結論
インタラクティブ・ブローカーズ・グループ(IBKR)は、プロの投資家・富裕層・ヘッジファンド・各国のネット証券の顧客を相手に、150 を超える市場の株・オプション・先物・為替・債券を 1 つの口座で売買させるオンライン証券である。コンピューター化した注文処理を創業者トーマス・ピーターフィ氏が 1977 年から磨き、税前利益率は 77% と同業の倍近い。2026 年 4〜6 月期は口座 519 万(前年比 34% 増)、顧客資産 9,303 億ドル(40% 増)、純収益 19.0 億ドル、税前利益 14.6 億ドルだった。
最初に押さえる点は持ち分の構造である。上場しているクラス A 株は会社の 26.5% にすぎず、残り 73.5%(1,250,737,416 口、創業者の一族が約 91.6% を持つ)は IBG ホールディングスが持つ LLC ユニットで、1 対 1 で A 株に交換できる。全部を合わせた持ち分は 1,701,408,529 口(2026 年 6 月 30 日、10-Q)。時価総額も純利益も、少数株主分を引く前の会社全体で測らないと、今の値段の高さを誤る。会社全体で見ると時価総額は約 1,407 億ドル、2025 年の純利益(全部が A 株なら課される税率 21% で置く)は約 38 億ドルで、PER は 37 倍になる。
筋書きは、口座が年 14% 前後で増える間は取引件数・顧客資産・純金利が同時に伸び、10 年後の純利益は中立で約 123 億ドル(今の 3.3 倍)、会社全体の時価総額は約 1,888 億ドルとなる。資本コストは 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%。取引量と金利への連動 +0.5、費用の低さによる値決めの強さ −0.25)、g は 4% で、事業の正当化 PER は約 18.5 倍。倍率はその 8.1 割の 14.8 倍に置き、余剰資本の積み上がりと還元を足して今の値段に割り戻すと、本質価値は今の値段を約 2 割下回り、総合は「やや割高」。事業の質は高いが、バリュー投資の観点では、高い質はすでに値段に含まれている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。IBKR は 10 年後も存在し、今より強い。費用の低さ・システム・世界中の顧客という 3 つの堀は、顧客が増えるほど深くなる自己強化の形をしている。10 年前の口座は 40 万、今は 519 万。費用を上げずに規模を作る事業で、同じ型の競合は現れていない。
次にオーナー利益を見る。税前の利益率は 77% と高く、伸びに必要な追加資本は顧客資産の約 1.3% の自己資本で済む。会社全体の純利益は 2025 年に約 38 億ドル、余剰資本(103 億ドル)を除いた自己資本利益率は 35% 前後。この事業の「株主のものになる利益」は純利益の 9 割近くになる。素晴らしい事業である。
問題は値段である。会社全体の時価総額は約 1,407 億ドルで、2025 年の純利益に対し PER 37 倍。10 年後の純利益を中立で 3.3 倍に置き、利益ベースの式(資本コスト 8.25%・g 4%)の倍率 14.8 倍(上限 18.5 倍の 8.1 割)を当てると、確率で重みづけた 10 年後の価値は 1,107 億ドルで、今の値段を約 2 割下回る(期待の年率 +4.9%、資本コスト 8.25% に届かない)。優良な事業をやや高い値段で買う、というのが現在地で、安全域は無い。強気の筋書き(口座 2,100 万、顧客資産 3.8 兆ドル)が実現して初めて本質価値が今の値段を超えるが、その確率は 1 割強に置いた。経営は資本配分で価値を壊さないが、余った資本の使い道を示さない点だけが気がかりである。確信度は高いが、買う値段としては待つ余地がある。
何で稼ぐ会社か
IBKR の収益は 3 つに分かれる。第 1 は手数料で、2025 年は約 22 億ドル(純収益の 35%)。顧客が出す株・オプション・先物の注文を自社の取引システムで取引所へ直接つなぎ、1 件あたりの手数料は約 2.35 ドルと小さい。第 2 は純金利収益で約 35 億ドル(57%)。顧客に貸す信用取引の金利と、顧客の預け金・自己資金を運用する金利から、顧客に払う金利を引いたもので、顧客資産の約 0.5% にあたる。2026 年 4〜6 月期は信用取引残高が 1,085 億ドル(67% 増)、顧客の現金は 1,824 億ドル(27% 増)。第 3 はその他(約 5 億ドル)で、為替の両替益・市場データ料・株の貸出(証券貸借)・投資信託の手数料などである。
事業の核は自動化にある。注文の受付・約定・決済・リスク管理・マージンコールまで人手を介さず、1 口座あたりの運営費が低い。だから口座を増やすほど利益率が上がる。顧客は世界約 200 の国と地域に広がり、口座の大半は米国外にある。顧客層は、ほかの証券会社が手を出しにくい細かい要望(複数通貨・時間外取引・特殊な注文)を持つ人が中心で、手数料を下げたければ「IBKR ライト」で 0 ドルの株式取引も用意する。
最近は 3 つの新しい柱を足している。1 つめは 2024 年に始めた予測市場(ForecastEx)で、2026 年にも拡充した。2 つめは夜間取引の拡大で、米国株をほぼ 24 時間売買できる。3 つめは全国信託銀行の免許(予備承認済み、年末の稼働見込み)で、投資信託・ETF を自社で直接保管でき、保管費・金利収益を取りこぼさなくなる。AI のチャットと口座をつなぐ IBKR コネクターも出した。収益の 9 割以上は顧客の取引量と預かり資産という、数量で決まる収益である。
優良さと弱いところ
優良さは 4 点で決まる。第 1 は費用構造で、税前利益率 77% は大手のシュワブ(Charles Schwab)の 4 割台、ロビンフッド(Robinhood)の 5 割弱を大きく上回る。取引システムを自社で書き、顧客対応も大半を自動化した。第 2 は顧客の質で、収益の大半は口座あたり資産の大きい活発な顧客と、機関・ファンド・各国のネット証券(取引の裏方)から出る。第 3 は信用取引の管理で、リスク管理の厳しさを自社の信用にしてきた。担保が不足した口座を自動で強制決済し、2020 年の原油先物のマイナスや 2015 年のスイスフランの急変では損失を出したが、会社を揺るがす規模には至らなかった。第 4 は創業者の資本配分で、ピーターフィ氏が会社の約 67%(ホールディングス経由)を持ち、報酬は株式で受け取る。株主と利益が一致している。
弱い所も 3 つある。1 つめは純金利収益への依存で、収益の 6 割弱は金利の水準と顧客の現金の動きで決まる。短期金利が現在の 3.5〜4% で変わらない前提でも、顧客が現金を高利の MMF に移すと純金利の率は下がる(2026 年 4〜6 月期は前年より低下)。2 つめは信用取引の急拡大で、残高が 1 年で 67% 増えたあとに急落相場が来れば、顧客の損失が会社の損失になる。3 つめは創業者への依存で、ピーターフィ氏は 82 歳、後継の CEO ミラン・ガリク氏は 2019 年から経営を担う。持ち分の半分以上が 1 人に集中している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の個人向け証券は、シュワブ・フィデリティ(Fidelity)・バンガード(Vanguard)の 3 社が預かり資産で圧倒し、その外側にロビンフッド・IBKR・ウェブル(Webull)・イートレード(モルガン・スタンレー傘下)が並ぶ。シュワブの顧客資産は 2026 年 8 月に 13.4 兆ドル、ロビンフッドは 3,840 億ドル、IBKR は 2026 年 6 月に 9,303 億ドル。IBKR は米国の個人証券では 4 番手の規模だが、グローバルでは取引ごとの手数料が最も低く、国をまたぐ口座の受け皿になっている。
業界の数量を決めるのは、投資できる資産の伸び(世界の株式・債券市場の名目の伸びで年 5〜6%)と、証券口座を持つ人の増え方(個人投資家の世界的な拡大、新興国のネット証券化)である。価格を決めるのは、手数料のゼロ化(米国では 2019 年に主要各社が株の手数料を無料にした)と、顧客の現金に払う金利をめぐる競争である。金利が 3.5〜4% の間は、顧客が現金を MMF へ動かし、ブローカーの預かり金利差(純金利の率)が縮む。逆に信用取引の金利は高いまま、貸出残高は市場の上昇と顧客の取引意欲で増える。
競合の動きでは、シュワブ・フィデリティが 2025〜26 年に夜間取引・暗号資産・オプションを拡充してきた。ロビンフッドは予測市場・退職口座・銀行へ広げ、顧客を幅広く取る方向に進む。IBKR は国際展開と機関向け(取引の裏方)が差別化で、2026 年の口座増加 34% は同業の中で最も速い部類。口座あたりの収益は減りにくいが、口座の増加が鈍れば成長率はすぐ落ちる。規制は比較的軽く、証券取引委員会・米商品先物取引委員会に加え各国の免許が要る点が参入障壁になる。
資本政策と M&A
還元は少なく、利益の大半は内部に積み上がる。2026 年上期の会社全体の純利益 25.1 億ドルのうち、A 株の持ち分(5.8 億ドル)から払った配当は 0.75 億ドル。大きな流出は、ホールディングスの持ち分を持つ人(主にピーターフィ氏)が自分の税金を払うための分配である。自社株買いは従業員の株式報酬の源泉税の買い戻し(上期 1.5 億ドル)が中心で、会社全体では配当と買い戻しを合わせた正味の還元は純利益の 4〜5 割と見る(税のための分配を含む)。
積み上がった資本は大きい。経営陣は 2026 年 6 月の余剰資本を 103 億ドルと説明し(前四半期より約 11 億ドル増)、買収の対象は見当たらないと述べた。会社全体の自己資本は 222.5 億ドルで、時価総額の 16%。資本を貯めるだけで使い道がなければ、価値は 1 ドルで数えても、配当で受け取れる時期が遠くなる。ホールディングスからの A 株への交換(2026 年 7 月は 249 万株、会社に現金は入らない)が続くので、A 株の数は増えるが会社全体の持ち分は変わらない。買収は過去に小さな案件が中心で、大型買収で価値を壊すリスクは低い。ガバナンスは創業者の議決権が約 73.5% で、少数株主の発言力は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IBKR は、世界の資産運用の窓口になる。口座は 2026 年 6 月に 519 万(34% 増)、7 月末に 532 万と加速し、前年比 3 割台の勢いが続いている。口座あたりの顧客資産は 18 万ドル前後と大きく、取引件数は前年比 36% 増の 482 万件/日。収益の質も上がっている。信用取引残高は 1,085 億ドルと 67% 増え、顧客の現金 1,824 億ドルが金利を稼ぐ。税前利益率は 7 四半期連続で 70% を超え、規模が増えるほど 1 口座の費用が下がる。
新しい成長の芽が 4 つある。予測市場(ForecastEx)、夜間取引、全国信託銀行(投資信託・ETF の直接保管)、AI チャットと口座をつなぐ IBKR コネクター。国際の富裕層・ネット証券(取引の裏方)・ファンドの需要は、米国の個人投資家より景気に左右されにくい。シュワブ(顧客資産 13 兆ドル)に対して IBKR は 9,300 億ドルで、国際分は IBKR が優位。10 年で口座が 2,000 万を超え、顧客資産が 3.8 兆ドルに届けば、純利益は約 200 億ドルになり、余剰資本の積み上がりも合わせて本質価値は今の値段を大きく超える。
慎重な見方
IBKR の成長は、2 つの追い風が同時に吹いた結果で、その両方が逆風に変わりうる。1 つめは米国の高い金利で、顧客の現金と信用取引が稼ぐ純金利収益が収益の 6 割弱を占める。現金が MMF へ流れると率は下がり、2026 年 4〜6 月期も純金利は 23% 増でも、顧客資産の 40% 増に届かず率は縮んだ。2 つめは株式相場の上昇と個人の取引熱で、信用取引の残高が 1 年で 67% 増えたのは相場が上がったから。急落相場になれば強制決済が連鎖し、2008 年は IBKR の株価が山から 6 割下がった(クラス A 株の下げ)。
値段の面では、会社全体の時価総額は 1,407 億ドルで、2025 年の純利益の 37 倍。10 年後の純利益を 3.3 倍にしても、利益ベースの式の倍率は 14.8 倍で、成長が鈍れば倍率は縮む。競合も動く。シュワブ・フィデリティが夜間取引とオプションを拡充し、ロビンフッドは予測市場と退職口座に広げる。手数料が下がれば IBKR の取引収益は、数量が増えても価格が下がる。創業者は 82 歳で議決権を押さえ、後継の道筋は明確でない。強気の筋書きに高い確率を置く根拠は弱い。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の言い分が強い一方、値段への効き方では慎重な言い分が強い。口座の増加(34%)は本物で、利益率も高いが、2025 年末の PER 37 倍には、すでに 10 年の高成長が入っている。中立は「口座が年 14% で 10 年続き、1 口座あたりの資産は物価並み」と置き、確率は楽観 12%・やや楽観 26%・中立 32%・やや悲観 20%・悲観 10% とした。利益ベースの倍率では、価値は今の値段を約 2 割下回り、結論はやや割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 113.83 ドル1,937 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 20.09 ドル342 億ドル)。 今の値に割り戻すと 65.04 ドル1,107 億ドル、今との差 −21.0%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 202.58 ドル3,447 億ドル | 30.80 ドル524 億ドル | +183.6% | +11.0% | 28.01 ドル476 億ドル |
| やや楽観 | 26% | 151.78 ドル2,582 億ドル | 23.92 ドル407 億ドル | +113.5% | +7.9% | 45.68 ドル777 億ドル |
| 中立 | 32% | 110.96 ドル1,888 億ドル | 20.22 ドル344 億ドル | +59.4% | +4.8% | 41.98 ドル714 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 62.51 ドル1,064 億ドル | 14.69 ドル250 億ドル | −6.2% | −0.6% | 15.44 ドル263 億ドル |
| 悲観 | 10% | 20.53 ドル349 億ドル | 7.64 ドル130 億ドル | −65.8% | −10.2% | 2.82 ドル48 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 113.83 ドル1,937 億ドル | 20.09 ドル342 億ドル | +62.8% | +5.0% | 133.92 ドル2,279 億ドル |
今の株価時価総額 82.28 ドル1,400 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:口座 2,100 万、顧客資産 3.8 兆ドル。国際の受け皿として勝ち切る 利益 198 億ドル · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 202.58 ドル3,447 億ドル
2035 年の口座は 2,100 万(年 18%)、取引は年 44 億件(1 口座 210 件)。手数料は 1 件 2.50 ドル(機関・オプション・先物の比率が上がる)で約 110 億ドル。顧客資産は平均 3.8 兆ドル(市場 年 5.5% + 純流入)で純金利の率は 0.46%、純金利収益は約 175 億ドル。税前利益は約 250 億ドル(77%)、全持ち分の純利益は約 198 億ドルで 2025 年の 5.2 倍。予測市場・信託銀行・AI 接続で 1 口座の収益が 190 ドルへ増える。10 年の還元は約 524 億ドル(5 割)、余剰資本は約 218 億ドル。シュワブの国際版として勝つ形。
- 手数料(取引件数 × 1 件の手数料):数量 44.1(年間の取引件数(億件)= 平均口座数 × 1 口座の年間取引件数)× 価格 2.50(1 件あたりの手数料(ドル))→ 売上 110 億ドル・営業利益 81 億ドル。取引件数 44.1 億件 × 1 件 2.50 ドル
- 純金利収益(顧客資産 × 純金利の率):数量 38,000(平均の顧客資産(億ドル))× 価格 0.00(顧客資産に対する純金利の率)→ 売上 175 億ドル・営業利益 147 億ドル。顧客資産(平均)× 純金利の率 0.46%
- その他(口座数 × 1 口座の収益):数量 2,100(平均口座数(万口座))× 価格 190(1 口座あたりの年間収益(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 23 億ドル。平均口座数 × 1 口座 190 ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)。事業の ROE 38.1%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 729 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 23.2%、g 4.0%(顧客口座と預かり資産の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 19.5 倍で、これが検査の上限になる。世界でいちばん安く速い証券会社で、費用の低さと自動化が堀。 上限の 8.8 割の 17.1 倍に置いた。
確率:確率 12%。口座が 10 年で約 5 倍、顧客資産が 5.6 倍になる必要がある。国際展開が続けば起こりうるが、シュワブ・フィデリティの追い上げと手数料の下落を考え 1 割強にとどめる。
やや楽観 26% やや楽観:口座 1,800 万、顧客資産 3.2 兆ドル 利益 159 億ドル · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 151.78 ドル2,582 億ドル
2035 年の口座は 1,800 万、取引は年 36 億件、手数料は 1 件 2.40 ドルで約 86 億ドル。顧客資産は平均 3.2 兆ドルで純金利の率は 0.45%、純金利収益は約 144 億ドル。その他は 1 口座 180 ドルで 32 億ドル。税前利益は約 201 億ドル(77%)、純利益は約 159 億ドルで 2025 年の 4.2 倍。10 年の還元は約 407 億ドル、余剰資本は約 272 億ドル。信用取引で小さな損失が出るが、収益の伸びが上回る。1 口座あたりの資産は名目で 17〜18 万ドルと横ばいで、口座数の増加が成長の中心になる。手数料は 1 件あたり名目で据え置き、実質では下がる前提を置く。
- 手数料(取引件数 × 1 件の手数料):数量 36.0(年間の取引件数(億件)= 平均口座数 × 1 口座の年間取引件数)× 価格 2.40(1 件あたりの手数料(ドル))→ 売上 86 億ドル・営業利益 63 億ドル。取引件数 36.0 億件 × 1 件 2.40 ドル
- 純金利収益(顧客資産 × 純金利の率):数量 32,000(平均の顧客資産(億ドル))× 価格 0.00(顧客資産に対する純金利の率)→ 売上 144 億ドル・営業利益 120 億ドル。顧客資産(平均)× 純金利の率 0.45%
- その他(口座数 × 1 口座の収益):数量 1,800(平均口座数(万口座))× 価格 180(1 口座あたりの年間収益(ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 19 億ドル。平均口座数 × 1 口座 180 ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)。事業の ROE 32.2%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 703 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 20.2%、g 4.0%(顧客口座と預かり資産の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 18.9 倍で、これが検査の上限になる。世界でいちばん安く速い証券会社で、費用の低さと自動化が堀。 上限の 8.5 割の 15.8 倍に置いた。
確率:口座が年 16%、顧客資産が年 17% で増え、手数料が物価より緩やかに下がる程度。強気に近い落としどころとして 26%。
中立 32% 中立:口座 1,500 万、顧客資産は年 14% で 2.6 兆ドルへ 利益 123 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 110.96 ドル1,888 億ドル
2035 年の口座は 1,500 万(年 14%、年を追って鈍る)、取引は年 28.5 億件(1 口座 190 件)、手数料は 1 件 2.35 ドルで約 67 億ドル(実質では 3 割下がる:手数料表は名目で据え置かれ、競合はゼロ手数料)。顧客資産は平均 2.6 兆ドル(1 口座あたり 17 万ドルで名目横ばい。新規の小口が増える)。純金利の率は 0.43% で約 112 億ドル、その他は 1 口座 175 ドルで 26 億ドル。純収益は約 205 億ドル、税前利益は約 156 億ドル(76%)、全持ち分の純利益は約 123 億ドル。10 年の還元は約 344 億ドル(税のための分配を含め 45%)、余剰資本は約 276 億ドル。シュワブ・フィデリティと同じ形を国際で守る。
- 手数料(取引件数 × 1 件の手数料):数量 28.5(年間の取引件数(億件)= 平均口座数 × 1 口座の年間取引件数)× 価格 2.35(1 件あたりの手数料(ドル))→ 売上 67 億ドル・営業利益 48 億ドル。取引件数 28.5 億件 × 1 件 2.35 ドル
- 純金利収益(顧客資産 × 純金利の率):数量 26,000(平均の顧客資産(億ドル))× 価格 0.00(顧客資産に対する純金利の率)→ 売上 112 億ドル・営業利益 93 億ドル。顧客資産(平均)× 純金利の率 0.43%
- その他(口座数 × 1 口座の収益):数量 1,500(平均口座数(万口座))× 価格 175(1 口座あたりの年間収益(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 15 億ドル。平均口座数 × 1 口座 175 ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)。事業の ROE 29.5%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 625 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 18.9%、g 4.0%(顧客口座と預かり資産の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 18.5 倍で、これが検査の上限になる。世界でいちばん安く速い証券会社で、費用の低さと自動化が堀。 上限の 8.1 割の 14.8 倍に置いた。
確率:中立は口座の増加が年 14%(年を追って鈍る)、1 口座あたりの資産は名目で横ばい(小口の新規が増える)。最大の確率を置く。
やや悲観 20% やや悲観:シュワブ・フィデリティに追い上げられ口座 1,150 万にとどまる 利益 82 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 62.51 ドル1,064 億ドル
2035 年の口座は 1,150 万、取引は年 20.7 億件、手数料は 1 件 2.15 ドルで約 45 億ドル。顧客資産は平均 1.95 兆ドル、純金利の率は 0.39% で約 76 億ドル。税前利益は約 104 億ドル(75%)、純利益は約 82 億ドル。シュワブ・フィデリティが夜間取引・国際口座を整え、IBKR の国際の優位が縮む。1 口座あたりの収益は 165 ドルにとどまる。10 年の還元は約 250 億ドル、余剰資本は約 287 億ドル。口座数の増加(年 11%)は本物だが、1 口座の収益が物価に追いつかず、純利益の伸びは年 8% にとどまる。
- 手数料(取引件数 × 1 件の手数料):数量 20.7(年間の取引件数(億件)= 平均口座数 × 1 口座の年間取引件数)× 価格 2.15(1 件あたりの手数料(ドル))→ 売上 45 億ドル・営業利益 32 億ドル。取引件数 20.7 億件 × 1 件 2.15 ドル
- 純金利収益(顧客資産 × 純金利の率):数量 19,500(平均の顧客資産(億ドル))× 価格 0.00(顧客資産に対する純金利の率)→ 売上 76 億ドル・営業利益 62 億ドル。顧客資産(平均)× 純金利の率 0.39%
- その他(口座数 × 1 口座の収益):数量 1,150(平均口座数(万口座))× 価格 165(1 口座あたりの年間収益(ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 10 億ドル。平均口座数 × 1 口座 165 ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)。事業の ROE 20.8%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 549 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 14.5%、g 4.0%(顧客口座と預かり資産の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 17.0 倍で、これが検査の上限になる。世界でいちばん安く速い証券会社で、費用の低さと自動化が堀。 上限の 7.4 割の 12.3 倍に置いた。
確率:同業の追い上げで 1 口座あたりの収益が減り、口座も 1,150 万止まり。確率 2 割。
悲観 10% 悲観:手数料のゼロ化と現金の流出で構造的に収益が細る 利益 29 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 20.53 ドル349 億ドル
2035 年の口座は 700 万にとどまり、取引は年 10.5 億件、手数料は 1 件 1.60 ドルへ下がる(機関向けも無料化、競合が同じ費用で追いつく)。顧客資産は平均 1.1 兆ドルで、現金の MMF 流出と信用取引の大きな損失(担保の急落で強制決済が間に合わない)で純金利の率は 0.30%。税前利益率は 61%、純利益は約 29 億ドル。優良ではなくなり、世界最安・最速の堀が複数の競合に並ばれる。10 年の還元は約 130 億ドル、余剰資本は損失の穴埋めを引いても約 250 億ドル残る。
- 手数料(取引件数 × 1 件の手数料):数量 10.5(年間の取引件数(億件)= 平均口座数 × 1 口座の年間取引件数)× 価格 1.60(1 件あたりの手数料(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 9 億ドル。取引件数 10.5 億件 × 1 件 1.60 ドル
- 純金利収益(顧客資産 × 純金利の率):数量 11,000(平均の顧客資産(億ドル))× 価格 0.00(顧客資産に対する純金利の率)→ 売上 33 億ドル・営業利益 23 億ドル。顧客資産(平均)× 純金利の率 0.30%
- その他(口座数 × 1 口座の収益):数量 700(平均口座数(万口座))× 価格 140(1 口座あたりの年間収益(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 4 億ドル。平均口座数 × 1 口座 140 ドル
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)。事業の ROE 9.3%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 400 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 8.8%、g 4.0%(顧客口座と預かり資産の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 12.8 倍で、これが検査の上限になる。世界でいちばん安く速い証券会社で、費用の低さと自動化が堀。 上限の 8.7 割の 10.9 倍に置いた。
確率:構造的な負け:手数料の無料化が機関向けにも及び、顧客の現金が MMF へ流れ、信用取引で大きな損失が出る。10% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
手数料(取引件数 × 1 件の手数料)
顧客が出す株・オプション・先物などの注文の手数料。
| 数量年間の取引件数(億件)= 平均口座数 × 1 口座の年間取引件数 | 価格1 件あたりの手数料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.3 | 2.35 | 22 | 16 |
| 10 年後 中立 | 28.5 | 2.35 | 67 | 48 |
取り方:2025 年は平均 405 万口座 × 1 口座 230 件 = 9.3 億件。2026 年 4〜6 月期の取引は 1 日 482 万件(約 252 営業日で年 12 億件)、手数料 6.73 億ドルから 1 件 約 2.2〜2.4 ドル。2025 年の手数料は約 22 億ドルと推定(Q2 2025 の 5.2 億ドルから逆算)。税前利益率は費用の配分を置いて 72%。
純金利収益(顧客資産 × 純金利の率)
信用取引の貸出金利と預け金の運用金利から、顧客に払う金利を引いた収益。
| 数量平均の顧客資産(億ドル) | 価格顧客資産に対する純金利の率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6,800 | 0.01 | 35 | 29 |
| 10 年後 中立 | 26,000 | 0.00 | 112 | 93 |
取り方:2025 年の顧客資産は期末 7,800 億ドル、平均 約 6,800 億ドル。純金利収益は約 35 億ドル(2026 年 4〜6 月期 10.6 億ドルの年率 42 億から、前年 4〜6 月期 8.6 億ドルを逆算)で率は 0.515%。2026 年 4〜6 月期は 0.47% 前後に低下。利益率は金利費用を引いたあとなので 83%。
その他(口座数 × 1 口座の収益)
為替の両替益、市場データ料、株の貸出、投資信託の手数料など口座に付く収益。
| 数量平均口座数(万口座) | 価格1 口座あたりの年間収益(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 405 | 123 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 175 | 26 | 15 |
取り方:2025 年の純収益 約 62 億ドルから、手数料と純金利を引いた約 5 億ドルを、平均 405 万口座で割って 1 口座 123 ドル。推定。
リスクと懸念
信用取引の急落と強制決済の連鎖
信用取引残高は 2026 年 4〜6 月期に 1,085 億ドル(前年比 67% 増)。急落相場で担保が足りなくなった口座の強制決済が間に合わなければ、顧客の損失が会社の損失になる。2015 年のスイスフラン急変と 2020 年の原油先物のマイナスでは損失が出た。残高が増えた今は、同じ規模の事故でも額が大きい。
金利の水準と顧客の現金の動き
収益の 6 割弱は純金利収益。短期金利が 3.5〜4% で変わらなくても、顧客が現金を高利の MMF や国債へ移せば、顧客資産に対する純金利の率は下がる(2026 年 4〜6 月期は前年より低下)。口座や顧客資産が伸びても、率の低下が収益の伸びを削る。
手数料のゼロ化と競合の追い上げ
シュワブ・フィデリティは夜間取引・オプション・国際口座を拡充し、ロビンフッドは予測市場・退職口座へ広げている。手数料表は名目で据え置かれ、実質では下がり続ける。機関向けの手数料まで無料化が及べば、取引収益の価格が崩れる。
創業者への集中と後継
ピーターフィ氏は 82 歳で、ホールディングス経由で会社の約 67% を持ち、議決権の約 73.5% も押さえる。CEO のミラン・ガリク氏は 2019 年から経営を担うが、創業者の持ち分の相続・分散・売却の方針が不透明で、市場に供給される株が増えれば値段に重しとなる。
余剰資本の使い道が示されない
経営陣は余剰資本を 103 億ドルと説明し、買収の対象は見当たらないと述べる。一方、配当と買い戻しは小さい。使い道がないまま積み上がると、株主への還元が遠のき、資本効率は下がる。ホールディングスの交換で A 株の数が増え続ける点も、1 株あたりの価値を薄める。
ホールディングス構造と税
全持ち分の純利益に課される税は、連結の 8.6% より高い。A 株の持ち分には会社の税、ホールディングスの持ち分には個人の税が課され、税務の取り決め(税の受取契約)の支払いも絡む。税制改正で個人の税が上がれば、ホールディングスの持ち主への分配が増え、会社の内部に残る資本が減る。
今後の分かれ目
- 口座の増加が前年比 3 割から 2 割に鈍る
- 取引件数・顧客資産の伸びが落ち、中立から悲観寄りへ。強気の筋書き(口座 2,100 万)の確率は 1 割を切る。
- 信用取引で顧客の損失が会社の損失になる事故が出る
- 1 件で数億ドルの費用になり、税前利益率が 5 ポイント以上下がる。リスク管理の評判(堀の 1 つ)が傷つき、倍率も下がる。
- 顧客の現金が MMF へ流れ、純金利の率が 0.4% を割る
- 顧客資産が伸びても純金利収益が伸びず、純利益は中立の筋書きから 1 割以上下がる。
- シュワブ・フィデリティが国際口座・低い手数料で IBKR の顧客を奪い始める
- 口座のシェアを失い、手数料の価格が下がる。やや悲観から悲観の筋書きへ。
- ホールディングスの持ち分が大きく売られ、A 株の供給が増える
- 会社全体の価値は変わらないが、需給で値段が一時的に下がる。創業者の方針転換の合図になりうる。
- 余剰資本が大きな配当・買い戻しで返される、または全国信託銀行が顧客資産を増やす
- 還元の割合が上がり、本質価値が積み上がる。中立から強気寄りへ。
見ておくもの
- 月次の口座数・顧客資産・1 日あたりの取引件数(毎月初めの発表)
- 四半期の純金利収益と、顧客資産に対する純金利の率(現金の MMF への流出)
- 信用取引の残高と、顧客の担保の不足・強制決済の件数
- 余剰資本の額と配当・自社株買い・ホールディングスからの A 株への交換の動き
- 全国信託銀行の稼働、予測市場(ForecastEx)の取引量、シュワブ・フィデリティ・ロビンフッドの手数料の動き
倍率と資本コストの決め方
今の PER 37 倍・時価総額 1,407 億ドルを見る前に、3 つの収益(取引件数×手数料、顧客資産×純金利の率、口座数×1 口座収益)を 10 年積み上げ、利益ベースの正当化 PER((1−g/RONIC)/(k−g)、RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k))の 7〜9 割を事業の純利益に当て、余剰資本を足した。g は 4%、事業の ROE は余剰資本を除いて約 30%、k は基本 8.0% + quality +0.25% の 8.25%。倍率は業界ノートや今の PER に寄せていない。結果が今の値段を下回るのは、今の値段が高い成長をすでに含むため。純利益は全部が A 株なら課される 21% で置き、連結 GAAP の低い税率(ホールディングス側の課税の分)で利益を大きく見せていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25% = 8.25%。内訳は cycle +0.50・pricing -0.25・debt +0.00・life +0.00(%)で、理由は quality_why。β は使わない。個別の懸念(金利の低下・取引量の反動・規制)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。