結論
アーチ・キャピタル・グループ(Arch Capital Group)は、バミューダに本社を置く損害保険・再保険・住宅ローン保険の複合会社である。2025 年は保険料(収入保険料)が約 172 億ドル、純利益 44 億ドル、営業 ROE 17.1%、簿価の伸び 22.6%。再保険の引受益は記録の 15.6 億ドル、住宅ローン保険の引受益は 4 年連続で 10 億ドルを超えた。2026 年 4〜6 月期の複合損害率は 83.5%、純利益 10.5 億ドル(ROE 18.0%)で、上半期は純利益の約 94% を自社株買いに回した。
強みは、引受の規律(高い利益率の分野に資本を動かす)、再保険と住宅ローン保険という景気・料率の山の位置が違う稼ぎ頭の組み合わせ、運用資産 495 億ドルと持分法のファンドが生む運用益。弱みは、財物カタストロフ再保険の料率が 2026 年に約 1〜2 割下がり始めたこと、事業保険の複合損害率が 90% 台後半で薄いこと、利益の一部が準備金の好転と軽い大災害に支えられていること。
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、引受の規律と資本の動かし方は堀として残ると見る。ただし今の水準は山で、中立の筋書きは 10 年で純利益が 2025 年とほぼ同じ 46 億ドル前後に落ち着く。資本コスト 8.5%(基本 8.0% + quality +0.5%)、有形 ROE 約 15%・g 3.0% から正当化 PER 14.6 倍を出し、その 7.9 割の 11.5 倍に置いた。今の PER・PBR には寄せていない。確率で加重した 10 年後の価値は 441 億ドルで、今の時価総額 348 億ドルに対し +27%(総合で「やや割安」)。悲観を 12% 置いても結論は割安だが、資本コストと利益の山の高さに敏感だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、アーチの本質は「預かった保険料を、低コストの長期資金として運用できるか」と「資本を、利益率の高い分野にだけ使うか」の 2 点で決まる。複合損害率が 100% を下回る限りフロート(預かり金)は費用のかからない資金で、約 348 億ドルの損失準備金と 232 億ドルの自己資本の合計約 580 億ドルが運用の元手になる。10 年後もこの事業は存在し、引受の規律は堀として残る。
オーナー利益は、純利益から支払余力(自己資本)を伸ばす分を引いたものである。保険料が年 2〜3% 伸びる世界では自己資本も同じ割合で増やせばよく、純利益の 8 割前後が株主のものになる。実際に 2026 年上半期の自社株買いは純利益の約 94%、2025 年は 19 億ドルだった。資本配分は評価できる。買収に走らず、軟調の時は自社株買いに資金を戻し、簿価の 2 倍近い時は買わず特別配当にした。ただし自社株買いは値段次第で価値を壊すため、簿価の 1.5 倍を超える水準での買い増しは慎重に見る。
安全域:悲観(還元を合わせて今の時価総額の 89%)まで見ても、利益の約半分は運用益(持分法のファンド収益は変動が大きい)で、再保険の軟調と大災害の恒常化、住宅ローン保険の景気循環が重なる悲観を 12% 置いた。事業の質は高いが、再保険の利益は料率サイクルの山の上にあり、予測の確信度は中くらいにとどまる。
何で稼ぐ会社か
アーチは 3 つの事業で稼ぐ。第一に事業保険(Insurance。2025 年の収入保険料 約 78 億ドル)。北米(約 7 割)は、他の賠償責任(occurrence 型と claims-made 型)、商業用自動車、商業総合保険、労災、財物・短期専門保険などで、エクセス・サープラス(E&S)の賠償責任・建設・ナショナルアカウント向けが伸びている。国際(約 3 割)はロンドンのロイズを軸とする専門保険。2024 年 8 月にアリアンツ(Allianz)の米国中堅・エンタメ事業(MCE)を 4.5 億ドルで買い、その一部の program 事業(約 23 億ドル分)は 2026 年に更新を止めて保険料が減っている。
第二に再保険(Reinsurance。2025 年の収入保険料 約 83 億ドル)。財物カタストロフ、財物(カタストロフ以外)、賠償責任(casualty)、専門保険(特約・海上・航空など)を、保険会社から引き受ける。2025 年の複合損害率は 80.8%、引受益 15.6 億ドルで過去最高、2026 年上半期の複合損害率は 76.6% だった。ただし大災害が軽く準備金の好転が大きい分が含まれ、除外した値は 78.9%。2026 年 4〜6 月期の収入保険料は前年比 −12.8%(元受保険料は −10.4%)と、料率の下落と顧客の自己負担増で縮み始めた。
第三に住宅ローン保険(Mortgage。2025 年の収入保険料 約 11 億ドル)。米国の民間住宅ローン保険(USMI)、政府系金融機関のクレジットリスク移転(CRT)、国際(豪州など)。保険金額(IIF)は 4,789 億ドル、うち米国一次が 2,864 億ドル。複合損害率は 12〜23% と極端に低く、2025 年の引受益は約 10 億ドル。延滞率 2.1%、継続率 79.9%。
利益は 3 つの源から出る。引受益(2025 年は約 29 億ドル。複合損害率 約 83%)、預かった保険料と自己資本の運用益(債券・短期の純投資収益 税引前 約 17 億ドルと、持分法のファンド収益 約 6 億ドル。2026 年 4〜6 月は前者が 4.17 億ドル、後者が 1.96 億ドル)、そして営業関連会社の利益。会社の営業利益は持分法の収益を含まず、純利益(GAAP)は含む。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一に資本の動かし方。アーチは「利益率が高い分野に資本を寄せ、低い時は縮める」ことを経営の核にしており、2023〜25 年の財物カタストロフの値上がりで再保険を厚くし、2026 年の値下がりでは引受を絞って自社株買いを増やしている(上半期の自社株買い 約 19.5 億ドル)。第二に事業の組み合わせ。再保険は料率サイクルが大きく、住宅ローン保険は景気と住宅価格で動き、事業保険は賠償責任の長い尾を持つ。3 つの山と谷が揃いにくい。第三に引受データと専門性。専門保険(ロンドン)・E&S 賠償責任・住宅ローン保険はいずれも単純な価格競争になりにくい専門分野である。
価格を決める力は中くらいで、料率サイクルの外には出られない。財物カタストロフ再保険の更新料率は 2026 年 1 月に約 −10〜20%、6〜7 月の中途更新で約 −15% と、2 年連続で下がる。それでも「イアン(2022 年)の前よりは上」と経営陣は説明する。事業保険の賠償責任・中堅は値上がりが続く。
資本効率は高い。純利益ベースの ROE は 2023 年 24.2%、2024 年 20.7%、2025 年 18.2%。ただし 2015〜18 年は 7〜9% の年が続いた(買収と軟調期)。引受益には準備金の好転(2026 年 4〜6 月 1.65 億ドル)と軽い大災害が含まれる。経営は 2024 年 10 月からニコラス・パパドプロ(Nicolas Papadopoulo)CEO が率いる(長く CEO を務めたマルク・グランディソン(Marc Grandisson)は退任)。引受出身で、規律の文化は人に頼らず仕組みになっている点が強みだが、軟調期は経営判断が試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
損保・再保険は今、料率の山を越えて下りに入る局面にある。2023〜25 年は財物カタストロフ再保険の料率が急騰し、アーチも大きく伸ばした。2026 年は 1 月に −10〜20%、6〜7 月の更新で約 −15% と下がり、再保険業界は資本が潤沢で、casualty 再保険も「魅力的だが再保険資本が多すぎる」(経営陣)。それでも料率はイアン(2022 年)の前よりは高く、利益率は十分にある。CEO は「軟調の初期にいる」と述べ、2027 年まで下落が続くとの見方が業界に多い。
競合:再保険ではスイス再保険(Swiss Re)、ミュンヘン再保険(Munich Re)、ハンノーバー再保険(Hannover Re)、エベレスト(Everest)、ルネッサンス・リ(RenaissanceRe)。事業保険では、チャブ(Chubb)、AIG、W.R. バークレー(W.R. Berkley)、マーケル(Markel)、トラベラーズ(Travelers)、ハートフォード(Hartford)、ロイズのシンジケートが競う。E&S の賠償責任と大口の財物は 2026 年に料率が下がり、MidCorp の包括保険は中位の 1 桁で値上がり、D&O は緩やかに回復、サイバーは下落が緩む。
住宅ローン保険は別の構造で、米国の民間 5〜6 社(エムジーアイシー(MGIC)、エッセント(Essent)、エヌエムアイ(NMI)、ラディアン(Radian)、イナクト(Enact)、アーチ)が、ファニーメイ・フレディマックのルールのもとで保険を出す。需要は住宅ローンの組成(金利・住宅価格・在庫)に連動し、2026 年は購入しにくさで組成が低調、保険金額は 2025 年 6 月から約 3.6% 減った。競合は連邦住宅局(FHA)と退役軍人省(VA)の保証。損失は景気後退で上がるが、現在の保険金額は高い頭金・良い信用の貸出が中心で、延滞率 2.1% と低い。
価格と数量:財物の再保険は料率が下がっても需要は減らず、引受側が数量を絞って利益率を守る。損害率の悪化は大災害(ハリケーン・山火事・竜巻・戦争)の頻度に左右され、経営陣は中東戦争の業界損失を約 30 億ドルと見ている。運用益は金利が高いうちは支えになる。
資本政策と M&A
資本政策は「成長に要る分以外は返す」で、方針は上半期に明確だった。2025 年は 19 億ドル(21.2 百万株、期首株数の 5.6%)、2026 年上半期は約 19.5 億ドル(20.7 百万株)の自社株買いで、純利益の約 94% を返している。残枠は 22 億ドル(2026 年 4 月に 30 億ドル増枠)。配当は普通株になく、2024 年に簿価の約 2 倍の時は特別配当、今の約 1.5 倍では自社株買いを選ぶと経営陣が説明している(簿価の 1.45〜1.6 倍で買い付け)。発行済株式は 3.41 億株(2026 年 7 月 30 日)。
M&A は「割高で、自社株買いや自力成長の代わりにならない」と経営陣は述べる。最近は 2024 年 8 月のアリアンツ MCE(4.5 億ドル、現金)と、2021 年のワトフォード(Watford)の買収。未成立の大型買収はない。時価総額が 350 億ドル弱なので、買われる側にもなりにくい。
借金は 43 億ドル(2025 年末は 27 億ドル)。2026 年 6 月に 20 億ドルのシニア債(5.25% 2036 年物 6 億ドル・5.95% 2056 年物 14 億ドル)を出し、2043・2046 年物の一部を買い戻し、2026 年物を償還する。負債と優先株の比率は 18.1%、利払いは四半期 0.6 億ドル台へ上がる。優先株 8.3 億ドル(配当 年 約 0.4 億ドル)。株式報酬による株の増加は自社株買いで打ち消され、会社全体の価値で見ればよい。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 19.5 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の利益は山の途中にすぎず、アーチは軟調でも利益を守る会社である。2026 年 4〜6 月期の複合損害率は 83.5%、大災害と準備金を除いても 82.5% と、2023 年以前の水準より大きく良い。財物カタストロフ再保険は 2 年連続で約 −15% 下がったが、イアン前より高く、利益率は十分に残る。アーチは軟調で引受を絞り、casualty と専門保険に資本を回し、事業保険(E&S 賠償責任・建設・ナショナルアカウント・国際専門)は 2026 年も値上がりと成長が続く。
住宅ローン保険は 4 年連続で引受益が 10 億ドルを超え、延滞率は 2.1% で横ばい。保険金額は 4,789 億ドルと大きく、継続率が 80% 前後なら毎年の保険料が安定する。豪州など国際の新しい顧客が増え、米国は住宅の購入しやすさが戻れば組成が増える。運用資産は 495 億ドルで、持分法のファンドが年 6 億ドル前後を稼ぎ、債券は低利の債券が 5% 前後に入れ替わって利回りが上がる。
資本の動かし方が最大の強みで、軟調な時ほど自社株買いが増え、簿価の 1.5 倍の値段でも 2 年で発行済株式が 1 割近く減る。有形 ROE 約 17%・g 3.5% なら、利益ベースでも PER は 24 倍前後になり、質が高く安定した会社が高い倍率を付けるのは自然である。競合が緩んで損害率を悪化させるほど、規律のあるアーチの価値は高まる。
慎重な見方
今の利益は、軽い大災害と大きな準備金の好転と山の料率が重なった結果で、そのまま続かない。2026 年 4〜6 月期の引受益は前年から約 2 割減り、保険料は −8.1%、再保険は −12.8%。財物カタストロフ再保険の料率は 1 月に −10〜20%、中途更新で約 −15% と大きく下がり、経営陣自身が「軟調の初期」と認める。再保険資本が潤沢で、casualty も料率が緩む。複合損害率は大災害を平年(保険料の 7〜8%)に戻すだけで 90% 前後に戻る。
事業保険は複合損害率が 97.5%(上半期)で、大災害を除いても 92% 前後と薄く、賠償責任の準備金(社会的インフレ)が足りなくなれば利益が消える。住宅ローン保険は 2025 年の複合損害率 12% 前後が異常に良く、準備金の好転が薄れ、保険金額は前年比 −3.6% で縮み、景気後退で延滞が増えれば引受益が半分になる。運用益のうち持分法のファンド収益(年 6 億ドル)は株式・不動産・クレジットの相場で簡単に消える。
資本コストは quality で +0.5% 上げたが、k が 0.5% 上がると倍率は 1〜2 割下がり、価値は前提のずれに敏感すぎる。再保険は成長ではなく料率サイクルで稼ぐ事業で、有形 ROE は 15% 前後へ戻り、純利益は 10 年でほぼ横ばいにとどまる。
どちらに重みを置いたか
事業の質の評価は強気がやや優勢(資本の動かし方・住宅ローン保険の安定・運用益の積み上がり)。一方で、利益の水準が料率の山にあり、再保険の軟調が始まっている点は慎重な見方が当たっている。確率は中立に最も寄せ(10 年 34%)、やや悲観を 24%、悲観を 12% と、再保険と大災害の比重が大きい分、同じ領域の TRV(10〜12%)より悲観側をわずかに厚くした。倍率は利益ベースで、中立は有形 ROE 約 15%・g 3.0%・k 8.5% の正当化 PER の 7.9 割。結果は 10 年で +27%、総合は「やや割安」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 145.19 ドル498 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 91.00 ドル312 億ドル)。 今の値に割り戻すと 124.73 ドル428 億ドル、今との差 +21.5%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 241.72 ドル830 億ドル | 103.00 ドル354 億ドル | +235.7% | +12.9% | 27.58 ドル95 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 190.71 ドル655 億ドル | 100.67 ドル346 億ドル | +183.7% | +11.0% | 64.10 ドル220 億ドル |
| 中立 | 34% | 153.99 ドル529 億ドル | 98.92 ドル340 億ドル | +146.3% | +9.4% | 85.99 ドル295 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 108.10 ドル371 億ドル | 93.39 ドル321 億ドル | +96.2% | +7.0% | 48.36 ドル166 億ドル |
| 悲観 | 12% | 46.62 ドル160 億ドル | 38.02 ドル131 億ドル | −17.6% | −1.9% | 10.16 ドル35 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 145.19 ドル498 億ドル | 91.00 ドル312 億ドル | +130.0% | +8.7% | 236.19 ドル811 億ドル |
今の株価時価総額 102.69 ドル352 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:資本の動かしで年 4% 台の成長、再保険と住宅ローン保険の利益率が保たれる 利益 62 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 241.72 ドル830 億ドル
10 年で事業保険は市場の数量 +13%・シェア +8%(E&S 賠償責任・建設・ナショナルアカウント・国際専門で取る)・価格 1.45 倍で 138 億ドル、再保険は料率の下落が 2027 年に止まった後に戻り、リスク量 +18%・価格 1.20 倍で 117 億ドル。住宅ローン保険は保険金額 +35%(住宅価格の上昇と米国の組成の回復)。複合損害率は約 85.5%、運用資産 760 億ドル・利回り 5.2% で運用益 39.5 億ドル、純利益 62 億ドル、自己資本 372 億ドル(有形 ROE 約 17%)。軟調な時は資本を返し、硬い時に厚く出す方針でチャブやエベレストとの差が開き、自社株買いは毎年利益の約 8 割で続く。大型の買収は置かない。
- 事業保険(企業向け・専門保険):数量 36.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 37,559(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 138 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場数量 +10%・シェア +10.9%・価格 ×1.45・利益率 7.5%
- 再保険(財物カタストロフ・賠償責任・専門):数量 826(引受リスク量(補償限度額の合計・億ドル相当))× 価格 0.14(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 117 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場数量 +10%・シェア +7.3%・価格 ×1.20・利益率 15.0%
- 住宅ローン保険(米国・CRT・国際):数量 6,588(保険金額 IIF(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 15 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場数量 +12%・シェア +20.5%・価格 ×0.98・利益率 74.0%
- 運用(預かった保険料と自己資本の運用益):数量 760(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用益 ÷ 運用資産))→ 売上 40 億ドル・営業利益 40 億ドル。運用資産 × 利回り(純投資収益+持分法の収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 17%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 62.0 ÷ 自己資本 372.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.6%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 15.2 倍(上限 = 純利益 62.0 億ドル × これ = 940 億ドル)。これの 0.9 割(13.4 倍)に置いた。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:軟調を乗り越えて casualty・専門保険と住宅ローン保険で利益率を保つ筋書きは 1 割弱。
やや楽観 22% やや強気:年 3% 台の成長で、高い ROE が続く 利益 53 億ドル · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 190.71 ドル655 億ドル
10 年で事業保険は数量 +19%・価格 1.42 倍で 131 億ドル、再保険は数量 +13%・価格 1.10 倍で 103 億ドル、住宅ローン保険は保険金額 +30%・料率 0.965 倍。複合損害率は約 87%、運用益 37 億ドル。純利益 53 億ドル、自己資本 341 億ドル。大型の買収は置かず、自社株買いで利益の約 8 割を返す。再保険の軟調は 2027〜28 年で終わり、アーチは 2020 年代前半のような好条件を再び得る。競合ではハートフォードが事業保険で引受を緩める一方、エベレストとは特約の分だけ差が開かない形。
- 事業保険(企業向け・専門保険):数量 35.7(保険契約の件数相当(万件))× 価格 36,782(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 131 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場数量 +10%・シェア +8.2%・価格 ×1.42・利益率 6.2%
- 再保険(財物カタストロフ・賠償責任・専門):数量 791(引受リスク量(補償限度額の合計・億ドル相当))× 価格 0.13(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 103 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場数量 +10%・シェア +2.7%・価格 ×1.10・利益率 13.0%
- 住宅ローン保険(米国・CRT・国際):数量 6,344(保険金額 IIF(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 14 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場数量 +12%・シェア +16.1%・価格 ×0.96・利益率 71.0%
- 運用(預かった保険料と自己資本の運用益):数量 730(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用益 ÷ 運用資産))→ 売上 37 億ドル・営業利益 37 億ドル。運用資産 × 利回り(純投資収益+持分法の収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 16%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 53.0 ÷ 自己資本 341.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.0%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 14.8 倍(上限 = 純利益 53.0 億ドル × これ = 786 億ドル)。これの 0.8 割(12.3 倍)に置いた。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:強気の見方が通りやすい余地を考え、2 割強。
中立 34% 中立:料率サイクルの山を越え、純利益は 2025 年とほぼ同じ水準で落ち着く 利益 46 億ドル · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 153.99 ドル529 億ドル
事業保険は市場の数量 +10%・シェア +5%・価格 1.36 倍で 123 億ドル(複合損害率約 95%)、再保険は数量 +8%・価格 1.02 倍で 91 億ドル(料率の下落が 2027 年に止まった後に物価で戻る)、住宅ローン保険は保険金額 +25%・料率 0.95 倍で 13.5 億ドル。全社の複合損害率は約 88.6%(2025 年は約 83%)。運用資産は 690 億ドル、利回り 5.0% で運用益 34.5 億ドル。純利益 46 億ドル、自己資本 309 億ドル(有形 ROE 約 15%)。競合のチャブとは引受で並び、再保険ではスイス再保険・ミュンヘン再保険より小さいが利益率が高い位置を保つ。
- 事業保険(企業向け・専門保険):数量 34.8(保険契約の件数相当(万件))× 価格 35,228(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 123 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場数量 +10%・シェア +5.5%・価格 ×1.36・利益率 5.0%
- 再保険(財物カタストロフ・賠償責任・専門):数量 756(引受リスク量(補償限度額の合計・億ドル相当))× 価格 0.12(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 91 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場数量 +10%・シェア -1.8%・価格 ×1.02・利益率 11.5%
- 住宅ローン保険(米国・CRT・国際):数量 6,100(保険金額 IIF(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 14 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場数量 +12%・シェア +11.6%・価格 ×0.95・利益率 68.0%
- 運用(預かった保険料と自己資本の運用益):数量 690(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用益 ÷ 運用資産))→ 売上 35 億ドル・営業利益 35 億ドル。運用資産 × 利回り(純投資収益+持分法の収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 15%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 46.0 ÷ 自己資本 309.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 11.7%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 14.6 倍(上限 = 純利益 46.0 億ドル × これ = 673 億ドル)。これの 0.8 割(11.5 倍)に置いた。中立:引受の規律と資本の動かし方は堀だが、利益は料率サイクルの山の上にあるため、上限の 8 割にとどめた
確率:利益は年 0.4%。2025 年は複合損害率が約 83% の山で、これを平年(約 89%)に戻したうえで、運用益と住宅ローン保険が支える。
やや悲観 24% やや弱気:軟調と大災害の増加で複合損害率が 92% 台に定着 利益 35 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 108.10 ドル371 億ドル
大災害損失の傾向線(年 5〜8%)が料率を上回り、財物の軟調が賠償責任へ広がる。事業保険は数量 +10%・価格 1.32 倍で 113 億ドル(利益率 3%)、再保険は数量 0%・価格 0.92 倍で 76 億ドル(利益率 7.5%)、住宅ローン保険は保険金額 +12%・料率 0.92 倍。全社の複合損害率は約 92%、運用益 31 億ドル、純利益 35 億ドル、自己資本 270 億ドル。自社株買いは年 30 億ドル前後に減るが続け、買収は置かない。それでも有形 ROE は 13% 近くを保ち、同業の中位より高い。
- 事業保険(企業向け・専門保険):数量 33.0(保険契約の件数相当(万件))× 価格 34,192(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 113 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場数量 +10%・シェア +0.0%・価格 ×1.32・利益率 3.0%
- 再保険(財物カタストロフ・賠償責任・専門):数量 700(引受リスク量(補償限度額の合計・億ドル相当))× 価格 0.11(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 76 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場数量 +10%・シェア -9.1%・価格 ×0.92・利益率 7.5%
- 住宅ローン保険(米国・CRT・国際):数量 5,466(保険金額 IIF(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 12 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場数量 +12%・シェア +0.0%・価格 ×0.92・利益率 60.0%
- 運用(預かった保険料と自己資本の運用益):数量 650(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用益 ÷ 運用資産))→ 売上 31 億ドル・営業利益 31 億ドル。運用資産 × 利回り(純投資収益+持分法の収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 13%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 35.0 ÷ 自己資本 270.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.7%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 13.9 倍(上限 = 純利益 35.0 億ドル × これ = 488 億ドル)。これの 0.8 割(10.6 倍)に置いた。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:軟調と大災害の増加が構造に変わる筋書きで 2 割強。
悲観 12% 悲観:構造的に負け、優良な再保険・損保ではなくなる 利益 8 億ドル · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 46.62 ドル160 億ドル
再保険は資本の過剰で料率が長く低迷し(数量 −20%・価格 0.78 倍で 52 億ドル、利益率 0.5%)、事業保険は賠償責任の準備金不足が数年続いて価格競争に巻き込まれ(利益率 −10%)、住宅ローン保険は政府系機関の制度変更と FHA の拡大で保険金額が縮み、料率も 0.88 倍まで下がる(複合損害率 70%)。複合損害率は約 104%。運用益 23.5 億ドル(利回り 4.2%)。純利益は 8 億ドル、自己資本は準備金の積み増しで 200 億ドル。10 年の純利益の合計は約 110 億ドルで、縮小で不要になった資本を手元の現金・債券の売却で返すため、還元の合計は 130 億ドルと純利益の合計を上回る。ならした利益では見ず、床の資産で測る。預かる保険料は残るが、もう優良ではない。
- 事業保険(企業向け・専門保険):数量 28.5(保険契約の件数相当(万件))× 価格 30,566(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 87 億ドル・営業利益 −9 億ドル。市場数量 +10%・シェア -13.6%・価格 ×1.18・利益率 -10.0%
- 再保険(財物カタストロフ・賠償責任・専門):数量 560(引受リスク量(補償限度額の合計・億ドル相当))× 価格 0.09(保険料 ÷ リスク量(料率))→ 売上 52 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場数量 +10%・シェア -27.3%・価格 ×0.78・利益率 0.5%
- 住宅ローン保険(米国・CRT・国際):数量 4,148(保険金額 IIF(億ドル))× 価格 0.00(保険料 ÷ 保険金額(料率))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場数量 +12%・シェア -24.1%・価格 ×0.88・利益率 30.0%
- 運用(預かった保険料と自己資本の運用益):数量 560(運用資産(億ドル))× 価格 0.04(利回り(運用益 ÷ 運用資産))→ 売上 24 億ドル・営業利益 24 億ドル。運用資産 × 利回り(純投資収益+持分法の収益)
倍率:構造的に負けた筋書き。10 年目の有形 ROE は 4% 台で k 8.5% を下回るので、価値は稼ぐ力(純利益 8 億ドル ÷ k = 約 94 億ドル)より、縮小しながら資本を返せる床の資産で測る。床は自己資本 200 億ドルから売却の割引と準備金不足を引いた約 160 億ドルで、PBR 0.8 倍。市場の値付けや過去の底からは置いていない。
確率:再保険資本の過剰・賠償責任の準備金不足・住宅ローン保険の制度変更が重なる確率を 12% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
事業保険(企業向け・専門保険)
北米の賠償責任・商業自動車・労災・財物と、ロンドンなど国際の専門保険。ブローカー経由。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 25,903 | 78 | 4 |
| 10 年後 中立 | 34.8 | 35,228 | 123 | 6 |
取り方:2025 年の事業保険の収入保険料 77.71 億ドル(複合損害率 95.2%、引受益 3.75 億ドル。LA の山火事が 1〜3 月に効いた)を、30 万件相当 × 平均約 2.6 万ドルに置いた推定(件数は非開示)。市場は米国と国際の企業向け損保(業界ノート:損保市場は元受保険料で年 1 兆ドル前後、商業・専門がそのうち半分前後)で、アーチのシェアは 1〜2%。競合はチャブ・AIG・W.R. バークレー・マーケル・ロイズ。数量 = 市場(企業の売上・資産の実質増)× シェア。2026 年は program 事業 約 23 億ドルの更新停止で保険料が一時減り、E&S 賠償責任・建設・ナショナルアカウントで取り戻す。価格は賠償責任の値上げと財物の値下げで、3 年で 1.09 倍、10 年で 1.36 倍(物価 1.41 倍より下)とした。
再保険(財物カタストロフ・賠償責任・専門)
保険会社の財物カタストロフ・財物・賠償責任・専門保険を引き受ける。
| 数量引受リスク量(補償限度額の合計・億ドル相当) | 価格保険料 ÷ リスク量(料率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 0.12 | 83 | 16 |
| 10 年後 中立 | 756 | 0.12 | 91 | 11 |
取り方:2025 年の再保険の収入保険料 約 82.8 億ドル(複合損害率 80.8%、引受益 15.58 億ドル。元受保険料 111.5 億ドル・出再後 76.2 億ドル)を、補償限度額 約 700 億ドル相当 × 料率 約 11.8% に置いた推定(限度額は非開示)。市場は世界の再保険市場(約 7,000 億ドル前後と推定)、競合はスイス再・ミュンヘン再・ハンノーバー再・エベレスト・ルネッサンス・リ。数量 = 市場(保険会社の自己負担を除いた補償の実質増)× シェア。価格 = 料率(財物カタストロフの更新料率は 2026 年 1 月 −10〜20%、6〜7 月 約 −15%)× 物価。3 年で 0.84 倍、10 年で 1.02 倍とした(料率の下落が 2027 年まで続いた後に物価で戻る)。
住宅ローン保険(米国・CRT・国際)
米国の民間住宅ローン保険、政府系機関のクレジットリスク移転、豪州などの国際。
| 数量保険金額 IIF(億ドル) | 価格保険料 ÷ 保険金額(料率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,880 | 0.00 | 11 | 10 |
| 10 年後 中立 | 6,100 | 0.00 | 14 | 9 |
取り方:2025 年の住宅ローン保険の収入保険料 約 11.4 億ドル(引受益 約 10 億ドル、複合損害率 12% 前後)を、保険金額 約 4,880 億ドル(年平均)× 保険料率 約 0.23% に置いた。2025 年末 4,846 億ドル→2026 年 6 月 4,789 億ドル。市場は米国の住宅ローン保険(頭金 20% 未満の新規の住宅ローンの分)で、競合はエムジーアイシー・エッセント・エヌエムアイ・ラディアン・イナクト・FHA。数量 = 市場(住宅価格と借り手数の実質増)× シェア。価格は物価ではなく、古い高料率の契約が入れ替わって 3 年で 0.96 倍、10 年で 0.95 倍とした。
運用(預かった保険料と自己資本の運用益)
債券・短期の純投資収益と、持分法のファンド収益(税引前)。
| 数量運用資産(億ドル) | 価格利回り(運用益 ÷ 運用資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 460 | 0.05 | 23 | 23 |
| 10 年後 中立 | 690 | 0.05 | 35 | 35 |
取り方:2025 年の運用益(純投資収益 税引前 約 16.6 億ドルと持分法のファンド収益 約 6.4 億ドル)約 23.0 億ドルを、年平均の運用資産 約 460 億ドル × 利回り 5.0% に置いた。2026 年 4〜6 月は 6.13 億ドル(純投資収益 4.17+持分法 1.96。年換算 24.5 億ドル)、運用資産は 495 億ドル(債券 343・持分法投資 68.5・短期 33.5)。債券の償却原価利回りは 3.91% で前年の 4.25% から下がったが、持分法のファンドが補う。長期金利 5%・短期 3.5〜4% が続く前提で、債券利回りは入れ替えで少し上がる。
リスクと懸念
再保険の料率の下り
財物カタストロフ再保険の料率は 2026 年 1 月に −10〜20%、中途更新で約 −15%。CEO は『軟調の初期』と述べ、収入保険料は 4〜6 月期に再保険で −12.8%。再保険の資本が潤沢で、casualty にも広がると引受益が数割減る。
大災害の傾向線と戦争
2026 年 4〜6 月期の大災害損失は 2.01 億ドル(イラン紛争と米国の竜巻)。通期の想定は保険料の 7〜8% だが、イアン級のハリケーンや山火事が重なると引受益が 1〜2 年消え、最大ゾーンの 1-in-250 損失 18 億ドル(有形自己資本の 8%)まで効く。
事業保険の薄い利益率と準備金
事業保険は上半期の複合損害率が 97.5%、大災害・準備金を除いても 92% 前後。賠償責任の社会的インフレで過去の準備金が不足すると、数ポイントで引受益が消える。損失準備金は 348 億ドルと大きい。
住宅ローン保険の景気循環
引受益の約 1/3 を占める。2025 年の複合損害率 12% 前後は異常に良く、準備金の好転は薄れてきた。保険金額は 2025 年 6 月比 −3.6%、継続率 79.9%。失業と住宅価格の下落が重なると延滞が増え、複合損害率が 50% 近くへ上がる。
運用益と持分法のファンド
運用益の約 1/4 は持分法のファンド(年 6 億ドル前後)で、株式・クレジット・不動産の相場に連動して変動する。債券の償却原価利回りは 3.91% と前年の 4.25% から下がっている。景気後退で信用商品が傷むと自己資本を削る。
経営の継続と税
2024 年 10 月からパパドプロ氏が CEO を務める。引受の規律が緩むと、軟調期の傷が大きい。バミューダの法人税(実効税率 16〜18% の見通し)と、2025 年の税額控除(QRTC)の恩恵が一過性だった点も利益を押し下げる。
資本コストの前提への敏感さ
k は quality で +0.5% 上げて 8.5% とした。k が 0.5% 上がると倍率は約 1〜2 割下がる。価値の大半は 10 年後の倍率に依存するので、悲観の確率と深さを厚めに置いてある。
今後の分かれ目
- 財物カタストロフ再保険の更新料率の下落が 2027 年 1 月に止まる
- 再保険の複合損害率は 80% 台前半に収まり、利益は年 5% 前後で伸びる。強気とやや強気の確率を上げられる。
- 財物の下落が casualty 再保険と事業保険の賠償責任に広がる
- 再保険の複合損害率は 90% 近くまで悪化し、全社の引受益が 3 割減る。有形 ROE は 12% 台まで下がり、倍率も 18 倍前後へ下がる。やや悲観の確率を上げる。
- イアン級のハリケーンか、山火事級の損失が 2 年続く
- 再保険と事業保険の引受益が 1〜2 年消え、再保険料率が急に上がる。一過性なら価値の損失は小さいが、傾向線が上がれば複合損害率が構造的に上がる。
- 米国の失業が 7% 台に上がり住宅価格が下がる
- 住宅ローン保険の延滞率が 2.1% から 5% 台へ上がり、複合損害率が 50% 近くになる。引受益は半分に減るが、保険金額の質が高く資本は十分。
- 10 年国債が 3% 台に下がる
- 運用益の押し上げが止まり、債券の利回りが下がる。純利益は 10 年で 1 割ほど少なくなる。ただし割引率も下がり、価値の差は小さい。
- 経営陣が大型の買収で自社株買いを止める
- 自社株買いの買い付け価格(簿価の 1.5 倍)より高い買収は価値を壊す。成長は買えるが、ROE と倍率が下がる。確率を悲観側へ寄せる。
見ておくもの
- 財物カタストロフ再保険の更新料率(1 月・4 月・6 月・7 月)と、アーチが引受を絞る度合い
- 複合損害率と、大災害・準備金の好転を除いた値(今は 82.5%、再保険 79.9%、事業保険 91.6%)
- 事業保険の収入保険料の伸び(今は 元受 NPW −5.1%。program 事業の更新停止を除いた伸び)
- 住宅ローン保険の延滞率(今は 2.1%)・継続率(79.9%)・保険金額(4,789 億ドル)
- 純投資収益の利回り(今は償却原価 3.91%)と持分法の収益(今は 4〜6 月 1.96 億ドル)
- 自社株買いの金額と買い付け時の簿価倍率(今は残り枠 22 億ドル、1.45〜1.6 倍)
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR を先に見ず、事業ごとに数量 × 価格で 10 年の利益を積み、その時点の有形 ROE・g から式で倍率を出した。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%、g は市場の実質 +1% + 価格(物価から軟調の分を引いた)3.0% で 4% を超えない。PER は (1 − g/RONIC)/(k − g) を来年の利益に対して出し、資本コストを超える分は新しく投じるお金では半分に薄れる形で使った。中立の 10 年は正当化 PER 14.6 倍の 7.9 割 = 11.5 倍(有形 ROE 約 15%)で、やや悲観も同じ式の上限に対する割合で置いた。悲観は稼ぐ力ではなく、縮小しながら資本を返せる床の資産(約 160 億ドル)と還元の合計が今の時価総額を下回る筋書きにした。過去の PER や PBR の底には寄せていない。総合は +27% で「やや割安」。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。再保険と損保の料率サイクル・大災害・準備金・住宅ローン保険の景気循環で利益が山谷に振れるので quality は上げた(上限の +1.0% には届かない)。金融なので負債の補正は quality の debt で見る。個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と悲観の確率・深さで表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。