結論
バローホールディングスは、岐阜を本拠に東海・北陸・関西へ広がる食品スーパーの会社だ。売上は31期連続で増え、2026年3月期は9,241億円、営業利益は276億円で過去最高になった。筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当で、割安と呼ぶほどの余裕はない、というものだ。
中心はスーパーで、売上の6割弱、利益の過半を占める。総菜、ベーカリー、自社工場の商品が客を呼び、中核のバローの既存店売上は直近の年度で5%を超えて伸びた。2025年にはドミーを買収し、愛知の三河に32店を足した。
弱みは利益率の薄さだ。営業利益率は3%で、ドラッグストアは2%にとどまる。人件費が上がる局面で、1%の利益率の差は会社の姿を大きく変える。関西ではオーケー、関東ではロピアやトライアルが出店を進めており、そこへ踏み込む賭けは軽くない。
借金も軽くはない。純有利子負債は1,046億円で、時価総額の6割近い。金利が上がる世界では、利払いが利益を毎年削る。
10年の中立では、利益は今より4割ほど増える。それでも資本の稼ぎが資本コストをわずかに超える程度で、倍率は高く置けない。配当を足せば今の値段を1割ほど上回るが、その差は誤差に近い。慎重な見方が当たれば、価値は今の値段を大きく割り込む。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くはないが、割安とまでは言えない」事業だ。10年後も食品スーパーは必ず残り、東海の店の密度は簡単には崩れない。だが、強い堀がなく、利益率が3%という薄い事業で、資本の稼ぎは資本コストを少し超える程度にとどまる。
見るべきは、増えた利益の何割が株主のものになるかだ。バローは利益の大半を新店と工場に再投資しており、配当は利益の約25%、中計でも30%が目安だ。残りの利益が資本コストを超える稼ぎを生むかどうかが、価値を決める。ここが平凡なら、成長しても価値はそれほど増えない。
安全域の目で見ると、借金は気になる。純有利子負債が時価総額の6割近くあり、金利が上がると利払いは増える。10年で利益を毎年26億円ほど削る計算だ。一方、生活必需品なので需要は消えにくく、悲観の筋書きでも事業は黒字を保つ。
経営の資本配分は、これまでは堅実だった。ドミーの買収は小さく、ROEは維持されている。関西・関東への越境が、この堅実さを崩さないかが最大の論点になる。筆者は、確率を慎重な見方に少し寄せた。
何で稼ぐ会社か
スーパーマーケットが主力だ。バロー、ドミー、中部フーズなどの子会社で364店を持ち、2026年3月期の売上は5,408億円、営業利益は221億円。生鮮と総菜を自社のプロセスセンターや工場で作って各店へ届ける仕組みが強い。
ドラッグストアは中部薬品の「V・drug」で、571店のうち調剤を扱う店が228店。売上は1,845億円あるが、営業利益は38億円と薄い。中計は調剤併設の店を35%から50%へ引き上げ、関西・名古屋への出店を進める。
ホームセンターは「ホームセンターバロー」で163店、売上は1,241億円、営業利益は48億円。ペットショップ(アミーゴ、犬の家)が197店、スポーツクラブが156店あり、運営会社の売上は合わせて500億円弱になる。
流通関連は、物流と商品調達を担う子会社群だ。グループ内の取引が大半で、連結ではその利益のほとんどが消える。外から見えにくいが、スーパーとドラッグストアの粗利を支える裏方になっている。
店の数は全体で1,535店になる。売上の伸びは31期続いており、2027年3月期は初めて1兆円に届く計画だ。事業の幅は広いが、利益をつくっているのはスーパーである。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、東海での店の密度と、作って届ける仕組みにある。生鮮と総菜は自前の工場とプロセスセンターで作るため、仕入れだけに頼る店より粗利が厚く、味の違いを出しやすい。筆者はここが、この会社の一番の強みだと見る。
ただし強い堀とは言えない。食品スーパーの値段は競合が決める。東海ではドラッグストアが食品を強め、関西と関東では安売りの強者が待つ。利益率が3%という薄さは、その力関係の表れでもある。
資本の稼ぎも平凡だ。ROEは過去10年の中央値で7%、直近の8.9%でも資本コストを少し超える程度にとどまる。中計はROE8%以上を掲げるが、この水準では、利益を積み上げても価値は大きく増えない。
経営は手堅い。借金を使って店と工場を増やし、利益を毎年伸ばしてきた。配当は14期連続で増えている。一方で、ドラッグストアとホームセンターは中計の利益目標に届いておらず、ペットショップは利益が半分に減った。事業の整理が遅れていることは弱点だ。
店の持ち方も確かめきれていない。賃借の店が多ければ、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーは、人口が減る中でも、物価が上がる分だけ売上が伸びる。数量は横ばいから微減、価格は物価並みという世界だ。利益を決めるのは、客単価を上げても客が減らないかどうかである。バローはそこで、総菜とベーカリーで客数を保ってきた。
東海の競合の力関係は、確かめきれていない。筆者は個々の競合の強さを断定しない。確かなのは、ドラッグストアが食品を強め、スーパーの客を奪いにきていることだ。
外へ出る動きは激しい。関西ではオーケー、関東ではロピアやトライアル(西友を買収)が出店を加速している。バローも関東へ踏み出し、2025年11月に横浜、2026年度は東京都内に初出店する。関西では売上2,500億円を目指す。
ドラッグストアは調剤の力で利益を積む業態だが、薬価が下がる方向にあり、人手不足が重い。ホームセンターは人口が減る中で、ペットや専門売り場で差をつけるしかない。
再編も進む。社長は、売上1兆円に近づく会社が増え、規模だけでは危うくなると語っている。バローは同業の買収を、地域の密度を上げる手段として使っている。
資本政策と M&A
資本政策は、借金で店と工場を増やし、利益を積み上げてきた形だ。中計の3年間で、営業のお金1,200億円に対し、成長投資は1,000億円を見込む。還元は配当が中心で、配当性向30%を目安に、配当の下限をDOE(自己資本に対する配当の比率)2%とした。自社株買いは、中計ではほとんど織り込まれていない。
M&Aは、2025年のドミーが最大だ。買付代金は約52億円で、愛知の三河を中心に33店が加わった。額は小さく、リスクも小さい。狙いは、プライベートブランドの導入、共同調達、物流の共有である。
2026年4月には、中部薬品が岐阜の調剤薬局1店を子会社にした。規模は小さいが、調剤の拡大を買収でも進める姿勢は変わらない。
大株主は、信託銀行、公益財団、農林中金、十六銀行などだ。創業家や親会社が支配する形ではない。買われる側になる可能性は否定できないが、筋書きの確率には織り込まず、中立の価値の外に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
バローはこの10年、売上を2倍近くにした。増収は31期続き、直近の利益は過去最高だ。中核のバローの既存店売上は5%を超えて伸び、客数も増えている。値上げしても客が減らないのは、総菜とベーカリーを自前の工場で作っているからだ。
中計の利益目標は1年前倒しで達成した。ドミーを取り、物流とプライベートブランドを共有すれば、さらに粗利が積める。関西では売上2,500億円、スーパーだけで1兆円という目標があり、過去の実績を見れば、この会社は計画を下回らない。
調剤を併設したドラッグストアは、利益率が3%台へ上がる余地がある。ホームセンターは、ペットの強化で復調しつつある。資本コストを超える稼ぎが、新店ごとに積み上がれば、倍率も上がる。
借金で店を増やす経営は、金利が上がっても、店の稼ぎが利払いを上回れば問題にならない。配当は14期連続で増え、還元も強まる。10年で利益が5割増え、ROEが10%に近づく筋書きは、十分にありうる。
慎重な見方
利益率が3%しかない会社が、人件費の上昇と金利の上昇を同時に受ける。それが今のバローだ。2027年3月期の利益予想は、営業利益が1.5%増と、売上の伸びに比べて小さい。増収は続くが、増益は止まりかけている。
ドラッグストアは売上が1,800億円あっても利益は38億円で、前の期より減った。ホームセンターもペットも、中計の目標に届いていない。広げた事業のうち、稼ぐのはスーパーだけである。
関西にはオーケー、関東にはロピアやトライアルがいる。安売りの強者の街へ入って、薄い利益率で勝つのは難しい。出店のたびに減損のリスクを負い、本拠の東海でも、他社の食品強化にさらされる。
借金は時価総額の6割近くある。金利が3.5%で借り換わると、10年で利益を毎年26億円ほど削る。ROEが資本コストをやっと超える会社に、成長の理由は乏しく、倍率は上がらない。慎重に見れば、稼ぐ力を超えた値段は付けられない。社長自身が、規模だけでは危うくなると語っている点も重い。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠がある。強気の見方は実績に裏付けられ、慎重な見方は利益率と借金という構造に根を持つ。筆者は、利益率の薄さと関西・関東での競争の厳しさを重く見て、確率を慎重な見方に少し寄せた。ただし、生活必需品の事業で需要は消えにくく、悲観の筋書きの確率は1割にとどめた。結果として、中立の価値は今の値段を上回るが、その差は大きくない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,000 円3,287 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 604 円662 億円)。 今の値に割り戻すと 1,876 円2,056 億円、今との差 +13.9%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,924 円5,395 億円 | 821 円900 億円 | +248.6% | +13.3% | 460 円504 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,127 円4,522 億円 | 730 円800 億円 | +194.8% | +11.4% | 1,069 円1,171 億円 |
| 中立 | 34% | 3,348 円3,668 億円 | 639 円700 億円 | +141.9% | +9.2% | 1,355 円1,485 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,942 円2,128 億円 | 502 円550 億円 | +48.3% | +4.0% | 611 円669 億円 |
| 悲観 | 11% | 675 円740 億円 | 319 円350 億円 | −39.6% | −4.9% | 109 円120 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,000 円3,287 億円 | 604 円662 億円 | +118.7% | +8.1% | 3,604 円3,949 億円 |
今の株価時価総額 1,648 円1,806 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 関西・関東でも勝ち、スーパーの利益率が4%台半ばへ 利益 328 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 4,924 円5,395 億円
スーパーは関西と関東の出店が当たり、10年後に460店へ増える。総菜、ベーカリー、自社工場の商品が客単価を押し上げ、ドミーの仕入れ統合も効いて、利益率は4%台半ばまで上がる。
ドラッグストアは調剤を併設した店が半分を超え、利益率は中計が掲げた3%台に届く。ホームセンターとペットも持ち直し、グループの営業利益は570億円台になる。
自己資本は還元を厚くしても3,400億円ほどに積み上がる。関西の売上は2,500億円に近づき、関東も根を張る。それでも他社の安売りに正面から勝ち続けるのは容易でない。この筋書きは、すべてが噛み合った時だけに現れる。
- スーパーマーケット(バロー・ドミーなど):数量 460(店舗数(店))× 価格 21(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 9,616 億円・営業利益 433 億円。営業利益率4.50%
- ドラッグストア(V・drug):数量 760(店舗数(店))× 価格 4.33(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 3,291 億円・営業利益 102 億円。営業利益率3.10%
- ホームセンター・ペット・スポーツクラブ・流通など:数量 540(店舗・施設数(店))× 価格 5.17(1店・1施設あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,791 億円・営業利益 89 億円。営業利益率3.20%
倍率:事業の純利益 328 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.68 倍、時価総額 5,143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:関西のオーケー、関東のロピアやトライアルといった安売りの強者の街で、バローが総菜とベーカリーの力で客を取り切る必要がある。出店のペースも中計の勢いを保たねばならず、条件が重なる確度は高くない。
やや楽観 22% スーパーが伸び続け、ドミー統合の果実も出る 利益 282 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 4,127 円4,522 億円
スーパーは年5〜6店のペースで増え、10年後は440店になる。既存店は客数を保ち、客単価が物価並みに伸びる。ドミーは物流とプライベートブランドの共有で、利益率が少しずつ上がる。
賃上げは続くが、総菜やベーカリーの粗利でおおむね吸収できる。スーパーの利益率は4.25%で、今よりわずかに高い。ドラッグストアは調剤の比率が高まり、利益率は2.8%まで戻る。
グループの営業利益は500億円に近づく。自己資本は3,300億円ほどで、還元を30%台に保っても、利益の伸びが上回る。関東での出店は小さく試す程度で、大きな賭けにはならない。
- スーパーマーケット(バロー・ドミーなど):数量 440(店舗数(店))× 価格 21(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 9,060 億円・営業利益 385 億円。営業利益率4.25%
- ドラッグストア(V・drug):数量 710(店舗数(店))× 価格 4.27(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 3,028 億円・営業利益 85 億円。営業利益率2.80%
- ホームセンター・ペット・スポーツクラブ・流通など:数量 530(店舗・施設数(店))× 価格 5.09(1店・1施設あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,698 億円・営業利益 81 億円。営業利益率3.00%
倍率:事業の純利益 282 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.97 倍、時価総額 4,222 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:31期連続の増収と既存店5%増の実績からは、スーパーの伸びが続く筋書きは十分にありうる。ただし人件費の重さとドラッグストアの低い利益率を割り引き、中立より低い確率にとどめた。
中立 34% 増収は続くが、人件費と競争が利益率を押さえる 利益 235 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 3,348 円3,668 億円
スーパーは年5店ほどの純増で、10年後に415店になる。1兆円の目標には届かない。客単価は物価並みに上がるが、買上点数は少しずつ減る。利益率は4%で、今とほぼ同じだ。
ドラッグストアは新店のペースが落ち、660店ほどにとどまる。調剤の比率は上がるが、薬価の改定と人手不足で利益率は2.4%に収まる。ホームセンターは店数が横ばいで、利益はペットとスポーツクラブが少し支える。
営業利益は420億円台、純利益は235億円になる。金利が上がるぶん利払いは増える。還元は配当性向30%を軸に、10年で700億円。自己資本は3,150億円で、ROEは7%台半ばにとどまる。
- スーパーマーケット(バロー・ドミーなど):数量 415(店舗数(店))× 価格 20(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 8,416 億円・営業利益 337 億円。営業利益率4.00%
- ドラッグストア(V・drug):数量 660(店舗数(店))× 価格 4.20(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,772 億円・営業利益 67 億円。営業利益率2.40%
- ホームセンター・ペット・スポーツクラブ・流通など:数量 520(店舗・施設数(店))× 価格 5.01(1店・1施設あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,607 億円・営業利益 73 億円。営業利益率2.80%
倍率:事業の純利益 235 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.07 倍、時価総額 3,306 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の増収は続くが、計画の出店ペースには届かず、利益率は今の水準にとどまるという落としどころ。強気と慎重の言い分を突き合わせ、確率の中心に置いた。
やや悲観 25% 安売りの強者に挟まれ、スーパーの利益率が3%台前半へ 利益 163 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,942 円2,128 億円
関西と関東の出店は思うように進まず、採算が合う店だけが残る。東海の主力地域でも、ドラッグストアやディスカウントが食品を強め、客単価は物価を下回る伸びにとどまる。
スーパーの店数は395店、利益率は3%台前半に下がる。ドラッグストアは新店の採算が合わず、利益率は1.6%まで落ちる。ホームセンターは売上が伸びず、ペットも競争が厳しい。
営業利益は300億円ほどで、今よりわずかに多いだけだ。利払いが重く、純利益は163億円と今と同じ水準にとどまる。ROEは5%台で、資本コストに届かない。還元は550億円に抑えられる。
- スーパーマーケット(バロー・ドミーなど):数量 395(店舗数(店))× 価格 20(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 7,702 億円・営業利益 262 億円。営業利益率3.40%
- ドラッグストア(V・drug):数量 600(店舗数(店))× 価格 4.04(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,423 億円・営業利益 39 億円。営業利益率1.60%
- ホームセンター・ペット・スポーツクラブ・流通など:数量 505(店舗・施設数(店))× 価格 4.82(1店・1施設あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,434 億円・営業利益 54 億円。営業利益率2.20%
倍率:ROE 5.5%(純利益163億円÷自己資本2942億円)が資本コスト7.5%に届かず、伸びても価値は増えない。正当化PERの上限は1÷k=13.8倍。利益率が下がり、新しく投じるお金は資本コストを稼げない。上限の8割弱の11.0倍に置いた。
確率:売上の6割弱を占めるスーパーが、オーケー・ロピア・トライアルの出店と、人件費の上昇で挟まれる筋書き。薄い利益率の会社にとって負けやすい形で、楽観側より厚く確率を置いた。
悲観 11% 価格競争に負け、構造的に稼げなくなる 利益 75 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 675 円740 億円
関西・関東の新店が赤字を垂れ流し、東海の主力地域も値下げ競争に巻き込まれる。1店あたりの売上は物価に遠く及ばず、人件費と家賃は固定のまま残る。
スーパーの利益率は2.5%、ドラッグストアは調剤の薬価引き下げと過剰出店で0.5%まで沈む。ホームセンターとペットは店を畳んで規模を縮める。
営業利益は150億円ほどに落ち、利払いを引くと純利益は75億円。新店の減損で自己資本は2,300億円にとどまる。事業は黒字を保つが、稼ぐ力を測ると今の自己資本の半分ほどの価値しか残らない。
配当は利益に見合う水準まで下がり、増配の連続も途切れる。関東に出した店は閉じ、関西は撤退に近い縮小になる。東海の本拠だけが、薄い利益を守る砦として残る。
- スーパーマーケット(バロー・ドミーなど):数量 380(店舗数(店))× 価格 18(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 6,817 億円・営業利益 170 億円。営業利益率2.50%
- ドラッグストア(V・drug):数量 560(店舗数(店))× 価格 3.72(1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,081 億円・営業利益 10 億円。営業利益率0.50%
- ホームセンター・ペット・スポーツクラブ・流通など:数量 490(店舗・施設数(店))× 価格 4.44(1店・1施設あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数))→ 売上 2,173 億円・営業利益 26 億円。営業利益率1.20%
倍率:ROE 3.3%(純利益 75 億円 ÷ 自己資本 2300 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 11.0 倍より低い 8.8 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:関西・関東への越境が裏目に出て、値下げ競争に引き込まれる筋書き。生活必需品なので需要そのものは消えず、確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スーパーマーケット(バロー・ドミーなど)
東海・北陸・関西・関東の食品スーパー364店。生鮮と総菜を自社の工場・プロセスセンターで作って届ける。2025年10月にドミー32店が連結に入った。
| 数量店舗数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 364 | 15 | 5,408 | 221 |
| 10 年後 中立 | 415 | 20 | 8,416 | 337 |
取り方:2026年3月期のスーパー事業の営業収益5,408億円を期末の364店で割って1店あたり売上を出した。ドミーは半年分しか入っていないため、通年になると1店あたりが見かけ約5%上がる(半年分の売上は、スーパーの増収額からバロー単体の伸びを引いた推定で250〜300億円)。先の1店あたり売上は、この5%と、物価並みの客単価上昇から買上点数の減り分を引いた1.30倍の積で置いた。
ドラッグストア(V・drug)
中部薬品が運営する571店(うち調剤取扱228店)。調剤の併設を増やし、関西・名古屋へ出店している。
| 数量店舗数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 571 | 3.23 | 1,845 | 38 |
| 10 年後 中立 | 660 | 4.20 | 2,772 | 67 |
取り方:2026年3月期のドラッグストア事業の営業収益1,845億円を期末の571店で割った。先の1店あたり売上は、客単価と調剤の単価が物価並みに伸びるとして1.30倍(薬価の引き下げで調剤の単価は物価に届かないと見て、物価の1.34倍から少し引いた)。
ホームセンター・ペット・スポーツクラブ・流通など
ホームセンターバロー163店、ペットショップ197店、スポーツクラブ156店のほか、物流・商品調達の子会社。
| 数量店舗・施設数(店) | 価格1店・1施設あたり年間売上(億円。物価が乗る名目の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 516 | 3.86 | 1,990 | 57 |
| 10 年後 中立 | 520 | 5.01 | 2,607 | 73 |
取り方:ホームセンター1,241億円、ペットショップ355億円、スポーツクラブ113億円、流通関連225億円、その他56億円の合計1,990億円を、ホームセンター・ペット・スポーツクラブの店舗・施設数516で割った。営業利益は、各事業の合計103億円からグループ内取引の消去46億円を引いた57億円。先の売上は物価並みの客単価上昇から買上点数の減りを引いた1.30倍。
リスクと懸念
関西・関東の出店が裏目に出る
関西ではオーケー、関東ではロピアやトライアルが出店を進める街へ、バローは薄い利益率のまま入っていく。新店が育つ前に値下げ競争に巻き込まれれば、赤字と減損が積み上がり、中計が掲げた関西500億円構想も遠のく。
人件費の上昇が利益率を削る
最低賃金は毎年上がり、パートの確保も難しくなっている。スーパーの利益率は4%、グループ全体では3%と薄いため、人件費が売上の伸びを上回れば、増収でも増益にならない。2027年3月期の利益予想が小幅な増益にとどまる点にも、その兆しがある。
金利が上がり、借金の利払いが重くなる
純有利子負債は1,046億円で、借り換えのたびに金利が上がる。10年で利益を毎年26億円ほど削る計算だ。さらに設備投資が続けば、借金は増える。景気が悪化した時に利払いが重く残る。
ドラッグストアとホームセンターの利益が戻らない
ドラッグストアの利益は前の期より減り、中計の目標(営業利益62億円)に届かない。調剤の薬価は引き下げの方向にあり、他社の出店も続く。ホームセンターも人口減の中で伸びにくく、ペットは利益が半分に減った。
リースの固定費が残る
賃借している店の家賃は、売上が落ちても減らない固定の約束になる。賃借料の年額は確かめきれていない。新リース会計基準で2028年3月期から数字の形が変わり、自己資本比率が下がるため、財務を強く見せていた面が薄れる。
ドミー買収の統合がうまく進まない
ドミーは愛知の地場チェーンで、バローとは売場や物流の作りが違う。プライベートブランドと物流の共有が思うように進まなければ、利益率は上がらず、買った店は減損の種になる。買収額は小さいが、次の同業買収が大きくなれば、同じ問題が重くなる。
今後の分かれ目
- 既存店売上が3期連続で前年を割り、客数が減り始める
- 総菜とベーカリーの強みが崩れ、客単価だけでは増収を保てない。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 関西・関東の新店が出店から2年で黒字になる
- 越境の賭けが当たる兆しだ。楽観・やや楽観の確率を上げ、関西500億円構想の実現性も高まる。
- ドラッグストアの営業利益率が3%台に乗る
- 調剤併設の戦略が機能している。中立の利益率を上げ、グループの稼ぐ力を見直す。
- スーパー同業の大型再編でバローが買い手に回る
- 買値と統合の条件を見る。割高なら資本の稼ぎが薄まり、中立の倍率を下げる。
- 金利が想定より早く上がり、借り換えが重くなる
- 純利益が想定を下回る。利払いの重さをやや悲観の筋書きに織り込み、確率を寄せる。
- 自社株買いが本格化し、還元が配当性向30%を大きく超える
- 自己資本が薄くなりROEは上がる。利益は変わらないので、価値は還元の額だけ今に近づく。
見ておくもの
- 既存店売上高・客数・客単価(月次)
- 関西・関東の新店の黒字化の時期
- ドラッグストアの営業利益率と調剤併設の比率
- 純有利子負債と利払いの動き
- 配当性向とDOE、自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
スーパー・ドラッグストア・ホームセンターほかの3つに分け、店舗数×1店あたり売上(物価が乗る名目)で売上を積んだ。利益率は物価で動かさず、借り換えで増える利払いは純利益から引いた。自己資本は今の値+純利益の合計−還元で流し、ROEは結果として出した。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 7.5%、g 3.75%)と下限の1÷k(13.8倍)で決め、中立はROEがkをわずかに超えるだけなので下限に近い。悲観は稼ぐ力から置いた。新リース会計基準で2028年3月期から数字の形が変わるが、10年後は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。市場の倍率や今の株価には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→15.68 倍・やや楽観 PER 14.4→14.97 倍・中立 PER 13.9→14.07 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの−0.25%を足した7.25%。同じ領域のライフ(7.0%)より、裁量の消費の比重が高く、借金も多いぶん、少しだけ高く置いた。関西・関東への出店や事業の整理の遅れといった個別の懸念はkに足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いておらず、上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.50%。