結論
ハートフォード(The Hartford)は、米国の企業向け損害保険(小口から中堅・大企業・専門保険)、個人向け損害保険(自動車・住宅)、団体保険(生命・障害・休業)の 3 つを柱とする保険会社である。2025 年の書込保険料は事業保険 145 億ドル、個人 37 億ドル、団体保険 64 億ドル、core 利益は 38.5 億ドル、core ROE は 19.4%。2026 年 4〜6 月期の core 利益は 9.45 億ドルと横ばい(直近 12 か月の core ROE 18.7%)で、運用収益は前年比 +22% と増えたが、事業保険の複合損害率は 91.4 と前年の 87.0 から悪化し、中堅・大企業は一般賠償と商業自動車の準備金積み増しで 101.9 になった。2026 年 6 月には投資信託のハートフォード・ファンズをウェリントンへ売却すると発表し、保険に絞る。
強みは小口企業向けの引受と代理店網、団体障害保険の規模、低利の債券が入れ替わって積み上がる運用益。弱みは中堅・大企業の引受のぶれ、縮む個人保険、団体障害の損害率の悪化。
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、保険料は物価並みに伸びると見る。中立の筋書きは、10 年で純利益が年 4% 弱、ROE 約 18%・g 3.25%・資本コスト 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)から正当化 PER 16.3 倍を出し、その 7.8 割の 12.6 倍に置いた。今の PER・PBR には寄せていない。確率で加重した 10 年後の価値は 519 億ドルで、今の時価総額 369 億ドルに対し +40%(総合で「割安」)。資本コストの低さと準備金の質に敏感な点は anchoring_check とリスクに書いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、損保の価値は「預かった保険料(フロート)を、費用の少ない資金として長く運用できるか」で決まる。ハートフォードは引受で利益を出しながら、640 億ドルの運用資産が毎年利息を生む。2025 年の core ROE は 19.4% と高く、小口企業向けの引受と団体障害の規模という二つの堀がある。
10 年後も事業は存在し、保険料は物価並みに伸びる。ただし伸びは遅い。市場の数量は実質で年 1% 程度、価格は物価に届かず(軟調な料率・精緻化・自動運転)、10 年で保険料は 1.5 倍前後にとどまる。オーナー利益は純利益から伸びに要る資本(保険料に比例)を引いたもので、伸びが遅いので多くを返せる。ROE 18% で g 3% なら純利益の 8 割以上を返せる計算になる。
資本配分は良い(買収より自社株買い、ファンズの売却)。一方で、準備金の積み増しを 2026 年に出したことは、引受規律の傷になりうる。経営陣は影響は小さいと説明するが、一般賠償と商業自動車は長い年数で請求が出るため、確信は完全ではない。わかりにくい部分は準備金の質と団体障害の損害率で、ここは確信度を下げて悲観の確率に反映した。
安全域は、悲観でも還元を合わせて今の時価総額の 87% に留まる点にある。倍率は正当化 PER の 7.8 割に置いたが、結果は資本コストと準備金の質に敏感であり、悲観の確率と深さを厚く置いた。
何で稼ぐ会社か
ハートフォードは 3 つの事業で稼ぐ。第一に事業保険(2025 年の書込保険料 145 億ドル、前年比 +8%)。小口企業向け(約 60 億ドル。包括保険・労災・自動車を代理店経由で売る)、中堅・大企業向け、海外・専門保険(グローバル・スペシャルティ。2019 年に買ったナビゲーターズ由来の海上・専門賠償など)に分かれる。2026 年 4〜6 月期は小口の書込 +7%・複合損害率 85.9、中堅・大企業は複合損害率 101.9(前年 86.6、underlying 95.3)、グローバル・スペシャルティは 89.5。
第二に個人保険(37 億ドル)。自動車と住宅ほかで、AARP 会員向けの販売が中心。2026 年 4〜6 月期の書込保険料は −7%、複合損害率は 90.1 と良いが、契約が減っている。更新料率は自動車 +5.5%、住宅 +10.4%。
第三に従業員給付(団体生命・障害・休業。定期更新の保険料 64 億ドル)。雇用主が加入し、長期障害の保険料残高は 21.5 億ドルで首位。2026 年 4〜6 月期の core 利益率は 7.4% と前年の 9.2% から下がり、障害の損害率は 74.8%(前年 68.5%)に悪化した。
利益は 2 つの源から出る。保険料から保険金・費用を引いた引受益と、預かった保険料の運用益(2025 年の純投資収益は税引き前 29.1 億ドル、2026 年 4〜6 月期は 8.0 億ドルで +22%)。大災害損失は 2025 年が 7.5 億ドル(ロサンゼルス山火事 3.05 億ドルを含む)、準備金の好転は 3.6 億ドル。
2026 年 6 月、投資信託・ETF のハートフォード・ファンズ(運用資産 約 1,600 億ドル)をウェリントンへ売却すると発表した(完了予定は 2027 年 1〜3 月期)。以後は継続事業から外れる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第一に小口企業向けの引受の質と販売網。独立代理店との関係と、事業所ごとの損害データの蓄積があり、小口の複合損害率は 85〜89 の範囲を保ち、書込も市場を上回って伸びる(2026 年 4〜6 月期 +7%)。経営は E&S(認可外保険)を小口の次の成長の場と位置づけている。第二に団体障害保険の規模。長期障害の保険料残高で首位、継続率は 90% 超で、雇用主との長い契約が切り替えの費用になる。第三に資本の質。2025 年の core ROE 19.4%、自己資本 約 190 億ドル、負債比率は低く、2026 年 8 月からの新しい自社株買い枠は 42 億ドルと 27% 増えた。
価格を決める力は中くらいで、料率サイクルの外には出られない。2026 年は財物の料率が下がり、中堅・大企業の複合損害率は 101.9 まで悪化した。経営陣は将来の損害トレンドの前提は変えないと説明するが、一般賠償(超過賠償・アンブレラ)と商業自動車で 2023〜24 事故年の積み増しが続いた点は、準備金の質への疑いを残す。
弱いのは、個人保険が AARP 頼みで縮んでいること(シェア 1% 未満)、団体障害の損害率の悪化、そして過去(2008〜09 年)に救済資本を受けた財務の履歴である。今の財務は別物だが、運用資産の評価損(AOCI は損失で拡大中)と LP の収益のぶれが資本に効く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
損保は今、料率の山を越えて下りに入る局面にある。2023〜25 年の値上げと大災害の少なさで、業界の複合損害率は 10 年超で最良に近づいた。2026 年は財物の保険料が下がり(再保険料の下落と競争)、賠償責任は約 +7% と強さを保ち、商業自動車・超過賠償は硬化が続く。業界ノートは中立で 3 年間の保険料 年 +2%、その後に硬化が戻り 10 年平均 年 +4% と置く。
ハートフォードの小口の競合はトラベラーズ、チャブ、リバティ・ミューチュアルと新規参入のネクスト・インシュアランスなど。経営は「SME(中小企業)市場は競争が増えている」と述べている。中堅・大企業はチャブ、トラベラーズ、AIG、W.R. バークレーなどと料率サイクルに沿って競い、利益率の差は引受の選別の差である。個人自動車はステート・ファーム、プログレッシブ、GEICO(バークシャー)、オールステートの寡占で、ハートフォードは AARP という独自の入口を持つが数量は縮んでいる。住宅は大災害の多い地域の引受を絞り、料率を上げて利益を守る局面。
団体保険は長期障害でハートフォード・メットライフ・リンカーン・アンムが拮抗し(保険料残高 20〜21.5 億ドル)、新規販売は 2025 年に 4 社とも減った。賃金(物価)に連動して保険料が伸びる市場で、損害率は障害の請求の増加で悪化している。
運用益は長期金利 5% の世界で積み上がる。ハートフォードの投資資産は 640 億ドル、2026 年 4〜6 月期の税引き前利回りは 4.9%(LP 除く 4.7%)で、低利の債券が満期に入れ替わるたびに利回りが上がる。一方、金利が高止まりするため債券の含み損(AOCI)はすぐには消えない。
資本政策と M&A
資本政策は「成長に要る分以外は返す」である。2025 年は 22 億ドルを返し(自社株買い 16 億ドル、配当 5.9 億ドル)、2026 年 4〜6 月期は 6.15 億ドル(自社株買い 4.5 億ドル、配当 1.65 億ドル)。新しい自社株買い枠は 42 億ドル(2026 年 8 月〜2028 年末、前の枠より 27% 増)。
M&A は 2019 年のナビゲーターズ買収(専門保険)が最後の大型で、近年は買収より自社株買いに回している。2026 年 6 月にはハートフォード・ファンズをウェリントンへ売却すると発表した。現金 3 億ドルに加え、以後約 7 年、合算事業の税引後現金の 95% を四半期ごとに受け取る(会社は現在価値を約 19 億ドルと説明。10-Q は 21 億ドルで 5 年で打ち切る条項に触れている)。完了は 2027 年 1〜3 月期、完了前配当 約 1.7 億ドル、完了時の税引後損 約 1.5 億ドル。運用資産が大きな会社を保険に絞る方向で、資本配分の規律は高い。
TOB・再編の可能性は低い。時価総額 約 370 億ドルは大きく、同業のチャブ・トラベラーズとの合併は反トラストと文化の面で現実的でない。小規模な専門保険・MGA(引受代理店)の買収は残る。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 9.2 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の利益は山の途中にすぎず、運用益と小口と団体保険がまだ伸びる。運用収益は 2026 年 4〜6 月期に前年比 +22%(LP 収益 1.14 億ドルを含む)、LP を除いても利回りは 4.7%、低利の債券が満期に入れ替わるたびに利回りが上がる。小口は市場を上回って伸び(書込 +7%)、複合損害率は 85.9 まで良い。経営は E&S を小口の次の成長の場と位置づけ、中小企業向けで認可外保険を扱えれば、料率の自由度が高い分だけ利益率が上がる。団体保険は新規販売 +31% で、継続率は 90% 超。長期障害の保険料残高は首位で、損害率の悪化は価格の見直し(契約更新)で戻せる。個人は料率を上げて採算を戻した(住宅の更新料率 +10.4%)。ファンズの売却で資本を保険に集め、自社株買い枠も 42 億ドルに増えた。中堅・大企業の準備金積み増しは影響が小さく、将来の損害トレンドは変えないと経営は説明している。資本コストが低い世界(実質 3% 前後)では、ROE 19% の優良な損保の倍率は、利益ベースでも PER 25 倍に近づく。
慎重な見方
今の利益は、軽い大災害(2026 年の件数)と山の料率が重なった結果で、そのまま続かない。2026 年 4〜6 月期の事業保険の複合損害率は 91.4 と前年の 87.0 から 4.4 ポイント悪化し、中堅・大企業は 101.9(underlying 95.3)。一般賠償・商業自動車の準備金の積み増しは「弁護士の関与・タイムリミット請求の増加」という社会的インフレで、同じことが次の事故年にも広がる恐れがある。準備金の好転は 2025 年の 3.6 億ドルから 2026 年 4〜6 月期は 1.1 億ドルまで細っている。団体保険の core 利益率は 9.2% から 7.4% に下がり、障害の損害率は 74.8% と悪化した。個人は書込 −7% で縮み、大災害の傷(2025 年のロサンゼルス山火事 3.05 億ドル)を再び受ければ住宅の利益が消える。運用益の +22% は LP の収益 1.14 億ドル(前年 0.13 億ドル)の増加に大きく依存しており、一過性である。核の ROE 19% は債券の含み損(AOCI)で自己資本が小さく見えている面もある。 倍率は k − g の差が 4% 台と小さく、わずかな前提の変化で大きく動く。
どちらに重みを置いたか
事業の質は小口と団体障害の規模で強気がやや優勢だが、中堅・大企業の準備金積み増し、団体障害の損害率の悪化、縮む個人保険は慎重な見方が当たっている。確率は 10 年を中立 34%・やや弱気 24%・弱気 12% と、トラベラーズ・チャブより悲観側へ少し寄せた。弱気は 2008〜09 年に救済資本を受けた履歴を踏まえ、同業より厚く置いている。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7.8 割で、結果は 10 年で +40%、総合は「割安」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 231.41 ドル632 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 123.12 ドル337 億ドル)。 今の値に割り戻すと 187.57 ドル513 億ドル、今との差 +34.5%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 376.03 ドル1,028 億ドル | 140.07 ドル383 億ドル | +270.1% | +14.0% | 41.29 ドル113 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 307.24 ドル840 億ドル | 135.68 ドル371 億ドル | +217.6% | +12.3% | 97.44 ドル266 億ドル |
| 中立 | 34% | 253.06 ドル692 億ドル | 133.11 ドル364 億ドル | +176.9% | +10.7% | 131.30 ドル359 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 171.24 ドル468 億ドル | 123.97 ドル339 億ドル | +111.7% | +7.8% | 70.85 ドル194 億ドル |
| 悲観 | 12% | 54.96 ドル150 億ドル | 58.84 ドル161 億ドル | −18.4% | −2.0% | 13.66 ドル37 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 231.41 ドル632 億ドル | 123.12 ドル337 億ドル | +154.2% | +9.8% | 354.53 ドル969 億ドル |
今の株価時価総額 139.45 ドル381 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:小口の E&S と団体保険で年 6% 台、優良さが広がる 利益 70 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 376.03 ドル1,028 億ドル
10 年で小口は市場の数量 +15%・シェア +25%(E&S 商品と直販・提携の拡大で取る)・価格 1.45 倍で保険料 125 億ドル、中堅・大企業はシェア +5%・価格 1.40 倍で 142 億ドル、団体保険は新規販売の好調でシェア +10% の 111 億ドル。個人は縮小を止め、住宅の値上げで 59 億ドル前後。運用資産 830 億ドル、利回り 5.4% で運用益 45 億ドル。純利益 70 億ドル(年 6% 台)、自己資本 369 億ドル(ROE 19%)。競合のトラベラーズ・チャブと引受で並び、小口の質では上に立つ。ファンズ売却の受取(税引き後 約 21 億ドル)は 7 年で終わり、10 年目の利益には入れない。
- 事業保険・小口(スモール・ビジネス):数量 173(保険契約の件数相当(万件))× 価格 7,250(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 125 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場数量 +15.0%・シェア +25.0%・価格 ×1.45・利益率 12.5%
- 事業保険・中堅・大企業・スペシャルティ:数量 43.1(保険契約の件数相当(万件))× 価格 32,900(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 142 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場数量 +14.0%・シェア +5.0%・価格 ×1.40・利益率 10.0%
- 個人自動車(米国):数量 94.1(保険契約の件数相当(万件))× 価格 2,991(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア -5.0%・価格 ×1.38・利益率 9.0%
- 個人住宅ほか(米国):数量 89.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 3,449(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア +0.0%・価格 ×1.55・利益率 9.0%
- 従業員給付(団体生命・障害・休業):数量 1,355(加入者数相当(万人))× 価格 817(1 人あたり年間保険料(ドル))→ 売上 111 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア +10.0%・価格 ×1.40・利益率 12.0%
- ハートフォード・ファンズ(売却予定):数量 0.0(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.01(運用報酬率(運用資産に対する収益))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却(2027 年 1〜3 月期に完了予定)。数量 0。受取は調整に入れる
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 830(損保の運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 45 億ドル・営業利益 45 億ドル。運用資産 × 利回り
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から −1.25% の 3.25%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 19%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 70.1 ÷ 自己資本 369.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 13.6%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 16.6 倍(上限 = 純利益 70.1 億ドル × これ = 1165 億ドル)。これの 0.9 割(14.7 倍)に置いた。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:小口の E&S 展開が成功し、団体保険のシェアも取り戻す筋書きは 1 割弱。
やや楽観 22% やや強気:小口のシェアが伸び、高い ROE が保たれる 利益 62 億ドル · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 307.24 ドル840 億ドル
10 年で小口は市場 +14%・シェア +18% で保険料 115 億ドル、中堅・大企業は選別で利益率を保ち 135 億ドル、団体保険は 104 億ドル。個人自動車は 12% 縮むが住宅の値上げで個人は 54 億ドル前後。運用資産 800 億ドル、利回り 5.3% で運用益 42 億ドル。純利益 62 億ドル(年 5% 台)、自己資本 342 億ドル(ROE 18%)。強気の見方が通りやすい余地を残すが、小口の競争(新規参入と E&S)と団体障害の損害率が上値を抑える。10 年目の利益は年 5% 台の伸びで、競合のトラベラーズと同程度の収益力を保つ。小口は E&S への展開が途中で止まらず、中堅・大企業は 2026 年の積み増し後に選別を厳しくして利益率を 9% に戻す。団体保険は障害の値上げが通って利益率 11% を保つ。
- 事業保険・小口(スモール・ビジネス):数量 161(保険契約の件数相当(万件))× 価格 7,100(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 115 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場数量 +14.0%・シェア +18.0%・価格 ×1.42・利益率 11.5%
- 事業保険・中堅・大企業・スペシャルティ:数量 41.5(保険契約の件数相当(万件))× 価格 32,430(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 135 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場数量 +13.0%・シェア +2.0%・価格 ×1.38・利益率 9.0%
- 個人自動車(米国):数量 87.1(保険契約の件数相当(万件))× 価格 2,926(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア -12.0%・価格 ×1.35・利益率 8.5%
- 個人住宅ほか(米国):数量 86.9(保険契約の件数相当(万件))× 価格 3,293(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 29 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア -3.0%・価格 ×1.48・利益率 8.5%
- 従業員給付(団体生命・障害・休業):数量 1,282(加入者数相当(万人))× 価格 811(1 人あたり年間保険料(ドル))→ 売上 104 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場数量 +11.0%・シェア +5.0%・価格 ×1.39・利益率 11.0%
- ハートフォード・ファンズ(売却予定):数量 0.0(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.01(運用報酬率(運用資産に対する収益))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却(2027 年 1〜3 月期に完了予定)。数量 0。受取は調整に入れる
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 800(損保の運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 42 億ドル・営業利益 42 億ドル。運用資産 × 利回り
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から −1.25% の 3.25%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 18%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 62.2 ÷ 自己資本 342.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 13.2%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 16.4 倍(上限 = 純利益 62.2 億ドル × これ = 1021 億ドル)。これの 0.8 割(13.5 倍)に置いた。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:小口が市場を上回って伸び、中堅・大企業は選別で利益率を保つ筋書きは 2 割強。
中立 34% 中立:優良な損保・団体保険として年 4% 弱で伸びる 利益 55 億ドル · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 253.06 ドル692 億ドル
10 年で小口は市場 +13%・シェア +12%・価格 1.38 倍で保険料 105 億ドル、中堅・大企業は市場 +12%・シェア −3%・価格 1.35 倍で 124 億ドル(利益率 8%)、団体保険は数量 +10%・価格 1.38 倍で 97 億ドル、個人は自動車がシェア −25% で 21 億ドルまで縮み、住宅ほかを含め個人全体は 50 億ドル弱。運用資産 770 億ドル、利回り 5.2% で運用益 40 億ドル。純利益 55 億ドル(年 4% 弱)、自己資本 311 億ドル(ROE 17.6%)。競合のチャブ・トラベラーズと並ぶ収益力を保ち、小口の質で差をつける。ファンズ売却の分割払いは 7 年で終わり、10 年目の利益には入れない。
- 事業保険・小口(スモール・ビジネス):数量 152(保険契約の件数相当(万件))× 価格 6,900(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 105 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場数量 +13.0%・シェア +12.0%・価格 ×1.38・利益率 10.5%
- 事業保険・中堅・大企業・スペシャルティ:数量 39.1(保険契約の件数相当(万件))× 価格 31,725(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 124 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア -3.0%・価格 ×1.35・利益率 8.0%
- 個人自動車(米国):数量 74.3(保険契約の件数相当(万件))× 価格 2,860(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア -25.0%・価格 ×1.32・利益率 7.5%
- 個人住宅ほか(米国):数量 82.4(保険契約の件数相当(万件))× 価格 3,160(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア -8.0%・価格 ×1.42・利益率 8.0%
- 従業員給付(団体生命・障害・休業):数量 1,210(加入者数相当(万人))× 価格 805(1 人あたり年間保険料(ドル))→ 売上 97 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア +0.0%・価格 ×1.38・利益率 10.5%
- ハートフォード・ファンズ(売却予定):数量 0.0(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.01(運用報酬率(運用資産に対する収益))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却(2027 年 1〜3 月期に完了予定)。数量 0。受取は調整に入れる
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 770(損保の運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 40 億ドル・営業利益 40 億ドル。運用資産 × 利回り
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から −1.25% の 3.25%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 18%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 54.8 ÷ 自己資本 311.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.9%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 16.3 倍(上限 = 純利益 54.8 億ドル × これ = 891 億ドル)。これの 0.8 割(12.6 倍)に置いた。中立:小口と団体保険の質は高く核の ROE も高いが、中堅・大企業の準備金と縮む個人保険を抱えるため、上限の 8 割弱にとどめた
確率:収益の質は高いが、個人の縮小・中堅の競争・団体障害の損害率という弱い所があり、中立は 3 割台前半。
やや悲観 24% やや弱気:中堅・大企業と個人でシェアを失い、ROE は 15% 台へ 利益 40 億ドル · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 171.24 ドル468 億ドル
10 年で小口は価格競争で更新料率が一桁前半に落ち、シェアは横ばいで保険料 87 億ドル。中堅・大企業はシェア −10%・価格 1.28 倍で 107 億ドル(利益率 5%)、団体保険は障害の価格競争で 83 億ドル(利益率 8%)、個人自動車は 4 割縮み 16 億ドル。運用資産 720 億ドル、利回り 5.0% で運用益 36 億ドル。純利益 40 億ドル(年 0.8%)、自己資本 256 億ドル(ROE 15.6%)。優良さは崩れないが、今の 19% 台の ROE は戻らない。中堅・大企業の傷が尾を引き、小口も新規参入と競争で伸びが鈍る。団体保険は障害の損害率が下がらず、メットライフ・リンカーン・アンムとの価格競争で取り戻せない。自社株買いは続けるが、ROE の低下で倍率も 25 倍台に下がる。
- 事業保険・小口(スモール・ビジネス):数量 134(保険契約の件数相当(万件))× 価格 6,500(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 87 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場数量 +12.0%・シェア +0.0%・価格 ×1.30・利益率 8.5%
- 事業保険・中堅・大企業・スペシャルティ:数量 35.6(保険契約の件数相当(万件))× 価格 30,080(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 107 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア -10.0%・価格 ×1.28・利益率 5.0%
- 個人自動車(米国):数量 58.3(保険契約の件数相当(万件))× 価格 2,709(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア -40.0%・価格 ×1.25・利益率 5.0%
- 個人住宅ほか(米国):数量 74.8(保険契約の件数相当(万件))× 価格 3,004(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場数量 +10.0%・シェア -15.0%・価格 ×1.35・利益率 5.5%
- 従業員給付(団体生命・障害・休業):数量 1,093(加入者数相当(万人))× 価格 759(1 人あたり年間保険料(ドル))→ 売上 83 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア -8.0%・価格 ×1.30・利益率 8.0%
- ハートフォード・ファンズ(売却予定):数量 0.0(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.01(運用報酬率(運用資産に対する収益))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却(2027 年 1〜3 月期に完了予定)。数量 0。受取は調整に入れる
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 720(損保の運用資産(億ドル))× 価格 0.05(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 36 億ドル・営業利益 36 億ドル。運用資産 × 利回り
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.25%(基本 8.0% + quality +0.25%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 +1% + 価格は物価から −1.25% の 3.25%(中立)で、4% を超えない)・事業の ROE 16%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 40.1 ÷ 自己資本 256.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.0%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 15.7 倍(上限 = 純利益 40.1 億ドル × これ = 628 億ドル)。これの 0.7 割(11.7 倍)に置いた。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:中堅・大企業でシェアを失い、個人は縮小を続け、団体保険も価格競争で利益率が下がる筋書きは、強気より厚い 24%。
悲観 12% 弱気:賠償責任の積み増しと個人の縮小で、もう優良ではなくなる 利益 8 億ドル · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 54.96 ドル150 億ドル
賠償責任の社会的インフレ(弁護士費用・タイムリミット請求)で、2023〜24 事故年の積み増しがその後の事故年にも広がり、準備金の積み増しが数年続く。小口は E&S 勢と新規参入に価格で負け数量が減り 63 億ドル、中堅・大企業は赤字、個人自動車は安全装置・自動運転と直販勢の値下げで 6 割縮み、住宅は大災害で引受不能の地域が広がる。団体保険は雇用の変化と価格競争で利益が薄い。運用資産 580 億ドル、利回り 4.2% で運用益 24 億ドル。純利益 8 億ドル(ROE 5%)、自己資本 165 億ドル。ならした利益では見ず、売れる資産の床で測る。預かった保険料の資産は残るが、もう優良ではない。保険料の縮小で余った資本(自己資本 190 億ドルから 165 億ドルへ)を資産の売却も使って返すため、還元は 161 億ドルと純利益の合計を上回る。
- 事業保険・小口(スモール・ビジネス):数量 110(保険契約の件数相当(万件))× 価格 5,750(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 63 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア -15.0%・価格 ×1.15・利益率 0.0%
- 事業保険・中堅・大企業・スペシャルティ:数量 28.4(保険契約の件数相当(万件))× 価格 26,320(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 75 億ドル・営業利益 −6 億ドル。市場数量 +5.0%・シェア -25.0%・価格 ×1.12・利益率 -8.0%
- 個人自動車(米国):数量 37.8(保険契約の件数相当(万件))× 価格 2,384(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場数量 +5.0%・シェア -60.0%・価格 ×1.10・利益率 -2.0%
- 個人住宅ほか(米国):数量 60.5(保険契約の件数相当(万件))× 価格 2,670(1 件あたり年間保険料(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場数量 +8.0%・シェア -30.0%・価格 ×1.20・利益率 -2.0%
- 従業員給付(団体生命・障害・休業):数量 866(加入者数相当(万人))× 価格 671(1 人あたり年間保険料(ドル))→ 売上 58 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場数量 +5.0%・シェア -25.0%・価格 ×1.15・利益率 3.0%
- ハートフォード・ファンズ(売却予定):数量 0.0(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.01(運用報酬率(運用資産に対する収益))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却(2027 年 1〜3 月期に完了予定)。数量 0。受取は調整に入れる
- 損保の運用(預かった保険料の運用益):数量 580(損保の運用資産(億ドル))× 価格 0.04(利回り(運用収益 ÷ 運用資産))→ 売上 24 億ドル・営業利益 24 億ドル。運用資産 × 利回り
倍率:構造的に負けた筋書き。10 年目の純利益 8.2 億ドルは自己資本 165 億ドルに対し ROE 5% で k を下回るので、価値は稼ぐ力(純利益 ÷ k = 約 100 億ドル)より、縮小しながら資本を返せる床の資産で測る。床は今の自己資本 190 億ドルから、債券の含み損の戻らない分と準備金不足の積み増し、売却の割引を合わせて約 40 億ドル引いた約 150 億ドルで、PBR 0.91 倍。市場の値付けや過去の底からは置いていない。
確率:賠償責任の社会的インフレで準備金の積み増しが続き、個人保険が引受不能に近づく構造的な負けを 12% 置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
事業保険・小口(スモール・ビジネス)
中小企業向けの包括保険(財物・賠償責任・労災・自動車)。独立代理店と直販・提携経由で売る。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 5,000 | 60 | 7 |
| 10 年後 中立 | 152 | 6,900 | 105 | 11 |
取り方:2025 年の事業保険の書込保険料 144.6 億ドルのうち、小口は決算の記述で約 60 億ドル。件数は非開示なので 120 万件相当 × 平均約 5,000 ドルの推定。市場は米国の小口企業向け損保(元受保険料で年 1,000 億ドル台と推定)で、ハートフォードのシェアは数%。競合はトラベラーズ、チャブ、リバティ・ミューチュアル、ネクスト・インシュアランスなど。数量 = 市場の数量(事業所数・賃金・売上の実質増)× シェア。価格は物価 3.5% のもとでも財物の軟化と競争で 3 年 1.08 倍、10 年 1.38 倍とした。
事業保険・中堅・大企業・スペシャルティ
中堅・大企業向けの引受と、海外・専門保険(グローバル・スペシャルティ。ナビゲーターズ由来の海上・専門賠償など)。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 36.0 | 23,500 | 85 | 9 |
| 10 年後 中立 | 39.1 | 31,725 | 124 | 10 |
取り方:2025 年の事業保険の書込保険料 144.6 億ドルから小口 60 億ドルを引いた約 84.6 億ドル(中堅・大企業・グローバル・スペシャルティの合計。内訳は非開示)を、36 万件相当 × 平均約 2.35 万ドルに置いた推定。市場は米国の中堅・大企業向け損保と専門保険(元受保険料で年 3,000 億ドル台と推定)。競合はチャブ、トラベラーズ、AIG、W.R. バークレー、ザ・ハートフォードと同格の大手。数量 = 市場の数量 × シェア。価格は財物の下落と賠償責任の上昇が混ざり 3 年 1.06 倍、10 年 1.35 倍。
個人自動車(米国)
個人向けの自動車保険。AARP 会員向けの販売などが中心で、独立代理店と直販を併用。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 90.0 | 2,167 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 74.3 | 2,860 | 21 | 2 |
取り方:個人保険の書込保険料 37.3 億ドル(2025 年)のうち自動車の内訳は非開示。自動車 19.5 億ドル(90 万台相当 × 平均約 2,170 ドル)、住宅ほか 17.8 億ドルと置いた推定。市場は米国の個人自動車保険(年 3,000 億ドル台)。ステート・ファーム・プログレッシブ・GEICO(バークシャー)・オールステートの寡占の外側にいる小さな存在で、シェアは 1% 未満。2026 年 4〜6 月期は個人全体の書込保険料が −7%。
個人住宅ほか(米国)
個人向けの住宅保険・傘保険など。大災害の影響が最も大きい。
| 数量保険契約の件数相当(万件) | 価格1 件あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 2,225 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 82.4 | 3,160 | 26 | 2 |
取り方:個人保険の書込保険料のうち住宅ほか 17.8 億ドルを、80 万件相当 × 平均約 2,225 ドルに置いた推定(内訳非開示)。市場は米国の住宅保険(年 1,500 億ドル前後と推定)。更新料率は 2026 年 4〜6 月期で +10.4%、価格は再保険費用と再調達費の上昇で 3 年 1.18 倍、10 年 1.42 倍とした。数量は大災害の多い地域の引受を絞るので減らす。
従業員給付(団体生命・障害・休業)
雇用主が従業員に提供する団体の生命保険・障害保険・休業補償・ほか。
| 数量加入者数相当(万人) | 価格1 人あたり年間保険料(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,100 | 584 | 64 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,210 | 805 | 97 | 10 |
取り方:2025 年の従業員給付の保険料(定期更新の部分)64.2 億ドルを、加入者 1,100 万人相当 × 平均約 584 ドルに置いた推定(加入者数は非開示)。市場は米国の団体生命・障害・休業(年 800〜1,000 億ドルと推定)。長期障害の保険料残高は 2025 年にハートフォードが 21.5 億ドルで首位、メットライフ 20.7、リンカーン 20.2、アンム 20.1(Milliman)。数量 = 市場(雇用者数と賃金)× シェア。価格は賃金に連動して上がるが、障害の損害率の悪化で値上げを迫られ競争も強いので 3 年 1.08 倍、10 年 1.38 倍。
ハートフォード・ファンズ(売却予定)
投資信託・ETF の運用(運用資産約 1,600 億ドル)。2026 年 6 月にウェリントンへの売却を発表、2027 年 1〜3 月期に完了予定。
| 数量平均運用資産(億ドル) | 価格運用報酬率(運用資産に対する収益) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,450 | 0.01 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.01 | 0 | 0 |
取り方:2025 年のファンズの収益は運用資産 1,450 億ドル(日次平均)× 報酬率約 0.76% = 約 11 億ドル、core 利益 2.0 億ドル(税引き後。税引き前 約 2.5 億ドル)。売却後は継続事業から外れるので、3 年後・10 年後の数量は 0 とし、売却の受取(完了時の現金 3 億ドルと 約 7 年の分割払い)は筋書きの文章と還元で扱う。
損保の運用(預かった保険料の運用益)
運用資産(社債・ローン・株式・ファンドなど)の利息・配当・収益(税引き前)。従業員給付の運用益は従業員給付の利益に含め、ここには数えない。
| 数量損保の運用資産(億ドル) | 価格利回り(運用収益 ÷ 運用資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 0.05 | 23 | 23 |
| 10 年後 中立 | 770 | 0.05 | 40 | 40 |
取り方:2025 年の純投資収益 29.1 億ドル(税引き前)のうち事業保険 19.7 億ドル・個人 2.6 億ドル・その他の損保 約 1.1 億ドルの計 約 23.4 億ドルを、損保の運用資産 約 500 億ドル × 帳簿利回り 4.7% に置いた。2026 年 4〜6 月期は全社で運用資産 640 億ドル、利回りは LP 収益を含み税引き前 4.9%(LP 除き 4.7%)。長期金利 5% の世界で低利の債券が入れ替わり、利回りは 5% 台前半まで上がる。
リスクと懸念
料率サイクルの下りと中堅・大企業の準備金
2026 年 4〜6 月期の事業保険の複合損害率は 91.4(前年 87.0)、中堅・大企業は 101.9。一般賠償(超過賠償・アンブレラ)と商業自動車で 2023〜24 事故年の積み増しが出た。財物の軟化が賠償責任へ広がると、複合損害率は 95 近くへ、事業保険の利益は 3 割減る。経営は影響は小さいとするが、請求が長い年数で出る種類で確信は置けない。
個人保険の縮小
個人の書込保険料は 2026 年 4〜6 月期に −7%。自動車は競合の値下げと契約減、住宅は大災害の多い地域の引受の絞りで縮む。AARP 頼みの入口を失う、または大災害(2025 年のロサンゼルス山火事 3.05 億ドル級)が再び来ると、個人は赤字になりうる。利益への寄与は小さい(core 4.6 億ドル)が、撤退の費用が出る。
団体保険の損害率と価格競争
従業員給付の core 利益率は 2026 年 4〜6 月期に 7.4%(前年 9.2%)、障害の損害率は 74.8%(前年 68.5%)。障害の請求の増加が続くと値上げが必要になり、継続率(90% 超)と新規販売(+31%)に響く。メットライフ・リンカーン・アンムと保険料残高が拮抗する市場で、価格決定力は強くない。
資本コストの前提への敏感さ
k は quality で +0.25% 上げて 8.25% とした。k が 0.5% 上がると倍率は約 1〜2 割下がる。価値の大半は 10 年後の倍率に依存するので、悲観の確率と深さを厚めに置いてある。
運用資産の評価損と LP のぶれ
投資資産 640 億ドルのうち債券の含み損(AOCI)は損失で拡大中(約 24 億ドル。2025 年末は約 21 億ドル)。長期金利が高止まりすると解消しない。2026 年 4〜6 月期の運用収益の増加は LP の収益 1.14 億ドル(前年 0.13 億ドル)が大きく、不況期には LP の評価損で運用益が落ちる。
大災害と気候
2025 年の大災害損失は 7.5 億ドル(ロサンゼルス山火事 3.05 億ドル)、2026 年前半は軽かった。傾向線は年 +5〜8% で上がり、料率の軟化と重なると複合損害率が 95 を超える。住宅・小口の財物が影響を受ける。再保険の更新(1 月・6 月・7 月)の料率が下がる間は守りが安くなるが、サイクルが戻ると費用が増える。
ファンズ売却の条件と実行
ウェリントンへの売却は完了予定が 2027 年 1〜3 月期。受取は現金 3 億ドルと約 7 年の分割払い(会社は現在価値約 19 億ドル、10-Q は 21 億ドルで 5 年で打ち切る条項に言及)。規制・ファンドの承認が遅れる、またはファンドの資金流出(2025 年は純流出 37 億ドル)で受取が細ると、期待より小さくなる。保険の価値に比べて小さい(時価総額の約 5%)。
今後の分かれ目
- 財物の料率下落が 2027 年までに止まり、賠償責任の値上げが続く
- 事業保険の複合損害率は 90 前後に戻り、利益は年 5% 前後で伸びる。強気とやや強気の確率を上げられる。
- 中堅・大企業の準備金の積み増しが次の四半期以降も続く
- 中堅・大企業の利益がほぼ消え、事業保険全体の複合損害率は 94〜95 へ。ROE は 15% 台へ下がり、倍率も 1〜2 倍下がる。やや弱気の確率を上げる。
- 団体障害の損害率が 75% を超えて続く
- 団体保険の利益率が 6% 台まで下がり、利益が年 1 億ドル以上減る。値上げが通れば戻るが、継続率が落ちれば弱気側に寄る。
- 小口の E&S(認可外保険)が軌道に乗り、小口の書込が 2 桁で伸びる
- 小口のシェアが市場を上回って伸び、利益率も上がる。強気の確率を上げられる(小口は保険料の 4 割で利益率が最も高い)。
- 景気が急に悪化し、運用資産の評価損と大災害・賠償責任の積み増しが重なる
- 利益は 3 割以下に落ち、自己資本は評価損で縮む。ただし資本は厚く(自己資本比率 24%)、谷の PBR は 0.9 倍前後を見る。弱気の確率を上げる。
- ファンズ売却が完了し、分割払いが始まる(2027 年 1〜3 月期)
- 受取(税引き後 年 約 2.6 億ドル × 約 7 年)が還元に加わる。確率は動かさない。条件が変われば受取の見積りを見直す。
見ておくもの
- 事業保険の更新料率(小口・中堅・大企業・グローバル・スペシャルティ別、財物と賠償責任の別)と複合損害率(今は 91.4、underlying 89.3)
- 中堅・大企業の複合損害率と準備金の積み増し(今は 101.9、underlying 95.3)
- 従業員給付の core 利益率(今は 7.4%)と障害の損害率(今は 74.8%)
- 個人の書込保険料(前年比 −7%)と自動車・住宅の更新料率
- 運用収益と LP の収益、AOCI(約 24 億ドルの損失)の推移
- ファンズ売却の完了時期と分割払いの条件(2027 年 1〜3 月期)
倍率と資本コストの決め方
今の PER・PBR を先に見ず、事業ごとに数量 × 価格で 10 年の利益を積み、その時点の ROE・g から式で倍率を出した。k = 基本 8.0% + quality +0.25% = 8.25%、g は市場の実質 +1% + 価格は物価から −1.25% の 3.25% で 4% を超えない。PER は (1 − g/RONIC)/(k − g) を来年の利益に対して出し、資本コストを超える分は新しく投じるお金では半分に薄れる形で使った。中立の 10 年は正当化 PER 16.3 倍の 7.8 割 = 12.6 倍(ROE 約 18%)で、やや悲観も同じ式の上限に対する割合で置いた。悲観は稼ぐ力ではなく、縮小しながら資本を返せる床の資産(約 150 億ドル)と還元の合計が今の時価総額を下回る筋書きにした。過去の PER や PBR には寄せていない。総合は +40% で「割安」。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25% = 8.25%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。料率サイクルと準備金の積み増しで利益が少し振れるので quality は少し上げた。金融なので負債の補正は quality の debt で見る。準備金の質・大災害・個人の縮小のような個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と悲観の確率・深さで表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。