結論
ピーエス・コンストラクションは、コンクリート橋(PC橋)の施工と、高速道路の橋の補修に強い専門ゼネコンだ。大成建設が5割超を持つ上場子会社でもある。2026年3月期は売上1,494億円、営業利益129億円で、2期連続の過去最高益になった。
筆者の見立てはこうだ。いまの利益は山の近くにあり、10年でならすと、今の値段は利益の高止まりをほぼ織り込んでいる。土木の営業利益率は推定で12%台と、この会社の歴史では例がない高さだ。高速道路会社の大規模更新が追い風だが、会社自身が、発注のピークは過ぎたと書いている。
強みは本物だ。PC橋の技術と実績で、橋の新設と更新の首位を守る。手持ち工事は1,862億円と過去最高水準で、数年の売上は見えている。一方、2026年3月期の営業キャッシュフローは約175億円の流出だった。純負債も190億円に増えた。理由は、決算の原本で確かめられていない。
還元は厚い。配当性向は60%まで引き上げた。ただ、利益の6割を配れば、自己資本は増えにくい。
10年後の利益を資本コストで割り引くと、本質価値は今の時価総額を1割ほど下回る。割高とまでは言えない。安全域もない。買って報われるには、利益率が高止まりする筋書きが要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ピーエス・コンストラクションはよい専門会社だが、安く買える会社ではない。
まず、利益の質。稼いだ利益の6割を配当に回す。残りで工場や機械を更新し、建設の運転資金も賄う。大型工事の手持ちが増えると、現金が先に出ていく。2026年3月期の営業キャッシュフローの流出は、その典型かもしれない。ただ、理由は確かめていない。
次に、堀と経営。PC橋の技術は本物だが、利益の大半を稼ぐ土木は発注者が値段を決める。経営陣は利益率を2期続けて上げ、還元も引き上げた。評価はできる。
最後に、安全域。今の営業利益率は、10年の中央値の1.5倍近い。ここで払う値段に余白はない。人手で施工量は頭打ちになり、利益の伸びは価格の維持にかかる。大成建設の傘下にあることは、倒れにくさを支える。一方、価値の上振れを少数株主が取れる保証はない。持ち主として長く持ちたい会社ではある。払ってよい値段は、今の利益より低い利益を前提に置く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、土木と建築の二つだ。土木が連結売上の5割、建築が4割強を占める。残りは、PC製品の工場や小さな子会社などの関係会社事業である。
土木の中心は、高速道路や鉄道の橋だ。桁と呼ばれる橋の上部を、工場でつくったコンクリート部材で架ける。新しく架ける仕事のほか、古い橋の補強、床版(路面を支える板)の取り替え、桁の架け替えも請け負う。客は中日本・東日本・西日本の高速道路会社と国土交通省が中心だ。
建築は、プレキャスト(工場で先につくる)コンクリートを使った建物と、既存建物の改修が軸になる。物流倉庫やデータセンターも手がける。ここは民間の競争が激しく、利益の薄さが長年の弱みだった。
関係会社は、PC製品の製造や基礎工事など五つの国内会社が中心で、売上は100億円ほどだ。2025年には、子会社のピー・エス・コンクリートを吸収合併し、社名も今の形に改めた。親会社の大成建設とは、橋の上部と下部を一体で請け負う案件を増やす方針である。大成の顧客に、PC建築の利点を提案する取り組みも始めた。
工場は、橋の桁や建築用の部材をつくる拠点で、全国に散らばる。部材を自前でつくれることが、工期とコストで他社に差をつける源になる。ただし、工場の稼働は受注の波に左右され、仕事が減る年は固定費が重くなる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、技術と実績にある。
PC橋は、鋼線で桁に力をかけてつくる専門性の高い工事だ。高速道路会社の発注は、実績と技術提案が問われる。同業は、オリエンタル白石や富士ピー・エス(売上231億円)、IHIインフラ、川田建設など数社に限られる。ピーエス・コンストラクションは、新設橋梁と橋梁リニューアルでトップシェアを維持すると会社は言う。筆者もこの位置は本物と見る。
ただし、堀は固くない。公共工事は入札で値段が決まり、会社が価格を決める力は限られる。建築はほとんど堀がなく、同業の競争がそのまま利益率に響く。
経営の質は改善している。前の中期計画の課題を受け、配当性向を40〜50%から60%以上に引き上げ、ROE10%以上を目標にした。大成建設との調達の共通化も、一部の工事で原価を下げ始めた。
ただ、弱点が二つある。一つは、大型工事の手持ちが膨らむ時期に、営業キャッシュフローが大きく流出することだ。もう一つは、利益が大成建設の方針に左右される親子上場の構造である。少数株主の立場から見ると、後者は価値の上限にも下限にもなりうる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の橋の需要は、新設から更新へ移っている。
高速道路会社は、3社の合計で約3兆円の大規模更新を進めている。床版取替が約230キロ、桁の架け替えが約10キロ、補強や防水が数百キロだ。会社はこの更新が10年ほど続くと見る。一方、発注のピークは過ぎ、道路会社の償還(借入の返済)の体力が足りなくなることも、会社自身が心配している。政府の国土強靱化は2026年度から5年で約20兆円強、うち約10兆円が老朽化対策に向かう。
新設橋梁は、中央新幹線の工事が支える。それが出尽くすと、新設の仕事は減る。会社は、防衛関連施設でプレキャストの出番が増えると期待している。
制約は需要よりも人手だ。2024年の残業規制以降、技能者が足りず、業界全体が受注を選ぶ姿勢に変わった。施工量の上限があるため、需要の伸びがそのまま売上にならない。代わりに、価格転嫁は進んだ。
競合の再編も動いている。大成建設は2023年にピーエス三菱(今の会社)、2025年に東洋建設を子会社にした。準大手と専門会社を傘下に取り込む動きは、まだ止まっていない。
資本政策と M&A
還元は厚く、転換点にある。
2026年3月期の配当性向は約60%だった。1株の配当は前期の約1.7倍に上がった。会社は2025年度から3年で、営業キャッシュフロー175億円のうち115億円を株主に返す計画を掲げた。2027年3月期は、利益の減る予想に合わせて配当も約16%減る見通しだ。
自社株買いの実績は見当たらない。配当だけで性向60%を守る形だ。
借金は軽い。自己資本比率は46%だが、営業キャッシュフローが約175億円流出し、純負債は190億円に増えた。3年の投資計画は160億円で、研究開発やDX、工場の近代化に使う。
最も大事な論点は、親子上場である。大成建設は2023年にTOBを行い、50.19%を持つ。買付価格は、今の株価の半分に届かなかった。UBE三菱セメントが9.29%、日本マスタートラスト信託銀行が4.46%で続く。大成は5年後めどに自社の土木PC部門を移す構想と報じられた。移管は事業の厚みになるが、条件次第で少数株主に不利にもなる。完全子会社化の可能性も無視できず、外部の試算では10年以内に買収される確率が17%ほどある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高速道路の更新は、日本でしかできない大仕事だ。約3兆円の計画のうち、桁の架け替えや床版の取り替えは、PC橋の専門会社でなければこなせない工事が多い。ピーエス・コンストラクションは、この分野で首位にいる。手持ち工事は1,862億円と過去最高で、数年分の売上が見えている。
大成建設の傘下に入ったことも効く。橋の上部と下部を一体で請け負えば、受注の幅が広がり、原価も下がる。大成が土木PC部門を移せば、会社の規模はさらに厚くなる。
建築も変わる。低採算の工事が終わり、プレキャスト建築とリニューアルに絞れば、利益率は上がる。データセンターや防衛施設の仕事は途切れない。
還元もある。配当性向60%以上を約束し、2026年3月期の配当は前期の1.7倍になった。自己資本比率は46%と厚く、利益が100億円前後で定着すれば、時価総額の1割に近い配当が毎年戻る。山の高さから下がっても、橋の専門性が価値を支える。
慎重な見方
いまの利益は、追い風が重なった山だ。土木の利益率は推定で12%台と、歴史的に前例がない。会社自身が、大型工事の反動減を2027年3月期の予想に織り込み、営業利益を16%減と見ている。この「減る」予想が、すでに答えを言っている。
発注のピークは過ぎた。高速道路会社は償還の体力に限りがあり、更新の発注はいずれ細る。中央新幹線の橋も出尽くす。新設橋梁の仕事が減れば、専門会社どうしの奪い合いになる。
人手の制約も重い。技能者が減る中で、施工量は伸びない。利益を増やせるのは価格だけで、公共工事の発注者は予算の上限で値段を決める。
営業キャッシュフローは約175億円の流出で、純負債が増えた。手持ち工事が過去最高ということは、立て替えるお金も過去最高ということだ。受注の質が落ちていないか、原価の見積もりが甘くなっていないかは、数字が出るまでわからない。
親子上場の構造もある。大成建設は支配株主であり、グループ全体の利益で動く。少数株主が上振れを取れる保証はない。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分も事実に根ざしているが、利益率の話では慎重な見方が強い。強気の見方は、需要と専門性の強さで正しい。ただ、10年の利益は、数量と価格と利益率の積で決まる。数量は人手で頭打ち、利益率は山にある。そこで確率は、中立に最も厚く置いた。強気側は合わせて3割弱、弱気側は3割台半ばとした。親子上場による上振れ余地は、確率ではなく説明に回した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,768 円1,296 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,129 円529 億円)。 今の値に割り戻すと 2,129 円997 億円、今との差 +3.0%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,281 円2,473 億円 | 1,516 円710 億円 | +228.9% | +12.6% | 544 円255 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,992 円1,869 億円 | 1,346 円630 億円 | +158.2% | +10.0% | 1,067 円500 億円 |
| 中立 | 38% | 3,106 円1,454 億円 | 1,217 円570 億円 | +109.1% | +7.7% | 1,643 円769 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,401 円656 億円 | 940 円440 億円 | +13.3% | +1.3% | 515 円241 億円 |
| 悲観 | 12% | 490 円229 億円 | 577 円270 億円 | −48.4% | −6.4% | 128 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,768 円1,296 億円 | 1,129 円529 億円 | +88.5% | +6.5% | 3,897 円1,825 億円 |
今の株価時価総額 2,067 円968 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 大成との一体化が進み、橋の更新と新設で取り分が増える 利益 143 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 5,281 円2,473 億円
高速道路の大規模更新が10年を通じて続き、中央新幹線や防衛施設の橋梁も重なる。大成建設が自社の土木PC部門をピーエス・コンストラクションへ移し、橋の上部も下部も一体で請け負う体制が定着する。会社はPC橋の新設と更新で他社に対する差を広げ、値段も物価を少し上回って取れる。土木の営業利益率は12%を保つ。
建築はプレキャスト建築とリニューアルに絞り、低採算の工事を受けなくなる。利益率は6%に乗る。関係会社の工場も稼働が上がる。
人手の制約があるため、施工量の伸びは土木で1.15倍にとどまる。それでも売上は2,300億円ほどになり、利益は2倍近い。配当性向6割を守っても自己資本は1,100億円台に積み上がり、ROEは13%近くを保つ。
- 土木:数量 87.2(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 14(1人日あたり売上(万円・名目。部材・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 1,221 億円・営業利益 147 億円。施工量1.15倍、価格1.40倍、営業利益率12.0%
- 建築:数量 94.4(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.59(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 905 億円・営業利益 54 億円。施工量1.05倍、価格1.37倍、営業利益率6.0%
- 関係会社・その他:数量 120(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 1.44(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 14 億円。規模1.2倍、価格1.36倍、営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.29 倍、時価総額 2,472 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大規模更新の継続、大成の土木PC部門の移管、建築の採算改善がそろって当たる必要がある。一つずつは起こりうるが、同時に起きる確率は低く、1割に届かない8%に置く。
やや楽観 20% 高い利益率を保ち、橋梁の専門会社として安定する 利益 116 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 3,992 円1,869 億円
高速道路の更新工事は予定どおり進み、土木の施工量は今より7%ほど増える。価格は物価並みに上がり、利益率は11%に落ち着く。山の高さからは下がるが、会社の歴史では高い水準だ。
建築は低採算の工事が終わり、5%台に戻る。関係会社は小さな黒字を保つ。工場の稼働は安定し、部材の自前調達が工期の短さにつながる。
大成建設との連携は営業と調達にとどまり、土木PC部門の移管は限定的に進む。売上は2,100億円ほどになる。配当性向6割を続け、ROEは11%近くで推移する。優良な専門会社として評価されるが、利益率がさらに上がる材料は乏しい。
- 土木:数量 81.1(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。部材・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 1,087 億円・営業利益 120 億円。施工量1.07倍、価格1.34倍、営業利益率11.0%
- 建築:数量 89.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 843 億円・営業利益 44 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率5.2%
- 関係会社・その他:数量 110(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 1.42(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 11 億円。規模1.1倍、価格1.34倍、営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 116 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.11 倍、時価総額 1,869 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近い姿で、需要の足場は固い。手持ち工事が過去最高水準にあり、数年の売上は見えているので、2割を置く。
中立 38% 施工量は人手で頭打ち、利益率は山から戻る 利益 97 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,106 円1,454 億円
高速道路の更新は続くが、発注のピークは過ぎている。人手が足りず、施工量は土木で横ばい、建築は5%減る。売上の伸びは物価の分にほぼ限られる。
土木の利益率は10%に戻る。12%台は大型工事の設計変更と好条件の受注が重なった結果で、続かないと筆者は見る。建築は4%台半ば、関係会社は6%の小さな利益を保つ。
大成建設は経営の方針を決める立場を続け、上場は維持される。還元は配当性向6割で、自己資本は千億円を少し超える。ROEは9%台と、過去の高い値には戻らない。会社は黒字を続けるが、資本コストを大きくは上回らない。
- 土木:数量 75.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。部材・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 1,016 億円・営業利益 102 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率10.0%
- 建築:数量 85.4(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 801 億円・営業利益 36 億円。施工量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率4.5%
- 関係会社・その他:数量 105(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 1.42(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 149 億円・営業利益 9 億円。規模1.05倍、価格1.34倍、営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 97 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.99 倍、時価総額 1,454 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は底堅いが、人手で数量は伸びず、利益率は直近の山から戻る。議論の落としどころであり、最も厚く4割近くに置く。
やや悲観 22% 大規模更新の山が引き、利益率が過去並みに戻る 利益 66 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,401 円656 億円
高速道路会社は償還の体力に限りがあり、大規模更新の発注が先細る。中央新幹線の橋も出尽くし、新設橋梁の仕事が減る。土木の施工量は今より1割あまり減り、入札の競争で価格も物価に追いつかない。土木の利益率は8%に下がる。
建築は民間の競争が戻り、3%台半ばになる。関係会社の工場も稼働が落ちる。
売上は1,700億円台、営業利益は100億円ほどで、利益率は会社の過去の中央値に近い。還元は少し絞られ、ROEは6%台と資本コストに届かない。会社が壊れるわけではない。ただ、2025年前後の高い利益は一時の追い風だったと、市場が受け入れる10年になる。
- 土木:数量 66.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。部材・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 867 億円・営業利益 69 億円。施工量0.88倍、価格1.30倍、営業利益率8.0%
- 建築:数量 80.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.10(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 736 億円・営業利益 26 億円。施工量0.9倍、価格1.30倍、営業利益率3.5%
- 関係会社・その他:数量 95.0(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 1.38(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 7 億円。規模0.95倍、価格1.30倍、営業利益率5.0%
倍率:ROE 6.5%(純利益 66 億円 ÷ 自己資本 1,010.0 億円)。k 7.5%。ROE が k に届かず、伸びても価値は増えないので、PER の上限は 1÷k = 12.9 倍。大規模更新の山が引き、入札が厳しく、利益の質も落ちる局面なので、上限の 7 割の 9.0 倍に置いた。
確率:道路会社の償還体力の限りと防衛・新幹線の山の一巡で、入札の競争が強まる局面。建設業では普通に起きる姿なので2割強を置く。
悲観 12% 橋の仕事が細り、建築で損失が出て、専門会社の価値を失う 利益 28 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 490 円229 億円
道路会社の償還体力が尽き、大規模更新の発注が大きく減る。新設橋梁は新幹線の工事が終わると仕事が少なくなり、PC橋の専門会社どうしで案件を奪い合う。土木の施工量は今の4分の3まで下がり、利益率は5%に落ちる。
建築は低採算の工事で損失を出し、利益はほぼ消える。工場の稼働も下がる。
営業利益は50億円を割り、純利益は30億円に届かない。減損で自己資本は900億円ほどに目減りし、還元も絞られる。大成建設の傘下で事業は続くが、独立した専門会社としての稼ぐ力は大きく落ちる。橋の仕事を守るため、価格を下げて受注する悪循環に入り、技術の蓄積を生かした高い利益率は戻らない。
- 土木:数量 56.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。部材・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 710 億円・営業利益 36 億円。施工量0.75倍、価格1.25倍、営業利益率5.0%
- 建築:数量 71.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 8.54(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 614 億円・営業利益 6 億円。施工量0.8倍、価格1.22倍、営業利益率1.0%
- 関係会社・その他:数量 85.0(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 1.33(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 3 億円。規模0.85倍、価格1.25倍、営業利益率3.0%
倍率:構造的な負けで稼ぐ力は落ち、純利益は 28 億円。k 7.5% で割った稼ぐ力は約 361 億円にとどまる。床は稼ぐ力と売れる資産で測る。売れる資産は本社・工場の土地建物と少額の投資有価証券で、純有利子負債 190 億円を払うと余りは限られる。ただし悲観は、やや悲観(PER 9.0 倍)より倍率を高くしない。その 9 割の約 8.1 倍 × 純利益 28 億円 = 約 229 億円を、今の自己資本 655 億円に対する PBR 0.35 倍で表した。営業利益は 45 億円と小さく、EV÷営業利益の見方は意味がない。
確率:更新需要の縮み、価格競争、建築の損失が重なる構造的な負け。大成の傘下にいるので、倒れる形にはなりにくい。それでも景気後退と公共予算の縮みが同時に来る局面は無視できず、1割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木
高速道路・鉄道・道路の橋の新設、補強、床版取替、桁架替。PC橋の技術で首位。売上の5割を占め、利益の大半を稼ぐ。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。部材・機械・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 75.8 | 10 | 758 | 96 |
| 10 年後 中立 | 75.8 | 13 | 1,016 | 102 |
取り方:土木の売上758億円、売上総利益141億円(セグメント利益は売上総利益)。営業利益は、販管費約45億円を売上比で配分して約96億円と推定した。労務量は開示がなく、プレキャスト部材を工場でつくる割合が高いので1人日あたり売上を10万円とみて、約75.8万人日と置いた。物価の分は価格に入り、数量は人手の制約を受ける実質の量。
建築
プレキャスト建築、リニューアル、物流倉庫、データセンター、防衛施設などの建築請負。民間の競争が激しい。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 89.9 | 7.00 | 629 | 26 |
| 10 年後 中立 | 85.4 | 9.38 | 801 | 36 |
取り方:建築の売上629億円、売上総利益59億円。販管費約33億円を配分して営業利益を約26億円と推定した。労務量は開示がなく、1人日あたり売上を7万円とみて約89.9万人日と置いた(同領域の準大手の置き方に合わせた)。
関係会社・その他
PC製品の製造、基礎工事、不動産などの関係会社事業と、その他。売上の7%ほどで、小さい。
| 数量事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定) | 価格規模1億円あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.06 | 106 | 7 |
| 10 年後 中立 | 105 | 1.42 | 149 | 9 |
取り方:関係会社の売上102億円とその他4億円の合計106億円。営業利益は売上総利益から販管費を引いて約7億円と推定した。事業に投じている資産の規模は開示がなく、約100億円とみて売上をその比率で割った。
リスクと懸念
土木の利益率が山から戻る
土木の営業利益率は推定で12%台と、過去に例がない高さにある。大型工事の設計変更や好条件の受注が重なった結果で、会社も2027年3月期は営業利益を16%減と見る。10%を割る年が続けば、全体の利益は2割以上減る。
高速道路の更新が先細る
大規模更新のピークは過ぎたと会社は言う。道路会社の償還の体力が足りず、発注が絞られる懸念もある。新設橋梁を支える中央新幹線の工事も、いずれ出尽くす。専門会社どうしの案件の奪い合いが強まる。
営業キャッシュフローの流出と純負債
2026年3月期の営業キャッシュフローは約175億円の流出で、純負債は190億円になった。大型工事の手持ちが過去最高で、立て替えるお金が先に出た面があるが、理由は原本で確かめていない。回収が遅れれば、配当性向60%の維持が重くなる。
建築の低採算と民間の競争
建築の売上総利益率は10%に届かず、営業利益率は4%台とみる。低採算の工事が終われば改善する見通しだが、民間の景気が悪くなれば値下げ競争が戻る。人手不足で労務費が上がれば、価格に載せきれない恐れもある。
親子上場の構造
大成建設が50.19%を持つ。子会社化のTOBの価格は、今の株価の半分に届かない。完全子会社化の話が出れば、プレミアムは付く。一方、条件が大成に有利になれば、少数株主は上振れを取れない。土木PC部門の移管の条件にも同じ論点がある。
人手不足と労務費
2024年の残業規制以降、技能者の確保が難しい。協力会社の人件費が上がり、価格に載せきれないと利益率が落ちる。施工量の伸びは、人手で頭打ちになる。
今後の分かれ目
- 土木の営業利益率が2期続けて10%を割る
- 中立の10%がすでに楽観に近いかを見直し、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 営業キャッシュフローの流出が翌期も続き、純負債が300億円を超える
- 回収の遅れか不採算工事の兆しとして、悲観側の確率を上げる。配当性向60%の維持も疑う。
- 大成建設が完全子会社化を提案する
- 価格は事業価値より高く出る可能性があるが、10年の筋書きとは別の一時の上振れとして扱う。条件が少数株主に不利でないかを確かめる。
- 大成建設の土木PC部門がピーエス・コンストラクションに移管される
- 移管の対価と範囲を確認する。対価が妥当なら強気側へ確率を移してよい。妥当でなければ、親会社の取り分が増えるだけになる。
- 高速道路会社が大規模更新の発注を絞る、または工期を延ばす
- 新設と更新の両方が細る合図とみて、慎重側へ確率を寄せる。
- 手持ち工事が減り、受注高が売上高を下回る期が続く
- 数年先の売上が細る合図。中立の施工量を1割引き下げて見直す。
見ておくもの
- 土木・建築の売上総利益率と、営業キャッシュフローの回復
- 手持ち工事(土木・建築)と、高速道路会社の更新発注の動き
- 大成建設との土木PC部門の移管・完全子会社化の話
- 配当性向60%の維持と自社株買いの有無
- 富士ピー・エス、オリエンタル白石などの受注の動き
倍率と資本コストの決め方
セグメントは労務量(実質)と1人日あたり売上(名目)で積み、物価3%を価格に入れて、数量は人手の制約から0.95〜1.0倍とした。倍率は k 7.5%(基本 7.5% に循環 +0.25%)と g 4% から式で出し、今・過去・同業の市場の倍率は見ていない。中立の PER は ROE が k を上回るので下限の 1÷k のすぐ上にあり、今の株価が倍でも半分でも動かない。悲観の PBR は今の自己資本に掛け、稼ぐ力(純利益÷k)でも確かめた。営業利益は家賃を費用に入れた今と同じ形(新リース会計基準の適用前の形)でそろえた。セグメント別の営業利益は、開示の売上総利益から販管費を配分した推定である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→17.29 倍・やや楽観 PER 13.6→16.11 倍・中立 PER 13→14.99 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。