結論
MGICインベストメントは、頭金の少ない米国住宅ローンに信用保険を提供する会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。現在の収益力と株主還元に対して値段には余裕がある。ただし、住宅ローンの信用リスクを一手に引き受ける会社であり、景気を問わず安心して持てる優良株とは違う。
事業の土台は強い。2025年末の住宅ローン付保残高は3031億ドル、新規付保額の民間市場シェアは19.4%だった。ファニーメイとフレディマックが低頭金ローンを買い取る際に信用補完を求める制度があり、同社はその制度を支える有力6社の一角である。2025年には7.4億ドルの純利益を生み、約9.2億ドルの配当と自社株買いを実施した。新規の保険需要が急増しなくても、既存契約から保険料が入り、余剰資本を株主に戻せる。
しかし、現在の高収益率を10年後まで延長するのは危険だ。2025年の保険損失率は約5%と異例に低かった。2007年以降の住宅危機では巨額の損失が続き、自己資本は大きく傷んだ。現在は融資基準、再保険、規制資本が改善しているが、住宅価格と雇用が同時に崩れれば、損害は再び集中する。さらに競合との価格競争で、保険金額が物価とともに増えても料率が同じように上がる保証はない。
2026年4〜6月期の純利益は1.82億ドルで、前年同期を下回った。付保残高は増えているのに正味保険料は減っており、収益力の伸び悩みが見える。中立では10年後の純利益を8.45億ドル、普通株主資本利益率を約13%と見る。資本コスト9.0%で将来の価値と正味還元を割り引くと、確率加重価値は約75.4億ドルとなる。現在の時価総額約60.5億ドルに対して約24.7%の上積みがある。ただし安全域の大部分は、好況が続くことではなく、経営が引受規律を守り、稼いだ現金を株主に返し続けることに支えられている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、MGICは高いROEを永久に複利で増やす会社というより、住宅ローンの信用リスクを慎重に引き受け、余った資本を株主に返す会社である。ここを取り違えると、景気のよい年の利益に高い値段を払ってしまう。保険会社では、稼いだ利益のうち契約者への支払いに備えて残す金額を引いたものが、実際に株主へ回せるオーナー利益である。
2025年の純利益7.4億ドルとフリーキャッシュフロー8.5億ドルは魅力的だ。ただし、保険金の発生が極めて少ない時期の数字であり、毎年の現金余剰をそのまま永久利益とは見ない。大きな不況の後には過去の契約から遅れて保険金請求が発生する。平時の利益から必要資本の積み増しと将来の正常な損失を控除することが大切だ。
経営の評価は比較的高い。会社は過去の住宅危機の失敗から、融資の質、再保険、資本規制の余裕を重視する経営へ移った。自己資本が厚く、過大な買収に頼らず、株主還元を続けたことも評価できる。今後の増分資本に14%のROEが永久に得られるとは考えないが、資本コストを超えて稼げる余地はある。
最大の不確実性は、保険の値段を自分で決める力が弱いことだ。6社しかいない市場でも、顧客は価格を比較でき、政府の代替制度が存在する。強い堀を持つ独占企業ほどの倍率を払う理由はない。それでも、住宅金融制度が現在に近い形で残り、経営が規律を失わなければ、10年後も十分な現金を生む可能性が高い。
安全域は厚過ぎるわけではない。10年の確率加重価値は現状より約25%高いが、住宅価格の急落と信用損失が重なれば、還元は止まり、株主価値は大きく傷む。保険会社に求めるのは、最も好調な年の利益ではなく、悪い年を越えても残る稼ぐ力である。その基準では、現在の値段は魅力があるが、監視をやめてよい値段ではない。
何で稼ぐ会社か
MGICの商売は、住宅ローンを借りる人が返済できなくなった場合、銀行や住宅ローン投資家の損失の一部を補償することである。頭金が住宅価格の20%に満たない通常の適格住宅ローンでは、ファニーメイやフレディマックへ売却するために信用補完が必要になる。金融機関はMGICなどの信用保険を付け、借り手が保険料を負担する場合が多い。住宅ローンを組みやすくする制度の一部なので、社会的な必要性は高い。
2025年の新規付保額は602億ドル、年末の付保残高は3031億ドルだった。保険の対象となるローンは約111万件で、正味保険料収入は約9.66億ドルである。保険金額そのものが売上になるわけではない。保険料率、ローン残高、契約の存続期間、再保険に渡す保険料が実際の収入を決める。ローンの返済、借り換え、住宅価格上昇による自己資本比率の改善で保険が不要になれば、収入は止まる。2025年末の年間契約継続率は84.8%だった。
会社の正式な報告セグメントは住宅ローン保険の一つだけである。経済的な稼ぎを理解するため、ここでは保険引受と債券運用に分ける。2025年の保険引受利益は概算7.16億ドルで、運用収益が約2.46億ドルを加えた。保険引受利益は受け取る正味保険料から保険金と経費を引いたものである。2025年は保険金の発生が少なく、極めて高い利益率になった。運用資産は約59.6億ドルで、主に投資適格債券で運用している。
再保険も重要な仕組みだ。MGICは比例再保険と超過損害再保険を使い、保険料の一部を再保険会社へ渡す代わりに、巨大な損失と必要資本を減らしている。2025年の出再保険料は約1.90億ドルだった。これは独立した売上ではなく、正味保険料に織り込まれている。住宅ローンの信用リスク移転制度にも参加するが、主な収益源は通常の住宅ローン保険である。
顧客の中心は住宅ローンを組成する銀行、専門金融会社、信用組合である。借り手本人よりも、ローンを売却する金融機関と政府系住宅金融機関の制度が商売の形を決める。人月で売る業務受託、席課金のソフト、情報販売が中核ではなく、AIエージェント代替の指定対象には当たらない。ただしAIで見積もりと引受審査が容易になれば、保険会社間の価格競争が強まる可能性がある。
優良さと弱いところ
MGICの堀、つまり競合が簡単には越えられない強みは、許認可、規制への適合、資本の厚み、金融機関との取引実績にある。1957年に現代の民間住宅ローン保険市場を開いた会社で、全米50州などで営業資格を持つ。政府系住宅金融機関に認められた民間保険会社は6社に限られ、新規参入には巨額の規制資本、信用格付け、損害査定の体制が要る。2025年には主要保険子会社の格付けがムーディーズのA2へ引き上げられた。
財務面の改善は本物である。2008年の危機後、危険な融資を避け、信用スコアの高い借り手を中心に保険を引き受けてきた。2025年の新規契約では信用スコア760以上が51.7%を占める。既存ポートフォリオの99.6%は固定金利ローンである。住宅価格が上昇し、借り手の持分が増えたことも損失率を抑えた。2026年6月末のPMIERs適格資産は約56億ドルで、必要額を約27億ドル上回る。
それでも、幅の広い堀とは評価しない。借り手は同社のブランドを指名して保険を買うわけではない。貸し手は保険料、引受条件、見積もりの速さで6社を比較する。業界では細かい信用属性に応じた料率設定が普及し、安い保険料を選ぶ動きが強まった。2026年4〜6月期の保有契約の保険料利回りは前年同期より低く、顧客が値上げを無条件に受け入れる力は弱い。
2025年のROEは14.3%だった。保険会社にとって、ROEを超える勢いで新規保険を増やすことより、将来の大きな損失を引き受け過ぎないことが重要である。MGICは成長のための無理な買収より、再保険で必要資本を減らし、自社株買いと配当に回す姿勢を示している。資本効率は魅力的だが、競争優位は普通程度であり、住宅不況を越えて高い超過利益が残り続けるとは考えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の民間住宅ローン信用保険は、住宅購入と住宅ローン組成を支える寡占市場である。2025年の民間6社の新規付保額は約3110億ドルだった。FHA、VA、USDAを含む低頭金ローン向け信用保険市場全体は約8180億ドルで、民間の取り分は38.0%である。前年の41.1%から低下した。政府のFHAとVAは、民間保険会社が競うよりも大きな外部競争相手であり、特に低信用スコアの借り手や退役軍人向け融資で強い。
民間6社の競争は接近している。MGICの2025年の新規付保シェアは19.4%だった。2026年1〜3月期の各社資料による市場シェアは、MGIC約19%、ラディアン約18%、エナクト約17%、ナショナルMIとアーチが各約16%、エッセント約14%である。これらは新規付保額による比率であり、既存契約残高の比率とは異なる。MGICは首位級だが、価格を一方的に決められるほどの集中度ではない。
今の市場は住宅購入の低迷と高い契約継続率が同居している。住宅ローン金利が高いため、借り換えによる既存保険の解約は少ない。一方、住宅の売買件数は伸び悩み、新規保険の競争が激しい。MGICの付保残高は2026年6月末に3048億ドルへ増えたが、正味保険料は前年同期を下回った。これは契約量の拡大だけで売上が伸びるとは限らない証拠である。
10年後の民間新規付保市場は、中立で2025年の購買力に直した実質約3300億ドルと見る。住宅価格の名目上昇を含めれば約4650億ドルに相当する。市場の実質的な伸びは小さく、人口よりも住宅供給、初回購入者の割合、政府系保険との条件差が大切になる。MGICのシェアは19%前後から少し下がると見る。先の数量成長を実現するには、新規付保市場だけでなく、既存契約をどれだけ維持できるかが欠かせない。
業界ノートにある一般損害保険の保険料成長率や複合損害率を、そのまま住宅ローン信用保険に当てはめるべきではない。MGICの保険金は火災や自動車事故ではなく、失業、住宅価格、差押えの時期に集中する。平時の利益率は驚くほど高いが、信用危機には何年も赤字が続く。住宅価格と雇用が同時に悪化するかどうかが、10年の価値を大きく左右する。
長期的な脅威は住宅金融制度の変更である。ファニーメイとフレディマックの改革、民間保険に代わる信用リスク移転、FHAの条件緩和によって民間保険の市場は縮む可能性がある。反対に政府系住宅金融機関が民間信用補完を重視し続ければ、許認可を持つ6社には仕事が残る。AIの発達は審査と経費を効率化するが、その節約を顧客への値下げで失えば、株主にはあまり残らない。
資本政策と M&A
MGICの資本配分は、配当と自社株買いを中心とする。2019年に普通株配当を再開して以降、還元を増やしてきた。2025年には自社株を約7.9億ドル買い、配当に約1.3億ドルを使った。年間純利益を超える還元だったが、規制資本に十分な余裕があったため実行できた。過去10年で株数が大きく減ったことは、既存株主にとって重要な成果である。
2026年4〜6月期には約1.77億ドルを自社株買いに使った。取締役会は2028年末までに使える追加7.5億ドルの買い戻し枠を承認した。さらに同年7月には四半期配当を13%引き上げた。これらは実施額と承認枠であり、10年間の還元総額を保証するものではない。会社は2026年の正味保険料が出再保険料の増加で小幅に減ると見込んでいるが、2035年までの利益やROEについて数字の約束はない。
保険子会社から持株会社への配当は、州の保険規制とPMIERsの要件を受ける。2025年末の持株会社の現金・投資は約11億ドルだった。2026年6月末の持株会社流動性は約9.3億ドルで、依然として厚い。ただし保険事業の運用債券約60億ドルを、すべて自由に還元できる余剰現金として扱ってはいけない。契約者への支払いを支える資本だからである。
M&Aでは、利益を大きく変える成立済みの大型買収や、合意済みの身売り案件は確認できない。今後も再保険の組み替えと株主還元が中心と考える。他社の買収でシェアを広げる余地はあるが、少数の大手が競う保険市場では規制審査が必要になり、買収価格も上がりやすい。株式報酬による希薄化分を控除した正味の還元を、経営者の成績として見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
MGICの強さは、制度に支えられた需要と厚い自己資本にある。住宅購入者が頭金を20%用意できないことは珍しくなく、信用補完が必要な住宅ローンは10年後も残る。民間市場の約2割を持つ会社が、全米の貸し手との関係と規制資格を失う可能性は高くない。市場が成熟しても新規付保額が毎年数百億ドルあり、その契約が積み上がれば安定した保険料の流れになる。
2025年は新規付保額が前年から増え、市場シェアも18.6%から19.4%へ上がった。2026年4〜6月期も新規付保額は前年同期を上回っている。住宅販売の低迷期でも顧客との関係を守れている証拠である。競争相手のラディアン、エナクト、アーチなども同じ規制資本の負担を抱えるため、無制限に料率を下げ続けることは難しい。損失率の高い契約を避ける規律が業界全体に定着すれば、競争は共倒れにならずに済む。
米国では物価と住宅価格が長期にわたり名目で上昇する。新規付保されるローンの平均額も増えるため、契約数が大きく増えなくても保険料収入は伸びる。住宅の供給制約が緩み、初めて家を買う世帯が増えれば、MGICの新規付保シェアは21%を超える余地がある。信用スコアの高い契約を保ち、再保険の費用を適切に管理できれば、保険料の増加が利益に強く効く。
運用益も支えになる。保険の債券投資は金利5%前後の環境で徐々に再投資が進み、収益力が高まる。再保険を使えば大きなリスクを移しながら資本を回せる。2025年には純利益を超える額を株主へ還元したが、それでも規制上の余剰資本は厚かった。10年間で株主に返る現金を重視すれば、現在の時価総額は十分に回収可能な水準にある。景気後退が軽微なら、想定より高いROEと還元が両立する。
慎重な見方
MGICが売っているのは、住宅価格と雇用の悪化が重なった時に巨額の損失を支払う約束である。平時の保険料収入は安定して見えるが、危機では何年分もの利益を一度に失う。実際に2007年から2012年にかけて大きな赤字が続き、2012年末の自己資本は約2億ドルまで減少した。現在の経営が慎重になったとしても、住宅信用保険の損失が景気と強く連動する構造は変わらない。
2025年の高い利益率にも注意が要る。信用損失が少なく、過去に積んだ準備金の見直しも利益を支えた。2026年1〜3月期には損失率が14.1%に上がり、4〜6月期も前年の損失戻入から保険金費用の発生へ転じた。延滞率も前年より上昇している。失業率が上がれば、まず延滞件数が増え、数四半期遅れて保険金が増える。財務諸表の利益は、その危険を事前に十分示してくれない。
保険料の値決めでも楽観できない。MGICのシェアは2割弱で、ラディアンやエナクトなど5社が直ちに代替できる。政府のFHAとVAは民間保険より大きな市場を持ち、政策で条件を変えられる。2025年は民間保険の市場シェアが低下した。さらに金融機関が信用リスク移転を直接利用したり、政府系住宅金融機関が保険を必要としない商品を増やしたりすれば、民間保険市場そのものが縮む。
AIによる審査の自動化も独占的な追い風ではない。見積もりや信用リスク評価が標準化されれば、競合も同じように費用を下げる。顧客には最も安い保険を選びやすくなるため、効率化の成果が価格競争で消える可能性がある。さらに再保険会社が保険料を引き上げれば、必要資本を抑える費用が増える。自社株買いは好況期には魅力的だが、住宅不況の直前に資本を返し過ぎると、危機で増資に追い込まれる。今の自己資本を絶対的な下値の保証とは考えられない。
どちらに重みを置いたか
制度上の需要と資本の厚みでは強い見方に分があるが、値決め力の弱さと信用損失の集中では慎重な見方が優勢だ。楽観側を27%、中立を34%、悲観側を39%とした。2008年級の危機を再現する可能性は低下したものの、なくなってはいない。2026年の保険料利回りの低下も、利益成長を慎重に見る理由になる。
ただし信用危機を既定の未来にはしない。信用スコアの改善、再保険、約27億ドルのPMIERs余剰資本は、かつてより明確な守りである。中立では保険損失を正常化し、利益率を現在より大幅に低くした。それでも株主還元を含む価値は現在の時価総額を上回る。結論は約25%の「やや割安」であり、高成長よりも堅実な資本配分が価値の源泉になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 43.01 ドル90 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 27.30 ドル57 億ドル)。 今の値に割り戻すと 35.91 ドル75 億ドル、今との差 +26.4%、 期待の年率 +12.5%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 88.03 ドル185 億ドル | 37.16 ドル78 億ドル | +340.7% | +20.4% | 10.02 ドル21 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 66.16 ドル139 億ドル | 34.77 ドル73 億ドル | +255.3% | +17.7% | 19.18 ドル40 億ドル |
| 中立 | 34% | 45.08 ドル95 億ドル | 31.65 ドル66 億ドル | +170.1% | +14.1% | 26.09 ドル55 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 24.98 ドル52 億ドル | 24.77 ドル52 億ドル | +75.1% | +8.0% | 12.44 ドル26 億ドル |
| 悲観 | 14% | 13.00 ドル27 億ドル | 5.48 ドル12 億ドル | −34.9% | −4.9% | 2.59 ドル5 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 43.01 ドル90 億ドル | 27.30 ドル57 億ドル | +147.5% | +12.5% | 70.31 ドル148 億ドル |
今の株価時価総額 28.41 ドル60 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:民間保険市場を広げ、引受規律と還元が両立する 利益 14 億ドル · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 88.03 ドル185 億ドル
住宅供給の改善で初めて住宅を購入する世帯が増え、民間住宅ローン保険の新規付保市場は2025年の購買力で約3700億ドルに広がる。物価を含む名目市場は約5220億ドルとなる。MGICはラディアン、エナクト、アーチとの競争で顧客対応と審査能力の優位を示し、新規付保シェアを21.5%まで伸ばす。新規契約の積み上がりにより、保有保険契約は142万件へ増える。
住宅価格の上昇と料率規律の維持で、1件当たり年間保険料は1380ドルとなる。価格は物価上昇を上回るが、融資額の増加と信用リスクに応じた料率設定がこれを支える。保険損失率は10%程度、経費率は20%程度に収まる。引受利益は13.7億ドルを超え、債券運用も資産の増加と再投資利回りの改善によって4.4億ドルを稼ぐ。
純利益は14億ドルに達する。10年間の利益累計は約107億ドルとなり、規制資本を約29億ドル積み増しながら正味78億ドルを株主へ返せる。大きな買収には踏み込まず、信用リスクを再保険へ適切に移す方針が続く。自己資本は約80.5億ドルとなり、ROEは約17.4%を保つ。民間保険市場の制度が維持され、現金を生む力が現在より強くなる筋書きである。
- 住宅ローン信用保険引受:数量 142(保有保険契約数(万件))× 価格 1,380(契約1件当たり年間正味保険料(ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 14 億ドル。民間新規付保市場の実質拡大とシェア21.5%への上昇。保険損失率10%、経費率20%。
- 保険資産の債券運用:数量 90.0(運用資産残高(億ドル、名目))× 価格 0.05(運用資産の年間正味利回り)→ 売上 4 億ドル・営業利益 4 億ドル。留保資本と保険契約の増加で運用元本が拡大。利回り4.9%。
倍率:k9.0%、10年後の普通株ROE14.0÷80.5=17.4%を有形自己資本ROEの近似とする。moatは普通で超過利益の残存率は1/2、RONIC=9.0%+(17.4%−9.0%)×1/2=約13.2%。10年目以降のgは4.0%。内訳は保有契約数量の実質増加約1.0%、シェア寄与約0.5%、正味保険料の名目単価上昇約2.5%。正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=約14.5倍。保険の信用損失が集中する可能性を残すため上限の約91%である13.2倍を採用。14.0×13.2=184.8億ドル。運用収益は事業純利益に含まれ、債券残高をさらに時価総額へ足さない。
確率:住宅購入市場の回復、民間保険の競争力維持、MGICのシェア上昇、低い信用損失が同時に成立する必要がある。好条件が重なる筋書きなので8%とする。
やや楽観 19% やや楽観:信用損失は正常範囲に収まり、着実に市場を上回る 利益 11 億ドル · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 66.16 ドル139 億ドル
米国の住宅購入は緩やかに回復し、民間住宅ローン保険の実質新規付保市場は約3500億ドルとなる。名目では約4940億ドルである。MGICの新規付保シェアは20%程度へ上がる。ラディアンやエナクトが価格競争を続けても、規模と金融機関との関係が支えとなる。保有契約は130万件に増え、契約の継続率も80%台を維持する。
保険料は融資額の名目増加を反映して1290ドルとなる。競争があるため実質の値上げ幅は小さいが、出再保険料を含めた管理がうまく進む。保険損失率は約15%、経費率は約19.5%で、引受利益は約11億ドルに達する。運用資産は78億ドルへ増え、4.6%の利回りで3.6億ドル前後を生む。
純利益は11.2億ドル、ROEは15.7%となる。10年間の純利益累計は約93億ドルで、その大部分を配当と自社株買いで還元する。再保険の利用で必要資本を抑えながら、約73億ドルを正味で返す。自己資本は71.5億ドルに増える。目立つ大型買収がなくても、住宅金融制度と顧客基盤が保たれれば、株主の利益は着実に増える。現在の高い利益率を完全には維持せずとも、価値を伸ばせる筋書きである。
- 住宅ローン信用保険引受:数量 130(保有保険契約数(万件))× 価格 1,290(契約1件当たり年間正味保険料(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 11 億ドル。民間新規付保シェア20%。保険損失率15%、経費率19.5%。
- 保険資産の債券運用:数量 78.0(運用資産残高(億ドル、名目))× 価格 0.05(運用資産の年間正味利回り)→ 売上 4 億ドル・営業利益 4 億ドル。保険資本の積み増しと債券再投資が進む。
倍率:k9.0%、普通株ROE11.2÷71.5=15.7%、moat普通で残存率1/2とする。RONICは約12.3%。gは3.75%で、10年目以降の市場の実質数量増加約0.7%、シェア寄与約0.3%、価格上昇約2.7%から導く。正当化PERは約13.75倍。信用損失の振れと価格競争を考慮し、上限の約90%である12.4倍を採用する。11.2×12.4=138.88億ドル。現金や債券を二重加算しない。
確率:貸し手との取引基盤が保たれ、住宅購入市場が緩やかに回復することは十分にあり得る。ただしシェア拡大には競合との価格競争に勝つ必要があり、19%とした。
中立 34% 中立:市場は緩やかに増えるが、利益率は平常時へ戻る 利益 8 億ドル · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 45.08 ドル95 億ドル
住宅ローン保険の市場は今後も必要とされるが、大幅な成長は期待しない。民間の新規付保市場は2025年の購買力で約3300億ドル、名目で約4650億ドルになる。MGICの新規付保シェアは18.5%程度へ緩やかに下がる。ラディアン、エナクト、アーチとの競争で一部を失うが、規制資格と既存顧客によって首位級の地位は守る。保有契約数は118万件へ増える。
1件当たり年間正味保険料は1170ドルになる。10年間の増加率は約35%で、物価上昇の約41%を下回る。住宅価格と融資額の増加は保険料を押し上げるが、料率競争と再保険費用が一部を相殺する。保険損失率は22%、経費率は21.5%となり、引受利益は約7.8億ドルである。高い金利による債券の再投資が進み、運用益は約3.3億ドルに増える。
純利益は8.45億ドルにとどまり、ROEは13.1%となる。これは2025年の高い利益率を恒久的なものとしない結果である。10年間の利益累計約79.25億ドルから、株式報酬の希薄化を控除した正味66.45億ドルを株主に返し、自己資本は64.3億ドルになる。大きな買収はなく、規制資本を維持しながら既存事業の利益を分配する。MGICは10年後も十分に稼ぐが、現在より格段に強い独占企業にはならない。
- 住宅ローン信用保険引受:数量 118(保有保険契約数(万件))× 価格 1,170(契約1件当たり年間正味保険料(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 8 億ドル。民間新規付保シェア18.5%。保険損失率22%、経費率21.5%。
- 保険資産の債券運用:数量 72.0(運用資産残高(億ドル、名目))× 価格 0.05(運用資産の年間正味利回り)→ 売上 3 億ドル・営業利益 3 億ドル。資本留保と再投資によって運用資産が緩やかに増える。
倍率:金融のため有形普通株自己資本ROEを基礎にし、のれんが主要な資産でないことからGAAP普通株資本で近似する。2035年ROE=8.45÷64.3=13.14%。k9.0%、moat普通で残存率1/2、RONIC=9.0%+(13.14%−9.0%)÷2=約11.07%。gは3.25%。10年目以降の市場実質数量約0.5%、シェア寄与ほぼ0%、価格上昇約2.75%の合成であり、ROEから逆算していない。正当化PER=(1−0.0325÷0.1107)÷(0.09−0.0325)×1.0325=約12.69倍。信用損失と価格競争のため上限の約88%である11.2倍とする。kの逆数11.11倍をわずかに上回り、13%のROEに整合する。8.45×11.2=94.64億ドル。保険運用債券は利益を稼ぐ営業資産として含み、現金を別に足さない。
確率:住宅金融制度の存続と保険需要の緩やかな増加が最も自然だが、2025年の低い損失率は続かない。新規付保市場での競争と信用損失の正常化を同時に入れるため、34%を中心に置く。
やや悲観 25% やや悲観:料率競争と信用損失でROEが資本コストを下回る 利益 5 億ドル · PER 9.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24.98 ドル52 億ドル
住宅価格の高騰が住宅購入件数を抑え、民間新規付保市場は2025年の購買力で約2900億ドルへ縮む。名目では約4090億ドルとなるが、FHAとVAに市場を奪われ、MGICの新規付保シェアは15%程度へ下がる。ラディアンとエナクトに加え、低い経費率を武器とするナショナルMIの競争が激しい。新規契約が減り、保有契約数は105万件にとどまる。
保険料の上昇は10年間で約19%に抑えられ、物価に大きく負ける。保険損失率は33%、経費率は25%となる。2025年に7億ドルを超えていた引受利益は4.5億ドル程度まで減る。運用資産は61億ドル、運用利回りは4.3%にとどまり、投資収益も十分に補えない。大きな住宅危機ではないが、低い料率で引き受けた契約から想定以上の損失が出る。
純利益は5.35億ドル、ROEは8.5%に低下する。10年間の利益累計は約63.75億ドルで、初期の高収益を背景に正味52億ドルを還元できる。しかし自己資本63.25億ドルに対する収益力は資本コストに届かず、以後の再投資は魅力を失う。経営は買収と大規模な自社株買いを抑え、保険契約の採算回復と規制資本の確保を優先する。会社は存続するが、優良な資本効率を持つ保険会社ではなくなる。
- 住宅ローン信用保険引受:数量 105(保有保険契約数(万件))× 価格 1,030(契約1件当たり年間正味保険料(ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 5 億ドル。民間新規付保シェア15%。保険損失率33%、経費率25%。
- 保険資産の債券運用:数量 61.0(運用資産残高(億ドル、名目))× 価格 0.04(運用資産の年間正味利回り)→ 売上 3 億ドル・営業利益 3 億ドル。収益低下により運用元本の増加が止まる。
倍率:2035年ROEは5.35÷63.25=約8.46%で、k9.0%に届かない。今後の新規投資が資本コスト以上を稼ぐとは評価せず、正当化PERの上限は1÷k=11.11倍とする。gは市場数量の実質減少約0.5%、シェア流出約0.5%、保険料単価の名目上昇約3.5%から2.5%。信用損失が正常時より重い状態が長引くため、上限より低い9.8倍で稼ぐ力を評価する。5.35×9.8=52.43億ドル。現在の自己資本51.5億ドルに対してほぼ同程度の価値が残り、悲観時の資産の守りとも整合する。
確率:政府系保険へのシェア流出、民間6社の価格競争、信用損失の増加のいずれも十分に考えられる。全面的な住宅危機を必要としないため、25%と比較的厚くする。
悲観 14% 悲観:住宅信用危機と制度変更で規制資本を失う 利益 3 億ドル · PER 9.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13.00 ドル27 億ドル
住宅価格の急落と雇用悪化が重なり、複数年にわたり住宅ローンの延滞と差押えが急増する。再保険によって一部の損失は移転できるが、契約条件と保険会社の信用リスクが十分な保護を与えない。MGICは規制資本を大きく失い、政府系住宅金融機関から新規引受を制限される局面に追い込まれる。危機の後には、FHAとVAの拡大や民間信用リスク移転の普及が進み、民間保険市場の実質規模は約2700億ドルへ縮む。
2035年の名目新規付保市場は約3810億ドルで、MGICのシェアは11%程度になる。保有契約は95万件に減少し、正味年間保険料は970ドルにとどまる。保険損失率は55%、経費率は24.5%となり、引受利益は約1.9億ドルに落ち込む。運用益は約2.3億ドル残るが、高い信用損失と保険料の競争を埋め合わせるには足りない。
10年間の純利益累計はマイナス6億ドルとなる。内訳は初めの3年間で約21億ドルを稼いだ後、信用危機の3年間で合計約36億ドルを失い、残り4年間で約9億ドルを回復する筋書きである。危機前の配当と買い戻しで正味11.5億ドルを返した後は還元を止める。自己資本は約34億ドルへ傷み、保険会社としての信用力も低下する。最終年の純利益は3億ドルまで戻るが、規制資本の不足と新規事業の縮小により、以前の収益力には復帰できない。
- 住宅ローン信用保険引受:数量 95.0(保有保険契約数(万件))× 価格 970(契約1件当たり年間正味保険料(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。民間新規付保シェア11%。保険損失率55%、経費率24.5%。途中3年間にはさらに大きな信用損失が集中する。
- 保険資産の債券運用:数量 55.0(運用資産残高(億ドル、名目))× 価格 0.04(運用資産の年間正味利回り)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。損失準備金を抱えながら運用元本の一部は残るが、自由に使える資本は減少する。
倍率:危機後の純利益3.0億ドル、自己資本34.0億ドルでROEは8.82%。k9.0%以下なので利益ベースの上限は1÷k=11.11倍。長期gは1.0%で、市場数量の実質縮小約1.5%、シェア流出約0.5%、価格の名目上昇約3.0%から見積もる。信用力の低下と規制資本の制約から9.1倍とする。3.0×9.1=27.3億ドルで、別途見積もった換金可能資産の床27.0億ドルを上回る。将来の自己資本に過去の谷のPBRを掛けたのではなく、危機後の稼ぐ力を評価した。現在の帳簿自己資本51.5億ドルは住宅信用危機の後には維持されない。
確率:2007〜2012年の実績が示す住宅信用保険の破壊力を無視できない。ただし現在の融資基準、再保険、規制資本は過去より改善している。全面的な信用危機と構造的なシェア喪失が重なる確率を14%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
住宅ローン信用保険引受
個別住宅ローンの債務不履行を補償する信用保険。再保険に渡した保険料と引き受けた信用リスク移転分を反映した正味保険料を収益とする。
| 数量保有保険契約数(万件) | 価格契約1件当たり年間正味保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 111 | 868 | 10 | 7 |
| 10 年後 中立 | 118 | 1,170 | 14 | 8 |
取り方:2025年Form 10-Kの正味保険料965.8百万ドルと、2025年第4四半期末の保有保険契約約111.27万件から、1件当たり年間正味保険料を約868ドルと推計した。年末件数を年間平均件数の近似に使うため、単価には小さな推計誤差がある。新規付保額602億ドルを売上と取り違えず、継続中の保険料を対象にする。引受利益7.16億ドルは正味保険料から保険損失約0.49億ドルと引受費用約2.01億ドルを引いた概算。民間新規付保市場3110億ドルに対するMGICのシェアは19.4%である。競合はラディアン、エナクト、アーチ、ナショナルMI、エッセントの5社。2026年初の競合シェアはおおむね14〜18%に分散する。将来の数量は市場の実質規模とシェアに加え、既存契約の継続率で推定する。単価は住宅ローン残高の名目増加を含み、競争による実質料率の低下を差し引く。
保険資産の債券運用
保険会社と持株会社が保有する投資適格債券などから利息収入を得る。運用資産は保険債務と規制資本を支える資金であり、余剰現金とは区別する。
| 数量運用資産残高(億ドル、名目) | 価格運用資産の年間正味利回り | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 59.6 | 0.04 | 2 | 2 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 0.05 | 3 | 3 |
取り方:2025年Form 10-Kの投資有価証券約59.6億ドルと、投資費用控除後の運用収益約2.46億ドルを用い、年間利回りを約4.13%とした。運用資産は名目の金融資産残高であり、利回りへさらに物価上昇を掛けると二重計上になる。10年後の残高は保険契約の積み増し、純利益の留保、株主還元、損害支払いから考える。長期金利5%前後の世界で債券が徐々に入れ替わる一方、保険規制が運用リスクを制限する。これは独立した報告セグメントではなく、保険事業の収益源を分析上分けたものである。
リスクと懸念
住宅信用危機と長期に続く損害
MGICの最大の危険は、住宅価格の下落と失業の増加が同時に起きることだ。2007〜2012年には複数年にわたり赤字が続き、自己資本が著しく減少した。現在の融資基準は改善しているが、頭金の少ない借り手に保険を提供する以上、損害が景気に集中する構造は残る。延滞率だけでなく、延滞から実際の保険金請求へ進む割合を監視する必要がある。
価格競争と民間保険シェアの低下
民間住宅ローン保険は6社の寡占だが、価格を比較する仕組みが発達している。2025年の民間保険シェアは政府系保険との競争で低下した。ラディアン、エナクト、アーチ、ナショナルMI、エッセントが保険料率を引き下げれば、MGICは契約を守るために価格か利益率を犠牲にする。保険料単価が物価より上がらない状態が続くと、10年の利益成長は大きく損なわれる。
ファニーメイ・フレディマックと規制制度の変更
民間信用保険の大半は政府系住宅金融機関の信用補完要件に支えられている。民営化や監督制度の見直しによって保険の必要量が減れば、契約数と料率が同時に下がる。PMIERsの必要資本が増える場合も、同じ保険料収入に対して株主が拘束される資本は増える。制度が事業を守る堀であると同時に、制度変更は最大級の構造的リスクとなる。
再保険コストとカウンターパーティー
MGICは比例再保険や超過損害再保険により資本負担を減らしている。再保険会社が高い保険料を要求したり、信用危機に契約更新を拒んだりすると、利益と規制資本の双方が傷む。再保険による必要資本の軽減は強みだが、保険金の支払い能力そのものを消す仕組みではない。出再率だけでなく、損失の自己負担部分と相手先の信用力が大切になる。
過剰な自社株買いと規制資本の不足
2025年は純利益を超える株主還元を行った。規制上の余剰資本が厚い間は合理的だが、住宅価格が下がる前に買い戻しを急ぐと、危機時に増資を強いられる可能性がある。2026年に承認された追加買い戻し枠は資本政策の柔軟性を示す一方、無条件に実施すべき金額ではない。保険契約の損失リスクに見合う資本を維持できるかが重要だ。
AIによる価格透明化とデータ競争
この会社は人月課金や席課金で売る事業ではなく、AIエージェント代替の指定対象外である。しかしAIを使ったローン審査と保険料の自動比較は、貸し手が複数の保険会社を切り替える費用を下げる。MGICが引受業務を効率化しても、競合が同じ技術を使えば節約した費用の多くは値下げとして顧客に渡る。技術投資が利益率の改善につながるか、シェア防衛だけに終わるかを見極めたい。
保険資産の運用損失と金利固定
運用資産の中心は投資適格債券であり、株式中心の運用より保守的である。ただし長期金利が5%前後で高止まりすると、低利回り時代に取得した債券の含み損が残る可能性がある。信用スプレッドの拡大や債券の格下げも自己資本を削る。保険金の支払いで資産を不利な価格で売却する事態になれば、運用損失と保険損失が同時に発生する。
今後の分かれ目
- 民間住宅ローン保険の新規付保市場が実質で拡大し、MGICのシェアが20%を超えて維持される
- 保有契約数が積み上がり、価格競争を吸収して増収できる。やや楽観と楽観の確率を引き上げる。
- 保険損失率が数四半期にわたり20%を超え、延滞率も上昇を続ける
- 信用損失の正常化を超える可能性を疑い、中立の引受利益率を引き下げ、やや悲観の確率を増やす。
- 正味保険料利回りが30ベーシスポイントを継続して下回り、保有契約数も減少する
- 数量と価格の両方で競争に負けていると判断する。中立の保険料収入と10年目以降の成長率を引き下げる。
- PMIERsの余剰適格資産が20億ドルを割り込み、再保険による資本軽減も低下する
- 株主還元の持続性が弱まる。将来の配当と買い戻しを減らし、悲観側の確率を高める。
- 資本規制に十分な余裕を保ちながら、年間6〜8億ドル規模の正味株主還元が続く
- 成熟した保険事業が現金を株主へ返すという投資仮説が強まる。中立の還元総額を維持する根拠になる。
- ファニーメイとフレディマックが民間信用保険の利用を縮小し、代替の信用リスク移転を拡大する
- 市場の実質数量と将来のシェアを引き下げる。制度に支えられた堀が弱まるため、構造的な悲観の確率を高める。
- 再保険の更新で出再コストが大幅に上昇し、従来の資本軽減効果が維持できなくなる
- 保険引受の正味利益率と増分ROEを下げる。規制資本の追加留保によって将来の株主還元も減らす。
見ておくもの
- 四半期ごとの新規付保額NIWと民間6社の市場シェア
- 保有保険契約数、付保残高IIF、年間契約継続率
- 正味保険料利回りと保有契約の直接保険料利回り
- 延滞率、延滞件数、延滞から保険金請求へ進む割合
- GAAP保険損失率、引受経費率、引受利益
- PMIERs適格資産、必要資産、余剰額、再保険による資本軽減
- 投資有価証券の残高と実現運用利回り
- 自社株買い・配当から株式報酬による希薄化を控除した正味還元
- FHA・VAの民間保険に対する市場シェアとGSEの制度改正
- 2026年11月4日公表予定の2026年第3四半期決算と2027年以降の再保険更新条件
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日のfactsベース時価総額は約60.46億ドル、外部検索の同日基準では約59.08億ドルである。差は約2.3%で、直近の自社株買いによる掲載株数の更新時点の違いと整合する。基準株価と株数は依頼どおりfactsを採用した。
10年後の価値は現在のPERやPBRを出発点にしていない。民間住宅ローン保険市場の実質規模、MGICのシェア、保有契約数、契約当たり正味保険料を分け、信用損失率と経費率から引受利益を求めた。債券運用益を加え、利払いと税を反映してGAAP純利益を見積もった。中立の2035年純利益8.45億ドルは、2025年の異例に低い保険損失率を正常化した結果である。
kは8.0%にquality1.0%を加えた9.0%。moatは普通で超過収益の残存率を1/2とし、中立のROE13.14%、RONIC約11.07%、g3.25%から正当化PER上限約12.69倍を得る。その約88%の11.2倍を採用した。金融資産は運用利益を生む事業資産なので、別途現金価値を加算していない。悲観では信用危機による損失と資本毀損を利益累計に入れ、床は将来の積み上がった自己資本ではなく、現時点の売却可能資産から危機時の追加負担を控除した額で評価した。
自己資本の道筋は2025年末の約51.5億ドルに10年間の純利益累計を加え、株式報酬と株式発行を差し引いた正味還元を控除している。中立は51.5+79.25−66.45=64.3億ドル、悲観は51.5−6.0−11.5=34.0億ドルとなる。楽観から悲観まで時価総額は単調に下がり、悲観の27.3億ドルは売却可能資産の床27.0億ドル以上である。
確率は8%、19%、34%、25%、14%で合計100%。10年後時価総額と還元をそれぞれ9.0%で割り引くと、確率加重価値は約75.38億ドル、facts基準の時価総額に対する差は約24.7%となり、判定は「やや割安」である。一般損保の古い倍率や現在の市場評価に合わせて数字を動かしていない。米国基準ASC 842のリースは既に財務諸表へ反映されており、日本の新リース基準による将来の表示変更はこの会社の評価には直接当たらない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本資本コスト8.0%にqualityの1.0%を加えて9.0%とする。β、現在のPER、過去の株価下落率からは決めない。規制変更や特定の不況による損害はkに追加せず、各筋書きの利益と確率に入れる。長期gは事業の数量と単価から決め、4%以下、かつk−gは3.5ポイント以上とする。