失は金融部門の恒常的な高利益率に疑問を投げかける。
保険以外では、米国の建設支出は2025年に約2.2兆ドル、園芸品の生産販売は2024年に183億ドルだった。前者には防火・建材の需要、後者にはコスタ・ファームズの需要が含まれるが、マーケルの連結部門と市場統計は範囲が違い、全社シェアは算出できない。工業では実質の出荷量、消費部門では園芸品の販売数量と住宅引渡し、IT部門では人月の減少を別々に見る必要がある。
資本政策と M&A
持株会社の資本配分は、保険事業への資本、上場株、子会社の買収、自社株買いの四択である。ステート・ナショナル、ネフィラ、バロー・エンバイロメンタルなどを傘下に加え、工業や金融サービスの収益源を増やした。成果は一様ではない。2025年の保険再編は不採算の再保険更新権を売る規律を示したが、2026年の金融部門の貸倒引当は、引き受けた信用リスクの評価が難しいことを示した。
普通株の現金配当はなく、利益は再投資と買い戻しに充てる。会社開示では2025年の自社株買いは約4.3億ドル、2026年上期は約3.7億ドルだった。2026年6月末には総額20億ドルの買い戻し枠のうち約11億ドルが残るが、期限はなく毎年の買い戻し額も約束されていない。添付の財務台帳が示す2025年の買い戻し約10億ドルとは差があるため、還元の将来額は足元の公表実績と手元資金の余力から保守的に考える。
2026年9月には会長が交代し、現CEOが会長を兼ね、保険と子会社群の責任者が共同社長になった。権限委譲が継続する利点はあるが、買収の規律と保険の準備金の精度を複数年で検証したい。2025年に優先証券6億ドルを償還したが、成長率・配当性向・ROEについて拘束力ある数値目標は示していない。上場廃止や会社全体の買収合意は確認されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
特殊保険の事業は数字以上に粘り強い。リスクの難しい顧客は安い保険料だけでは契約先を変えず、事故を処理してきた記録と支払い能力を重んじる。2026年上期の実質保険料10%増とコンバインドレシオ93%は、収益性を捨てずに残る部門を伸ばせる証拠である。撤退した世界再保険は2025年に約10億ドルの総引受保険料があったが、採算の薄い契約を追いかけなければ、なくなった売上よりも残った資本の価値が高い。
また保険から入る資金は、営業が持ちこたえる限り債券と株式の両方に長く投じられる。2025年末の保険子会社だけの運用資産は約313億ドルで、償還した債券を金利5%前後の世界で入れ替えていけば、利息収入の質も上がる。株式は会計上の評価益で大きく揺れるものの、期間を10年に延ばせば複利が効く。強い年の株価上昇を短期の営業実力と混同さえしなければよい。
工業子会社は建設支出の厚い市場に散らばり、消防サービスやプレキャストコンクリートは建設投資を支える。園芸も多数の小売店に販路を持ち、保険と異なる景気の波を作る。保険会社として蓄えた信用を用い、魅力的な事業を安く買う機会が再び来るだろう。2026年の金融部門の貸倒れは資本全体を傷める規模ではなく、同じような相手先への与信を抑えれば再発を減らせる。そうなれば持株会社のROEは再び二桁に乗り、長期株主は利益だけでなく買い戻しの恩恵も受ける。
慎重な見方
最も怖いのは、保険料が増えても実際の事故と回収損失を把握するまで何年もかかることだ。2026年のステート・ナショナルの約2.1億ドルの信用損失は、顧客が払った保険料の手数料だけを見ても分からないリスクである。相手の保険引受会社が破綻すると、預かった担保が十分に見えても、損害準備金が膨らんだ時には穴が開く。金融部門の高い利益率は、信用危険を引き受けた代価なのかもしれない。
特殊保険市場も競争から逃れられない。米国の超過・非標準市場にはロイズやチャブ、バークレーなど資本力のある相手がいる。財物・再保険の料率が下がるなか、マーケルは専門職賠償の一部から撤退し、再保険の更新権を売った。これは立派な判断だが、利益率を守る代わりに数量を捨てたことでもある。損失が出やすい契約を閉じても古い契約の事故準備金は残り、保険の引受利益は思ったほど増えない恐れがある。
保険以外の事業にも堀の濃淡がある。工業は建設と設備投資が止まれば工場の固定費が残り、2026年上期には売上増の一方で利益が減った。ITコンサルや小売調査はAIエージェントが人の作業を代替し、顧客が工数に払う金額を減らす可能性が高い。株式の含み益は税引き後の株主資本の一部だが、相場が崩れれば同時に失われる。買収に資金を使い続けても、新しい子会社が資本コスト未満しか稼がなければ、自己資本の増加は価値の増加を意味しない。
どちらに重みを置いたか
事業が10年後も残る確度では強い見方が優勢だが、株主資本を増やす効率と金融部門の信用危険では慎重な見方を重くした。特殊保険の再編には進展がある一方、2026年の引当と工業部門の減益は無視できない。さらに一部のIT・情報サービスはAIエージェントに代替されるため、全社の長期成長率に小さくても確実な下押しを入れた。
確率は楽観側26%、中立36%、悲観側38%とし、決め打ちしない。悲観側の厚さはAIだけでなく、保険準備金と資本配分の誤りを合わせたものである。事業の質を評価した上でなお、現在の価格には余裕が少なく、「やや割高」の結論が残った。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,640 ドル334 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 552.58 ドル70 億ドル)。 今の値に割り戻すと 1,599 ドル202 億ドル、今との差 −14.5%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,645 ドル714 億ドル | 909.23 ドル115 億ドル | +250.5% | +14.8% | 524.31 ドル66 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 4,121 ドル521 億ドル | 759.01 ドル96 億ドル | +161.0% | +11.2% | 878.48 ドル111 億ドル |
| 中立 | 36% | 2,869 ドル363 億ドル | 672.04 ドル85 億ドル | +89.4% | +7.4% | 1,275 ドル161 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 1,162 ドル147 億ドル | 355.79 ドル45 億ドル | −18.8% | −2.3% | 379.39 ドル48 億ドル |
| 悲観 | 13% | 948.77 ドル120 億ドル | 94.88 ドル12 億ドル | −44.2% | −5.9% | 135.67 ドル17 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 2,640 ドル334 億ドル | 552.58 ドル70 億ドル | +70.7% | +6.1% | 3,193 ドル404 億ドル |
今の株価時価総額 1,870 ドル236 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:保険再編の成功と規律ある買収 利益 51 億ドル · PER 14.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,645 ドル714 億ドル
2035年には世界再保険の旧契約が消え、米国の特殊保険と国際保険が利益の柱になる。引受を選別した2025〜26年の方針が定着し、保険料率は物価を上回って上がる。新しい事故データを使った査定でチャブやW.R.バークレーから厄介だが利益の出る契約を奪い、コンバインドレシオは91%程度で落ち着く。保険子会社の運用元本は585億ドルへ拡大し、株式の値上がり益も一度だけ連結利益に計上される。
工業では消防・安全設備とプレキャスト製品の数量が伸び、車両設備の不振を補う。金融では2026年の再保険回収事故を機に相手先の担保管理を改め、保険プログラムの管理料とネフィラの運用収益が伸びる。消費部門はコスタ・ファームズの販路と住宅の価格転嫁が効く。一方、ITコンサルと小売調査はAIエージェントに仕事を取られ、楽観でも実質作業量が減る。
買収では価格規律が続き、保険の内側に眠る資本を過剰に取り崩さずに高収益事業へ回せる。10年間のGAAP純利益累計は約360億ドル、普通株への正味の買い戻し還元は115億ドルとなり、2035年の純利益は51億ドルに達する。超過収益を生む企業文化が資本効率に表れ、ROEは二桁を維持する。
- 特殊保険の引受・手数料:数量 108(2025年の保険単価に固定した正味既経過保障量(億ドル相当))× 価格 1.52(2025年の保険料率・関連サービス単価を1とする名目指数)→ 売上 163 億ドル・営業利益 16 億ドル。残存再保険消滅後も新規の高採算契約を獲得し、コンバインドレシオは約91%
- 保険子会社の債券・株式運用収入:数量 585(保険子会社が保有する運用資産残高(億ドル、現金含む))× 価格 0.03(運用残高1ドルに対する年間税引前利息・配当利回り)→ 売上 19 億ドル・営業利益 19 億ドル。保険資本とフロートが拡大し、再投資で利息・配当利回り3.3%
- 工業子会社(建材・消防・機器):数量 53.0(2025年の販売単価に固定した施工・製品販売量(億ドル相当))× 価格 1.51(建材・施工サービス・機器の2025年平均販売単価を1とする名目指数)→ 売上 80 億ドル・営業利益 9 億ドル。消防・建材や産業設備で実質売上量を増やし、11%台の営業利幅
- ステート・ナショナルとネフィラ:数量 52.0(ステート・ナショナルの保険取扱量を2025年価格に固定した相当額(億ドル))× 価格 0.29(保険取扱量1ドル相当に対する部門の売上係数(名目、手数料・自社引受・運用含む))→ 売上 15 億ドル・営業利益 7 億ドル。フロンティングと運用報酬が増え、貸倒れの再発を防ぐ
- 消費・住宅・園芸等(AI対象外):数量 16.2(2025年価格で換算した製品販売・住宅引渡し等の実質数量(億ドル相当))× 価格 1.48(植物・住宅・現物サービスの2025年平均単価を1とする名目指数)→ 売上 24 億ドル・営業利益 4 億ドル。コスタ・ファームズと住宅でシェアを増やし生産性を改善
- ITコンサル・小売情報・人材事務(推定):数量 1.5(2025年価格の人月・調査件数・事務処理量を売上換算した実質量(億ドル相当))× 価格 1.32(人月・情報提供単価の2025年水準を1とする名目指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIの代替で数量は0.75倍、残る高度案件でも単価は限定的
倍率:10年末の自己資本ROEは11.83%(GAAP純利益50.995億ドル÷自己資本431億ドル)。買収による成長にはのれんも必要なので帳簿ROEを使い、通常の堀が超過収益の半分だけ残すとしてRONIC=k8.0%+0.5×(ROE−8.0%)=9.92%。市場数量、シェア、価格からの長期g3.2%、k−g4.8%より、10年目利益に対する正当化PER上限は14.56倍(来年の利益基準の式に1.032を乗じた値)。株式評価益はGAAP利益に一度だけ計上し、余剰現金は0とする。引受と運用の変動、買収効率の不確実性を考慮し上限の96.1%に当たる14.0倍。現在・過去・同業の市場PER/PBRは用いていない。
確率:引受改善、運用の積み上がり、買収の増分利回りが同時にうまくいく必要がある。2026年の信用損失と工業の減益を考え、確率は8%に限った。
やや楽観 18% やや楽観:特殊保険が成長し資本配分も改善 利益 41 億ドル · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,121 ドル521 億ドル
特殊保険の重点部門は再保険撤退の後も新規契約を積み重ねる。米国の専門賠償と海上保険で適切な価格を認める顧客が残り、競合との競争が激しくても平均保険料率は物価を少し上回る。旧契約からの請求は予定の範囲で収まり、引受利益率が緩やかに改善する。債券は金利5%前後の環境で入れ替わり、運用収入が利益を支える。
ステート・ナショナルの2026年の損失は単独の相手先で終わり、担保と再保険引受会社の監督が強化される。工業の建材・消防分野も稼働が回復し、車両設備は循環的な底から持ち直す。植物や住宅は数量が少し増え、値上げも通る。ITコンサルなどの受託はAIエージェント代替で縮むが、物理的な子会社の大きさがそれを吸収する。
大規模な買収に頼らず、子会社の増益と自社株買いで普通株主の持ち分を増やす。10年の利益累計は315億ドル、正味の還元は96億ドルで、自己資本は405億ドルになる。2010年代のような極端な相場上昇を必要とせず、ROEが10%ほどを保つ筋書きである。
- 特殊保険の引受・手数料:数量 101(2025年の保険単価に固定した正味既経過保障量(億ドル相当))× 価格 1.45(2025年の保険料率・関連サービス単価を1とする名目指数)→ 売上 146 億ドル・営業利益 11 億ドル。競争下でも引受規律を保ち、コンバインドレシオ92〜93%
- 保険子会社の債券・株式運用収入:数量 520(保険子会社が保有する運用資産残高(億ドル、現金含む))× 価格 0.03(運用残高1ドルに対する年間税引前利息・配当利回り)→ 売上 16 億ドル・営業利益 16 億ドル。債券利回りが上がり、運用元本も着実に増える
- 工業子会社(建材・消防・機器):数量 47.5(2025年の販売単価に固定した施工・製品販売量(億ドル相当))× 価格 1.45(建材・施工サービス・機器の2025年平均販売単価を1とする名目指数)→ 売上 69 億ドル・営業利益 8 億ドル。実質販売量21%増、工業利益率11%へ改善
- ステート・ナショナルとネフィラ:数量 48.0(ステート・ナショナルの保険取扱量を2025年価格に固定した相当額(億ドル))× 価格 0.28(保険取扱量1ドル相当に対する部門の売上係数(名目、手数料・自社引受・運用含む))→ 売上 13 億ドル・営業利益 6 億ドル。再保険回収事故は一過性になり、プログラムの業務量が増える
- 消費・住宅・園芸等(AI対象外):数量 14.3(2025年価格で換算した製品販売・住宅引渡し等の実質数量(億ドル相当))× 価格 1.44(植物・住宅・現物サービスの2025年平均単価を1とする名目指数)→ 売上 21 億ドル・営業利益 3 億ドル。園芸品・住宅の販売量と価格の両方が伸びる
- ITコンサル・小売情報・人材事務(推定):数量 1.5(2025年価格の人月・調査件数・事務処理量を売上換算した実質量(億ドル相当))× 価格 1.30(人月・情報提供単価の2025年水準を1とする名目指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。人月仕事の代替が進むが高付加価値案件が残る
倍率:10年末の自己資本ROEは10.06%(GAAP純利益40.725億ドル÷自己資本405億ドル)。買収による成長にはのれんも必要なので帳簿ROEを使い、通常の堀が超過収益の半分だけ残すとしてRONIC=k8.0%+0.5×(ROE−8.0%)=9.03%。市場数量、シェア、価格からの長期g3.2%、k−g4.8%より、10年目利益に対する正当化PER上限は13.88倍(来年の利益基準の式に1.032を乗じた値)。株式評価益はGAAP利益に一度だけ計上し、余剰現金は0とする。引受と運用の変動、買収効率の不確実性を考慮し上限の92.2%に当たる12.8倍。現在・過去・同業の市場PER/PBRは用いていない。
確率:2026年の引受の改善は事実であり、保険の本業拡大は十分にあり得る。ただし金融の与信管理と工業の利益率改善も必要で、楽観よりは高いが18%とした。
中立 36% 中立:特殊保険は残り、資本効率は伸び悩む 利益 31 億ドル · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,869 ドル363 億ドル
引受の規律は残るが、マーケルの特殊保険だけが競争を免れるわけではない。2025年の再保険更新権の売却で古い契約の売上が消え、米国の卸売・専門保険がその穴を埋める。市場の実質保障需要は緩やかに増え、会社のシェアはおおむね横ばいとなる。平均料率は10年で物価並みに上がり、損害と費用を差し引く引受利益率は6%台にとどまる。
保険の運用元本は450億ドルへ増え、国債・社債の利息と株の配当は伸びる。金融は再保険回収債権の審査を厳格にした分、利益率が2025年より低い。工業は建材・消防サービスの数量が緩やかに伸びるものの、商業建設や機械の周期で利益率は9%台である。園芸と住宅では値上げを通せるが、AIが代替する人月・小売情報の数量は縮む。
株式の含み益は長期的に増えるが、2025年の高い運用成績を一定の成長率で外挿しない。期間のGAAP純利益累計は約263億ドル、普通株の正味還元は85億ドルとなり、自己資本は364億ドルへ増える。最終年の利益は31億ドル強でROEは約8.6%だ。保険は存続し事業規模も大きくなるが、利益率の高い新規投資先を十分確保できないため、経済的な複利はほどほどにとどまる。
- 特殊保険の引受・手数料:数量 91.5(2025年の保険単価に固定した正味既経過保障量(億ドル相当))× 価格 1.41(2025年の保険料率・関連サービス単価を1とする名目指数)→ 売上 129 億ドル・営業利益 8 億ドル。再保険残存契約が消えても中核の実質補償量は補い、引受利益率6%台
- 保険子会社の債券・株式運用収入:数量 450(保険子会社が保有する運用資産残高(億ドル、現金含む))× 価格 0.03(運用残高1ドルに対する年間税引前利息・配当利回り)→ 売上 14 億ドル・営業利益 14 億ドル。フロート・留保資本が増え、利息・配当の利回りは3%
- 工業子会社(建材・消防・機器):数量 44.5(2025年の販売単価に固定した施工・製品販売量(億ドル相当))× 価格 1.41(建材・施工サービス・機器の2025年平均販売単価を1とする名目指数)→ 売上 63 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量約13%増、単価は物価1.41倍、利益率9.5%
- ステート・ナショナルとネフィラ:数量 44.0(ステート・ナショナルの保険取扱量を2025年価格に固定した相当額(億ドル))× 価格 0.26(保険取扱量1ドル相当に対する部門の売上係数(名目、手数料・自社引受・運用含む))→ 売上 11 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質プログラム取扱量は約12%増だが信用費用を織り込む
- 消費・住宅・園芸等(AI対象外):数量 13.3(2025年価格で換算した製品販売・住宅引渡し等の実質数量(億ドル相当))× 価格 1.41(植物・住宅・現物サービスの2025年平均単価を1とする名目指数)→ 売上 19 億ドル・営業利益 2 億ドル。鉢物植物・住宅等の実質販売量12%増と物価転嫁
- ITコンサル・小売情報・人材事務(推定):数量 1.3(2025年価格の人月・調査件数・事務処理量を売上換算した実質量(億ドル相当))× 価格 1.25(人月・情報提供単価の2025年水準を1とする名目指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で工数35%減、価格は物価未満
倍率:10年末の自己資本ROEは8.59%(GAAP純利益31.281億ドル÷自己資本364億ドル)。買収による成長にはのれんも必要なので帳簿ROEを使い、通常の堀が超過収益の半分だけ残すとしてRONIC=k8.0%+0.5×(ROE−8.0%)=8.30%。市場数量、シェア、価格からの長期g3.2%、k−g4.8%より、10年目利益に対する正当化PER上限は13.21倍(来年の利益基準の式に1.032を乗じた値)。株式評価益はGAAP利益に一度だけ計上し、余剰現金は0とする。引受と運用の変動、買収効率の不確実性を考慮し上限の87.8%に当たる11.6倍。現在・過去・同業の市場PER/PBRは用いていない。
確率:保険の更新料率は長期では物価並み、実質保障量は一桁増にとどまる。再編の効果と低い増分利回りを同時に織り込んだ最も説明しやすい経路として36%を配した。
やや悲観 25% やや悲観:引受価格と信用コストの二重苦 利益 12 億ドル · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,162 ドル147 億ドル
競争資本が増え、商業財物と専門職賠償の価格交渉ではチャブやW.R.バークレーに顧客を奪われる。料率は10年で26%しか上がらず、物価の41%に届かない。旧再保険は縮むが、新しい契約も十分には取れない。2026年の引受改善は一時的なものとなり、コンバインドレシオは97%付近に戻る。
金融ではステート・ナショナルの信用費用が繰り返し生じ、引受会社との取引規模も減る。工業は高金利下の建設投資の停滞に悩み、設備更新と人件費が残るため利幅が細る。植物と住宅でも買い手が値上げに抵抗する。IT受託・小売調査はAIエージェントに工数を奪われ、現場で必要な仕事以外は縮小する。株式には大きな値上がり益がなく、償却などが利益を押し下げる。
期間前半は本業の利益がまだ残るため、10年間のGAAP純利益累計は180億ドルとする。しかし後半に衰え、最終年の純利益は12億ドル弱となる。純利益から正味の買い戻し45億ドルを差し引くと自己資本は321億ドルで、ROEは4%を下回る。増えた帳簿価値をそのまま株主価値と呼べず、稼ぐ力と清算できる資産の低い方に注意が必要だ。
- 特殊保険の引受・手数料:数量 80.0(2025年の保険単価に固定した正味既経過保障量(億ドル相当))× 価格 1.26(2025年の保険料率・関連サービス単価を1とする名目指数)→ 売上 101 億ドル・営業利益 3 億ドル。中核のシェアが減り、物価を下回る保険料改定と損害率悪化
- 保険子会社の債券・株式運用収入:数量 400(保険子会社が保有する運用資産残高(億ドル、現金含む))× 価格 0.03(運用残高1ドルに対する年間税引前利息・配当利回り)→ 売上 11 億ドル・営業利益 11 億ドル。引受収支の悪化で運用元本は増えにくくなる
- 工業子会社(建材・消防・機器):数量 40.0(2025年の販売単価に固定した施工・製品販売量(億ドル相当))× 価格 1.25(建材・施工サービス・機器の2025年平均販売単価を1とする名目指数)→ 売上 50 億ドル・営業利益 3 億ドル。建設・輸送装置の需要低迷で実質数量横ばい
- ステート・ナショナルとネフィラ:数量 35.0(ステート・ナショナルの保険取扱量を2025年価格に固定した相当額(億ドル))× 価格 0.23(保険取扱量1ドル相当に対する部門の売上係数(名目、手数料・自社引受・運用含む))→ 売上 8 億ドル・営業利益 0 億ドル。前払保険プログラム縮小と回収費用の常態化
- 消費・住宅・園芸等(AI対象外):数量 12.0(2025年価格で換算した製品販売・住宅引渡し等の実質数量(億ドル相当))× 価格 1.25(植物・住宅・現物サービスの2025年平均単価を1とする名目指数)→ 売上 15 億ドル・営業利益 1 億ドル。園芸の数量横ばい、住宅価格競争で利幅縮小
- ITコンサル・小売情報・人材事務(推定):数量 1.1(2025年価格の人月・調査件数・事務処理量を売上換算した実質量(億ドル相当))× 価格 1.15(人月・情報提供単価の2025年水準を1とする名目指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。工数45%減、単価が物価に追いつかない
倍率:10年末の連結ROEは3.74%で資本コスト8.0%を下回り、利益を留保しても超過収益は生まれない。事業の稼ぐ力の上限はGAAP純利益11.994億ドル÷k8.0%=149.9億ドル(余剰現金は0)。保険負債と税後処分費を差し引いた売却可能な正味資産は130億ドルで、価値の床と稼ぐ力の大きい側を超えない。報告上のPBRは2035年の積み増し自己資本でなく、2025年末の起点自己資本186億ドルに対する0.790000倍を用い、時価総額146.94億ドルとした。過去の谷の倍率は用いない。
確率:財物・再保険の料率低迷、相手先与信の再発、工業の市況停滞のうち幾つかが重なる確率を四分の一と見た。AIの対象部分も縮小し、資本効率悪化を明示する。
悲観 13% 悲観:保険の堀と資本配分が壊れる 利益 4 億ドル · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 948.77 ドル120 億ドル
専門職賠償、海上・エネルギー、財物で、十分な保険料を得られないのに事故費用が上昇する。チャブ、アーチ、ロイズへ良質な契約が移り、マーケルには損失率の高い契約が残る。古い世界再保険の事故も遅れて顕在化し、コンバインドレシオは100%を超える。金融では再保険相手先が複数破綻して手数料以上の回収損失を生み、保険の持ち分を支えてきた信用が傷付く。
2027〜29年には保険準備金の追加損失約10億ドルと、株式の大幅下落・投資損失約90億ドルが重なり、期間累計のGAAP純利益を大きく削る。これは最終年の利益とは別に起きた損失で、10年の通常利益の概算130億ドルから差し引くと累計は約30億ドルとなる。工業・住宅も設備や人員の固定費が残り、AI代替が進んだ情報・受託部門は赤字に陥る。
自社株買いをほぼ止め、10年で正味12億ドルを還元するにとどまる。帳簿自己資本は累計利益から還元を差し引いて204億ドルだが、のれんや古い保険の準備金を含む帳簿価値には信頼を置けない。最終年の純利益は4億ドル程度で、稼ぐ力より保険負債を差し引いた換金可能資産が株主の拠り所になる。この状態では優良な複利企業という評価は失われる。
- 特殊保険の引受・手数料:数量 68.0(2025年の保険単価に固定した正味既経過保障量(億ドル相当))× 価格 1.10(2025年の保険料率・関連サービス単価を1とする名目指数)→ 売上 75 億ドル・営業利益 −1 億ドル。特殊保険の競争力喪失と準備金不足で引受損失が定着
- 保険子会社の債券・株式運用収入:数量 345(保険子会社が保有する運用資産残高(億ドル、現金含む))× 価格 0.02(運用残高1ドルに対する年間税引前利息・配当利回り)→ 売上 8 億ドル・営業利益 8 億ドル。株式資産が減って保険運用元本が縮小、利回りも弱い
- 工業子会社(建材・消防・機器):数量 35.0(2025年の販売単価に固定した施工・製品販売量(億ドル相当))× 価格 1.12(建材・施工サービス・機器の2025年平均販売単価を1とする名目指数)→ 売上 39 億ドル・営業利益 1 億ドル。建設向け販売量減と固定費残存で工業利益率3%
- ステート・ナショナルとネフィラ:数量 28.0(ステート・ナショナルの保険取扱量を2025年価格に固定した相当額(億ドル))× 価格 0.19(保険取扱量1ドル相当に対する部門の売上係数(名目、手数料・自社引受・運用含む))→ 売上 5 億ドル・営業利益 −1 億ドル。フロンティングの大型貸倒れでサービス部門が赤字
- 消費・住宅・園芸等(AI対象外):数量 11.0(2025年価格で換算した製品販売・住宅引渡し等の実質数量(億ドル相当))× 価格 1.13(植物・住宅・現物サービスの2025年平均単価を1とする名目指数)→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。消費・園芸で数量と価格の両方が弱い
- ITコンサル・小売情報・人材事務(推定):数量 0.9(2025年価格の人月・調査件数・事務処理量を売上換算した実質量(億ドル相当))× 価格 1.10(人月・情報提供単価の2025年水準を1とする名目指数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。人月数量は55%減、業務AI代替で営業赤字
倍率:10年末の連結ROEは1.93%で資本コスト8.0%を下回り、利益を留保しても超過収益は生まれない。事業の稼ぐ力の上限はGAAP純利益3.939億ドル÷k8.0%=49.2億ドル(余剰現金は0)。保険負債と税後処分費を差し引いた売却可能な正味資産は120億ドルで、価値の床と稼ぐ力の大きい側を超えない。報告上のPBRは2035年の積み増し自己資本でなく、2025年末の起点自己資本186億ドルに対する0.645161倍を用い、時価総額120.00億ドルとした。過去の谷の倍率は用いない。
確率:旧契約の準備金不足、相手先破綻、運用株の急落、買収失敗が同時に起きる重い筋書き。頻度は高くないが、二度の損失源を持つため13%は残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
特殊保険の引受・手数料
米国卸売・特殊、プログラム、国際保険の正味既経過保険料と保険関連手数料。撤退したGlobal Reinsuranceの残存契約は数年で消える。
| 数量2025年の保険単価に固定した正味既経過保障量(億ドル相当) | 価格2025年の保険料率・関連サービス単価を1とする名目指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 84.8 | 1.00 | 85 | 5 |
| 10 年後 中立 | 91.5 | 1.41 | 129 | 8 |
取り方:2025年10-Kの既経過保険料84.013億ドルと関連サービス売上0.800億ドルを合算。引受利益4.557億ドルとサービス利益0.519億ドルが営業利益の内訳。契約件数と平均保険料が開示されないため、実質保障量=当年保険料を2025年料率に固定した金額で代理する。米国卸売・特殊の総引受保険料30.61億ドルをWSIA公表の全米超過・非標準保険市場2025年1,433億ドルと比べた単純比約2.1%は、認可商品の混在で正式シェアではない。対抗するのはチャブ、W.R.バークレー、アーチ、ロイズ。再保険更新権を2025年8月に売却したため、10年の数量には残存10.7億ドルの自然減を含む。出典:2025年10-K、https://www.wsia.org/wcm/Foundation/wcm/Foundation/Summary.aspx
保険子会社の債券・株式運用収入
保険準備金と自己資本を裏付ける債券利息、株式配当、短期資金の利息。株式時価評価損益は二重計上せず全社調整項目へ分ける。
| 数量保険子会社が保有する運用資産残高(億ドル、現金含む) | 価格運用残高1ドルに対する年間税引前利息・配当利回り | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 313 | 0.03 | 9 | 9 |
| 10 年後 中立 | 450 | 0.03 | 14 | 14 |
取り方:2025年10-Kの保険子会社の投資・現金残高313.28億ドルと純投資収入8.715億ドルから利息・配当利回り2.782%を計算。数量は保険業固有の運用元本で、物価・新規保険と利益留保により名目増加する金融ストック。価格は利回りなので、一般製品の物価1.41倍は掛けない。2026年6月末は保険子会社運用資産319.20億ドル、固定利付証券への再投資で利回り改善余地があるが、フロートと規制資本を減らさずには配れない。出典:2025年10-K・2026年6月10-Q。
工業子会社(建材・消防・機器)
建材の流通、プレキャストコンクリート、消防・安全設備、車両運搬用機器、食品工場設備などの売上。
| 数量2025年の販売単価に固定した施工・製品販売量(億ドル相当) | 価格建材・施工サービス・機器の2025年平均販売単価を1とする名目指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 39.3 | 1.00 | 39 | 3 |
| 10 年後 中立 | 44.5 | 1.41 | 63 | 6 |
取り方:2025年10-Kの工業売上39.282億ドルと調整後営業利益3.432億ドルを使用。会社は異業種の施工件数・車両装置台数を合算開示しないため、工業売上を2025年価格に固定した実質数量指数とし、単価の変化は別に表示。米国建設支出2025年2兆2,448億ドルに対して部門売上の単純比は約0.17%だが、建設以外の機械も含むため厳密なシェアではない。FRED/米国センサス https://fred.stlouisfed.org/series/TTLCONS。2026年上期は数量堅調でも事業構成と経費で利益23%減。
ステート・ナショナルとネフィラ
保険会社の名義を使うフロンティング、保険プログラム受託、自社保有リスクの引受、保険連動証券の運用報酬。2026年の破綻相手先の再保険債権に注意する。
| 数量ステート・ナショナルの保険取扱量を2025年価格に固定した相当額(億ドル) | 価格保険取扱量1ドル相当に対する部門の売上係数(名目、手数料・自社引受・運用含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 39.3 | 0.19 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 0.26 | 11 | 4 |
取り方:State Nationalの2025年フロンティング総引受保険料39.287億ドルを取扱量の代理とし、金融部門売上7.370億ドル÷取扱量で売上係数18.76%を作った。これはフロンティング純手数料率ではなく、自己引受の保険料3.14億ドル、Nephila運用報酬と投資収益を含む合成係数である。会社は個々の料率を開示しない。米国プログラム保険市場は2024年約1,108億ドル(TMPAA)、単純比較で3%台だが市場と取扱量は完全には一致しない。競合にはトリシュラ等のフロンティング保険会社がある。https://online.flipbuilder.com/twad/orkb/files/basic-html/page7.html
消費・住宅・園芸等(AI対象外)
コスタ・ファームズの鉢物植物、住宅建設、製造住宅団地、皮革製品、学校で働く教師の現場活動など、物理的な商品・サービスの売上。
| 数量2025年価格で換算した製品販売・住宅引渡し等の実質数量(億ドル相当) | 価格植物・住宅・現物サービスの2025年平均単価を1とする名目指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.8 | 1.00 | 12 | 2 |
| 10 年後 中立 | 13.3 | 1.41 | 19 | 2 |
取り方:2025年10-Kの消費・その他の報告売上13.829億ドルから、ITコンサル・小売調査・人材事務等を分析上2.0億ドルと仮置きして分離。残り11.829億ドルが物理的販売量の2025年価格換算値であり、内訳非開示のため正式値ではない。最大事業Costa Farmsの植栽販売数量も非開示。米農務省2024年園芸市場183億ドルにはこの分野の一部だけが対応し、分野を混ぜた全社シェアは計算できない。https://data.nass.usda.gov/Newsroom/2026/02-26-2026.php
ITコンサル・小売情報・人材事務(推定)
消費・その他のうち人月・調査作業を売るITコンサル、小売価格情報の収集・分析、教師紹介の事務部分。AIエージェント代替が直接効く領域だけを切り出す。
| 数量2025年価格の人月・調査件数・事務処理量を売上換算した実質量(億ドル相当) | 価格人月・情報提供単価の2025年水準を1とする名目指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 1.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 1.25 | 2 | 0 |
取り方:同社は消費・その他にITコンサルと小売情報分析、教師派遣の事務を含むと2025年10-K・2026年10-Qで開示するが個別売上を出さない。分析用に消費・その他売上13.829億ドルの約14.5%=2.0億ドルを人月・情報部分へ仮配賦し、利益も2025年同部門の実態を壊さないよう仮配賦した。未確認の実額ではない。AIエージェント代替の型は「人月・工数」「情報・調査」で、低解約率・法令対応の移行期間等の堀の証拠が2つなく「記録の正本」は適用しない。中立で数量0.65倍、価格1.25倍、対象部分の2035年以降のgは0%。教員による対面授業そのものは対象外。
リスクと懸念
再保険回収と準備金の遅れ
フロンティングでは保険契約の表面上の危険を他社に渡していても、その相手が破綻すると再保険債権を回収できない。2026年上期に1社について約2.1億ドルの予想信用損失を計上した。契約者への責任と準備金の評価が数年遅れるため、担保の額だけでは十分な安全性を証明できず、複数の相手先で同様のことが起きれば自己資本も痛む。
保険料率の軟化と旧再保険の尾
商業財物や再保険の料率は供給能力が増えると下落する。専門職賠償では契約の採算が合わず撤退した事例があり、値決めの自由度は完全ではない。2025年に再保険更新権を売っても、古い契約の保険金や追加準備金は残る。2026年の引受改善を恒久的な利益率と見なすと、損失が遅れて表面化した時に過大評価になる。
運用株の下落と見かけの利益
2025年のGAAP利益には約11億ドルの株式評価益が含まれ、株式ポートフォリオの時価が下がると会計利益は急変する。2008年や2022年にも利益の大きな振れがあった。運用資産の大部分は保険負債を支えるため、証券を売れば額面どおり株主へ分配できるわけではない。株式の成長を保険引受の成長と同時に強気で数えれば二重に楽観する。
工業・園芸子会社の景気と買収
建設資材、消防・安全設備、車両装置、園芸や住宅は需要循環が違っても、金利や建設投資の長期停滞に同時に弱くなりうる。2026年上期の工業利益は前年同期を23%下回った。買収先を高値で買えばのれんと追加設備投資が残る一方、新たな利益は資本コストに届かない。自己資本を増やすだけの拡大を株主価値の成長と混同しない。
AIエージェント代替
ITコンサルティングの人月、価格調査、管理事務はAIエージェントが顧客に代わって実行できる仕事が多い。個別売上は開示されず、約2億ドル相当の切り出しは分析用推定にすぎない。対象の中立数量は10年で0.65倍、単価は1.25倍に抑えた。低解約率と移行の難しさを示す複数の証拠もなく、AIによる新しい売上を強気の根拠にしない。
資本配分の継続性と統治
2026年9月の会長交代は長期投資の文化を維持する試金石になる。独立採算の事業が増えるほど、買収価格や支出の監督は複雑になる。普通株は単一の持ち分として見られ、特別な議決権による希薄化を中心問題とはしないが、非支配持分と保険子会社の規制資本は普通株主が直ちに取り出せる資金ではない。
気候災害と地政学的な巨大損失
海上・エネルギー、財物、企業賠償には山火事、暴風、戦争、訴訟の大口損失がある。2026年上期には中東の紛争に伴う保険損失を計上し、予想は不確実とした。災害費用と再保険料が保険料値上げを上回れば、引受利益は簡単に消える。10年の悲観では一度の損失ではなく、料率の弱さと準備金悪化が重なると考える。
今後の分かれ目
- 特殊保険の実質的新規保険料が年5%以上伸び、コンバインドレシオ94%以下が3年続く
- 撤退後の保険ポートフォリオの堀が確認できる。楽観側の数量と引受利幅を引き上げ、再投資利回りを見直す。
- State Nationalの再保険回収損がさらに3億ドル以上発生する
- フロンティングの信用リスクが恒常的と判断し、金融の営業利益率をやや悲観以下に下げ、準備金の追加控除を厚くする。
- 会社が再保険回収債権と担保の組合せ、相手先集中を詳細に開示し、回収が安定する
- 将来の突然の貸倒れを減らす証拠となる。金融事業の中立利益率を上げ、やや悲観の確率を下げる。
- 工業部門の既存事業売上が数量ベースで3年連続伸び、営業利益率が10%を超える
- 防火・建材への再投資が実を結んだと見て、工業部門の数量と中立のオーナー利益を引き上げる。
- ITコンサルと調査の売上がAIエージェントの普及で大きく減少する
- 推定で切り出したAI対象事業の数量を悲観側へ移し、もし実際の部門構成が想定より大きければ全社の長期gをさらに下げる。
- 買収と自社株買いを含めて5年の増分ROEが8%を安定して超える
- 利益の留保に値する資本配分だと認める。正当化PERの上限に近づけ、中立の評価を改善する。
- 複合損害率が100%を2年続けて超え、株式評価損も重なる
- 旧契約の準備金と運用の二重損失を疑う。悲観側の確率を引き上げ、税引後の資産処分価値を再検討する。
見ておくもの
- 米国卸売・プログラム・国際の総引受保険料、特に退出事業を除く実質伸び
- 保険引受の既往年度準備金増減とコンバインドレシオ(巨大災害除く)
- State Nationalのフロンティング額、再保険回収債権、相手先破綻・担保不足
- 保険子会社の運用元本、債券再投資利回り、株式評価損益と現金流入
- 工業の内部成長率、営業利益率、建設・車両関連の実質販売量
- Consumer and OtherのIT・小売情報サービスの構成比の開示
- 普通株買い戻しの実額、買収対価、増分ROEと株式報酬
- 2026年10月29日予定の第3四半期決算説明と保険引受・準備金更新
倍率と資本コストの決め方
2025年の財務台帳を収益・自己資本・基準株数の正本とし、会社の2025年10-Kから引受・運用・子会社の売上を分けた。GAAP利益に含まれる株式評価益は調整項目に一度だけ入れ、保険運用資産を余剰現金として加算しなかった。資本コストは8.0%、長期成長gは市場の保障量・シェア・名目保険料率から3.2%とした。残る超過収益は通常の堀で半分とし、各PERは正当化上限の88〜96%に収めた。悲観側は時価総額でなく稼ぐ力と売れる資産の税後価値を上限にした。最後に初めて台帳時価総額と比べ、差約−14.5%をそのまま受け入れた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%+quality0.0%+事業存続の危機に限る追加0%。保険・金融と工業の複合性を踏まえて同業のチャブ8.0%に近い。アーチ8.5%より高くせず、より安定するバークシャー7.5%より下げない。β・市場のPER・個別事故を資本コストの上乗せに用いない。