結論
奇富科技は、中国で借り手と銀行を結び、信用審査、融資の仲介、保証、債権管理から利益を得る会社である。筆者の結論は、事業の危うさを大きく織り込んでも割安というものだ。ただし、単に利益が大きく、時価総額が小さいから安いのではない。中国の融資規制と信用循環を乗り越え、株主に利益が届き続けることが前提になる。
2025年の純利益は8.3億ドル、ROEは24.1%だった。しかし、この数字を10年後へ延ばすのは危険だ。2026年4〜6月期の融資取扱高は前年同期比25.1%減り、純利益は約0.6億ドルに落ちた。一時的な税負担が約0.7億ドルあったものの、融資単価の低下、業界の資金不足、貸倒への警戒は一時費用ではない。会社は2026年7〜9月期にも大幅減益を予想し、6月には自社株買いを停止した。かつての高い利益率へ簡単に戻るとは考えない。
10年先にも融資仲介と信用審査は必要とされる。しかし、銀行は技術を内製化でき、アント・グループなどの大手プラットフォームも顧客を握る。貸出金利と手数料への規制が強まれば、融資額が増えても利益は戻らない。さらに、中国の事業利益を米国上場株主が確実に受け取れるかというVIE構造の問題が残る。
中立では、2026年の信用収縮から緩やかに立ち直るが、2025年ほどの収益性には戻らない。2035年の純利益は4.9億ドル、ROEは約8.1%と見る。これでも利益を生み続けるなら、現在約6.4億ドルの時価総額は低すぎる。悲観側の確率を51%に厚くし、信用損失と株主還元の縮小を織り込んだ確率加重の現在価値は約20.6億ドルとなる。現在価値との差は約プラス222%で、判定は割安だ。
この結論の弱点は明確である。現金や貸付債権の帳簿額を、そのまま海外株主の取り分と見なせない。事業の価値が失われるだけでなく、法制度や資金移動の制約で利益を回収できなくなる道もある。大きな割安余地は存在するが、事業の確実性は低い。長期株主にとっては、低い評価よりも、信用損失と資本配分の規律が改善するかが重要になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に確かめたいのは、10年後にも利益を生む仕組みが残るかである。融資を必要とする人と貸したい銀行を結び、返済能力を見極める仕事そのものは消えない。だが、その仕事を奇富科技が担い続ける必然性は弱い。銀行は審査技術を購入して内製化でき、顧客を抱える巨大なインターネット企業も同じ市場を狙える。継続する業界と、継続的な超過利益を得る会社は区別しなければならない。
次にオーナー利益を考える。過去の利益は大きいが、信用リスクを負う取引では、利益の一部を保証余力や貸付資本として残す必要がある。会計上の純利益をすべて配当にできるわけではない。2025年に利益とほぼ同額を還元した資本政策は、信用収縮が始まる前だから実行できた。2026年に買い戻しを止めた事実は、現金の価値が高まる局面では還元を継続できないことを示している。
高いROEも、それだけでは堀にならない。借り手の信用力、銀行の資金供給、保証債務、規制上の融資単価が変われば、再投資利益率は急速に下がる。新たに投じる資本が過去と同じ収益率を上げるとは考えず、10年後には資本コストに近づくと見る。そのため高い成長率や高い倍率を永続させない。
それでも価格は無視できない。現在の時価総額は2025年末の自己資本を大幅に下回り、2026年の収縮後にも一定の利益と現金が残るなら、長期株主の受け取る価値は大きい。ただし中国のVIE契約、海外への送金、信用損失が同時に悪化すれば、帳簿価値は株主の救済にならない。安全域は事業の強さではなく、極端に低い現在価格にある。事業の確実性が低いことを認めた上で、なお割安という判断である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、貸し手を必要とする個人や中小事業者を集め、金融機関へつなぐことである。奇富借条などのサービスで利用者を獲得し、独自の審査モデルで返済能力を評価する。銀行は貸出資金を提供し、奇富科技は顧客獲得、審査、保証、回収を担う。2026年6月末には金融機関168社と接続し、累計登録利用者は3億人を超えた。ただし累計登録者は稼働顧客数ではない。
収益の中心は信用リスクを負うクレジット・ドリブン事業である。銀行が融資しても奇富科技が保証する取引があり、連結信託や小口融資子会社を通じて自ら貸付債権を保有する取引もある。収益は融資関連手数料、貸付利息、保証債務の期間経過による収益化から生じる。融資量が増えると売上が伸びるが、延滞と保証履行が増えれば利益が急減する。資金を持たない仲介事業という説明だけでは、実態を見誤る。
プラットフォーム事業では、銀行側が信用リスクを負う資本軽量型の融資仲介、ICEによる顧客紹介、貸付後の管理、金融機関向け技術提供を行う。融資が成立した際の手数料やサービス収入が主であり、信用リスクを直接負わない取引は資本効率が高い。ただし銀行にとって仲介会社は代替可能であり、顧客紹介料と利益分配率は交渉によって下がりうる。
2025年の融資取扱高は3271億元だった。信用リスクを負う事業の取扱高が55.9%、プラットフォーム事業が44.1%を占めた。しかし2026年4〜6月期には、全体の融資取扱高が634億元まで縮小した。延滞債権を除く融資残高も前年同期比23.2%減った。利用者基盤が拡大していても、資金供給と借り手の返済能力が悪化すれば収益は縮む。
銀行向けのQifu DigiTechでは、審査、顧客管理、貸付後業務を一体化した技術を提供している。2026年には関連する融資取扱高が伸びたが、独立した技術サービス売上は十分に開示されていない。AI技術が新たな収益源になる可能性はあるものの、融資仲介の利益減少を埋める規模に育つかは、まだ判断できない。
優良さと弱いところ
競争上の強みは、蓄積した審査データ、金融機関との接続、借り手の利用履歴である。2026年4〜6月期の融資取扱高のうち、過去に借りたことのある利用者によるものが89.4%を占めた。新規利用者を毎回獲得するより費用を抑えやすく、返済履歴が審査精度を高める循環も期待できる。金融機関168社との関係は、新規参入企業にとって一定の障壁となる。
しかし、これは強固な堀ではない。借り手は金利と審査の速さでサービスを選び、金融機関も複数の仲介会社を使える。銀行との契約は一般に更新を要し、長期の独占的な取引関係ではない。アント・グループや微衆銀行などは利用者との日常的な接点を自ら持ち、巨大なデータ基盤を利用できる。奇富科技の審査能力が優れていても、手数料を引き上げられる証拠にはならない。
資本効率の高さにも留保が要る。2021年のROEは37.6%に達し、2025年も24.1%だったが、保証債務と信用損失を伴う利益である。信用不安が強まれば、貸付債権への引当、資金調達の制約、銀行との利益配分の変更が同時に起きる。2026年の利益急減は、高ROEが永続的な値決め力の証明ではないことを示した。
経営の資本配分は評価が割れる。2023年以降は配当と自社株買いを積極化したが、2025年には高い評価で大規模に買い戻した。その後の急落を考えると、余剰資本の使い方は結果的に不利だった。2026年に資金保全を優先した判断は合理的だが、危機が来る前に同じ規律を持てたかは疑問が残る。
2023年には複数議決権の種類株を一本化し、議決権の不平等は改善した。一方で、2025年売上の96%を生む中国のVIE事業を、海外上場持株会社は直接所有していない。株主の権利は契約の実効性に依存する。結論として堀は弱く、10年先に現在より強くなる保証はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中国の消費者向け信用市場は大きいが、拡大し続ける市場ではない。中国人民銀行の公表では、2025年11月末の住宅ローンを除く消費者ローン残高は約21.2兆元だった。一方、2025年の短期消費者ローンは減少している。住宅市況の低迷、雇用と所得への不安、家計の借入意欲の弱さが背景にある。人口の伸びも期待しにくく、融資仲介の数量を10年間にわたり高成長させる根拠は乏しい。
奇富科技の2025年末の関連融資残高は1260億元だった。住宅ローンを除く消費者ローン残高と単純比較すると約0.6%に当たる。ただし奇富科技には中小事業者向け融資も含まれ、統計の対象が完全には一致しない。中国のオンライン融資仲介市場全体について、同一基準で計測された信頼できるシェア統計は確認できない。このため全国シェアを断定せず、競合の実際の取扱高と顧客基盤から競争力を測る。
2025年の年間融資取扱高は奇富科技が3271億元、レキシン(LexinFintech)が2050億元、フィンボリューション(FinVolution)の中国事業が1863億元だった。この3社に限れば奇富科技が約46%を占めるが、これは3社間の比較であり市場全体のシェアではない。さらにアント・グループ、京東金融、度小満、微衆銀行、銀行系消費者金融会社が競合する。これらの大手は決済、電子商取引、銀行口座を通じて顧客を直接獲得できる。
規制は競争の方向を決める。インターネット融資の提携管理、借り手が負担する総合的な融資費用の表示、個人情報と信用情報の利用が厳しくなっている。2026年には銀行側でも提携チャネルの融資費用上限を明示する動きが進んだ。奇富科技の2026年4〜6月期の平均融資金利は18.2%で、前四半期の18.7%から下がった。借り手の負担軽減は望ましいが、仲介会社が得られる利ざやを狭める。
2026年6月には同業他社の流動性危機が業界全体の資金供給を萎縮させた。銀行が貸付基準を厳しくすると、信用力の弱い顧客を多く抱える仲介会社ほど急速に取扱高を失う。景気循環でいえば信用収縮の局面であり、すぐに2025年の収益性へ戻ると考える理由はない。
10年の中立では、実質の消費者金融需要が緩やかに増えても、銀行の内製化と大手プラットフォームへの集中で奇富科技のシェアはやや低下する。価格は一般物価ほど上がらず、規制と競争により実質手数料率が下がる。反対に、同業の淘汰が進んで資金供給を確保できる大手だけが残れば、奇富科技にはシェア拡大の余地がある。
資本政策と M&A
2023年に半期配当を始め、基本方針として直前半期の税引後利益の約20〜30%を配当することを目指している。ただし取締役会の裁量があり、配当額は保証されない。2025年の配当は約2.0億ドル、自社株買いは約6.7億ドルで、合計の還元額は純利益を上回った。これは毎年続けられる水準ではない。
自社株買いは2023年の1.5億ドル枠、2024年の3.5億ドル枠、2025年の4.5億ドル枠へ拡大した。さらに2025年3月には2030年満期の転換社債を発行し、その調達資金約6.77億ドルを買い戻しに充てる計画を承認した。2026年8月時点では、この追加枠による累計買い戻し額は約2.34億ドルだった。借入資金を使って買い戻した後に株価が大幅に下落したため、資本配分の成果は厳しく評価する必要がある。
2026年6月には業界の流動性危機を受け、会社は買い戻しを停止した。一方、2026年上期の半期配当は承認している。足元では、危機に備える現金と保証余力の確保が還元より優先されるべきだ。長期の大きな買収方針や定量的な利益目標について、確約された数字はない。海外事業の拡大とAIを利用した金融機関向け技術提供を進めているが、大規模な買収による利益上乗せは評価に含めない。
2026年9月には、創業期から経営を率いた呉海生氏が国際事業へ重点を移し、信用リスク管理を担当してきた鄭彦氏がCEOに就任した。信用リスクを知る経営者への交代は危機対応で利点がある。ただし、今後の資本配分が改善するかは実績を待つ必要がある。2026年10月時点で、非公開化や買収の合意、予定された上場廃止は確認できない。
中国の営業子会社とVIEから海外持株会社へ利益を移すには、法令、留保利益、規制準備金などの制約がある。2030年満期の転換社債も残る。会社全体に現金があっても、すべてを自由に自社株買いへ使えるわけではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
奇富科技の競争力は、借り手と金融機関を長年つないできた実績にある。2026年6月末には累計登録利用者が3億人を超え、金融機関168社との接続がある。過去の借入経験者が融資取扱高の約9割を占めるため、信用審査に使える返済履歴も厚い。2026年の資金危機を乗り越えれば、資金調達力の弱い競合が撤退し、銀行にとって安定した提携先の価値が高まる。
市場全体の短期的な収縮は、必ずしも10年の衰退を意味しない。中国の消費者向け融資残高はなお巨大であり、銀行は顧客獲得費用の削減と信用審査の高度化を求め続ける。奇富科技が高信用力の借り手へ移行し、融資単価を規制に適合させながら貸倒を減らせば、融資取扱高の回復が利益率の改善につながる。金融機関向けのQifu DigiTechや海外事業も、国内の信用リスクへの依存を少しずつ下げられる。
2026年の利益急減には税制解釈の変更に伴う一時費用も含まれる。信用リスクの悪化を一時費用と混同すべきではないが、すべての減益が永続するとも限らない。2026年4〜6月期の90日超延滞率は前四半期から低下しており、厳しい審査基準が新規融資の質を改善する可能性がある。
資本面では、2025年末に自己資本34.5億ドルを保有していた。利益が回復しても大型買収を行わず、配当と慎重な買い戻しに資本を回せば、現在の時価総額から見た株主の受取額は大きい。2035年に2025年を上回る利益を再び生み、同業の淘汰でシェアを広げる道は残っている。
慎重な見方
過去の高収益は、規制と信用コストの条件が良かった時期の利益かもしれない。2025年には売上の大部分が信用リスクを負う事業から生じた。保証と連結貸付を含む仕組みでは、融資量を伸ばすほど潜在的な損失も増える。2026年に業界の流動性危機が起きると、銀行の資金供給が萎縮し、融資取扱高と収益が同時に縮んだ。これは単なる広告費削減による一時減益ではない。
値決め力も弱い。借り手が負担する総合的な金利と手数料が規制されれば、奇富科技だけが収益率を引き上げる余地はない。銀行も貸倒の増加を受けてリスクの高い顧客を拒むため、金融機関との接続数が多くても実際の融資は成立しない。アント・グループ、微衆銀行、京東金融などが顧客を直接囲い込み、融資仲介の手数料を奪う可能性もある。
2026年8月の決算説明では、7月から8月にかけて初期延滞の悪化が確認され、会社は審査と融資枠をさらに厳しくした。90日超延滞率の改善だけで、将来の貸倒損失を判断するのは早い。新たな貸倒が数年後に表面化すれば、2025年末の自己資本も現在の利益水準も信用できなくなる。
2025年の大規模自社株買いは、株主資本を不利な時期に使った可能性が高い。2026年には買い戻しが停止され、残る転換社債や保証債務への備えが必要になった。株主還元の実績をそのまま将来へ延ばすことはできない。
最大の問題は、海外上場株主が中国の事業を直接所有していないことだ。2025年売上の96%はVIEから生じており、規制や契約の問題でその利益が持株会社へ届かなければ、利益倍率による価値評価は成り立たない。信用損失、規制、資金移動の制約が重なる場合には、帳簿上の自己資本を大幅に下回る価値しか残らない。
どちらに重みを置いたか
事業の持続性については慎重な見方が強い。2026年の資金供給ショックと融資単価の低下は確認済みであり、過去の高ROEに戻ることを中立の前提にはしない。楽観・やや楽観は合計19%、やや悲観・悲観は合計51%とし、事業の弱さを確率と利益の道筋に反映した。
それでも現在の時価総額が極端に小さく、中立の利益が2025年の約6割にとどまっても、長期に得られる価値は現在価格を大きく上回る。資本コスト9.5%で割り引いた確率加重の現在価値は約20.6億ドルで、現在約6.4億ドルとの差から割安と判断する。ただし、これはVIE契約と上場株主の経済的権利が通常どおり維持される場合の評価であり、法制度による取り分の喪失は悲観の筋書きで重く扱った。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 30.88 ドル38 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 7.07 ドル9 億ドル)。 今の値に割り戻すと 16.95 ドル21 億ドル、今との差 +227.8%、 期待の年率 +26.4%(資本コスト 9.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 123.61 ドル151 億ドル | 22.99 ドル28 億ドル | +2,735.6% | +50.0% | 8.80 ドル11 億ドル |
| やや楽観 | 13% | 73.09 ドル89 億ドル | 15.60 ドル19 億ドル | +1,615.5% | +40.9% | 11.53 ドル14 億ドル |
| 中立 | 30% | 37.82 ドル46 億ドル | 9.85 ドル12 億ドル | +822.2% | +30.7% | 14.30 ドル17 億ドル |
| やや悲観 | 30% | 6.90 ドル8 億ドル | 2.05 ドル3 億ドル | +73.1% | +6.5% | 2.69 ドル3 億ドル |
| 悲観 | 21% | 2.59 ドル3 億ドル | 0.41 ドル1 億ドル | −42.0% | −5.6% | 0.63 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 30.88 ドル38 億ドル | 7.07 ドル9 億ドル | +633.9% | +26.4% | 37.94 ドル46 億ドル |
今の株価時価総額 5.17 ドル6 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 6% 楽観:信用危機を乗り越え、同業淘汰でシェアを拡大 利益 14 億ドル · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 123.61 ドル151 億ドル
2026年の資金供給ショックは2028年までに落ち着く。金融機関は融資仲介の提携先を絞り、信用管理の実績と広い顧客基盤を持つ奇富科技へ取扱高を移す。レキシンやフィンボリューションなどとの競争は続くが、経営基盤の弱い仲介会社が退出し、優良顧客を獲得する余地が生まれる。
中国の対象信用市場が実質で約1.25倍に拡大し、奇富科技は相対シェアを約1.28倍に高める。信用リスク負担型の年間融資取扱元本は420億ドルに増え、プラットフォーム型も280億ドルへ伸びる。規制に適合した融資へ移行しながら、審査精度と回収効率が改善する。信用リスク負担型の利益率は31%、資本軽量型は50%に達する。
海外事業は国内の信用循環を和らげるが、未確認の大型買収や技術事業の急成長には頼らない。AIが営業費用を抑え、銀行への既存サービスの競争力を保つ一方、技術事業の代理数量は2025年並みにとどめる。過去の高ROEが完全には戻らなくても、純利益は14.2億ドルとなる。
期間前半の低収益を乗り越え、10年間の純利益累計は87.5億ドルとなる。配当と正味の自社株買いで28億ドルを還元し、2035年末の自己資本は94億ドルとなる。ROEは約15.1%で、信用リスクを取りながらも資本コストを上回る事業へ回復する。
- 信用リスク負担型の融資仲介・貸付・保証:数量 420(年間の信用リスク負担型融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.10(実質融資元本1ドル当たりの名目収益化係数。融資利息、仲介手数料、保証関連収益、平均融資額の物価変化を含む。)→ 売上 43 億ドル・営業利益 13 億ドル。対象市場の実質拡大と同業淘汰によるシェア上昇が重なり、貸倒費用を抑えながら融資量を拡大する。
- 資本軽量型融資仲介・ICE顧客紹介:数量 280(年間のプラットフォーム経由融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.04(実質融資元本1ドル当たりの名目仲介・紹介手数料収益化係数)→ 売上 10 億ドル・営業利益 5 億ドル。銀行からの信用リスク移転を伴わない仲介が伸び、紹介料の取り分も比較的維持できる。
- 金融機関向け技術・融資後管理等のその他サービス:数量 167(金融機関との接続先数を用いたサービス提供機会の代理数量(社))× 価格 0.01(接続金融機関1社当たりの平均名目収益代理値(億ドル/社)。実際のSaaS契約単価ではない。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。技術事業の収益化は進むが、AIエージェント代替を考慮し、提供機会は2025年と同数にとどめる。
倍率:資本コストk9.5%、長期成長g2.0%、事業ROE14.2÷94.0=15.11%、堀weakの残存割合1/3からRONICは11.37%。正当化PERは(1−2.0%÷11.37%)÷(9.5%−2.0%)×1.02=約11.21倍。信用審査能力と高信用力顧客への移行が成功しても中国の規制と信用循環が残るため、上限の約94.6%に相当する10.6倍を採用する。純利益はGAAPで株式報酬を費用とし、余剰現金を別建てで加算しない。
確率:2026年の業界信用収縮が数年で収束し、資金供給力を持つ大手へ融資仲介が集中する道である。信用力の高い顧客への移行、競合の淘汰、海外事業の成功がそろう必要があり、実現確率は6%とする。
やや楽観 13% やや楽観:融資量が回復し、資本効率も部分的に改善 利益 9 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 73.09 ドル89 億ドル
2026年から2028年にかけて厳しい審査が続くものの、延滞が落ち着くにつれて銀行の資金供給は正常化する。奇富科技は高金利の顧客への依存を減らし、低い金利でも採算が取れる審査と回収の仕組みを整える。信用損失が平準化すれば、取扱高の回復が利益に結びつきやすくなる。
対象市場の実質規模が約1.15倍に増え、同業淘汰によってシェアを約1.13倍へ高める。信用リスク負担型の融資元本は340億ドルへ拡大する。プラットフォーム事業は金融機関との条件交渉で単価の伸びを抑えられるが、資本軽量型の取扱元本は230億ドルへ伸びる。Qifu DigiTechは堅実な規模にとどめ、技術サービスの将来利益を大きく先取りしない。
アント・グループなどは強い競合として残るため、信用リスク負担型の利益率は28%程度で頭打ちになる。それでも2026年の落ち込みからは回復し、全社純利益は8.9億ドルとなる。自己資本を厚く保ちながらROEは約12%まで改善する。
10年間の純利益累計は59億ドル、正味の還元は19億ドルとなる。2035年末の自己資本は74.5億ドルへ増え、信用循環を乗り越えて中堅金融プラットフォームとしての地位を保つ。
- 信用リスク負担型の融資仲介・貸付・保証:数量 340(年間の信用リスク負担型融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.09(実質融資元本1ドル当たりの名目収益化係数。融資利息、仲介手数料、保証関連収益、平均融資額の物価変化を含む。)→ 売上 31 億ドル・営業利益 9 億ドル。実質需要とシェアがともに伸びるが、規制により収益化係数は物価ほど上昇しない。
- 資本軽量型融資仲介・ICE顧客紹介:数量 230(年間のプラットフォーム経由融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.03(実質融資元本1ドル当たりの名目仲介・紹介手数料収益化係数)→ 売上 7 億ドル・営業利益 3 億ドル。銀行との関係を維持し、資本軽量型の融資仲介が再び増加する。
- 金融機関向け技術・融資後管理等のその他サービス:数量 155(金融機関との接続先数を用いたサービス提供機会の代理数量(社))× 価格 0.01(接続金融機関1社当たりの平均名目収益代理値(億ドル/社)。実際のSaaS契約単価ではない。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。AI代替で技術提供機会が約7%減るが、単価の緩やかな上昇で一部を補う。
倍率:k9.5%、g2.0%、事業ROE8.9÷74.5=11.95%、moat weakでRONIC10.32%。正当化PER上限は約10.96倍。銀行への依存と利益率規制が残るため、上限の約91.2%である10.0倍とする。成長は融資市場とシェアから導き、ROEを成長率として使わない。
確率:業界の信用収縮が長期の衰退につながらず、金融機関との関係と高信用力顧客への移行が実る道である。ただし規制下で2025年の利益率を全面的に回復するのは難しく、確率は13%とする。
中立 30% 中立:信用収縮から回復するが、過去の高収益は戻らない 利益 5 億ドル · PER 9.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 37.82 ドル46 億ドル
2026年の信用収縮は数年続く。銀行は融資を慎重に選別し、奇富科技は保証を伴う高リスク融資を絞る。利用者は増えても、実際に融資できる元本はすぐには増えない。2026年7〜9月期に会社が示した大幅減益の見通しは、過去の高利益率からの構造的な転換を示す出発点となる。
対象市場の実質の融資需要は10年で約1.10倍になるが、アント・グループや銀行の内製化によって奇富科技の相対シェアは低下する。信用リスク負担型の融資元本は270億ドルと、2025年をわずかに上回るにとどまる。貸出金利と手数料の上限が効き、収益化係数は物価上昇に追いつかない。資本軽量型も銀行との利益分配率が下がり、取扱元本は165億ドルとなる。
AIエージェント代替にさらされる金融機関向け技術・業務支援は、提供機会を2025年の約84%とする。既存のデータと審査モデルは残るが、銀行は画面操作や定型業務を自動化し、外部システムへの支払いを抑える。技術事業の伸びで金融仲介の落ち込みを補うことはできない。
全社売上は約26億ドル、純利益は4.9億ドルとなる。2025年より利益は小さいが、収益を生み続ける会社として残る。2026年から2035年までの純利益累計は38.1億ドル、正味の還元は12億ドルであり、自己資本は60.6億ドルへ増える。ROEは約8.1%と資本コストを下回り、高成長企業ではなく成熟した信用仲介会社として評価される。
- 信用リスク負担型の融資仲介・貸付・保証:数量 270(年間の信用リスク負担型融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.08(実質融資元本1ドル当たりの名目収益化係数。融資利息、仲介手数料、保証関連収益、平均融資額の物価変化を含む。)→ 売上 21 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場の実質成長をシェア低下が相殺する。名目収益化係数は2025年とほぼ同じで、物価転嫁は限定的。
- 資本軽量型融資仲介・ICE顧客紹介:数量 165(年間のプラットフォーム経由融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.02(実質融資元本1ドル当たりの名目仲介・紹介手数料収益化係数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。銀行の内製化と紹介料の交渉で数量・収益化係数がともに低下する。
- 金融機関向け技術・融資後管理等のその他サービス:数量 140(金融機関との接続先数を用いたサービス提供機会の代理数量(社))× 価格 0.01(接続金融機関1社当たりの平均名目収益代理値(億ドル/社)。実際のSaaS契約単価ではない。)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替を考慮し、代理数量は0.84倍、単価は1.08倍とする。長期の名目成長は0%。
倍率:k9.5%、全社g_long2.0%、ROE4.9÷60.6=8.09%。事業ROEがk以下のため、再投資された利益は資本コストを上回る価値を生まず、PERの上限は1÷9.5%=10.53倍となる。弱い堀、信用循環、規制上の値上げ制限を考慮し、上限の約89.3%に相当するPER9.4倍を採用する。GAAP利益4.9億ドルを基礎とし、非GAAP利益の株式報酬を足し戻さない。純現金8.7億ドルは金融業務に拘束される部分が大きいため別途加算しない。
確率:2026年の業界収縮、規制による単価圧力、銀行の内製化が続く一方、既存の利用者基盤と金融機関との接続は残る。2025年の高収益への全面回復を前提とせず、低成長の金融仲介会社へ移る道を30%とする。
やや悲観 30% やや悲観:融資規模が縮み、信用コストが高止まり 利益 1 億ドル · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.90 ドル8 億ドル
2026年の業界混乱は一過性では終わらない。複数のオンライン融資会社の信用問題が銀行の審査を厳しくし、奇富科技の資金供給元も取扱高を抑える。既存借り手の一部は複数の金融サービスから借りており、返済能力の低下が貸倒と保証履行を増やす。2027年には引当や保証費用による損失を計上し、その後も収益性は十分に回復しない。
信用リスク負担型の融資元本は180億ドルへ縮小し、価格も規制と銀行側の利益配分変更で下がる。資本軽量型はアント・グループなどの顧客基盤を持つ競合へ案件を奪われ、取扱元本は110億ドルまで減少する。Qifu DigiTechは銀行によるAIシステムの内製化が進み、提供機会は約63%に低下する。
融資を絞れば信用損失を抑えられるが、同時に手数料収入も減る。固定的な技術費用と規制対応費用が残るため、全社営業利益は1.6億ドルまで縮小する。信用リスク負担型の営業利益率は15.5%となり、過去の高収益企業という姿は失われる。
10年間の純利益累計は約6.55億ドルにとどまる。2027年の赤字を挟み、2035年の純利益は1.05億ドル、自己資本は38.55億ドル、ROEは約2.7%となる。正味の還元は2.5億ドルに縮み、株主に戻る現金も大幅に減る。経営は新規買収より保証債務への備えを優先する。
- 信用リスク負担型の融資仲介・貸付・保証:数量 180(年間の信用リスク負担型融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.06(実質融資元本1ドル当たりの名目収益化係数。融資利息、仲介手数料、保証関連収益、平均融資額の物価変化を含む。)→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。信用リスクを負う融資を大幅に削減し、利息・保証関連収益も圧縮される。
- 資本軽量型融資仲介・ICE顧客紹介:数量 110(年間のプラットフォーム経由融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.02(実質融資元本1ドル当たりの名目仲介・紹介手数料収益化係数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。金融機関が自社チャネルへ融資を戻し、仲介単価と取扱元本が低下する。
- 金融機関向け技術・融資後管理等のその他サービス:数量 105(金融機関との接続先数を用いたサービス提供機会の代理数量(社))× 価格 0.01(接続金融機関1社当たりの平均名目収益代理値(億ドル/社)。実際のSaaS契約単価ではない。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。銀行の自動化とAI代替で提供機会が減り、残る案件も利益率が低下する。
倍率:2035年のROE1.05÷38.55=2.72%はk9.5%を大きく下回る。利益ベースのPER上限は1÷k=10.53倍だが、再投資の収益性が低く、保証と規制対応に資本を拘束されるため8.0倍まで下げる。中立PER9.4倍より低く、現在の帳簿自己資本を価値の床として機械的に採用しない。
確率:2026年の初期延滞悪化と資金供給の萎縮が数年間続き、融資単価の規制と銀行の内製化が重なる。業界ショックが既に発生しているため、部分回復にとどまる道を30%と厚くする。
悲観 21% 悲観:信用仲介の競争力を失い、資本が大きく毀損 利益 0 億ドル · PER 7.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.59 ドル3 億ドル
2026年の資金不足は中国の信用仲介市場の再編につながる。返済能力の低い借り手に集中していた仲介会社は保証債務を履行できず、銀行が新規融資を停止する。奇富科技も保証と連結貸付に大きな損失を計上し、2027年から2032年にかけて累積赤字が続く。売却可能な債権は割引を伴い、帳簿上の自己資本は現金として残らない。
大手銀行は信用審査を内製化し、アント・グループや微衆銀行などの巨大プラットフォームが優良顧客を囲い込む。奇富科技は金融機関への紹介料を維持できず、信用リスク負担型の融資取扱元本は95億ドルへ落ちる。プラットフォーム型も65億ドルまで縮み、技術・事後支援の提供機会も大幅に減少する。
中国国内の規制とVIE契約の実効性にも問題が生じ、海外持株会社へ利益を移すことが難しくなる。大規模な買収による救済は期待せず、事業縮小と債権処分を優先する。会社は完全な破綻には至らず一部の融資仲介を続けるが、競争力のあるプラットフォームという地位を失う。
2026年から2035年までの純利益累計はマイナス17.05億ドルとなる。正味の株主還元は0.5億ドルにとどまり、自己資本は16.95億ドルへ減る。最終年の純利益は0.45億ドル、ROEは約2.7%にすぎない。残存事業の稼ぐ力と、担保・保証負担を差し引いた回収可能資産から、株主に残る価値を慎重に測る。
- 信用リスク負担型の融資仲介・貸付・保証:数量 95.0(年間の信用リスク負担型融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.04(実質融資元本1ドル当たりの名目収益化係数。融資利息、仲介手数料、保証関連収益、平均融資額の物価変化を含む。)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。優良顧客と金融機関を失い、縮小した貸付事業を維持するだけとなる。
- 資本軽量型融資仲介・ICE顧客紹介:数量 65.0(年間のプラットフォーム経由融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル))× 価格 0.01(実質融資元本1ドル当たりの名目仲介・紹介手数料収益化係数)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。銀行の内製化と競合への利用者流出で、紹介料事業の大半が失われる。
- 金融機関向け技術・融資後管理等のその他サービス:数量 65.0(金融機関との接続先数を用いたサービス提供機会の代理数量(社))× 価格 0.01(接続金融機関1社当たりの平均名目収益代理値(億ドル/社)。実際のSaaS契約単価ではない。)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェントと銀行内製システムへ置き換わり、従来の技術・事後支援が縮む。
倍率:最終年ROE0.45÷16.95=2.65%はk9.5%より低い。利益ベースの上限は10.53倍だが、資本を維持しても超過収益を生まない事業であり、信用損失と持株会社への利益移転制約を考慮して7.0倍とする。0.45億ドル×7.0倍=3.15億ドル。売れる資産の保守的な回収価値3.0億ドルを上回り、時価総額を0にはしない。
確率:大規模な貸倒と保証履行、金融機関の撤退、規制による収益圧縮、VIEを通じた株主利益の回収制約が複数重なる道である。2026年の危機が予兆である可能性を無視できず、構造的な負けを21%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
信用リスク負担型の融資仲介・貸付・保証
銀行や連結信託を通じた融資の組成、貸付利息、信用保証から収益を得る。銀行が貸し手でも保証によって信用リスクを負うため、貸倒引当と保証履行が利益を左右する。
| 数量年間の信用リスク負担型融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル) | 価格実質融資元本1ドル当たりの名目収益化係数。融資利息、仲介手数料、保証関連収益、平均融資額の物価変化を含む。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 261 | 0.07 | 19 | 6 |
| 10 年後 中立 | 270 | 0.08 | 21 | 5 |
取り方:2025年20-Fの信用リスク負担型融資取扱高1826.94億元を、同年の報告換算約7元/ドルで約261億ドルとする。会社公表の同事業収益は19.99億ドルだが、factsの全社売上26.7億ドルを正とするため、20-Fの全社27.46億ドルとの差を各収益項目へ共通の係数約0.972で調整し19.44億ドルとした。収益化係数7.448%は、貸付利息が既存残高から生じ、保証収益には計上時期のずれがあるため、契約上の貸出金利ではない。営業利益5.73億ドルは全社9.0億ドルから費用を配賦した推計で、会社が公表した独立セグメント利益ではない。市場の参考値は2025年11月末の住宅ローン除外消費者ローン残高21.2兆元であり、完全な比較対象ではない。2025年の貸付残高1260億元との比率は約0.6%。
資本軽量型融資仲介・ICE顧客紹介
信用リスクを原則として銀行側が負う資本軽量型融資仲介と、ICEによる顧客紹介を行う。融資成立時のサービス料、利益分配、紹介料が収益源となる。
| 数量年間のプラットフォーム経由融資取扱元本(2025年の購買力で表した億ドル) | 価格実質融資元本1ドル当たりの名目仲介・紹介手数料収益化係数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 206 | 0.03 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 165 | 0.02 | 4 | 1 |
取り方:2025年20-Fのプラットフォーム融資取扱高1443.75億元を約206.3億ドルに換算。資本軽量型の仲介・管理手数料1.662億ドルとICE等の紹介収入3.916億ドルを合算し、factsの全社売上と整合するよう約0.972倍して5.43億ドルとした。資本軽量型とICEの融資元本の個別内訳は開示が十分でないため、両者の合計元本を数量とし、収益を割った2.632%を加重収益化係数とする。2025年のプラットフォーム融資取扱高は全社の44.1%。2026年4〜6月期には約50%まで上昇した。営業利益2.70億ドルは信用損失負担の小ささを考慮した費用配賦推計であり、実際の個別利益開示ではない。
金融機関向け技術・融資後管理等のその他サービス
金融機関向けQifu DigiTechの審査・顧客管理システム、融資後の支援、その他の付加価値サービスを扱う。SaaSや導入支援を含むが、個別売上が非開示のため、プラットフォームのその他サービスを保守的な代理範囲とする。
| 数量金融機関との接続先数を用いたサービス提供機会の代理数量(社) | 価格接続金融機関1社当たりの平均名目収益代理値(億ドル/社)。実際のSaaS契約単価ではない。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 167 | 0.01 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 140 | 0.01 | 2 | 0 |
取り方:2025年20-Fのプラットフォームその他サービス収入1.897億ドルをfactsとの整合係数約0.972で調整し1.84億ドルとした。2025年末の接続金融機関167社で割り、約0.01102億ドル/社を代理単価とする。実際には全金融機関が同じサービスを購入しているわけではなく、融資後支援などの非SaaS収入も含む。したがってこの1.84億ドルはAI代替対象となり得る技術サービスの上限的な代理範囲であり、真のSaaS売上とは断定しない。独立した顧客解約率、価格改定実績、技術サービス売上は開示不足であり、記録の正本型の堀と認定しない。AIエージェント代替の席課金・操作画面型に準じ、中立の10年数量を0.84倍、価格を1.08倍とする。営業利益は費用配賦による推計。
リスクと懸念
信用循環と保証債務
融資仲介でありながら、会社は信用リスクを直接または保証を通じて負っている。借り手の延滞が増えると、連結貸付への引当と保証履行が同時に利益を削る。2026年には業界の流動性危機を受けて金融機関が融資を絞った。延滞率の改善が見えていても、新規融資の初期延滞が再び悪化すれば数四半期遅れて損失が増える。
融資単価と総合費用への規制
中国当局はインターネット融資の提携管理や借り手の総合的な費用表示を厳格化している。銀行側も提携チャネルの融資金利上限を明示するようになった。仲介会社は融資金利と手数料を自由に引き上げられず、資金調達費用と信用コストが増えても価格へ転嫁しにくい。2026年の平均融資金利低下は、この制約が既に収益へ及んでいることを示す。
VIE構造と海外株主の権利
奇富科技はケイマン諸島の持株会社であり、中国の主要事業を直接所有していない。2025年売上の96%はVIEに依存した。契約の実効性や中国の資金移動規制が変われば、連結財務諸表上の利益が海外持株会社へ移転できない可能性がある。香港と米国の重複上場は取引場所の分散になるが、VIEの法的な持分を株主に与えるものではない。
資金繰りと現金の拘束
2025年末の純現金8.7億ドルは、株主へ自由に配れる現金を意味しない。制限付き現金、連結信託の投資家への債務、保証債務、融資を支える運転資本がある。信用危機では資金提供者が追加担保や準備金を求める可能性もある。現金を帳簿額で全額株主価値へ上乗せすると、財務安全性と本質価値の双方を過大評価する。
巨大プラットフォームと銀行の内製化
アント・グループ、京東金融、微衆銀行などは利用者の生活や決済に直接つながっており、顧客獲得に強い。銀行も外部の審査技術を購入し、自社の貸付システムへ組み込める。奇富科技の金融機関との接続網は価値があるものの、顧客や銀行が乗り換えられない仕組みではない。融資元本のシェアを失うと、仲介料と信用審査データの更新機会を同時に失う。
AI エージェント代替
融資そのものはAIエージェントが消滅させる仕事ではないが、借り手の比較・申請操作、銀行の定型審査、貸付後の事務処理、金融機関向け操作画面や一部のSaaSは代替されうる。2025年には独立した技術サービス売上が開示されず、解約率の低さや規制改正時の値上げ実績も確認できない。このため技術・その他サービスの中立数量を約0.84倍、単価を約1.08倍とし、10年後以降の名目成長を0%としている。AIによる効率改善と販売単価の下落を区別する必要がある。
資本配分と経営体制
2025年には転換社債による調達を伴う大規模な自社株買いを行ったが、2026年には株価が急落して買い戻しを停止した。利益の変動が大きい金融会社では、好況時の買い戻しが信用危機への備えを弱める。2026年9月には信用リスク管理の経験が豊富な鄭彦氏がCEOに就任した。今後の資本配分が改善するかは、追加借入を伴う買い戻しを再開しないか、保証余力を十分に保てるかで判断する。
今後の分かれ目
- 90日超延滞率だけでなく、新規融資の初期延滞と保証履行が2〜3四半期続けて改善したら
- 信用損失の山を越えた可能性が高まる。信用リスク負担型の利益率を引き上げ、やや楽観の確率を増やす。ただし融資単価の回復が伴わなければ、2025年の利益率までは戻さない。
- 四半期の融資取扱高が前年同期比で再び増加し、資本軽量型の比率も上昇したら
- 金融機関の資金供給が正常化しつつあると判断する。融資量の回復が保証リスクの増加だけで作られていないか確認し、条件がそろえば中立からやや楽観へ比重を移す。
- 借り手の平均融資金利が低下し続け、融資1単位当たりの手数料と保証収益も下落したら
- 値決め力がさらに失われている。数量が増えても利益が戻らないため、中立の収益化係数を下げ、やや悲観と悲観の比重を高める。
- 金融機関向け技術事業が独立した売上、継続率、契約単価を公表し、複数年の解約困難性を示したら
- AI代替の影響を再評価する。独自データと業務の記録の正本としての機能を2種類以上の証拠で確認できた部分だけ、数量減少と長期成長率の前提を引き上げる。
- 自社株買いを再開する際に借入依存が増え、保証準備金や自由に使える現金が減ったら
- 資本配分の規律が弱いと判断する。買い戻しをそのまま株主への価値創造と見なさず、正味の還元と自己資本の減少、信用危機時の追加資本需要を点検する。
- 中国のVIE規制や海外送金の制約が強まり、海外持株会社への資金移転が妨げられたら
- 連結利益と海外株主の受け取れる価値を切り離して再評価する。現金の戻り方をさらに厳しくし、悲観の確率を大きく引き上げる。
- 2026年以降のCEO交代後に、信用リスクの高い融資を減らしつつ安定した配当を維持できたら
- 経営の規律と融資審査の質が改善した証拠になる。数年の実績を確認した上で、中立の利益水準と還元可能額を上方修正する。
見ておくもの
- 四半期の融資取扱高、信用リスク負担型と資本軽量型の構成比
- 30日超・90日超延滞率、初期延滞率、保証履行と貸倒引当費用
- 平均融資金利、融資元本当たりの仲介・紹介・保証収益
- 接続金融機関数、主要金融機関への依存、融資資金の供給条件
- 制限付き現金、自由に使える現金、信託投資家への債務、転換社債残高
- 配当方針、自社株買いの再開条件、正味の株主還元額
- Qifu DigiTechの独立した売上、契約継続率、AI技術の実際の販売収益
- 中国の融資費用規制、VIE契約、海外への利益送金条件
- 新CEOの信用リスク管理方針と海外事業への投資収益
倍率と資本コストの決め方
2025年の売上と純利益は添付factsを基準とし、一次資料の事業別融資元本と収益を用いて、信用リスク負担型、資本軽量型・紹介、その他サービスに分けた。2026年の急減益を起点として数量と収益化係数を見直し、2035年の利益を導いた。現在の株価や過去・同業のPERを倍率の根拠にしていない。資本コストは基本8.0%とquality1.5%から9.5%。長期成長率は融資需要、シェア、価格から2.0%とし、moat weakを用いてRONICを算出した。ROEが資本コスト以下の中立ではPER上限10.53倍に対し9.4倍、楽観は上限11.21倍に対し10.6倍とする。純現金8.7億ドルを別建てで加算しないのは、制限付き現金、信託債務、保証準備金が融資事業に必要だからである。自己資本は2025年末34.5億ドルから純利益累計と正味の還元を繰り越した。現在価値20.64億ドルと基準時価総額6.405億ドルとの差はプラス約222%で、判定は割安となる。香港普通株2株に対し米国ADS1単位という比率も確認済みで、会社全体の価値に株数による希薄化を二重に掛けていない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の基本8.0%に、信用循環プラス1.0%と値決め力の弱さプラス0.5%を加え、資本コストを9.5%とする。β、現在の市場PER、中国ADRの市場評価を参照しない。比較対象のCACCやSYFの9.2%、OMFの9.5%に近いが、QFIN固有の制度・VIE危険は悲観の確率を厚くして表現する。