結論
ロイズ・バンキング・グループは、英国の住宅ローン、個人口座、企業金融、年金・保険を支える大手金融グループである。筆者の結論は割安だ。住宅ローン市場で約19%の残高シェアを持ち、預金基盤の厚さが長期の収益を支える一方、現在の値段はその持続力を十分に織り込んでいないと考える。
英国の銀行は成長市場ではない。人口や住宅供給が急増するわけではなく、ナットウエスト、バークレイズ、ネーションワイドなどとの金利競争も厳しい。それでも、家計が給与を受け取り、住宅を買い、企業が決済と借入を続ける限り、この事業は10年後も必要とされる。デジタル化は店舗の価値を下げても、預金を集め、信用リスクを管理し、資金を供給する銀行の役割そのものを消さない。
添付の2025年実績は純利益55.3億ドル、自己資本561.2億ドル、ROE9.8%である。2026年上半期には法定税引後利益が前年同期比23%増え、銀行の採算も改善した。2025年の自動車金融をめぐる費用で抑えられていた利益が回復し、長期金利に対応したヘッジ収益も増えている。ただし、これは信用損失が比較的落ち着いた局面の数字であり、毎年同じように伸びるとは考えない。
中立では、2035年の純利益を110億ドル、ROEを14%台と見る。資本コスト8.25%で将来の時価総額と10年間の正味還元を評価すると、5つの筋書きの確率加重価値は約1,039億ドルとなる。基準時価総額775億ドルに対する余裕は約34%だ。一方、自動車金融の補償問題、英国住宅市場への集中、預金獲得競争は無視できない。事業の寿命は長いが、利益の安定性には条件が付くという判断である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ロイズを単なる金利の上げ下げで儲ける会社とは見ない。英国の家計と企業の資金の流れに深く組み込まれた、長寿命の金融基盤と考える。預金、住宅ローン、決済、年金の顧客関係は、便利なアプリを作っただけでは簡単に奪えない。10年後もロイズが英国の主要銀行である可能性は高い。
一方、英国最大級の銀行であることと、強い値上げ力があることは違う。住宅ローン金利を競争相手より高くすれば顧客は移る。預金金利を低く抑え続ければ貯蓄が流出する。堀は存在するが、世界的な決済ネットワークや独占的な金融情報サービスほど強くない。利益率が高くても、それを永遠に維持できるとは限らない。
次に重要なのは、貸出を増やすためにどれだけ自己資本を残す必要があるかだ。銀行は預金という負債を原材料にする事業であり、利益をすべて配当に回して成長することはできない。自己資本を増やすことで得られる追加の利益が資本コストを超えるなら、内部留保に価値がある。そうでなければ貸出競争を追わず、配当と買い戻しを通じて株主に返す方がよい。
ロイズの魅力は、過大な海外投資や複雑な投資銀行業務に頼らず、比較的理解しやすい英国の金融需要から利益を得ていることだ。最大の問題は、英国の住宅市場と規制に集中している点である。自動車金融の補償問題は、過去の利益が後年になって失われる可能性を示した。これを一度限りの事故として忘れることはできない。
現在の時価総額約775億ドルに対して、10年先の期待価値は約1,039億ドルとなる。十分な資本を維持しながら普通株主へ還元を続けられるなら、安全域は存在する。ただしその安全域は住宅担保の健全性と経営の規律に依存する。筆者が長く保有する立場なら、短期の増益よりも預金シェア、信用損失、正味の資本還元を継続して確認する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、家計と企業から集めた預金を原資に貸出を行い、利ざやを受け取る銀行業である。ロイズ銀行、ハリファックス、バンク・オブ・スコットランドなどのブランドを持ち、約2,800万人の顧客と約100万の企業・団体との取引関係を築いている。2025年末の顧客向け貸出は約4,811億ポンド相当、預金は約4,965億ポンド相当であり、英国経済との結び付きは極めて強い。
リテール部門は住宅ローンが柱である。2025年末の英国住宅ローン残高は約3,231億ポンド相当で、英国市場の約19%を占めた。これにカード、個人ローン、自動車金融、当座預金、貯蓄口座が加わる。住宅ローンの利ざやは薄いが、給与振込口座や貯蓄口座を同時に持つ顧客が多いため、低コストの資金調達と継続取引に価値がある。ブラック・ホースによる自動車金融と、車両リースもこの部門の重要な収益源だ。
コマーシャル・バンキングは中小企業から大企業までを扱う。企業向け貸出だけでなく、決済、運転資金、貿易金融、金利・為替リスク管理などを提供する。企業の資金管理システムと結び付いた取引は住宅ローンより切り替えの手間が大きく、収益の安定に役立つ。ただし英国企業の借入需要は景気や設備投資に左右され、大口与信ではバークレイズ、HSBC、ナットウエストとの競争が避けられない。
スコティッシュ・ウィドウズを中心とする保険・年金・投資事業は、老後資金の積立と保険を担う。2025年末の管理資産は約2,800億ポンド相当で、職域年金と住宅保険に強みを持つ。2025年にはシュローダーズ・パーソナル・ウェルスの残りの持分を取得し、富裕層向け助言サービスを強化した。保険契約者のための運用資産から大きな投資収益が発生するが、その多くは保険負債に対応するため、銀行の利ざやと同じ利益率を当てはめてはいけない。
添付factsの2025年売上864億ドルは、金融収益を総額で捉えた数字である。会社の法定開示では、利息費用や保険契約負債に対応する金融費用を相殺した営業収益も別に公表される。このため、売上に対する単純な利益率より、貸出残高と利ざや、信用損失、保険の実質利益、普通株主に帰属する純利益を重視する。中央部門には投資事業、住宅賃貸、資金運用、グループ内の調整が含まれる。
優良さと弱いところ
ロイズの堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、長年の顧客関係と預金基盤にある。住宅ローン残高の約19%を握り、個人当座預金でも首位級の地位にある。顧客が給与振込、公共料金、貯蓄、住宅ローン、保険を同じ銀行グループで使えば、乗り換えには手間がかかる。預金の平均調達金利は2025年に1.88%であり、相応の無利息預金を持つことが資金調達上の利点となる。
ただし、この堀は独占的ではない。英国では口座切り替え制度が整っており、金融アプリから金利を比較することも容易になった。2025年の新規住宅ローン市場におけるロイズのシェアは18%で、前年の19.4%から低下した。ネーションワイドやナットウエストが攻勢を強める中、金利を自由に引き上げられる企業ではない。2026年上半期にも住宅ローンの貸出利ざやには競争圧力が残った。
それでも規模の利益は大きい。デジタル利用者は2025年に2,360万人に達し、信用審査、不正検知、資金洗浄対策、規制報告の固定費を巨大な顧客基盤に配分できる。新規参入企業が便利な画面を作れても、預金保険、規制資本、資金繰り、損失吸収力を一度に整えることは難しい。銀行免許と信用力は依然として参入障壁である。
資本効率は改善途上だ。2025年のROEは9.8%にとどまったが、2026年上半期の有形自己資本利益率は17.1%まで改善した。会社は2030年に約20%を目指すものの、普通株全体のROEと有形自己資本利益率は同じではない。過去ののれんや無形資産を除いた数字だけで将来の株主利益を高く評価しないことが重要だ。
AIエージェント代替の指定対象となる人月販売、席課金ソフト、広告制作、調査サービスは主要事業に当たらない。AIは顧客対応や事務処理の費用を下げる可能性がある一方、銀行の比較・切り替えを容易にする。費用面の恩恵だけを取り込み、預金や手数料の競争激化を無視することはしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
英国銀行業の長期成長は、住宅と企業の借入残高、預金の量、決済・年金取引の拡大によって決まる。英国中央銀行によれば、2025年末の住宅ローン残高は約1兆7,344億ポンド相当である。ロイズの英国住宅ローン残高約3,231億ポンド相当は、残高ベースで約18.6%に当たる。2025年の新規融資シェアはロイズ18%、ネーションワイド17%、ナットウエスト12.1%、バークレイズ10.8%、HSBC8.7%、サンタンデール8.6%だった。ロイズは首位だが、差は決して安全ではない。
中立の英国住宅ローン市場は、今後10年で実質約1.1倍と考える。人口増加は緩やかで住宅供給に制約があるため、融資件数の大幅増加は期待しにくい。ただし住宅価格と名目所得が物価とともに上がれば、貸出残高の名目額は増える。ロイズのシェアは大きく変わらず、残高と顧客との複合取引が伸びると見る。楽観では実質市場の拡大とシェア回復、悲観ではネーションワイドやデジタル銀行への顧客移動を考える。
個人預金ではナットウエスト、バークレイズ、HSBC、サンタンデールに加え、モンゾやスターリングなどが競争相手になる。家計が高利の貯蓄商品や短期金融商品へ移れば、銀行は預金金利を引き上げざるを得ない。ロイズは無利息預金と金利ヘッジの規模で有利だが、顧客の金利感応度が高まれば利点は縮む。企業融資では銀行以外のプライベートクレジットも競合になり、手数料の一部が銀行から離れる可能性がある。
英国の中小企業向け銀行融資残高は2025年末に約1,980億ポンド相当だった。ロイズの中小企業向け貸出は約283億ポンド相当で、定義の違いを含む概算シェアは14%程度となる。大企業向けも含む商業銀行貸出は約903億ポンド相当で、英国企業融資の主要行の一角を占める。中立では企業向け実質融資需要が緩やかに伸び、決済などの手数料が加わる。楽観ではインフラ投資と企業の設備投資が伸び、悲観ではノンバンクとの競争でシェアが下がる。
保険・年金ではアビバ、リーガル・アンド・ジェネラル、フェニックス系の事業が強い。ロイズ傘下のスコティッシュ・ウィドウズは職域年金や住宅保険で有力だが、運用報酬率には競争による下落圧力がある。管理資産は資金流入と市場価格の上昇で増えても、運用収益の多くが保険契約者に帰属するため、売上総額の拡大が株主利益に直結するわけではない。
循環の位置は信用損失が低い回復局面にある。2026年上半期の銀行純金利マージンは3.19%で前年同期から改善し、信用コストは貸出残高に対して年率約0.25%だった。長期の金利前提は固定し、低金利への回帰を利益拡大の条件にはしない。景気後退時には失業、住宅価格下落、企業破綻が同時に起きるため、信用損失の増加が預金利ざやの改善を打ち消す可能性がある。
資本政策と M&A
ロイズの資本配分は、危機後の再建から配当と自社株買いを重視する段階へ移った。添付factsでは2025年に配当約27億ドル、自社株買い約46億ドルが記録されている。2022年以降は普通株数が継続的に減少しており、株主に余剰資本を返す姿勢は明確だ。ただし2020年には金融規制当局の要請もあって配当を停止した。銀行の還元は毎年必ず続く約束ではない。
2026年上半期の普通株配当は前年同期比30%増となった。会社は2025年決算に伴う17.5億ポンド相当の自社株買いに加え、2026年7月に10億ポンド相当の追加買い戻しを発表した。自己資本比率CET1は2026年6月末の追加還元反映後で13.1%であり、会社は約13%を長期的な運営目安としている。今後は余剰資本の分配を半年ごとに検討する方針だ。
経営陣は2026年の基礎純金利収益を149億ポンド超、費用収益比率を50%未満、有形自己資本利益率を16%超と見込む。2030年には費用収益比率45%未満、有形自己資本利益率約20%、資本創出225ベーシスポイント超を目指している。これらは経営目標であり、2035年までの利益や還元額が保証されたものではない。
買収では、金融危機時のHBOS統合が長期にわたり信用損失と訴訟費用を残した。近年は富裕層事業や決済技術を補う小型案件へ重点が移り、2025年のシュローダーズ・パーソナル・ウェルス完全子会社化、2026年5月のカーブ取得がその例である。大型買収による急成長より、既存顧客への追加サービスと業務効率化に資金を使う方が合理的だ。
英国政府は過去に保有したロイズ株を2017年までに売却しており、現在の普通株に特定の公的支配株主はいない。ただしAT1など普通株に先立つ資本請求権と厳格な規制があり、連結純利益のすべてが普通株主のものではない。10年間の還元は、配当と買い戻しから株式報酬に伴う希薄化と増資による払い込みを差し引いた正味額で評価する。2026年上半期までに実行され、現在の株数に反映された買い戻しを将来の還元として二重計上しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ロイズは英国で最も価値のある預金基盤の一つを持つ。住宅ローン残高の約19%を握り、家計の給与振込と貯蓄、住宅ローン、保険、年金を一つのグループで扱える。取引関係の厚さは新興のデジタル銀行が簡単にはまねできない。企業向けにも決済と融資を組み合わせており、競争が激しくなっても基本的な顧客接点は残る。
2026年上半期の業績は、収益力の改善が既に始まっていることを示した。法定税引後利益は前年同期比23%増え、基礎収益の伸びが費用の伸びを上回った。金利ヘッジの収益は低利回り資産の入れ替えで増えており、会社は2027年以降も恩恵が続くと見込んでいる。2030年までの費用収益比率の改善も進めば、収益の伸び以上に純利益を増やせる。
個人向けでは住宅ローンの市場シェアを維持しながら、カード、個人ローン、車両リースの利用を増やせる。企業向けではインフラ投資と決済サービスが追加収益になる。さらに、スコティッシュ・ウィドウズの年金顧客に富裕層向け助言や投資商品を提供できる。これは新しい顧客を高い費用で獲得するより効率のよい成長方法だ。
強い資本創出が続けば、規制上必要な資本を超えた分は株主に還元できる。近年の自社株買いは普通株数を減らしており、経営陣が過大な買収を控えればその恩恵は大きい。自動車金融の問題が既存引当の範囲で収束し、信用損失が正常な水準にとどまれば、2035年には現在を大幅に上回る利益と普通株主への還元が実現する。
慎重な見方
ロイズの強みは英国経済に深く根付いていることだが、その集中こそ最大の弱点でもある。住宅価格が下落し、失業が増えれば、住宅ローン、カード、自動車金融、企業融資が同時に傷む。米国やアジアの市場業務で損失を補う巨大な総合銀行とは違い、ロイズは英国の信用循環から逃れにくい。
住宅ローンのシェアも安泰ではない。2025年の新規融資シェアは18%となり、前年から低下した。ネーションワイド、ナットウエスト、バークレイズ、サンタンデールが金利と販売経路で競争を強めている。住宅ローンの価格を上げられない中で預金金利だけが上がれば、規模の利益は簡単に削られる。モンゾやスターリングなどの新興銀行は、顧客の普段使いの口座を狙っている。
自動車金融の補償問題は、事業の理解しやすさに隠れた危険を示す。2026年6月末の関連引当は約19.5億ポンド相当で、当局の制度は法的な異議申し立てにより一部停止されている。最終的な補償範囲と処理費用は確定していない。過去の顧客取引に関する責任が長く残れば、利益と余剰資本は想定ほど増えない。
2030年の有形自己資本利益率約20%という目標にも注意が必要だ。これは普通株全体のROEではなく、のれんなどを除いた資本に対する利益率である。費用削減が計画どおり進まず、信用コストが上昇すれば目標は遠のく。AIは事務費用を減らしても、銀行同士の金利比較と口座切り替えを容易にするため、技術投資の効果がすべて株主に残るとは限らない。
銀行は帳簿上の資本が厚くても、不況時には配当と自社株買いを止めざるを得ない。2008年の危機では大幅な株価下落と希薄化を経験し、2020年にも配当が止まった。信用損失、預金流出、規制対応が重なれば、利益が残っていても株主に返せる資金は大きく減る。
どちらに重みを置いたか
事業の存続と預金基盤の強さについては前向きな見方を支持する。しかし、住宅ローンのシェア低下と英国への集中、自動車金融の補償問題を踏まえ、確率はやや慎重側に寄せた。楽観とやや楽観を合わせて32%、やや悲観と悲観を合わせて36%、中立を32%とする。
中立のROEは14%台まで改善すると考えるが、会社の2030年目標をそのまま永久に延長しない。費用削減と預金の利ざや改善は一定程度実現する一方、競争と信用損失が利益の一部を吸収する。悲観では銀行そのものが消えるとは考えず、普通株主に帰属する利益が大きく減り、還元が停止される道を想定した。
それでも現在の時価総額と比べると、長期の利益と還元には価値がある。5つの筋書きの加重価値は約1,039億ドルとなり、基準時価総額を約34%上回る。結論は割安だが、利益の回復と規制費用の収束を確認し続ける必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 10.01 ドル1,455 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 3.89 ドル565 億ドル)。 今の値に割り戻すと 7.15 ドル1,039 億ドル、今との差 +42.9%、 期待の年率 +13.2%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 17.73 ドル2,578 億ドル | 5.71 ドル830 億ドル | +368.7% | +20.5% | 2.34 ドル341 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 13.69 ドル1,990 億ドル | 5.13 ドル746 億ドル | +276.4% | +17.6% | 4.14 ドル602 億ドル |
| 中立 | 32% | 10.36 ドル1,506 億ドル | 4.26 ドル620 億ドル | +192.4% | +14.0% | 4.68 ドル680 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 6.09 ドル886 億ドル | 2.96 ドル430 億ドル | +81.0% | +7.5% | 2.08 ドル303 億ドル |
| 悲観 | 13% | 3.92 ドル570 億ドル | 1.10 ドル160 億ドル | +0.4% | +0.0% | 0.65 ドル95 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 10.01 ドル1,455 億ドル | 3.89 ドル565 億ドル | +177.9% | +13.2% | 13.90 ドル2,021 億ドル |
今の株価時価総額 5.00 ドル727 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:住宅金融の首位を守り、年金と企業金融も伸ばす 利益 155 億ドル · PER 16.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 17.73 ドル2,578 億ドル
2035年、ロイズは英国の住宅ローンと個人口座で首位級の地位を維持する。住宅ローン市場が実質で拡大し、ロイズの新規融資シェアも回復する。リテールの実質利息収益資産は現在から約33%増え、預金と決済の複合取引も伸びる。住宅ローン金利の競争は続くが、規模の利益と低コスト預金が採算を支える。
企業向けではインフラ投資と大企業の資金管理需要が増え、商業銀行の実質資産は約44%増える。スコティッシュ・ウィドウズでは職域年金の資金流入と富裕層向けサービスが拡大し、管理資産も大きく増える。ネーションワイドやナットウエストとの競争に勝ち続け、既存顧客との関係を深める。
2026年に進んだ収益改善は長期にも定着する。自動車金融の補償問題が既存引当を大きく超えずに収束し、信用コストは正常な水準で推移する。デジタル化で事務費用を抑え、費用収益比率も改善する。2035年の純利益は155億ドルとなり、ROEは約19.8%に達する。
10年間の普通株主への正味還元は830億ドルに達する。期間純利益の累計は約1050億ドルとなり、残した利益が資本基盤を厚くする。大型買収に資本を浪費せず、技術と既存顧客への投資を優先した結果、堀は緩やかに広がる。
- リテール銀行・住宅ローン・消費者金融:数量 510(2025年の購買力に固定した平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.11(実質残高に対する総利息収入と関連収益の率。将来は物価による名目残高の上昇を価格側に含む)→ 売上 746 億ドル・営業利益 127 億ドル。住宅ローンの実質市場成長とシェア回復、預金・個人金融の複合取引で数量を伸ばす。価格は物価以上、費用率も改善する。
- 商業銀行・企業向け金融:数量 113(2025年の購買力に固定した企業向け平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.14(実質残高に対する総利息収入、取引手数料、資金管理収益の合計率)→ 売上 207 億ドル・営業利益 93 億ドル。企業融資と資金管理で英国の設備投資需要を取り込み、決済手数料も増える。
- 保険・年金・資産管理:数量 480(2025年の購買力に固定した管理資産残高、10億ポンド)× 価格 0.15(管理資産に対する保険収入と契約者資産運用総収益の率。株主に帰属しない運用収益も総額に含む)→ 売上 963 億ドル・営業利益 16 億ドル。職域年金の資金流入と富裕層向け資産管理が拡大し、保険契約者向けの総運用収益も増える。
- 中央資金運用・株式投資・その他:数量 3.6(中央部門の投資・市場機会に対応する2025年実質総収益プール、10億ポンド)× 価格 1.55(投資収益・資金運用収益の名目価格指数。2025年を1とする)→ 売上 74 億ドル・営業利益 22 億ドル。投資回収と住宅賃貸の収益が伸び、中央部門の固定費負担が軽くなる。
倍率:k8.25%、2035年の普通株ROEは155÷781.2=19.84%。銀行の堀は普通として超過収益の残存割合を1/2とし、RONICは8.25%+(19.84%-8.25%)÷2=14.05%。長期gは市場の実質融資需要約1.0%、シェアと商品構成の改善約0.5%、名目価格約3.5%から競争と成熟を控除して4.0%とする。来年利益への正当化PERは約16.83倍、2035年利益への倍率は1.04倍を掛けて約17.5倍。利益の質を考慮して上限の95%となる16.63倍を採用する。純利益は普通株主に帰属する実績に対応する値であり、優先的な資本請求権を二重計上しない。
確率:住宅ローン市場の実質成長、シェア維持、企業融資拡大、費用削減、自動車金融補償の収束が同時に実現する確率。英国への集中を考慮し、全面的な成功には10%だけを配分した。
やや楽観 22% やや楽観:預金の強さと効率改善が続く 利益 130 億ドル · PER 15.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13.69 ドル1,990 億ドル
2035年、ロイズは英国の主要銀行として現在の地位を保つ。住宅ローンの市場シェアは大きく伸びないが、貸出残高の実質成長と顧客の貯蓄増加により、リテールの実質利息収益資産は約23%増える。住宅ローンの利ざやは競争で抑えられる一方、預金基盤の厚さと長期ヘッジ収益が利益を支える。
商業銀行では大企業の決済と資金管理が伸びる。企業向けの実質利息収益資産は約29%増え、融資と手数料収益の両方を獲得する。保険・年金ではスコティッシュ・ウィドウズの管理資産が積み上がり、ロイズ・ウェルスの助言事業も顧客当たりの取引を増やす。競合への大幅なシェア流出は起きない。
AIによる費用削減の効果は実現するが、競合も同じ技術を使うため、利益率の改善は楽観ほど大きくない。自動車金融の補償費用は管理可能な範囲に収まり、景気後退を一度経験しても規制資本を維持する。2035年の純利益は130億ドル、ROEは約17.6%となる。
10年間の利益累計は約925億ドルに達し、正味還元は746億ドルとなる。必要な資本を残しながら配当と自社株買いを続けることができる。堀は大きく広がらないが、規模と顧客基盤による優位は維持される。
- リテール銀行・住宅ローン・消費者金融:数量 472(2025年の購買力に固定した平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.11(実質残高に対する総利息収入と関連収益の率。将来は物価による名目残高の上昇を価格側に含む)→ 売上 671 億ドル・営業利益 111 億ドル。住宅ローンと消費者金融の実質残高が増える。預金調達の優位を維持し、費用率が下がる。
- 商業銀行・企業向け金融:数量 101(2025年の購買力に固定した企業向け平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.13(実質残高に対する総利息収入、取引手数料、資金管理収益の合計率)→ 売上 176 億ドル・営業利益 72 億ドル。企業向け融資と資金管理の成長が続き、収益構成が改善する。
- 保険・年金・資産管理:数量 410(2025年の購買力に固定した管理資産残高、10億ポンド)× 価格 0.14(管理資産に対する保険収入と契約者資産運用総収益の率。株主に帰属しない運用収益も総額に含む)→ 売上 779 億ドル・営業利益 11 億ドル。年金資産が積み上がり、契約利益の認識が進む。
- 中央資金運用・株式投資・その他:数量 3.3(中央部門の投資・市場機会に対応する2025年実質総収益プール、10億ポンド)× 価格 1.48(投資収益・資金運用収益の名目価格指数。2025年を1とする)→ 売上 65 億ドル・営業利益 18 億ドル。中央投資事業の収益が拡大し、固定費負担も緩やかに改善する。
倍率:k8.25%、ROEは130÷740.2=17.56%。堀の残存割合1/2からRONICは12.91%。長期gは市場実質需要約0.8%、シェア約0%、名目価格約3.5%から競争による調整を行い3.8%。利益ベースの正当化PERは2035年利益に対して約16.46倍となる。事業の安定性と競争を考慮し、その93%である15.31倍を採用する。今の市場PERや過去の株価は参照していない。
確率:2026年上半期に確認された利ざや改善と費用抑制が長期にも残る可能性は高い。ただし住宅ローンのシェア拡大や高い利益率を当然視せず、全面的な楽観より実現しやすい22%とした。
中立 32% 中立:成熟した英国銀行として利益を着実に増やす 利益 110 億ドル · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10.36 ドル1,506 億ドル
2035年のロイズは、英国の住宅ローンと預金に強い成熟銀行である。住宅ローン市場は実質で緩やかに拡大し、ロイズのシェアはおおむね維持される。リテールの実質利息収益資産は現在から約15%増え、名目の収益は物価と貸出の伸びに支えられる。ただし住宅ローンの新規顧客獲得ではネーションワイドやナットウエストとの金利競争が続く。
商業銀行は英国企業の設備投資と資金管理需要に沿って成長する。実質利息収益資産は約15%増え、決済手数料も緩やかに伸びる。年金と保険では顧客資産が増えるものの、運用手数料率の上昇には期待しない。保険契約者向け総運用収益の大きさと、普通株主に残る利益を区別する。
2026年上半期に見られた費用効率の改善は一部定着する。2030年の経営目標をすべて達成するわけではなく、信用コストは長期で正常化する。自動車金融の補償費用は追加負担が発生しても吸収可能な範囲に収まり、大型の価値破壊的買収は行わない。2035年の純利益は110億ドル、ROEは約14.4%となる。
10年間の累計純利益は約825億ドル、正味還元は620億ドルとなる。自己資本は約766億ドルへ増え、規制資本を維持しながら配当と買い戻しを続ける。堀はほぼ維持されるが、価格決定力が劇的に強まるわけではない。
- リテール銀行・住宅ローン・消費者金融:数量 442(2025年の購買力に固定した平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.10(実質残高に対する総利息収入と関連収益の率。将来は物価による名目残高の上昇を価格側に含む)→ 売上 611 億ドル・営業利益 92 億ドル。英国住宅ローン市場は実質約1.1倍に成長し、ロイズのシェアはおおむね維持。貸出と預金の実質数量が増え、価格は物価並みに上昇する。
- 商業銀行・企業向け金融:数量 90.0(2025年の購買力に固定した企業向け平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.13(実質残高に対する総利息収入、取引手数料、資金管理収益の合計率)→ 売上 153 億ドル・営業利益 60 億ドル。企業向け融資は実質で約15%増加。決済・資金管理の手数料も緩やかに成長する。
- 保険・年金・資産管理:数量 360(2025年の購買力に固定した管理資産残高、10億ポンド)× 価格 0.14(管理資産に対する保険収入と契約者資産運用総収益の率。株主に帰属しない運用収益も総額に含む)→ 売上 656 億ドル・営業利益 9 億ドル。管理資産は実質で約29%増え、名目の価格指数は物価とほぼ同じ。株主利益率は保険負債への対応を考慮して低く保つ。
- 中央資金運用・株式投資・その他:数量 3.1(中央部門の投資・市場機会に対応する2025年実質総収益プール、10億ポンド)× 価格 1.40(投資収益・資金運用収益の名目価格指数。2025年を1とする)→ 売上 57 億ドル・営業利益 15 億ドル。住宅賃貸と投資事業は緩やかに成長。市場収益の大幅な上振れは期待しない。
倍率:資本コストkは8.25%。2035年の普通株ROEは110÷766.2=14.36%。堀は普通として超過利益の残存割合を1/2とし、RONICは8.25%+(14.36%-8.25%)÷2=11.31%。長期gは市場実質需要約0.5%、シェア変動約0%、名目価格約3.5%から競争と成長の成熟を控除して3.5%。来年利益への正当化PERは約14.53倍、2035年利益への換算は約15.04倍。規制、信用循環、英国経済への集中から上限の約91%となる13.69倍を採用する。長期のROEは有形自己資本利益率ではなく、成長に必要な自己資本を含む普通株ROEを用いた。
確率:住宅ローンの大幅なシェア変動はなく、預金基盤と金利ヘッジによる収益改善が続く。ただし費用削減と信用コストの正常化が相殺し合うため、会社の最も高い目標をそのまま延長しない。最も現実的な筋書きとして32%とした。
やや悲観 23% やや悲観:預金競争と住宅ローンの採算低下が続く 利益 80 億ドル · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.09 ドル886 億ドル
2035年、ロイズは英国の主要銀行として存続するが、住宅ローンと預金における競争優位が弱まっている。ネーションワイド、ナットウエスト、バークレイズが住宅ローンの獲得を続け、ロイズは金利を下げて既存の顧客基盤を守る。預金では高利の貯蓄商品やデジタル銀行への流出を防ぐため、預金金利を引き上げる。結果として貸出の実質数量はほぼ横ばいになり、価格面の改善も物価を下回る。
商業銀行でも大企業が借入先を分散し、非銀行の融資を利用するようになる。ロイズの実質利息収益資産は現在を下回り、手数料収益も競争で伸び悩む。保険・年金では管理資産が増えるものの、アビバなどとの競争で報酬率が下がる。中央部門の投資事業も景気後退の影響を受ける。
自動車金融の補償費用は既存引当を超え、数年にわたり追加の利益圧迫要因となる。信用コストは通常よりやや高い水準に落ち着き、技術投資による費用削減の成果も競争相手に吸収される。2035年の純利益は80億ドル、ROEは約9.9%にとどまる。
10年間の累計純利益は約675億ドルで、還元は430億ドルに抑えられる。規制資本を守るため、自社株買いは一時停止と再開を繰り返す。ブランドと銀行免許は残るが、預金基盤の経済的な価値は縮小する。
- リテール銀行・住宅ローン・消費者金融:数量 390(2025年の購買力に固定した平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.10(実質残高に対する総利息収入と関連収益の率。将来は物価による名目残高の上昇を価格側に含む)→ 売上 518 億ドル・営業利益 67 億ドル。住宅ローンのシェアが低下し、預金獲得競争で利ざやが縮む。数量は実質でほぼ横ばい。
- 商業銀行・企業向け金融:数量 75.0(2025年の購買力に固定した企業向け平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.12(実質残高に対する総利息収入、取引手数料、資金管理収益の合計率)→ 売上 118 億ドル・営業利益 45 億ドル。非銀行融資との競争と企業の借入需要減少で実質残高を失う。
- 保険・年金・資産管理:数量 305(2025年の購買力に固定した管理資産残高、10億ポンド)× 価格 0.13(管理資産に対する保険収入と契約者資産運用総収益の率。株主に帰属しない運用収益も総額に含む)→ 売上 519 億ドル・営業利益 6 億ドル。年金資産は増えるが、低報酬商品への移行で株主利益率が低下する。
- 中央資金運用・株式投資・その他:数量 2.4(中央部門の投資・市場機会に対応する2025年実質総収益プール、10億ポンド)× 価格 1.30(投資収益・資金運用収益の名目価格指数。2025年を1とする)→ 売上 42 億ドル・営業利益 8 億ドル。投資回収と住宅賃貸の採算が低迷する。
倍率:k8.25%、普通株ROEは80÷806.2=9.92%。残存割合1/2でRONICは9.09%。長期gは市場実質需要約0.2%、シェア低下約-1.5%、名目価格上昇約3.5%を合わせ、収益構成の悪化を加味して2.0%とする。2035年利益への正当化PER上限は約12.73倍であり、信用コストと預金競争の不確実性から約87%に当たる11.07倍とした。中立より利益、資本効率、倍率のすべてが低くなる。
確率:住宅ローンの金利競争が続き、預金金利が高止まりして利ざや改善が限定される展開。2025年の新規住宅ローンシェア低下と英国市場の集中を考慮し、比較的高い23%を配分した。
悲観 13% 悲観:預金の競争優位を失い、信用損失と規制費用が残る 利益 34 億ドル · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.92 ドル570 億ドル
2035年、ロイズは銀行として存続しているが、かつての強い国内地位を失っている。ネーションワイドとナットウエストが住宅ローンでシェアを奪い、モンゾなどのデジタル銀行が家計の主要口座を獲得する。ロイズは預金流出を防ぐため高い金利を提示する一方、住宅ローン金利を十分に上げられない。リテールの実質利息収益資産は現在より約15%減り、名目収益の伸びも物価を下回る。
商業銀行では英国企業の投資が停滞し、プライベートクレジットと海外銀行が収益性の高い融資を奪う。保険・年金では職域年金の資金流入が鈍り、運用報酬が下がる。保険契約者向けの運用総収益は残っても、株主利益はほとんど増えない。中央部門の投資事業も低い収益力にとどまる。
英国住宅価格の長期停滞と雇用環境の悪化に加え、自動車金融の補償負担が想定を超える。数年間は追加引当と信用損失で利益が落ち込み、規制当局の求める資本水準を守るため自社株買いを停止する。2035年の純利益は34億ドル、ROEは約4.3%となり、株主資本コストを明確に下回る。
10年間の純利益累計は、不況期の損失や追加引当を含めて390億ドルにとどまる。正味還元も160億ドルに減少し、大半は初期の配当と買い戻しによる。資本は一定程度蓄積するが、それを十分な利回りで運用できないため、増えた帳簿資本に高い値段を付けることはできない。
- リテール銀行・住宅ローン・消費者金融:数量 328(2025年の購買力に固定した平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.09(実質残高に対する総利息収入と関連収益の率。将来は物価による名目残高の上昇を価格側に含む)→ 売上 392 億ドル・営業利益 35 億ドル。住宅ローンと主要口座のシェアを大きく失い、預金コスト上昇と信用損失で採算が悪化する。
- 商業銀行・企業向け金融:数量 62.0(2025年の購買力に固定した企業向け平均利息収益資産残高、10億ポンド)× 価格 0.11(実質残高に対する総利息収入、取引手数料、資金管理収益の合計率)→ 売上 89 億ドル・営業利益 21 億ドル。企業融資と決済サービスのシェアを失い、信用損失が増加する。
- 保険・年金・資産管理:数量 250(2025年の購買力に固定した管理資産残高、10億ポンド)× 価格 0.11(管理資産に対する保険収入と契約者資産運用総収益の率。株主に帰属しない運用収益も総額に含む)→ 売上 375 億ドル・営業利益 2 億ドル。資金流入鈍化と報酬競争、保険契約負債の負担増加で株主利益が縮む。
- 中央資金運用・株式投資・その他:数量 2.0(中央部門の投資・市場機会に対応する2025年実質総収益プール、10億ポンド)× 価格 1.20(投資収益・資金運用収益の名目価格指数。2025年を1とする)→ 売上 32 億ドル・営業利益 4 億ドル。投資回収が低迷し、維持費と資金調達負担が残る。
倍率:2035年のROEは34÷791.2=4.30%で、k8.25%を下回る。このため利益ベースの上限はPER約12.12倍となり、稼ぐ力だけなら約412億ドルの価値しか支えない。今回は銀行の破綻や強制的な大幅希薄化を想定せず、現在の普通株自己資本561.2億ドルを回収可能資産の参考床としている。悲観の床を上回る570億ドルを時価総額とし、現在の自己資本に対する倍率570÷561.2=1.0157倍で表した。これは2035年の増加した自己資本791.2億ドルに高い倍率を掛ける評価ではない。2035年の帳簿資本に対しては約0.72倍にすぎず、低い資本効率を反映している。
確率:住宅ローンの構造的なシェア低下、預金流出、信用損失、自動車金融の追加補償が重なる筋書き。2008年と2020年の危機経験を踏まえつつ、資本不足による破綻までは想定しないため13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
リテール銀行・住宅ローン・消費者金融
住宅ローン、カード、個人ローン、自動車金融、当座預金、貯蓄口座、リースを提供する。英国最大級の預金・住宅ローン基盤が利益の中心になる。
| 数量2025年の購買力に固定した平均利息収益資産残高、10億ポンド | 価格実質残高に対する総利息収入と関連収益の率。将来は物価による名目残高の上昇を価格側に含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 385 | 0.07 | 375 | 45 |
| 10 年後 中立 | 442 | 0.10 | 611 | 92 |
取り方:2025年の会社開示ではリテール平均利息収益資産3846億ポンド、英国住宅ローン残高3231億ポンド、リテール預金3252億ポンド。全社の総利息収入307.49億ポンドを、リテールと商業銀行の平均利息収益資産3846対783の比で按分し、リテールのその他収益26.36億ポンドを加えると総収益は概算281.8億ポンドになる。これは全社売上を単に割り振るのではなく、貸出残高と利息収入の開示から組み立てた推定値である。営業利益は部門基礎利益33.56億ポンドを換算した。係数13.29は10億ポンドを億ドルへ変換するもので、換算率は添付factsの総売上864億ドルと会社の総額収益約650億ポンドから逆算した約1.329ドル毎ポンドを固定した。市場規模は英国中央銀行の2025年末住宅ローン残高1兆7344億ポンドで、ロイズの残高シェアは18.6%。新規融資シェアは2025年18%、ネーションワイド17%、ナットウエスト12.1%。https://www.lloydsbankinggroup.com/investors/annual-report.html 、https://www.bankofengland.co.uk/statistics/mortgage-lenders-and-administrators/2025/2025-q4 、https://www.ukfinance.org.uk/data-and-research/data/largest-mortgage-lenders 。今後のvolumeは名目貸出残高ではなく、物価を除いた実質残高とする。
商業銀行・企業向け金融
中小企業・大企業向け融資、企業決済、資金管理、貿易金融、債券引受、金利・為替リスク管理を提供する。融資利ざやと顧客取引手数料で稼ぐ。
| 数量2025年の購買力に固定した企業向け平均利息収益資産残高、10億ポンド | 価格実質残高に対する総利息収入、取引手数料、資金管理収益の合計率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 78.3 | 0.09 | 93 | 34 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.13 | 153 | 60 |
取り方:2025年の商業銀行の平均利息収益資産は783億ポンド、期末企業向け貸出は903億ポンド、顧客預金は1711億ポンド。全社総利息収入を平均利息収益資産の比で推定した約52億ポンドと、商業銀行のその他収益18.25億ポンドを組み合わせた。部門基礎利益25.46億ポンドを2025年の換算率で億ドルにした。英国中小企業向け銀行融資残高は2025年末約1980億ポンドで、ロイズの中小企業向け貸出283億ポンドは定義の違いを含めて約14%に相当する。大企業向けを含めた商業銀行全体のシェアとは区別した。競争相手はバークレイズ、ナットウエスト、HSBCと非銀行貸出。https://www.lloydsbankinggroup.com/investors/annual-report.html 、https://www.british-business-bank.co.uk/ 。価格には物価による名目元本の変化を含めるが、貸出金利の上昇を別に二重計上しない。
保険・年金・資産管理
スコティッシュ・ウィドウズの職域年金、個人年金、住宅保険、生命保険、富裕層向け資産管理。管理資産の拡大と契約利益の認識が株主利益を支える。
| 数量2025年の購買力に固定した管理資産残高、10億ポンド | 価格管理資産に対する保険収入と契約者資産運用総収益の率。株主に帰属しない運用収益も総額に含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 280 | 0.10 | 363 | 4 |
| 10 年後 中立 | 360 | 0.14 | 656 | 9 |
取り方:2025年の保険・年金・投資部門の管理資産は2800億ポンド。連結損益計算書の保険収入34.38億ポンドと保険契約・投資契約を裏付ける資産の運用総収益238.44億ポンドを合わせた272.82億ポンドを総収益の代理値とし、管理資産で割った。部門基礎利益3.30億ポンドを換算した。ただし契約者資産の運用総収益には対応する保険金融費用約240.44億ポンドがあり、総額売上をそのまま株主の稼ぎと誤認しない。会社は職域年金、住宅保険、個人年金で上位3社級と開示するが、それぞれの正確な市場シェアは一律には公表されていない。住宅保険の新規契約シェアは2025年に14%超、保障性保険のシェアは7.8%と開示されている。主要競合はアビバ、リーガル・アンド・ジェネラル、フェニックス系事業。https://www.lloydsbankinggroup.com/investors/annual-report.html 。将来の数量は資金の純流入と市場の実質価値変化、価格は物価と運用総収益率を表す。
中央資金運用・株式投資・その他
グループ全体の資金運用と財務調整に加え、LDCの未上場株投資、ロイズ・リビングの住宅賃貸などを含む。収益の一部は資産価格と投資回収に左右される。
| 数量中央部門の投資・市場機会に対応する2025年実質総収益プール、10億ポンド | 価格投資収益・資金運用収益の名目価格指数。2025年を1とする | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.5 | 1.00 | 33 | 7 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 1.40 | 57 | 15 |
取り方:中央部門については独立した販売数量が開示されないため、2025年の連結総額収益約650億ポンドから、平均利息収益資産に基づくリテール約281.8億ポンド、商業銀行約70.3億ポンド、保険・年金約272.8億ポンドを差し引いた残余約25.1億ポンドを実質の投資機会プールとした。この残余には市場業務の損益、その他収益、内部取引の表示差が含まれる。部門の基礎利益5.45億ポンドを換算した。LDCの運用資産は2025年に約23億ポンド、ロイズ・リビングの運営・契約済み住宅は7750戸であり、これらは中央部門の実際の事業活動を裏付ける。ただし推定総収益をすべて不動産賃料や投資報酬とみなさない。https://www.lloydsbankinggroup.com/investors/annual-report.html 。全社の2025年総売上は添付factsの863.9億ドルを正とし、部門の営業利益は開示基礎利益と会社全体の財務データの定義差を残している。
リスクと懸念
英国住宅市場への集中
ロイズの貸出は英国の住宅ローンに大きく偏っている。失業率の上昇と住宅価格の下落が長引けば、新規融資が減るだけでなく、延滞と信用損失が増える。住宅担保があるため無担保融資より損失は限定されやすいが、国内経済への集中により他国の好況で補うことが難しい。住宅ローン市場で約19%のシェアを持つことは強みであると同時に、英国住宅市場の構造的な縮小を直接受ける危険でもある。
自動車金融の補償と訴訟
英国の自動車金融における販売手数料の開示問題では、ロイズが重要な当事者となっている。2026年6月末の関連引当は約19.5億ポンド相当だが、FCAの補償制度は法的な異議申し立てによって一部停止されており、最終的な支払い額は確定していない。既存の引当を超える補償費用が必要になれば、普通株主に帰属する利益と資本還元余力を削る。過去の営業行為に起因する追加責任が発生する点で、通常の信用循環とは別の危険である。
預金コストの上昇とデジタル競争
預金は銀行にとって調達資金の源泉であり、低コストで維持できるかが競争力を決める。ロイズは大規模な当座預金を持つが、モンゾ、スターリング、他の大手銀行、高利の貯蓄商品との競争で預金金利が上がる可能性がある。貸出金利への転嫁が遅れれば利ざやは縮小する。口座切り替えの利便性が高まるほど、従来の店舗網とブランドの優位は弱くなる。
信用損失と企業向け融資
2026年上半期の信用コストは比較的低い水準にある。英国企業の借入需要が鈍り、金利負担と人件費上昇が収益力を圧迫すれば、中小企業や無担保消費者金融の延滞が増える。商業用不動産や大口融資で損失が集中すると、平常時に高い利益を生む商業銀行の採算が急速に悪化する。信用損失の正常化と深刻な不況を区別することが必要だ。
資本規制と普通株主への還元制限
銀行の利益は、規制資本を確保した後で初めて普通株主に還元できる。ロイズはCET1比率約13%を運営目安としているが、英国の規制当局が資本要件を引き上げたり、景気後退でリスク加重資産が増えたりすれば、配当と自社株買いは制約を受ける。AT1などの資本証券に対する支払いも普通株主に先立つ。短期の利益が増えても、同じ割合で還元できるとは限らない。
保険・年金事業の収益の見かけ
スコティッシュ・ウィドウズの保険契約者向け運用資産からは、大きな投資収益が計上される。しかし対応する保険金融費用や保険契約負債があり、総額の伸びが株主利益の伸びを意味しない。市場価格の変動や長寿化、保険契約の見積り変更は利益と資本を揺らす。管理資産の増加だけで事業価値を高く評価せず、契約利益の実際の解放と保険子会社から親会社への資本移転を確認する必要がある。
AI、サイバー攻撃と銀行サービスの変化
ロイズの主要事業は人月販売や席課金ソフトではないため、指定されたAIエージェント代替の収益縮小モデルは直接適用しない。ただしAIによる銀行商品の比較、口座切り替え、信用審査の自動化は競争を変える。ロイズ自身も費用を削減できるが、競合が同じ技術を使えば利益は顧客に還元されやすい。加えて、サイバー攻撃、不正送金、顧客情報の流出は金融機関への信頼を損ない、規制費用と顧客流出を招く。
今後の分かれ目
- 住宅ローンの新規融資シェアが16%未満へ低下し、それが2年続いたら
- 住宅ローンの堀が縮小していると判断する。リテールの実質数量を引き下げ、預金獲得費用の上昇も考慮して、やや悲観の確率を高める。
- 銀行純金利マージンが3.0%を下回り、預金残高も前年同期比で減少したら
- 預金基盤の経済的優位が弱まったと判断する。純金利収益の成長率を引き下げ、中立の純利益と正当化PERを再評価する。
- 自動車金融の最終補償額が既存引当を大幅に超えたら
- 追加費用を発生年度の純利益と規制資本に反映し、10年間の還元見通しを減額する。複数年にわたる追加請求が確認されれば悲観側の確率を引き上げる。
- 2028年に有形自己資本利益率18%超、2030年に費用収益比率45%未満が実現したら
- 会社の効率改善が一時的ではない証拠になる。普通株ROEへの転換と信用コストを確認した上で、やや楽観の確率を引き上げる。
- 信用コストが貸出残高の年率0.6%を超え、2年以上続いたら
- 通常の信用損失の範囲を超えたと判断する。リテールと商業銀行の利益率を下げ、還元の一時停止と自己資本の積み増しを想定する。
- CET1比率が12%台前半まで下がり、予定された自社株買いが停止されたら
- 資本還元の持続性が損なわれたと判断する。payoutの見通しを引き下げ、利益の内部留保が規制資本を回復させるまで長期価値に上乗せしない。
- 保険・年金の管理資産が実質で増えても、基礎利益が3年連続で伸びなかったら
- 低報酬商品への移行や保険負債の負担増加が疑われる。総運用収益の成長ではなく実際の株主利益率を優先し、保険・年金部門の将来利益を減額する。
見ておくもの
- 住宅ローン残高と新規融資市場シェア。ロイズとネーションワイド、ナットウエストの差
- 銀行純金利マージン、預金の平均金利、無利息預金残高、構造的金利ヘッジの収益
- リテールと商業銀行の平均利息収益資産、貸出残高、企業向け決済・手数料収益
- 信用コスト、住宅ローン延滞、カード延滞、企業融資のステージ2・3残高
- FCAの自動車金融補償制度、法的異議申し立ての結果、追加引当と実際の支払額
- 普通株ROE、有形自己資本利益率、費用収益比率、CET1比率、正味の配当・自社株買い
- スコティッシュ・ウィドウズの管理資産純流入、契約利益の解放、保険子会社からの配当
- 2026年10月29日英国時間7時公表予定の2026年第3四半期決算。分析時点では未公表であり、最新確認済みの決算は2026年上半期
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額775億ドルを基準に10年後の倍率を逆算していない。英国の住宅ローン市場、商業融資、保険・年金の管理資産から数量の見通しを作り、物価に伴う名目成長を価格側に入れた。2025年の総額売上864億ドルには利息収入と保険契約者資産の運用収益が含まれるため、銀行の利息費用と保険金融費用を損益に反映し、売上総額がそのまま株主利益へ転換される扱いを避けた。
中立の2035年純利益は110億ドルで、自己資本766.2億ドルに対するROEは14.36%。k8.25%、g3.5%、RONIC11.31%、堀の残存割合1/2から、利益ベースの正当化PER上限は約15.04倍となる。利益の質を考慮してその約91%に当たる13.69倍を採用した。今の市場PER、過去の谷の倍率、同業の市場評価は倍率決定に使っていない。
5つの筋書きの確率は10%、22%、32%、23%、13%である。10年後の時価総額は順に2577.7、1990.3、1505.9、885.6、570.0億ドル、正味還元は830、746、620、430、160億ドルとなる。資本コスト8.25%で時価総額を10年、還元を平均5年で割り引いた価値は約1039億ドルとなり、基準時価総額比で約34%の割安である。
悲観の時価総額570億ドルは参考床561.2億ドルを上回り、悲観の時価総額と累計還元の合計730億ドルは現在の時価総額775億ドルを下回る。銀行の現金や有価証券は預金負債と流動性規制に対応するため、一般事業会社の余剰現金として別途加算しない。英国銀行はIFRS16によるリース負債を既に計上しており、固定支払いを将来の費用から除外しない。為替は比較のため固定し、ポンド高による上振れやポンド安による下振れを基本価値に織り込まない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは基本8.0%にquality+0.25%を加えた8.25%。英国の信用循環への集中を考慮し、JPモルガンの7.75%やバンク・オブ・アメリカの8.0%より高くした。一方、危機的な資本不足は確認されないため、存続危機による上乗せはしない。自動車金融の補償問題と個別の規制リスクは割引率に重ねず、筋書きの利益と確率で扱う。βや市場のPERは使っていない。