結論
日本国土開発は、オフィスや物流施設を建てる建築と、ダムや造成を手がける土木を二本柱とする中堅ゼネコンだ。筆者の結論は「やや割高」。帳簿の純資産に比べて株価は安く見えるが、稼ぐ力が資本コストに届かない。
直近の2026年5月期は、営業利益が71億円と前の期の3倍に戻った。ただ中身は建築の好採算工事に偏る。土木は前の期の大きな損失が収支とんとんに戻っただけで、本格回復とは言えない。2年前には94億円の営業赤字を出した会社でもある。
強みは、大手が敬遠する数十億〜100億円規模の造成・ダム工事を、自前の重機で取れる点にある。弱みは、人手不足の中で工事量が伸びず、利益が景気と工事の当たり外れで大きく振れることだ。
中立の筋書きでは、10年後の営業利益は85億円ほどで、今の水準から名目ではほぼ横ばいだ。物価が1.3倍になる世界では、実質で目減りする。ROEは5〜6%にとどまり、資本コストの9%近くに届かない。この会社は帳簿より稼ぎで測るべきで、その稼ぎに今の値段は少し高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ゼネコンは「買ってすぐ眠れる」事業ではない。毎年、新しい工事を取り直す。一件の失敗が一年の利益を消す。同社はそれを2024年5月期に身をもって示した。
株主が自由に使える利益、つまり再投資を引いた後の利益は、純利益の7割ほどと筆者は見る。工場も店舗も要らない事業だからだ。ただ、これから不動産と太陽光に資本を厚く入れる。その余裕は薄くなる。
良い点は、純資産の中身が土地や発電所など現物に近いことだ。損失を出しても、すぐに資本が尽きる会社ではない。悪い点は、純資産を稼ぐ力に変えられていないことだ。ROEが資本コストを下回るうちは、帳簿の純資産は額面より低い価値しかない。
経営への注文は二つ。工事の受注審査を緩めないこと、売却益に頼らず本業で稼ぐことだ。2026年5月期の好調が建築の好採算工事で上がった分かどうかは、2027年5月期の計画が示している。営業利益は63億円と、減益の予想だ。
安全域は薄い。楽観の筋書きでは今の値段を大きく上回るが、確率は低い。中立では、10年後の価値が今の値段に届かない。筆者は、この値段に確かな安全域があるとは見ない。
何で稼ぐ会社か
売上の約7割は建築が占める。オフィスビル、マルチテナント型の物流施設、食品工場、公共施設などを請け負う。直近の建築の営業利益は70億円で、全社の稼ぎのほぼ全部を支えた。子会社のコクドビルエースは、既存の建物の改修工事に特化している。
土木は売上の約3割だ。ダム、河川、トンネル、道路、大規模な造成を手がける。重機を自前で持ち、ツイスター工法(土を砕いて混ぜる地盤改良)や自社開発のシールドマシンが特色になる。ただ、工期が長く、不採算の工事を入れ替えるのに時間がかかる。
この二つに加え、2026年5月期から不動産とエネルギーを別に開示し始めた。不動産は開発と賃貸、エネルギーは太陽光発電所の運営と売却だ。自社開発の発電所は累計132MWで、2030年に200MWを目ざす。2025年12月には岩手県宮古市で、夜間も電気を流せる太陽光発電所が動き出した。売上は小さいが、売却益が出る年は営業利益を大きく押し上げる。前の期は、土木の赤字をこの二つの稼ぎが埋めた。
ほかに、石炭灰から道路の路盤材を作る福島エコクリートと、塩害対策の吸着材を作るANIONがある。ANIONは2028年5月期以降の利益貢献を会社が見込む。連結子会社は14社だ。
優良さと弱いところ
優良さは「中の下から中」と筆者は見る。堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。
強みは二つある。一つは、重機と工法を自前で持つ土木の造成・ダム工事だ。大手が手を出さない中規模の案件で、価格を取りやすい。もう一つは、建築で物流施設・オフィス・食品工場に絞って受注を選ぶ姿勢だ。2026年5月期の建築は利益率が7%を超え、準大手の中でも高い。
弱みは三つある。一つ目は、工事の採算管理がぶれたことだ。2024年5月期は、大型造成現場の是正と突貫工事で土木が62億円、建築も36億円の損失を出した。前の中期経営計画は営業利益110億円を掲げたが、40億円へ引き下げても、実績は23億円にとどまった。二つ目は、人口減と人手不足で工事量が伸びにくいこと。三つ目は、不動産・エネルギーの売却益に利益が左右されることだ。
資本の使い方は改善の途上にある。新しい中期経営計画は、2028年5月期にROE8%、2031年5月期にROE10%を掲げる。だが実績は、ROEが10%を超えたのが2019〜2021年5月期の3期だけだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は70兆円台とされ、人口減で実質の量は増えにくい成熟市場だ。同社の売上は、その0.2%弱にすぎない。それでも今は「作れば儲かる」局面にある。2024年4月に残業の上限規制が始まり、技能者が足りなくなった。受け手のゼネコンは仕事を選べるようになり、値上げが通りやすい。
この会社の戦場は二つある。一つは民間の建築だ。物流施設、オフィス、食品工場は、データセンターほど派手ではないが需要が底堅い。競合は同じ準大手の戸田建設、安藤・間、奥村組、東急建設などで、価格を決める力はスーパーゼネコンより弱い。
もう一つは公共の土木だ。国土強靱化の第1次実施中期計画は、2026年度から5年で事業規模20兆円強を見込む。ダム・河川・造成は、更新と防災の需要が続く。土木に強い熊谷組や西松建設、安藤・間とも競る。自治体の発注は数十億〜100億円規模が多く、大手が敬遠するこの帯が同社の主戦場になる。
10年先は、民間投資の波が一巡し、建築は実質で横ばいか緩やかな縮小に向かうと筆者は見る。土木は強靱化が下支えするが、予算には上限があり、人手の制約も続く。人手不足の業界では、売上を伸ばす力より、採算を守る力が差になる。再編も進みやすい。時価総額が400億円台の同社は、買われる側にも、地場ゼネコンを買う側にもなりうる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当を自己資本に連動させるDOE方式だ。2028年5月期までは2.5〜3.5%で、収益が戻れば3.0〜3.5%へ上げる。2026年5月期の年間配当は総額で約20億円で、一部は特別配当だった。2027年5月期は普通配当のみで同じ水準を予想し、配当性向は5割になる。
発行済み株式の約1割は自己株式で、すでに株数から除いて考えている。
投資は積極に転じる。2028年5月期までの3年間で740億円を投じる計画で、前の計画の330億円の2倍を超える。内訳は確かめられなかった。投資に見合う資産売却も組み合わせ、歯止めとして自己資本比率40%以上、負債資本倍率0.7倍以下を掲げる。
筆者がいちばん気にするのは、この投資の稼ぎが資本コストを超えるかだ。工事で赤字を出した会社が、資本を食う不動産・発電所へ軸足を移す。売却益が出れば良く見えるが、出なければ重荷になる。
株主では、ザイマックスグループが7%前後を持つ。政策保有株の規模と縮減の方針は、確かめられなかったため評価に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設の構造が変わった。人手が足りず、ゼネコンが仕事を選べる。同社は採算の悪い受注を絞り、好採算の建築を伸ばして営業利益を71億円まで戻した。前の期は23億円で、1年で3倍だ。
土木の出血が止まったことが大きい。前の期に45億円あった損失が、直近は3億円の黒字になった。不採算工事の入れ替えが進めば、稼ぎはさらに戻る余地がある。自前の重機で造成やダムを施工できる会社は多くなく、大手が避ける数十億〜100億円の案件では価格が取れる。
国土強靱化の20兆円強は、この領域に追い風だ。エネルギーも、太陽光の開発実績が132MWまで増え、蓄電池やPPAへ広がる。投資が回り始めれば、売却益と賃貸収入が安定して積み上がる。
しかも株価は、純資産の6割に満たない。会社は2028年5月期に営業利益90億円、ROE8%を目ざす。DOEも3.0〜3.5%へ上げる方針だ。達成すれば、純資産を大きく下回る値段は説明がつかなくなる。
慎重な見方
今回の回復は質が低い。2026年5月期の営業利益71億円は、建築の好採算工事が想定以上に進んだ分が大きい。会社自身、2027年5月期は63億円の減益を予想する。建築の2028年5月期の目標は利益35億円で、直近の70億円の半分だ。会社が自分の建築の稼ぎを半分と見ているなら、71億円を土台に考えるのは危ない。
土木は黒字といっても3億円で、売上の1%に満たない。2024年5月期には、一つの造成現場の是正と突貫工事で大きな損失を出した。受注の審査を強めたとはいえ、一件の失敗で一年の利益を失う体質は変わっていない。
不動産とエネルギーの利益は、売却益が出る年と出ない年で大きく変わる。前の期は60億円ほど、直近は18億円だった。しかも740億円の投資は、前の計画の2倍を超える。景気が崩れれば、資産の売却がうまくいかず、金利負担も増える。
ROEも低い。営業利益率の山は2018年5月期の13%だが、近年の谷は赤字だ。人手不足で工事量は伸びず、物価の分だけ名目で増えるにすぎない。これでは資本コストを稼げない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の見方が言う土木の止血と、建築の好採算は事実だ。だが会社自身が、2027年5月期の減益と、建築の目標利益を直近の半分に置いている。この控えめな計画を、好調が一時的である裏づけとして重く見た。確率は、中立に4割弱を置き、残りは悲観側にやや厚くした。悲観を1割強に置いたのは、2024年5月期の赤字と、土木の3期連続の損失があるからだ。ただ、土地や発電所など現物の資産が床を支えるので、悲観でも会社が消えるとは見ない。純資産の安さだけでは割安とは言えない。稼ぐ力が資本コストを上回ると示されるまで、倍率は資本コストの手前の水準にとどめる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 675 円543 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 284 円228 億円)。 今の値に割り戻すと 478 円385 億円、今との差 −6.4%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,279 円1,029 億円 | 423 円340 億円 | +232.9% | +12.8% | 102 円82 億円 |
| やや楽観 | 15% | 1,009 円812 億円 | 348 円280 億円 | +165.5% | +10.3% | 203 円164 億円 |
| 中立 | 37% | 796 円640 億円 | 317 円255 億円 | +117.7% | +8.1% | 412 円331 億円 |
| やや悲観 | 28% | 398 円320 億円 | 249 円200 億円 | +26.6% | +2.4% | 181 円146 億円 |
| 悲観 | 14% | 292 円235 億円 | 137 円110 億円 | −16.1% | −1.7% | 60 円48 億円 |
| 加重平均 | 100% | 675 円543 億円 | 284 円228 億円 | +87.5% | +6.5% | 958 円771 億円 |
今の株価時価総額 511 円411 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 採算を選び続け、資産運用も育つ 利益 90 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,279 円1,029 億円
建築は物流施設・オフィス・食品工場の更新需要を取り込み、10年を通じて利益率6%台半ばを保つ。土木は不採算工事の入れ替えが終わり、国土強靱化の予算を背に造成とダムで量を増やす。利益率は5%を超える。不動産とエネルギーは、太陽光の自社開発が200MWを超え、蓄電池とPPAも育つ。売却益と賃貸収入が積み上がり、この部門だけで40億円台後半を稼ぐ。営業利益は130億円台になる。還元は配当を中心にDOE3.5%まで引き上げ、ROEは8%台に届く。それでも資本コストには届かないが、会社が掲げる長期目標のROE10%に近づく、最も良い姿だ。国内の量は実質で増えない。価格と採算、それに資産運用で補う。
- 建築:数量 132(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,264 億円・営業利益 82 億円。132万人日 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 6.5%
- 土木:数量 55.6(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 560 億円・営業利益 31 億円。56万人日 × 1人日あたり 10.08万円、利益率 5.5%
- 不動産・エネルギー・その他:数量 700(開発・運用している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.21(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 148 億円・営業利益 47 億円。資産残高 700億円 × 回転 0.211、利益率 32.0%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,029 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建築・土木・資産運用の三つが同時に当たる筋書き。直近の回復は建築の好採算工事に偏っており、10年続けて当たる確率は低いと置いた。
やや楽観 15% 価格転嫁が続き、投資が実を結ぶ 利益 71 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,009 円812 億円
建築は利益率5%台半ばを保ち、土木も安定して黒字を続ける。工事量は実質で横ばいだが、価格は物価並みに上がる。発電所の開発は計画どおり増え、不動産の売却益も毎年出る。営業利益は100億円台に乗り、会社が2028年5月期に掲げる90億円は、遅れても達成される。配当はDOE3%台で、自己資本は千億円強まで増える。ROEは6〜7%まで上がる。ただ売却益に頼る構造は残り、利益の質は高くない。大型の失敗はなく、小さな不採算工事が散発する程度にとどまる。会社が目ざす姿に近いが、人手不足で工事量は増えず、利益の伸びは価格と採算の改善で稼ぐ形になる。ROE10%という長期の目標には、最後まで届かない。
- 建築:数量 130(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,239 億円・営業利益 69 億円。130万人日 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 5.6%
- 土木:数量 53.1(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 535 億円・営業利益 25 億円。53万人日 × 1人日あたり 10.08万円、利益率 4.7%
- 不動産・エネルギー・その他:数量 620(開発・運用している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.21(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 131 億円・営業利益 39 億円。資産残高 620億円 × 回転 0.211、利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 812 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価並みに通り、土木の黒字が定着し、投資が回れば営業利益は会社の目標90億円に届く。2024年5月期の赤字を考えると中立より薄い。
中立 37% 量は横ばい、価格だけ上がる成熟 利益 56 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 796 円640 億円
建築の工事量は実質で5%ほど減り、価格だけが物価並みに上がる。利益率は建築5%、土木4%で落ち着く。不動産とエネルギーは、年に30億円強を稼ぐ。営業利益は85億円ほどで、会社が2028年5月期に掲げる90億円と同じ水準が10年先まで続く。ただ物価が1.3倍になるため、実質では今より1割ほど細る。配当はDOE3%前後で、自己資本は千億円まで増える。ROEは5〜6%と、資本コストの手前にとどまる。大きな失敗も大きな成功もない道だ。工事の当たり外れで単年の利益は数十億円ぶれるが、平均すればこの水準に収まる。
- 建築:数量 123(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,177 億円・営業利益 59 億円。123万人日 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 5.0%
- 土木:数量 50.6(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 510 億円・営業利益 20 億円。51万人日 × 1人日あたり 10.08万円、利益率 4.0%
- 不動産・エネルギー・その他:数量 560(開発・運用している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.21(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 118 億円・営業利益 33 億円。資産残高 560億円 × 回転 0.211、利益率 28.0%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 640 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は実質で横ばいか少し減り、価格は物価並み。建築の好採算は部分的に残り、土木は薄い黒字、資産運用は平常に戻る、最も標準的な姿。
やや悲観 28% 地方の縮小と人手不足で採算が細る 利益 22 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 398 円320 億円
地方の人口減と自治体の予算の制約で、土木の量が実質で1割近く減る。建築も、民間投資が一巡して工事量が1割強減る。価格転嫁は止まり、人件費の上昇だけが重い。建築の利益率は4%を割り、土木は2%にとどまる。不動産とエネルギーも、金利が上がって売却益が細る。営業利益は40億円弱まで落ちる。配当は守るが、投資が先行して借金が増える。ROEは2%台になる。会社は選別受注を貫けず、安い工事を取って人手を埋める。資産は残るのですぐに追い込まれることはないが、稼ぐ力は資本コストをはるかに下回る。740億円の投資は、回収が遅れて自己資本比率を押し下げる。市場からは「資本コストを稼げない中堅」と見られ、純資産を大きく下回る評価が続く。
- 建築:数量 114(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.28(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,058 億円・営業利益 40 億円。114万人日 × 1人日あたり 9.28万円、利益率 3.8%
- 土木:数量 46.5(施工量(万人日、実質))× 価格 9.78(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 455 億円・営業利益 9 億円。46万人日 × 1人日あたり 9.78万円、利益率 2.0%
- 不動産・エネルギー・その他:数量 450(開発・運用している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.20(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 92 億円・営業利益 17 億円。資産残高 450億円 × 回転 0.204、利益率 18.0%
倍率:構造的に稼ぐ力が細った姿。純利益 22 億円 ÷ k 8.75% で稼ぐ力は 250 億円ほど。売れる資産の税後は約400億円。この間を、今の自己資本 712 億円 × 0.45 倍(時価総額 320 億円)に置いた。中立の PBR(約0.5倍)より低い。ROE は 2% 台で資本コストに届かない。
確率:地方の人口減と人手不足は中堅に重い。工事の採算管理の弱さも前の中期計画で露呈した。値上げ疲れで利益率が戻る展開を、中立に近い厚みで置いた。
悲観 14% 大型の赤字工事が再発し、優良さを失う 利益 −28 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 292 円235 億円
土木で大型の赤字工事が再び出る。2024年5月期の造成現場のような件が、10年のどこかで繰り返される。建築も受注の審査を緩めて量を追い、利益率は1〜2%に落ちる。740億円の投資が裏目に出て、不動産と発電所に評価損が出る。営業損益は赤字になり、自己資本も減損で目減りする。配当は途中で削る。財務の体力は残るが、優良な会社とは見られなくなる。再編の対象にもなりやすく、地場ゼネコンや投資家からの買収提案も出てくる。それでも売れる資産が床になり、会社が消えることはない。地方の需要の縮みと人手不足はゆっくり効き、気づけば受注を選べない会社になっている、という負け方だ。10年のあいだに、二度ほど営業赤字の年が来る。
- 建築:数量 97.1(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.00(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 874 億円・営業利益 13 億円。97万人日 × 1人日あたり 9.00万円、利益率 1.5%
- 土木:数量 40.5(施工量(万人日、実質))× 価格 9.48(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 384 億円・営業利益 −8 億円。40万人日 × 1人日あたり 9.48万円、利益率 -2.0%
- 不動産・エネルギー・その他:数量 300(開発・運用している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.20(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 59 億円・営業利益 0 億円。資産残高 300億円 × 回転 0.198、利益率 0.0%
倍率:構造的に負け、赤字と減損が出た姿。稼ぐ力は無く、床は売れる資産で測る。総資産の 75% 回収・負債全額払いで残る約 320 億円を、強制売却の値引きと費用を見て、今の自己資本 712 億円 × 0.33 倍(時価総額 235 億円)に置いた。
確率:2024年5月期の94億円の営業赤字と、土木の3期連続の損失は、同じ失敗がまた起きうることを示す。同じ領域の会社より1〜2ポイント厚く、1割台半ばに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築
オフィス・物流施設・食品工場・公共施設などを請け負って建てる主力。改修工事も手がける。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 130 | 7.14 | 925 | 70 |
| 10 年後 中立 | 123 | 9.57 | 1,177 | 59 |
取り方:2026年5月期の建築の売上 925 億円・セグメント利益 70 億円(決算の開示)。施工量は開示が無いため、技能者の労務費を売上の約35%、日当を約2.5万円と置き、約129.5万人日と推定した。1人日あたり売上 7.14 万円が価格に当たり、物価の分は価格に入る。同じ領域の戸田建設と置き方を揃えた。
土木
ダム・河川・トンネル・道路・大規模造成など。自前の重機と工法で、官公庁の中規模案件に強い。
| 数量施工量(万人日、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 50.6 | 7.52 | 380 | 3 |
| 10 年後 中立 | 50.6 | 10 | 510 | 20 |
取り方:土木の売上 380 億円・セグメント利益 3 億円(前の期は 45 億円の損失)。建築と同じ要領で施工量を約50.6万人日と推定した。土木は機械・材料の割合がやや高いので、1人日あたり売上は建築よりやや高い 7.52 万円とした。
不動産・エネルギー・その他
不動産の開発・賃貸、太陽光発電所の運営と売却、石炭灰の再利用や吸着材などの新規事業。
| 数量開発・運用している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定) | 価格残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 450 | 0.16 | 71 | 18 |
| 10 年後 中立 | 560 | 0.21 | 118 | 33 |
取り方:不動産の売上 25 億円・利益 5 億円、エネルギーの売上 35 億円・利益 13 億円に、その他の売上約 11 億円を加えた(利益はその他を 0 とした)。資産残高は開示が無く、総資産約 1,580 億円のうち、販売用不動産・太陽光設備・賃貸不動産が3割弱と置いて約450億円と推定した。筆者の推定である。数量は実物(資産残高を今の値段で測った実質)で、増えるのは投資計画による積み増し。物価の分は価格に入れ、名目の伸びを数量に置いていない。この部門の売上は売却の有無で年ごとに大きく動く(前の期の売上は約 138 億円)。
リスクと懸念
工事の採算管理の失敗が再発する
2024年5月期は、大型造成現場の是正と突貫工事で土木が62億円、建築も36億円の損失を出し、営業赤字は94億円に達した。受注の審査は強めたが、一件の失敗が一年の利益を消す体質は、ゼネコンに共通だ。同社は規模が小さく、一件の重みが特に大きい。
売却益に頼る利益のぶれ
不動産とエネルギーは、前の期に営業利益が60億円ほど、直近は18億円と、売却の有無で大きく動く。これを土台に配当や投資を組むと、売却が止まった年に計画が崩れる。本業の建築・土木で稼ぐ力が、売却益に頼らず立つかが問われる。
740億円の投資の回収
2028年5月期までの3年間で740億円を投じる計画は、前の計画の2倍を超える。不動産と発電所は金利が上がると評価が下がり、売却益が細る。投資の稼ぎが資本コストを超えなければ、ROEの改善どころか重荷になる。内訳は確かめられなかった。
人手不足で施工量が頭打ちになる
2024年問題以降、技能者の確保が最大の制約になった。人が足りなければ受注があっても売上にできず、労務費の上昇は利益を削る。会社の2027年5月期の計画は、売上が1%増にとどまるのに営業利益は減る。増収が増益に結びつきにくい姿がすでに見える。
公共工事の予算と入札
土木の稼ぎは国土強靱化の予算の執行と、自治体の入札に左右される。執行が遅れる、人手不足が一服して競争が戻る、といった場合は、低採算の工事を取らざるを得なくなる。土木は直近でようやく3億円の黒字で、余裕が小さい。
建築の好採算が一巡する
2026年5月期の建築は、好採算の手持ち工事が想定以上に進んで、利益が7割増えた。会社自身が、2027年5月期は建築の反動を見込み、2028年5月期の建築の目標利益も35億円と、直近の半分に置く。この水準に戻れば、全社の営業利益は大きく下がる。
今後の分かれ目
- 2027年5月期の営業利益が計画の63億円を大きく上回って着地したら
- 好採算の建築が一時的でなかった証拠になる。中立の建築の利益率を5%から上げ、やや楽観以上の確率を増やす。
- 土木が2期続けて、セグメント利益で3%超を出したら
- 不採算工事の入れ替えが終わったと見て、土木の利益率を4%より上に直す。悲観の確率は下がる。
- 不動産・エネルギーの利益が、売却益なしで年20億円を超えて安定したら
- 賃貸・売電のストック収益が育ったと見て、この部門の中立の利益を引き上げる。
- 740億円の投資から、採算の悪い案件や評価損が出たら
- 資本の使い方への評価を下げ、中立から悲観側へ確率を移す。
- 地場ゼネコンの買収や、準大手との統合の発表が出たら
- 統合後の資本効率次第。割安な事業承継型の買収なら価値を押し上げ、割高な買収なら下げる。同社が買われる側になる場合は、純資産に比べた値段が材料になる。
- 自社株買いが、純資産を大きく下回る値段で実施されたら
- 資本効率の改善に前向きな証拠として、還元の評価を上げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの建築・土木のセグメント利益と受注の動き
- 土木の不採算工事の入れ替えの進み具合
- 不動産・エネルギーの売却益と賃貸・売電収入の内訳
- 740億円の投資の内訳と、純有利子負債・自己資本比率の推移
- DOEの引き上げと、2028年5月期の営業利益90億円・ROE8%の進捗
- 国土強靱化予算の執行と自治体の発注
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 8.75%(基本 7.5% + quality 1.25%)に届かない前提で、正当化 PER の式と上限 1÷k から置いた。今の株価や今の PER を見てから決めていない。純資産に比べた株価の安さは、悲観側で売れる資産の床(総資産の回収額から負債を引いた残り)として使っただけで、中立の倍率には混ぜていない。純利益には不動産・発電所の売却益が混じるので、直近の54億円は使わず、セグメントごとに数量×価格で積み、売却益が出る年と出ない年をならした。純有利子負債は162億円で純現金ではないため、余った現金は分けていない。持ち合い株は規模を確かめられず、評価に入れていない。不動産・太陽光の稼ぎは利益に入れてあるので、資産としては足していない。2028年5月期から新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.43 倍・やや楽観 PER 9.5→11.43 倍・中立 PER 8.8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。理由は quality_why。工事の採算管理の失敗や M&A などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。