結論
シティグループは、資産約 2.6 兆ドルの米国第 3 位の銀行である。法人向けの資金管理・証券サービス(Services)、市場業務(Markets)、投資銀行・法人融資(Banking)、富裕層向けの Wealth、米国のクレジットカード(USCC)の 5 事業に、メキシコの消費者銀行バナメックスと撤退中の事業を含む「その他」が加わる。2026 年 7〜9 月期の純利益は約 52 億ドル(前年同期比 +40%)、RoTCE(有形資本の利益率)は 11.5%、CET1 は 12.8% で、2025 年の純利益 141 億ドル(ROE 6.7%)からは利益水準が一段切り上がった。
変化の中身は、ジェーン・フレーザー氏(CEO)の下での再建である。事業を絞り、バナメックスを手放し(2026 年 4 月までに 47.6% を売却)、当局の是正命令に応える統制・データの作り直しを進めて、費用効率を改善している。2026 年 5 月の説明会では RoTCE の目標を 2027〜28 年に 11〜13%、2029〜31 年に 14〜15% とし、300 億ドルの自社株買いを加えた。
バリュー投資の観点では、強さと実績を分けて見る。法人向けの決済・証券サービスの網は他行が真似できない堀だが、全体の収益力は JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)に遠く及ばず、過去 12 期の ROE は多くの年で資本コストを下回った。中立の筋書きでは 10 年後の ROE を 12% 前後と置き、倍率は利益ベースの式(のれんと無形資産約 230 億ドルを除くと ROE 13% 台、資本コストを超える稼ぎは新しく投じるお金では半分に薄れる、g 4%・k 8.5%)の上限 PER 13.5 倍の 8.8 割で測る。過去の低い実績は倍率の割り引きでなく、悲観・やや悲観の確率を厚くして表す。10 年後の中立は ROE 12% 前後・PER 11.9 倍(上限 13.5 倍の 8.8 割。立て直しの不確かさを質で割り引いた)。確率で加重し、還元を足して割り引くと今の時価総額より 2 割弱上に来るので「やや割安」と見る。ただし 10 年のうちの不況と再建の失敗は、悲観・やや悲観の確率(合わせて 35%)で厚く見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。答えは、ある。法人向けの決済・証券サービスの網は、世界の企業の資金の流れに組み込まれており、この堀は広がる方向にある。ただし銀行全体としては JPモルガンやバンク・オブ・アメリカより見えにくく、過去 12 期の実績は資本コストを下回った。事業は良いが、経営の実績はまだ証明の途中である。
次にオーナー利益を見る。銀行は貸出が増えるほど自己資本を積み増す必要があり、利益のうち株主に出せる分は、成長率が名目 4% なら ROE 12% で純利益の約 7 割にとどまる。足元の還元性向 85% は、DTA(繰延税金資産)の消化と余剰資本の取り崩しを含み、毎年は続かない。1 株ごとの価値は、自社株買いを割安な株価で続けるほど増えるが、これは株価が簿価の 1 倍前後にとどまる前提に乗っている。
安全域は、式の PBR(ROE 12%・g 4%・k 8.5% で約 1.4 倍)に対し、今は 0.98 倍と厚い。実績の不安は倍率を割り引かず、やや悲観・悲観の確率を JPモルガン・バンク・オブ・アメリカより厚くし、10 年のうちの不況と構造的な負けでは PBR 0.76 倍・0.50 倍まで下がる前提で表した。ROE が 9% に落ちれば式の PBR は 1.1 倍前後まで下がる。事業の質には中程度、経営の持続性には慎重な確信度で、値段としては「やや割安」とする。
何で稼ぐ会社か
Services(資金管理・貿易金融・証券サービス)は、世界の多国籍企業と金融機関の口座・決済・カストディ(証券の保管)を担う。百を超える国と地域に自前の拠点と決済網を持つ点が他行との決定的な差で、顧客の業務に組み込まれるため解約されにくい。預金を調達源に預金の利ざやと手数料で稼ぎ、2026 年 7〜9 月期は売上 66 億ドル・純利益 26 億ドル・RoTCE 31% と、全社の利益の約半分を稼ぐ。
Markets は株・債券・為替・商品の売買と顧客向けの金融商品で、2026 年 4〜6 月期に売上 70 億ドル、7〜9 月期は 61 億ドル(RoTCE 12%)と四半期の振れが大きい。Banking は M&A・株式・債券の引受と法人融資で、2026 年 7〜9 月期の売上 17 億ドル、RoTCE 19% まで立ち直ったが、過去は収益のばらつきが大きかった。
Wealth は Citigold・プライベートバンク・企業の従業員向け資産運用で、顧客資産約 1.9 兆ドル(推定)。RoTCE は 14% 台で、目標は 15〜20% である。USCC は米国のブランド・カードとストア提携カード(コストコ・ホーム・デポ・アメリカン航空など)で、売上 47 億ドル・RoTCE 22%。カードの貸倒率が収益の振れ幅を決める。「その他」はメキシコのバナメックスと撤退中の個人向け事業、本社の財務部門で、純損失が年 35〜40 億ドル出ている。会社全体では、法人向けの手数料・利ざやと市場業務が約 7 割、カードと富裕層が約 3 割という構成である。
優良さと弱いところ
Citi の堀は法人向けの 1 層に集中している。世界の多国籍企業の資金を 100 か国超で動かす決済・口座・カストディの網(Services)は、他行が持てない。その RoTCE は 30% 前後で、金利が下がっても手数料と預金の厚みで守られる。米国の巨大な預金基盤を持つ JPモルガンやバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)と違い、Citi の優位は国内の預金ではなく国境をまたぐ法人の流れにある。カードの 2 大ブランド提携(コストコ・アメリカン航空など)も、提携先との契約で守られた安定収益源である。
資本効率は改善途上だ。会社全体の RoTCE は 2026 年 7〜9 月期に 11.5% で、JPモルガンの約 20% には遠い。過去 12 期は ROE が 3〜11%(多くは 7% 前後)にとどまり、PBR は 0.4〜1.0 倍で推移した(20 期の中央値 0.7 倍)。費用効率は 2025 年 7〜9 月期の 64.7% から 2026 年 7〜9 月期の 58.5% へ 6 ポイント改善したが、JPモルガンはさらに低い。
弱点は 4 つ。第 1 に、統制とデータの作り直しが終わっていないこと(2020 年の当局の是正命令、2024 年の追加の制裁金)。第 2 に、事業が世界に広く薄いため、国別・規制別のコストがかさむこと。第 3 に、利益の約半分が法人向けの 2 事業に偏り、市場業務は四半期の振れが大きいこと。第 4 に、「その他」の損失が続き、バナメックスの扱い(上場・追加売却)に不確実性が残ることである。再建を実現した経営の資本配分は評価するが、実績はまだ短い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の銀行業は、FDIC の 2026 年 4〜6 月期の速報で純利益 901 億ドル(年換算約 3,600 億ドル)、ROA 1.37%、純金利マージン(NIM)3.32%、貸出は前年比 +6.8% と利益水準が高い。短期金利 3.5〜4%、長期金利 5% 前後が続く世界では、低利の債券・住宅ローンが満期や借換えで徐々に高い利回りへ入れ替わり、NIM は緩やかに改善する。一方で無利息預金は残らず、預金コストは 2010 年代のゼロには戻らない。
競争では、預金の約 4 割を握る上位 4 行(JPモルガン・バンク・オブ・アメリカ・ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)・シティグループ)のうち、Citi は国内の預金で最も小さい。ウェルズ・ファーゴは資産上限が 2025 年に外れて攻勢に戻った。法人向けの決済・証券サービスでは、JPモルガン、HSBC、スタンダードチャータード(Standard Chartered)、BNYメロン(BNY Mellon)、ステート・ストリート(State Street)が競り、投資銀行・市場ではゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)、JPモルガンと争う。カードは JPモルガン、キャピタル・ワン(Capital One)、アメリカン・エキスプレス(American Express)、シンクロニー(Synchrony)がしのぎを削る。
循環でいえば、信用コストは平常、市場業務と投資銀行は好調な中盤〜山に近い。資本規制の緩和(SLR の見直し・バーゼル III の再提案)が確定すれば還元余力が増えるが、カード金利の上限案・クレジット・カード競争法・ステーブルコインによる決済の置き換えが火種である。分かれ目は、失業率、カードと法人貸出の延滞、預金コスト、市場業務の収益、規制の最終案である。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いで、2025 年は合計 170 億ドル超(過去 4 年で 400 億ドル超)と、純利益を上回る水準だった。2026 年 5 月に 300 億ドルの新しい自社株買いを加え、7〜9 月期の還元は 41 億ドル(還元性向 85%)である。ただし CET1 は 12.8% で規制の最低に対する余裕は約 1.2 ポイントしかなく、目標は 13% 前後に置かれている。余裕が薄い中で高い還元を続けるため、増える分は利益の伸びに依存する。この分析の還元額は株式報酬による株数の増加分を引いた正味で置き、10 年の実勢は純利益の約 7 割とした。
M&A は「買収より売却」が主題である。バナメックスは 2025 年 12 月にチコ・パルド氏へ 25%(簿価の 0.8 倍)、2026 年 4 月に 22.6% を投資家グループへ売却し、残りの 1.4% も数か月内に完了する見込みで、合計 49% を手放す。持分の過半を保ったまま上場へ進む計画だが、時期は未確定である。ほかに東アジアの個人向け事業の撤退も続く。大きな買収は規制と規模の制約で当面なく、買われる側にもならない。割安な株価で自社株を買う姿勢は価値を高めるが、法人向けの成長投資を削らずに済むかが分かれ目である。
2026 年に決算期末後すでに実行した自社株買い 103.0 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月・1〜3 月約 63 億と 4〜6 月約 40 億ドルの概算)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元には数えず、自己資本の起点(2019.9 億ドル)からも外した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Services・Markets・Banking・Wealth・カードの 5 事業のうち、Services は RoTCE 31% と世界最高の法人決済網に支えられ、売上が前年比 +15% で伸びている。2026 年 4〜6 月期の RoTCE は 13.0%、7〜9 月期も 11.5% と、2025 年の 6〜7% から 2 倍近くへ改善し、費用効率は 64.7% から 58.5% へ 6 ポイント下がった。貸出は +12%、預金は +9% と成長も戻っている。
資本面では、300 億ドルの新しい自社株買いを、1 株有形簿価の 1.2 倍前後の株価で進められる。毎年 3〜4% ずつ株数が減れば、純利益が横ばいでも 1 株の価値は同じ割合で増える。バナメックス売却で資本が解放され、撤退事業の損失(その他の純損失、年 35〜40 億ドル)が縮めば、利益は純粋に上積みされる。経営は 2029〜31 年に RoTCE 14〜15% を示しており、Services と Wealth(目標 20% 超)が計画どおり伸びれば、PBR 1.8 倍超が正当化される。JPモルガンとの差が縮まるだけでも、値上がり余地は大きい。
慎重な見方
Citi は過去 12 期、ROE が資本コストを超えた年が少なく、再建の話は何度も聞いてきた。2026 年 4〜6 月期の RoTCE 13.0% は市場業務の好調(売上 70 億ドル)が押し上げた値で、7〜9 月期は 11.5% に戻り、Markets は 12.3% まで下がった。Markets は金利と市場の荒れに左右される山の利益であり、定常と見なすのは危うい。
資本の余裕は CET1 12.8% と薄く、還元性向 85% を長く続けられない。カードは貸倒が高水準のまま(USCC の純利益は前年比 -8%)で、ストア提携の収益率は競争で下がっている。「その他」の損失が続き、バナメックスの上場は時期も価格も不確実である。当局の是正命令は 2020 年から続き、統制の再発は制裁金と成長制約に直結する。
10 年後の目標 14〜15% は、JPモルガンが 20% を稼ぐ世界で、世界に広く薄い Citi が追いつく前提に立つ。費用の削減余地は縮み、ROE 12% を維持できなければ正当化 PBR は 1.5 倍を切る。ステーブルコインによる決済の置き換えが、最も強い Services を直撃する恐れもある。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は事実(RoTCE の改善・費用効率・Services の強さ)に基づくが、持続性は実績で示されていない。慎重な言い分は過去 12 期の実績に基づき、重い。そこで確率は慎重側へ寄せ、悲観とやや悲観を JPモルガン・バンク・オブ・アメリカより厚くした(10 年は 10/22/33/22/13)。倍率は式どおりに置き、実績の不安は確率だけで表した。総合で 2 割弱の割安が出るのは、利益水準が 2025 年から 5 割上がったためである。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 203.13 ドル3,395 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 77.28 ドル1,292 億ドル)。 今の値に割り戻すと 141.24 ドル2,361 億ドル、今との差 +15.3%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 352.76 ドル5,896 億ドル | 98.54 ドル1,647 億ドル | +268.4% | +13.9% | 45.13 ドル754 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 280.48 ドル4,688 億ドル | 89.57 ドル1,497 億ドル | +202.1% | +11.7% | 81.41 ドル1,361 億ドル |
| 中立 | 33% | 225.14 ドル3,763 億ドル | 81.79 ドル1,367 億ドル | +150.5% | +9.6% | 101.29 ドル1,693 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 107.39 ドル1,795 億ドル | 63.24 ドル1,057 億ドル | +39.3% | +3.4% | 37.54 ドル627 億ドル |
| 悲観 | 13% | 63.24 ドル1,057 億ドル | 52.47 ドル877 億ドル | −5.5% | −0.6% | 15.04 ドル251 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 203.13 ドル3,395 億ドル | 77.28 ドル1,292 億ドル | +128.9% | +8.6% | 280.41 ドル4,687 億ドル |
今の株価時価総額 122.51 ドル2,048 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:目標を超え、法人向けの強さが全体の利益率を押し上げる 利益 445 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 352.76 ドル5,896 億ドル
10 年後(2035 年末)、世界の資金管理・証券サービスのプールが 4,800 億ドルに増え、Citi は 10% を取って 480 億ドル。Markets は 461 億ドル(プール 4,700 億ドル × 9.8%)、Wealth は顧客資産 4 兆ドルで 248 億ドル(利益率 33%、目標の 20% 超 RoTCE)、カードは貸出 2,500 億ドルで 300 億ドル。バナメックスの上場と撤退が終わり、「その他」の損失は年 25 億ドルまで縮む。AI で費用率が 3 ポイント下がり、純利益は約 460 億ドル(2025 年の 3.2 倍)、ROE は 16%、10 年の還元は 1,647 億ドル。成長が名目 5% に落ち着いた後でも PER 13.9 倍が付く。
- Services(資金管理・貿易・証券サービス):数量 4,800(世界の資金管理・証券サービスの収益プール(億ドル))× 価格 10.0%(Citi のシェア)→ 売上 480 億ドル・営業利益 250 億ドル。網が広がり、決済の電子化で伸びる
- Markets(市場業務):数量 4,700(世界の銀行の市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 9.8%(Citi のシェア)→ 売上 461 億ドル・営業利益 184 億ドル。市場の活況とシェア拡大
- Banking(投資銀行・法人融資):数量 2,100(世界の投資銀行手数料と法人融資の収益プール(億ドル))× 価格 7.0%(Citi のシェア)→ 売上 147 億ドル・営業利益 47 億ドル。M&A の活況で利益率が上がる
- Wealth(資産・富裕層運用):数量 40,000(顧客資産残高(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの純収益の率(運用報酬と預金・貸出の利ざや))→ 売上 248 億ドル・営業利益 82 億ドル。顧客資産と利益率が目標へ近づく
- 米国カード(USCC):数量 2,500(カード貸出の平均残高(億ドル))× 価格 0.12(残高あたりの純収益(利息+手数料−資金コストなど))→ 売上 300 億ドル・営業利益 75 億ドル。提携先の拡大と貸倒の安定
- その他(メキシコ・撤退事業・本社):数量 700(メキシコ等の平均資産残高(億ドル))× 価格 0.07(残高あたりの純収益の率)→ 売上 49 億ドル・営業利益 −25 億ドル。バナメックス売却と撤退で損失が縮む
倍率:純利益と自己資本は優先配当(年約 12 億ドル)・優先株(約 175 億ドル)を引いた普通株の値(いずれも推定)。のれんと無形資産(約 230 億ドル)を除いた有形ベースの ROE は帳簿より 1 ポイントほど高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 15.2%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 11.9% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.7 倍が上限。利益の質(法人向けの決済・証券サービスの網は強いが、再建の実績が短く事業が世界に薄く広い)から、上限の 9.0 割の PER 13.2 倍に置いた(検査の上限は時価総額 6553 億ドル)。
確率:再建が完成し、Services・Wealth の成長と規制緩和・AI による費用圧縮がそろう。10 年を通じた実現は 1 割。
やや楽観 22% やや楽観:14% 前後の ROE が定着し、堀が広がる 利益 370 億ドル · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 280.48 ドル4,688 億ドル
10 年後、Services は 441 億ドル(プール 4,550 億ドル × 9.7%)、Markets は 423 億ドル、Wealth は顧客資産 3.8 兆ドルで 228 億ドル、カードは貸出 2,400 億ドルで 283 億ドル。バナメックスの売却が終わり、「その他」の損失は年 30 億ドル。技術投資の効果で費用効率は 55% 前後まで下がり、競合も同じ投資をするため利益率の改善は限られる。純利益は約 380 億ドル(2025 年の 2.7 倍)、ROE は 14%、10 年の還元は 1,497 億ドル。成長が名目 4.5〜5% に落ち着いた成熟した銀行として PER 13.2 倍が付く。
- Services(資金管理・貿易・証券サービス):数量 4,550(世界の資金管理・証券サービスの収益プール(億ドル))× 価格 9.7%(Citi のシェア)→ 売上 441 億ドル・営業利益 216 億ドル。決済と預金が堅調
- Markets(市場業務):数量 4,450(世界の銀行の市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 9.5%(Citi のシェア)→ 売上 423 億ドル・営業利益 157 億ドル。高い水準を維持
- Banking(投資銀行・法人融資):数量 1,950(世界の投資銀行手数料と法人融資の収益プール(億ドル))× 価格 6.8%(Citi のシェア)→ 売上 133 億ドル・営業利益 37 億ドル。引受が堅調
- Wealth(資産・富裕層運用):数量 38,000(顧客資産残高(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの純収益の率(運用報酬と預金・貸出の利ざや))→ 売上 228 億ドル・営業利益 66 億ドル。顧客資産が増え、利益率が改善
- 米国カード(USCC):数量 2,400(カード貸出の平均残高(億ドル))× 価格 0.12(残高あたりの純収益(利息+手数料−資金コストなど))→ 売上 283 億ドル・営業利益 67 億ドル。提携が安定し、貸倒は平常
- その他(メキシコ・撤退事業・本社):数量 720(メキシコ等の平均資産残高(億ドル))× 価格 0.07(残高あたりの純収益の率)→ 売上 50 億ドル・営業利益 −30 億ドル。損失が縮む
倍率:純利益と自己資本は優先配当(年約 12 億ドル)・優先株(約 175 億ドル)を引いた普通株の値(いずれも推定)。のれんと無形資産(約 230 億ドル)を除いた有形ベースの ROE は帳簿より 1 ポイントほど高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 13.3%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 10.9% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.1 倍が上限。利益の質(法人向けの決済・証券サービスの網は強いが、再建の実績が短く事業が世界に薄く広い)から、上限の 9.0 割の PER 12.7 倍に置いた(検査の上限は時価総額 5209 億ドル)。
確率:2029〜31 年の経営目標(RoTCE 14〜15%)に近い水準が定着する展開。経営が目標を示し、改善が続いているので比較的起こりやすい。
中立 33% 中立:ROE 12% 前後で定着し、物価並みに成長する 利益 317 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 225.14 ドル3,763 億ドル
10 年後(2035 年末)、世界の資金管理・証券サービスのプールが 4,375 億ドルへ(年 5.8%)、Citi は 9.5% で 416 億ドル。Markets はプール 4,250 億ドルで、競合の追い上げでシェアが 9.2% へわずかに下がり 391 億ドル。Banking は 117 億ドル、Wealth は顧客資産 3.57 兆ドルで 211 億ドル、カードは貸出 2,330 億ドルで 271 億ドル(年 4.5% 増)。「その他」の損失は年 35 億ドルまで縮む。純利益は約 330 億ドル(2025 年の 2.3 倍)、ROE は 12%、RoTCE は 13% 前後で、経営の 14〜15% には届かない。10 年の還元は 1,367 億ドル(純利益の約 7 割)、自己資本は 2,850 億ドル(普通株は 2,675 億ドル)へ。成熟した銀行として PER 12.1 倍が付く。
- Services(資金管理・貿易・証券サービス):数量 4,375(世界の資金管理・証券サービスの収益プール(億ドル))× 価格 9.5%(Citi のシェア)→ 売上 416 億ドル・営業利益 196 億ドル。伸びるが利益率は競争で頭打ち
- Markets(市場業務):数量 4,250(世界の銀行の市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 9.2%(Citi のシェア)→ 売上 391 億ドル・営業利益 133 億ドル。山から平常へ戻る
- Banking(投資銀行・法人融資):数量 1,800(世界の投資銀行手数料と法人融資の収益プール(億ドル))× 価格 6.5%(Citi のシェア)→ 売上 117 億ドル・営業利益 29 億ドル。収益は戻るが平常
- Wealth(資産・富裕層運用):数量 35,700(顧客資産残高(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの純収益の率(運用報酬と預金・貸出の利ざや))→ 売上 211 億ドル・営業利益 57 億ドル。利益率は徐々に改善
- 米国カード(USCC):数量 2,330(カード貸出の平均残高(億ドル))× 価格 0.12(残高あたりの純収益(利息+手数料−資金コストなど))→ 売上 271 億ドル・営業利益 61 億ドル。貸出は物価と実質で伸びる
- その他(メキシコ・撤退事業・本社):数量 750(メキシコ等の平均資産残高(億ドル))× 価格 0.08(残高あたりの純収益の率)→ 売上 58 億ドル・営業利益 −35 億ドル。損失はゆっくり縮む
倍率:純利益と自己資本は優先配当(年約 12 億ドル)・優先株(約 175 億ドル)を引いた普通株の値(いずれも推定)。のれんと無形資産(約 230 億ドル)を除いた有形ベースの ROE は帳簿より 1 ポイントほど高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。利益ベースの正当化 PER で置く(SCHEMA §1-1):k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)、事業の ROE 11.9%(純利益÷自己資本)、g 4.0%、残る割合 1/2(堀:普通)で RONIC 10.2% → (1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.5 倍が上限。利益の質(法人向けの決済・証券サービスの網は強いが、再建の実績が短く事業が世界に薄く広い)から、上限の 8.8 割の PER 11.9 倍に置いた(検査の上限は時価総額 4275 億ドル)。
確率:10 年の実績(ROE が資本コスト割れ)と経営の目標(14〜15%)の間で、ROE が資本コストを少し上回る水準に落ち着く展開。最も起こりやすい。
やや悲観 22% やや悲観:構造の逆風で ROE が 8% 前後に戻る 利益 186 億ドル · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 107.39 ドル1,795 億ドル
10 年後、預金が MMF とフィンテックへ流れて預金コストが 4% 台に固定され、Services の利益率が 42% に下がる(プール 4,000 億ドル × 8.8% で 352 億ドル)。Markets はシェアを 8.5% へ失って 323 億ドル、カードは金利上限の議論と貸倒で率が 10.8% へ下がり 216 億ドル、Wealth は顧客資産の伸び悩みで 151 億ドル。バナメックスの上場は延び、「その他」の損失は年 45 億ドル残る。純利益は約 200 億ドル(2025 年の 1.4 倍)、ROE は 8% 弱で、Citi の過去 12 期の姿に戻る。10 年の還元は 1,057 億ドル。
- Services(資金管理・貿易・証券サービス):数量 4,000(世界の資金管理・証券サービスの収益プール(億ドル))× 価格 8.8%(Citi のシェア)→ 売上 352 億ドル・営業利益 148 億ドル。預金コスト上昇・手数料の圧縮
- Markets(市場業務):数量 3,800(世界の銀行の市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 8.5%(Citi のシェア)→ 売上 323 億ドル・営業利益 87 億ドル。市場が鈍り、費用が先行
- Banking(投資銀行・法人融資):数量 1,500(世界の投資銀行手数料と法人融資の収益プール(億ドル))× 価格 5.7%(Citi のシェア)→ 売上 86 億ドル・営業利益 13 億ドル。手数料が減り、引当が増える
- Wealth(資産・富裕層運用):数量 28,000(顧客資産残高(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの純収益の率(運用報酬と預金・貸出の利ざや))→ 売上 151 億ドル・営業利益 26 億ドル。利益率の改善が止まる
- 米国カード(USCC):数量 2,000(カード貸出の平均残高(億ドル))× 価格 0.11(残高あたりの純収益(利息+手数料−資金コストなど))→ 売上 216 億ドル・営業利益 37 億ドル。貸倒率の上昇と金利規制
- その他(メキシコ・撤退事業・本社):数量 750(メキシコ等の平均資産残高(億ドル))× 価格 0.08(残高あたりの純収益の率)→ 売上 56 億ドル・営業利益 −45 億ドル。撤退が遅れ損失が残る
倍率:純利益と自己資本は優先配当(年約 12 億ドル)・優先株(約 175 億ドル)を引いた普通株の値(いずれも推定)。のれんと無形資産(約 230 億ドル)を除いた有形ベースの ROE は帳簿より 1 ポイントほど高いが、ここでは検査と同じ帳簿の ROE で置く。ROE 7.8% が k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で、PER は 1÷k=11.8 倍が上限。利益の質(法人向けの決済・証券サービスの網は強いが、再建の実績が短く事業が世界に薄く広い)から、上限の 8.2 割の PER 9.7 倍に置いた(検査の上限は時価総額 2188 億ドル)。
確率:預金コストの固定・カード金利規制・ステーブルコインなど、Citi の強みを削る逆風が複数重なる展開。過去の実績に近く、起きても不思議はない。
悲観 13% 悲観:構造的に負け、もう優良な銀行ではなくなっている 利益 107 億ドル · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 63.24 ドル1,057 億ドル
10 年後、統制の再発と制裁金で成長が制約され、ステーブルコインが決済の一部を置き換えて Services の利益率が 40% に下がる(プール 3,500 億ドル × 8.2% で 287 億ドル)。Markets は競合に押されて 250 億ドル(利益率 22%)、Banking は 55 億ドル、Wealth は顧客資産 2.2 兆ドルで 110 億ドル、カードは金利上限で率が 9.8% に下がり 176 億ドル。バナメックスの上場は果たされず、「その他」の損失は年 50 億ドル残る。純利益は約 120 億ドル(2025 年の 0.8 倍)、ROE は約 5%。10 年の還元は 877 億ドルにとどまる。2010 年代の Citi と同様、稼ぐ力の 8.4 割(PER 9.9 倍。PBR 0.5 倍は結果)で定着する。
- Services(資金管理・貿易・証券サービス):数量 3,500(世界の資金管理・証券サービスの収益プール(億ドル))× 価格 8.2%(Citi のシェア)→ 売上 287 億ドル・営業利益 115 億ドル。景気後退で取引量が減る
- Markets(市場業務):数量 3,200(世界の銀行の市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 7.8%(Citi のシェア)→ 売上 250 億ドル・営業利益 55 億ドル。市場が荒れ、損失が出る
- Banking(投資銀行・法人融資):数量 1,100(世界の投資銀行手数料と法人融資の収益プール(億ドル))× 価格 5.0%(Citi のシェア)→ 売上 55 億ドル・営業利益 6 億ドル。引受が止まり、引当で赤字
- Wealth(資産・富裕層運用):数量 22,000(顧客資産残高(億ドル))× 価格 0.01(残高あたりの純収益の率(運用報酬と預金・貸出の利ざや))→ 売上 110 億ドル・営業利益 13 億ドル。顧客資産が減り、ほぼ利益が出ない
- 米国カード(USCC):数量 1,800(カード貸出の平均残高(億ドル))× 価格 0.10(残高あたりの純収益(利息+手数料−資金コストなど))→ 売上 176 億ドル・営業利益 21 億ドル。貸倒率が 9% 台、引当で赤字
- その他(メキシコ・撤退事業・本社):数量 700(メキシコ等の平均資産残高(億ドル))× 価格 0.07(残高あたりの純収益の率)→ 売上 49 億ドル・営業利益 −50 億ドル。撤退費用・本社費用が重い
倍率:稼ぐ力で測る(SCHEMA §1-3)。構造的に負けた普通株の純利益 107 億ドルを、ROE が k を下回るので 1÷k の PER が上限とみる。ROE 5.0% が k 8.50%(基本 8.0%+quality +0.50%)以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で、PER は 1÷k=11.8 倍が上限。上限の 8.4 割の PER 9.9 倍(時価総額 1259 億ドルが上限)に置いた。今の自己資本に対する PBR は結果であって根拠ではない。構造的に負ける筋書きなので、自己資本の厚みは床にならず、稼ぐ力で下げた。
確率:構造的に負ける(規制の再発・決済の置き換え・カードの金利上限・不況の再来)確率。10 年の実績と、資本の余裕の薄さから、JPモルガン(12%)と同じ水準より少し厚い 13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
Services(資金管理・貿易・証券サービス)
多国籍企業と金融機関の口座・決済・貿易金融・カストディ。百を超える国と地域の自前の網が堀。
| 数量世界の資金管理・証券サービスの収益プール(億ドル) | 価格Citi のシェア | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 8.9% | 222 | 91 |
| 10 年後 中立 | 4,375 | 9.5% | 416 | 196 |
取り方:資金管理・貿易金融・証券サービスの世界の収益プールを約 2,500 億ドル(推定)と置き、2025 年の Services の売上約 222 億ドル(2025 年 4〜6 月期 54.3 億ドルと 2026 年の前年比から逆算した推定)のシェア 8.9%。営業利益は税前の推定(利益率 41%。2026 年 4〜6 月期の純利益 25.8 億ドルは売上の 40%)。競合は JPモルガン・HSBC・スタンダードチャータード・BNYメロン・ステート・ストリート。プールは名目の取引額・預金とともに伸びるので物価の分はプールに入れ、シェアは物価で上げない。
Markets(市場業務)
株・債券・為替・商品の売買と顧客向けの金融商品。四半期の振れが大きい。
| 数量世界の銀行の市場業務の収益プール(億ドル) | 価格Citi のシェア | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 9.8% | 245 | 100 |
| 10 年後 中立 | 4,250 | 9.2% | 391 | 133 |
取り方:世界の銀行の市場業務の収益プールを約 2,500 億ドル(推定。業界ノートと同じ。バンク・オブ・アメリカも同じ置き方)、Citi の売上約 245 億ドル(2025 年 4〜6 月期 59.8 億ドルから逆算した推定)のシェア 9.8%。営業利益は税前の推定(利益率 41%)。競合はゴールドマン・サックス・JPモルガン・モルガン・スタンレー・バンク・オブ・アメリカ。プールは名目の取引額とともに伸びるので、シェアは物価で上げない。
Banking(投資銀行・法人融資)
M&A・株式・債券の引受と法人融資。2020 年以降に大きく立て直した。
| 数量世界の投資銀行手数料と法人融資の収益プール(億ドル) | 価格Citi のシェア | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 6.2% | 62 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,800 | 6.5% | 117 | 29 |
取り方:投資銀行手数料と法人融資の世界の収益プールを約 1,000 億ドル(推定)、Citi の売上約 62 億ドル(2025 年 4〜6 月期 15.0 億ドルから逆算した推定)のシェア 6.2%。営業利益は税前の推定(利益率 23%)。競合は JPモルガン・ゴールドマン・サックス・モルガン・スタンレー・バンク・オブ・アメリカ。2026 年 7〜9 月期の RoTCE は 19% だが、年ごとのばらつきが大きいので通期では利益率を低めに置く。
Wealth(資産・富裕層運用)
Citigold・プライベートバンク・企業の従業員向け。顧客資産約 1.9 兆ドル。
| 数量顧客資産残高(億ドル) | 価格残高あたりの純収益の率(運用報酬と預金・貸出の利ざや) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 19,000 | 0.01 | 118 | 18 |
| 10 年後 中立 | 35,700 | 0.01 | 211 | 57 |
取り方:顧客資産約 1.9 兆ドル(推定)に、2025 年の Wealth の売上約 118 億ドル(2025 年 4〜6 月期 28.1 億ドルから逆算した推定)の率 0.62%。営業利益は税前の推定(利益率 15%。2026 年 7〜9 月期の純利益 5.9 億ドルは売上の 18%)。競合はモルガン・スタンレー・JPモルガン・バンク・オブ・アメリカ(メリルリンチ)。顧客資産は名目の資産価格と純流入で伸びるので物価の分は残高に入り、料率は物価で上げず、パッシブ運用の拡大で少しずつ下がると置いた。
米国カード(USCC)
ブランド・カードとストア提携カード(コストコ・ホーム・デポ・アメリカン航空など)。
| 数量カード貸出の平均残高(億ドル) | 価格残高あたりの純収益(利息+手数料−資金コストなど) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.12 | 183 | 42 |
| 10 年後 中立 | 2,330 | 0.12 | 271 | 61 |
取り方:カード貸出の平均残高を約 1,500 億ドル(推定)、2025 年の USCC の売上約 183 億ドル(2025 年 4〜6 月期 44.7 億ドルから逆算した推定)の率 12.2%。営業利益は税前の推定(利益率 23%)。貸倒償却は年約 74 億ドル(2026 年 7〜9 月期 18.5 億ドルの 4 倍)で貸出の約 5%。競合は JPモルガン・キャピタル・ワン・アメリカン・エキスプレス・シンクロニー。価格(率)は金利と競争で決まり物価では上がらないので、物価の分は貸出残高の伸びに入れた。
その他(メキシコ・撤退事業・本社)
バナメックス(売却中)・東アジアの個人向けの撤退・本社の財務部門と費用。損失が出ている。
| 数量メキシコ等の平均資産残高(億ドル) | 価格残高あたりの純収益の率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 850 | 0.08 | 67 | −84 |
| 10 年後 中立 | 750 | 0.08 | 58 | −35 |
取り方:バナメックスと撤退中の事業の平均資産を約 850 億ドル(推定)、2025 年の「その他」の売上約 67 億ドル(2025 年 4〜6 月期 17.2 億ドルから逆算した推定。本社の財務・調整を含む)の率 7.9%(メキシコは金利が高く利回りが高い)。営業利益は税前の推定で -84 億ドル。バナメックスののれん減損(2025 年 7〜9 月期 7.3 億ドル)・売却関連の費用・変革費用・本社の費用を含み、2026 年 7〜9 月期の純損失 9.6 億ドルが続いている。バナメックスの持分売却が進むと売上と損失の両方が縮む。
リスクと懸念
再建の失速と統制の再発
2020 年の当局の是正命令、2024 年の追加の制裁金のあとも、統制・データの作り直しは続く。完成前に不備が再発すれば、制裁金と成長の制約が重なり、RoTCE の目標(2027〜28 年 11〜13%)が崩れる。この火種は単独でも利益を 1〜2 割動かし、他のリスクと重なると悲観の筋書きに近づく。
市場業務の山と四半期の振れ
Markets は 2026 年 4〜6 月期の売上 70 億ドルから 7〜9 月期の 61 億ドルへ 1 四半期で 1 割下がる。2025〜26 年が高い水準にあり、市場が荒れて取引が減ると、全社の利益の 3 割近くが 1〜2 割動く。
カードの貸倒と金利規制
USCC の貸倒は年約 74 億ドル(貸出の約 5%)で、景気後退では 9〜10% に上がる(2010 年は約 10%)。カード金利の上限案やクレジット・カード競争法が成立すれば、収益率が数ポイント下がる。2026 年 7〜9 月期の USCC の純利益は前年比 -8% である。
薄い資本の余裕と還元の持続
CET1 は 12.8%(規制の最低の約 1.2 ポイント上)で、目標は 13% 前後。還元性向 85% は余剰資本と繰延税金資産の消化を含み、長くは続かない。資本規制の最終案が想定より重くなれば、自社株買い(300 億ドルの計画)が減り、1 株の価値の伸びが鈍る。
バナメックスの上場と「その他」の損失
2026 年 4 月までに 47.6% を売却したが、残りの持分の上場時期は未確定で、売却価格は簿価の 0.8 倍と割安だった。上場が遅れ「その他」の純損失(年 35〜40 億ドル)が残れば、全社の ROE は 1〜2 ポイント押し下げられる。メキシコの規制・通貨・治安も火種である。
預金コストの固定とステーブルコイン
短期金利 3.5〜4% では無利息預金が MMF・国債・フィンテックへ流れ、預金コストは 4% 台に固定される。ステーブルコインが決済を置き換えれば、最も強い Services の手数料と預金の優位が削られる。この火種は単独でも利益を 1〜2 割動かし、他のリスクと重なると悲観の筋書きに近づく。
世界に広く薄い事業の複雑さ
100 か国超に拠点を持つ分、国ごとの規制・税・通貨・制裁のコストが重く、ロシアの撤退の残りや新興国の政情が損失の源になりうる。複雑さは費用効率の改善を遅らせ、JPモルガンとの利益率の差が縮まらない恐れもある。
今後の分かれ目
- 失業率が 5% を超え、カードと法人貸出の延滞が 2 四半期連続で上がったら
- 貸倒引当が積み上がり、やや悲観・悲観の確率を上げる。谷の PBR は 0.55 倍前後を見て、自社株買いが止まる前提で考える。
- 資本規制の最終案(SLR の見直し・バーゼル III)が緩和で確定し、CET1 の目標が下がったら
- 余剰資本が自社株買いに回り、ROE が 1 ポイント上がる。楽観・やや楽観の確率を上げ、PER を 1 倍ほど上げて見る。
- 当局が是正命令を解除する、または新たな制裁金・命令を課したら
- 解除なら統制の完成を確信度に反映し、楽観・やや楽観の確率を上げる。新たな命令なら再建の失速として、やや悲観の確率を上げ、10 年の純利益を 1〜2 割下げる。
- バナメックスの上場が実現し、残りの持分も売却が進んだら
- 「その他」の損失が縮み、資本が解放される。純利益を年 20〜30 億ドル押し上げ、中立の利益を 1 割上げて見る。上場が延期されるなら逆に下げる。
- カード金利の上限規制またはクレジット・カード競争法が成立したら
- USCC の利益率が数ポイント下がる。やや悲観の確率を上げ、10 年の純利益を 1 割下げて見る。
- ステーブルコインが企業の決済と預金の 1 割を置き換えると確認されたら
- Services の手数料と預金コストの優位が崩れる。構造的に負ける悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 四半期の RoTCE(目標:2026 年 10〜11% 超、2027〜28 年 11〜13%)と費用効率(58.5% からの低下)
- Services の売上の伸びと RoTCE(20 台半ばを維持できるか)、Markets の売上の振れ
- CET1 比率(12.8% と目標 13% 前後)と自社株買いの実績(300 億ドルの計画)
- USCC の貸倒率・延滞とカード金利規制・クレジット・カード競争法の動き
- バナメックスの上場・追加売却の時期と「その他」の純損失(年 35〜40 億ドル)
- 当局の是正命令・制裁金の動き、FDIC の四半期(含み損・預金の動き)、ステーブルコインの法制
倍率と資本コストの決め方
今の PER 14.7 倍・PBR 0.98 倍を見る前に、5 事業ごとに収益プール × シェアと貸出残高 × 率を積み上げ、ROE・g・k から利益ベースの正当化 PER の上限を出し、立て直しの不確かさから上限の 8.8 割に倍率を置いた。資本コストは基本 8.0% に quality +0.5%(世界に広がる法人・市場業務の景気感応)を足した 8.5%。中立は ROE 11.9%・g 4%・RONIC 10.2% で上限 PER 13.5 倍、その 8.8 割の 11.9 倍。12 期連続で資本コストを下回った実績、再建の実績が短く事業が薄く広い点は、倍率でなく確率(悲観・やや悲観を厚く)で表した。結論の「やや割安」は、2026 年の利益水準が 2025 年から 5 割上がっていることから出ており、今の株価に寄せていない。文章の ROE は優先株を除く普通株ベース。表の純利益・自己資本は優先株を除く普通株の値で、文章の純利益は優先配当前の値。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 1.12 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。事業が世界に広く薄く、市場業務の利益が景気で振れるので、預金基盤の厚い JPモルガン(7.75%)より高く置いた。再建の遅れ・規制・バナメックスの不確実性は k に足さず、悲観の確率と利益率で表した。