結論
INGはオランダを本拠とし、欧州の個人銀行と世界の法人銀行を組み合わせた大手金融グループである。筆者の結論は「やや割安」だが、十分な安全域があるとまでは言えない。預金、融資、給与受取、決済という日常に深く組み込まれた仕事は10年後も必要である。しかし、その仕事が必要であることと、銀行が高い利ざやを維持できることは別の話だ。
オランダでは住宅ローンの新規獲得シェアを伸ばし、ドイツでは約1,000万人の顧客基盤を築いた。2026年4〜6月期も貸出と預金が増え、手数料収入は前年同期比14%増加した。会社は2027年の純収益目標を引き上げている。ただし、四半期の有形自己資本利益率17%を10年間の普通株ROEと同一視するのは危険である。預金の金利競争と信用費用の正常化を考えれば、成長のかなりの部分は顧客残高と物価の伸びから生まれる。
2025年の添付財務データでは純利益71.4億ドル、自己資本583.7億ドル、ROE12.2%であった。中立では2035年の純利益106億ドル、自己資本850億ドルを見込む。これは、近年の好調さが失われると決めつけるものでも、そのまま延長するものでもない。欧州での顧客獲得が続く一方、預金者にも利息を払い、銀行として必要な資本を積み増す姿を想定している。
五つの筋書きを資本コスト8.25%で評価し、期間中の正味の配当と自社株買いも含めた現在価値は約1,030億ドルとなる。添付の基準時価総額913億ドルとの差は約13%である。銀行の不良債権や規制が予想以上に厳しくなれば、この余裕は消える。長く持つ株主にとって、魅力は派手な成長ではなく、預金基盤を守りながら資本を株主へ戻し続けられるかにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、銀行を技術企業のような売上成長率では買わない。顧客から預かったお金をどれだけ安全に運用し、貸倒を引いた後にどれだけの利益を株主のものにできるかで測る。INGには預金と決済の習慣があり、10年後に突然不要になる事業ではない。オランダの住宅ローン、ドイツの預金、国際企業の資金管理という三つの顧客関係が、その持続性を支える。
しかし、銀行にとっての預金は無料で使える資本ではない。顧客が高い預金金利を求めると、貸出金利を上げても利ざやは残らない。さらに貸出を増やすほど自己資本の積み増しが必要になる。したがって、利益71.4億ドルがすべて配当可能な現金ではなく、成長に要る元手を差し引いた残りがオーナー利益に近い。
筆者が評価するのは、ドイツの低費用型銀行とオランダの長い顧客関係である。反対に高く評価しないのは、2026年の好調な有形自己資本利益率だけを根拠にした永久成長である。ROEが資本コストを上回っても、欧州の成熟市場では新しい投資先が無限にあるわけではない。余剰資本を無理な買収に使わず、適切な価格で自社株を買う方が価値を生む時期もある。
悲観で考えるべきは、一時的な不況だけでなく預金基盤そのものが安い調達源でなくなる事態である。その場合、銀行免許と顧客数が残っても超過利益は薄れ、純資産の額面どおりには評価できない。今回の期待価値と市場価格の差は約13%であり、結果はやや割安となる。ただし信用事故や資本規制の変化を吸収するには十分に大きい差とは言えず、慎重に扱うべき価格である。
何で稼ぐ会社か
INGの事業は五つに分かれる。オランダ、ベルギー、ドイツ、その他の国の個人銀行事業と、世界の大企業を相手にするホールセール銀行である。個人向けには預金、住宅ローン、消費者ローン、給与受取口座、決済、投資商品を提供する。法人向けには融資、運転資金管理、貿易金融、債券・為替関連サービスを売る。いずれも預金や市場から資金を調達し、その費用を上回る貸出収益と手数料を得る仕組みだ。
オランダでは住宅ローンと日常の銀行取引が収益の柱となる。住宅ローンの既存残高は全国市場の約14%に相当し、新規貸出のシェアは2021年の10%台前半から2025年には17%前後へ伸びた。顧客が住宅ローンや給与振込口座を持つと、別の銀行に移るには手間がかかる。ただし預金だけの顧客は金利で動くため、すべての顧客関係が同じ強さではない。
ベルギーでは、INGは国内大手の一角である。総資産ベースの市場シェアは約13%で、KBCやBNPパリバ・フォルティス、ベルフィウスと競う。ドイツでは店舗を大量に構えるより、オンラインで預金と住宅ローンを扱う形が強い。口座を持つ顧客は約1,000万人で、預金を集める規模の利益がある。証券取引や投資商品の利用も増えているが、ネオバンクとの競争は厳しい。
その他の国にはポーランド、スペイン、イタリア、オーストラリアなどが含まれる。ポーランドのINGバンク・シロンスキは2025年に貸出市場の約11.1%、預金市場の約10.0%を占めた。ホールセール銀行は法人融資だけではない。国際企業の資金移動、決済、外国為替、貿易金融が収益源となり、企業の経理・財務の仕事に深く入り込むほど関係が長続きする。
なお、添付factsの2025年売上696.9億ドルは、銀行の粗い利息収入を含む系列である。INGが決算で示す純金利収益と手数料などの合計とは定義が異なる。後者は調達利息を差し引いた数字であり、両者をそのまま比較して成長率を判断してはいけない。以下の数量と価格では、貸出・預金の実質残高と、残高当たりの粗収入換算係数を用いる。資金調達費や貸倒費用は部門利益率の側で差し引く。
優良さと弱いところ
最大の強みは、免許だけでなく日々動く顧客関係の厚さである。給与が入り、請求書が決済され、住宅ローンが引き落とされ、余った資金が運用される。これらが同じ銀行につながると、利用者には切り替えの手間が生まれ、銀行には顧客の収支を理解する機会が増える。ドイツで約1,000万人、グループでは4,000万人を超える個人顧客を抱える規模も、技術投資や法令対応の費用を広く配る助けになる。
ただし、この堀は独占事業ほど強くない。預金の金利を上げなければ他行へ資金が移るし、住宅ローンは借換え時に価格を比較される。オランダで新規住宅ローンのシェアが伸びたことは競争力の証拠だが、それは高い金利を自由に請求できる証拠ではない。INGの優位は価格決定力そのものより、低い提供費用、使いやすさ、複数商品の利用を通じて、妥当な利ざやを残す力にある。
増分の自己資本利益率も見極めたい。新しく貸出を増やすには規制上の自己資本が要る。中立で想定する長期のROEは約13%で、資本コスト8.25%を上回る。この差が残れば成長投資には意味があるが、過剰な預金金利競争や貸倒によって差が縮めば、貸出を増やすより還元した方が株主に有利になる。銀行の高い自己資本利益率は、必ずしも高い成長率を意味しない。
経営は2021年以降、配当と自社株買いを厚くしている。発行済み株数も減った。一方、2025年の還元額は同年の純利益を上回っており、毎年その比率を続けられるわけではない。2026年4〜6月期の普通株等Tier1比率は13.1%で、規制上の余裕はあるが無制限ではない。筆者はINGを「十分な堀のある普通の優良銀行」と評価する。強い免許と規模を持つが、預金の値段を完全に支配できる会社ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
欧州の銀行市場は成熟している。人口が急増する市場ではなく、貸出の伸びは住宅価格、企業投資、物価、銀行間のシェア移動に左右される。オランダの住宅ローン残高は2025年末に約1兆ドル相当の規模があり、銀行だけでなく保険会社や年金資金も貸し手となる。INGは新規融資でシェアを伸ばしたが、ラボバンクとABNアムロも強い。今後10年の実質残高成長は緩やかと見る方が自然である。
ベルギーでは銀行総資産のシェアがKBC約20%、BNPパリバ・フォルティス約19%、ベルフィウス約14%、ING約13%という構図にある。銀行口座と住宅ローンの市場は大きくは伸びない。シェアを守るには、預金金利とサービス品質の両方で競争する必要がある。ドイツではドイツ銀行・ポストバンク、貯蓄銀行、協同組合銀行に加え、DKB、N26、トレード・リパブリックが預金と投資資金を取り合う。INGの低店舗モデルは費用面で有利だが、顧客が比較サイトで金利を選ぶ環境は同時に利ざやを削る。
ポーランドは西欧より金融取引の深まりに余地がある。INGバンク・シロンスキの貸出シェアは約11%で、PKO BP、ペカオ、mBankなどが競合する。中立ではこの地位を概ね守り、実質の顧客残高が西欧より速く伸びると考える。ただし、その他の国をまとめた部門には成長速度も規制も異なる市場が混在するため、一つの高い成長率を一律に当てはめるのは危険だ。
ホールセール銀行では、BNPパリバ、ドイツ銀行、HSBC、JPモルガンなどと企業融資や国際決済を争う。世界の法人貸出・為替・貿易金融は巨大だが、商品ごとに市場の分母が異なり、ING全体の厳密な世界シェアは公表されていない。したがって、特定市場の高いシェアを全事業に当てはめない。融資残高だけでなく、決済件数と手数料を増やせるかが利益の質を分ける。
共通前提の物価3.5%と高めの金利が続く世界では、貸出残高は名目では増えても、顧客への預金利息も高止まりする。金利上昇だけで銀行が豊かになるわけではない。信用コストも、景気が良い時の低い水準だけを10年間続けることはできない。欧州の資本規制、住宅ローンへの資本賦課、商業用不動産の信用悪化が、数量よりむしろROEを左右する。
資本政策と M&A
INGの公式な分配方針は、特別損益を除く持続的な純利益の50%を配当と自社株買いで還元し、配当を中心にするというものだ。資本に余裕があれば追加還元を検討する。2025年の添付財務データでは配当43.8億ドル、自社株買い41.8億ドルで、合計は純利益を上回った。これは余剰資本の取り崩しを伴うため、2035年まで同じ額が自動的に増え続けるとは考えない。
2026年4〜6月期のCET1比率は13.1%である。会社は2026年と2027年の目安をともに約13%とし、2027年の純収益を260億ユーロ超、有形自己資本利益率を16%超へ引き上げた。これは短中期の経営目標であって、10年にわたる利益の約束ではない。正味の還元を考える際には、株式報酬による希薄化や将来の増資を差し引く必要がある。
2026年7月にはスペインの富裕層向けシンギュラー・バンクへの約40%出資を発表した。完了見込みは2027年1〜3月期であり、まだ成立していないため、この分析の基準事業にその利益を連結していない。ロシア銀行事業の売却契約は2026年4月に解除された。撤退の意思は変わらないが、承認難と追加損失が残る。買収による拡大より既存顧客への複数商品販売と資本還元の成否が、長期の価値を決める。
INGの米国ADRは原則として普通株1株に対応する。親会社全体の価値を対象とし、米国の預託証券だけの利益を別に計算しない。オランダには敵対的な支配権取得を防ぐ仕組みもある。長期の事業継続には役立つ一方、少数株主が買収提案による上乗せ利益を得る機会を制限する可能性がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
INGの最大の魅力は、店舗数を際限なく増やさずに顧客残高を増やせることだ。ドイツの約1,000万人の顧客と、オランダの住宅ローン獲得力はすでに実績がある。オランダの新規住宅ローンシェアは2021年の10.3%から2025年には17%前後へ上昇した。これは宣伝だけでは作れない顧客獲得力の証拠である。既存の口座、住宅ローン、投資取引を結び付ければ、一人当たりの収入を増やせる。
2026年4〜6月期には、純粋な融資残高が152億ユーロ、顧客預金が159億ユーロ増えた。手数料収入は14%増え、モバイルの主力顧客も四半期で37.7万人増えた。会社が引き上げた2027年の収益目標は、貸出と手数料が同時に成長する道を示している。大規模な技術投資を各国の顧客基盤に広く配分できるため、銀行窓口を多く抱える競合より費用率を低くできる。
ポーランドでは貸出シェアが約11%あり、西欧より市場拡大が期待できる。国際企業向けでは資金管理と貿易金融を中心に取引を深められる。AIは本人確認、事務処理、顧客対応の費用削減に使えるが、それだけに頼る必要はない。住宅ローンと企業融資は依然として金融機関の資本と信用判断を要する。
CET1比率に一定の余裕を維持しながら、余った利益を配当と自社株買いに戻せる。過去数年の大きな自社株買いは株数を減らしてきた。10年間で収益構造が手数料寄りに改善し、必要以上の買収を避ければ、資本の追加投入に対して高い収益を稼ぎ続ける余地がある。こうした条件がそろうと、現在の市場価格は事業の持続性を十分に評価していない。
慎重な見方
欧州の銀行が増やしているのは、必ずしも高い利益を生む顧客ではない。預金残高を獲得するには、金利を上げなければならない。ドイツではN26やトレード・リパブリックが金融取引の入口を奪い、比較サイトは住宅ローンをほぼ価格で選ばせる。顧客数が増えても、預金調達の利ざやが縮めば増分利益は細る。オランダで新規住宅ローンのシェアが伸びたことも、採算を維持してこそ価値がある。
2025年のROE12.2%と2026年の高い有形自己資本利益率を、そのまま10年後まで伸ばすべきではない。2008〜09年にはINGの株主価値が深刻に傷み、危機後は事業売却と資本の再構築が必要になった。銀行は債務を仕入れとするため、預金流出と不良債権の増加が同時に起きると、利益が減るだけでなく還元そのものを止めなければならない。現在の現金残高を余剰資産として株主価値に丸ごと足すこともできない。
ベルギーではKBCやBNPパリバ・フォルティスが強く、INGが安い調達基盤を独占できるわけではない。ホールセール銀行は世界の大手銀行が価格と信用供与枠で競争する。企業融資の収益は貸倒が低い時には魅力的でも、商業用不動産や景気後退への露出が顕在化すれば評価は変わる。2026年のロシア撤退契約解除も、政治的な判断が金融機関の資本に直接影響することを示した。
規制上の資本が厚く求められると、貸出を増やしても株主に返せる利益は限られる。さらにデジタル金融の普及は銀行の事務費を下げるだけではなく、顧客が金利と手数料を比較する費用も下げる。銀行免許は10年後も残るが、免許を持つことだけで高いROEを維持できるとは限らない。現在の値段には、近年の良好な信用費用と大きな還元が相応に織り込まれている可能性がある。
どちらに重みを置いたか
銀行業の存続とINGの顧客基盤については前向きに評価する。一方、預金金利競争が長期化し、現在の好調な収益性が標準にならない可能性を重く見た。このため楽観とやや楽観の合計確率を32%、やや悲観と悲観を34%とし、わずかに慎重な側へ寄せた。中立の34%はオランダとドイツの基盤を維持しながら、ROEが約13%へ落ち着く道である。
その結果、10年の正味還元を含む価値は約1,030億ドルとなり、基準時価総額913億ドルを約13%上回る。中立の事業価値だけを見て結論を決めたのではなく、預金基盤が傷む場合の利益率低下と還元制限を織り込んだ結果である。評価は「やや割安」だが、優良銀行だから無条件で買い続けてよいという意味ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 49.76 ドル1,427 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 19.87 ドル570 億ドル)。 今の値に割り戻すと 35.89 ドル1,030 億ドル、今との差 +14.1%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 87.57 ドル2,512 億ドル | 26.87 ドル771 億ドル | +263.7% | +16.5% | 10.30 ドル295 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 70.07 ドル2,010 億ドル | 24.77 ドル711 億ドル | +201.5% | +14.1% | 21.81 ドル626 億ドル |
| 中立 | 34% | 49.88 ドル1,431 億ドル | 21.64 ドル621 億ドル | +127.3% | +10.5% | 24.32 ドル698 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 28.36 ドル814 億ドル | 15.64 ドル449 億ドル | +39.9% | +4.2% | 10.12 ドル290 億ドル |
| 悲観 | 11% | 20.70 ドル594 億ドル | 7.28 ドル209 億ドル | −11.1% | −1.3% | 3.08 ドル88 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 49.76 ドル1,427 億ドル | 19.87 ドル570 億ドル | +121.3% | +10.0% | 69.63 ドル1,997 億ドル |
今の株価時価総額 31.46 ドル902 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:デジタル基盤と複数商品の利用が広がる 利益 160 億ドル · PER 15.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 87.57 ドル2,512 億ドル
オランダでは住宅ローンの新規獲得力が維持され、既存残高の市場シェアも上昇する。ドイツでは約1,000万人の顧客を起点に、決済口座から証券・投資商品への利用が広がる。ベルギーは国内シェアを守り、ポーランドなどの市場では取引数が増える。法人銀行は融資を増やすだけでなく、国際決済と資金管理を深めて手数料の取り分を拡大する。
シンギュラー・バンクへの出資は承認後に成果を上げるが、未成立の事業をあらかじめ利益へ合算することはしない。ロシアからの撤退は限定的な損失で完了し、欧州の資本規制も銀行の成長を大きく妨げない。低費用型の銀行運営とAIによる事務効率化が進み、増えた顧客収入が利益に結び付く。
2035年の純利益は160億ドルに増え、ROEは約16.5%へ高まる。貸出の伸びに必要な自己資本を確保しながら、10年間で約771億ドルを正味で株主に還元する。強い超過収益力を示す筋書きだが、競争相手が同じ技術を使えば利益率改善は限定されるため、これを標準の未来とはしない。
- オランダ個人銀行:数量 5,550(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。名目残高への物価上昇分を含み、預金利息と貸倒は利益率で差し引く)→ 売上 283 億ドル・営業利益 61 億ドル。実質残高は2025年の1.26倍。住宅ローンのシェアと複数商品利用が拡大する。
- ベルギー個人銀行:数量 2,800(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 181 億ドル・営業利益 18 億ドル。国内大手の地位を守り、決済と資産運用の利用を増やす。
- ドイツ個人銀行:数量 4,550(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 255 億ドル・営業利益 40 億ドル。デジタル口座、住宅ローン、証券取引の利用拡大で実質残高が1.47倍となる。
- その他の国の個人銀行:数量 5,900(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.07(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 431 億ドル・営業利益 63 億ドル。ポーランドなどで実質金融取引が拡大し、主要市場のシェアも上がる。
- ホールセール銀行:数量 4,750(2025年の法人顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.07(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。市場業務・決済手数料も換算して含める)→ 売上 340 億ドル・営業利益 55 億ドル。国際決済、貿易金融、手数料収益の成長が法人融資の伸びを補う。
倍率:k8.25%、2035年の有形自己資本を基礎とした事業ROE約16.8%、普通の堀の残存割合1/2からRONIC約12.5%。g4.0%は物価3.5%と実質市場成長・シェアの純増0.5%によるもので、ROEから逆算していない。来期利益に対する正当化PERに1.04を掛けた2035年利益ベースの上限は約16.7倍。事業の強さを評価しつつ競争を考慮して約94%の15.7倍とした。自己資本に要る元手は有形資本の概算で見たが、無形資産の控除による上振れは小さく、銀行の買収による成長を先取りしていない。
確率:オランダでのシェア上昇、ドイツの投資商品の浸透、その他の国での成長、ホールセール手数料の拡大がすべて続く道である。信用費用も抑えられる必要があるため、実現確率は1割弱とする。
やや楽観 23% やや楽観:市場より少し速く残高と手数料が伸びる 利益 134 億ドル · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 70.07 ドル2,010 億ドル
オランダでは住宅ローンの新規獲得シェアを高い水準で維持し、既存残高も市場より少し速く増える。ドイツではオンライン銀行の低い費用構造を保ったまま、預金口座を証券取引や住宅ローンにつなげる。その他の国ではポーランドの成長が西欧の成熟を補い、ベルギーは顧客基盤を概ね守る。
ホールセール銀行はBNPパリバやHSBCと競争を続けながら、国際決済と資金管理で収益を増やす。信用費用は時々上がるが、大規模な資本毀損には至らない。ロシア撤退の損失とスペインの小規模な成長投資は、10年間の利益と還元の中で吸収できる。
純利益は134億ドル、自己資本は900億ドルとなる。資本効率は良好で、預金と融資の規模が大きくなる一方、利益は手数料の増加で支えられる。還元は10年間で約711億ドルとなり、資本の健全性を維持しながら株主に現金を戻せる。事業の堀は少し広がるが、預金の調達金利を自由に決められるほどではない。
- オランダ個人銀行:数量 5,180(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。名目残高への物価上昇分を含み、預金利息と貸倒は利益率で差し引く)→ 売上 256 億ドル・営業利益 54 億ドル。住宅ローンで市場をやや上回り、低い運営費用を維持する。
- ベルギー個人銀行:数量 2,560(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 157 億ドル・営業利益 15 億ドル。預金と住宅ローンのシェアをほぼ維持する。
- ドイツ個人銀行:数量 4,120(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 223 億ドル・営業利益 34 億ドル。低費用のデジタル基盤に証券・投資商品の利用増が加わる。
- その他の国の個人銀行:数量 5,150(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.07(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 355 億ドル・営業利益 47 億ドル。ポーランドを中心に実質残高が増え、シェアは維持から微増へ進む。
- ホールセール銀行:数量 4,350(2025年の法人顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.07(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。市場業務・決済手数料も換算して含める)→ 売上 292 億ドル・営業利益 50 億ドル。融資に加えて国際決済と手数料業務が成長する。
倍率:k8.25%、有形自己資本に対する事業ROE約15.2%、堀の残存割合1/2からRONIC約11.7%。g4.0%は物価3.5%と実質金融需要・シェアの合計0.5%。終期純利益ベースの正当化PER上限は約16.1倍で、手数料収益の質は改善するものの預金金利競争が残るため約93%の15.0倍を採用した。
確率:2026年上期の預金・貸出・手数料の同時成長を考えると、10年後も競争力が残る可能性は十分ある。ただしベルギーと法人銀行の価格競争を考え、全面的な楽観より高く、中立より低い確率とする。
中立 34% 中立:顧客基盤を守り、資本効率は12%台へ落ち着く 利益 106 億ドル · PER 13.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 49.88 ドル1,431 億ドル
オランダの住宅ローンと日常の決済は安定し、新規貸出で得た競争力を既存残高の増加に結び付ける。ただしラボバンクやABNアムロとの競争があるため、シェアが際限なく増えるわけではない。ベルギーは国内大手の地位を守りながら、預金調達コストの上昇を受け入れる。ドイツでは約1,000万人の顧客を基盤に残高と投資取引が増えるが、ネオバンクとの価格競争で収益性の改善は小幅にとどまる。
ポーランドなどの実質金融需要は西欧を上回り、その他の国の残高は増加する。ホールセール銀行は融資と国際決済を増やす一方、競合の手数料引き下げと信用費用の平常化によって高収益の一部を失う。ロシアの撤退は大きな資本破壊を伴わずに進む。未完了のスペイン出資の利益は先取りせず、成長の主体は既存事業とする。
2035年の純利益は106億ドルとなり、自己資本850億ドルに対するROEは約12.5%である。これは2025年の好調さから大きく飛躍する数字ではない。期間中の利益累計は887億ドル、正味の還元は約621億ドルとなる。余分な現金を資産として二重に数えず、銀行に必要な自己資本を確保した上で株主へ返す姿である。
- オランダ個人銀行:数量 4,830(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。名目残高への物価上昇分を含み、預金利息と貸倒は利益率で差し引く)→ 売上 235 億ドル・営業利益 48 億ドル。実質残高は1.10倍。住宅ローンの強さは続くが、預金と融資の競争で実質利ざやは伸びない。
- ベルギー個人銀行:数量 2,355(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 139 億ドル・営業利益 11 億ドル。成熟市場で実質残高は約1.06倍。国内シェアを概ね維持する。
- ドイツ個人銀行:数量 3,750(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 195 億ドル・営業利益 29 億ドル。実質残高は1.21倍。低費用運営と証券手数料が預金金利競争を補う。
- その他の国の個人銀行:数量 4,560(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.07(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 299 億ドル・営業利益 37 億ドル。実質残高は1.34倍。ポーランドなどの成長を含むが、国別の規制費用も増える。
- ホールセール銀行:数量 3,900(2025年の法人顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。市場業務・決済手数料も換算して含める)→ 売上 246 億ドル・営業利益 37 億ドル。実質残高は1.20倍。取引量と手数料が増える一方、競争で超過利益は広がらない。
倍率:k8.25%、2035年純利益106億ドルを有形自己資本概算830億ドルで割った事業ROE約12.8%。堀は普通で超過ROEの残存割合1/2、RONIC約10.5%。g3.5%は物価3.5%に、実質市場需要の増加約0.5%とシェア・実質利ざやの減少約0.5%を合わせたもの。2035年の純利益ベースで正当化PER上限は約14.5倍となる。景気循環、欧州の規制、預金価格競争を考え、上限の約93%となる13.5倍を採用した。市場の現在・過去のPERやPBRは根拠にしていない。
確率:オランダとドイツで顧客基盤を維持し、その他の国で実質残高が増える。ただし金利と手数料の競争で収益の伸びは名目残高の増加より鈍ると見た。最も自然な道として34%とする。
やや悲観 23% やや悲観:預金競争と貸倒で成長の価値が薄れる 利益 72 億ドル · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.36 ドル814 億ドル
オランダでは住宅ローンの新規獲得が伸び悩み、既存の残高を守るために金利面で譲歩する。ベルギーではKBCやBNPパリバ・フォルティスとの競争が厳しくなり、利益率は低下する。ドイツでも預金顧客は残るが、より高い金利を提示する銀行や金融アプリへ資金の一部が移る。顧客数だけでは利益の伸びを説明できなくなる。
その他の国ではポーランドの経済成長が続く一方、信用費用と資本負担が利益を削る。ホールセール銀行では法人融資の採算が低下し、手数料競争も進む。10年間に複数回の信用悪化があり、特に中盤の不況で利益が一時的に大きく落ちる。累計利益600億ドルは、期首と期末の利益を単純に結んだ場合より約117億ドル少ない。資本を傷めるほどではないが、追加還元を制限するには十分な損失である。
2035年の純利益は72億ドルと2025年並みにとどまる。自己資本は735億ドルへ増えても、利益を生む効率は約10%に下がる。正味の還元は約449億ドルに縮小し、自社株買いより配当と資本維持を優先する。銀行としては存続するが、成長による超過利益は細り、現在より優れた事業になったとは言いにくい。
- オランダ個人銀行:数量 4,510(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.04(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。名目残高への物価上昇分を含み、預金利息と貸倒は利益率で差し引く)→ 売上 198 億ドル・営業利益 34 億ドル。住宅ローンの新規シェアが低下し、調達金利の競争が強まる。
- ベルギー個人銀行:数量 2,200(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 121 億ドル・営業利益 8 億ドル。成熟市場での顧客流出と預金金利競争が続く。
- ドイツ個人銀行:数量 3,300(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 155 億ドル・営業利益 18 億ドル。ネオバンクと証券アプリへの資金移動で、数量と利ざやが伸びない。
- その他の国の個人銀行:数量 3,880(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 233 億ドル・営業利益 22 億ドル。ポーランドの市場成長は残るが、信用費用と規制資本の負担が増える。
- ホールセール銀行:数量 3,100(2025年の法人顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。市場業務・決済手数料も換算して含める)→ 売上 174 億ドル・営業利益 25 億ドル。法人融資のシェアと決済手数料の取り分が減る。
倍率:k8.25%、有形自己資本ベースのROE約10.1%、堀の残存割合1/2からRONIC約9.2%。g2.75%は物価3.5%から実質市場・シェア・収益単価の劣化0.75%を差し引いたもの。終期純利益ベースの正当化PER上限は約13.1倍だが、信用費用と預金調達の競争が続くため、その約86%の11.3倍を採用した。中立より低い倍率で、財務の帳簿価値に合わせて引き上げていない。
確率:高い預金金利と信用費用が同時に利益を圧迫する展開は、成熟した欧州銀行では十分ありうる。顧客基盤は残るが高い資本効率が崩れる道として23%を与えた。
悲観 11% 悲観:預金の調達優位を失い、低収益銀行になる 利益 51 億ドル · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 20.70 ドル594 億ドル
顧客が金利を比較して預金を頻繁に移すようになり、INGの低費用型モデルだけでは安い資金を維持できなくなる。オランダでは住宅ローンの新規獲得シェアが長く低下し、ドイツでは預金と投資取引の一部をネオバンクに奪われる。ベルギーでも大手競合に顧客を取られる。給与受取と決済の仕事は残るが、顧客との関係が利益を生む強い堀ではなくなる。
ポーランドなどの成長市場でも競争と信用事故が重なり、利益率は低下する。ホールセール銀行は法人融資と為替・決済の一部を競合に失い、低採算の資産を抱える。さらに長い景気後退と規制資本の積み増しが重なり、期間中の利益が何度も減少する。10年間の純利益累計410億ドルは、期首と期末を単純につないだ額より約203億ドル少ない。これは谷の年度に信用損失と整理費用が集中するためである。
2035年の純利益は51.2億ドルまで減少し、自己資本785億ドルに対するROEは約6.5%となる。資本コストを下回るので、銀行が保持する利益は額面ほどの価値を生まない。株主還元は約209億ドルに絞られ、規制上の資本維持を優先する。倒産に近い前提ではなく、銀行として存続しながら低収益に定着する筋書きである。
- オランダ個人銀行:数量 3,950(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.04(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。名目残高への物価上昇分を含み、預金利息と貸倒は利益率で差し引く)→ 売上 160 億ドル・営業利益 24 億ドル。住宅ローンのシェアが低下し、安い預金の獲得力を失う。
- ベルギー個人銀行:数量 1,930(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 98 億ドル・営業利益 6 億ドル。競合に預金・融資の一部を奪われる。
- ドイツ個人銀行:数量 2,850(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.04(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 124 億ドル・営業利益 13 億ドル。比較サイトと金融アプリによって顧客資金と利ざやが流出する。
- その他の国の個人銀行:数量 3,300(2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.06(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数)→ 売上 183 億ドル・営業利益 16 億ドル。成長市場でも信用損失と規制負担が増え、シェアが下がる。
- ホールセール銀行:数量 2,600(2025年の法人顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル)× 価格 0.05(実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。市場業務・決済手数料も換算して含める)→ 売上 133 億ドル・営業利益 17 億ドル。国際融資・決済の採算が悪化し、企業顧客の一部を失う。
倍率:k8.25%に対し、有形自己資本を元手とする2035年ROEは約6.7%で資本コストを下回る。この場合、利益を留保しても超過価値を生まないのでPERの上限は1/k=約12.1倍となる。g1.0%は10年後以降もシェアを失い、実質数量の減少が物価上昇の大半を打ち消す想定。信用収益の質を考えて11.6倍とした。時価総額は51.2×11.6=593.92億ドルで、現在の自己資本583.7億ドルをわずかに上回る。帳簿額は必ず換金できる床ではないが、今回は破綻に近い想定ではないため依頼の保守的な床を下回らせていない。
確率:預金流出、長い信用不振、国際業務の採算低下、規制強化が重なる構造的な敗北である。銀行免許は存続しても優良性が失われる道として11%を残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
オランダ個人銀行
住宅ローン、預金、給与受取、決済、中小企業金融が中心。既存顧客との複数商品の関係と、新規住宅ローン獲得が収益の柱である。
| 数量2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル | 価格実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。名目残高への物価上昇分を含み、預金利息と貸倒は利益率で差し引く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,388 | 0.04 | 155 | 31 |
| 10 年後 中立 | 4,830 | 0.05 | 235 | 48 |
取り方:2025年20-Fの顧客貸出1792億ユーロと預金2091億ユーロを合算し、基準換算1ユーロ=1.13ドルで4388億ドルとした。部門の税引前利益27.73億ユーロは約31.3億ドル。粗収入は全社factsの粗収入定義に合わせた推定154.5億ドルであり、会社公表の調達費控除後の部門純収益とは異なる。粗収入を残高で割った係数が0.0352である。オランダ中央銀行による2025年末の国内住宅ローン市場は約8900億ユーロ。INGの国内住宅ローン残高は約1268億ユーロで約14%に相当し、新規貸出シェアは2021年10.3%から2025年には約17%へ上昇した。競合はラボバンクとABNアムロ。市場規模はhttps://www.dnb.nl/en/statistics/dashboards/residential-mortgages/size-and-breakdown-of-the-mortgage-market/ 、部門値はhttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1039765/000162828026011979/ing-20251231.htm 。
ベルギー個人銀行
ベルギーとルクセンブルクの預金、住宅ローン、個人・中小企業向け融資、決済を扱う。安定した顧客残高を持つが、国内大手との価格競争が厳しい。
| 数量2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル | 価格実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,222 | 0.04 | 100 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,355 | 0.06 | 139 | 11 |
取り方:20-Fの顧客貸出1001億ユーロと預金965億ユーロから実質基準残高2222億ドルを得た。税引前利益6.44億ユーロは約7.3億ドル。粗収入99.5億ドルと係数0.0448は全社の粗収入定義にそろえた推定であり、公表の部門純収益26.74億ユーロそのものではない。2026年のベルフィウス資料による国内銀行総資産シェアはKBC約20%、BNPパリバ・フォルティス約19%、ベルフィウス約14%、ING約13%。融資と預金を個別に計ったシェアではなく、市場地位の参考値として用いた。
ドイツ個人銀行
オンライン中心の預金、住宅ローン、消費者ローン、証券取引、投資サービス。約1,000万人の顧客基盤と比較的低い店舗費用が特徴である。
| 数量2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル | 価格実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,100 | 0.04 | 119 | 17 |
| 10 年後 中立 | 3,750 | 0.05 | 195 | 29 |
取り方:20-Fの部門別顧客貸出1166億ユーロと預金1577億ユーロから3100億ドルとした。部門税引前利益14.57億ユーロは約16.5億ドル。粗収入119.4億ドルは公表の純収益29.91億ユーロとは異なる推定値。現地INGは2025年末に1,000万人超の顧客を持ち、ドイツ銀行・ポストバンク、貯蓄銀行、協同組合銀行、DKB、N26と競う。ドイツの家計預金市場は約2.7兆ユーロ規模であり、INGの預金残高を単純比較すると5%台後半となるが、法人預金と対象範囲が一致しないため正式シェアとはしない。現地資料はhttps://www.ing.de/ueber-uns/unternehmen/investor-relations/investor-relations-en/ 。
その他の国の個人銀行
ポーランド、スペイン、イタリア、オーストラリアなどの住宅ローン、預金、決済、個人・法人金融。西欧の成熟市場と成長余地のある市場を含む。
| 数量2025年の顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル | 価格実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,410 | 0.05 | 171 | 19 |
| 10 年後 中立 | 4,560 | 0.07 | 299 | 37 |
取り方:20-Fの部門貸出1284億ユーロと預金1734億ユーロの合計を換算した。部門税引前利益16.80億ユーロは約19.0億ドル。全社factsに整合する粗収入推定は170.5億ドル。市場の一例として2025年のポーランドではINGバンク・シロンスキの貸出シェアが11.1%、預金シェアが10.0%で、競合はPKO BP、ペカオ、mBankである。ポーランド市場だけで全地域の数量を代表させず、各国の残高成長を合算した実質数量とする。2026年7月発表のシンギュラー・バンク約40%出資は未完了のため現在の数量・利益に含めない。
ホールセール銀行
国際企業への融資、資金管理、貿易金融、決済、外国為替、金融市場業務。融資の残高と手数料を組み合わせて稼ぐ。
| 数量2025年の法人顧客貸出残高と顧客預金残高の合計を基準とする実質残高、億ドル | 価格実質残高1ドル当たりの年間粗収入換算係数。市場業務・決済手数料も換算して含める | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,251 | 0.05 | 153 | 30 |
| 10 年後 中立 | 3,900 | 0.06 | 246 | 37 |
取り方:20-Fのホールセール部門貸出2031億ユーロ、顧客預金846億ユーロを用いて3251億ドルとした。税引前利益26.24億ユーロは約29.7億ドル。粗収入153.1億ドルは全社factsの売上定義との整合を取った推定であり、公表部門純収益70.09億ユーロと混同しない。世界の法人金融市場は大きいが、融資、為替、貿易金融、決済を一つの市場にまとめた公式シェアはない。BNPパリバ、HSBC、ドイツ銀行、JPモルガンなどと商品別に競う。5部門の基準税引前利益合計103.8億ドルに本社・会計上の調整約−1.9億ドルを加えると、添付factsの営業利益101.9億ドルに概ね一致する。
リスクと懸念
預金流出と資金調達コスト
INGの貸出残高が伸びても、預金に払う利息が同じ速さで増えるなら利益は伸びない。ドイツではデジタル銀行や証券アプリが顧客に高い金利を提示でき、オランダでも住宅ローンの借換え時には価格競争が強い。預金金利の上昇と貸出利回りの低下が重なると、資産の規模が拡大しても純金利収益は減る。預金の流出率と平均調達コストを合わせて監視する必要がある。
信用循環と不良債権
住宅ローン、消費者ローン、法人融資は景気後退で同時に傷む可能性がある。2026年4〜6月期の信用費用は低いが、その水準を10年間の平均にしてはいけない。失業率が上がり、商業用不動産や企業の資金繰りが悪化すれば、損失引当の増加だけでなく新規融資の抑制にもつながる。銀行の利益は不況の年度に急減し、回復に複数年を要する場合がある。
欧州の資本規制と還元制限
CET1比率は2026年4〜6月期に13.1%である。銀行の資本規制や住宅ローンのリスクウエートが厳しくなれば、同じ融資残高を維持するためにより多くの資本を必要とする。帳簿上の純利益が増えても、株主へ返せる金額が増えないことがある。資本の余裕が縮む局面で過大な自社株買いを続ければ、景気後退時に増資や減配を迫られる可能性がある。
AIと金融アプリによる顧客接点の変化
INGは人月で受託開発を売る会社でも、席数に応じて業務ソフトを売る会社でもないため、AIエージェント代替の指定類型には直接該当しない。融資の信用判断、預金の保全、決済の法的責任は10年後も金融機関に残る。ただしAIエージェントが顧客に有利な預金金利や住宅ローンを自動で探し、口座の乗換えを容易にすれば、INGが持つ顧客接点の価値は低下する。事務費の削減益だけを数え、競争による手数料低下を無視しないことが重要だ。
ロシア撤退と地政学
2026年4月にロシア銀行事業の売却契約が解除された。会社は撤退方針を維持するが、規制当局の承認と取引相手の制約によって時期は読みにくい。以前の売却計画ではCET1比率への影響が約7ベーシスポイントと見積もられていた。金融制裁、ロシア国内の司法判断、他国への波及によって追加損失が出る可能性がある。単発の費用より、経営資源と資本が長く拘束される危険を警戒する。
買収の資本配分と少数株主の取り分
2026年7月に発表されたスペインのシンギュラー・バンクへの約40%出資は、富裕層運用の手数料を増やす機会である。ただし完了とその後の収益性は確定していない。規制上の資本を使って高値で金融機関を買えば、預金基盤が増えても株主価値を損なう。また、オランダの支配権取得に対する防衛の仕組みは経営の安定に役立つ半面、少数株主が買収提案の利益を受け取りにくくする可能性がある。
会計上の利益と株主に帰属する価値の差
銀行の売上は、粗い受取利息と調達利息控除後の純収益で大きく数字が変わる。INGにはIFRS-EUとIFRS-IASBの金融商品処理差もあり、決算の利益系列を混ぜると収益性を誤って評価しかねない。この分析では添付factsの利益と自己資本を固定の基準とし、部門資料は数量と採算の証拠に用いた。さらに持分の一部を保有する子会社の少数株主利益は親会社の株主に帰属しないため、利益の積み上げでは除いている。
今後の分かれ目
- 2027年の純収益が会社目標を超え、手数料が増え、有形自己資本利益率16%超が持続したら
- 貸出残高だけに頼らない収益構造への転換が進んだ証拠となる。ドイツとホールセールの利益率を見直し、やや楽観の確率を高める。ただし一四半期の利益だけでは判断しない。
- オランダの住宅ローン新規獲得シェアが17%前後を維持し、預金コストも競合より低く保たれたら
- 顧客獲得力が利益を伴うことを確認できる。オランダ部門の実質残高成長と利益率を引き上げ、堀が広がる筋書きを重くする。
- ドイツの預金が継続的に流出し、顧客当たりの手数料も減り始めたら
- 低費用型の銀行モデルだけでは競争に勝てない可能性が高まる。ドイツ部門の実質数量と粗収入係数を下げ、やや悲観の確率を高める。
- 信用費用が複数四半期にわたって会社の長期的な平常水準を超え、CET1比率も低下したら
- 利益だけでなく還元余力も悪化する。純利益の期間累計と正味の還元を同時に引き下げ、悲観側の確率を再評価する。
- シンギュラー・バンクへの出資が承認され、富裕層運用の追加手数料と資本効率が確認できたら
- 成立後の実績だけをその他の国の事業へ加える。買収代金と規制上必要な資本を差し引いても収益が増える場合に限り、長期のオーナー利益を上方修正する。
- ロシアからの撤退で当初想定を大幅に超える損失が確定したら
- 一時損失を10年間の累計利益と自己資本に反映する。損失が将来の資本還元を制約するなら、当面の配当と自社株買いの見通しも引き下げる。
- INGの資本配分方針が持続的利益の50%還元から、大型買収を優先する方向へ変わったら
- 買収対象の投下資本利益率と必要資本を再検証する。資本コストを上回る増分利益が見込めない場合は、成長率を上げず正味の還元を減らして価値を測り直す。
見ておくもの
- 四半期の顧客貸出純増と預金純増、それぞれの国・部門別内訳
- 預金調達コスト、貸出金利、純金利収益の推移
- ドイツの主要顧客数、複数商品利用率、証券取引・運用商品の手数料
- オランダ住宅ローンの新規シェアと残高シェア
- ベルギーの市場シェアと、ポーランドの貸出・預金シェア
- ホールセール銀行の法人融資残高、決済手数料、貸倒引当
- CET1比率、規制上必要な最低資本、配当と自社株買いの正味額
- 2027年の会社目標と実績、ロシア撤退、シンギュラー・バンク出資の完了状況
倍率と資本コストの決め方
数量は2025年20-Fの五部門別貸出・預金残高を出発点とし、2025年の添付factsの粗売上696.9億ドルと営業利益101.9億ドルに整合するよう、粗収入換算係数と本社調整を明示した。将来の数量は実質残高、価格は物価による名目残高増加と実質利ざやを合わせた係数であり、金利そのものが物価で1.41倍になるという意味ではない。中立の純利益106億ドルと自己資本850億ドルから事業ROEを測り、k8.25%、g3.5%、RONIC約10.5%に基づく正当化PER上限約14.5倍の93%を採用した。現行のPER・PBR、同業の市場倍率から逆算していない。五つの時価総額は純利益と倍率の積に一致する。自己資本も期首583.7億ドルに累計利益を足し、正味の還元を引いた額に一致する。悲観の時価総額593.92億ドルは現在の自己資本583.7億ドルを上回る。基準時価総額913.4億ドルに対する割引後の期待価値は約1,029.5億ドルで、差は+12.7%、判定はやや割安である。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コスト8.25%=米国株共通の基本8.0%+quality0.25%。銀行の資金調達債務を一般企業の純負債として追加の利払い負担にしない。JPモルガンの7.75%より高く、シティグループの8.5%より低いのは、欧州の低費用型個人銀行としての強みはあるが、預金価格競争と国別規制が利益の安定性を制限するため。ロシア撤退や個別の不祥事は資本コストへ重ねず、筋書きと確率に反映する。