結論
アメリプライズ・ファイナンシャルは、運用・助言・管理資産 1.8 兆ドル(2026 年 6 月末、前年比 14% 増)を持つ米国の富裕層向け助言会社である。稼ぎの柱は 3 つ。第 1 は 1 万人超の財務アドバイザーが手数料型(ラップ口座)で資産を預かる助言事業(顧客資産 1.25 兆ドル、利益の約 3 分の 2)、第 2 はコロンビア・スレッドニードルの資産運用(7,590 億ドル)、第 3 は年金・保険(リバーソース)。2026 年 4〜6 月期は調整後収益 49 億ドル(+13%)、調整後の 1 株利益 +22%、自己資本利益率(ROE、AOCI 除く)は調整後 55%・GAAP 53%。利益の 9 割を自社株買いと配当で返している。
バリュー投資の観点では、収益が顧客資産の残高にほぼ比例するため、株式市場が崩れれば利益は大きく落ちる。それでも助言事業は顧客との関係が長く、コメリカの提携解消(約 190 億ドルの流出)をハンティントン銀行(約 260 人・280 億ドル)で埋める計画が見えている。資本コストは基本 8.0% に quality 0%(市場連動の手数料と助言者報酬の競争が打ち消し合う)を足した 8.0%。中立の筋書きは、10 年後の純利益 59 億ドル・実効 PER 19 倍。倍率は利益ベースで置いた。ROE 44%、長期の伸び 4.0% から正当化 PER 21.2 倍を出し、その 9 割にした。確率で加重した価値は今の時価総額を 63% 上回り、割安だ。今の GAAP の PER は約 13 倍で、置いた倍率の約 19 倍より低い。市場は収益の循環と助言者の流出・報酬率の低下を重く見ているが、ここでは悲観の確率(12%)と谷の倍率で表し、倍率は割り引かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。富裕層の資産は増え、複雑な税・相続・保険の相談は人の助言を必要とし続ける。助言者との長い関係はこの事業の堀で、10 年後も存在し、今の強さを保つ可能性が高い。ただし堀の幅は価格を決める力ではなく、顧客との信頼と規模の技術に基づく。AI による助言のゼロ手数料化は堀を削る最大の外部リスクである。
次にオーナー利益。助言と運用は設備投資が小さく、純利益の 9 割を株主に返せる。ROE 53% は自社株買いで自己資本を縮めた見かけの高さもあるが、ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))は帳簿の ROE を上回るので、元手に対して高い利益率を稼いでいると見てよい。式の g は 4.0% 以下にとどめ、成長に要る元手は小さく、残りは還元に回る。
安全域では、収益が市場に連動する点が最大の問題。利益ベースの倍率は約 19 倍(正当化 PER 21.2 倍の 9 割)。今の GAAP の PER は約 13 倍だ。中立の 10 年後の時価総額は今の約 2.4 倍(割り戻す前)で、悲観でも 238 億ドルが残る。確信は高いが、採用競争と市場の下げの振れは深い。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つに分けて見る。第 1 は助言事業(アドバイス・ウェルス・マネジメント)で、収益の約 3 分の 2。財務アドバイザーが顧客の資産運用・保険・年金・ローンを総合的に助言し、手数料(資産に対する年率)を取る。ラップ口座(助言手数料型)の残高は 7,320 億ドルで前年比 19% 増。アメリプライズ・バンクが預金と貸出を持ち、資産は 255 億ドル。顧客の現金は 840 億ドルで、一部は預金・銀行、一部は第三者のマネー・マーケット・ファンド(466 億ドル)で預かる。主な顧客は投資できる資産 50 万〜500 万ドルの世帯。税前の調整後営業利益は 9.39 億ドル(2026 年 4〜6 月期)、利益率は 28.9%。
第 2 は資産運用(コロンビア・スレッドニードル)で、運用・助言資産 7,590 億ドル。株式・債券・マルチアセットを、リテール・モデル配信と機関投資家向けに運用し、報酬率は約 47bp。2026 年 4〜6 月期の純流出は 65 億ドル(機関 51 億ドル、リテール 14 億ドル)で、債券の資金流出が遅れていると経営陣も認める。純利益率は 42.7% と、目標の 35〜39% を上回る。
第 3 は年金・保険(リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ)で、変額年金・固定年金・生命保険・障害保険。収益 9.75 億ドル、利益 2.02 億ドル(−6%)。販売は構造化商品・変額生命で +20% 伸びたが、変額年金の流出と販売費が利益を押し下げる。経営陣は長期に年 8 億ドル前後と説明する。第 4 はコーポレートで、持株会社の費用と借入の利息(2026 年 4〜6 月期に −0.8 億ドル)。
優良さと弱いところ
優良さは 4 点。第 1 は顧客との関係で、助言者 1 人あたりの生産性は 120 万ドル(+12%)と記録的で、5 年で年 10% 伸びてきた。ラップ口座は資産の移動が少なく、顧客が引っ越しても助言者との関係が続く。第 2 は資本の軽さで、助言と運用は設備投資がほとんど要らず、調整後 ROE は 55%(5 年で +10 ポイント)、利益の 9 割を還元できる。第 3 は価格を決める力。助言手数料は残高の 1% 前後で、専門性の高い助言ほど価格競争を受けにくい。第 4 は規模の経済で、技術投資(AI の会議要約を約 6,000 人の助言者が使用)を 1 万人超に配れる。
弱い所は 4 つ。(1)収益が市場の水準に連動すること。残高 1.25 兆ドルの手数料が大半で、市場が 4 割下がれば収益は 2 割以上減る。(2)採用競争。経営陣が「非合理」と呼ぶほど競合が高い契約金を出し、レイモンド・ジェームズや LPL にも人が動く。条件の合わない採用は見送るため、流入が鈍る。(3)高い金利の下で顧客の現金が預金から第三者の MMF へ動く。(4)年金・保険は変額年金の流出が続き、資産運用は機関投資家向けの流出が続く。自己資本は自社株買いで小さく(ROE は見かけ以上に高い)、規制資本の余力は少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は 3 つの競争で見る。助言(ウェルス)は、モルガン・スタンレー、メリルリンチ、エドワード・ジョーンズ(顧客資産 2.6 兆ドル・助言者 2 万人超)、LPL ファイナンシャル(独立系の助言者約 3 万人)、レイモンド・ジェームズ(約 8,900 人)、チャールズ・シュワブ、アメリプライズの順に、助言者の確保と資産の取り込みで争う。助言者の採用では、レイモンド・ジェームズと LPL がエドワード・ジョーンズから人を引き抜く動きもあり、契約金の高騰が利益を削る。顧客資産の増加は市場の値上がりが大半で、純流入で伸ばすのは難しい。
資産運用は世界の運用資産が約 147 兆ドル(2025 年)。収益成長の 8 割超は市場の値上がりで、業界の利益率は約 30% で横ばい、機関投資家の手数料は年 3% 下がり、純流入の大半はパッシブと ETF に向かう(ブラックロック、バンガード)。アクティブ運用の会社(T ロウ・プライス、インベスコ、フランクリン・テンプルトン)は流出に直面し、アメリプライズのコロンビア・スレッドニードルも同じ流れの中にいる。ただし投資成績は 1 年で 69%、3 年・5 年で 75%、10 年で 87% のファンドが中央値を上回る(2026 年 6 月)。
年金・保険は変額年金の流出が続く構造で、構造化商品へ販売を寄せる。2026 年は株式市場が高く、金利も高止まりして顧客の現金の収益が大きい。循環の位置としては、残高と利ざやの両方が高い、やや山に近い所にいる。
資本政策と M&A
還元の方針は調整後営業利益の 85〜90%。2026 年 1〜6 月は 19 億ドル(前年同期比 +25%)を返し、4〜6 月は配当 1.58 億ドル、自社株買い 7.74 億ドル(170 万株)。株数は年 4〜8% ずつ減ってきた(2014〜2025 年)。株式報酬の増発があるため、正味の還元は自社株買いの額より小さい。余剰資本は 21 億ドル、持株会社の流動性は 28 億ドルで、自社株買いの水準は続けられると経営陣は説明する。M&A は大型の買収を避け、これまでの買収(セリグマン、コロンビア、スレッドニードル)の統合に集中する方針。会社が買われる側になる可能性は、時価総額 440 億ドルの規模と規制(銀行・保険の子会社)でほぼない。気になる点は 2 つ。助言者の採用の契約金(現金回収が最長 8 年)の資本配分、そして自社株買いを市場の山で続けて割高に買うこと。2026 年 1〜6 月の平均買付価格は今の株価に近い。
2026 年に決算期末後すでに実行した自社株買い 16.5 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元には数えず、自己資本の起点(49.0 億ドル)からも外した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
助言事業は長期の資産形成の流れの受け手で、2026 年 6 月の顧客資産は 1.25 兆ドル(+15%)、ラップ口座は 7,320 億ドル(+19%)と過去最高。1 人あたりの生産性は 120 万ドル(+12%)で、5 年で年 10% 伸びてきた。利益率は 28.9% で前年同期と同じだが、コアの利益は 30% 台前半で伸び、コアが利益の過半を占める。経営陣はこの利益率が持続可能だと言う。
コメリカの提携解消(約 190 億ドルの流出)は 2026 年 9 月で終わり、ハンティントン銀行(約 260 人・280 億ドル)が 4Q〜2027 年初に入る。経営陣は合流が流出を上回ると見る。AI の会議要約・業務ツールは約 6,000 人が使い、3 つのツールを使う助言者は週 30 時間の節約になる。資産運用は純利益率が 43% と目標を上回り、成績は 10 年で 87% のファンドが中央値超。ROE は 55% で、その利益の 9 割が還元される。置いた PER は約 16 倍、今は 13 倍。10 年で運用残高が 2 倍に増えるだけで価値は今の時価総額を大きく上回る。
慎重な見方
今の収益は市場の高さと高金利に乗った山にある。助言事業の収益は残高の 1% 前後の手数料で、リーマンの株価は 74%、2020 年は 38% 下がった。市場が 4 割下がれば残高は 3 割以上減り、助言者の報酬は固定費に近く利益率は 17% まで落ちる。
採用は「非合理」な契約金の競争にあり、現金回収が最長 8 年の条件を競合が出す。レイモンド・ジェームズ・LPL に助言者が移り、コメリカのような提携解消がまた起きれば流入は伸びない。経営陣は条件に合わない採用を見送るため、市場以上の伸びは期待しにくい。資産運用は純流出が続き、機関投資家向けの 51 億ドルの流出が 4〜6 月期の大半を占める。アクティブ運用は報酬率が下がり続け、パッシブ・ETF に押される。変額年金は流出が続き、利益は前年比 6% 減。
ROE 53% は自社株買いで自己資本を縮めた見かけの高さでもあり、規制資本の余力は大きくない。市場が今の PER 13 倍を付けるのは、この循環と構造の問題を織り込んでいるからで、利益ベースの 19 倍でも楽観にすぎる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と還元の強さは強気の見方が強く、10 年の楽観・やや楽観の合計を 34%、悲観・やや悲観を 34% とほぼ同数にした。ただし悲観の深さ(10 年 −48%)と収益の循環は慎重な見方が突く点で、悲観を 12% と厚めに置いた。値段は利益ベースの倍率(約 19 倍)で測っても、確率で加重した価値が今の時価総額を 63% 上回る。数字では強気の見方が勝つ。市場の PER 13 倍との差は、市場が循環と助言者の流出を重く見る分で、この差を割り引いて埋めることはしていない。結論は「優良で、割安。ただし市場連動の振れは大きい」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,139 ドル1,046 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 406.19 ドル373 億ドル)。 今の値に割り戻すと 804.24 ドル738 億ドル、今との差 +64.0%、 期待の年率 +12.2%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,822 ドル1,673 億ドル | 535.40 ドル492 億ドル | +380.7% | +17.0% | 235.78 ドル216 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 1,534 ドル1,408 億ドル | 489.65 ドル450 億ドル | +312.5% | +15.2% | 485.62 ドル446 億ドル |
| 中立 | 32% | 1,223 ドル1,123 億ドル | 436.27 ドル401 億ドル | +238.3% | +13.0% | 531.07 ドル488 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 757.08 ドル695 億ドル | 338.24 ドル311 億ドル | +123.3% | +8.4% | 240.97 ドル221 億ドル |
| 悲観 | 12% | 259.26 ドル238 億ドル | 175.93 ドル162 億ドル | −11.3% | −1.2% | 52.22 ドル48 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 1,139 ドル1,046 億ドル | 406.19 ドル373 億ドル | +215.1% | +12.2% | 1,546 ドル1,419 億ドル |
今の株価時価総額 490.51 ドル450 億ドル(2026-10-21)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:採用と技術で助言事業の利益率が 31% に上がり、資産運用の流出も止まる 利益 84 億ドル · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 1,822 ドル1,673 億ドル
2035 年末、市場が年 6.5%、助言事業の純流入が年 2.5%(ハンティントン型の銀行提携と、富裕層の助言需要の拡大)で、顧客資産は 2.77 兆ドル(今の 1.25 兆ドルの約 2.2 倍)。助言者の生産性が年 10% の伸びを保ち、AI ツールで 1 人あたりの担当世帯が増え、利益率は 31%。資産運用は債券と機関投資家向けの流出が止まり、運用資産は 1.17 兆ドル、利益率 41%。年金・保険は構造化商品と保障型の販売で利益 9 億ドル前後を保つ。純利益は 84 億ドル(2025 年から年 8.4%)、ROE は 55%。10 年の正味の還元は 492 億ドル。成長は名目 5% に落ち着く。
- アドバイス・ウェルス・マネジメント(助言・銀行):数量 27,698(顧客資産(億ドル))× 価格 0.01(顧客資産あたりの収益率(助言手数料・預金の利ざや・手数料))→ 売上 264 億ドル・営業利益 82 億ドル。残高 年 +9.0%・報酬率 年 -0.3%
- 資産運用(コロンビア・スレッドニードル):数量 11,728(運用・助言資産(億ドル))× 価格 0.00(資産あたり報酬率(約 47bp))→ 売上 51 億ドル・営業利益 21 億ドル。残高 年 +5.0%・報酬率 年 -1.0%
- リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ(リバーソース):数量 1,657(契約資産・準備金の残高(億ドル、推定))× 価格 0.03(残高あたり収益率(保険料・手数料・投資収益))→ 売上 42 億ドル・営業利益 9 億ドル。残高 年 +1.0%・収益率 年 +0.0%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は銀行・保険の規制資本を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.00%(基本 8.0%+quality +0.00%)、事業の ROE 53.6%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 30.8% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=21.8 倍が上限。利益の質(市場連動の手数料と預金・保険の利ざやで振れる)から、上限の 9.2 割の PER 20.0 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1819 億ドル)。
確率:助言者の生産性の伸び(年 10%)が続き、銀行・MMF など現金の収益化が進み、ハンティントン型の銀行提携が広がる。10 年の実現は 1 割。
やや楽観 24% やや楽観:助言事業は年 8% で伸び、資産運用は流出を縮める 利益 71 億ドル · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 1,534 ドル1,408 億ドル
2035 年末、市場が年 6%、助言事業の純流入が年 2% で、顧客資産は 2.53 兆ドル。助言事業の利益率は 29.8%。競合のレイモンド・ジェームズや LPL との採用競争は続くが、銀行提携とラップ口座の拡大で流入を保つ。資産運用は運用資産 1.02 兆ドル、報酬率は年 1.2% ずつ下がり、利益率は 39%。純利益は 71 億ドル(年 6.6%)、ROE は 54%。10 年の正味の還元は 450 億ドル。成長は名目 4.7% に落ち着く。年金・保険は販売が構造化商品に移り、変額年金の流出は続くが利益は年 8 億ドル前後を保つ。景気後退を 1〜2 回挟み利益は 3 割ほど落ちるが、ならすとこの水準になる。
- アドバイス・ウェルス・マネジメント(助言・銀行):数量 25,259(顧客資産(億ドル))× 価格 0.01(顧客資産あたりの収益率(助言手数料・預金の利ざや・手数料))→ 売上 239 億ドル・営業利益 71 億ドル。残高 年 +8.0%・報酬率 年 -0.4%
- 資産運用(コロンビア・スレッドニードル):数量 10,156(運用・助言資産(億ドル))× 価格 0.00(資産あたり報酬率(約 47bp))→ 売上 43 億ドル・営業利益 17 億ドル。残高 年 +3.5%・報酬率 年 -1.2%
- リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ(リバーソース):数量 1,577(契約資産・準備金の残高(億ドル、推定))× 価格 0.03(残高あたり収益率(保険料・手数料・投資収益))→ 売上 40 億ドル・営業利益 8 億ドル。残高 年 +0.5%・収益率 年 +0.0%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は銀行・保険の規制資本を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.00%(基本 8.0%+quality +0.00%)、事業の ROE 50.0%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 29.0% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=21.6 倍が上限。利益の質(市場連動の手数料と預金・保険の利ざやで振れる)から、上限の 9.2 割の PER 19.8 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1530 億ドル)。
確率:助言事業の流入が市場を上回って続き、資産運用の流出は縮むが残る。起こりやすい。
中立 32% 中立:助言事業は年 7% で伸びるが、報酬率と採用費で利益の伸びは売上より遅い 利益 59 億ドル · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 1,223 ドル1,123 億ドル
2035 年末、市場が年 5.5%、助言事業の純流入が年 1.5%(採用競争が厳しく、足元の年 2.5% から鈍る)で、顧客資産は 2.30 兆ドル。助言事業の収益は 215 億ドル、利益率 28%。報酬率は現金の移動と手数料競争で年 0.5% ずつ下がる。資産運用は市場の伸びを流出が年 3% 打ち消し、運用資産は 0.92 兆ドル、報酬率は年 1.5% 低下(パッシブ・ETF への移行)して収益は 38 億ドル、利益率は 36%。年金・保険は変額年金の流出で収益が 36 億ドルに縮み、利益は 7 億ドル。純利益は 59 億ドル(2025 年の 37 億ドルから年 4.7%)、ROE は 53%。10 年の正味の還元は 400 億ドル。10 年のうち不況を 2 回挟み、そのたびに利益は 3〜4 割落ちるが、ならすとこの水準。
- アドバイス・ウェルス・マネジメント(助言・銀行):数量 23,016(顧客資産(億ドル))× 価格 0.01(顧客資産あたりの収益率(助言手数料・預金の利ざや・手数料))→ 売上 215 億ドル・営業利益 60 億ドル。残高 年 +7.0%・報酬率 年 -0.5%
- 資産運用(コロンビア・スレッドニードル):数量 9,217(運用・助言資産(億ドル))× 価格 0.00(資産あたり報酬率(約 47bp))→ 売上 38 億ドル・営業利益 14 億ドル。残高 年 +2.5%・報酬率 年 -1.5%
- リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ(リバーソース):数量 1,500(契約資産・準備金の残高(億ドル、推定))× 価格 0.02(残高あたり収益率(保険料・手数料・投資収益))→ 売上 36 億ドル・営業利益 7 億ドル。残高 年 +0.0%・収益率 年 -0.5%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は銀行・保険の規制資本を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.00%(基本 8.0%+quality +0.00%)、事業の ROE 44.0%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 26.0% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=21.2 倍が上限。利益の質(市場連動の手数料と預金・保険の利ざやで振れる)から、上限の 9.0 割の PER 19.0 倍に置いた(検査の上限は時価総額 1248 億ドル)。
確率:議論の落としどころ。助言事業は富裕層の資産形成と採用で伸びるが、資産運用は流出が続き、年金・保険は縮む。
やや悲観 22% やや悲観:助言者の流出と報酬率の低下で、普通の資産運用会社に近づく 利益 39 億ドル · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 757.08 ドル695 億ドル
2035 年末、市場が年 4.5%、助言事業の純流入は年 0.5%(コメリカ型の提携解消が再び起き、助言者の移籍が増える)で、顧客資産は 1.91 兆ドル。報酬率は年 1.2% 下がり、助言者の報酬と採用費の上昇で利益率は 25.5%。資産運用は流出が年 4.5%、報酬率が年 2.2% 下がり、運用資産は 0.68 兆ドル、利益率 32%(アクティブ株式がパッシブ・ETF に置き換わる)。年金・保険は縮小して利益 5 億ドル。純利益は 38 億ドル(2025 年とほぼ同じ)、ROE は 47%。10 年の正味の還元は 310 億ドル。長期の成長は名目 2% にとどまる。
- アドバイス・ウェルス・マネジメント(助言・銀行):数量 19,058(顧客資産(億ドル))× 価格 0.01(顧客資産あたりの収益率(助言手数料・預金の利ざや・手数料))→ 売上 166 億ドル・営業利益 42 億ドル。残高 年 +5.0%・報酬率 年 -1.2%
- 資産運用(コロンビア・スレッドニードル):数量 6,848(運用・助言資産(億ドル))× 価格 0.00(資産あたり報酬率(約 47bp))→ 売上 26 億ドル・営業利益 8 億ドル。残高 年 -0.5%・報酬率 年 -2.2%
- リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ(リバーソース):数量 1,290(契約資産・準備金の残高(億ドル、推定))× 価格 0.02(残高あたり収益率(保険料・手数料・投資収益))→ 売上 30 億ドル・営業利益 5 億ドル。残高 年 -1.5%・収益率 年 -1.0%
倍率:純利益は GAAP の親会社帰属、自己資本は銀行・保険の規制資本を含む帳簿の値。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.00%(基本 8.0%+quality +0.00%)、事業の ROE 32.4%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 20.2% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=20.0 倍が上限。利益の質(市場連動の手数料と預金・保険の利ざやで振れる)から、上限の 9.0 割の PER 18.0 倍に置いた(検査の上限は時価総額 772 億ドル)。
確率:採用競争に負け続け、預金・MMF の収益化も鈍り、資産運用の流出が加速する展開。起きても不思議はない。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(助言者の流出・手数料のゼロ化・変額年金の損失) 利益 17 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 259.26 ドル238 億ドル
2035 年末、助言事業は大手銀行・LPL・エドワード・ジョーンズへの助言者の流出が続き、顧客資産は 1.57 兆ドル(市場は年 4% でも流出が年 1%)、報酬率は AI と低価格のロボ助言に押されて年 2% 下がり、利益率は 17%。資産運用は流出が年 6%、報酬率が年 3% 下がり、運用資産は 0.56 兆ドル、利益率 18.5%。変額年金は保証の費用と運用損で利益が 2.5 億ドルまで縮む。純利益は 17 億ドル(2025 年の約 47%)、ROE は 11%(還元が利益を上回れず、自己資本は 151 億ドルまで増える)。10 年の正味の還元は 162 億ドル。優良な助言会社ではなくなり、長期の成長は 0% に近い。一度流出した助言者と顧客は戻らない。
- アドバイス・ウェルス・マネジメント(助言・銀行):数量 15,724(顧客資産(億ドル))× 価格 0.01(顧客資産あたりの収益率(助言手数料・預金の利ざや・手数料))→ 売上 126 億ドル・営業利益 21 億ドル。残高 年 +3.0%・報酬率 年 -2.0%
- 資産運用(コロンビア・スレッドニードル):数量 5,590(運用・助言資産(億ドル))× 価格 0.00(資産あたり報酬率(約 47bp))→ 売上 20 億ドル・営業利益 3 億ドル。残高 年 -2.5%・報酬率 年 -3.0%
- リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ(リバーソース):数量 1,106(契約資産・準備金の残高(億ドル、推定))× 価格 0.02(残高あたり収益率(保険料・手数料・投資収益))→ 売上 23 億ドル・営業利益 3 億ドル。残高 年 -3.0%・収益率 年 -2.0%
倍率:稼ぐ力で測る(SCHEMA §1-3)。構造的に負けた筋書き。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.00%(基本 8.0%+quality +0.00%)、事業の ROE 11.3%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 9.7% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.7 倍が上限。上限の 9.5 割の PER 13.9 倍(時価総額 251 億ドルが上限)に置いた。PBR は結果であって根拠ではない。
確率:手数料の崩れ(AI と低価格のロボ助言)、助言者の大量流出、保険の一般勘定の損失がそろう確率を 1 割強と置く。2008 年の再現ではなく構造的な負け。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
アドバイス・ウェルス・マネジメント(助言・銀行)
1 万人超の財務アドバイザーによる手数料型の助言(ラップ口座)、ブローカレッジ、アメリプライズ・バンクの預金と貸出。収益の約 3 分の 2・利益の約 3 分の 2。
| 数量顧客資産(億ドル) | 価格顧客資産あたりの収益率(助言手数料・預金の利ざや・手数料) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11,700 | 0.01 | 115 | 33 |
| 10 年後 中立 | 23,016 | 0.01 | 215 | 60 |
取り方:2026 年 6 月末の顧客資産 1.248 兆ドル(前年比 +15%)から、2025 年末を約 1.17 兆ドルと推定(推定)。2025 年の収益は 2026 年 4〜6 月期の 32.5 億ドル(+16%)から逆算して約 115 億ドル、率は 0.98%。税前の調整後営業利益は利益率 28.9%(2026 年 4〜6 月期。前年同期も 28.9%)で約 33 億ドル。
資産運用(コロンビア・スレッドニードル)
株式・債券・マルチアセットの運用。リテール・モデル配信と機関投資家向け。米国のコロンビア、英国のスレッドニードルを統合。
| 数量運用・助言資産(億ドル) | 価格資産あたり報酬率(約 47bp) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7,200 | 0.00 | 34 | 10 |
| 10 年後 中立 | 9,217 | 0.00 | 38 | 14 |
取り方:2026 年 6 月末の運用・助言資産 7,590 億ドル(+10%)から 2025 年末を約 7,200 億ドルと推定(推定)。収益は 2026 年 4〜6 月期 9.47 億ドル(+14%)から逆算して 2025 年に約 34.5 億ドル、報酬率 0.48%(経営陣の説明 約 47bp とほぼ一致)。税前の調整後営業利益は約 10 億ドル。
リタイアメント&プロテクション・ソリューションズ(リバーソース)
変額年金・固定年金・生命保険・障害保険。主に助言事業の顧客に販売し、持株会社へ配当を出す。
| 数量契約資産・準備金の残高(億ドル、推定) | 価格残高あたり収益率(保険料・手数料・投資収益) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.03 | 38 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.02 | 36 | 7 |
取り方:開示は残高でなく収益と利益なので、年金・保険の契約資産・準備金の残高を約 1,500 億ドルと推定(推定。変額年金の勘定残高が中心)。2026 年 4〜6 月期の収益 9.75 億ドル(+4%)から 2025 年は約 38 億ドル、率 2.5%。税前の調整後営業利益は 2026 年 4〜6 月期 2.02 億ドル(−6%)、2025 年は約 8.3 億ドル(経営陣は年 8 億ドル前後と説明)。
リスクと懸念
株式市場の水準への連動
収益の大半が顧客資産の残高に連動する。2026 年は株価と金利の高さで収益が押し上げられた山に近い。リーマンでは株価が山から 74%(配当込み)、2020 年は 38% 下がった。市場が 4 割下がれば助言事業の収益は 2 割以上減り、助言者の報酬が固定費に近いため利益は 4〜6 割落ちる。ならした利益で値段を見る必要がある。
助言者の採用競争と提携解消
経営陣が「非合理」と呼ぶほど競合が契約金を積み、現金の回収が最長 8 年の条件も出る。条件に合わない採用を見送れば流入が鈍り、受ければ利益率が下がる。コメリカとの提携解消で約 190 億ドルが流出する例もあり、銀行提携の依存はハンティントンなどの更新・解消のリスクを持つ。
資産運用の資金流出と報酬率の低下
コロンビア・スレッドニードルは 2026 年 4〜6 月期に 65 億ドルの純流出(機関 51 億ドル)。債券の資金フローの遅れを経営陣も認める。業界全体でパッシブ・ETF への移行が進み、機関投資家の手数料は年 3% 下がる。報酬率が 1 割下がれば収益は 1 割減る。
現金の収益化の逆風
助言事業の顧客現金 840 億ドルは高金利の下で預金・銀行の利ざやを生むが、短期金利が 3.5〜4% でも預金から第三者の MMF(466 億ドル)への流れがある。金利が下がれば利ざやが縮み、銀行の利回り 4.7%・デュレーション 4.2 年の構造も効く。
年金・保険の構造的な流出
変額年金の流出が続き、2026 年 4〜6 月期の利益は前年比 6% 減。販売は構造化商品などで +20% でも販売費が先に出て利益を押し下げる。規制資本と保証の費用は市場下落で悪化し、持株会社への配当の余力に響く。
AI と手数料のゼロ化
助言・運用の標準的な部分は AI とロボ助言で低価格化しうる。助言手数料の率が下がれば残高が伸びても収益は伸びない。会社も AI ツールで生産性を上げるが、競合も同じ投資をするため、利益ではなく価格の低下に回る危険がある。
今後の分かれ目
- 助言事業の顧客純流入がハンティントン合流後に年 3% 台を保ち、コメリカの流出を吸収できたら
- 採用と提携の堀が確認でき、楽観・やや楽観の確率を上げる。助言事業の利益率 29% の持続が裏づけられる。
- 株式市場が 2026 年の水準から 2 割以上下がったら
- やや悲観の確率を上げる。谷でも助言事業の顧客は残り、回復後の戻りは早いと見て、PER は利益ベースの値を保つ。
- 採用の契約金の競争が続き、助言事業の利益率が 27% を割ったら
- 中立の利益率 28.5% を下げ、10 年の利益が 5% 前後減る。やや悲観の確率を上げる。
- 資産運用の純流出が年 4% を超えて続いたら
- 報酬率の低下と合わせ、資産運用の利益が 10 年で縮む。やや悲観の確率を上げる。
- 短期金利が 2% 台へ下がり、銀行・現金の利ざやが縮んだら
- 助言事業の利益が 1〜2 割減る。ただし市場の追い風が同時に来るなら相殺されうる。
- AI やロボ助言で助言手数料の率が年 2% 以上下がり始めたら
- 10 年の悲観の確率を上げ、助言事業の堀の評価を下げる。
見ておくもの
- 助言事業の顧客純流入とラップ純流入(ハンティントンの合流後)
- 助言者の数・生産性(120 万ドル)と経験者採用数
- 助言事業の利益率(28.9%)と採用の契約金の水準
- 資産運用の純流出(機関・リテール別)と債券の資金フロー
- 年金・保険の利益(年 8 億ドル)と変額年金の流出
- 顧客現金 840 億ドルの預金・MMF 別の動きと銀行の利回り
- 自社株買いの規模と平均買付の水準、余剰資本(21 億ドル)
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP 13 倍)と PBR 7 倍を見る前に、3 つの事業の残高 × 報酬率から利益を積み上げ、ROE・g・k から利益ベースの倍率を出した。ROE は帳簿の自己資本 ROE(AOCI 除く)で中立 44%(2025 年は 53%、調整後 55%)、g は市場・流入・報酬率の内訳から出し ROE からは出していない。中立の 10 年は g 4.0%・RONIC 26.0%・k 8.0%(基本 8.0% に quality 0%)で正当化 PER 21.2 倍。その 9 割を事業に掛け、純現金を足して実効 19.0 倍。置いた倍率が今の GAAP の PER 13 倍より高いので割安になった。市場の織り込みと離れた点は、収益の循環と助言者の流出を悲観の確率(12%)と谷の深さで表し、倍率の割り引きでは表していない点。売上と純利益の路線は 2026 年 1〜6 月の GAAP 純利益(20 億ドル)と矛盾しない。純現金は 0 から始めた(推定)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.09 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。助言のネットワークと自社株買いで資本を返す力は強いが、手数料が市場に連動し、助言者の報酬と手数料率の競争で値決めの余地は広くない。この差し引きでゼロに置いた。