結論
飛島ホールディングスは、橋梁やトンネルなどの土木、民間建築、地域建設・水インフラ・不動産を束ねる中堅建設グループだ。結論は「割安」である。公共インフラの更新という長い需要に支えられ、今の時価総額約425億円は、借入や施工損失を織り込んだ10年の稼ぐ力に比べて低い。ただし、自己資本543億円より安いというだけでは買う理由にならない。工事会社の資産には現金化しにくい契約資産が多いからだ。
収益の柱は、老朽化した橋や道路を直し、災害に強い社会基盤を作る仕事である。土木の受注残約1,237億円と建築の約691億円は、次の数年の仕事の量を支える。一方、公共入札や民間デベロッパーの価格交渉が厳しく、絶対に負けない堀はない。建築の採算改善だけを恒久化せず、人手不足と受注単価の上昇が釣り合うことを条件に見る。
会社は地域会社の買収と不動産事業を強め、2028年3月期に売上高1,600億円、営業利益96億円、ROE10%以上を掲げる。筆者は計画の完全達成を中立の前提にはしていない。10年後は本業の実質施工量を概ね維持し、買収済みの地域事業が育ち、名目売上と利益が緩やかに増える姿を中心に考える。投資後の収益力、負債管理、政策保有株式の売却実行が揃って初めて、割安さは株主の手に戻る。
確率をかけた10年後の事業価値と途中還元を資本コストで戻した現在価値は約644億円で、基準時価総額を約52%上回る。もちろん、安値の裏には歴史的な工事損失、膨らんだ有利子負債、買収後の統合リスクがある。悲観時の床を帳簿の純資産でなく回収可能資産から考えるのは、そのためだ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に確かめたいのは、「10年後も別の顧客が同じ仕事を依頼するか」である。橋や上下水道の維持は、人口が減っても不要にはならない。特殊施工の経験と協力会社網には入札参加を可能にする価値があり、景気の谷でも仕事が完全に消えるとは思わない。だが、発注者が価格を比較できる以上、高い利益率を永久に守る企業でもない。ここが独占的な企業との違いだ。
もう一つの問いは、「利益を一円留保したとき、次の一円より多く稼げるか」である。過去のROE中央値は約8.4%で、要求する資本コスト7.5%を大きく超えてはいない。したがって、留保で不動産や地域会社を増やすだけでは十分でなく、追加投資の税引後利回りが7.5%を上回る証拠が必要だ。帳簿の不動産利回りが低いことは、売上高より投資利益率を見るべき理由を端的に示す。
所有者に帰属する利益は会計の純利益と同じではない。建設会社は工事代金の回収前に協力会社へ支払い、受注増のためにも運転資金を抱える。買収対価、施工設備の更新、物価で高くなる新規投資、借入の借換利息を考えると、配当の原資を自由に増やせるわけではない。既存設備の減価償却は過去の取得原価で続く一方、更新時の現金支出は新しい価格になる。
それでも現在価値に十分な差が生まれるのは、極端な成長を見込んだからではない。本業の実質数量は伸びず、長期の値上げも概ね物価相当、競争による利益率の下振れも入れている。悲観では純資産を払い戻せると仮定せず、実際に売れる資産から負債を差し引いて見る。値段の安全域は魅力的だが、買収に伴う借入の膨張と配当の規律が崩れた場合、この判断をためらわず改める。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は飛島建設の土木と建築である。土木は国・地方自治体が発注する道路、橋梁、鉄道、治水工事と、民間のトンネル・エネルギー関連工事を請け負う。建築は事務所、工場、物流施設、集合住宅などを新築・改修する。売上は工事の進み具合に応じて立ち、受注時に決めた価格から職人の賃金、協力会社への発注費、鋼材や生コンなどの原価を引いた残りが利益となる。施工中の設計変更を顧客へ請求できるかどうかが、利益率の分かれ目になる。
2026年3月期の外部売上は土木602億円、建築515億円、グロース事業等275億円であった。土木のセグメント利益は約44億円、建築約40億円、グロース約25億円だが、本社費用など約39億円を引くと連結営業利益は69億円となる。土木は2025年の686億円から工事着手の遅れで縮み、建築は選別受注による粗利率改善が進んだ。受注残は翌期の売上を保証するものではなく、資材高騰で採算が崩れる危険を含む。
グロース事業は、杉田建設・たち建設などの地域建設、テクアノーツ・極東建設などの水インフラ、木造・木質、フォーユーの不動産開発と賃貸、アクシスウェアの情報システム受託からなる。会社説明資料では2026年3月期の内訳を地域建設77億円、水インフラ52億円、木造・木質8億円、不動産ほか136億円程度と示す。不動産売却を含むため、この全額を毎年繰り返す工事収入と見なしてはいけない。
AIエージェント代替に直接さらされるのは小さな情報システム領域だ。アクシスウェア自身が公表する2026年3月期売上は10.26億円、従業員102人で、受託開発・保守・研修・事務BPO・派遣を手掛ける。人の工数で請求する契約がAIに置き換わる可能性は、施工現場で機械と人が橋を造る仕事とは分けて評価すべきだ。NTTとの合弁ネクストフィールドは持分法の対象であり、その売上を連結グロースの数字へ加えていない。
優良さと弱いところ
同社の守りはブランドの独占力ではなく、工事履歴と現場での施工能力の積み重ねだ。高速道路橋の床版取替、トンネルの補修、耐震・防災工事では、施工実績、安全管理、技術者の資格が入札参加と工期短縮に効く。飛島建設は長い土木施工経験を持ち、水中工事などの専門子会社を加えたことで顧客の困り事に応える範囲が広がった。だが、発注者は複数社を競わせるので、値上げしても顧客が離れない会社とは言い切れない。堀は「普通」であり、強いとまでは評価しない。
2026年3月期の建築工事の粗利率は前年の約8.3%から約10.8%へ改善し、採算を重視した受注の成果が見える。反対に土木の粗利率は約12.0%から11.3%へ下がった。単価転嫁に成功した証拠と、工事の組み合わせで利益が揺れる証拠が同時にある。国全体で人手不足が進めば競争相手も施工能力を絞るが、下請けへの発注費が先に上がる可能性を忘れてはならない。
財務には弱さがある。2017年ごろの純現金から、2026年3月期には純有利子負債155億円へ転じた。自己資本543億円に対する比率は約29%で、即座に危機的というほどではないが、成長投資と配当を同時に続ける余地は狭くなった。過去には2008年と2011年に営業赤字を出しており、ROEが高い年だけを将来へ延ばすことはできない。
保有不動産を隠れた宝とはみなさない。有報で賃貸等不動産の簿価と時価はともに約144億円で、含み益はほぼない。年間賃貸損益約2.6億円は簿価比約1.8%にとどまり、金利3%の世界では資本効率が低い。むしろ、その資金を資本コスト超の補修・水インフラ事業へ回せるかが、今後の企業価値を左右する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内建設投資は国土交通省の2026年度見通しで81兆4,700億円であり、土木28兆5,200億円、建築52兆9,500億円に分かれる。この物差しで飛島の土木売上602億円は市場の約0.21%、建築515億円は約0.10%に相当する。ただし官民、新築・補修、小規模施工をすべて含む広い分母であるため、実際に入札で競う案件だけのシェアより低く出る。中堅施工会社が競う市場は極めて分散しており、会社が案件単価と数量の全容を開示していない点も推計上の制約だ。
土木では鹿島建設、大成建設、大林組、清水建設の大手に加え、安藤・間、熊谷組、西松建設、東急建設や地場会社と争う。建築では大手ゼネコンや戸田建設、地域の有力工務店が競争相手となる。全国工事全体に占める大手各社の売上は数%規模であるのに対し、飛島は全国シェアが1%に届かない。特定地域、特殊な橋梁・水中施工での施工実績が重要で、全国規模の独占力はない。10年後も入札の仕組みが続く以上、シェア上昇を簡単には期待できない。
量の見通しは、新設より補修が支える。高度成長期に造った橋梁、トンネル、上下水道は更新時期を迎え、国土強靱化の継続予算は需要の下支えとなる。他方、地方の人口減少と財政制約は、新築を増やし続ける理由にはならない。国交省の2026年度投資見通しは名目で前年比2.9%増だが、実質の建設活動は小幅な伸びにとどまる。名目売上が伸びても、その多くが資材と人件費の上昇なら実質の仕事量が増えたわけではない。
2026年3月期末の土木受注残は約1,237億円、建築約691億円である。前者は拡大し、後者はやや縮んでおり、将来の稼働を一様に強気とはしない。今後は技術者不足と建設業の時間外労働規制が処理できる案件の量を抑える一方、価格転嫁を認める発注者には利益率を改善させる力も働く。AIは積算や書類作成を効率化するが、橋を造る人や安全管理者を十年で代替するわけではない。
木造・木質と地域建設には住宅着工の減少、開発不動産には金利3%への上昇という逆風がある。水インフラは老朽管更新の需要が比較的読みやすい。グロースの売上拡大をすべて成長と喜ぶのでなく、買収の連結開始で増えた分と既存顧客から受注した分を分ける必要がある。過去の小さな国内案件シェアを守ることと、買収先で無理な価格を払わないことの方が、壮大な新市場獲得より実現性が高い。
資本政策と M&A
2024年に示した中期経営計画は、2028年3月期に売上高1,600億円、営業利益96億円、純利益55億円、ROE10%以上を目指す。主力建設で補修・更新案件の比率を高め、地域建設、水インフラ、木造、不動産と新技術に投資する構想だ。成長事業に150億円、イノベーションに50億円、計200億円規模の戦略投資を掲げる。投資が利益に変わらなければ株主資本の利回りを下げる。
還元には数字の約束がある。2028年3月期までにDOE、すなわち自己資本に対する年間配当総額の割合を4%以上とする方針で、配当実績も過去数年は増加している。一方、定額の自社株買い枠や総還元性向の数値目標は確認できない。2026年3月期の配当総額は約20億円で、純利益の約4割であった。株主への還元を将来の利益より多く見積もらず、利益が傷む筋書きではDOE目標も維持できない可能性を認める。
2026年1月にはたち建設を買収し、買収対価だけで約59億円を投じた。共和成産なども加わり、グロース売上が増えた一方で、連結借入が膨らみ、現金創出より先に成長投資が走っている。経営は政策保有株式を2027年度までにゼロへ減らす方針を公表したが、売却の進み具合と使途を確かめる必要がある。公表済みのTOBや上場廃止予定は確認できない。
余った現金が生じたときに株主へ戻る割合は0.75と考える。大株主による過度な支配はなく増配実績もあるが、直近5年の配当性向中央値は50%に届かず、大規模な自己株式取得による株数削減も確認できないからだ。利益をすべて現金として取り戻せると仮定しないことが、少数株主の安全域を測るうえで重要になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本の橋梁、道路、トンネル、上下水道は建て替えずに放置するという選択が難しい。国土強靱化は短期の景気刺激策ではなく、古いインフラを使い続けるための必要経費だ。土木施工の長い実績を持つ飛島は、その中でも耐震・補修と水中工事という専門性の高い仕事を取り込める。受注残が約1,900億円あるため、数年先まで全く仕事がないという展開も考えにくい。
2026年の建築の粗利率改善は、安い工事を数だけ取らず、施工能力と採算を優先した効果を示す。人手不足が深刻になれば、発注者も施工を引き受ける会社を選べなくなる。無理な受注を断れる企業は資材高を契約価格へ移しやすく、業界全体が売上至上主義から利益重視へ変わる余地がある。AIによる積算や工程の事務省力化も自社の費用を減らし得るが、それを新規ソフト売上の爆発的成長としては見込まない。
地域建設、水インフラ、木材、開発不動産を束ねる買収戦略がうまく働けば、特定大型工事の竣工時期に左右されない収益が増える。たち建設などの子会社が地元の顧客接点を持ち、飛島本体が施工技術や調達力を提供する形で追加利益を生み出せるからだ。政策保有株式の売却と賃貸不動産の見直しが進めば、低利回り資産から施工・設備更新へ資金が移る。配当と成長投資を両立できた場合、現在の小さな時価総額には大きな上昇余地がある。
慎重な見方
建設会社の受注残は将来の利益を保証しない。2008年や2011年のような不採算工事が重なれば、仕事量があるのに営業赤字になる。大型案件は一度受けると簡単には撤退できず、設計変更を認めない発注者、上がる労務費、引き受け手の減る協力会社の組み合わせが利益を奪う。足元では土木の粗利率が低下しており、値上げを自在に通せる会社との見方には無理がある。
地域子会社の買収と不動産投資は、大手ゼネコンにない成長機会であると同時に資本配分の弱点になり得る。2026年3月期は純有利子負債が155億円となり、営業キャッシュフローだけで買収と配当を賄えるとは限らない。今後金利が3%へ上がり、開発不動産の販売が鈍れば、担保として持つ土地の価値と利払いの両面が傷む。売上高が増えても、実際に増えた資本に見合う利益がなければ株主価値は伸びない。
人手不足は価格を押し上げるだけでなく、工事をこなす人数そのものを減らす。人口減少で地方の新築需要が縮み、財政事情によってインフラ補修が先送りされれば、競争相手との値引き合戦へ戻る可能性もある。アクシスウェアの受託開発・BPOはAIエージェントに工数を奪われ、保有不動産の賃貸利回りは想定国債利回りを下回る。会社が掲げるROE10%を継続できなければ、帳簿の自己資本の額は株主にとって安全な床にはならない。
どちらに重みを置いたか
十年後も橋や水道の補修が必要という見方が強く、実質の施工量を失わない中立には根拠がある。一方、公共入札、買収先の採算、不動産と借入の増加という飛島固有の危険も重い。楽観側27%、中立36%、やや悲観・悲観37%とし、下側をやや厚くした。IT受託にはAIエージェント代替を直接織り込み、現場施工まで同じ速度で置き換わるとはみなさない。
中立の価値が現在の時価総額を相応に超えるため、悲観を厚めにしても結論は割安となる。しかし、これは純資産543億円をそのまま換金できるという判断ではない。借入を増やして低収益資産を買う行動が続くなら、上側の確率を引き下げる必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 5,068 円973 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,287 円247 億円)。 今の値に割り戻すと 3,356 円644 億円、今との差 +52.3%、 期待の年率 +12.9%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 11,730 円2,252 億円 | 1,657 円318 億円 | +507.4% | +22.1% | 1,205 円231 億円 |
| やや楽観 | 18% | 8,796 円1,688 億円 | 1,511 円290 億円 | +367.6% | +18.8% | 1,855 円356 億円 |
| 中立 | 36% | 5,424 円1,041 億円 | 1,438 円276 億円 | +211.3% | +14.0% | 2,470 円474 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,544 円296 億円 | 1,094 円210 億円 | +19.7% | +2.3% | 660 円127 億円 |
| 悲観 | 12% | 755 円145 億円 | 625 円120 億円 | −37.4% | −5.7% | 166 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,068 円973 億円 | 1,287 円247 億円 | +188.4% | +12.9% | 6,355 円1,220 億円 |
今の株価時価総額 2,204 円423 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 更新工事と買収後収益がともに好転 利益 150 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11,730 円2,252 億円
国土強靱化と老朽インフラの更新が継続し、飛島は橋梁床版取替・耐震・水中施工の大型案件を高い採算で受ける。職人不足で施工会社を選べない発注者が増え、設計変更による材料高の転嫁にも成功する。土木の実質施工量は現在より増え、建築でも工場・物流施設の採算のよい工事を選別できる。
地域建設と水インフラの買収先は品質管理と共同調達によって独立時より利益を稼ぎ、開発不動産の回転も良好となる。グロースの案件数は約135件換算に広がり、大型案件と専門施工の比率も上がる。政策保有株式と低利回り不動産の整理を進め、借入拡大を抑えながらDOE4%を意識した配当を保つ。
ただしアクシスウェアの人月型売上はAIエージェントによる自動化圧力を免れず、受託工数の数量は現状以上にしない。現場で働く施工チームの情報共有にはAIを使えても、その便益を未確認のソフト外販売高へ付け替えない。継続した安全管理と工期短縮の実績があって初めて高い施工利益率が続く。
- 土木工事:数量 0.1(2026年度の全国土木投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 15,000(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 1,065 億円・営業利益 109 億円。公共更新予算継続、実質の工事量と施工シェアが増加。単価には10年間の物価上昇以上の専門工事評価が反映。
- 建築工事:数量 0.1(2026年度の全国建築投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 15,000(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 870 億円・営業利益 83 億円。採算重視の高仕様建築と民間投資の増加でシェア拡大。
- 地域建設・水インフラ・木質・不動産(非IT):数量 135(年間の完成工事・納入・不動産販売に相当する混合案件数(80件換算とした推計単位))× 価格 5.40(混合案件1件当たりの名目売上(億円、工事規模と不動産販売の構成を含む))→ 売上 729 億円・営業利益 87 億円。地域会社・水中工事・不動産販売の数量と構成の上振れ。件数は混合換算。
- アクシスウェア(SI・保守・研修・BPO):数量 102(受託・BPO担当の年間稼働人数換算(人年、在籍社員102人を代理))× 価格 0.13(従業員1人年当たり売上高(億円、人月課金と一部保守を含む))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:自社AI製品の金額実績がないため数量は現在の102人年が上限。
倍率:基準資本コストk=7.5%、全社の2036年ROE=12.38%(純利益150.4億円÷自己資本1215億円)。通常の堀なので増分投資収益率RONIC=k+0.5×(ROE−k)=9.94%。成長が2036年以降名目2.5%に鈍化するため、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=14.97倍を楽観〜中立の上限そのものに採用。純有利子負債155億円と金利引上げは純利益に反映し、賃貸不動産や保有株式の簿価を余剰現金として二重加算しない。
確率:専門施工の受注量、工事利益率、地域M&Aの統合が同時に成功する強気経路。可能性はあるが、工事粗利率が過去の山を超えるため確率は1割未満。
やや楽観 18% 選別受注が根づき地域事業も拡大 利益 115 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,796 円1,688 億円
国内の道路や上下水道の更新は新築需要の減少を補い、国土強靱化の予算も継続する。飛島は道路や橋の維持補修で受注シェアを小幅に高め、建築では技術者不足に合わせて受注案件を絞る。資材費と賃金を反映した価格が通り、建築の改善した粗利率が長い期間保たれる。
たち建設・杉田建設など地域施工会社の顧客基盤と、テクアノーツなど水インフラのノウハウが連携し、グロース事業は件数と案件単価の両面で伸びる。追加の買収も資本コストを超える案件に限り、借入は一定範囲で管理する。政策保有株式の売却が予定に近いペースで進み、配当を維持する。
情報システムの受託・保守はAIエージェント代替で人月数量が現在より減るが、残った専門業務の価格は物価を超えない。規制文書や工事進捗の自動作成に効く部分は現場コスト削減として現れるが、技術的な先行だけで独占的なサービス売上を新たに作ることは期待しない。
- 土木工事:数量 0.1(2026年度の全国土木投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 14,500(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 974 億円・営業利益 90 億円。補修実績でシェアを取るが、利益率は過去の山を連続して更新する前提ではない。
- 建築工事:数量 0.1(2026年度の全国建築投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 14,200(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 760 億円・営業利益 68 億円。選別受注を維持し工場・物流施設を中心に営業利益率9%。
- 地域建設・水インフラ・木質・不動産(非IT):数量 120(年間の完成工事・納入・不動産販売に相当する混合案件数(80件換算とした推計単位))× 価格 5.25(混合案件1件当たりの名目売上(億円、工事規模と不動産販売の構成を含む))→ 売上 630 億円・営業利益 66 億円。既存買収先の営業連携、優先すべき水インフラで収益性改善。
- アクシスウェア(SI・保守・研修・BPO):数量 90.0(受託・BPO担当の年間稼働人数換算(人年、在籍社員102人を代理))× 価格 0.13(従業員1人年当たり売上高(億円、人月課金と一部保守を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:人月が1割ほど減り、価格も物価程度の上限。
倍率:基準資本コストk=7.5%、全社の2036年ROE=11.44%(純利益114.7億円÷自己資本1003億円)。通常の堀なので増分投資収益率RONIC=k+0.5×(ROE−k)=9.47%。成長が2036年以降名目2.5%に鈍化するため、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=14.72倍を楽観〜中立の上限そのものに採用。純有利子負債155億円と金利引上げは純利益に反映し、賃貸不動産や保有株式の簿価を余剰現金として二重加算しない。
確率:更新需要の拡大と資材価格転嫁には裏付けがあるが、大手・地場ゼネコンとの競争で利益が一方的に上がるとは限らない。
中立 36% 施工量は横ばい、投資した地域事業が育つ 利益 76 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,424 円1,041 億円
橋やトンネル、治水施設の補修は長く続くが、地方人口の減少で新設工事は細る。国の建設投資が物価分だけ増えても、飛島の土木の実質出来高は十年で約2%減、建築は約7%減ると考える。幅広い市場に対するシェアはおおむね維持される。工事の請負価格は物価3%の十年分に近いが、人件費も上がるため、利益率の改善は選別受注で守れる範囲にとどまる。
グロース事業は既存の地域会社の収益が徐々に安定し、買収後の営業連携が一定の成果を生む。現在の約80件相当の物理案件は102件相当へ増えるが、不動産の一時的な大型売却を毎年当然には繰り返さない。中核の維持補修需要が工事量を支える一方、低採算案件を断るため売上拡大は急がない。中期計画を完全に達成しなくても成り立つ十年だ。
アクシスウェアの人月型業務はAIエージェントによって工数が約3分の2となり、名目価格上昇では量の減少を補い切れない。グループ全体では建設の現場作業が中心で、AIによって土木工事自体の価値が消えるわけではない。借入の借換金利負担が増える分を純利益から控除し、低利回り不動産への追加投資は抑える。
- 土木工事:数量 0.1(2026年度の全国土木投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 13,400(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 791 億円・営業利益 71 億円。全国土木需要の実質減少とシェア維持を相殺し、現行固定価格の工事量は微減。
- 建築工事:数量 0.0(2026年度の全国建築投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 13,400(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 643 億円・営業利益 53 億円。建築市場の実質新築減と補修増が相殺し会社出来高は約7%減。
- 地域建設・水インフラ・木質・不動産(非IT):数量 102(年間の完成工事・納入・不動産販売に相当する混合案件数(80件換算とした推計単位))× 価格 4.40(混合案件1件当たりの名目売上(億円、工事規模と不動産販売の構成を含む))→ 売上 449 億円・営業利益 42 億円。80件換算から102件へ。買収・共同調達の効果は一部のみ実現。
- アクシスウェア(SI・保守・研修・BPO):数量 67.0(受託・BPO担当の年間稼働人数換算(人年、在籍社員102人を代理))× 価格 0.13(従業員1人年当たり売上高(億円、人月課金と一部保守を含む))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:数量は約0.66倍、価格は約1.30倍。名目長期gはIT部分0%。
倍率:基準資本コストk=7.5%、全社の2036年ROE=8.61%(純利益75.5億円÷自己資本877億円)。通常の堀なので増分投資収益率RONIC=k+0.5×(ROE−k)=8.05%。成長が2036年以降名目2.5%に鈍化するため、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.79倍を楽観〜中立の上限そのものに採用。純有利子負債155億円と金利引上げは純利益に反映し、賃貸不動産や保有株式の簿価を余剰現金として二重加算しない。
確率:公共更新需要は残り、建設投資の名目伸びは物価が主因。会社の受注残と買収済み資産を考え、需要の強気・弱気の間を最も厚くした。
やや悲観 25% 工事価格の転嫁遅れと買収の重荷 利益 25 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,544 円296 億円
国土強靱化の更新工事は残るものの、技術者の不足と地方自治体の財政制約で案件が予定どおり出ない。大型工事を確保するために施工単価を下げ、鋼材・外注費の上昇も契約変更で回収できない。建築では地場会社や大手ゼネコンとの入札競争が強まり、収入の増加に比べて営業利益が縮む。土木・建築ともに実質の工事量と採算が下がる。
地域事業への投資は売上を増やすが、買収先の工事粗利率は期待以下となる。不動産販売も金利上昇で鈍り、固定費や売れ残り土地が利益を圧迫する。借入更新時の金利を引き受けるため、従来どおりのDOE4%配当を維持することは困難になり、株主還元を減らして財務を守る。
アクシスウェアの受託開発とBPOでは、顧客がAIエージェントを使い始めて必要な作業時間が半減に近づく。業務の価値がなくなるのではなく、時間を請求する仕組みが弱くなるため、名目単価を少し上げても売上は減る。大きい本業では人手不足、狭いIT部門では工数余剰という別々の難しさを抱える。
- 土木工事:数量 0.1(2026年度の全国土木投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 12,800(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 653 億円・営業利益 38 億円。発注量不足・値引き・下請け高で出来高とマージンがともに悪化。
- 建築工事:数量 0.0(2026年度の全国建築投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 12,600(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 517 億円・営業利益 30 億円。人口減とデベロッパー投資抑制で実質出来高と粗利率が悪化。
- 地域建設・水インフラ・木質・不動産(非IT):数量 88.0(年間の完成工事・納入・不動産販売に相当する混合案件数(80件換算とした推計単位))× 価格 4.36(混合案件1件当たりの名目売上(億円、工事規模と不動産販売の構成を含む))→ 売上 384 億円・営業利益 25 億円。不動産回転の鈍化と地場施工会社の採算悪化。
- アクシスウェア(SI・保守・研修・BPO):数量 48.0(受託・BPO担当の年間稼働人数換算(人年、在籍社員102人を代理))× 価格 0.13(従業員1人年当たり売上高(億円、人月課金と一部保守を含む))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:システム開発・BPO工数は約0.47倍へ。
倍率:ROE=3.64%がk=7.5%を下回るため、再投資による超過価値は認めず、稼ぐ力の上限1/k=13.33倍以下とする。構造的な価格競争と資産の資本効率低下からPER12倍を使用。保有不動産・政策株は利益に既に含まれ別建てで重複加算しない。
確率:2026年の土木粗利率低下と借入増加を踏まえ、利益が売上より大きく落ちる局面を十分に見る必要がある。
悲観 12% 価格競争へ逆戻りし資産回収が下値となる 利益 12 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 755 円145 億円
地方の新設案件が縮み、更新工事の国費も先送りされる。施工管理者の流出と品質問題によって大型案件への参加資格を失う局面が生じ、飛島は値引きしてでも手持ちの現場を確保せざるを得なくなる。土木の実質出来高は今から約3割、建築は約4割縮み、工事単価も物価上昇に届かない。競争に負けていた頃のように本社費用が重く、連結営業利益率は約2%に落ちる。
買収した地域会社は案件が想定どおり取れず、開発不動産の売却も遅れる。新たな大型M&Aを断念し、政策保有株式や換金可能な不動産を売却して銀行返済を優先する。会計上の純資産が残っていても、回収不能の工事債権や開発土地の減額を考えれば帳簿価額では売れない。配当も一時的に削減され、過去に積み上げた株主資本は十分な収益を生まなくなる。
AIエージェント代替は受託システム開発と事務BPOの人月をさらに減らし、アクシスウェアの小さな事業も赤字に転じる。現場施工まで自動化されると仮定しなくても、工事の数量減と下請け費高騰だけで価値は大きく下がる。稼ぐ力と、売却後に残る資産のいずれから見ても、株主が元の資本を全額回収できる姿ではない。
- 土木工事:数量 0.0(2026年度の全国土木投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 11,600(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 481 億円・営業利益 26 億円。公共予算繰延べと入札負けで現行固定価格の工事量を約31%失う。
- 建築工事:数量 0.0(2026年度の全国建築投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高))× 価格 11,400(2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む))→ 売上 365 億円・営業利益 18 億円。大手・地場の入札競争でシェア低下、実質出来高約38%減。
- 地域建設・水インフラ・木質・不動産(非IT):数量 65.0(年間の完成工事・納入・不動産販売に相当する混合案件数(80件換算とした推計単位))× 価格 3.63(混合案件1件当たりの名目売上(億円、工事規模と不動産販売の構成を含む))→ 売上 236 億円・営業利益 19 億円。買収先の不振、低利回り不動産の整理を余儀なくされる。
- アクシスウェア(SI・保守・研修・BPO):数量 32.0(受託・BPO担当の年間稼働人数換算(人年、在籍社員102人を代理))× 価格 0.12(従業員1人年当たり売上高(億円、人月課金と一部保守を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:工数は約0.31倍となり事業利益は赤字。
倍率:ROE=1.65%がk=7.5%を下回るため、再投資による超過価値は認めず、稼ぐ力の上限1/k=13.33倍以下とする。構造的な価格競争と資産の資本効率低下からPER12.5倍を使用。保有不動産・政策株は利益に既に含まれ別建てで重複加算しない。
確率:国内市場縮小にシェア流出と複数の工事損失が重なる複合事象。過去の営業赤字も考慮し、稀とはいえ無視できない確率。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木工事
飛島建設本体の橋梁・道路・トンネル・治水・更新工事。公共工事の比率が高い。
| 数量2026年度の全国土木投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高) | 価格2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 10,000 | 602 | 44 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 13,400 | 791 | 71 |
取り方:国交省2026年度土木投資28.52兆円×FY2026本体土木売上602.29億円÷全国市場285,200億円=広い市場での推定シェア0.2112%。この市場×シェアを実質出来高0.060229兆円とし、物価は請負単価側にのみ入れる。年度の1年ずれと売上計上基準の違いにより概算。土木の現実の施工件数・平均落札単価は非開示で、国交省の全国投資統計と会社決算のセグメント資料を使用。https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001389.html
建築工事
工場・オフィス・集合住宅などの新築および建築補修の受託。
| 数量2026年度の全国建築投資×当社推定施工シェア(兆円、固定価格の実質出来高) | 価格2026年度価格の施工量1兆円あたり請負単価(億円、物価上昇を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 10,000 | 515 | 40 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 13,400 | 643 | 53 |
取り方:国交省2026年度建築投資52.95兆円と2026年3月期建築セグメント売上515.35億円から全国建築市場での推定シェア0.0973%。同市場×シェア=実質出来高0.051535兆円を数量とし、物価と請負条件の変化は単価の側に分離。公共・民間、維持補修を含む広い市場なので実際の得意工種におけるシェアとは異なる。https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001389.html
地域建設・水インフラ・木質・不動産(非IT)
地域建設会社や水中工事、木造部材、開発不動産・賃貸を含むグロース事業等からIT受託分を除く推計。
| 数量年間の完成工事・納入・不動産販売に相当する混合案件数(80件換算とした推計単位) | 価格混合案件1件当たりの名目売上(億円、工事規模と不動産販売の構成を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 3.31 | 265 | 24 |
| 10 年後 中立 | 102 | 4.40 | 449 | 42 |
取り方:決算のグロース事業等274.90億円からアクシスウェアの単独開示10.2644億円を控除。会社決算説明資料の地域建設77億、水インフラ52億、木造・木質8億、不動産ほか136億(億円単位丸め)を根拠に、異なる工事・販売を約80件の大型小型混合案件へ換算、平均約3.31億円とした。案件件数自体は会社非開示であり、ここは厳密な受注件数ではなく数量・案件ミックス分離のための感応度推定。営業利益は元のグロースセグメント24.58億円からITに0.80億円を仮配分。内訳はhttps://www.tobishimahd.co.jp/news/news_file/file/analyst_20260528.pdf
アクシスウェア(SI・保守・研修・BPO)
情報システム受託開発・保守、事務アウトソーシング、人材派遣。AIエージェントが直接代替し得る人月型業務。
| 数量受託・BPO担当の年間稼働人数換算(人年、在籍社員102人を代理) | 価格従業員1人年当たり売上高(億円、人月課金と一部保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 102 | 0.10 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 67.0 | 0.13 | 9 | 0 |
取り方:連結子会社アクシスウェアの公式会社概要に2026年3月期売上高102,644万円、2026年6月在籍102名と明記される。10.2644億円÷102人=1人年0.100631億円であり、雇用者を課金人月の数量代理とした。外注・社内売上・稼働率の詳細は非開示であるため実稼働人月の実測値ではない。営業利益0.80億円は会社別非開示のためグロース合計内での明示的な仮配分。https://www.axisware.co.jp/company/
リスクと懸念
大型工事の損失と契約資産
建設会社は資材高騰や工期延長が起きても、工事契約を途中で破棄しにくい。飛島は2008年と2011年に営業赤字を経験しており、土木で最近も粗利率が低下した。約1,900億円の受注残は将来の売上を支える一方、利益の確定した預金ではない。設計変更の増額請求が認められなければ、利益も工事代金の回収も同時に悪化する。
増えた借入と買収価格の妥当性
純有利子負債は2026年3月期で約155億円となった。たち建設に約59億円を投じ、地域会社や不動産への投資が続けば、営業キャッシュフローの不足を借入で補う構造になり得る。金利が高くなる十年は、低い買収後ROICが配当余力を削る。売上の増加だけでなく、買収先ごとの税引後利益と実際の現金創出が必要だ。
人口減と建設技能者不足
地方の新築需要は人口減で縮み、自治体は維持補修の予算を十分には増やせない可能性がある。さらに現場監督、技術者、専門工の不足は、請負単価を押し上げると同時に施工量そのものを制限する。飛島が高採算案件を選べなくなれば、施工能力を維持するために安い工事を引き受ける悪循環に陥る。
不動産の利回りと流動性
賃貸等不動産の期末簿価・時価はそれぞれ約144億円で、隠れた含み益はほとんどない。年間賃貸損益約2.6億円は保有資産に対し低く、金利上昇時には売値も下がりやすい。開発物件の売れ残りや評価減が重なれば、帳簿上の自己資本から換金できる資産までの差が広がる。悲観の床はこうした処分損を引いて考える。
AIエージェント代替と工数課金
アクシスウェアの情報システム受託・保守・教育・BPOは、AIエージェントが調査や実装、操作、事務処理を代行すると、顧客が外部人月へ払う費用が減る。直近売上は約10億円でグループ全体の1%未満だが、AIによる増収を立証する自社商品売上は確認できない。中立で人月数量を約0.66倍とし、価格の上昇で不足を埋めない。現場施工の物理的需要には同じ係数を掛けない。
持ち合い株売却と株主への現金の戻り方
経営は政策保有株式を2027年度までにゼロへ減らし、DOE4%以上を目指す。しかし、政策株式を売却して得た現金をさらに不動産や割高な買収へ回せば、一般株主が価値を受け取れるとは限らない。過去の増配は評価できるものの、配当性向の中央値は50%未満で、余剰利益を全額株主へ戻すという仮定には根拠がない。
今後の分かれ目
- 土木の期末受注残が1,200億円を下回り、翌期も公共更新工事の受注が減り続けたら
- 施工量の維持を前提とする中立を下げ、やや悲観の実質出来高と営業利益率に近づける。
- 建築粗利率が2期続けて10%を超え、施工単価の変更契約でも採算を維持できたら
- 選別受注と価格転嫁の実行力が確認できるため、やや楽観の利益率が実現する確率を高める。
- グロース事業の買収前後の営業利益と営業キャッシュフローが両方増え、増分ROICが7.5%を上回ったら
- 資本配分の効果を認め、物理案件数と10年後の利益を上方へ見直す。買収による連結売上増だけなら変更しない。
- 純有利子負債が営業利益の4年分に近づき、政策保有株の売却も進まなければ
- 借換負担と債権回収リスクを高め、資本コストの借金部分とやや悲観の確率を再評価する。
- 政策保有株式を宣言どおり2027年度末までに売却し、配当へ回すかROICの高い更新工事へ投じたら
- 余剰現金の還元係数0.75を1.0に上げる条件が満たされるか、5年間の総還元実績とともに検証する。
- アクシスウェアの工数課金売上が3年連続で減少し、AIによる新しい成果報酬の金額開示がなければ
- IT人月の数量減をさらに深くし、長期成長率ゼロの区分を維持する。工事施工の数量には連動させない。
- 開発不動産の売却損や大型工事の損失引当で年間営業損失となったら
- 過去の赤字期と同じく現金の流出と減配を重視し、悲観の売れる資産の回収率も引き下げる。
見ておくもの
- 土木・建築別の期末工事受注残(2026年3月期:土木約1,237億円、建築約691億円)と四半期の新規受注
- 土木工事と建築工事の売上総利益率(直近それぞれ11.3%、10.8%)と設計変更の価格転嫁
- 地域建設77億円、水インフラ52億円、木造8億円、不動産ほか136億円の内訳別の受注と営業キャッシュフロー
- 2028年3月期中期計画:売上高1,600億円、営業利益96億円、ROE10%以上、DOE4%以上の達成状況
- 政策保有株式2027年度までの全処分の実行額、売却利益と配当・設備投資への使途
- 有利子負債・現預金・純負債と営業キャッシュフロー、買収先単位の増分ROIC
- アクシスウェアの受託開発・BPOの人年売上、AIエージェント導入による料金体系の変化
- 賃貸等不動産の賃貸損益と鑑定時価、開発不動産の在庫・回転期間
- 国交省の土木28兆5,200億円・建築52兆9,500億円という市場規模の実質推移
倍率と資本コストの決め方
基準日の株価と実質流通株式数19,194,782株から時価総額約424.8億円を確認したのは、営業利益・工事数量・PER・確率を独立に決めた後である。2018年の好況利益や現在のPER・PBR、競合の株価倍率は正当化倍率に使っていない。市場規模×施工シェアを実質の出来高とし、物価3%は契約単価の側にのみ入れた。グロースの件数は企業開示がないため混合案件80件換算の推定であり、この不確実性を悲観の確率へ反映する。
10年後のROEからRONICを計算し、長期成長率は国内需要の先細りを反映した名目2.5%とした。楽観から中立は式の上限を使い、悲観は弱くなった稼ぐ力と売れる資産から制限した。会計上の賃貸不動産と政策株式は収益に含むため別建てで価値を二重加算しない。2028年3月期からの新リース会計基準は使用権資産と負債を両建てにするが、10年後の利益は従来どおり家賃を営業費用としてみる。
この手順で確率加重した現在価値は約644億円、今の時価総額に対して約+52%となる。大きい差を帳簿PBR1倍割れに求めず、建設の継続利益と途中配当で説明した。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%、事業の質の調整0%で7.5%。個別の買収・工事損失は確率と利益率へ入れ、重ねて金利には足さない。