結論
チャールズ・シュワブは、個人投資家と独立系のアドバイザー(RIA)に口座・取引・助言・銀行を一体で提供する米国最大級の証券会社で、顧客資産は 2026 年 9 月に 13.33 兆ドル(前年比 15% 増)、口座は 4,860 万に達する。収益の柱は、顧客の現金と貸出から得る純金利収益(約 5 割)、運用・管理手数料(約 3 割)、取引収益ほか(約 2 割)。2020 年にティーディー・アメリトレード(TD Ameritrade)を統合して規模を倍にし、2023 年には高利回りのマネーマーケットファンドへの現金流出(現金の乗り換え)と地銀危機で利益が一度落ちたが、2026 年は純収益 72 億ドル(7〜9 月期・前年比 17% 増)、純利益 29 億ドル(23% 増)、年率の ROE 25% と記録的になった。
バリュー投資の観点では、この会社は「手数料を下げ続けて顧客を集め、規模で稼ぐ」仕組みが堀で、10 年後も事業は存在し、規模はむしろ増す可能性が高い。一方で利益の約半分は顧客の現金の利ざやで、スイープ金利の規制・現金の移動・短期金利で振れる。2026 年は NIM(預金と貸出の利ざや)が 3.04% まで戻り、純流入が過去最高と、良い条件が重なった年である。
結論は、資本コスト 8.5%(基本 8.0% + quality +0.5%。預かり資産と金利への連動 +0.5)の利益ベースの式(資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる)に自己資本に対する ROE 22% 前後(のれんなどを除く事業の ROE は 27%)を入れると、正当化 PER は中立で約 16.3 倍、その 8 割の約 13 倍が付く。今の PER 18 倍(2025 年の利益)より低く、10 年後の時価総額は中立で約 2,493 億ドル、10 年の還元約 988 億ドルを足して割り戻した総合の価値は 1,688 億ドルと、今の時価総額を約 6% 上回る程度で、期待の年率 +7.7% は資本コスト 8.5% を下回る。結論は「適正」。ROE と NIM が 2026 年の山から落ちる悲観の筋書き(確率の合計 34%)を入れても価値は今を割らないが、安全域と呼べるほどの差ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。シュワブは顧客の資産を預かり、値段を下げて集める事業で、10 年後も存在し、おそらく今より大きい。堀は規模・低コスト・口座の切り替えの手間・RIA の基盤にあり、広がりも狭まりもしない。ただし銀行業の面を持つため、預金の動揺や信用事故で一度に傷つく危うさがある。わからない部分は、顧客の現金がスイープに残るか高利回りのファンドへ出るかで、これが利益の半分を決める。
次にオーナー利益。純利益のうち、成長のために要る資本(調整後 Tier 1 レバレッジ 7% を保つ分)を引いても、残りの大半を還元できる。2025 年は純利益を上回る還元をした。貸出が増える局面では資本の要る分が増え、還元は純利益の 7〜8 割にとどまる。経営は 2020 年の統合後、2023 年の危機で債券の含み損の痛みを経験し、いまは資本を保守的に使う。ここは評価できる。
安全域では、2026 年が良い条件の重なった年である点を重く見る。NIM 3.04% と純流入の記録は、2023 年の苦しい時期と対照的で、すべてが続く前提には置かない。式で測ると、資本コスト 8.5%・自己資本に対する ROE 22%・長期の成長 4% で利益ベースの PER は 13 倍前後(式の上限 16.3 倍の 8 割)。総合の価値は今の時価総額を約 6% 上回るだけで、期待の年率 +7.7% は資本コスト 8.5% に届かず、安全域は無い。事業は優良だが、値段は適正の範囲。確信度は中。
何で稼ぐ会社か
シュワブの収益は 3 つに分かれる。第 1 は純金利収益で、2026 年 7〜9 月期は 34.8 億ドル(前年比 14% 増)、NIM は 3.04%。顧客が口座に置く現金(取引性スイープ現金 4,928 億ドル)を銀行預金として預かり、証券(米国債・住宅ローン担保証券)と貸出(担保付き資産ライン・住宅ローン)に運用する。利回り 2% 未満の証券が約 1,900 億ドルあり、これが満期で貸出や新しい債券へ回ると利ざやが広がる。貸出は 723 億ドル(前年比 35% 増)で、主に株式などを担保にした担保付き資産ライン。
第 2 は運用・管理手数料(19 億ドル・14% 増)で、運用型のサービス(マネージド・インベスティング)、ETF・投信の手数料、RIA 向けのカストディの収益。運用型の純流入は 240 億ドルと過去最高で、アドバイス市場(約 37 兆ドル)のうち自社の割合は約 2%、個人世帯の約 5% しか助言を使っておらず、31% が払う意思を示す。第 3 は取引収益(11.6 億ドル・16% 増)とその他で、株式・オプションの売買、暗号資産、為替、銀行の手数料。株式の売買手数料はゼロだが、注文の執行収益とオプションで稼ぐ。
顧客は個人投資家、退職口座、約 1,100 社が新たに選んだ RIA(独立系助言会社。次点の 3 倍超の件数)、企業の確定拠出年金。2026 年 3 月にはフォージ・グローバル(Forge Global)の買収を完了し、未公開株の売買市場を取り込んだ。経営は 2024 年からリック・ワースター(Rick Wurster)が率いる。経費は 7〜9 月期で 33.9 億ドル、税引前利益率は 52.7%(調整後 54.8%)と、他の大手と比べても高い。
優良さと弱いところ
優良さは 4 つの点で見る。第 1 は規模と低コストで、13 兆ドルの預かり資産・約 4,900 万口座に対し、経費は売上の 5 割弱。この規模はフィデリティ(Fidelity)・バンガード(Vanguard)と並ぶ寡占で、新規参入者は同じ価格では太刀打ちしにくい。第 2 は切り替えの手間で、退職口座・税金の記録・RIA の業務基盤(カストディ)は乗り換えに時間と費用がかかり、RIA 向けではシェアが上がっている。第 3 は商品の幅で、口座・取引・銀行・助言・暗号資産・未公開株のアクセスを 1 社で持つ。第 4 は資本効率で、ROE は 2025 年 17.9%、2026 年 7〜9 月期は 25%、のれんなどを除いた ROTCE は 44%。
弱い所は 3 つある。第 1 に利益の約半分が顧客の現金の利ざやで、短期金利・スイープ金利の規制・顧客の現金移動に左右される(2023 年の経験)。第 2 に自己資本比率が薄く(調整後 Tier 1 レバレッジ 7%)、債券の含み損や預金の動揺に弱い。第 3 に競争相手がフィデリティ・バンガードに加え、ロビンフッド(Robinhood)が高利回りのスイープと若年層で、インタラクティブ・ブローカーズ(Interactive Brokers)が海外と上級者で攻める点。価格を下げて顧客を集めるのが自社の戦略なので、競争が激しくなっても自社だけが値上げできる立場にはない。経営は 2024 年のワースターへの交代後も、記録的な純流入と営業レバレッジで成果を出している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の個人向け証券・資産管理は、シュワブ・フィデリティ・バンガードの大手 3 社に預かり資産が集まる寡占で、その外側にロビンフッド・インタラクティブ・ブローカーズ・モルガン・スタンレー(E*トレード)・メリルなどが並ぶ。業界の数量は、個人の投資可能資産(株式・投信・退職口座)の成長と、アドバイスを使う人の割合に比例する。売買手数料は 2019 年にゼロとなり、収益の源泉は、現金の利ざや・資産に応じた手数料・助言の三つへ移った。
2026 年の局面は、短期金利 3.5〜4%・長期 5% の下で、2023 年の現金流出が一巡し、現金比率が一定に戻ったところ。シュワブは満期の来る低利回りの証券を貸出へ入れ替えて NIM を広げている。規制面では、スイープ金利が顧客の最善の利益に沿うかを当局と裁判所が問い、強制的に引き上げられれば業界全体の NIM が下がる。ロビンフッドは高利回りのスイープ(ゴールド会員向け)を訴求し、バンガード・フィデリティのマネーマーケットファンドの既定は高め、シュワブの銀行スイープの既定は低いという差が競争の焦点。
構造の変化は、①運用型・助言の普及(アドバイスを使う世帯はまだ約 5%)、②アルトの個人への開放(フォージ・グローバルのような未公開株の市場、プライベート資産のファンド)、③暗号資産・予測市場・トークン化されたマネーマーケットファンドで、いずれも手数料の新しい源泉であると同時に、現金を銀行の外へ動かす脅威でもある。AI は問い合わせ・口座開設・助言の費用を下げる。業界の需要は景気に敏感で、株価が 3〜4 割下がる局面では預かり資産と収益が同時に減る。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2025 年は配当 23 億ドルと自社株買い 98 億ドルで、純利益(88 億ドル)を上回った。2026 年は 9 か月で自社株買い約 40 億ドル(今の株数に反映済みなので、起点の自己資本と 10 年の還元の合計から外した)、配当は前年比 19% 増、優先株の償還も行った。調整後 Tier 1 レバレッジは 7.0% と、目標 6.75〜7% の上限にあり、これ以上は資本を厚くする余地が小さい。会社は「顧客の成長が先、還元は機会的に」と述べており、純流入が続くほど成長のために貸出と資本を使い、自社株買いは抑えられる。
M&A は 2020 年のティーディー・アメリトレード(全株式交換)と 2026 年 3 月のフォージ・グローバル(全額現金)が大きい。売られる側になる可能性はほぼなく、さらに大型の買収は、銀行規制と売買手数料のゼロ化の下で少ない。株式報酬による株数の増加は小さい(2025 年の株数の増減は −1.3%)ので、正味の還元は配当と自社株買いの合計に近い。未成立の買収はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シュワブは、顧客が資産を集めたい場所の 1 つになっている。7〜9 月期のコア純流入は 1,904 億ドルと過去最高(年率 5.8%)で、運用型の流入も 240 億ドルと記録。約 1,100 社の RIA が新たにシュワブを選び、競合の大手が長短戦略の能力に余裕を欠いたことも流入を押し上げた。株式市場が年 5〜6% で伸び、流入が 5% 続けば、顧客資産は 10 年で 2.4 倍になる。
利ざやは、利回り 2% 未満の証券約 1,900 億ドルが満期で貸出・新しい債券へ入れ替わるごとに広がる。貸出は 35% 増で証券を上回り、担保付き資産ラインは担保がしっかりした低リスクの貸出。2026 年の NIM は 3.04% で、2027 年はさらに拡大と会社は述べている。経費は AI で下がり、営業レバレッジ約 800bp という成果がすでに出ている。税引前利益率が 52〜55% に定着すれば、純利益は 10 年で 3 倍近くになる。
新しい収益源も加わる。暗号資産の取引と保管が全顧客に開かれ、フォージ・グローバルで未公開株、S&P のバイナリー取引で予測市場、助言は市場の約 2% しか取れていない。個人の 31% が助言に払う意思を持ち、使っている世帯は約 5% なので、数量の余地が大きい。資本は調整後 7% の上限で十分に厚く、ROTCE は 44%。この規模・低コスト・口座の切り替えの手間の堀は、フィデリティ・バンガードと並ぶ 3 社寡占の中で最も効率が高い。
慎重な見方
2026 年は条件が良すぎる年である。NIM 3.04% は、2023〜25 年に 2.5〜2.8% 台まで下がった時に比べて一時的に戻っただけで、高利回りのマネーマーケットファンドが銀行スイープの既定より 3〜4% も高い現実は変わっていない。スイープ金利を当局や裁判所が強制的に引き上げれば、NIM は 0.2〜0.4 ポイント下がり、純利益で 2 割以上の減少になる。純流入が過去最高なのは、市場が高く、競合の大手が攻めにくかった年だったからで、これは続かない。
貸出は 35% 増だが、担保付き資産ラインは株価が 3〜4 割下がる局面で担保が割れ、信用費用が出る。補完的な資金調達(短期借入 142 億ドル、長期債務 238 億ドル)が増えており、2023 年に預金が逃げた時と同じ構図がまた来うる。自己資本の比率は薄く(調整後 Tier 1 レバレッジ 7%)、債券の含み損があると規制資本が目減りする。
さらに、ロビンフッドとインタラクティブ・ブローカーズが若年層と海外・上級者から取り、フィデリティは職場の退職口座と暗号資産で攻める。手数料を下げて集める戦略は、競合がさらに下げた時に対抗するしかない。ステーブルコインとトークン化されたマネーマーケットファンドが現金を銀行の外へ動かせば、預金を元手にした利ざやの事業モデル自体が侵食される。今の PER 18 倍も、2025 年の利益に対しては割安ではなく、2026 年の山を前提にした見方でもある。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が勝ち、確率は楽観・やや楽観の合計 34%、やや悲観・悲観の合計 34%、中立 32% と釣り合わせた。ただし 2026 年の NIM と純流入は山に近く、中立でも NIM を 3.15% で止め、手数料率を年 1% ずつ下げ、事業の ROE(のれんなどを除く)は 27% に落とした。悲観は構造的な負け(12%)。相場と金利の振れは quality の cycle で資本コストに織り込んだので、確率で重ねて悲観に寄せていない。結論は「優良な事業を、ほぼ適正な値段で買える。資本コスト 8.5% に期待の年率が届かず、確信は中」。 点検(2026-10-19):純金利収益は名目の残高に利ざやの谷(2025 年 2.7%)からの戻り(2026 年 1〜9 月は 2.97%、7〜9 月期 3.04%)を乗せたもので、物価の二重がけではないと確かめた。直したのは 2026 年 1〜9 月の買い戻し約 40 億ドルの二重だけ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 139.40 ドル2,409 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 51.84 ドル896 億ドル)。 今の値に割り戻すと 96.13 ドル1,661 億ドル、今との差 +5.1%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 239.58 ドル4,140 億ドル | 65.34 ドル1,129 億ドル | +233.5% | +12.8% | 30.49 ドル527 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 188.63 ドル3,260 億ドル | 60.24 ドル1,041 億ドル | +172.2% | +10.5% | 59.73 ドル1,032 億ドル |
| 中立 | 32% | 144.25 ドル2,493 億ドル | 54.86 ドル948 億ドル | +117.7% | +8.1% | 63.71 ドル1,101 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 89.88 ドル1,553 億ドル | 46.99 ドル812 億ドル | +49.7% | +4.1% | 30.11 ドル520 億ドル |
| 悲観 | 12% | 35.30 ドル610 億ドル | 24.65 ドル426 億ドル | −34.4% | −4.1% | 7.19 ドル124 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 139.40 ドル2,409 億ドル | 51.84 ドル896 億ドル | +109.1% | +7.7% | 191.24 ドル3,305 億ドル |
今の株価時価総額 91.44 ドル1,580 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:預かり資産が 35 兆ドルへ、運用型と貸出で ROE 30% 超を保つ 利益 276 億ドル · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 239.58 ドル4,140 億ドル
2035 年末、顧客資産は年 12% 増で 35.7 兆ドル、シェアはフィデリティ・バンガードに対し約 4 割へ上がる。個人の 401(k) や IRA の移管、RIA 向けのカストディでシェアを取り、助言と運用型が全体の約 4 割を占め、手数料型の収益が景気の山谷を吸収する。貸出(担保付き資産ライン・住宅ローン)が資産の柱になり、NIM は 3.40%、利息を生む資産は 9,280 億ドル。取引・その他は口座 7,000 万、口座あたり収益は物価と暗号資産・アルト・予測市場の追加で増える。純利益は約 276 億ドル、事業の ROE は 31%。10 年の正味の還元は 1169 億ドル。AI で経費が下がる分は、競争で顧客に還元されても営業レバレッジが残る。堀(ブランド・規模・低価格・切り替えの手間)は広がる。
- 純金利収益(預金・貸出・証券の利ざや):数量 9,280(利息を生む資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.03(NIM(純金利の利ざや))→ 売上 316 億ドル・営業利益 218 億ドル
- 運用・管理手数料(運用型・助言・投信・RIA):数量 357,000(顧客資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.00(預かり資産に対する手数料率)→ 売上 214 億ドル・営業利益 111 億ドル
- 取引収益・その他(売買・暗号資産・銀行手数料):数量 7,000(口座数(万口))× 価格 0.02(1 口座あたりの収益(億ドル/万口))→ 売上 116 億ドル・営業利益 32 億ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)。事業の ROE 25.9%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 1067 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 17.2%、g 4.0%(預かり資産の伸びと利ざやで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 17.0 倍で、これが検査の上限になる。預かり資産 13 兆ドルの個人向け証券の最大手で、規模が費用を薄める。 上限の 8.8 割の 15.0 倍に置いた。
確率:規模の経済とアドバイス・アルトの追加が重なる。10 年を通じた実現は 1 割。
やや楽観 24% やや楽観:預かり資産は年 10.5% で伸び、税引前利益率は 55% 近い 利益 232 億ドル · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 188.63 ドル3,260 億ドル
2035 年末、顧客資産は 31.2 兆ドル、利息を生む資産は 8,460 億ドル、NIM は 3.30%。助言・運用型とアルト(未公開株・プライベート資産のアクセス)が伸び、手数料率は競争で年 0.5% ずつ下がるが、率の低下は数量の増加で埋まる。口座は 6,500 万、口座あたり収益は物価に届かない分だけ控えめ。経費は物価と投資で年 7% 近く伸び、税引前利益率は 55%。純利益は約 232 億ドル、事業の ROE 30%、10 年の正味の還元は 1081 億ドル。ロビンフッド・インタラクティブ・ブローカーズに若年層を一部取られても、退職資金とアドバイスで取り返す。
- 純金利収益(預金・貸出・証券の利ざや):数量 8,460(利息を生む資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.03(NIM(純金利の利ざや))→ 売上 279 億ドル・営業利益 187 億ドル
- 運用・管理手数料(運用型・助言・投信・RIA):数量 312,000(顧客資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.00(預かり資産に対する手数料率)→ 売上 181 億ドル・営業利益 90 億ドル
- 取引収益・その他(売買・暗号資産・銀行手数料):数量 6,500(口座数(万口))× 価格 0.02(1 口座あたりの収益(億ドル/万口))→ 売上 101 億ドル・営業利益 26 億ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)。事業の ROE 23.8%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 973 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 16.2%、g 4.0%(預かり資産の伸びと利ざやで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 16.7 倍で、これが検査の上限になる。預かり資産 13 兆ドルの個人向け証券の最大手で、規模が費用を薄める。 上限の 8.4 割の 14.1 倍に置いた。
確率:中期目標の成長が 10 年へ薄まりながら続く。中立より少し強い側。
中立 32% 中立:預かり資産は年 9%、手数料率は微減、ROE は 25% 台へ落ち着く 利益 191 億ドル · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 144.25 ドル2,493 億ドル
2035 年末、顧客資産は 27.2 兆ドル(年 9%:市場 約 5.5% と純流入 約 3.5%)、利息を生む資産は 7,700 億ドル、NIM は 3.15%。預金のコストは短期金利 3.5〜4% の下で下がらず、現金の一部は高利のマネーマーケットファンドへ出るので、NIM は 2026〜27 年のピークより低く止まる。運用・管理手数料の率は年 1% ずつ下がる(0.056%)が、助言・運用型の比重で一部を埋める。取引・その他は口座 6,000 万、口座あたり収益は物価の 5 割ほどの伸び。景気後退を 2 回挟み、そのたびに利益は 2〜3 割落ちるが、ならすと年 7% 近く増える。税引前利益率は 51%。純利益は約 191 億ドル、事業の ROE は 27%、10 年の正味の還元は 988 億ドル。堀は規模と低コストにあり、広がりも狭まりもしない。
- 純金利収益(預金・貸出・証券の利ざや):数量 7,700(利息を生む資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.03(NIM(純金利の利ざや))→ 売上 243 億ドル・営業利益 155 億ドル
- 運用・管理手数料(運用型・助言・投信・RIA):数量 272,000(顧客資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.00(預かり資産に対する手数料率)→ 売上 152 億ドル・営業利益 73 億ドル
- 取引収益・その他(売買・暗号資産・銀行手数料):数量 6,000(口座数(万口))× 価格 0.01(1 口座あたりの収益(億ドル/万口))→ 売上 87 億ドル・営業利益 21 億ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)。事業の ROE 21.6%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 886 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 15.0%、g 4.0%(預かり資産の伸びと利ざやで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 16.3 倍で、これが検査の上限になる。預かり資産 13 兆ドルの個人向け証券の最大手で、規模が費用を薄める。 上限の 8.0 割の 13.1 倍に置いた。
確率:議論の落としどころ。NIM と流入は 2026 年の山より低く、競争で価格は下がる前提。
やや悲観 22% やや悲観:預かり資産は年 7%、手数料率と NIM の低下で ROE が 23% へ 利益 136 億ドル · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 89.88 ドル1,553 億ドル
2035 年末、顧客資産は 22.6 兆ドル(年 7%)、利息を生む資産は 6,680 億ドル、NIM は 2.90%。フィデリティ・バンガードの手数料競争、ロビンフッドの高利回りスイープ、規制によるスイープ金利の引き上げで、現金の収益性が下がる。運用・管理手数料の率は 0.051% まで下がり、口座あたり収益も伸びない。経費は物価で伸び続けるので税引前利益率は 47%。純利益は約 136 億ドル、事業の ROE は 23%、10 年の正味の還元は 852 億ドル。暗号資産とトークン化されたマネーマーケットファンドが現金をオフバランスに動かす動きが、預金ベースの収益を侵食し始める。
- 純金利収益(預金・貸出・証券の利ざや):数量 6,680(利息を生む資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.03(NIM(純金利の利ざや))→ 売上 194 億ドル・営業利益 114 億ドル
- 運用・管理手数料(運用型・助言・投信・RIA):数量 226,000(顧客資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.00(預かり資産に対する手数料率)→ 売上 115 億ドル・営業利益 50 億ドル
- 取引収益・その他(売買・暗号資産・銀行手数料):数量 5,300(口座数(万口))× 価格 0.01(1 口座あたりの収益(億ドル/万口))→ 売上 69 億ドル・営業利益 14 億ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)。事業の ROE 17.7%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 768 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 13.1%、g 4.0%(預かり資産の伸びと利ざやで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 15.4 倍で、これが検査の上限になる。預かり資産 13 兆ドルの個人向け証券の最大手で、規模が費用を薄める。 上限の 7.4 割の 11.4 倍に置いた。
確率:競争と規制で、2 割強の確率で収益性が 2025 年の水準まで戻る。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(スイープ規制・資産の流出・信用事故) 利益 61 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 35.30 ドル610 億ドル
2035 年末、顧客資産は年 4.5% 増にとどまり 17.8 兆ドル、利息を生む資産は 5,780 億ドル。スイープ金利の規制と現金のオフバランス化(トークン化されたマネーマーケットファンド、ステーブルコイン)で NIM は 2.10% へ下がり、貸出で信用事故(担保付き資産ラインの担保割れや提携先の不祥事)が起き、手数料率は競争で 0.044% に下がる。顧客はフィデリティやロビンフッドへ流れ、口座あたり収益も縮む。税引前利益率は 32%、純利益は約 61 億ドル(2025 年を下回る)、事業の ROE は 11%。もう優良ではなく、規制と競争に圧迫される普通の金融として式で測る。10 年の正味の還元は 466 億ドル。
- 純金利収益(預金・貸出・証券の利ざや):数量 5,780(利息を生む資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.02(NIM(純金利の利ざや))→ 売上 121 億ドル・営業利益 51 億ドル
- 運用・管理手数料(運用型・助言・投信・RIA):数量 178,000(顧客資産の平均残高(億ドル))× 価格 0.00(預かり資産に対する手数料率)→ 売上 78 億ドル・営業利益 23 億ドル
- 取引収益・その他(売買・暗号資産・銀行手数料):数量 4,600(口座数(万口))× 価格 0.01(1 口座あたりの収益(億ドル/万口))→ 売上 53 億ドル・営業利益 5 億ドル
倍率:事業の ROE 8.1%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 751 億ドル)が k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)以下なので、PER は 1÷k = 11.8 倍まで(ためた利益は額面未満の価値。SCHEMA §1-1)。預かり資産 13 兆ドルの個人向け証券の最大手で、規模が費用を薄める。 上限の 8.5 割の 10.0 倍に置いた。
確率:規制・競争・信用事故が重なる確率を 1 割強。2008 年の再現でなく構造的な負け。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
純金利収益(預金・貸出・証券の利ざや)
顧客の現金を預かり、証券と貸出(担保付き資産ライン・住宅ローン)に運用して得る利ざや。
| 数量利息を生む資産の平均残高(億ドル) | 価格NIM(純金利の利ざや) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,300 | 0.03 | 117 | 70 |
| 10 年後 中立 | 7,700 | 0.03 | 243 | 155 |
取り方:2025 年の利息を生む資産は平均約 4,300 億ドル(2026 年 7〜9 月期は 4,515 億ドル)、NIM は 2.7% 台と置き、純金利収益 約 117 億ドル(推定)。営業利益は経費の配分で、税引前利益の約 6 割。業界ノートの塊 B は「NIM 一定」だが、シュワブは 2025 年が谷(2.7%)で 2026 年に 3.0% へ戻っており、証券の入れ替えで 3.2% 前後まで上がると置く。
運用・管理手数料(運用型・助言・投信・RIA)
運用型サービス、ETF・投信の手数料、RIA 向けカストディなど、預かり資産に比例する手数料。
| 数量顧客資産の平均残高(億ドル) | 価格預かり資産に対する手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 115,000 | 0.00 | 71 | 34 |
| 10 年後 中立 | 272,000 | 0.00 | 152 | 73 |
取り方:2025 年の顧客資産は平均約 11.5 兆ドル(2026 年 9 月末は 13.33 兆ドル)、運用・管理手数料は約 71 億ドル(推定)、率 0.062%。手数料率は資産額に対する割合なので、物価による値上がりは数量(資産額)の側に入る。顧客資産は米国の個人向け預かり資産(シュワブ・フィデリティ・バンガードの 3 社の合計は推定で 40 兆ドル前後)× シェア(約 3 割)で置き、市場は年 5.5%、純流入が年 3.5〜5.8% 付く。
取引収益・その他(売買・暗号資産・銀行手数料)
株式・オプション・為替・暗号資産の売買収益、銀行業務の手数料、その他。
| 数量口座数(万口) | 価格1 口座あたりの収益(億ドル/万口) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,850 | 0.01 | 51 | 12 |
| 10 年後 中立 | 6,000 | 0.01 | 87 | 21 |
取り方:証券口座は約 3,850 万(2026 年 8 月は 4,010 万)、取引収益ほかは約 51 億ドル(推定)で、1 口座あたり約 130 ドル。売買手数料はゼロなので、口座あたりは物価ほどは伸びない。
リスクと懸念
スイープ金利の規制と現金の移動
当局や裁判所が顧客の最善の利益を理由にスイープ金利の引き上げを求めれば、NIM は 0.2〜0.4 ポイント下がる。純金利収益は利益の約半分で、純利益は 2 割以上動く。2023 年に現金が高利回りのファンドへ出て NIM が縮んだ前例があり、短期金利が高い今は再発しうる。
信用事故と預金の動揺
担保付き資産ライン(貸出 723 億ドル・前年比 35% 増)は株価の急落で担保が割れ、信用費用が出る。補完的な資金調達(短期借入 142 億ドル・長期債務 238 億ドル)が増えており、預金が逃げた時の調達コストは重い。2023 年の地銀危機でシュワブの株価は約 4 割下がった。
競争:フィデリティ・ロビンフッド・インタラクティブ・ブローカーズ
フィデリティは職場の退職口座と暗号資産で、ロビンフッドは高利回りのスイープと若年層で、インタラクティブ・ブローカーズは海外と上級者で攻める。手数料と預金金利の引き下げ競争が続けば、口座あたり収益と NIM が下がり、純流入のシェアも落ちる。
資本の薄さと規制
調整後 Tier 1 レバレッジは 7% と薄く、債券の含み損・貸出の増加で資本の余裕が減れば、自社株買いが止まる。資産が大きくなるほど規制が重くなる(大手銀行と同じ資本・流動性規制)ことで、ROE が下がる可能性がある。
市場の下落と取引の収益
株価が 3〜4 割下がる局面で、顧客資産は同時に縮み、手数料型の収益(運用・管理手数料の約 3 割)が減る。取引量は一時的に増えるが、手数料ゼロの下では収益に届きにくく、運用型・助言の流入も細る。2022 年は株価の下落で顧客資産が 1 年で 1 割以上減り、2008 年はそれ以上だった。
暗号資産・トークン化と現金のオフバランス化
ステーブルコイン・トークン化されたマネーマーケットファンドで顧客の現金が銀行の外へ動けば、預金を元手にした利ざやの事業が侵食される。暗号資産の取引・保管の新規参入が手数料を押し下げる可能性もある。会社は自前で暗号資産の取引と保管を始めたが、先行する専業との競争が残る。
今後の分かれ目
- スイープ金利が規制や訴訟で強制的に引き上げられ、NIM が 3% を下回る
- 純利益の 2 割以上が失われ、やや悲観・悲観の確率を上げる。ROE が 20% 台前半へ下がり、倍率が縮む。
- 取引性スイープ現金が 5,000 億ドルを超えて増え続け、NIM が 3.3% 台へ上がる
- やや楽観の筋書きに入り、純利益の伸びが中立を上回る。確率を楽観側に寄せる。
- コアの純流入が年率 4% を下回り、競合(フィデリティ・ロビンフッド)へ流れる
- 10 年の預かり資産の成長を年 9% から 7% へ直し、中立がやや悲観に近づく。
- 株価が 3〜4 割下がり、担保付き資産ラインの信用費用が増える
- 10 年の悲観に近づく。ただし配当は維持され、危機後は資本の厚い大手へ資産が集まる。
- 調整後 Tier 1 レバレッジが 7% を割り、自社株買いが止まる
- 正味の還元が減り、本質価値の差が縮む。資本の再構築で ROE が下がる。
- アドバイスの利用世帯が 5% から 10% へ増え、運用型の流入が年 300 億ドルを超える
- 手数料型の比重が上がり、NIM 依存が下がって収益が安定し、倍率が上がる(楽観側)。
見ておくもの
- 取引性スイープ現金の残高と、現金比率(顧客資産に対する割合)
- NIM と、利回り 2% 未満の証券の満期の進み方
- コア純流入(年率)とアドバイス・運用型の流入
- スイープ金利の規制・訴訟の動き
- 調整後 Tier 1 レバレッジと自社株買いの額
- 貸出残高(担保付き資産ライン)の増加と信用費用
- ロビンフッド・フィデリティの口座獲得と預金金利
倍率と資本コストの決め方
今の PER 18 倍・PBR 3.2 倍を見る前に、純金利収益は利息を生む資産 × NIM、運用・管理手数料は顧客資産 × 手数料率、取引・その他は口座数 × 口座あたり収益で利益を積み、事業の ROE と g から利益ベースの正当化 PER を出し、その 7〜9 割に倍率を置いた。k は基本 8.0% + quality +0.5% の 8.5%、g は 4%(k − g = 4.5%)。2026 年の NIM と流入を山とみて、中立の NIM を 3.15%、手数料率を年 1% 低下に置いた。結果が今の値段に近いのは式の結果で、今の値段に寄せる・離すための調整はしていない。純現金の加算は、金融の現金が顧客のものなので行っていない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.50% = 8.50%。内訳は cycle +0.50・pricing +0.00・debt +0.00・life +0.00(%)で、理由は quality_why。β は使わない。個別の懸念(顧客の現金の移動・金利の低下・預かり資産の流入の鈍り)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。