結論
エムビーエスは、古くなった住宅やビルの外装を修復し、橋梁やトンネルのコンクリート落下を防ぐ専門施工会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。建築物の改修需要とインフラの老朽化を追い風に利益は伸ばせるが、現在の時価総額に対する10年価値の余裕は大きくない。
収益の核は独自のホームメイキャップ工法である。2026年5月期は建築物向け施工が4,314件、スケルトン防災コーティングの施工が209件に達した。リフォーム工事の受注窓口となる取引先パートナーは771社に広がり、営業利益率も14%台に上昇した。特許や技術研修、全国の施工実績は地元の一般塗装会社にはない強みだ。
ただし、技術が優れていても施工を引き受ける人と協力会社が増えなければ工事件数は伸びない。専門材料の調達先が集中し、公共工事では発注者と元請けの価格交渉力も強い。今期の受注残が厚いことを、そのまま10年分の成長とみなすべきではない。2026年10月に公表された新たな合弁構想も、まだ稼ぐ力として数えない。
財務は守りが堅い。2026年5月期の自己資本約39億円に対し純現金は約24億円あり、増配と自己株式の取得も続いている。一方で不動産や投資有価証券も保有し、余裕資金の運用が常に株主利益に結び付くとは限らない。中立の2036年5月期には売上約89億円、純利益約10億円を見込む。悲観的な施工網の縮小も考慮すると、安全域は慎重に見る必要がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社の魅力は、古い建物を再び使えるようにするという理解しやすい仕事にある。橋梁補修も住宅の外壁改修も10年後に消える需要ではない。しかも工法の特許、施工後の保証、実物の工事実績があり、単なる営業代行や情報仲介より稼ぎの源が見えやすい。借金に頼らず全国へ展開してきた点も評価できる。
ただし、本当の堀とは競合が値下げしても注文が逃げず、値上げしても顧客が残る力である。技術の独自性は確認できるが、案件単価の上昇、競合に勝った件数、継続受注率を示す資料はなお足りない。約10の施工認定店を全国に増やすにも教育と品質監査が必要で、看板を増やすだけで営業利益が倍になる事業ではない。職人が仕上げる工事の質を、遠隔の本社だけで管理することはできない。
稼いだ利益がそのまま株主のものになるわけでもない。新支店、外注先の育成、保証への備え、債権回収には資金が必要だ。さらに投資有価証券の損失や周辺技術への出資は、施工利益の再投資と区別すべきである。自己資本が増えても追加の利益を生まない資産に滞留すれば、将来のROEは低下する。
一方で、近年の増配と自己株買いは、余った資金を株主に渡す行動が始まった証拠となる。私は工法の需要が続くことには比較的自信があるが、50拠点が高い採算で埋まるかには確信を持たない。したがって中立の成長を認めつつ、施工網の伸び悩みと資産の毀損を別々に試す。期待価値が現状を上回っても、十分大きな安全域があるとまでは言えない。
何で稼ぐ会社か
エムビーエスが顧客に売るのは塗料そのものではなく、建物を壊さずに外観と耐久性を回復する施工の成果である。山口県宇部市から全国へ広げたホームメイキャップ事業では、工務店、ゼネコン、ハウスメーカー、建物管理会社などの紹介や発注を受け、職人と協力会社を束ねて改修を行う。2026年5月期の同事業の売上は約48億円で、全社売上の約96%を占める。
ホームメイキャップには性質の異なる二つの仕事がある。住宅・ビルの外壁等を研磨し、機能性塗料で再生する建築物向けは年間4,314件の実績がある。橋梁の桁やトンネルを補修するスケルトン防災コーティングは年間209件、施工面積約3万6,100平方メートルで、目視点検を妨げにくい透明な剥落防止技術が特徴だ。後者は西日本高速道路などとの技術連携や公共発注案件の実績が営業の入り口になる。
会社は二つの工事の売上を別々には開示していない。そこで国交省の類似する可視型剥落防止工法の積算単価を参照し、インフラの面積から推定売上を求め、残りを建築物の件数に割り当てた。建築物一件当たり約86万円、インフラ一件当たり約518万円という現時点の金額は分析上の仮定であり、会社公表の平均請負額ではない。
ほかに通常の建築工事業が約1.9億円、その他事業が約0.4億円ある。後者は不動産の売買・賃貸や加盟店への材料販売などを含み、安定した課金型ソフト事業ではない。会社が管理し外注業者が現場で施工する体制なので、売上の拡大には案件選別、工程管理、安全管理、保証対応が欠かせない。AIエージェントが受発注事務を省力化しても、壁を直し橋を補修する物理的な仕事は代替できない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、外壁の美観再生とコンクリートの透明な剥落防止を一つの施工会社が扱えることだ。独自工法の特許や施工マニュアル、保証、各地の実績は模倣の手間を生む。ホームメイキャップの取引先パートナーは771社に達し、スケルトン工法は全国47都道府県で累計1,666件の施工実績を持つ。顧客にとっては安さだけでなく、仕上がりと施工後の責任を一緒に買える点が価値となる。
収益性には改善の実績がある。2021年5月期の営業利益率約7%から2026年5月期には14%台へ上がり、同期間に大幅な借入増も必要としなかった。工事の選別や購買管理、支店展開の組み合わせは一定の成果を示している。ただし、昨年度の利益率はこの会社の長い履歴の中でも高い水準であり、現在の採算を永久に維持できる証拠にはならない。
堀は強固な独占ではなく、専門技術と現場管理を積み重ねた中程度の堀だと考える。2026年5月期の主要な材料仕入先への依存度は約59%と高い。元請けが公共工事の入札や住宅修繕の見積もりを競わせれば、独自工法でも値上げがすべて通るとは限らない。実際、建築物向けの平均受注単価を長期にわたって引き上げたという直接の公表数値はない。
財務上の純現金は大きく、過去10年の営業利益の変動も相対的に小さい。しかし将来の増分資本利益率は、技術そのものより新支店の採算と施工管理者一人当たりの案件数で決まる。ここで投資収益率が資本コストを超え続けるかを見極めたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の土台は新築より既存ストックの保全にある。住宅が減っても外壁の劣化はなくならず、橋梁やトンネルは使い続ける限り補修を要する。会社資料によれば全国の道路橋は約73万橋あり、建設から50年超の比率は2030年に約55%、2040年には約75%に達する見通しだ。この数字は保全の必要性を示すが、予算と技術者がなければ直ちに施工件数にはならない。
住宅リフォーム市場は数兆円規模で、会社資料が引用する推計では2040年の狭義の市場が約8兆円となる。大規模な建設会社も含む維持修繕市場はさらに大きい。しかし、外装補修だけに絞った公的な市場規模と、同社の厳密なシェアは開示されていない。建築物向けの推定売上約37億円を住宅リフォーム約7兆円と比べた約0.05%は、対象範囲が一致しない参考値でしかない。
競争相手は地域の塗装・防水工事会社、改修を一括受注するゼネコン、建物管理会社の協力業者である。橋梁補修ではショーボンド建設を擁するショーボンドホールディングスなど、大規模な補修専業各社が相手になる。ショーボンドの建設売上は数百億円規模で、エムビーエスの推定インフラ売上とは桁が違う。ただし契約工法や工事範囲が異なるので、この売上比を市場シェアと誤認しない。競合別の透明剥落防止工法の施工面積シェアは非開示である。
人手不足と物価上昇は業界の構造問題だ。賃金、足場費、塗料費が上がっても、発注者が価格転嫁に応じなければ工事会社の利益率は縮む。50拠点への展開目標には地理的な強みがあるが、支店数よりも認定施工店と現場監督の増加がボトルネックとなる。2036年の中立では市場全体の実質補修量はほぼ横ばいから微増とし、同社が小さなシェアを獲得して件数を増やす。単価の上昇は物価3%の範囲に収め、独自工法だから毎年値上げで超過成長できるとは考えない。
資本政策と M&A
経営は全国への支店展開と施工技術の開発を優先しながら、株主還元を強めている。配当は2021年5月期から2026年5月期まで連続して増え、2026年5月期には約2.7億円の自己株式取得を実施した。自己株式は約80万株に達し、流通する株数が減った分は既存株主の取り分に効く。一方、過去には増資による希薄化もあり、長期の株数変化を片側だけ評価してはならない。
2026年8月公表の事業計画には、2028年5月までに全国50拠点を目指す方針がある。数値で示した経営指標は売上高経常利益率10%以上、自己資本比率50%以上、ROE8%以上、PBR1倍以上だ。確定した中期の売上・営業利益額の約束はなく、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額にも数字の約束はない。2027年5月期の会社業績予想自体も2026年10月時点では未定である。
事業外への資金投入には目を光らせたい。保有有価証券には評価損が生じており、賃貸不動産やロボット関連企業への投資も本業と同じ利回りを約束しない。2026年10月に発表したテックビルドとの合弁は全体40百万円の小規模な取り組みで、当面の企業価値を動かす買収益とは扱わない。純現金約24億円のうち、工事の立替金、未成工事の受入金、保証と支店運営に備える約12億円を除いた部分を余剰資金とみる。直近の増配と自己株買いの実績から、余剰資金の株主への戻り方は100%で評価するが、使途の点検は続ける。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
住宅の新築着工が減っても、既存の外壁や橋梁の補修は繰り返し必要になる。特に橋梁の老朽化は物理的に止められず、剥落防止と目視点検の両立を求める発注者に透明なスケルトン工法が選ばれる余地が大きい。2026年までに建築物の施工実績は累計5万件超、インフラは累計1,666件を積み上げた。これは新参企業にはない採用事例であり、工法の指定に結び付けば施工面積はまだ広げられる。
営業基盤も前進している。取引先パートナーは771社に達し、28拠点から全国50拠点への展開が進めば、拠点間の紹介案件や広域のハウスメーカーからの一括受注を取りやすくなる。一般住宅の外装工事は案件が小さいため、地方ごとに有力な取引先を確保する効果が大きい。稼働率と現場管理の効率が上がれば、本社費の負担を吸収しながら利益率を高められる。
株主が得る利益にも改善の余地がある。2026年5月期は純現金が約24億円あり、自己株買いと増配を同時に行えた。追加の成長投資に十分な収益率が見込めない場合、配当や買い戻しへ振り替えられる。材料の共同購買、施工の標準化、工程記録の自動化が進めば、一件当たりの粗利を保てる。新しいロボットやセンサー技術が売上を生むとは決めつけなくても、既存工事の質と省力化だけで上向く余地はある。
慎重な見方
会社の工法には価値があるが、発注者が高く買い続けるとは限らない。外壁塗装は地場施工会社が多く、ゼネコンや住宅メーカーは複数業者を比較して発注できる。透明な剥落防止材にも代替工法があり、公共工事では材料認定と入札制度が価格を縛る。施工実績の蓄積を、そのまま独占的な値決め力とみなすのは早い。
50拠点への計画も、数字としては意欲的すぎる可能性がある。2026年時点で施工認定店は約10社にとどまり、協力会社の工事品質を均一に維持する難しさは支店が増えるほど高まる。事故、施工不良、保証対応が一度重なれば、紹介営業の信用を失いかねない。仕入れの約6割が特定先に集中することも、価格転嫁の力が弱いときには利益を傷める。
さらに、本業以外への資金配分は楽観できない。有価証券や不動産に資金を振り向ける一方で、投資証券には損失が発生した。ロボット関連投資や新たな合弁事業も、成功するまでは株主のオーナー利益を減らす選択肢だ。2026年5月期の高い利益率を出発点に、案件数と採算がともに下がれば純利益は急速に消える。過去に2008年の営業赤字を経験した会社であり、成長途上の小型企業の財務的な余裕と、将来の超過利益が続くことは別問題である。
どちらに重みを置いたか
必要不可欠な補修需要と技術実績は評価するが、会社固有の案件単価や施工認定網の規模は、強い値決め力を証明するには足りない。確率は楽観側29%、中立35%、悲観側36%と、下側へ7ポイントだけ寄せた。人材と施工品質の制約を認めつつ、純現金と長年の施工実績が深い悪化を緩和するため、極端な悲観にはしない。事業価値の積み上げから現状比約18%の上振れ余地が出るが、大きな安全域とは呼べない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,550 円177 億円(+ 還元の換算額還元の合計 433 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 1,640 円114 億円、今との差 +17.1%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 6.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,307 円437 億円 | 874 円61 億円 | +412.9% | +19.7% | 718 円50 億円 |
| やや楽観 | 19% | 3,892 円270 億円 | 638 円44 億円 | +223.6% | +13.8% | 861 円60 億円 |
| 中立 | 35% | 2,675 円185 億円 | 470 円33 億円 | +124.6% | +9.3% | 1,101 円76 億円 |
| やや悲観 | 24% | 828 円57 億円 | 216 円15 億円 | −25.4% | −3.2% | 251 円17 億円 |
| 悲観 | 12% | 375 円26 億円 | 69 円5 億円 | −68.3% | −11.5% | 53 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,550 円177 億円 | 433 円30 億円 | +113.1% | +8.6% | 2,983 円207 億円 |
今の株価時価総額 1,400 円97 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 全国施工網が定着しインフラ技術も普及 利益 21 億円 · PER 20.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,307 円437 億円
全国の支店と認定施工店の育成が進み、既存パートナーが広域の外装改修を継続発注する。建築物向けは年8,000件となり、地場塗装会社だけでは応えにくい案件の一括管理を担う。量の増加に加え、大型物件と高機能コーティングの比率が上がり、物価を上回る平均単価も獲得する。
インフラ向けはスケルトン防災コーティングの採用が高速道路会社と自治体に広がる。施工件数は450件となり、施工面積の大型化を伴って単価も上がる。パシフィックコンサルタンツなどとの連携による指定工法化が進み、元請けとの競争で工程管理の力が認められる。施工の標準化で外注原価率も下げる。
一般建築工事は選別受注を続け、不動産は利益の主体にしない。中核の高採算化で増えた利益から約61億円を10年間で株主に還元しながら、施工人材と支店への投資を継続できる。ロボットやRFIDは施工管理を補助するが、未検証の新製品売上は計上しない。
- ホームメイキャップ・建築物外装:数量 8,000(建築物向け年間施工件数(件))× 価格 0.01(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 102 億円・営業利益 23 億円。施工件数は現状の1.85倍。大型案件比率上昇で価格は約1.48倍、営業利益率22%。
- ホームメイキャップ・インフラ防災:数量 450(インフラ向け年間施工件数(件、参考施工面積㎡))× 価格 0.08(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 36 億円・営業利益 9 億円。公共採用と認定施工店の増加で件数約2.15倍、単価約1.52倍。
- 一般建築工事:数量 15.0(換算大型工事案件数(件・推定))× 価格 0.29(換算1件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。一般工事の選別受注を継続。
- その他・不動産・加盟店向け材料:数量 2.0(その他取引の年商換算案件数(件・推定))× 価格 0.47(換算案件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。不動産・材料供給を小規模に伸ばす。
倍率:資本コストk6.75%、2036年以降の名目成長率g3%。自己資本利益率約20.7%、普通の堀で超過収益の残存を1/2とした増分資本利益率RONIC約13.7%から、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)の上限約20.84倍。余剰現金12億円の利息0.168億円を純利益から控除した事業利益に掛け、余剰現金を別途加える。
確率:50拠点の稼働、専門施工人材の増加、インフラ工法採用が同時に順調という複数条件の達成が必要なため、上限側の確率は10%に絞る。
やや楽観 19% 支店増設と受注基盤が順調に拡大 利益 13 億円 · PER 19.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,892 円270 億円
全国の支店拡大が計画どおりに進み、施工管理者の採用と協力会社の教育もおおむね追いつく。既存住宅の維持修繕は新築着工の減少を補い、建築物向け施工は年6,700件に増える。住宅メーカーとの関係が深まり、広域案件の発注窓口としての立場が強くなる。単価は物価上昇に加え、やや大型の工事比率が増す。
インフラでは、橋梁の点検義務や補修計画を背景にスケルトン工法の実績がさらに広がる。施工件数は355件へ増え、元請けが工法を指定する割合も緩やかに上昇する。施工面積の増大と品質保証の負担を価格にある程度転嫁することで、工事採算を改善する。
一方、競合の補修専業企業や地元業者も案件を狙い、同社だけが高い単価を自由に設定できるわけではない。間接費は支店増設に合わせて膨らみ、本社費も物価に応じて増える。利益の約半分を配当と自社株式取得で還元しながら、成長のための運転資金を維持する。
- ホームメイキャップ・建築物外装:数量 6,700(建築物向け年間施工件数(件))× 価格 0.01(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 80 億円・営業利益 16 億円。工事件数1.55倍、名目単価1.38倍。効率改善で利益率19.5%。
- ホームメイキャップ・インフラ防災:数量 355(インフラ向け年間施工件数(件、参考施工面積㎡))× 価格 0.07(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 26 億円・営業利益 6 億円。件数1.70倍、工事規模拡大で単価1.42倍。
- 一般建築工事:数量 12.0(換算大型工事案件数(件・推定))× 価格 0.27(換算1件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。一般工事は低い採算で緩やかに伸びる。
- その他・不動産・加盟店向け材料:数量 2.0(その他取引の年商換算案件数(件・推定))× 価格 0.30(換算案件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。その他は小規模で収益への影響も軽微。
倍率:k6.75%、g3%、普通の堀の残存率1/2。ROE15.5%からRONIC約11.1%を求めた正当化PERの上限約19.47倍を採用。純利益には余剰現金利息を含むため0.168億円を引き、現金12億円を別に戻す。
確率:施工技術が採用されやすく老朽インフラの需要も強いが、全国の現場品質管理に負荷が掛かるので、強気の本命より一段下の確度とする。
中立 35% 維持修繕需要を取り込み着実に増収 利益 10 億円 · PER 18.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,675 円185 億円
建築物の改修需要は持続し、地元業者との競争の中でも取引先の広がりが案件増につながる。支店は増えるが、そのすべてが高い稼働率に達するわけではない。建築物向けは年5,650件と、現在から約3割多い規模になる。平均工事単価は物価上昇にほぼ沿うため、実質の値上げによって利益を稼ぐ筋書きではない。
インフラ向けは補修の必要性とスケルトン工法の実績を背景に、施工が295件へ増える。透明剥落防止工法を採用する現場が増える一方、ショーボンドなどの競合や入札価格の制約も続く。工事単価は10年間の物価上昇分にほぼとどまり、粗利率の改善も緩やかだ。
通常の建築工事や不動産取引は収益の中核にはならない。支店の管理費、施工研修、保証対応の費用が増えるため、全社の営業利益率は足元の高水準からさらに無条件で拡大するわけではない。中立の純利益は約10億円に増えるが、留保利益が自己資本を厚くするのでROEは足元より低くなる。新たな大型買収はなく、10年間の利益のおよそ4割を株主に還元する。
- ホームメイキャップ・建築物外装:数量 5,650(建築物向け年間施工件数(件))× 価格 0.01(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 65 億円・営業利益 12 億円。建築物の件数約1.31倍、単価約1.34倍(物価3%の10年累計)。
- ホームメイキャップ・インフラ防災:数量 295(インフラ向け年間施工件数(件、参考施工面積㎡))× 価格 0.07(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。年間施工件数約1.41倍、単価は物価にほぼ一致。
- 一般建築工事:数量 10.0(換算大型工事案件数(件・推定))× 価格 0.25(換算1件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。一般工事の実質件数を横ばい、価格は物価並み。
- その他・不動産・加盟店向け材料:数量 1.0(その他取引の年商換算案件数(件・推定))× 価格 0.50(換算案件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。その他事業は横ばい規模。
倍率:k6.75%、g3%、普通の堀の残存率1/2。全社ROE約11.9%から新規再投資のRONIC約9.3%、正当化PER約18.08倍を導く。全社利益から余剰現金の税後受取利息0.168億円を控除し、現金12億円を別に数えた。市場の実績PERは使わない。
確率:建築物補修と公共インフラの需要は長い一方、50拠点の目標達成を前提にせず、施工人員の制約を折り込んだ中心値とした。
やや悲観 24% 人手不足と価格競争で利益率が後退 利益 4 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 828 円57 億円
支店は増えても現場監督と認定施工店の育成が追いつかず、受注を断る場面が増える。建築物向けは年4,350件と現在とほぼ同じ水準にとどまり、工事単価も物価上昇に負ける。地元の外壁業者が低価格で受注し、ハウスメーカーも工事の内製管理を進めるため、エムビーエスの紹介案件は伸び悩む。
インフラの老朽化は進むものの、自治体の財政難と技術者不足によって執行が遅れる。スケルトン工法の施工は210件と横ばいに近く、大手の橋梁補修業者との入札競争で利幅が下がる。材料費と外注費が上昇する中、10年累計の価格上昇は物価を下回る。
支店を閉じても賃料や保証対応などの固定費をすぐには落とせず、本社費が利益を圧迫する。有価証券の買い替えや小規模合弁も本業の利益低下を補えない。黒字は維持するがROEは資本コストを割り、増配と買い戻しを縮小する。これは倒産の筋書きではなく、専門施工企業としては残っても資本効率が下がる10年である。
- ホームメイキャップ・建築物外装:数量 4,350(建築物向け年間施工件数(件))× 価格 0.01(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 48 億円・営業利益 7 億円。施工件数ほぼ横ばい、価格上昇1.27倍で物価に劣後。
- ホームメイキャップ・インフラ防災:数量 210(インフラ向け年間施工件数(件、参考施工面積㎡))× 価格 0.06(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。件数横ばい、入札圧力で利益率15%。
- 一般建築工事:数量 7.0(換算大型工事案件数(件・推定))× 価格 0.23(換算1件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。一般工事は受注縮小、ほぼ損益均衡。
- その他・不動産・加盟店向け材料:数量 1.0(その他取引の年商換算案件数(件・推定))× 価格 0.38(換算案件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。その他は小幅赤字に転落。
倍率:ROE約5.9%はk6.75%を下回るため、成長への再投資を高く評価せず、稼ぐ力の上限1/k=約14.81倍を超えない。施工品質・値決め力の低下を織り込んで12倍。余剰現金は現時点の12億円から3/4の9億円しか残らないものとして、その税後利息0.126億円を利益から控除した。
確率:技術自体の需要は残るが、材料の集中調達と施工管理人材の限界が採算を損なう事態は十分ありうるため、悲観側で最も重い確率を配する。
悲観 12% 施工網が縮小し特許優位も失われる 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 375 円26 億円
専門材料の調達難と施工品質の問題が重なり、ハウスメーカーやゼネコンからの受注が大きく減る。認定施工店の離脱も発生し、全国の支店の一部を閉じる。建築物向け工事は年3,100件に減り、価格も物価に十分追いつかない。既存工法を使った外装改修は残るが、一般の塗装会社との競争では独自性を失う。
スケルトン工法では代替する補修方法が公共案件で広まり、受注は年間120件へ縮小する。技術提携を維持しても仕様指定を確保できず、価格を下げなければ仕事を取れなくなる。通常建築工事とその他の事業も赤字となり、施工保証費や閉鎖する拠点の費用が本社損益を圧迫する。
営業損益は小幅赤字になり、保有有価証券や周辺事業への投資の一部には約8億円の評価・処分損が生じる。10年間の前半で稼いだ利益の大半は事業の縮小と損失処理に使われ、株主還元は約5億円にとどまる。企業は存続しても超過収益の見込みは失われるため、株式価値は今ある純現金と処分可能資産の保守的な回収額を基準にする。
- ホームメイキャップ・建築物外装:数量 3,100(建築物向け年間施工件数(件))× 価格 0.01(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。件数約0.72倍、単価約1.14倍で実質大幅値下げ。
- ホームメイキャップ・インフラ防災:数量 120(インフラ向け年間施工件数(件、参考施工面積㎡))× 価格 0.05(工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。工法シェアを失い施工件数約0.57倍。
- 一般建築工事:数量 4.0(換算大型工事案件数(件・推定))× 価格 0.22(換算1件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。一般工事も案件不足で赤字。
- その他・不動産・加盟店向け材料:数量 1.0(その他取引の年商換算案件数(件・推定))× 価格 0.20(換算案件当たり売上(億円、名目・推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。不動産等の規模を縮小。
倍率:赤字事業に永久成長PERを用いない。2026年5月末の現在自己資本約38.8億円に、現金と換金可能な資産の保守的回収額26億円を割ったPBR約0.6701倍を掛ける。2036年に留保した自己資本49.9億円へ床倍率を掛けて価値を膨らませない。
確率:主要材料の供給制約、施工品質の事故と競合の代替工法の普及が重なる複合事象であり確率は低いが、事業規模が小さく一度の信用失墜が大きいので12%を無視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホームメイキャップ・建築物外装
住宅・集合住宅・ビル等の外装研磨、補修、再生コーティング。工務店、管理会社、ハウスメーカーを介して施工する。
| 数量建築物向け年間施工件数(件) | 価格工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 4,314 | 0.01 | 37 | 7 |
| 10 年後 中立 | 5,650 | 0.01 | 65 | 12 |
取り方:2026年8月の会社事業計画資料に建築物施工4,314件がある。ホームメイキャップ事業の合計売上48.03527億円から、同資料のインフラ施工面積36,100㎡と国交省の可視型剥落防止工法の2023年設計単価23,010円/㎡を基に、工法差・仮設費等を踏まえて推定したインフラ売上10.83億円を差し引いた。残り37.20527億円÷4,314件=約86.2万円/件。建築物だけの売上・平均単価・営業利益は非開示で、営業利益7.10億円も本分析の配分推計。
ホームメイキャップ・インフラ防災
スケルトン防災コーティング工法を用いる橋桁、橋脚、トンネル等の透明なコンクリート剥落防止工事。
| 数量インフラ向け年間施工件数(件、参考施工面積㎡) | 価格工事1件当たり平均売上(億円、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 209 | 0.05 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 295 | 0.07 | 20 | 5 |
取り方:2026年8月の会社事業計画資料に209件・36.1千㎡。2023年国土交通省近畿地方整備局の別工法『剥落防止シート貼付・可視可能型』設計単価23,010円/㎡は同社受注単価ではない。工法、現場管理、足場等の差を含む仮の平均請負単価を30,000円/㎡とし、36,100㎡×3万円=10.83億円、209件で割って約518万円/件。利益2.73189億円はホームメイキャップ事業の営業利益計9.83189億円との整合をとった推計である。
一般建築工事
ホームメイキャップ独自工法以外の新築・改修工事の請負。
| 数量換算大型工事案件数(件・推定) | 価格換算1件当たり売上(億円、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 10.0 | 0.19 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 0.25 | 3 | 0 |
取り方:2026年5月期決算短信の建築工事業売上1.88081億円と営業利益0.02609億円を採用。受注件数の開示がないため10件の大口換算案件と仮定し、売上÷10件=約1,881万円/件とした。実際の受注件数や実際の平均請負額ではない。
その他・不動産・加盟店向け材料
不動産売買・賃貸仲介等と加盟店に対する材料供給。継続課金ソフトは確認されない。
| 数量その他取引の年商換算案件数(件・推定) | 価格換算案件当たり売上(億円、名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1.0 | 0.38 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.50 | 1 | 0 |
取り方:決算短信のその他売上0.38103億円、営業利益0.01933億円を採用。内訳に不動産と加盟店向け材料販売があるが、売買物件数や材料出荷数量は非開示なので、異質な取引を1年間の換算バスケット1件として表した。成長の中核とせず、実際の販売件数と誤読しない。
リスクと懸念
施工管理者と認定施工店の不足
会社は全国50拠点を目指すが、2026年時点の施工認定店は約10社にすぎない。支店が増えても現場監督や職人の育成が追いつかなければ案件を引き受けられず、施工の質もばらつく。今後10年の価値に効くのは看板の数ではなく、工事一件当たりの粗利益と、無事故で納められる人員体制である。
主要材料供給先への高い依存
有価証券報告書ではシーカ・ジャパンに対する仕入依存が約59%に達する。塗料や機能性材料の価格高騰、供給停止、仕様変更が起きると工事単価へすぐには転嫁できない。独自工法が収益上の強みであることと、主要材料の仕入価格を同社が自由に決められることは別である。
公共工事の価格競争と発注予算
老朽橋梁が増えること自体は確実性が高いが、自治体の予算、人手、入札制度が実際の発注量を決める。透明な剥落防止技術は他にもあり、大手補修会社やゼネコンは代替手法を提案できる。スケルトン工法が工事仕様に採用される率と、採算を維持した落札率が鈍れば、成長は面積にも利益にも結び付かない。
保証対応と施工不良の累積
外壁と橋梁の改修は引き渡して終わりではなく、長期に品質が保たれることを発注者が期待する仕事だ。広域で外注施工を使うほど、施工条件や下地処理に差が生まれる。重大な剥落、再施工、安全事故が起きれば保証費用だけでなく、住宅メーカーや高速道路会社への紹介ルートを失う可能性がある。
余裕資金の投資損失と統治
2026年5月期には投資有価証券の減損損失が発生している。非事業用の有価証券、不動産、ロボット関連の出資へ現金を広く振り向けると、工事で稼いだ利益を損なう恐れがある。創業経営者の存在感と株式保有の集中も、少数株主の資本配分に対する監視を弱めかねず、増配と自己株取得が今後も続くかを確認したい。
AIエージェント代替と未商用技術の期待
施工自体は現場で人が体を動かす業務なので、SI受託、事務BPO、席課金SaaSのようなAIエージェントによる売上の直接代替には当たらない。ただし見積書作成や写真報告は自動化され、競合もその費用削減を価格競争に使える。RFID監視やロボットについては実証・出資の段階にとどまり、収益化前に研究費だけが増えるリスクがある。
高採算の継続を前提にする危険
2026年5月期の営業利益率14%台は同社の過去の高水準であり、2027年5月期第1四半期の増益だけでは10年間の維持を保証しない。受注残高が増えても大型工事の採算が落ちれば利益は減る。販管費や支店固定費が先行する局面を見逃すと、売上の成長だけで資本収益率を過大評価する。
今後の分かれ目
- 建築物の年間施工が6,000件を超え、既存支店の採算を維持したら
- 全国施工網の規模の経済が確認でき、やや楽観の確率を増やす。値上げの実績も分けて確かめる。
- スケルトン施工が年300件を超え、施工面積と受注単価も連動して増えたら
- インフラ工法の採用が一過性ではない証拠となり、中立の数量と利益率を上げる。
- 施工認定店と現場管理者が増えないまま支店だけが50に近づいたら
- 人件費と間接費が先行するため、やや悲観の確率を高め、工事件数の成長を抑える。
- 主要材料の仕入価格が上がり、売上総利益率が複数期連続で低下したら
- 独自工法の値決め力に疑義が生じる。各工事の粗利率と長期成長率を見直す。
- 連続増配と自己株取得が止まり、投資有価証券や周辺事業への出資が増えたら
- 余剰現金の株主への戻り方を1.0から0.75へ引き下げ、資本配分による価値毀損を悲観に反映する。
- 大手ハウスメーカーとの包括受注契約や公共工事の採用仕様が明示され、平均施工単価が上昇したら
- 単なる市場成長ではなく値決め力と顧客の切り替え費用が確認できるため、堀の強さと倍率の前提を再検討する。
見ておくもの
- ホームメイキャップ建築物の年間施工件数と一件当たり売上の推移(開示があれば建築物・インフラ別)
- スケルトン工法の年間施工件数・面積・採用自治体数と公共入札での受注額
- 認定施工店数と拠点数、取引先パートナー数、支店別の収益性
- ホームメイキャップ事業の受注額、受注残高、売上総利益率と主要仕入先比率
- 2027年5月期会社業績予想の公表状況と通期に向けた営業利益率
- 増配・自己株買いの額、現預金、投資有価証券の減損および資本配分
- 施工品質の保証費用とRFID・ロボット技術の有償契約実績
倍率と資本コストの決め方
株価1,390円と約96億円の時価総額は、施工件数・参考単価・10年先の利益と倍率を出した後でのみ比較した。建築物4,314件とインフラ209件は会社開示で、両者の売上分解、平均単価、通常工事の換算件数は公開情報を使った推定である。中立の価格上昇は10年間の物価3%に一致させ、株価上昇を説明するために実質値上げを足していない。PERはk6.75%、g3%と超過ROEの半減から計算し、現在や過去の市場PERを採用しなかった。余剰現金は12億円だけを別に評価し、投資証券や不動産の額を上乗せして二重に数えない。10年間の留保資金のうち支店拡張や工事運転資金に使う分は自由な現金とみなさず、ここでは将来の余剰資金の追加加算をしない保守的な計算である。悲観時は現在の資産の換金額を床にする。2027年以降の新リース基準で会計上の負債分類が変わっても、賃料は工事採算に含める形で10年比較を統一した。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、過去の低い利益変動と厚い純現金による質の調整マイナス0.75%を反映。経営者依存などの個別リスクは確率と筋書きで扱う。