結論
ギャラクシー・デジタルは、機関投資家向けの暗号資産金融と、テキサスのAIデータセンターを同じ会社で営む異色の金融会社である。筆者の結論は割高だ。確率を掛けた会社全体換算の現在価値は約41億ドルで、2026年10月28日の検索時価総額約71億ドルをおよそ4割下回る。長期契約の賃料は価値を支えるが、暗号資産の評価益と一社の信用に頼る部分がまだ大きい。
2026年7〜9月期の純利益は3.23億ドルだった。しかし、継続的な稼ぎを表す数字ではない。デジタル資産部門の純損失は0.25億ドルで、データセンターも利息と減価償却後ではほぼ収支均衡だった。
利益の大半は保有資産の値上がりである。一方、Heliosは133MWの稼働で四半期0.69億ドルの調整後EBITDA(利払い・税・減価償却前利益)を出し、設備が賃料へ変わることを初めて示した。
10年の価値を決めるのは、コアウィーブ向け526MWを確実に渡し、承認済みの追加830MWへ別の借り手を入れられるかである。暗号資産側には1,763の取引先と104億ドルの運用・ステーク残高があるが、手数料は競争で下がりやすい。賃料の伸びが借金と希薄化を上回れば上振れる。
契約の再交渉、工事遅延、暗号資産の下落が重なれば、売れる資産の床まで縮む。今は成功を相当に先取りしており、長く持つ株主が求める安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、暗号資産の値上がりをオーナー利益とは呼ばない。持ち続けたい利益は、長期契約の賃料から維持費と利息を引いた現金、取引先が繰り返し払う手数料、運用・ステーキングの報酬である。2026年7〜9月期は、この三つだけでは会社全体の純利益をまだ十分に支えていない。
理解しやすい部分はHeliosの526MWである。契約期間、容量、賃料の目安があり、133MWの実績も出た。理解しにくい部分は、暗号資産価格、顧客の取引量、未契約5.7GW、コアウィーブの将来の信用である。後者に高い値を払うほど、安全域は薄くなる。
経営は採掘設備をAIインフラへ変え、価値を大きく作る可能性を示した。しかし、成功した第1期を根拠に同じ速度で土地と債務を増やすと、借り手が一社である弱さが増幅される。長く持つ条件は、賃料で借金を減らし、暗号資産部門を評価益なしでも黒字にし、交換可能証券と株式報酬を差し引いても持分が増えることだ。今の値段はその三条件の達成をかなり織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは四つに分かれる。グローバル・マーケッツは、機関投資家に店頭取引、デリバティブ、融資、仕組み商品、投資銀行サービスを提供する。2026年7〜9月期の取引先は1,763、平均貸出残高は18億ドル、調整後粗利益は0.53億ドルだった。取引量そのものは開示されないため、数量は取引先数、価格は一社当たりの年間粗利益で捉える。
資産運用・インフラソリューションは、ETF、私募戦略、ステーキング、トークン化、カストディ技術を売る。運用資産とステーク資産の合計は104億ドルで、同じ資産の重複12億ドルを含む。バンク・オブ・ニューヨーク・メロンとの提携は、ギャラクシーの検証基盤を大手金融機関の業務へ組み込む試みである。数量は残高、価格は残高に対する報酬率で見る。
データセンターはHeliosなどの電力・土地・建物を長期賃貸する。133MWが稼働し、コアウィーブとは合計526MW、15年契約と二回の5年延長権がある。会社は平均年12億ドル超の売上を見込む。承認済み容量は1.63GW、総計画は5.7GW超だが、未契約・未接続の容量を売上には数えない。
トレジャリー・本社は、暗号資産、上場株、ファンド持分など17億ドルの純投資を持つ。四半期の評価益を恒常利益にしないため、数量を純投資額、価格を平準化した年率収益とする。会計上の暗号資産売買高は大きく見えるが、経済的な売上は調整後粗利益と賃料で測る方が実態に近い。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは二つある。第一はHeliosの電力接続と土地である。大型の負荷を短期間で系統へつなぐ権利は不足しており、133MWを予定どおり渡した実績は、次の借り手を呼ぶ信用になる。
第二は暗号資産の機関向け関係である。1,700超の取引先に、売買、融資、助言、運用、ステーキングを一つの窓口で出せる会社は多くない。
ただし、堀はまだ弱い。暗号資産の流動性と保管はコインベース、ファルコンX、カンバーランド、アンカレッジ、ファイアブロックスなどと競合し、手数料は顧客が比較できる。データセンターも契約相手はコアウィーブ一社で、借り手を替えるには設備仕様と資金の組み直しが要る。創業者の議決権、上場会社とパートナーシップが重なるUp-C構造、交換可能なパートナーシップ持分(LPユニット)、税金受取契約は少数株主の取り分を複雑にする。
増分の資本効率は二極である。Helios第1期は約17億ドルの建設費に対し、稼働後の調整後EBITDAが年換算約2.8億ドルとなり、初期利回りは資本コストを上回る。ただし第2期の資金は高利の担保付債務で、賃料と金利の差は広くない。暗号資産部門は最新四半期も調整後EBITDAが赤字で、規模が利益へ変わる証拠はまだ弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
暗号資産の機関市場は拡大しているが、価格と取引量の循環が激しい。2026年7〜9月期の暗号資産全体の時価総額は約3兆ドル、中央集権取引所の現物売買高は約1.65兆ドルだった。ギャラクシーは取引総額を出していないため、正確なシェアは分からない。1,763の取引先と18億ドルの平均貸出残高を規模の代理にする。
運用・ステーク残高104億ドルは世界の暗号資産価値の約0.35%だが、12億ドルの重複があり、市場全体と管理残高は定義も違うため、あくまで粗いシェアの目安である。競争相手はコインベース・インスティテューショナル、ファルコンX、カンバーランド、クラーケン、アンカレッジで、運用ではブラックロックやフィデリティも顧客資金を奪う。規制が明確になれば市場は広がるが、標準化は手数料を下げる。
データセンターは需要より電力と接続が制約になっている。マッキンゼーは世界の必要容量を2025年の82GWから2030年に219GWと見込む。ギャラクシーの稼働133MWは足元需要の約0.16%、契約済み526MWは2030年需要の約0.24%にすぎない。承認済み1.63GWが全部動けば存在感は上がるが、5.7GWの計画は接続、資金、借り手がそろう前の数字である。
競争相手はデジタル・リアルティ、QTS、エクイニクスに加え、アプライド・デジタル、IREN、テラウルフ、コア・サイエンティフィックなど、電力資産をAI用途へ転換する会社である。ギャラクシーの優位は早く確保した電力と長期契約、弱点は運営歴の短さと顧客集中だ。金融の資産運用会社と比べると継続報酬が薄く、暗号資産保有会社と比べると物理資産と借金が重い。この混合は上振れを作る一方、10年の予測可能性を下げる。
資本政策と M&A
資本配分で最も良かった判断は、2022年末にアーゴ・ブロックチェーンからHeliosを0.65億ドルで取得し、採掘拠点をAI向けへ転換したことだ。133MWを予定どおり渡し、稼働初四半期から高い現金利益を出した。反面、次の成長は借金に依存する。第1期には14億ドルの変動金利融資、第2期には35.07億ドル、利率9.875%の担保付債を使い、2026年7〜9月期の利息等は0.93億ドルに達した。
会社は2025年に3.25億ドルの株式資金と13億ドルの交換可能債を調達した。2026年は980万株を買い戻し、2億ドルの枠を使い切った後、さらに2億ドルを承認した。配当の数字の約束はない。
買い戻した株数は株式報酬による増加を上回ったが、交換可能債、市場で随時新株を売る最大5億ドルのATM増資、建設資金を合わせると、正味の還元は見かけほど大きくない。今後の評価は、未契約の土地を増やすより、借り手を分散し、完成した設備から債務を返す規律にかかる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Heliosは構想ではなく、すでに現金を生む設備になった。133MWの初めての通期四半期で調整後粗利益0.79億ドル、調整後EBITDA0.69億ドルを出した。単純な年換算でも約2.8億ドルで、約17億ドルの第1期建設費に対する初期利回りは高い。
コアウィーブ向け526MWが全部稼働すれば、会社が示す平均年12億ドル超の賃料が現実になる。15年契約と延長権は、暗号資産の市況とは違う長い利益を作る。
追加の830MWはすでに系統承認を得ており、Helios全体は1.63GWまで伸ばせる。電力接続が希少な市場では、完成実績を持つ事業者に借り手と資金が集まる。Merlin、Caspian、Seleneを含む5.7GWの計画から2GW程度が2036年までに稼働し、コアウィーブ以外の大手顧客が入れば、データセンターだけで営業利益40億ドル台が見える。
暗号資産側も捨てたものではない。取引先は1,763に増え、市場全体の現物取引が減った四半期にギャラクシーの取引量は12%増えた。運用・ステーク残高は104億ドルまで回復し、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンとの提携は金融機関の裏側へ組み込まれる入口になる。
取引、融資、運用、ステーキング、トークン化を一社で出せる総合力が定着すれば、固定費を吸収して利益率は上がる。賃料が安定部分を担い、暗号資産が上振れを担う会社へ変わる余地は大きい。
慎重な見方
直近の黒字は質が低い。2026年7〜9月期の純利益3.23億ドルに対し、トレジャリー・本社の純利益は3.48億ドルだった。デジタル資産部門は0.25億ドルの純損失で、データセンターも利息と減価償却後ではほぼゼロである。暗号資産と上場投資の値上がりが止まれば、見かけの利益は消える。
コアウィーブへの集中は最大の弱点だ。ギャラクシーの契約済み526MWは一社向けであり、その相手は成長のため巨額の設備投資と借金を続けている。2026年4〜6月期には純損失6.26億ドル、利息6.40億ドル、半年の設備投資141億ドルを計上した。契約が長くても、借り手の信用が悪化すれば賃料の減額、工期の延期、担保価値の低下が同時に起こる。
ギャラクシー側にも余裕は大きくない。第2期の担保付債は利率9.875%で、工事中は収入より利息が先に出る。未契約の830MWと新しい三拠点には、さらに資金と系統接続が要る。
暗号資産金融では手数料が下がり、規制、サイバー事故、取引先破綻が利益を削る。創業者支配、交換可能LPユニット、交換可能債、ATM増資は、会社の成長と今の株主の取り分を同じものにしない。計画容量を価値として先に払うと、失敗時は売れるデジタル資産と設備の残価まで下がる。
どちらに重みを置いたか
契約済みの526MWと第1期の完成実績は強い材料であり、会社が単なる暗号資産保有会社ではなくなった点は認める。だが、最新の純利益は評価益頼みで、データセンターは一社集中と高利債務を抱える。上側29%に対し、やや悲観と悲観を40%へ寄せた。
2026年10月28日の会社全体時価総額約71億ドルに対し、確率加重した会社全体換算の現在価値は約41億ドルとなる。結論は、事業の変化は本物だが、値段は成功を大きく先取りしており割高、である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 25.59 ドル49 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 1.98 ドル4 億ドル)。 今の値に割り戻すと 10.63 ドル21 億ドル、今との差 −33.6%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 10.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 80.88 ドル156 億ドル | 6.42 ドル12 億ドル | +445.6% | +19.7% | 7.86 ドル15 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 45.29 ドル87 億ドル | 5.14 ドル10 億ドル | +215.2% | +13.1% | 10.09 ドル19 億ドル |
| 中立 | 31% | 24.26 ドル47 億ドル | 3.85 ドル7 億ドル | +75.7% | +6.3% | 8.72 ドル17 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 4.62 ドル9 億ドル | −2.05 ドル−4 億ドル | −84.0% | −13.8% | 0.64 ドル1 億ドル |
| 悲観 | 15% | 3.85 ドル7 億ドル | −2.05 ドル−4 億ドル | −88.8% | −15.5% | 0.27 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 25.59 ドル49 億ドル | 1.98 ドル4 億ドル | +72.3% | +5.8% | 27.57 ドル53 億ドル |
今の株価時価総額 16.00 ドル31 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:2.2GWが稼働し、暗号資産の総合基盤も黒字化 利益 30 億ドル · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 80.88 ドル156 億ドル
2035年末までに2.2GWが稼働する。コアウィーブ向け526MWを予定どおり渡し、Helios IIと新拠点には投資適格級の複数顧客が入る。1MW当たりの収益は契約の物価連動と高密度化で今より約1.39倍になり、データセンターの売上は72.6億ドル、営業利益は43.6億ドルへ伸びる。
暗号資産では取引先が6,000へ増え、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン型の提携がステーキングとトークン化の標準接続になる。運用・ステーク残高は650億ドルとなり、固定費を吸収する。自己投資は平準化して数え、値上がり益を成長の中心にしない。
期間の純利益累計は140億ドル、正味の還元は25億ドルで、自己資本は145億ドルとなる。交換可能債と株式報酬の希薄化を買い戻しで上回り、堀は弱いままでも規模の利益が残る。
- グローバル・マーケッツ:数量 6,000(機関取引先数)× 価格 0.00(取引先1社当たりの年間調整後粗利益(億ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 4 億ドル。機関取引が定着し、一社当たり収益も上がる
- 資産運用・インフラソリューション:数量 650(運用資産とステーク資産の合計(億ドル、重複を含む開示値))× 価格 0.01(残高に対する年間調整後粗利益率)→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル。金融機関の基盤に入り、残高が年20%弱で伸びる
- データセンター:数量 2,200(顧客へ引き渡して稼働するIT機器向け実効容量(MW))× 価格 0.03(1MW当たりの年間賃料相当の調整後粗利益(億ドル))→ 売上 73 億ドル・営業利益 44 億ドル。複数顧客で2.2GW、契約の物価連動が効く
- トレジャリー・本社:数量 50.0(純デジタル資産・投資残高(億ドル))× 価格 0.12(残高に対する平準化した年間収益率)→ 売上 6 億ドル・営業利益 5 億ドル。自己投資を抑え、平準化収益で測る
倍率:k 10.5%、事業ROE 20.7%、moat=weakで超過収益の残る割合を1/3、10年後以降の名目gを4.0%とすると、RONICは13.9%、10年目利益に対する正当化PERは約11.4倍。暗号資産の循環と顧客集中を残して10.5倍とした。
確率:Heliosの追加830MWと新拠点の一部に複数の優良顧客が入り、デジタル資産も規制された金融基盤として定着するには、接続・資金・信用の三条件が必要である。全部がそろう確率は1割弱とした。
やや楽観 20% やや楽観:1.5GWが稼働し、賃料が利益の中心になる 利益 18 億ドル · PER 9.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 45.29 ドル87 億ドル
契約済み526MWは完成し、Heliosの追加容量と新拠点の一部を合わせて1.5GWが稼働する。借り手は二〜三社へ分散し、1MW当たり収益は今より約1.33倍となる。データセンターの売上は47.3億ドル、営業利益は27.4億ドルで、会社の利益の中心になる。
取引先は4,500、運用・ステーク残高は450億ドルへ増える。暗号資産の粗利益は伸びるが、競争で報酬率は今より下がる。利息と本社費を引いた純利益は18億ドル、期間累計は95億ドル。
買い戻しから株式報酬と交換可能証券の増加を引いた正味の還元は20億ドルで、自己資本は105億ドルとなる。賃料で債務を返しながら成長できるが、コアウィーブ依存はなお残る。
- グローバル・マーケッツ:数量 4,500(機関取引先数)× 価格 0.00(取引先1社当たりの年間調整後粗利益(億ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 2 億ドル。取引先は増えるが手数料競争は続く
- 資産運用・インフラソリューション:数量 450(運用資産とステーク資産の合計(億ドル、重複を含む開示値))× 価格 0.01(残高に対する年間調整後粗利益率)→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。残高成長が報酬率低下を上回る
- データセンター:数量 1,500(顧客へ引き渡して稼働するIT機器向け実効容量(MW))× 価格 0.03(1MW当たりの年間賃料相当の調整後粗利益(億ドル))→ 売上 47 億ドル・営業利益 27 億ドル。Heliosと新拠点で1.5GW、顧客を分散
- トレジャリー・本社:数量 35.0(純デジタル資産・投資残高(億ドル))× 価格 0.10(残高に対する平準化した年間収益率)→ 売上 4 億ドル・営業利益 3 億ドル。評価益を平準化して数える
倍率:k 10.5%、事業ROE 17.1%、moat=weak、g 4.0%でRONICは12.7%、正当化PERは約11.0倍。長期賃料の比率は高まるが、借り手集中と暗号資産の価格競争が残るため9.8倍とした。
確率:契約済み526MWの完成は見えやすく、追加830MWの半分強に借り手が付く展開は十分ありうる。ただし新拠点まで同時に進むには資本と電力機器が要るため、2割とした。
中立 31% 中立:1.05GWが稼働し、暗号資産は低い利益率で残る 利益 11 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24.26 ドル47 億ドル
2035年末の稼働容量は1.05GWとなる。コアウィーブ向け526MWは完成するが、追加830MWの約半分と新拠点のごく一部だけが動く。1MW当たり収益は物価と高密度化で今より約1.26倍となるが、契約条件と顧客獲得費で業界の値上がりを全部は取れない。データセンターの売上は31.5億ドル、営業利益は17.3億ドルとなる。
暗号資産の取引先は3,500、運用・ステーク残高は320億ドルへ増える。報酬率は下がり、グローバル・マーケッツと資産運用・インフラソリューションの営業利益は合計1.66億ドルにとどまる。高い利払いと本社費を引いた純利益は10.5億ドル、期間累計は65億ドル。
正味の還元15億ドルを差し引き、自己資本は80億ドルとなる。賃料は会社を支えるが、暗号資産と新規開発へ高い価値は付けない。
- グローバル・マーケッツ:数量 3,500(機関取引先数)× 価格 0.00(取引先1社当たりの年間調整後粗利益(億ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。取引先は約2倍、単価は競争で伸びにくい
- 資産運用・インフラソリューション:数量 320(運用資産とステーク資産の合計(億ドル、重複を含む開示値))× 価格 0.01(残高に対する年間調整後粗利益率)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。残高は増えるが報酬率は低下
- データセンター:数量 1,050(顧客へ引き渡して稼働するIT機器向け実効容量(MW))× 価格 0.03(1MW当たりの年間賃料相当の調整後粗利益(億ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 17 億ドル。契約済み容量と追加の一部が稼働
- トレジャリー・本社:数量 25.0(純デジタル資産・投資残高(億ドル))× 価格 0.07(残高に対する平準化した年間収益率)→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。評価益は年7%へ平準化
倍率:k 10.5%、事業ROE 13.1%、moat=weak、g 4.0%でRONICは11.4%、正当化PERは約10.4倍。賃料は長期だが、利払い、顧客集中、暗号資産の循環を踏まえて9.0倍とした。ROEがkを上回るため1÷kの稼ぐ力の床に近い。
確率:契約済み526MWは完成するが、未契約容量の借り手獲得と新拠点の接続は計画より遅れる。暗号資産の機関採用は進む一方、手数料低下で利益率は限定される展開を最も起こりやすいとした。
やや悲観 25% やや悲観:追加容量が遅れ、コアウィーブ契約の採算も下がる 利益 3 億ドル · PER 6.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.62 ドル9 億ドル
コアウィーブ向けは大半を完成するが、資金繰り悪化を受けて一部の賃料が再交渉される。追加の借り手は少なく、稼働容量は650MWにとどまる。データセンターの売上は17.6億ドル、営業利益は8.8億ドルとなるが、高利債務と維持費が利益を吸収する。
取引先は2,500、運用・ステーク残高は200億ドルで、暗号資産部門は小幅黒字にとどまる。10年目の純利益は3億ドル、期間累計は15億ドルである。建設費と借り換えのため8億ドルの正味増資を行い、自己資本は53億ドルとなる。
会社は存続するが、積み上がった自己資本のすべてに額面の価値はない。純デジタル資産と売却可能な設備を減額した18億ドルを床とし、長期の稼ぐ力も同じ水準に近づく。
- グローバル・マーケッツ:数量 2,500(機関取引先数)× 価格 0.00(取引先1社当たりの年間調整後粗利益(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。取引単価と利益率が下がる
- 資産運用・インフラソリューション:数量 200(運用資産とステーク資産の合計(億ドル、重複を含む開示値))× 価格 0.00(残高に対する年間調整後粗利益率)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。残高は増えるが報酬が低下
- データセンター:数量 650(顧客へ引き渡して稼働するIT機器向け実効容量(MW))× 価格 0.03(1MW当たりの年間賃料相当の調整後粗利益(億ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 9 億ドル。再交渉と開発遅延で650MW
- トレジャリー・本社:数量 15.0(純デジタル資産・投資残高(億ドル))× 価格 0.03(残高に対する平準化した年間収益率)→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。保有資産を縮め、収益率も低下
倍率:事業ROEは5.7%でk 10.5%を下回り、稼ぐ力の上限は1÷kの約9.5倍。顧客集中と低い再投資利回りを反映してPER 6.0倍とし、時価総額18億ドルは売れる資産の税後の床とも一致する。
確率:電力機器、系統接続、顧客の資金調達のどれかが詰まり、未契約容量の開発が遅れる可能性は高い。暗号資産の手数料競争も重なるため、中立に次ぐ確率とした。
悲観 15% 悲観:顧客の信用事故と暗号資産不振で、資産回収を優先 利益 −2 億ドル · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.85 ドル7 億ドル
コアウィーブの資本構成が持たず、賃料の減額と工期停止が起きる。担保権者との再編を経て稼働容量は350MWへ縮み、未完成の拠点は売却する。データセンターの営業利益は1.9億ドルまで落ち、利息と本社費を賄えない。暗号資産では取引先が1,500へ減り、運用・ステーク残高も120億ドルにとどまる。
10年目の純損失は2億ドル、期間累計は20億ドルの赤字となる。債務返済と運転資金のため8億ドルの正味増資を行い、減損後の自己資本は18億ドルへ縮む。純デジタル資産を50%の9億ドル、データセンターの現在の純資産を45%の7億ドルで売れるとみなし、税金受取契約と処分費1億ドルを引く。残る会社は成長企業ではなく、資産回収と小さな金融事業の再建を待つ状態になる。
- グローバル・マーケッツ:数量 1,500(機関取引先数)× 価格 0.00(取引先1社当たりの年間調整後粗利益(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。取引先流出で赤字
- 資産運用・インフラソリューション:数量 120(運用資産とステーク資産の合計(億ドル、重複を含む開示値))× 価格 0.00(残高に対する年間調整後粗利益率)→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。低報酬の商品だけが残る
- データセンター:数量 350(顧客へ引き渡して稼働するIT機器向け実効容量(MW))× 価格 0.02(1MW当たりの年間賃料相当の調整後粗利益(億ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。契約再編と稼働率低下
- トレジャリー・本社:数量 8.0(純デジタル資産・投資残高(億ドル))× 価格 0.02(残高に対する平準化した年間収益率)→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。資産売却後の小さな残高
倍率:赤字のためPERは使わない。時価総額15億ドルは、減損後の自己資本18億ドルにPBR 0.8333倍を掛けた表示であり、根拠は純デジタル資産と売却可能なデータセンター持分の税後回収価値15億ドルである。
確率:コアウィーブの信用事故、長期の暗号資産不振、工事停止が同時に起きる確率は中心ではない。しかし、負債と顧客集中が損失を増幅するため、同領域の安定した運用会社より厚い15%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
グローバル・マーケッツ
機関投資家向けの暗号資産取引、融資、デリバティブ、仕組み商品、投資銀行サービス。
| 数量機関取引先数 | 価格取引先1社当たりの年間調整後粗利益(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 1,763 | 0.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,500 | 0.00 | 5 | 1 |
取り方:2026年7〜9月期の取引先1,763社を数量とし、グローバル・マーケッツの調整後粗利益0.53億ドルを4倍した2.12億ドルを割って単価を出した。取引総額は非開示なので、取引先数を継続的な顧客基盤の代理にする。
資産運用・インフラソリューション
ETF・私募運用、ステーキング、トークン化、カストディ技術など、残高連動の報酬を得る事業。
| 数量運用資産とステーク資産の合計(億ドル、重複を含む開示値) | 価格残高に対する年間調整後粗利益率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 104 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 320 | 0.01 | 2 | 0 |
取り方:2026年9月末の運用・ステーク残高104億ドルを数量とした。デジタル資産部門の粗利益0.71億ドルからグローバル・マーケッツの0.53億ドルを引いた0.18億ドルを年換算し、報酬率を約0.69%と推定した。
データセンター
Heliosなどで電力接続、建物、冷却設備を整え、AI・高性能計算の借り手へ長期賃貸する。
| 数量顧客へ引き渡して稼働するIT機器向け実効容量(MW) | 価格1MW当たりの年間賃料相当の調整後粗利益(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 133 | 0.02 | 3 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,050 | 0.03 | 32 | 17 |
取り方:Helios第1期の133MWが初めて全四半期稼働した。四半期の調整後粗利益0.79億ドルを年換算した3.16億ドルを数量で割った。調整後EBITDA0.69億ドルも年換算した。
トレジャリー・本社
暗号資産、上場株、ファンド持分などの自己投資と、本社の資金・費用を含む。
| 数量純デジタル資産・投資残高(億ドル) | 価格残高に対する平準化した年間収益率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 17.0 | 0.08 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.07 | 2 | 1 |
取り方:2026年9月末の純デジタル資産・投資17億ドルを数量とした。四半期の調整後粗利益4.19億ドルは値上がり益が中心なので年換算せず、長期で持続可能な名目8%の収益率に平準化した。
リスクと懸念
コアウィーブ一社への集中
契約済み526MWはすべてコアウィーブ向けである。相手は大きな受注残を持つ一方、純損失、利息、設備投資も巨額だ。信用が悪化すれば賃料減額、工事延期、設備の再用途化が同時に起き、15年契約だけでは損失を防げない。さらに、その設備は特定の電力密度と冷却仕様に合わせるため、別の借り手へ切り替えるまで空室と改修費が発生する。
建設・系統接続と高利債務
承認済み1.63GWと計画5.7GWは、稼働済み容量ではない。変圧器、送電、冷却機器、労働力が不足し、遅延中も利息は発生する。第2期の担保付債は9.875%で、賃料の開始が遅れれば株主資本で穴を埋める必要がある。未契約容量を担保に先に借りれば、需要の下振れが株式の希薄化へ直結する。
暗号資産の価格・取引量と評価損益
最新四半期の利益の大半は自己投資の値上がりだった。暗号資産が下落すると、取引量、担保価値、融資残高、運用報酬、自己資産が同時に減る。相関する五つの損失を別々の分散とみなさないことが重要である。流動性が細る局面ではヘッジの価格も悪化し、帳簿上の分散より実際の損失が大きくなる。
手数料低下と規制・競争
取引、保管、ステーキング、ETFは標準化が進み、コインベース、ファルコンX、大手銀行、ブラックロックなどが価格を下げる。規制の明確化は市場を広げるが、銀行や取引所の参入も容易にし、ギャラクシーの一社当たり粗利益を押し下げる。顧客が複数サービスを束ねて発注しても、価格の主導権をギャラクシーが持てるとは限らない。
サイバー、保管、取引先とステーキング
秘密鍵の漏えい、取引所や借り手の破綻、スマートコントラクトの欠陥、バリデータの停止やスラッシングは、直接損失と顧客流出を同時に起こす。機関向けブランドは一度の事故で傷つき、保険で全額を埋められるとは限らない。自己資金を同じプロトコルへ投じている時は、営業損失と投資損失も重なる。
支配構造・希薄化・資本配分
Class BとLPユニットを通じた創業者の影響、税金受取契約、交換可能債、株式報酬、ATM増資がある。会社全体が成長しても今の株主の取り分が同じ速度で増えるとは限らない。未契約の土地を買い続けるほど、失敗時の資本損失は大きい。買い戻しの額ではなく、総経済持分一口当たりの会社価値が増えたかを追う必要がある。
AIエージェント代替は直接非該当
主な価値は規制対応を伴う金融取引、担保・決済、電力接続と物理設備であり、人月、席課金、操作画面を売る事業ではない。したがって直接の代替型には当たらない。ただし助言・運用の作業は自動化され、手数料低下と人員削減を促す。一方でAI需要の鈍化や計算効率の改善は、データセンターの長期容量需要を直接下げる。
今後の分かれ目
- Helios第2期のデータホールが2027年から予定どおり渡され、1MW当たりの現金利益が第1期の水準を保ったら
- 契約済み526MWの価値の確度が上がる。やや楽観の確率を増やし、建設リスクを下げるが、コアウィーブの信用は別に点検する。
- 未契約830MWにコアウィーブ以外の投資適格級顧客が入り、前受金か長期保証を得られたら
- 単一顧客の弱点が薄れ、1.5GW以上の筋書きへ寄せる。追加債務の条件も改善するなら、堀を普通へ引き上げる余地がある。
- コアウィーブの利息負担、資金調達、支払条件が悪化し、契約変更や工期延期が起きたら
- やや悲観か悲観の確率を直ちに上げる。契約期間ではなく、実際に回収できる賃料と設備の再利用価値で測り直す。
- デジタル資産部門が評価益を除いて4四半期連続で黒字となり、取引先と運用残高の伸びが一社当たり報酬の低下を上回ったら
- 固定費を吸収する規模の証拠になる。中立のグローバル・マーケッツと資産運用・インフラソリューションの利益率を引き上げ、下側の確率を少し下げる。
- 建設債務の利率が高止まりし、ATM増資や交換可能証券の発行が買い戻しを上回ったら
- 会社全体の設備が増えても既存株主の正味還元は減る。正味の還元額を下げ、資本コストを変えずに悲観側の持分希薄化へ反映する。
- トレジャリー・本社の利益を除いても会社全体の純利益が安定し、自己投資残高が縮んだら
- 利益の質が上がる。暗号資産の循環への依存を下げ、確率を中立からやや楽観へ移す。
見ておくもの
- Heliosの稼働MW、引き渡し日、1MW当たり賃料と調整後EBITDA
- 追加830MWと新拠点の契約済み容量、顧客数、前受金・信用補完
- コアウィーブの利息、設備投資、資金調達、受注残と支払条件
- グローバル・マーケッツの取引先数、平均貸出残高、調整後粗利益
- 運用資産・ステーク資産の純流入と実効報酬率
- トレジャリー・本社を除くGAAP純利益と営業キャッシュフロー
- 担保付債務、交換可能債、ATM増資、株式報酬を引いた正味の還元
倍率と資本コストの決め方
今の株価や同業の市場倍率を見る前に、取引先数×一社当たり粗利益、運用・ステーク残高×報酬率、稼働MW×1MW当たり賃料、純投資額×平準化収益率で2035年の利益を組み立てた。Q3の自己投資益は年換算せず8%へ平準化した。倍率はk 10.5%、moat=weak、ROEとgから出る正当化PERの内側に置き、悲観は純デジタル資産とデータセンター持分の税後回収価値で止めた。factsの基準日株数はClass Aのみなので、既存Class Aの取り分には基準日Class A 1.9287億口とQ3開示のLP 1.9660億口を合わせた3.8947億口を使った。mcap_webは2026年10月28日の検索時価総額70.8億ドルで、Q3公表総口数3.8848億口に同日終値を掛けた約68.1億ドルともおおむね整合する。basisの株価と株数は指定どおり2026年10月23日のClass Aだけを写したため、mcap_webとの差は種類株と日付の違いである。値段から利益や倍率を逆算していない。
資本コスト 10.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k=基本8.0%+quality 2.5%=10.5%。同じ領域の伝統的運用会社より高く、暗号資産保有会社と同程度とした。コアウィーブの信用、建設の実行、規制はkへ重ねず、数量・利益率と下側の確率で表した。