結論
フトゥ・ホールディングスは、香港の富途牛牛と海外のmoomooを通じて、株式売買、信用取引、資産運用商品を提供するオンライン証券会社である。筆者は、中国当局の規制という大きな傷を負ってなお、現在の値段には長期株主にとっての安全域があると見る。ただし、安さの理由は明確であり、無条件に安心して持てる金融株ではない。
2025年の売上高は29.3億ドル、純利益は14.5億ドルに達した。入金済み口座は337万、顧客資産は約1584億ドルとなり、証券取引手数料と金融収益がともに拡大した。2026年4〜6月期も売上高は前年同期比35.6%増、入金済み口座は384万に増えた。成長の中心は香港だけでなく、マレーシア、シンガポール、日本などへ広がっている。
ところが、2026年5月には中国証券監督管理委員会から約18.5億元の行政処分案を受けた。会社は約2.7億ドル相当を1〜3月期の費用に計上しており、単なる将来の懸念ではなく実際に株主資本を傷つけた問題である。さらに中国本土の既存顧客も段階的に縮小する可能性が高い。成長率だけを見て過去の勢いを延長する評価は危険だ。
10年後も証券の保管、決済、融資、規制対応は必要とされる。一方、売買画面や情報サービスにはAIによる代替が進み、手数料率も下がり続けると考える。資本コスト9.0%、悲観側40%の前提では、現在の時価総額約140億ドルに対する本質価値は約206億ドルで、差は約47%の割安となる。将来の利益をかなり伸ばせる余地がある反面、最悪の場合には現在価値を大きく失う。価格面の魅力と事業の不確実性を分けて判断したい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に10年後もこの会社の仕事が必要かを問う。答えは、証券の執行・保管・清算・信用供与については明確に必要である。株式を取引する仕組みはAIによって便利になるが、投資家の財産を預かり、法令に従って決済し、損失に耐える役割までなくなるわけではない。フトゥの価値は画面そのものより、その背後の金融事業にある。
次に、利益を再投資する価値を考える。既存のシステムを使って顧客を獲得できれば、追加投資に対する利回りは高い。2025年の高い営業利益率と海外口座の増加は、その可能性を示している。ただし金融会社の成長には規制資本と顧客獲得費用が必要だ。会計上のROEだけで将来の成長を予測してはいけない。顧客資産、売買代金、金融収益の利ざやが実際に増えなければ利益は増えない。
経営への信頼は割り引いて考える。2026年の行政処分案は、事業の急成長と規制対応が必ずしも同じ速度で進んでいなかったことを示す。議決権が創業者らに集中しており、一般株主が経営を是正する力も弱い。したがって、良い金融事業であることと、持ち続けるうえでの確信度が高いことは別だ。
それでも現在の時価総額は、2025年の純利益と比較して低い水準にある。10年後の中立では、利益は今の約2倍に増えるが、手数料の低下と利益率の正常化を織り込む。さらに中国本土の縮小とAI代替を悲観側に反映した。安全域の根拠は高い倍率ではなく、既存の稼ぐ力と海外での成長余地である。最悪の場合に資本を大きく失う危険を認めたうえでも、期待価値には余裕があると判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの第一の柱は証券取引の手数料である。顧客が米国株、香港株、オプション、ETFなどを売買すると、取引金額に応じた手数料や取扱料金が入る。2025年の全市場合計売買代金は14.68兆香港ドル、証券手数料収入は13.58億ドルだった。平均的な実収料率は7.2bpで、2024年の7.8bpから低下した。顧客数と売買代金が増えても、競争が激しくなれば売上高は同じ勢いでは伸びない。
第二の柱は金利収益である。顧客の証拠金取引への融資、証券貸借、銀行預金などから収益を得る。2025年の受取利息は13.42億ドルで、証券手数料とほぼ同じ大きさだった。2026年6月末には信用融資と証券貸借の残高が951億香港ドルに増えた。顧客資産が積み上がるほど金融収益の機会が増えるが、預り金への金利還元や調達費用、貸倒れを考慮する必要がある。
第三の柱は投資信託の販売、為替交換、IPO関連、企業向けサービス、情報提供などである。2025年のその他収入は2.35億ドルだった。2026年6月末の運用商品残高は1802億香港ドル、累計IPO・IRサービス顧客は683社に達している。証券口座を開いた顧客に投信、為替、融資を提供できることは、単独の情報アプリにはない強みだ。ただし、これらの収益の細かな内訳は開示されていない。
会社の本質は金融取引の基盤と顧客獲得の仕組みを一体で持つことにある。独自開発した注文・決済・リスク管理のシステムを複数の国で使い、各国の許認可と現地サービスを組み合わせる。香港では富途牛牛、海外ではmoomooを軸に拡大してきた。2026年にはタイ市場への参入準備が進み、香港では暗号資産関連の認可事業も広がった。だが、新しい市場への参入が自動的に高い利益を生むわけではない。広告費、現地の規制対応、顧客資産の定着が伴って初めて株主の利益になる。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が簡単には奪えない強みは、金融ライセンス、顧客資産、利用習慣、情報コミュニティの組み合わせにある。2023〜2025年の入金済み顧客の四半期継続率は平均98%超だった。株式の移管には手続きが必要で、顧客は一度使い慣れた口座を簡単には変えない。香港のIPOでは、2025年の公募申込金額の49%が同社のプラットフォームを経由した。顧客が集まる場所に発行企業も集まる好循環がある。
資本効率にも強さがある。2025年の営業利益率は69.3%、ROEは28.3%に上昇した。過去の技術開発と規制基盤を多くの顧客で共用できるため、追加口座の限界費用は小さい。ただし2025年は売買代金が89.4%増えた好況年である。2026年4〜6月期の営業利益率は62.0%へ下がり、クラウド費用や販売促進費も増えた。2025年の最高水準を恒久的な実力とは考えない。
値上げの力は弱い。手数料率は2024年の7.8bpから2025年に7.2bpへ下がり、2026年4〜6月期の売買代金と収入から計算した参考値は約5.2bpである。売買市場や商品構成が違うため単純比較はできないが、取引量の拡大を単価の低下が一部打ち消している。安い手数料と便利な画面は、他社にも再現可能だ。顧客の粘着性は証明されたが、独占的な価格決定力までは証明されていない。
最大の弱点は支配構造と規制の集中である。創業者とテンセント系株主が保有するClass B株に議決権が集中し、2025年20-Fでは両者合計の議決権は約90%だった。少数株主は経営方針や資本配分を変えにくい。VIEの直接収益は小さいものの、中国本土の技術・開発拠点と契約支配の仕組みには制度上の不確実性が残る。堀は一定の深さを持つが、現時点では強い独占的な堀とは評価しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
個人向けオンライン証券は、投資人口の拡大と手数料の低下が同時に進む市場である。香港取引所の2025年の年間証券売買代金は約61.5兆香港ドル、平均日次売買代金は約2498億香港ドルだった。米国ではロビンフッド、インタラクティブ・ブローカーズ、チャールズ・シュワブなどが、低料金と商品拡充で競う。アジアではタイガー・ブローカーズや地場証券、日本ではSBI証券、楽天証券などが強い。市場全体が伸びても、競争によって手数料の取り分が薄くなる構造は変わらない。
フトゥは香港のネット証券で強い位置を築いた。2025年の香港IPO公募申込金額における49%という割合は、単なる口座数以上の顧客集中を示す。一方、全市場の売買代金14.68兆香港ドルには米国株などが含まれるため、香港取引所全体の61.5兆香港ドルと割って香港株の市場シェアを計算することはできない。国別の比較可能な売買シェアも十分には開示されていない。したがって、10年後の見通しでは開示された市場規模と口座・売買代金の増加を重視し、未確認の世界シェアを捏造しない。
規模を比べると、2026年夏のインタラクティブ・ブローカーズは約546万口座、顧客資産約9630億ドルを持つ。ロビンフッドは約2840万の入金済み顧客と約3690億ドルのプラットフォーム資産を持つ。シュワブの顧客資産は13兆ドル規模である。フトゥは顧客資産1784億ドルと、まだ相対的に小さい。ただし地域構成と口座の定義が違うため、これらの数字は競争相手との規模比較であり、同一市場の厳密なシェアではない。
10年の成長余地は、香港の成熟した基盤より、東南アジアと日本を含む海外顧客にある。中立では、実質の投資需要が伸び、フトゥが新しい市場で一定のシェアを獲得すると考える。ただし手数料の引き下げにより、売買代金ほどには証券収入が伸びない。短期金利3.5〜4%の環境は金利収益を支えるが、顧客が高利の預金やMMFに移れば利ざやは圧迫される。暗号資産や予測市場は新しい収入源になり得る一方、取引量の変動と規制費用も増やす。
AIも競争の形を変える。投資情報の検索、分析、注文画面の操作は、AIエージェントが代行できるようになる。フトゥ自身もAI投資支援機能を導入しているが、独立したAI売上の実績は開示していない。取引の執行・清算・融資にはライセンスと資本が必要なので、金融の中核が消えるわけではない。しかし顧客が操作画面の便利さだけで証券会社を選ぶ時代は終わり、手数料、金利条件、信用力が一段と重要になる。
資本政策と M&A
資本配分は、自社株買いと配当、海外市場の開拓が中心である。2021〜2023年には自社株買いを実施し、2025年には約2.8億ドルの配当実績がある。2026年4月には総額約3.65億ドルの現金配当を決定した。2025年11月には2027年末までを対象とする最大8億ドルの自社株買い枠を設定し、2026年6月末までに約4.18億ドルを実行した。これは実際の株主還元だが、将来10年間に同じ規模を続けるという約束ではない。
株式報酬と株数の増減を無視して買戻し総額をそのまま還元とは数えない。2025年の株数は約0.9%増えたため、買戻しだけでは希薄化を完全に打ち消せない局面がある。各筋書きのpayout_okuは、配当と自社株買いから株式報酬による増発や新株発行の影響を差し引いた正味の額である。中立では10年間に約130億ドルを還元し、残る利益を自己資本と成長投資に充てると考える。
大規模買収による成長よりも、自社開発の金融基盤と現地の認可取得による海外展開が中心だった。香港の暗号資産関連サービスやタイでの事業拡張もこの延長線上にある。現時点で合意済みの非公開化や上場廃止計画は確認されない。2026年の中国本土に関する行政処分案は、一時費用だけでなくコンプライアンス体制の欠陥を示した。今後の資本配分では、買収や新商品への投資よりも先に、規制資本の確保と少数株主への正味の還元が守られるかを見たい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フトゥは、香港で培ったデジタル証券の仕組みを他国へ広げられる数少ない企業である。2023年末の入金済み口座は171万だったが、2026年6月には384万へ増えた。顧客資産は約1784億ドルとなり、売買代金も拡大した。四半期の顧客継続率が98%を超えることは、単なる広告による一時的な口座獲得ではなく、一定の定着があることを示す。
成長余地はまだ大きい。インタラクティブ・ブローカーズやシュワブと比べると、フトゥの顧客資産は小さい。マレーシア、日本、シンガポールなどで顧客基盤を広げれば、口座数だけでなく資産残高も増える。香港ではIPO公募申込金額の49%を集めた実績があり、資金が集まるほど企業向けのサービスも提供しやすくなる。現地のライセンス取得とシステム投資には費用がかかるが、既存の技術を共用することで長期の固定費負担を抑えられる。
10年後に入金済み口座が1300万程度まで増えれば、証券取引と金融収益の両方が大きくなる。手数料率が現在より低下しても、売買代金の増加が上回る可能性がある。信用取引と顧客預り金の運用も規模を増す。AIは競争を激しくするが、同社がすでに開発したAI支援機能を使って顧客対応と運営費を削減できる。これは新しいAI売上を当てにする話ではなく、既存事業の効率改善である。
2026年の行政処分案は深刻だが、会社はすでに全額を費用計上した。海外市場の成長が続けば、中国本土の縮小を吸収する時間がある。2026年6月には投資適格級の信用格付けも維持された。長期の規制リスクを認めても、証券の執行と顧客資産の保管という本業が残り、利益の再投資と還元が続く可能性は十分にある。
慎重な見方
2025年の好業績は、金融市場の活況に大きく依存している。売買代金は前年比89.4%増え、純利益は2倍を超えた。しかし、投資家が頻繁に売買した時期の利益を10年後まで延長することはできない。2026年4〜6月期には売買代金が増えても平均実収手数料率が下がり、営業利益率も2025年の水準から低下した。取引金額が増えるほど手数料を得られるが、単価を守る力は弱い。
中国本土の規制問題は、既に支払う金額が見えたから終わりという話ではない。2026年5月、当局は無許可での証券、基金販売、先物業務などを問題視した。会社が発表した行政処分案の額は約18.5億元であり、当局の最終判断や事業の是正が残っている。2026年3月末の入金済み口座のうち、中国本土は約13%を占めた。口座数の割合が収益の割合と同じとは限らず、資産額の大きい顧客が失われれば、口座数から想像する以上の利益が消える可能性がある。
競合も手を緩めない。香港ではタイガー・ブローカーズ、米国ではロビンフッドとインタラクティブ・ブローカーズ、日本ではSBI証券や楽天証券が低料金で顧客を奪い合う。海外進出は市場が広がるだけでなく、現地の規制対応、宣伝費、商品開発費も増やす。特に金利収益への依存が大きくなると、信用取引の損失や顧客現金の流出が利益を傷つける。
AIエージェント代替によって情報検索、投資分析、注文画面の操作は他社のサービスから利用できるようになる。取引の基盤は残っても、便利な画面に顧客を囲い込む力は弱まる。さらに創業者とテンセント系株主の議決権集中やVIEの契約構造がある。仮に会社の帳簿上の自己資本が増えても、一般株主が同じ価値を自由に受け取れる保証はない。10年後には利益率が低下し、優良な成長金融から普通の低料金証券会社へ変わっている危険がある。
どちらに重みを置いたか
事業の成長力については前向きな根拠が強いが、予測の確実性については慎重な判断が勝る。楽観とやや楽観の合計を32%、中立を28%、やや悲観と悲観の合計を40%とした。これは中国本土事業の縮小、議決権の集中、手数料競争、AIによる情報・操作画面の代替を反映したものだ。同じ不確実性を資本コストの寿命上乗せへ重複して加えていない。
10年後の中立純利益は27.8億ドルで、2025年の14.5億ドルからは伸びるが、2025年の最高利益率は維持しない。資本コスト9.0%と成熟後の低い成長率から、利益の質に応じた価値を評価する。確率加重後の現在価値は約206億ドルであり、現在の約140億ドルに対して約47%の割安となる。結論は割安だが、悲観時の損失は大きく、通常の低リスク金融株と同じ確信度では持てない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 225.09 ドル318 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 78.10 ドル110 億ドル)。 今の値に割り戻すと 145.84 ドル206 億ドル、今との差 +48.1%、 期待の年率 +14.4%(資本コスト 9.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 558.19 ドル789 億ドル | 159.17 ドル225 億ドル | +628.7% | +27.1% | 71.74 ドル101 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 363.45 ドル514 億ドル | 116.73 ドル165 億ドル | +387.7% | +21.1% | 105.64 ドル149 億ドル |
| 中立 | 28% | 220.27 ドル311 億ドル | 91.97 ドル130 億ドル | +217.1% | +15.3% | 87.43 ドル124 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 93.33 ドル132 億ドル | 36.79 ドル52 億ドル | +32.2% | +3.3% | 31.23 ドル44 億ドル |
| 悲観 | 16% | 32.73 ドル46 億ドル | 12.03 ドル17 億ドル | −54.5% | −8.5% | 7.16 ドル10 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 225.09 ドル318 億ドル | 78.10 ドル110 億ドル | +208.0% | +14.4% | 303.19 ドル429 億ドル |
今の株価時価総額 98.45 ドル139 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:海外展開が成功し、顧客資産と金融収益が大きく成長 利益 56 億ドル · PER 14.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 558.19 ドル789 億ドル
2035年末には入金済み口座が約1300万に達し、海外顧客が成長の中心になる。香港でのIPO関連の強さを保ちながら、マレーシア、シンガポール、日本、タイなどで有力なネット証券の地位を築く。ロビンフッドやインタラクティブ・ブローカーズとの競争は続くが、顧客が増えることで実質売買代金も大きく伸びる。手数料率は2025年より低いものの、売買金額の拡大が単価低下を補う。
顧客の現金、信用融資、短期運用資産も厚くなり、金利収益対象の名目残高は約1250億ドルとなる。短期金利が3.5〜4%にとどまっても、融資需要と顧客資産の増加によって収益は拡大する。AI支援機能を運営業務に活用し、顧客対応の費用を削減するが、独立したAI新規売上は見込まない。新しい国でのサービス開発が収益化し、営業利益率は高い水準を維持する。
10年後の純利益は56億ドル、自己資本は171.4億ドルとなる。2035年に向けて売上成長は次第に落ち着き、最後の数年は年10%以下に減速すると考える。正味の株主還元は累計225億ドルで、事業に必要な自己資本を十分に残せる。大型買収をせずとも成長でき、2035年以降も規制対象の本業には一定の成長余地がある。
- 証券売買手数料・取扱収入:数量 68,000(2025年の購買力に換算した年間証券売買代金(億ドル))× 価格 0.00(2025年購買力の取引代金1ドル当たり名目手数料収入率)→ 売上 53 億ドル・営業利益 34 億ドル。実質取引代金は2025年の3.61倍。名目取引代金は約9.6兆ドル相当。物価調整後の実際の手数料率は約5.55bpで、2025年の7.2bpを下回る。
- 信用融資・証券貸借・預金利息収入:数量 887(2025年購買力に換算した利息収益対象の資産残高(億ドル))× 価格 0.07(2025年購買力の残高1ドル当たり名目受取利息率)→ 売上 62 億ドル・営業利益 45 億ドル。名目利息対象残高は約1250億ドル、実効受取利回りは約5.0%。顧客資産の拡大と融資需要が支える。
- 資産運用商品・為替・IPO・情報等のその他収入:数量 100(2025年を100とする有料サービス提供数量の代理指数)× 価格 0.03(代理数量1指数当たりの名目収入(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。AIエージェント代替のため情報・操作サービス数量は増えず、価格も2025年の1.15倍以下にとどまる。
倍率:k9.0%、10年後の事業ROEは56.0÷171.4=32.7%。堀は普通で残存割合1/2とし、RONIC=9.0%+0.5×(32.7%−9.0%)=20.8%。2035年以降のgは3.5%で、内訳は顧客資産・市場需要の実質増加と一部シェア拡大、物価3.5%に対する手数料率低下の相殺である。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)は約15.66倍。海外事業の成長持続性に不確実性が残るため上限の約90%の14.09倍とした。2035年末の成長速度は年10%以下と想定し、利益がさらに高成長を続ける追加期間の価値は足していない。GAAP利益を使用し、株式報酬は足し戻していない。
確率:香港で築いた顧客獲得力を東南アジアと日本などで再現し、中国本土事業の縮小を十分に補う筋書き。競合より速く成長しながら資本効率を守る必要があるため10%とした。
やや楽観 22% やや楽観:海外口座が着実に増え、高い収益性を維持 利益 41 億ドル · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 363.45 ドル514 億ドル
香港での強い顧客基盤が続き、東南アジアと日本で口座数が増える。2035年末の入金済み口座は約1100万となる。ロビンフッドやタイガー・ブローカーズとの競争によって売買手数料率は下がるが、年間売買代金は十分に増加する。香港IPOの申込と企業向けのサービスも一定の地位を守り、既存顧客から継続的に取引収入を得られる。
金利収益対象の名目残高は約950億ドルとなり、預かり現金と信用融資の増加が収益を支える。一方で顧客が高金利の資産へ資金を移すため、実効利回りは2025年より低下する。新しい国での宣伝費と規制対応費用が増え、2025年の最高利益率は再現しない。AIの導入による効率化はあるが、競合も同様の技術を使うため利益率の改善効果は限定的である。
10年後の純利益は41.2億ドル、自己資本は162.2億ドルとなる。既存のライセンス、技術、顧客資産による規模の利益が続き、ROEは25%程度を保つ。株主への正味の還元は10年間で165億ドルとなり、成長投資に必要な元手を十分に残す。大型買収に頼らない資本配分が続く。
- 証券売買手数料・取扱収入:数量 57,500(2025年の購買力に換算した年間証券売買代金(億ドル))× 価格 0.00(2025年購買力の取引代金1ドル当たり名目手数料収入率)→ 売上 40 億ドル・営業利益 25 億ドル。実質取引代金は2025年の3.05倍。名目の平均実収手数料率は約4.94bpまで低下する。
- 信用融資・証券貸借・預金利息収入:数量 674(2025年購買力に換算した利息収益対象の資産残高(億ドル))× 価格 0.07(2025年購買力の残高1ドル当たり名目受取利息率)→ 売上 45 億ドル・営業利益 32 億ドル。名目の利息対象残高は約950億ドル、実効利回りは約4.75%。
- 資産運用商品・為替・IPO・情報等のその他収入:数量 92.0(2025年を100とする有料サービス提供数量の代理指数)× 価格 0.03(代理数量1指数当たりの名目収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。情報サービスのAI代替を考慮し、数量は2025年の0.92倍、価格は1.13倍未満。
倍率:k9.0%、事業ROEは41.2÷162.2=25.4%。堀は普通で残存割合1/2、RONICは約17.2%。2035年以降のgは3.0%で、実質の投資需要と顧客資産の増加、シェアの維持、物価上昇に対する手数料率低下から求めた。翌年利益ベースの式に1+gを掛けた正当化PERの上限は約14.17倍。海外展開の成長が永続するとはみないため、その約88%の12.47倍を採用した。GAAP利益を使い、SBCを足し戻さない。
確率:中国本土の縮小を海外の増加が補い、香港での顧客定着と技術基盤を維持する筋書き。海外の市場開拓に成功する可能性はあるが、各国の低料金競争も強いため22%とした。
中立 28% 中立:海外成長は続くが、手数料と利ざやが正常化 利益 28 億ドル · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 220.27 ドル311 億ドル
中国本土の既存口座が段階的に縮み、成長の中心は海外へ移る。2026年の行政処分案による一時費用と事業是正を吸収し、2035年末には入金済み口座が約800万となる。香港では優位を維持するが、米国ではロビンフッドとインタラクティブ・ブローカーズ、日本ではSBI証券や楽天証券との競争が続く。顧客資産と実質の売買代金は増えても、手数料の単価は下がる。
2035年の実質売買代金は約4.5兆ドル、名目では約6.3兆ドルとなる。顧客の現金や信用融資を含む利息対象の名目残高は約760億ドルに増えるが、実効利回りは4.45%程度まで低下する。情報・操作画面の価値はAIエージェントによって薄れ、その他サービスでは物価並みの値上げができない。全社の営業利益率は2025年の69.3%から60%台前半に落ち着く。
10年後の純利益は27.8億ドル、自己資本は130.2億ドルとなる。2025年からの純利益累計は約208.8億ドルで、2026年の規制関連の一時費用約2.7億ドルを含む。正味の株主還元は130億ドルとし、信用融資と海外の営業基盤を維持するための資本を残す。買収による利益の上乗せは見込まず、既存事業の数量拡大と規模の利益だけを評価する。
- 証券売買手数料・取扱収入:数量 45,000(2025年の購買力に換算した年間証券売買代金(億ドル))× 価格 0.00(2025年購買力の取引代金1ドル当たり名目手数料収入率)→ 売上 28 億ドル・営業利益 16 億ドル。実質売買代金2.39倍、名目実収手数料率は約4.46bp。2025年の7.2bpからの低下を明示的に織り込む。
- 信用融資・証券貸借・預金利息収入:数量 539(2025年購買力に換算した利息収益対象の資産残高(億ドル))× 価格 0.06(2025年購買力の残高1ドル当たり名目受取利息率)→ 売上 34 億ドル・営業利益 24 億ドル。利息対象の名目残高は約760億ドル、実効利回りは4.45%。貸倒れと調達費用の正常化を含む。
- 資産運用商品・為替・IPO・情報等のその他収入:数量 85.0(2025年を100とする有料サービス提供数量の代理指数)× 価格 0.03(代理数量1指数当たりの名目収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。AIエージェント代替を考慮し、代理数量0.85倍、価格1.08倍。情報部分が縮み、為替・IPO収益が一部を補う。
倍率:k9.0%、事業ROEは27.8÷130.2=21.35%。堀は普通で残存割合1/2、RONIC=9.0%+0.5×(21.35%−9.0%)=15.18%。10年目以降のgは2.5%。実質の顧客資産・取引需要増1.5%、シェア増0.5%、物価を含む価格要因+3.5%、取引手数料率と利ざやの低下およびAI情報サービス縮小マイナス3.0%の合成で求めた。正当化PER上限は約13.17倍で、その85%の11.20倍を採用した。高い利益率と顧客定着は評価するが、価格決定力と規制の不確実性を考慮した。GAAP利益を使用し、株式報酬や償却を二重に足していない。
確率:2026年の海外口座の増加を基礎にするが、中国本土の既存事業の縮小を織り込む。2025年の取引活況と最高利益率は続かず、競合による手数料引き下げが定着する筋書きとして28%とした。
やや悲観 24% やや悲観:中国本土の縮小と低料金競争で利益が伸びない 利益 14 億ドル · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 93.33 ドル132 億ドル
中国本土の既存口座が段階的に縮小し、資産額の大きい顧客も流出する。香港ではタイガー・ブローカーズなどとの競争が激しくなり、日本や米国でも低料金の競合が優位を保つ。海外での口座獲得は続くが、顧客1人当たりの収益が伸びず、2035年末の入金済み口座は約600万にとどまる。実質の売買代金は増えても、手数料率は2025年の半分程度まで低下する。
金利収益対象の名目残高は約520億ドルにとどまる。信用融資の伸びが鈍り、顧客が高利の資金運用商品へ移ることで実効利回りも3.9%まで下がる。AIエージェントの普及によって、投資情報や操作画面を通じた顧客囲い込みの力が弱まる。宣伝費、クラウド費用、各国の規制対応費用が残り、営業利益率は50%台前半へ低下する。
2026年の一時費用に加え、2027〜2029年の本土縮小や市場低迷で累計利益が直線的な成長経路より約14億ドル少なくなる。10年後の純利益は13.8億ドル、自己資本は124.4億ドルとなり、ROEは11%程度へ下がる。正味の還元は52億ドルにとどまり、経営は金融事業を支える自己資本を優先する。高成長企業という評価は失われる。
- 証券売買手数料・取扱収入:数量 35,000(2025年の購買力に換算した年間証券売買代金(億ドル))× 価格 0.00(2025年購買力の取引代金1ドル当たり名目手数料収入率)→ 売上 17 億ドル・営業利益 8 億ドル。名目手数料率は約3.5bp。海外で数量は増えるが、低料金競争で実収料率が大きく下がる。
- 信用融資・証券貸借・預金利息収入:数量 369(2025年購買力に換算した利息収益対象の資産残高(億ドル))× 価格 0.05(2025年購買力の残高1ドル当たり名目受取利息率)→ 売上 20 億ドル・営業利益 12 億ドル。名目利息対象残高約520億ドル、実効利回り3.9%。顧客資金の高利商品への移動が進む。
- 資産運用商品・為替・IPO・情報等のその他収入:数量 70.0(2025年を100とする有料サービス提供数量の代理指数)× 価格 0.02(代理数量1指数当たりの名目収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替が進み、情報・操作サービスの代理数量は0.70倍。価格もほぼ据え置き。
倍率:k9.0%、ROEは13.8÷124.4=11.09%、残存割合1/2でRONICは約10.05%。構造的な手数料低下を受けて2035年以降のgは1.5%とする。これは市場の実質数量の増加がわずかで、シェア維持が難しく、名目の価格上昇も手数料低下に相殺されるため。正当化PERの上限は約11.51倍だが、規制と利益率の不安定さから83%の9.56倍とした。中立の11.20倍より明確に低い。
確率:中国本土顧客の縮小が想定以上に収益を傷つけ、海外では宣伝費と価格競争が重なる筋書き。事業自体は存続してもROEが下がる可能性は十分にあるため24%とした。
悲観 16% 悲観:規制と競争で構造的に負け、資産価値が中心になる 利益 3 億ドル · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 32.73 ドル46 億ドル
中国本土の事業が事実上消え、香港でも低料金の競合に顧客を奪われる。規制強化によって口座開設や信用融資の制約が増え、会社は海外市場へ十分な速度で移行できない。2035年末の入金済み口座は約400万にとどまり、既存顧客の取引も低単価化する。売買代金は物価と市場成長によって名目では増えるが、平均実収手数料率は約2.5bpまで低下する。
信用融資は利益源から資本を拘束する事業へ変わる。市場急落や不正取引によって貸倒れが発生し、利息対象の名目残高は2025年程度の250億ドルに戻る。AIエージェントが投資情報と注文操作を仲介するため、自社画面に利用者を囲い込む価値も大きく低下する。証券取引のライセンスと清算機能は残るが、優良な金融事業とは呼べなくなる。
10年後の純利益は3.3億ドル、ROEは約3.3%となり資本コスト9.0%を大きく下回る。期間中には2026年の規制費用に加え、約19億ドル相当の追加的な信用損失・業績の谷を想定する。累計純利益は67億ドルにとどまり、正味の還元は17億ドルである。帳簿上の自己資本が残っても、その全額を市場価値とはみなさない。規制資本と換金可能な資産を処分費用控除後で評価し、事業の存続価値より資産回収価値が中心となる。
- 証券売買手数料・取扱収入:数量 23,000(2025年の購買力に換算した年間証券売買代金(億ドル))× 価格 0.00(2025年購買力の取引代金1ドル当たり名目手数料収入率)→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。名目実収料率は約2.5bpまで低下し、売買代金が名目で増えても手数料収入は2025年を下回る。
- 信用融資・証券貸借・預金利息収入:数量 177(2025年購買力に換算した利息収益対象の資産残高(億ドル))× 価格 0.05(2025年購買力の残高1ドル当たり名目受取利息率)→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。名目残高は約250億ドル、実効利回り3.4%。信用損失と調達費用が利益を圧迫する。
- 資産運用商品・為替・IPO・情報等のその他収入:数量 45.0(2025年を100とする有料サービス提供数量の代理指数)× 価格 0.02(代理数量1指数当たりの名目収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替と事業縮小が重なり、情報・操作サービスを含むその他収益が2025年の半分以下になる。
倍率:ROEは3.3÷101.4=約3.25%で資本コスト9.0%を下回る。利益を永続させる価値の目安は純利益3.3億ドル÷9.0%=約36.7億ドルであり、保守的な回収可能資産46.0億ドルより小さい。そこで悲観は資産の床で測る。倍率の分母は2035年の帳簿自己資本ではなく2025年の自己資本51.4億ドルとし、回収費用等を反映したPBR0.90倍で46.26億ドルとした。過去の谷のPBRや市場倍率を根拠にしていない。
確率:中国本土の事業喪失、海外の市場シェア低下、低料金化、信用損失、支配株主の資本配分問題が重なる構造的な負け。倒産までは前提にしないが、金融の信頼が傷つく尾部リスクとして16%を割り当てた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
証券売買手数料・取扱収入
米国株、香港株、ETF、オプションなどの売買執行と関連サービスから得る手数料。売買金額が数量で、平均実収手数料率が価格となる。
| 数量2025年の購買力に換算した年間証券売買代金(億ドル) | 価格2025年購買力の取引代金1ドル当たり名目手数料収入率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18,820 | 0.00 | 14 | 9 |
| 10 年後 中立 | 45,000 | 0.00 | 28 | 16 |
取り方:会社の2025年20-Fによる年間取引代金14.68兆香港ドルを、2025年の米ドル換算で約1.882兆ドル、すなわち18820億ドルとした。会社開示の平均実収手数料率7.2bpと整合する収入13.584億ドルを用いた。2024年の料率は7.8bp。2026年4〜6月期は取引代金6.42兆香港ドル、手数料収入3.3606億ではなく33.606億香港ドルであり、参考料率は約5.2bpとなる。営業利益8.6億ドルは非開示の経費配賦を含む推計で、取引処理費用と顧客獲得費用を控除したもの。世界全体の比較可能な市場シェアは非開示である。香港では2025年の年間証券売買代金が約61.5兆香港ドルだが、フトゥの全市場取引代金には米国株が含まれ、直接割って香港市場シェアとはしない。2035年のvolumeは2025年購買力に直した実質取引代金とし、物価による名目金額の増加はprice側で扱う。
信用融資・証券貸借・預金利息収入
顧客への信用融資、証券の貸借、顧客資金を含む銀行預金などから得る金利収益。金利収益を生む残高と実効収益率で測る。
| 数量2025年購買力に換算した利息収益対象の資産残高(億ドル) | 価格2025年購買力の残高1ドル当たり名目受取利息率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 0.05 | 13 | 11 |
| 10 年後 中立 | 539 | 0.06 | 34 | 24 |
取り方:2025年末の連結貸借対照表から、顧客のための保有現金1134億香港ドル、信用融資等646億香港ドル、自社現金104.7億香港ドル、短期投資66.9億香港ドルを合計し、米ドル換算で約250億ドルの利息対象残高を代理数量とした。実際の平均残高と個別の貸出金利は公表値から完全には分離できないため、2025年の受取利息13.415億ドルを割った約5.36%は収益構造を示す混合実効率であり、貸出金利そのものではない。営業利益10.5億ドルは支払利息と配賦経費を控除した推計。顧客預り金は会社に自由に分配できる資産ではない。顧客資産全体は2025年末1584億ドルで、2026年6月末には1784億ドルに増えた。今後のvolumeは物価を除いた実質残高、priceは物価と純利回り変化を含める。
資産運用商品・為替・IPO・情報等のその他収入
投資信託販売、為替交換、IPO申込、法人向けサービス、データ・情報提供など。AIによる情報・操作画面の代替を受ける部分を含む。
| 数量2025年を100とする有料サービス提供数量の代理指数 | 価格代理数量1指数当たりの名目収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.02 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.03 | 2 | 1 |
取り方:2025年の会社開示のその他収入2.354億ドルを直接用いる。この中には為替交換、投信販売、IPO関連、企業向けサービス、データ・情報などが混在し、個別の契約件数と単価は開示されていない。2025年末の資産運用商品残高は1796億香港ドル、IPO・IR関連の累計法人顧客は600社、入金済み口座は336.5万だったが、各事業の収益を一意に割り振れないため架空の契約件数を作らず代理指数を採用した。営業利益1.2億ドルは経費配賦を含む推計である。AIエージェント代替の影響を受ける情報・操作画面部分の売上比率は分離開示されていないため、安全側にその他収入全体を影響対象として扱う。中立の数量85は2025年の0.85倍、価格は1.08倍で、操作画面型の規則の範囲内とした。これは為替やIPOの物理的な処理量が必ず15%減るという意味ではなく、未開示の収益内訳を保守的に評価する代理値である。
リスクと懸念
中国当局による規制・行政処分と事業縮小
2026年5月、中国証券監督管理委員会は無許可の証券業務、基金販売、先物業務などを問題視し、約18.5億元の行政処分案を提示した。会社は約2.7億ドル相当を2026年1〜3月期に費用計上したが、最終的な処分や事業の是正は別の問題である。2026年3月末の中国本土顧客は入金済み口座の約13%だった。資産額の大きな顧客が流出すれば、口座数の割合以上の収益が失われる可能性がある。
証券取引手数料の構造的な低下
2024年の平均実収手数料率7.8bpは2025年に7.2bpへ低下した。2026年4〜6月期の実績から求めた参考料率は約5.2bpである。市場と商品構成の違いに注意が必要だが、長期的な値下げ圧力は明らかだ。競合はロビンフッド、インタラクティブ・ブローカーズ、タイガー・ブローカーズなどである。取引量が増えても手数料率の低下がそれを上回れば収益は縮む。
信用融資・預り資金・市場循環
金利収益は2025年の売上高の約46%を占める。信用融資と証券貸借の残高は2026年6月末に951億香港ドルまで増えたが、資金調達費用と担保価値の下落が同時に起きると利益を大きく失う。株式市場の下落時には売買代金の減少と貸倒れが重なり、顧客資産の流出も起こりやすい。高い金融収益を安定した預金利ざやと同じように評価することは危険である。
AIエージェント代替
投資情報の検索、銘柄分析、投資助言の一部、注文画面の操作はAIエージェントによって代替され得る。フトゥは独自のAI機能を提供しているが、独立したAI事業の有料売上実績は確認できない。情報・操作画面を中心とした部分には、10年後の数量0.85倍、価格1.08倍という保守的な中立前提を適用した。一方、証券の執行・保管・融資は規制対象の金融機能として残るため、全社売上の大半が同じ割合で消滅するとは考えない。
支配株主・VIE・少数株主の権利
創業者とテンセント系株主はClass B株を通じ、会社の議決権の約90%を支配している。一般株主は取締役の選任や大型投資、事業再編について実質的な影響力を持ちにくい。中国本土のVIEは2025年の直接収益への寄与が小さいものの、技術開発などの事業基盤には中国の制度上の制約がある。契約による支配は直接の株式所有と同じ強さではなく、将来の紛争や規制変更が不利に働く可能性がある。
海外展開の採算・新規事業の不確実性
日本、マレーシア、タイなどの市場拡大には、広告費、現地の許認可、システム開発、顧客保護体制が必要になる。新規口座数が増えても顧客資産が少なければ収益化は遅れる。2026年4〜6月期には販売促進費が前年同期比53.1%増え、AI対応のクラウド費用も増加した。暗号資産や予測市場の新商品は取引機会を増やす半面、新しい監督規制と事業リスクを持ち込む。
還元の継続性と株式報酬
2025年の配当と2026年の自社株買いは実際の還元実績だが、2027年末までの買戻し枠は将来の恒久的な還元義務ではない。株式報酬による希薄化や海外事業の資本需要が大きくなれば、配当と自社株買いは縮む可能性がある。長期的な株主利益を判断するには、発表された買戻し総額だけでなく、発行済み株式数の変化と自己資本の積み上がりを合わせて確認する必要がある。
今後の分かれ目
- 中国当局の行政処分が確定し、既存本土顧客の整理後も香港・海外の収益が安定したら
- 規制面の最大の不確実性が和らぐ。海外口座と顧客資産の増加が続くことを確認したうえで、やや悲観・悲観の確率を引き下げ、やや楽観側を厚くする。
- 年間の入金済み口座の純増が80万以上で続き、顧客資産も継続的に増加したら
- 中立の海外顧客獲得を上回る進展と判断する。ただし口座数だけではなく、平均顧客資産と収益性を確認して、証券売買数量と利息対象残高を上方修正する。
- 証券取引の平均実収手数料率が4bpを下回り、売買代金の拡大でも手数料収入が増えなくなったら
- 証券取引の価格決定力が想定以上に弱い証拠となる。中立の証券収益と営業利益率を下げ、やや悲観側の確率を高める。
- 顧客資産が増えても金利収益が伸びず、信用融資の貸倒れと資金調達費用が増加したら
- 金利収益対象残高の伸びだけでは価値を生まないと判断する。実効利回りと純利益を引き下げ、金融事業の資本需要と必要な自己資本を増やして評価する。
- AI投資支援機能について独立した有料売上と継続率が開示され、顧客が料金を払って使い続ける実績が確認できたら
- AIエージェント代替によるその他収入の縮小前提を部分的に見直す。ただし金融ライセンスや保管機能と異なり、情報サービスだけで強い堀と認めるには追加の解約率と値上げ実績が必要となる。
- 配当と自社株買いが継続し、株式報酬による希薄化を差し引いても純利益の半分以上が株主へ戻る状態が続いたら
- 経営の資本配分に対する確信度を高める。正味の還元見通しを改善し、将来の自己資本の増加とROEへの影響を再計算する。
- 香港の顧客継続率が大幅に低下し、海外でも顧客獲得費用が上昇したら
- 口座移管の手間やコミュニティによる堀が弱まっていると判断する。成長率よりも顧客資産の流出を重視し、悲観の数量と利益率に近づける。
見ておくもの
- 中国証券監督管理委員会による行政処分の最終決定、事業是正の範囲、本土顧客の残高と取引状況
- 入金済み口座数と年間純増数。2026年会社目標80万口座との比較
- 顧客資産、平均顧客資産、入金済み顧客の四半期継続率98%超の維持
- 米国株・香港株の売買代金と平均実収手数料率。2025年7.2bpからの変化
- 信用融資・証券貸借残高、利息収入、支払利息、信用損失
- 香港と海外の顧客基盤の構成、海外市場における顧客獲得費用と採算
- 営業利益率。2025年69.3%と2026年4〜6月期62.0%からの推移
- 配当、自社株買い、株式報酬、ADS換算の発行済み株式数の増減
- AI投資支援機能の有料化実績と情報・調査サービスの収益構成
倍率と資本コストの決め方
財務の基準値は添付のfacts.jsonに従い、2025年の売上高29.3億ドル、営業利益20.3億ドル、純利益14.5億ドル、自己資本51.4億ドルを使った。2026年の四半期と規制処分は別途一次資料で確認した。取引代金、利息対象残高、その他サービスの代理数量から先に10年後の売上と利益を組み立て、現在の株価を倍率の根拠にしなかった。資本コストは基本8.0%と事業のqualityから9.0%とし、中立の正当化PER上限13.17倍に対して11.20倍を採用した。中立利益の増加はROEではなく顧客基盤と金融収益から説明する。現金は顧客預り金を含む金融事業の運転資金と区別し、余剰現金として加算していない。悲観は将来の帳簿自己資本ではなく現時点の回収可能資産を床とした。現在の市場価値との比較は最後に行った。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは米国株の基本8.0%にquality+1.0%を加えた9.0%。内訳はcycle+0.5%、pricing+0.5%、debt0%、life0%。β、市場PER、市場PBRからは決めない。会社全体の事業継続が危ういほどの財務困窮は確認されず、distressの上乗せは行わない。
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読んだ資料
- Futu Holdings Limited 2025 Form 20-F、2026年4月15日提出。事業構成、顧客資産、手数料率、財務、VIE、種類株と議決権。
- Futu Announces Second Quarter 2026 Unaudited Financial Results、2026年8月20日。最新四半期の顧客、取引高、金融収益、地域別展開。
- Futu Receives Investigation Notice and Administrative Penalty Pre-Notification Letter from the China Securities Regulatory Commission、2026年5月22日。