結論
ノバックは、兵庫県姫路市に本社を置く中堅ゼネコンだ。官公庁の道路・河川・ダムなどの土木と、民間マンションを主力とする建築で、売上は約350億円。筆者の結論は「やや割高」。受注残は売上の1.7年分あるが、前期の利益は大型案件の山で、今期は3割の減益予想だからだ。
この会社の強みは、技術者の厚みにある。監理技術者の資格者が従業員の45%と、全国平均の約25%を大きく上回る。人手不足の建設業で、大型工事を受けられる体制が整っていることが、受注残の厚みにつながっている。
弱みは、利益の波の大きさだ。営業利益率は2023年4月期の8%台から、2024年4月期に2%台へ落ち、前期に5%台へ戻った。会社が掲げる営業利益率8%の目標は、今期予想の4%台と開きが大きい。
財務は堅い。自己資本比率は58%で、配当はDOE3%以上を目指し、現在の水準を維持する方針だ。ただ、前期は営業キャッシュフローが58億円の赤字で、短期借入が40億円増えた。時価総額133億円は、予想純利益の約17倍にあたり、安いとは言えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、建設業は「売上の大きさでなく、工事ごとの利益の質」で見る。ノバックは堅実な財務と技術者の厚みを持つが、工事ごとの採算の読み違いは一度の失敗が大きく響く。2024年4月期に営業利益が3分の1に落ちた事実が、それを示す。
株主の手元に残るオーナー利益は、営業利益から運転資金の積み増しを引いて見る。前期の営業キャッシュフローは赤字で、利益の現金化は工事の終わりを待つ。決算の数字より、受注残の採算を見たい。
資本の使い方は無難だ。借金は少なく、DOE3%の配当を守る。ただ、ROEが資本コストを下回る中、自己資本を厚くため込むのは効率が悪い。
安全域はない。時価総額は前期純利益の11倍だが、今期予想では約17倍に上がる。受注残の厚みと財務の堅さがあるので悲観の床は硬いが、10年後の稼ぐ力に見合う以上の値段を払う理由は見当たらない、と筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
土木と建築の2本柱で、前期の連結売上は354億円。受注高は429億円、受注残は592億円で、土木が162億円、建築が430億円だ。
土木工事は、国土交通省・自治体・高速道路会社の道路、河川、ダム、シールド工事(地下に筒状の穴を掘り進める工法)が中心で、売上108億円、セグメント利益9.1億円(利益率8.4%)。官公庁が売上全体の51%を占める。
建築工事は民間のマンションが主力で、学校や庁舎、福祉施設なども手がける。売上245億円、セグメント利益9.7億円(利益率3.9%)。前期は大型の工事が進み、売上が34%伸びて、前の期の赤字から黒字に戻った。
取引先の集中は高い。ひめじ手柄山PFI(売上の12.3%)、マンション開発の和田興産(11.0%)、東京都(11.0%)の3社で3割を超える。PFIは地元姫路の公共施設を民間資金で整備する事業で、会社の地盤を示す。
連結子会社は、2025年2月に買収した北海道帯広市のTOMTENだけで、建築事業に属する。従業員は連結で302名。保有不動産の賃貸はごく小さい。
優良さと弱いところ
堀は「浅い」と筆者は見る。建設業の受注は入札と相見積もりで決まり、値段を自分で決められる商品ではない。ただし、技術者の厚みは差別化になる。監理技術者の資格者131名(従業員の45%)は、大型の工事を受ける資格そのものにあたる。
資本効率は低めだ。ROEは前期6.3%、過去5年の中央値も6%台。自己資本188億円に対し、利益が小さいためだ。営業利益率は8%台から2%台まで落ちた年があり、工事ごとの原価の読み違いに弱い。
財務は盤石だが、見かけほど余裕はない。純現金は2億円と薄く、前期は大型工事の外注費・材料費の支払いが先に出て、営業キャッシュフローが58億円の赤字になった。工事が終われば戻る性質だが、案件が重なると資金繰りが膨らむ。
経営は、2024〜2027年4月期の中計で売上400億円以上、営業利益率8%、ROE9%を掲げる。足元の予想(売上320億円、営業利益率4%)との差は大きい。従業員持株会が筆頭株主(16.7%)で、社員のオーナー意識は強いが、外部の目が入りにくい面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、官公庁の予算と民間の建築投資で決まる。土木は、2026〜2030年度に事業規模20兆円強の国土強靱化の実施中期計画が追い風だ。老朽化した橋・トンネル・河川の更新もあり、数量は5年は堅い。
建築は、マンションが主力で、地価と建築費の上昇で新築の発注が絞られる局面にある。建設費の上昇を発注者が受け入れられるかが、数量を決める。人手不足から、ゼネコン各社は選別受注に動いており、利益率を重視する流れは強い。
競争の形は分散的だ。準大手6社と地場ゼネコンが入り乱れ、公共工事は一般競争入札で価格が働く。ノバックは売上350億円と小さく、価格を決める側ではない。労務費・資材費の上昇を請負金額へ転嫁できるかが、利益率を左右する。
10年で見れば、地方の人口減と公共投資の縮小が重しだ。名目では価格上昇で売上は増えるが、実質の工事量は横ばいか、小さく縮む。人手の確保が最大の制約で、技術者を抱えるノバックの強みは、ここで効く。外注費の上昇を請負金額へ移せるかも、利益を分ける。入札だけで勝負する会社には、仕事を選ぶ余裕がない。
資本政策と M&A
配当は「安定的かつ継続的に」が基本方針で、中計で普通配当の維持とDOE(株主資本配当率)3%以上を掲げる。前期は期末配当を含め、総額で6億円強。DOEで見ると約3%で、利益が落ちる年でも配当は維持される作りだ。
自社株買いは目立たず、自己株式は約5万株と少ない。政策保有株は上場株約2億円、非上場株約4億円と小さく、新規取得は原則しない方針だ。
買収は2025年2月のTOMTEN(北海道帯広市)1件で、北海道の建築事業を取り込んだ。事業承継型のM&Aで規模を積み上げる余地はあるが、実績はまだ浅い。
親会社はなく、大株主は従業員持株会(16.7%)と個人が中心だ。2003年に丸紅建設から事業を譲り受けた経緯があるが、資本関係は今はない。TOBの情報は見当たらない。10年の還元は、DOE3%を満たす水準で、純利益の合計の約5割強に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残は592億円と売上の1.7年分あり、うち建築が430億円。大型工事の採算が見通せる強みがある。国土強靱化の20兆円強の予算が2026年度から5年続き、土木は底堅い。監理技術者の資格者が従業員の45%と、人手不足の中で大型工事を受けられる体制を持つ。
前期は営業利益が2.2倍に増え、赤字だった建築が黒字に戻った。会社は営業利益率8%、ROE9%を目標に掲げ、2023年4月期には営業利益率8%台を実際に出している。同じ体制で採算の良い案件を選べば、5%台は再現できる。さらに、買収した北海道のTOMTENが加われば、受注エリアの広がりが採算の良い案件の選択肢を増やす。
財務は堅く、自己資本比率58%、DOE3%の配当を守る。TOMTENの買収で北海道へ広げたように、地場の建設会社を買う余地もあり、人材を確保して規模を伸ばせる。
今の時価総額133億円は、自己資本の0.7倍。受注残の質が高く、利益が戻れば、割安が解消する余地は大きい。
慎重な見方
前期の利益は大型案件の山で、今期は営業利益が3割減る予想だ。第1四半期はすでに売上が8%減り、営業利益は6割減った。会社の目標の営業利益率8%は、2年前に出して以来、一度も戻っていない。
建築は民間マンションが主力で、地価と建築費の上昇で発注が絞られる。利益率は4%に届かず、一つの失敗で赤字になる。2024年4月期には利益の大半が消えた。取引先の集中も高く、3社で売上の3割を占める。
営業キャッシュフローは58億円の赤字で、短期借入が40億円増えた。純現金はほぼゼロまで薄くなり、財務の余裕は見かけほどない。外壁タイルの剥離クレームなど、施工の瑕疵リスクも抱える。
ROEは過去5年で6%台と資本コストを下回り続け、自己資本が厚い割に稼げていない。PERは予想ベースで17倍と、ROE6%台の会社としては、成熟した建設業としては安くない。受注残の厚さは売上の保証にはなるが、利益の保証にはならない。
どちらに重みを置いたか
受注残の厚みと財務の堅さという強気の見方は、悲観の床を硬くする。一方で、利益の波が大きく、ROEが資本コストを下回る点では慎重な見方が強い。確率は中立を4割弱、やや悲観を3割弱に置き、結果はやや割高に出た。強い確信を持つ理由は、上にも下にも見当たらない。強気の見方の根拠は受注残と財務で、慎重な見方の根拠は利益の波とキャッシュフローだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2037/04 期)
確率で加重した株価時価総額 3,174 円164 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,269 円65 億円)。 今の値に割り戻すと 2,334 円120 億円、今との差 −8.8%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,213 円269 億円 | 1,610 円83 億円 | +166.5% | +10.3% | 409 円21 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,482 円231 億円 | 1,494 円77 億円 | +133.4% | +8.8% | 1,016 円52 億円 |
| 中立 | 38% | 3,902 円201 億円 | 1,339 円69 億円 | +104.7% | +7.4% | 1,992 円103 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,797 円93 億円 | 1,242 円64 億円 | +18.7% | +1.7% | 821 円42 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,094 円56 億円 | 621 円32 億円 | −33.0% | −3.9% | 206 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,174 円164 億円 | 1,269 円65 億円 | +73.6% | +5.7% | 4,443 円229 億円 |
今の株価時価総額 2,560 円132 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 受注選別が実り、営業利益率が6%台に定着 利益 21 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,213 円269 億円
国土強靱化の予算が延びて土木は件数を保ち、単価は物価を超えて上がる。建築は人手不足で選別受注を徹底し、延床は小さく伸びながら利益率を5%に保つ。営業利益率は全体で6%台に乗る。TOMTENのような地場の建設会社の買収も進み、規模を積み上げる。純利益は21億円に達し、配当はDOE3%を満たしつつ増える。会社は中計のROE9%に迫る。人手不足の中でも技術者を確保でき、受注を選べる余裕が利益率を支える。ただし堀が浅い事業で、ここまで揃う確率は高くない。売上は10年で5割ほど増えて500億円を超える。受注の選別が働き、手戻りや原価超過の少ない工事が積み上がる。
- 土木工事:数量 37.8(完成工事の件数(件・年、推定))× 価格 4.15(1 件あたりの平均請負額(億円・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 15 億円。件数 1.05 倍、単価 1.38 倍、営業利益率 9.5%
- 建築工事:数量 66.2(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 5.30(1 千㎡あたりの平均工事費(億円・名目))→ 売上 351 億円・営業利益 18 億円。延床 1.05 倍、単価 1.36 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 268 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:技術者の厚みを生かして採算の良い案件を選び続け、中計の営業利益率8%の一部を達成する連続成功が要る。確度は低い。
やや楽観 17% 採算の良い案件が続き、利益率5〜6% 利益 18 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,482 円231 億円
土木は強靱化の5年が堅く、その後も更新需要で件数をほぼ保つ。建築は延床を維持し、単価は物価並みの32%増。営業利益率は全体で6%近くに保ち、前期の営業利益の1.5倍に迫る水準になる。配当はDOE3%を守る。純利益は18億円。人手の確保が追いつく範囲で受注を選び、売上は470億円規模まで増える。ただし利益率は、会社の目標の8%には届かないままだ。売上は470億円規模まで増えるが、そのほとんどは単価の上昇による。民間の発注は絞られても、公共が下支えする。賃金の上昇は単価に転嫁でき、利益率は前期の水準を保つ。
- 土木工事:数量 36.7(完成工事の件数(件・年、推定))× 価格 4.03(1 件あたりの平均請負額(億円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 13 億円。件数 1.02 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 8.8%
- 建築工事:数量 63.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 5.14(1 千㎡あたりの平均工事費(億円・名目))→ 売上 324 億円・営業利益 15 億円。延床 1.0 倍、単価 1.32 倍、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の恩恵を受け、建築は採算を守る。会社の目標には届かないが、前期の水準は保つ。確度は中程度。
中立 38% 中立:数量は横ばい、利益率は5%台 利益 15 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,902 円201 億円
土木の件数は10年で横ばい、単価は物価より少し低い30%増。建築は延床が7%減り、単価は30%増。営業利益率は全体で5%台前半に落ち着き、会社の目標8%には届かない。純利益は営業利益の64%で、15億円。配当はDOE3%を守り、年6〜7億円。現金は自己資本に積み上がる。人手不足で技術者の確保が最大の制約になり、売上は名目で2割強の増にとどまる。中計の売上400億円は、10年かけてようやく届く水準になる。売上は430億円規模に増えるが、ほとんどは単価の上昇で、工事量は小さく縮む。受注残の厚みで稼働は保たれる。
- 土木工事:数量 36.0(完成工事の件数(件・年、推定))× 価格 3.91(1 件あたりの平均請負額(億円・名目))→ 売上 141 億円・営業利益 11 億円。件数 1.0 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 8.0%
- 建築工事:数量 58.6(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 5.06(1 千㎡あたりの平均工事費(億円・名目))→ 売上 297 億円・営業利益 12 億円。延床 0.93 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 185 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強靱化の5年の後、公共の数量は横ばい。建築は民間の発注が絞られ、小さく縮む。利益率は前期の5.3%の少し上に落ち着く、素直な筋書き。
やや悲観 27% マンション低迷と価格競争で利益率4%台 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,797 円93 億円
地価と建築費の上昇でマンションの発注が減り、建築の延床が2割近く縮む。公共工事も強靱化の後は件数が減り、入札競争が厳しくなって利益率は6〜7%から落ちる。営業利益率は4%に近づく。大型工事の採算悪化が一度ある。配当はDOE3%を維持するが、自己資本が積み上がり、ROEは3〜4%に落ちる。賃金の上昇と人手不足による外注費の増加が、単価の上昇を打ち消す。売上は名目では370億円規模と今と同水準を保つが、実質の工事量は2割近く縮む。固定費が重く、利益が先に細る。受注残が減るため、会社は低採算でも仕事を取りにいく圧力を受ける。
- 土木工事:数量 32.4(完成工事の件数(件・年、推定))× 価格 3.76(1 件あたりの平均請負額(億円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 8 億円。件数 0.9 倍、単価 1.25 倍、営業利益率 6.5%
- 建築工事:数量 51.7(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 4.75(1 千㎡あたりの平均工事費(億円・名目))→ 売上 246 億円・営業利益 7 億円。延床 0.82 倍、単価 1.22 倍、営業利益率 2.8%
倍率:ROE 4.0% が k 8% より低く、ためた利益は額面未満。PER の上限は 1÷k=11.8 倍で、やや悲観は伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 6.8 割の 8.0 倍に置いた。
確率:建築費高でマンションの発注が絞られ、公共も入札競争が戻る。2024年4月期に近い水準へ振れる確度は高い。
悲観 12% 構造的に負ける:選別受注に失敗し採算割れ 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,094 円56 億円
人手不足で技術者を確保できず、受注を絞らざるをえない。建築の延床は3分の1縮み、工事ごとの原価の読み違いが重なって利益がほぼ消える。公共も入札で採算割れの工事を取らざるをえない。営業利益率は1%台まで落ち、配当は大幅に削られる。ただ、借金は少なく、事業は残る。大型工事の失敗が2件重なれば、数年分の利益が消える。値段を決めるのは稼ぐ力ではなく、自己資本の回収価値になる。受注残は減り、技術者の流出も止まらない。売上は名目でも270億円まで縮み、固定費をまかなえない。会社は規模の縮小と、地元の公共工事への集中で生き残りを図る。
- 土木工事:数量 27.0(完成工事の件数(件・年、推定))× 価格 3.46(1 件あたりの平均請負額(億円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 4 億円。件数 0.75 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 4.0%
- 建築工事:数量 41.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 4.28(1 千㎡あたりの平均工事費(億円・名目))→ 売上 176 億円・営業利益 1 億円。延床 0.65 倍、単価 1.10 倍、営業利益率 0.5%
倍率:稼ぐ力は純利益 2 億円で、k 8% で割ると 26 億円と小さい。床は、今の自己資本 188 億円に、完成していない工事の回収と技術者・資産の売却価値を見込み、0.30 倍に置いた。
確率:人手不足と建築費高で民間の需要が縮み、大型工事で原価が膨らむ複合の筋書き。2024年4月期の悪化を超える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木工事
国土交通省・自治体・高速道路会社の道路、河川、ダム、シールド工事。
| 数量完成工事の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの平均請負額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 36.0 | 3.00 | 108 | 9 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 3.91 | 141 | 11 |
取り方:土木の完成工事高108.2億円(開示)を、年36件(推定。開示なし)で割り、1 件あたり約3億円とした。官公庁の工事で、大型の案件と小口の維持工事が混在する。営業利益はセグメント利益9.06億円(開示)。
建築工事
民間のマンションが主力。学校・庁舎・福祉施設・PFI事業も。
| 数量施工する延床面積(千㎡・年、推定) | 価格1 千㎡あたりの平均工事費(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 63.0 | 3.89 | 245 | 10 |
| 10 年後 中立 | 58.6 | 5.06 | 297 | 12 |
取り方:建築の完成工事高245.3億円(開示)を、延床面積6.3万㎡(推定)で割り、1 千㎡あたり約3.9億円(1 ㎡あたり約39万円)とした。マンションと公共施設が混在する平均で、面積は推定。営業利益はセグメント利益9.65億円(開示)。
リスクと懸念
利益の波の大きさ
営業利益率は2023年4月期の8%台から翌期に2%台へ落ち、前期に5%台へ戻った。工事ごとの原価の読み違いで一気に悪化する体質で、今期の予想は営業利益30%減だ。
取引先の集中
上位3社(ひめじ手柄山PFI、和田興産、東京都)が売上の3割超。1件の大型案件の終わりが売上と利益に直接響く。
人手不足
技術者の確保が最大の制約で、有価証券報告書も受注機会の喪失や納期遅延を挙げる。従業員は290名と小さく、会社は350名以上を目指す。賃金の上昇も利益率を押し下げる。
資金繰りの膨らみ
前期は営業キャッシュフローが58億円の赤字で、短期借入が40億円増えた。大型案件が重なると、運転資金の負担が膨らむ。
施工の瑕疵
外壁タイルの剥離に関するクレームなど、施工後の不具合を有価証券報告書が挙げる。損失が膨らめば、利益の数年分が消える。
民間マンションの減速
建築の中心はマンション。地価と建築費の上昇で発注が絞られると、受注残が減り、稼働率が下がる。
今後の分かれ目
- 受注残が500億円を下回ったら
- 建築の売上が先細ると見て、やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が2期続けて6%を超えたら
- 選別受注が実を結んだとみて、中立の利益率を上げる。
- 営業キャッシュフローが赤字のまま2期続いたら
- 資金繰りの負担が重いと見て、借金の重さを quality に反映する。
- 追加の買収が発表されたら
- 規模を積み上げる戦略とみて、のれんと買収価格の妥当性を確認する。
- 国土強靱化の後継予算が縮小されたら
- 土木の件数を下げ、やや悲観側へ確率を寄せる。
- 施工不良に関する損失が出たら
- 純利益の一過性として見るが、再発すれば悲観側へ寄せる。
見ておくもの
- 受注高と受注残(建築と土木の別)
- 営業利益率の推移(中計の目標8%)
- 営業キャッシュフローと短期借入
- 国土強靱化の予算の動向
- 技術者の人数(350名の目標)
倍率と資本コストの決め方
数量は件数と延床面積の推定(開示なし)で、物価3%は単価に1.10〜1.38倍として入れ、二重がけはしていない。倍率は k 8%(基本7.5%+循環0.5%+値決め力0.5%)と、ROEが k 以下で出る上限1÷k=11.8倍の6〜9割で置いた。今のPER(約11倍)や予想PER(約17倍)、同業の値付けは使っていない。悲観の床は今の自己資本に0.30倍を掛けたもので、過去のPBRの底からは置いていない。工事の前受金や契約資産の回収は見込みで、新リース会計基準の形変更は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.5 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。