結論
AIG(American International Group)は、米国・英国(ロイズ)・アジアで企業向け・個人向けの損害保険を引き受ける総合損保である。2025 年の保険料(NPW)は 237 億ドル(北米商業 88、国際商業 87、グローバル個人 63)、複合損害率 90.1%、純利益 31 億ドル、調整後税引後利益 40 億ドル、コア ROE 11.1%。2026 年 4〜6 月期は保険料 +9%、複合損害率 89.0%、北米商業は 84.0% まで下がった。生命保険のコアブリッジ(Corebridge)は 2026 年 5 月に残りの持ち分を売り切り、再保険のコンベックス(Convex)の 35% を取得して、損保に絞った会社に作り変えた。
強みは、大企業向けの超過賠償・金融賠償・専門保険を引き受ける技術と、世界の保険ブローカーとの関係、そして金利 5% 前後で積み上がる運用益。弱みは、2008 年の救済と 2015〜17 年の準備金の積み増しで傷んだ過去、財物の料率が下がりはじめた商業保険、そして 2026 年にトップがザッフィーノからアンダーセンへ替わる移行期である。
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、保険料は物価並みに伸びると見る。中立の筋書きは、10 年で純利益が年 4.4% 伸び、有形 ROE 約 12.6%・g 3.0%・資本コスト 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)から正当化 PER 12.9 倍を出し、その 9 割の 11.6 倍に置いた。今の PER・PBR には寄せていない。確率で加重した 10 年後の価値は 510 億ドルで、今の時価総額 428 億ドルに対し +19%(総合で「やや割安」)。悲観を 12% 置いても結論は割安だが、資本コストと準備金の質に敏感である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、損保の価値は「預かった保険料(フロート)を、費用の少ない資金として長く運用できるか」で決まる。複合損害率が 100% を下回り続けるかぎりフロートは安い資金で、AIG の北米商業の 84.0% はその条件を満たしている。10 年後もこの事業は存在し、保険料は物価並みに伸びると見る。ただし、準備金の不足で過去に何度も数字を壊した会社でもあり、今の数字が良いだけでは足りない。
オーナー利益は、純利益から保険料の伸びに要る自己資本を引いたものである。有形 ROE は 2025 年に約 11%、中立の 10 年後で約 12.6% と、チャブやトラベラーズより一段低い。同じ式でも PER は 20 倍前後で、資本効率の差はそのまま倍率に出る。余った資本(自己資本 411 億ドルに対し保険料 237 億ドル)は、2025 年の自社株買いのように返すのが理にかなう。
資本配分は 2023 年以降評価できる(生命保険の切り離しと自社株買い)が、割高で買えば価値を壊す。安全域:悲観を 12% と厚めに置き、悲観では床の資産まで下げた(還元を合わせて今の時価総額の 91%)。事業は大企業向けの引受で、財物の軟調の深さと準備金の質が見通せない点は確信度を下げる。
何で稼ぐ会社か
AIG は 3 つの損保事業と、運用と本社で稼ぐ。第一に北米商業(2025 年の保険料 88 億ドル、複合損害率 86.8%)。小口から大企業までの賠償責任・労災・金融賠償(取締役賠償や専門職賠償)と、免許外の保険会社が引き受ける余剰・特殊リスク(E&S)のレキシントン(Lexington)で構成する。2026 年 4〜6 月期は保険料 31 億ドル(+9%)、複合損害率 84.0% で、リテールの賠償責任と金融賠償が伸び、レキシントンは財物の料率下落で縮んでいる。
第二に国際商業(87 億ドル、複合損害率 86.9%)。ロイズ(Lloyd's)の引受会社を含む英国・欧州・アジア・中東の企業向け財物・海上・信用などで、4〜6 月期は保険料 +11%、中東の紛争による損失(約 0.75 億ドル)と料率圧力で複合損害率は 91.3% と前年(85.9%)から悪化した。第三にグローバル個人(63 億ドル、複合損害率 99.0%)。事故・健康保険(Accident & Health)、富裕層向けの住宅・自動車、日本を中心にした海外の個人で、旅行・アシスタンス事業の売却で保険料が減った(2025 年 −12%)が、4〜6 月期は +7%、複合損害率 92.9%(前年 98.5%)と改善した。
利益は引受益(2025 年は約 23 億ドル)と、預かった保険料の運用益(GI の純投資収益 34 億ドル、前年比 +12%)から出て、本社の利息・費用(Other Operations)が約 4 億ドルの損になる。2026 年 2 月に出資が完了したコンベックス(35%、21 億ドル)には全勘定クォータシェア(収益の一部を預ける再保険)を出し、財物の変動を外へ逃がす構えである。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一に大型で複雑なリスクを値付けする引受の技術。取締役賠償・サイバー・超過賠償・インフラなど、大企業が他社に出しにくい保険を引き受ける人材とデータがあり、世界の主要ブローカー(マーシュ、エーオン、ウィリス)の窓口でも顔が利く。第二に世界に張った免許と引受の網。多国籍企業の保険プログラムを一括で受けられる。第三に再保険と出資先(コンベックスなど)の組み合わせで、財物の変動を外へ逃がせる。
価格を決める力は中くらい。商業の財物は 2026 年に 8 四半期連続で下がり、国際商業の複合損害率は料率の圧力で悪化した一方、北米商業の賠償責任と金融賠償は料率が上回り、複合損害率 84.0% が同業(チャブ 83.8%、トラベラーズ 83.6%)に並んだ。費用率は 2025 年 31.1%、2026 年 4〜6 月期 30.8% で、2027 年に 30% 未満(Investor Day 目標)へ向かうが、チャブの約 28% よりは重い。
資本効率はコア ROE 11.1%(2025 年)で、チャブやトラベラーズ(核 ROE 20% 超)より低い。弱みは過去の準備金の不足と、2008 年の救済・2015〜17 年の積み増しという歴史、そして 2026 年に就任したアンダーセン CEO(元エーオンのブローカー出身)へ替わった移行期で、引受の規律を引き継げるかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
損保は料率の山を越えて下りに入る局面にある。2023〜25 年の値上げと大災害の少なさで、業界の複合損害率は 10 年超で最良に近づいた。2026 年は商業保険の財物が 8 四半期連続で下がり(4〜6 月期は世界で約 −12% と推計)、一方で賠償責任は +7% 前後、商業自動車・アンブレラ・超過賠償の硬化が続く。AIG は北米の賠償責任・金融賠償に軸足を置き、財物(レキシントン)の量を絞って引受の利益を守る方針で、2026 年 4〜6 月期の北米財物を除く保険料の伸びは +11% である。
競合との位置:北米商業では、チャブ(Chubb、複合損害率 83.8%)・トラベラーズ(Travelers、83.6%)・ハートフォード(Hartford、91.4%)・W.R. バークレー(W.R. Berkley)と競う。米国の企業向け損保の元受保険料は年 5,000 億ドル超(推定)で、AIG の北米商業 88 億ドルはシェア約 1.7%。大型・複雑リスクではチャブ、ロイズの引受会社、アーチ(Arch)、アクサ XL(AXA XL)と重なる。国際商業は米国外の企業向け・専門保険(年 4,000 億ドル前後と推定)の約 2%。個人は事故・健康保険と日本・アジアで、チャブやアリアンツと競う。
価格と数量の関係:財物は料率が下がっても数量は増えにくく、損害率の悪化は 1〜2 年遅れて出る。賠償責任は社会的インフレ(訴訟費用・賠償額の上昇)で準備金の質が問われる。大災害はハリケーン・山火事・中東の紛争が年ごとに利益を揺らす。運用益は債券の入れ替えが進むかぎり追い風である。
資本政策と M&A
資本政策は「余った資本は返す」である。2025 年は 68 億ドル(自社株買い 58 億、配当約 10 億)を返し、年間の株数は 13% 減った。2026 年 6 月末は 5.247 億株で前年同月比 6% 減。2026 年 4〜6 月期の還元は 9.04 億ドル(自社株買い 6.41 億、配当 2.63 億)。四半期の配当は約 11% 引き上げた。Investor Day の目標は、コア ROE 10〜13%(2027 年)、営業 EPS 年 20% 超、配当年 10% 超、費用率 30% 未満。
M&A は売る側と少数出資に回った。コアブリッジは 2022 年の上場後に段階的に売り、2026 年 5 月に残り約 2,500 万株(約 7.1 億ドル)を売り切って保有ゼロ。売却済みのヴァリダス・リ(Validus Re)や旅行事業のアーンアウト(後払い対価)の見積り変更で 2026 年上期に 1.33 億ドルの損を出した。2026 年 2 月 6 日にコンベックスの 35% を 21 億ドル、オンクス(Onex)の 9.9% を 6.42 億ドルで取得し、コンベックスには 2026 年から全勘定クォータシェアを出し、2027〜28 年に出再を増やす。オンクス運用の PE・クレジットに 3 年で 20 億ドルを約束した。
借金は金融・ハイブリッド債務 90 億ドル、負債比率 18%。未成立の大型買収はなく、買われる側になる話も確認できない。
2026 年に決算期末後すでに実行した自社株買い 11.5 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元には数えず、自己資本の起点(399.9 億ドル)からも外した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIG は引受の水準がチャブ・トラベラーズと並ぶところまで上がり、まだ伸びしろが残っている。2026 年 4〜6 月期は北米商業の複合損害率が 84.0%、保険料 +9%(北米財物を除くと +11%)、GI 全体では承保益 6.86 億ドル(+10%)、調整後 ROE 10.2%、コア ROE 11.1%。2025 年の費用率 31.1% は 2027 年に 30% 未満へ下がる計画で、保険料 250 億ドル規模なら 1 ポイントで約 2.5 億ドルの税引前利益になる。グローバル個人は複合損害率が 99.0% から 92.9% へ改善し、まだ縮められる。
運用益も追い風である。GI の純投資収益は 2025 年に 34 億ドル(+12%)で、長期金利 5% が続く世界では低利の債券が高利回りに入れ替わる。コンベックスへの全勘定クォータシェア(2027〜28 年に出再を増やす)は財物の大災害を逃がしつつ、35% の持ち分で再保険の利益を取り込める。自社株買いは 2025 年に 58 億ドルで、株数は 1 年で 13% 減った。ROE が 14% に達する筋書きでは、利益ベースの上限は PER 約 13 倍で、今の PER を上回る。市場の伸びと価格が物価並みなら大型リスクの引受の価値は上がる。軟調で規律のない会社が脱落するほど、AIG の相対的な位置は強くなる。
慎重な見方
今の水準は、軽い大災害(2025 年は 3.9 ポイント)と準備金の好転(2.1 ポイント)に助けられた山である。北米商業の複合損害率 84.0% でも、AYCR(当年の損害率)は 86.7% と前年(86.2%)より悪化していて、国際商業は複合損害率 91.3% と悪化した。財物は 8 四半期連続で料率が下がり、損害率の悪化は 1〜2 年遅れて出る。賠償責任(超過賠償・余剰)は準備金が不足しやすく、AIG は過去に何度も積み増した(2015〜17 年の純損失)。2026 年 4〜6 月期も米国の超過賠償で準備金は小さく悪化した。
トップは 2026 年にザッフィーノからアンダーセンへ替わり、発表日に株価は約 7% 下がった。コンベックスへの依存(出資 21 億ドルの持分法とクォータシェア)は実績の短い会社への賭けで、2027〜28 年の出再増はそのまま信用リスクになる。コア ROE 11% はチャブ・トラベラーズの半分で、費用率 31% は競合より重い。
資本コストは quality で +0.75% 上げたが、k が 0.5% 上がると倍率は 1〜2 割下がり、価値は前提のずれに敏感すぎる。保険は成長ではなく安定を買う株で、純利益は年 3〜4% の伸びにとどまり、有形 ROE は 10% 台前半へ下がる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は、強気がやや優勢なのは北米商業の引受と運用益の追い風まで。慎重な見方が当たっているのは、国際商業と個人の引受の振れ、準備金の質、トップ交代の移行期、チャブ・トラベラーズに比べて低い ROE である。確率はやや悲観を厚めに置き、中立を最も重く(10 年 34%)、悲観 12%、強気は 8% にとどめた。倍率は利益ベースで、中立は有形 ROE 約 12.6%・g 3.0%・k 8.75% の正当化 PER の 9 割。軟調・準備金・個人の弱さは利益率・数量・価格に載せた。結果は 10 年で +19%、総合は「やや割安」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 123.71 ドル655 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 63.01 ドル334 億ドル)。 今の値に割り戻すと 94.89 ドル502 億ドル、今との差 +14.3%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 187.50 ドル993 億ドル | 71.67 ドル380 億ドル | +212.1% | +12.1% | 20.73 ドル110 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 161.93 ドル858 億ドル | 69.59 ドル369 億ドル | +178.8% | +10.8% | 50.93 ドル270 億ドル |
| 中立 | 34% | 135.72 ドル719 億ドル | 68.27 ドル362 億ドル | +145.7% | +9.4% | 69.36 ドル367 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 89.57 ドル474 億ドル | 65.06 ドル345 億ドル | +86.2% | +6.4% | 37.11 ドル197 億ドル |
| 悲観 | 12% | 45.32 ドル240 億ドル | 26.15 ドル139 億ドル | −13.9% | −1.5% | 8.58 ドル45 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 123.71 ドル655 億ドル | 63.01 ドル334 億ドル | +124.9% | +8.4% | 186.71 ドル989 億ドル |
今の株価時価総額 83.03 ドル440 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:AIG の引受が伸び、ROE が上がる 利益 76 億ドル · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 187.50 ドル993 億ドル
AIG は大型・複雑リスクの引受で選ばれ続け、リテール賠償責任・金融賠償でシェアを取る。北米商業は市場の数量 +12%・シェア +18%・価格 1.41 倍(物価並み)で保険料 163 億ドル(複合損害率約 87.5%)、国際商業は 153 億ドル(約 88.5%)、グローバル個人は 104 億ドル(約 94%)。費用率は 29% 台に下がり、運用資産は 1,155 億ドル、利回り 5.2% で運用益 60 億ドル。純利益 76 億ドル、自己資本 570 億ドル(有形 ROE 約 14%)。コンベックスへの出再と出資が機能し、財物の変動を外へ逃がしつつ収益を取り込む。競合のチャブ・トラベラーズとは引受で並び、ROE の差が縮まる。
- 北米商業(賠償責任・金融賠償・E&S):数量 92.5(保険契約の件数相当(万件))× 価格 17,645(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 163 億ドル・営業利益 20 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア +18.0%・価格 ×1.41・引受利益率 12.5%
- 国際商業(ロイズ・欧州・アジア・中東):数量 138(保険契約の件数相当(万件))× 価格 11,101(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 153 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア +12.0%・価格 ×1.41・引受利益率 11.5%
- グローバル個人(事故・健康・富裕層・海外個人):数量 1,058(保険契約の件数相当(万件))× 価格 979(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 104 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア +5.0%・価格 ×1.41・引受利益率 6.0%
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 1,155(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 60 億ドル・営業利益 60 億ドル。運用資産 × 利回り(GI の純投資収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 13%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 76.2 ÷ 自己資本 570.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 11.1%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 13.4 倍(上限 = 純利益 76.2 億ドル × これ = 1024 億ドル)。これの 1.0 割(13.0 倍)に置いた。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:ROE が 14% に届き、市場の伸びと価格が物価並みで続く筋書きは 1 割弱。トップ交代と準備金の歴史から薄く置く。
やや楽観 22% やや強気:費用率が定着し、北米商業が支える 利益 69 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 161.93 ドル858 億ドル
費用率が 30% 未満に定着し、北米商業が 88% 台を保つ。北米商業は市場の数量 +11%・シェア +14%・価格 1.40 倍で保険料 155 億ドル、国際商業は 146 億ドル(複合損害率約 89.5%)、グローバル個人は 99 億ドル(約 95%)。運用益は 57 億ドル、純利益 69 億ドル、自己資本 545 億ドル(有形 ROE 約 13%)。コンベックスのクォータシェアは 2027〜28 年に出再が増えるが、再保険の質は保たれる。競合のチャブとは費用率で差が残るが、ハートフォードよりは良い位置で、トップ交代後も引受の選別を守る。個人は事故・健康保険の伸びで複合損害率が 95% 前後まで下がる。
- 北米商業(賠償責任・金融賠償・E&S):数量 88.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 17,520(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 155 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場数量 +11.0%・シェア +14.0%・価格 ×1.40・引受利益率 11.5%
- 国際商業(ロイズ・欧州・アジア・中東):数量 133(保険契約の件数相当(万件))× 価格 10,943(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 146 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場数量 +11.0%・シェア +9.0%・価格 ×1.39・引受利益率 10.5%
- グローバル個人(事故・健康・富裕層・海外個人):数量 1,019(保険契約の件数相当(万件))× 価格 972(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 99 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場数量 +11.0%・シェア +2.0%・価格 ×1.40・引受利益率 5.0%
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 1,099(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 57 億ドル・営業利益 57 億ドル。運用資産 × 利回り(GI の純投資収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 13%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 68.6 ÷ 自己資本 545.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.7%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 13.2 倍(上限 = 純利益 68.6 億ドル × これ = 903 億ドル)。これの 0.9 割(12.5 倍)に置いた。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:費用率が 30% 未満で定着し、北米商業が 88% 台を保つ筋書き。
中立 34% 中立:高めの運用益に支えられ、利益は年 4% 台で伸びる 利益 62 億ドル · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 135.72 ドル719 億ドル
北米商業は市場の数量 +10%・シェア +10%(リテール賠償責任・金融賠償が伸び、レキシントンは縮む)・価格 1.38 倍(財物の軟調と賠償責任の値上げが混ざり、物価 1.41 倍より 2% 低い)で保険料 146 億ドル(複合損害率約 89.5%)、国際商業は 137 億ドル(約 90%)、グローバル個人は市場 +10%・シェア据え置き・価格 1.38 倍で 95 億ドル(約 96%)。運用資産は 1,050 億ドル、利回り 5.1% で運用益 54 億ドル。純利益 62 億ドル(年 4.4%)、自己資本 520 億ドル(有形 ROE 約 12.6%)。競合のチャブ・トラベラーズには ROE で届かないが、ハートフォードよりは良い位置を保つ。
- 北米商業(賠償責任・金融賠償・E&S):数量 84.7(保険契約の件数相当(万件))× 価格 17,270(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 146 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア +10.0%・価格 ×1.38・引受利益率 10.5%
- 国際商業(ロイズ・欧州・アジア・中東):数量 128(保険契約の件数相当(万件))× 価格 10,707(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 137 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア +6.0%・価格 ×1.36・引受利益率 10.0%
- グローバル個人(事故・健康・富裕層・海外個人):数量 990(保険契約の件数相当(万件))× 価格 958(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 95 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア +0.0%・価格 ×1.38・引受利益率 4.0%
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 1,050(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 54 億ドル・営業利益 54 億ドル。運用資産 × 利回り(GI の純投資収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 12%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 61.9 ÷ 自己資本 520.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.3%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 12.9 倍(上限 = 純利益 61.9 億ドル × これ = 798 億ドル)。これの 0.9 割(11.6 倍)に置いた。中立:北米商業の引受の立て直しと運用益の追い風はあるが、準備金の質・トップ交代の移行期・チャブより低い ROE を見て、上限の 9 割にとどめた(中立の PER が 1÷k を下回らない範囲)
確率:利益は年 4.4%(市場の実質 +1% + 価格は軟調で −1.5% + 運用益の積み上がり)。軟調期で鈍るが運用益が支える。
やや悲観 24% やや悲観:軟調が長引き、準備金と国際商業が重い 利益 49 億ドル · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 89.57 ドル474 億ドル
軟調が長引き、準備金の積み増しと国際商業の悪化でシェアと利益率が落ちる。北米商業は市場の数量 +8%・シェア −3%・価格 1.33 倍で保険料 126 億ドル(複合損害率約 91.5%)、国際商業は 120 億ドル(約 92%)、グローバル個人は 86 億ドル(約 98%)。運用益は 47 億ドル、純利益 48 億ドル、自己資本 470 億ドル(有形 ROE 約 11%)。トップ交代後の引受の緩みと、コンベックスの再保険利益の伸び悩みが重なる。財物の損失が 2 年続いて再保険の料率が上がり、出再の費用が増える。個人は事故・健康保険が伸びても、日本・アジアで競争が強まり複合損害率は 98% にとどまる。
- 北米商業(賠償責任・金融賠償・E&S):数量 75.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 16,644(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 126 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア +0.0%・価格 ×1.33・引受利益率 8.5%
- 国際商業(ロイズ・欧州・アジア・中東):数量 115(保険契約の件数相当(万件))× 価格 10,392(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 120 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア -3.0%・価格 ×1.32・引受利益率 8.0%
- グローバル個人(事故・健康・富裕層・海外個人):数量 923(保険契約の件数相当(万件))× 価格 931(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 86 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア -5.0%・価格 ×1.34・引受利益率 2.0%
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 966(運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 47 億ドル・営業利益 47 億ドル。運用資産 × 利回り(GI の純投資収益)
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から軟調の分を引いた 3.0% で、上限 4% より低く置いた)・事業の ROE 10%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 48.5 ÷ 自己資本 470.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 9.5%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 12.2 倍(上限 = 純利益 48.5 億ドル × これ = 593 億ドル)。これの 0.8 割(9.8 倍)に置いた。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:軟調が長引き、準備金と国際商業の振れでシェアと利益率が落ちる。AIG の過去(2015〜17 年)を踏まえ 4 分の 1 弱。
悲観 12% 悲観:構造的に負け、優良な損保ではなくなる 利益 8 億ドル · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 45.32 ドル240 億ドル
準備金の不足(賠償責任の社会的インフレ)、大災害の恒常化、コンベックスへの依存の失敗が重なり、AIG は 2015〜17 年のような積み増しの時期に戻り、優良な損保ではなくなる。北米商業は市場の数量 +5%・シェア −18%・価格 1.28 倍で保険料 96 億ドル(複合損害率約 108%)、国際商業は 92 億ドル(約 109%)、グローバル個人は 64 億ドル(約 105%)。運用益は 35 億ドル(利回り 4.4%)。10 年目の純利益は 8 億ドル、10 年の純利益の合計は約 60 億ドルで、還元は 138 億ドルまで絞り、縮小で不要になった資本と資産の売却で払う。自己資本は 320 億ドル。ならした利益では見ず、床の資産で測る。保険料を預かる資産は残るが、もう優良ではない。
- 北米商業(賠償責任・金融賠償・E&S):数量 60.3(保険契約の件数相当(万件))× 価格 16,018(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 97 億ドル・営業利益 −8 億ドル。市場数量 +5.0%・シェア -18.0%・価格 ×1.28・引受利益率 -8.0%
- 国際商業(ロイズ・欧州・アジア・中東):数量 92.4(保険契約の件数相当(万件))× 価格 9,920(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 92 億ドル・営業利益 −8 億ドル。市場数量 +5.0%・シェア -20.0%・価格 ×1.26・引受利益率 -9.0%
- グローバル個人(事故・健康・富裕層・海外個人):数量 709(保険契約の件数相当(万件))× 価格 903(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 64 億ドル・営業利益 −3 億ドル。市場数量 +5.0%・シェア -25.0%・価格 ×1.30・引受利益率 -5.0%
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 805(運用資産(億ドル))× 価格 0.04(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 35 億ドル・営業利益 35 億ドル。運用資産 × 利回り(GI の純投資収益)
倍率:構造的に負けた筋書き。10 年目の有形 ROE は 3% 近くで k を下回るので、価値は稼ぐ力(純利益 8 億ドル ÷ k = 約 90 億ドル)より、縮小しながら資本を返せる床の資産で測る。床は自己資本 320 億ドルから準備金不足と売却の割引を引いた約 240 億ドルで、PBR 0.75 倍。市場の値付けや過去の底からは置いていない。
確率:準備金の不足・大災害の恒常化・コンベックス依存の失敗が重なる確率を 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
北米商業(賠償責任・金融賠償・E&S)
小口〜大企業向けの賠償責任・労災・金融賠償と、レキシントンの余剰・特殊リスク。ブローカー経由。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 70.0 | 12,514 | 88 | 11 |
| 10 年後 中立 | 84.7 | 17,270 | 146 | 15 |
取り方:2025 年の北米商業の保険料 87.6 億ドル(複合損害率 86.8%、引受益 11.4 億ドル)を、70 万件相当 × 平均約 1.25 万ドルに置いた推定(件数は非開示)。市場は米国の企業向け損保(元受保険料で年 5,000 億ドル超と推定・業界ノート)、AIG のシェアは約 1.7%。競合はチャブ・トラベラーズ・ハートフォード・W.R. バークレー。数量 = 市場の数量(企業の売上・資産の実質増)× シェア。価格は財物が下がり賠償責任が上がるので、3 年で 1.09 倍、10 年で 1.38 倍(物価 1.41 倍よりやや低い)とした。
国際商業(ロイズ・欧州・アジア・中東)
米国外の企業向け財物・海上・信用・専門保険。ロイズの引受会社を含む。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 110 | 7,873 | 87 | 11 |
| 10 年後 中立 | 128 | 10,707 | 137 | 14 |
取り方:2025 年の国際商業の保険料 86.6 億ドル(複合損害率 86.9%、引受益 11.2 億ドル)を、110 万件相当 × 平均約 7,900 ドルに置いた推定。市場は米国外の企業向け・専門保険(年 4,000 億ドル前後と推定)で、AIG のシェアは約 2%。競合はチャブ・アクサ XL・アーチ・ロイズのリード会社。数量 = 市場の数量 × シェア。価格は財物の軟調で 3 年 1.07 倍、10 年 1.36 倍とした。
グローバル個人(事故・健康・富裕層・海外個人)
事故・健康保険(Accident & Health)、富裕層向けの住宅・自動車、日本・アジアの個人。旅行事業は売却。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 900 | 694 | 63 | 1 |
| 10 年後 中立 | 990 | 958 | 95 | 4 |
取り方:2025 年のグローバル個人の保険料 62.5 億ドル(複合損害率 99.0%、引受益 0.7 億ドル。旅行・アシスタンスの売却分を含む)を、900 万件相当 × 平均約 700 ドルに置いた推定。2026 年 4〜6 月期は事故・健康保険と富裕層で保険料 +7%、複合損害率 92.9%。市場は日本・アジアの個人保険と米国の富裕層・事故健康で、競合はチャブ・アリアンツ・日本の大手損保。数量 = 市場 × シェア。価格は修理費・医療費の物価に沿って 3 年 1.08 倍、10 年 1.38 倍とした。
損保の運用(預かった保険料の運用益)
GI の純投資収益(税引前)。債券が中心で、プライベート運用が増える。
| 数量運用資産(億ドル) | 価格利回り(運用収益 ÷ 運用資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 0.05 | 34 | 34 |
| 10 年後 中立 | 1,050 | 0.05 | 54 | 54 |
取り方:2025 年の GI の純投資収益(APTI ベース)34.3 億ドル(前年 +12%)を、運用資産約 700 億ドル(非開示のため逆算した推定)× 利回り 4.9% に置いた。2026 年 4〜6 月期は 8.71 億ドルで横ばい。長期金利 5%・短期金利 3.5〜4% が続き、低利の債券が入れ替わって利回りは 3 年で 5.0%、10 年で 5.1% に上がる。運用資産は保険料の伸びと準備金の積み上がりで増える。
リスクと懸念
料率サイクルの下り(財物の軟調が賠償責任へ広がる)
財物は 2026 年に 8 四半期連続で下がり、北米のレキシントンは縮んでいる。賠償責任の値上げが続けば相殺できるが、軟調が広がると複合損害率が数ポイント悪化する(北米商業の 84.0% は山に近い)。損害率の悪化は 1〜2 年遅れて出る。
準備金の質(賠償責任の社会的インフレと過去の傷)
AIG は 2015〜17 年に準備金を積み増して赤字になった。2026 年 4〜6 月期も米国の超過賠償は小さく悪化した。訴訟費用・賠償額の上昇で古い年の準備金が不足すると、複合損害率が 2〜3 ポイント動き、利益の質が落ちる。
トップ交代の移行期
ザッフィーノが 2021 年からの立て直しを率い、2026 年にエーオン出身のアンダーセンが CEO になった(発表日に株価 −6.9%)。引受の規律と費用率の目標(2027 年に 30% 未満)を引き継げなければ、料率の下りで傷が大きくなる。人についての事実は会社発表と報道(出典を notes に記載)で確認した範囲のみ。
コンベックス・オンクスへの出資と再保険の依存
コンベックス 35%(21 億ドル)とオンクス 9.9%(6.42 億ドル)は持分法で、のれん・無形が約 9.6 億ドル含まれる。クォータシェアは 2027〜28 年に出再を増やす計画で、相手の質に収益の一部を預ける。出資は実績が浅く、3 年で 20 億ドルのコミットも続く。
国際商業と中東・大災害
国際商業は 2026 年 4〜6 月期に複合損害率が 85.9% から 91.3% に悪化した(中東の紛争による損失約 0.75 億ドルと料率の圧力)。大災害損失は 2025 年に 3.9 ポイント、ロイズ経由の海上・政治リスク・信用で山が来ると振れる。
運用の評価損と金利
GI の運用益は 34 億ドルで利益の半分近く。景気後退で社債・プライベート運用(オンクスに 20 億ドル)が傷むと自己資本を削る。長期金利が下がれば債券の入れ替えによる利回りの上昇が止まり、追い風が消える。
資本コストの前提への敏感さ
k は quality で +0.75% 上げて 8.75% とした。k が 0.5% 上がると倍率は約 1〜2 割下がる。価値の大半は 10 年後の倍率に依存するので、悲観を厚めに置いてある。
今後の分かれ目
- 北米商業の複合損害率が 85% 前後で 2027 年まで続き、費用率が 30% を割る
- 利益は年 5% 超で伸び、有形 ROE は 13% 台。強気とやや強気の確率を上げられる。
- 軟調が賠償責任全体に広がり、北米商業の料率が 0% 近くまで下がる
- 北米商業の複合損害率が 92% 近くまで戻り、全社の利益が 3 割減る。有形 ROE は 10% 台前半、倍率も 1〜2 倍下がる。やや悲観の確率を上げる。
- 米国の超過賠償・余剰で準備金の積み増しが 2 年続く
- 複合損害率が 2〜3 ポイント悪化し、利益が 2 割減る。過去(2015〜17 年)と同じ型で、信頼の回復が遠のく。悲観の確率を上げる。
- 大型の財物災害(イアン級・山火事級)が 2 年続く
- AIG は財物の量を絞っているため北米の傷は浅いが、国際商業・コンベックスのクォータシェアで損失が出る。一過性なら価値の損失は小さく、傾向線が上がれば複合損害率が構造的に上がる。
- 10 年国債が 3% 台に下がる
- 運用益の押し上げ(利回りの上昇)が止まり、純利益は 10 年で 1 割ほど少なくなる。割引率も下がるので価値の差は小さい。
- アンダーセン CEO が費用率・引受方針の継続を示し、配当・自社株買いを維持する
- 経営の継続のリスクが和らぎ、確率を強気側へ少し寄せられる。方針転換(大型買収・出資の拡大)なら見直す。
見ておくもの
- 北米商業・国際商業・個人の複合損害率と更新料率(財物と賠償責任の別、四半期ごと)
- 準備金の好転・悪化(特に米国の超過賠償)と、大災害・準備金を除く AYCR(今は 88.1%)
- GI の費用率(2025 年 31.1%、4〜6 月期 30.8%、目標は 2027 年 30% 未満)
- GI の純投資収益と運用資産の利回り(2025 年 34 億ドル)
- コンベックスのクォータシェアの出再率とオンクスへのコミットの進み具合
- 自社株買いの額・株数(2026 年 6 月末 5.247 億株)と配当
- アンダーセン CEO の方針(2026 年 11 月の 7〜9 月期決算の説明)
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR を先に見ず、事業ごとに数量 × 価格で 10 年の利益を積み、その時点の有形 ROE・g から式で倍率を出した。k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%、g は市場の実質 +1% と価格が物価から −1.5% の 3.0% で 4% を超えない。PER は (1 − g/RONIC)/(k − g) を来年の利益に対して出し、資本コストを超える分は新しく投じるお金では半分に薄れる形で使った。中立の 10 年は正当化 PER 12.9 倍の 9 割 = 11.6 倍(有形 ROE 約 12.6%)で、やや悲観も同じ式の上限に対する割合で置いた。悲観は稼ぐ力ではなく、縮小しながら資本を返せる床の資産(約 240 億ドル)と還元の合計が今の時価総額を下回る筋書きにした。過去の PER や PBR には寄せていない。総合は +19% で「やや割安」。同じ領域の TRV・CB と同じ式・同じ g の考え方で、ROE が低い分だけ倍率が低い。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。商業保険の料率サイクル・大災害・準備金の質で利益が山谷に振れ、過去に準備金の積み増しで赤字に落ちた実績があるので quality は上げた。金融なので負債の補正は quality の debt で見る。トップ交代・コンベックス依存のような個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と悲観の確率・深さで表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。