結論
オーテックは、ビルや工場の空調を自動で制御する工事を請け負い、配管の部材も卸す会社だ。純現金が時価総額の2割を超える。筆者の結論は、足元の利益は山の水準で、10年後も同じ水準が続くとは見ない。今の値段はやや割高だ。
儲けの柱は環境システム事業。空調の計装工事で、営業利益率は28%に達した。全社の営業利益率は、2年で7%前後から15%に倍増した。繰越工事も131億円と厚く、数年は堅い。
ただ、この利益率は工事の値上げが通った結果で、人手不足がいつまでも味方する保証はない。中立の筋書きでは、利益率は24%まで落ちる。それでも10年後の純利益は43億円ほどで、物価の上昇を除くと今よりも少ない。
管工機材は卸で、薄利の事業だ。直近は原価の上昇を価格に移せず、わずかな赤字だった。
守りは固い。借金はなく、配当は利益の4割以上を約束している。確率で加重した本質価値は、今の時価総額を2割強下回る。悪くない会社を、少し高い値段で見ている、というのが筆者の見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い中身だが、いまの稼ぎは山」と映る。
計装の技術を持つ小さな専門家で、借金がなく、現金が厚い。10年たっても、空調の制御という事業は残る。ここまでは、持ち続けたい会社の条件に近い。
だが、オーナー利益の目で見ると、問題は利益の水準だ。営業利益率は7%前後が長く続いたあと、直近の3期で15%まで駆け上がった。この上昇が、技術の優位による持続的なものなのか、人手不足と値上げが重なった一時的な追い風なのか。筆者は、半分は持続し、半分は元に戻ると見る。
配当は利益の4割以上で、残りは現金として積み上がる。積み上がった現金は、使い道がなければ稼ぎを薄める。10年後の自己資本は今の倍近くになり、資本の効率はむしろ下がる。
安全域は厚い。だが、今の値段は、山の利益を前提にしている。山の利益に高い倍率を掛ける買い方は、筆者の流儀ではない。
何で稼ぐ会社か
オーテックの売上は、2つの事業からなる。2026年3月期は337億円。
柱は環境システム事業で、売上は217億円、営業利益は61億円だ。ビルや工場の空調の自動制御と、放射冷暖房の設計・施工・保守を請け負う。空調工事の元請であるダイダン、東洋熱工、新菱冷熱工業などが主な取引先だ。公共の仕事が約4割を占め、残りが民間。都市の再開発が最近の追い風になっている。
儲けの源泉は、図面どおりに空調が動くように、センサーと制御機器を組み込む技術だ。工事のあとの保守でも収入が入る。グループにはインターセントラル(放射空調)があり、2026年4月には首都圏の試運転・保守を担う会社も傘下に入れた。
もう一つが管工機材事業で、売上は120億円。衛生陶器や住設機器、継手、バルブ、鋼管を、設備工事会社や二次卸に売る商社の仕事だ。営業損益は8000万円の赤字で、利益はほとんど出ていない。
全社では、本社などの費用が9億円ほど差し引かれる。環境システムの稼ぎが、管工機材の薄利と本社費を支える構図だ。
売上の構成を見ると、環境システムが6割強、管工機材が3割強だ。利益では環境システムがほぼすべてを稼ぎ出している。
優良さと弱いところ
優良さの中身は、環境システム事業の計装の技術にある。空調の制御は、設計から保守まで一貫して請け負うので、他社が簡単には入れ替えられない。営業利益率が28%という数字は、設備工事の中でも高い。繰越工事は131億円で前の年から2割増え、受注の勢いもある。
ただし、取引先は大手の元請に偏っていて、価格を決める力は元請の側にもある。今の利益率は、原価の上昇を工事の値段に移せた結果だ。人手不足で選んで受注できる局面が続いてきたが、景気が反転すれば値下げの圧力が戻る。
管工機材には、堀がない。卸の仕事で、原価が上がれば利益が消える。2026年3月期は、売上が増えたのに赤字だった。
資本の使い方は堅実だ。借金はなく、投資はオフィスの移転と支店の新築、小さな買収にとどまる。配当は利益の4割以上と、株主資本に対する4.8%の高い方を約束した。筆者は、堅い経営だと見る。
弱みは規模の小ささと、環境システムへの依存だ。ここが崩れると、全体が崩れる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空調の設備工事は、いまが追い風の時期だ。都市の再開発、半導体工場、データセンターが、空調と制御の仕事を押し上げている。ビルを省エネに建て替えるZEB(消費エネルギーを実質ゼロにするビル)の流れも、既存ビルの更新を促す。
一方で、現場の人手は足りない。2024年から残業の上限が厳しくなり、職人も高齢化した。このため業界は、取れる仕事を選び、値段を上げる方向に動いた。上場の設備工事会社の多くで、工事の粗利率が改善している。
オーテックは小型で、大手のサブコンと同じ土俵にはいない。大手の下で、計装という専門の工事を受け持つ立場だ。だから、仕事の量は元請の工事量に左右される。その代わり、技術で選ばれる分野では、価格で押される度合いが小さい。
筆者は、10年で工事の量は人手の制約で実質ほとんど増えず、値段だけが物価並みに上がると見る。景気が悪化すれば、2008年からの数年のように、利益率は大きく落ちうる。
管工機材の市場は、住宅の着工が減る方向にあり、卸の競争も厳しい。
業界の分かれ目は、人手の制約の中で、技術を持つ会社が値段を保てるかどうかだ。計装は、その数少ない分野のひとつと筆者は見る。
資本政策と M&A
株主への約束は明確だ。2026年5月、配当方針を「配当性向40%以上、または株主資本配当率(DOE)4.8%以上の高い方」に改めた。2027年3月期は利益の4割を配る予定だ。自社株買いの実績は、見当たらない。
手元の現金は103億円ある。借金を引いた純現金は87億円で、時価総額の2割を超える。ただ、工事は材料を先に買い、代金を後で受け取る商売だ。現金のかなりの部分は、その立替に要る。
投資はオフィスの移転、東関東支店の新築、首都圏の保守会社の買収と、小さく堅い。大きな買収で価値を壊した過去はない。
大株主の顔ぶれは目を引く。管工機材の取引先でもある日本継手が19%を持つ。投資ファンドのUHPartners2が7%台、光通信の投資組合が6%台、アズビルが4.8%だ。外部の推計では、10年以内の買収やTOB(株式公開買い付け)の確率は20%ほどとされる。ただ、買収の期待は価値の根拠にしない。
第5次の中期経営計画は、今期に公表される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
環境システムの利益率は、一時的な追い風ではない。空調の制御は、設計の段階から関わる専門性の高い仕事で、元請が簡単に外へ出せない。人手不足で職人が減る中、制御で省力化できる分は価値が上がり続ける。受注は233億円と前の期より23%増え、繰越工事は131億円に積み上がった。今の利益率は、技術が評価された値段だ。
追い風も大きい。都市の再開発は10年単位で続き、半導体工場やデータセンターの空調も増える。既存ビルのZEB化は、更新の需要を長く生む。保守の収入が積み上がるほど、景気の波も小さくなる。
会社は配当を厚くすると約束し、現金は積み上がっている。この現金を自社株買いや買収に回せば、1株の価値はさらに増える。日本継手やUHPartners2などが株主にいることも、資本の効率を高める圧力になる。管工機材が赤字を抜け出し、利益率が28%近くで保たれれば、10年後の純利益は今の1.9倍に届く。
さらに、2026年3月期は営業利益が26%増え、会社自身の中期計画の目標を2年早く超えた。計画が保守的だった分、次の計画で目標を引き上げる余地も大きい。
慎重な見方
いまの利益率は、過去の最高を大きく更新した山だ。2024年3月期まで、営業利益率は7%前後で安定していた。そこから2年で15%まで倍増した。工事の値上げが通り、人手不足で受注を選べたことが主因で、構造が変わったとは言い切れない。景気が下向けば、元請は値下げを求め、利益率は戻る。
取引先は大手の元請に偏り、価格を決める力は向こうにある。公共の仕事が4割あり、予算が絞られれば量も減る。データセンターや半導体の投資が国外に移れば、国内の工事の伸びは鈍る。
管工機材は赤字が続き、本社費は物価と人件費で膨らむ。配当が利益の4割を超えても、残りの現金は寝かされ、資本の効率は下がる。10年後の自己資本はほぼ倍になるのに、純利益は今とほぼ変わらない計算になる。
今の値段は、利益の山を永続する前提で付いている。そこに安全域はない。
また、人件費は上がり続け、2026年3月期にも利益を2億円削った。採用が進まなければ、受注残が積み上がっても、工事を消化できない。
どちらに重みを置いたか
利益率の持続力について、慎重な見方の方が強い。強気の見方が頼る受注の勢いと再開発は事実だが、それは利益率が28%から下がらない根拠にはならない。
一方、純現金と無借金の財務は確かな下支えで、悲観の筋書きを浅くした。確率は、中立を最も厚く置きつつ、やや悲観にやや寄せた。強気の筋書きは、利益率の持続と海外・新分野の拡大が重なる姿で、8%にとどめた。悲観の確率は、元請の値下げと量の減少が重なる構造的な負けとして、11%を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,434 円687 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,037 円161 億円)。 今の値に割り戻すと 2,933 円454 億円、今との差 +16.1%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,661 円1,342 億円 | 1,407 円218 億円 | +298.6% | +14.8% | 805 円125 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,818 円1,056 億円 | 1,271 円197 億円 | +220.3% | +12.3% | 1,618 円251 億円 |
| 中立 | 34% | 5,240 円812 億円 | 1,071 円166 億円 | +149.8% | +9.6% | 2,146 円332 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,893 円293 億円 | 871 円135 億円 | +9.4% | +0.9% | 746 円116 億円 |
| 悲観 | 11% | 769 円119 億円 | 645 円100 億円 | −44.0% | −5.6% | 156 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,434 円687 億円 | 1,037 円161 億円 | +116.6% | +8.0% | 5,471 円848 億円 |
今の株価時価総額 2,526 円391 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 計装の技術が評価され、利益率が高いまま伸びる10年 利益 69 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 8,661 円1,342 億円
再開発とZEB化の工事が10年続き、計装の仕事量は実質で3割増える。人手不足は続くが、制御で省力化できる提案が評価され、工事の値段は物価を少し上回って上がる。環境システムの営業利益率は27%に保たれ、営業利益は107億円に届く。
管工機材は、原価を価格に移せるようになって黒字化する。ただ、利益は薄いままだ。
配当は利益の4割強を続け、残りの現金は小さな買収と保守の拡大に回る。
10年後の営業利益は約99億円、純利益は約69億円。今の1.9倍になる。ROEは12%台まで上がる。
人手不足が続く中で、制御による省力化は発注側にも歓迎される。元請との関係も深まり、受注の質が上がる。
- 環境システム事業(空調の自動制御・計装工事):数量 18,814(施工の延べ人月(人月/年、推定))× 価格 210(1人月あたり売上(万円、名目))→ 売上 395 億円・営業利益 107 億円。人月1.3倍、価格は物価を少し上回る、営業利益率27%
- 管工機材事業(設備機器の卸):数量 200(出荷点数(万点/年、推定))× 価格 8,040(1点あたり平均販売額(円、名目))→ 売上 161 億円・営業利益 5 億円。点数1.0倍、営業利益率3%
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.54 倍、時価総額 1,277 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再開発と半導体・データセンターの工事が長く続き、計装の値段も保たれる必要がある。さらに管工機材の赤字も解消する、複数の条件が重なる筋書きで、薄く置いた。
やや楽観 20% 再開発と省エネ更新が続き、利益率がほぼ保たれる10年 利益 56 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 6,818 円1,056 億円
都市再開発と半導体工場の工事が続き、環境システムの量は実質で17%増える。値段は物価を少し上回って上がる。営業利益率は25.5%に保たれ、営業利益は89億円ほどになる。
管工機材は小さな黒字で安定する。本社費は物価で膨らむが、売上の拡大で吸収する。
配当は利益の4割強で、現金は少しずつ積み上がる。
10年後の営業利益は約79億円、純利益は約56億円。ROEは10%前後で、資本コストを上回る。
元請との関係は安定し、保守の収入が少しずつ積み上がる。景気の波は穏やかで、利益の山谷は小さい。
公共の工事も底堅く、民間の落ち込みを和らげる。大きな買収はせず、現金は配当と小さな投資に回る。
- 環境システム事業(空調の自動制御・計装工事):数量 16,932(施工の延べ人月(人月/年、推定))× 価格 206(1人月あたり売上(万円、名目))→ 売上 348 億円・営業利益 89 億円。人月1.17倍、営業利益率25.5%
- 管工機材事業(設備機器の卸):数量 190(出荷点数(万点/年、推定))× 価格 8,040(1点あたり平均販売額(円、名目))→ 売上 153 億円・営業利益 3 億円。点数0.95倍、営業利益率2%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.66 倍、時価総額 980 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が前の期より2割増え、数年先までは堅い。利益率が高めに保たれる筋書きだが、10年先まで続くには景気に恵まれる必要があり、中立より薄く置いた。
中立 34% 中立:数量は人手の制約で小幅増、利益率は24%に落ち着く 利益 43 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 5,240 円812 億円
環境システムは、人手の制約で量が実質5%増にとどまる。値段は物価並みに上がり、売上は約305億円になる。営業利益率は、直近の28%から24%に戻る。
管工機材は、量が1割減る。単価は物価並みに上がり、利益は小さな黒字になる。本社費は物価で1.34倍の約12億円。
10年後の営業利益は約63億円、純利益は約43億円。今の1.2倍だが、物価の上昇を除くと、実質では今より少ない。
配当は利益の4割強で、残りは現金として積み上がる。自己資本は500億円ほどになり、ROEは9%にとどかない。
元請との関係は変わらず、保守の収入が景気の波を和らげる。ただ、利益の水準は山から静かに戻る。
- 環境システム事業(空調の自動制御・計装工事):数量 15,196(施工の延べ人月(人月/年、推定))× 価格 201(1人月あたり売上(万円、名目))→ 売上 305 億円・営業利益 73 億円。人月1.05倍、価格は物価並み、営業利益率24%
- 管工機材事業(設備機器の卸):数量 180(出荷点数(万点/年、推定))× 価格 8,040(1点あたり平均販売額(円、名目))→ 売上 145 億円・営業利益 1 億円。点数0.9倍、営業利益率1%
倍率:ROEは8.6%で、kの8.5%とほぼ並ぶ。ROEがk以上なら下限は1÷kの16.7倍。RONICは約8.6%でgを4%とすると正当化PERも約16.7倍で、両者が重なる16.7倍に置いた。
確率:工事の量は人手の制約で小幅に伸び、値段は物価並みに上がる。利益率は山から下がって24%に落ち着く落としどころ。最も厚く置いた。
やや悲観 27% 景気の反転で値下げ圧力が戻り、利益率が下がる10年 利益 23 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,893 円293 億円
景気が反転し、民間の設備投資と公共の予算が絞られる。環境システムの量は実質で1割減り、元請が値下げを求める。営業利益率は18%まで落ちる。
管工機材は、住宅の着工減で量が落ち、原価の転嫁も遅れて、小さな赤字が続く。
本社費は一部を削るが、物価で膨らむ分が上回る。
10年後の営業利益は約34億円、純利益は約23億円。配当は利益の6割近くまで上がるが、金額は減る。ROEは5%ほどで、資本コストに届かない。
現金は十分にあり、会社が傾くことはない。ただ、成長が止まり、株主への配当も目減りする姿になる。
- 環境システム事業(空調の自動制御・計装工事):数量 13,025(施工の延べ人月(人月/年、推定))× 価格 201(1人月あたり売上(万円、名目))→ 売上 262 億円・営業利益 47 億円。人月0.9倍、営業利益率18%
- 管工機材事業(設備機器の卸):数量 160(出荷点数(万点/年、推定))× 価格 7,800(1点あたり平均販売額(円、名目))→ 売上 125 億円・営業利益 −1 億円。点数0.8倍、転嫁が遅れ営業利益率-1%
倍率:ROE5%でkを下回る。利益は山から下がり、先に積み上がる現金の稼ぎも低い。倍率は1÷kの11.8倍を下回り、9.5倍とした。
確率:過去に利益率が一桁前半へ落ちた谷がある。景気の反転で値下げ圧力が戻り、利益率が下がる筋書きは現実味があり、中立に近い厚みを置いた。
悲観 11% 元請の値下げと量の減少が重なり、利益が細る10年 利益 4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 769 円119 億円
元請の値下げが戻り、人手の制約が緩むと同時に、国内の大型案件が海外に流れる。環境システムの量は実質で35%減り、値段も物価に届かない。営業利益率は11%まで落ちる。
管工機材は、量も値段も落ち込み、赤字が定着する。
10年後の営業利益は約6億円、純利益は約4億円。配当は約束を下げて半分ほどに削られる。それでも無借金で、純現金が価値を支える。会社は存続するが、成長は止まる。
経営は固定費を絞って黒字を保とうとするが、売上の減少が先に来る。保守の収入だけが、利益の下支えになる。
株主構成の変化や買収の動きが起きても、本業の稼ぎが細れば、買い手が付く値段は上がらない。
- 環境システム事業(空調の自動制御・計装工事):数量 9,407(施工の延べ人月(人月/年、推定))× 価格 180(1人月あたり売上(万円、名目))→ 売上 169 億円・営業利益 19 億円。人月0.65倍、価格は物価に届かず、営業利益率11%
- 管工機材事業(設備機器の卸):数量 120(出荷点数(万点/年、推定))× 価格 7,200(1点あたり平均販売額(円、名目))→ 売上 86 億円・営業利益 −3 億円。点数0.6倍、営業利益率-3%
倍率:純利益が4億円前後で、稼ぐ力で測れない。今の自己資本265億円に0.45を掛けた。純現金と売れる資産の税後を裏づけにした床の額で、帳簿を大きく割る形にした。
確率:純現金が厚く、無借金で、計装の技術もある。会社が傾く確率は低い。それでも、元請の値下げと量の減少が重なる構造的な負けとして1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
環境システム事業(空調の自動制御・計装工事)
ビル・工場の空調の自動制御と放射冷暖房の設計・施工・保守。元請のサブコンから請け負う。
| 数量施工の延べ人月(人月/年、推定) | 価格1人月あたり売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,472 | 150 | 217 | 61 |
| 10 年後 中立 | 15,196 | 201 | 305 | 73 |
取り方:売上217億円を、1人月あたり売上150万円(材料・外注込み、推定)で割り、年1.4万人月強と置いた。人月・単価は開示がなく推定。営業利益は決算短信のセグメント利益。
管工機材事業(設備機器の卸)
衛生陶器・住設機器・継手・バルブ・鋼管を、設備工事会社や二次卸に販売する。
| 数量出荷点数(万点/年、推定) | 価格1点あたり平均販売額(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 6,000 | 120 | −1 |
| 10 年後 中立 | 180 | 8,040 | 145 | 1 |
取り方:売上120億円を、平均販売額6,000円(部材と設備機器の混在を推定)で割り、年200万点と置いた。点数・単価は推定。営業損益は決算短信のセグメント損失。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率は7%前後が長く続いたあと、直近3期で15%に上がった。値上げと人手不足による選別受注が主因で、景気が反転すれば元請の値下げ圧力が戻る。過去の谷では一桁前半まで落ちた。最大の懸念だ。
元請と公共への依存
環境システムの取引先は、ダイダン、東洋熱工、新菱冷熱工業などの大手に偏る。公共の仕事も約4割を占める。元請の工事量が減るか、公共予算が絞られると、受注が一斉に細る。
管工機材の薄利と赤字
卸の仕事で、原価が上がれば利益が消える。2026年3月期は売上が5%増えたのに、営業損失だった。住宅の着工が減る方向にあり、回復の足がかりは乏しい。
人手の制約と人件費
技能者が足りず、量を増やすのが難しい。人件費は上がり続け、2026年3月期も人件費の増加が利益を2億円削った。採用に失敗すれば、受注を取りこぼす。
現金の積み上がりと資本効率
配当は利益の4割台で、残りは現金として積み上がる。使い道がなければ、自己資本が膨らみ、ROEが下がる。買収に動けば、失敗の危険も生まれる。
株主構成の変化
日本継手が19%、ファンドが7%台、光通信の投資組合が6%台と、大口の株主が多い。買い増しや売却で需給が動く。経営方針への働きかけも起こりうる。
今後の分かれ目
- 環境システムの営業利益率が、2期続けて25%を下回る
- 利益率が山から戻る筋書きが現実になる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 環境システムの受注残が、150億円を超えて積み上がる
- 数年の仕事量が確保される。やや楽観の確率を上げてよい。
- 管工機材が、原価の転嫁に成功して黒字を定着させる
- 全社の利益率の底が上がる。中立の利益率を見直す。
- 第5次の中期経営計画で、自社株買いや買収に現金を使う方針が出る
- 資本効率が上がる方向なので、中立のROEと倍率を見直す。
- 日本継手などの大口株主が、買い増しやTOBを仕掛ける
- 価値の見直しにつながる可能性がある。ただし、買収の期待を前提に確率を寄せることはしない。
- 公共予算や元請の工事量が大きく落ち込む
- 量が細る悲観の筋書きに寄せる。純現金の厚さを床として確認する。
見ておくもの
- 環境システムの受注高・繰越工事・営業利益率(四半期)
- 管工機材の営業損益と、原価の転嫁の進み方
- 第5次中期経営計画の株主還元と資本配分の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PERの式(k 7.25%、残る割合1/2、gは4%)から置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。中立のROEがkとほぼ並ぶので、1÷kの11.8倍に置いた。数量は人月と点数の実質で、物価は価格に1.34倍で入れた。中立の営業利益率は直近の山から下げ、直近の高さを永続とは置いていない。本社費も物価で増やした。純現金は運転資金とみて、余った現金には分けなかった。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→18.54 倍・やや楽観 PER 12→17.66 倍・中立 PER 11.8→16.7 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。