結論
北野建設は、長野市に本社を置くゼネコンだ。長野と首都圏の民間建築を主力に、土木と、長野を中心とするホテルを持つ。売上は約 800 億円、営業利益は約 46 億円。
筆者の結論は「適正」に近い。いちばんの支えは、時価総額の 4 割を超える純現金だ。自己資本比率は 6 割を超え、無借金に近い。工事の採算は上がり、営業利益率は 6% 近い水準を回復した。
弱点は受注だ。2026 年 3 月期の受注は約 520 億円と、前の期の 5 割ほどに減った。繰越工事高は 700 億円で、売上の 0.9 年分しかない。今期の予想は営業利益 50 億円だが、その先の山を支える仕事が細っている。
もう一つの論点は、現金の使い道だ。利益の 2 割ほどしか配当に回さず、現金が積み上がる。創業家に近い財団や会社が約 3 割を持ち、香港の投資会社も 5% を超えて保有を報告した。還元を厚くするかどうかが、価値の差になる。
筆者は、10 年後の中立を営業利益 48 億円ほどと見る。今の水準を、名目で保つ姿だ。10 年の筋書きを確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額とほぼ同じになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず見るのは、安全域だ。北野建設は、ここが厚い。
時価総額 266 億円に対して、純現金が約 120 億円ある。自己資本は 516 億円で、時価総額の 2 倍近い。事業が傾いても、帳簿の半分は現金と流動資産に近い。
次に、資本の使い方を見る。ここが弱い。利益の 7 割以上を内部にためて、低い利息しか生まない。株主にとって、ためた利益は額面ほどの値打ちを持たない。現金の半分は、株主に戻らないものとして割り引いた。
事業そのものは、ほどよい稼ぎだ。営業利益率は 5〜6% で、ホテルの高い利益率も支える。ただ、受注は急減しており、先行きは楽観できない。
10 年後も存在し、今より強いか。筆者の答えは「存在する。強さは保つが、増しはしない」だ。確信を持てない地方の請負には、安全域を厚くとる。だから、現金の価値だけを素直に認め、事業の価値は低めに置いた。
何で稼ぐ会社か
北野建設の稼ぎは、ほとんどが建設事業だ。売上の 95% を占める。
建設事業は、建築が大半を占める。完成工事高は約 670 億円で、土木は約 70 億円にとどまる。民間の建築が中心で、マンション、ホテル、商業施設、学校などを請け負う。最大の発注元は東急不動産で、完成工事高の約 1 割を占める。建築の約半分は、発注者が当社を指名する特命だ。土木は 9 割が競争入札で、利益率が低い。
ホテル事業は売上が約 30 億円と小さいが、利益率は 15% と高い。長野市でホテルを経営し、子会社が運営を受ける。海外では、ソロモン諸島のホテルを持ち、ベトナムのハノイにも投資している。
ほかに広告代理店とゴルフ場がある。どちらも売上は 10 億円に満たない。
長野と首都圏の二つに絞る点が、この会社の特徴だ。全国に支店を広げる大手とは違い、顔の見える発注者との取引で受注を重ねる。大型案件に頼らない代わりに、規模の伸びも緩やかだ。
営業利益の約 9 割は建設だ。ただホテルの利益率が高く、景気の波を和らげる役割を持つ。工事の進み具合に応じて売上を計上するので、受注が減ると、1 年から 2 年遅れて売上と利益に響く。
優良さと弱いところ
事業の質は「普通」だ。守りは固く、攻めは弱い。
強みは財務だ。純現金は約 120 億円、自己資本比率は 64% に上る。ゼネコンは工事代金を前もって受け取る構造だが、それを差し引いても現金は厚い。景気が悪くなっても、資金繰りで倒れる心配はほぼ無い。
次に、工事の選び方だ。建築の半分は特命で受け、価格競争を避けている。営業利益率は 5.5% と、準大手・中堅の中では高い部類に入る。長野と首都圏に絞り、地域に根を張る経営も、信用につながる。
弱みは三つある。一つ目は規模の小ささだ。受注の波に対する余裕が小さく、大型案件が決まらないと売上が落ちる。二つ目は発注元の偏りで、東急不動産への依存が約 1 割ある。三つ目は資本効率で、ROE は過去 10 年で 5〜10% 台。自己資本の半分近くが低利の現金や株式で眠り、資本コストを下回る年が多い。
堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるものは、長野での信用と、特命で受ける関係くらいだ。強い堀とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設は、価格転嫁が進み、人手が足りない局面にある。
上場ゼネコン 50 社の受注高は 2025 年度に約 16.5 兆円と過去最高だった。繰越工事高も 24 兆円を超えた。資材高を発注者に転嫁できるようになり、多くの会社の完成工事の粗利率が改善している。
同時に、2024 年 4 月から残業の上限規制が始まり、技能者の高齢化と不足が構造化した。各社は仕事を選んで受注し、採算の悪い工事を断る。これが利益率の改善を支えている。
ただ、地方では人口減が重しになる。長野の新築需要は、時間とともに細る。公共工事は国土強靱化で底堅いが、当社の土木は小さい。
競争の形は分散している。準大手・中堅と地場のゼネコンが入り乱れ、価格を決める力はスーパーゼネコンより弱い。再編や事業承継型の M&A が、人手不足を背景に進みやすい。
首都圏のマンション施工は、東急不動産のような大手デベロッパーとの関係が命だ。デベロッパーが建築費の上昇を嫌って着工を遅らせれば、受注は直ちに細る。今期の受注の落ち込みは、その兆しかもしれない。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を抑え、現金を厚く持つ保守的な形だ。
年間の配当は前の期から小幅に増え、今期も同額を予定する。配当性向は約 2 割にとどまる。ほかに、自己株の取得を繰り返し、現在は発行済み株の約 4% を自己株で持つ。それでも総還元は利益の 3 割に届かない。
結果として、自己資本は 12 年で 2 倍に膨らんだ。ROE が低いまま資本だけが積み上がる状態だ。
株主の顔ぶれは特徴的だ。北野財団が約 13%、北野美術館が約 8%、北野管財が約 8% を持つ。創業家に近い財団・会社が合わせて約 3 割だ。2026 年 1 月には、香港のオールド・ピーク・グループらの共同保有が 5% を超えたと報告された。目的は「長期投資および株主価値の向上」とされる。株価は約 30 年ぶりの高値をつけた。
買収は少ない。TOB の確率は 27% と推計されるが、創業家に近い持分が厚く、動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
財務の厚みと、工事の採算の改善は本物だ。営業利益は前期に 3 割近く増え、利益率は 6% 近くに戻った。第 1 四半期の営業利益は 6 割増の 12 億円。ホテルも堅調だ。
価格転嫁は定着し、特命の比率が高い。受注が減っても、繰越工事高が 700 億円あり、今期の売上 860 億円と営業利益 50 億円は、ほぼ見えている。
何より、現金が時価総額の 4 割を超える。香港の投資会社が 5% を超えて保有を報告し、株主価値の向上を求めている。自己株取得と増配が続けば、現金の一部は株主に戻る。配当性向 2 割は、引き上げる余地が大きい。
ホテル事業の利益率は 15% で、営業利益の約 1 割をまかなう。海外の投資も、観光の戻りで収益が上向いている。
長野と首都圏の大型再開発や、マンション・ホテルの建設需要も続く。2026 年 1 月には株価が約 30 年ぶりの高値をつけ、市場もこの変化を認め始めた。人手不足で競合が受注を絞るなか、採算を守れる地盤の固い会社は強い。
慎重な見方
受注は前の期の 5 割に落ち込んだ。繰越工事高は 700 億円と、売上の 0.9 年分しかない。ゼネコンの売上は、1〜2 年遅れて受注に従う。来期以降、売上と利益が細る恐れが大きい。
営業活動のキャッシュ・フローは 42 億円の流出だった。工事代金の前受けが減り、現金が減っている。現金が厚く見えても、その一部は工事のために預かった前受金だ。
東急不動産への依存が約 1 割ある。大手デベロッパーが着工を遅らせれば、受注は直ちに細る。地方は人口減で、新築は中長期で縮む。
資本の使い方も不安だ。ROE は低く、現金を積むだけで、株主にはほとんど戻らない。創業家に近い持分が約 3 割あり、外部の声が届きにくい。
ホテルは小さい。ベトナムとソロモン諸島の海外投資は、為替と政情のリスクを抱える。
株価は約 30 年ぶりの高値をつけ、外部の株主の期待がすでに織り込まれた面もある。期待どおりの還元が出なければ、失望が価格に出る。
どちらに重みを置いたか
拮抗するが、わずかに慎重な見方が強い。現金の厚みは本物だが、創業家に近い持分が厚く、戻る保証が無い。受注の急減は、来期以降の利益に響く。
強気の見方には、無視できない材料がある。繰越工事高が今期をほぼ支え、外部の株主が還元を求め始めた。そこで悲観の確率は 13% にとどめた。
確率は、中立を 37%、やや悲観を 27%、悲観を 13% に置いた。楽観は 6%、やや楽観は 17%。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,114 円515 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 558 円136 億円)。 今の値に割り戻すと 1,359 円331 億円、今との差 +24.7%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,261 円1,038 億円 | 1,068 円260 億円 | +388.9% | +17.2% | 320 円78 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,316 円808 億円 | 821 円200 億円 | +279.6% | +14.3% | 703 円171 億円 |
| 中立 | 37% | 2,470 円602 億円 | 616 円150 億円 | +183.1% | +11.0% | 1,142 円278 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,176 円286 億円 | 370 円90 億円 | +41.8% | +3.6% | 417 円102 億円 |
| 悲観 | 13% | 487 円119 億円 | 205 円50 億円 | −36.4% | −4.4% | 90 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,114 円515 億円 | 558 円136 億円 | +145.2% | +9.4% | 2,672 円651 億円 |
今の株価時価総額 1,090 円265 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:受注が戻り、利益率が過去の山に並ぶ 利益 59 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 4,261 円1,038 億円
首都圏のマンション・ホテルの施工が増え、建築の施工量は今と同じ水準を保つ。人手不足で工事単価が上がり、1 人日あたり売上は 1.42 倍。特命が増えて、利益率は 6.2% と過去の山に近づく。
ホテルは訪日客と観光需要で客室数が 1.15 倍、単価は 1.45 倍。利益率は 16%。
営業利益は 75 億円前後。現金は積み上がるが、外部株主の働きかけで総還元が厚くなり、10 年で 260 億円を超える。純利益は 59 億円。
首都圏の施工で、大型案件の特命が増え、価格競争から距離を置ける。ホテルや不動産の開発でも利益が積み上がる。資本の使い方は、外部株主の関与で大きく改善する筋書きだ。
- 建築(民間・官公庁):数量 95.5(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 963 億円・営業利益 60 億円。施工量横ばい、単価 1.42 倍。利益率 6.2%
- 土木:数量 10.3(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 11(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 110 億円・営業利益 7 億円。施工量 1.1 倍、単価 1.42 倍。利益率 6%
- ホテル:数量 16.9(販売客室数(万室夜・実質。推定))× 価格 2.90(1 室夜あたり売上(万円・名目。料飲を含む))→ 売上 49 億円・営業利益 8 億円。客室数 1.15 倍、単価 1.45 倍。利益率 16%
- 広告代理店・ゴルフ場:数量 11.1(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.50(物価指数(今=1.0))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。実質横ばい、物価 1.5 倍。利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 14.83 倍、時価総額 1,038 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の大型案件が戻り、価格転嫁が続き、外部の株主の圧力で還元が増える必要がある。受注が急減した直後なので 6% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:受注が持ち直し、利益率を高く保つ 利益 48 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,316 円808 億円
受注が回復し、建築の施工量は今の 0.92 倍で下げ止まる。1 人日あたり売上は 1.39 倍で、利益率は 5.6%。ホテルは単価が上がり、利益率は 15.5%。
営業利益は 61 億円前後。株主からの働きかけで総還元は 200 億円ほどになる。純利益は 48 億円。
首都圏での受注が持ち直し、特命の比率は保たれる。現金は積み上がるが、外部株主の働きかけで一部は戻る。大型の案件が続くわけではなく、利益は緩やかに伸びる姿だ。ホテルの客室数も回復し、単価の上昇で利益が積み上がる。工事の採算は、価格転嫁の定着で守られる。
- 建築(民間・官公庁):数量 87.9(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.87(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 867 億円・営業利益 49 億円。施工量 0.92 倍、単価 1.39 倍。利益率 5.6%
- 土木:数量 9.4(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 98 億円・営業利益 6 億円。施工量横ばい、単価 1.39 倍。利益率 5.6%
- ホテル:数量 15.8(販売客室数(万室夜・実質。推定))× 価格 2.80(1 室夜あたり売上(万円・名目。料飲を含む))→ 売上 44 億円・営業利益 7 億円。客室数 1.07 倍、単価 1.40 倍。利益率 15.5%
- 広告代理店・ゴルフ場:数量 11.1(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.30(物価指数(今=1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。実質横ばい、物価 1.3 倍。利益率 3%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)195 億円。全体の PER 13.81 倍、時価総額 808 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:繰越工事高が今期を支え、首都圏の案件が戻れば、営業利益を 6 割程度まで伸ばせる。受注の落ち込みを見て、17% とした。
中立 37% 中立:営業利益 48 億円で、今の水準を名目で保つ 利益 38 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,470 円602 億円
建築は新築が細り、技能者の不足で施工量は今の 0.85 倍。工事単価は 1.36 倍に上がり、売上は名目で 16% 増える。特命が半分を占め、利益率は 4.8% と過去の山より低い。
土木は施工量 0.9 倍、利益率 4.8%。ホテルは客室数が横ばいで、単価は物価並みに 1.34 倍。利益率は 14% に下がる。長野の古い建物は、更新の費用がかさむ。
営業利益は 48 億円前後。現金の利息を含めて純利益は 38 億円になる。創業家に近い持分が厚いので、総還元は利益の 4 割ほどにとどまり、現金は積み上がる。
- 建築(民間・官公庁):数量 81.2(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.66(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 784 億円・営業利益 38 億円。施工量 0.85 倍、単価 1.36 倍。利益率 4.8%
- 土木:数量 8.4(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 86 億円・営業利益 4 億円。施工量 0.9 倍、単価 1.36 倍。利益率 4.8%
- ホテル:数量 14.7(販売客室数(万室夜・実質。推定))× 価格 2.68(1 室夜あたり売上(万円・名目。料飲を含む))→ 売上 39 億円・営業利益 6 億円。客室数横ばい、単価 1.34 倍。利益率 14%
- 広告代理店・ゴルフ場:数量 11.1(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.34(物価指数(今=1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。実質横ばい、物価 1.34 倍。利益率 3%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)165 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 602 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。繰越工事高が今期を支える一方、受注は急減し、地方は人口減で縮む。営業利益を 48 億円と、今期予想の 50 億円をわずかに下回る水準に置き、中立に最も厚く 37% を置いた。
やや悲観 27% やや悲観:受注の落ち込みが続き、利益が 6 割に細る 利益 24 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,176 円286 億円
受注が戻らず、建築の施工量は今の 0.75 倍。単価は 1.28 倍で、売上は名目で横ばいに近い。採算の悪い工事が混じり、利益率は 3.6%。ホテルは単価が伸びず、利益率は 11%。
営業利益は 30 億円前後。純利益は 24 億円。配当は今の水準を守るが、自己株買いは止まる。
繰越工事高が減り、固定費の負担が重くなる。首都圏のマンション施工が弱まり、長野の公共・民間の案件で穴を埋める形になる。現金は前受金の戻りで減るが、無借金は保つ。ホテルは単価が伸びず、改装の費用が利益を食う。人手不足で施工量は伸びず、売上は名目でほぼ横ばいに収まる。
- 建築(民間・官公庁):数量 71.6(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.09(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 651 億円・営業利益 23 億円。施工量 0.75 倍、単価 1.28 倍。利益率 3.6%
- 土木:数量 7.5(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.60(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。施工量 0.8 倍、単価 1.28 倍。利益率 3.5%
- ホテル:数量 14.0(販売客室数(万室夜・実質。推定))× 価格 2.50(1 室夜あたり売上(万円・名目。料飲を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。客室数 0.95 倍、単価 1.25 倍。利益率 11%
- 広告代理店・ゴルフ場:数量 11.1(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.10(物価指数(今=1.0))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。実質横ばい、物価 1.1 倍。利益率 1%
倍率:事業の ROE は 5% 前後で資本コスト 8% を下回る。上限 1÷k の約 11.8 倍の約 75% の 8.8 倍に置いた。現金の利息分を除いた事業の純利益に掛け、余った現金は戻り方 0.5 で別に足す。
確率:受注の急減が続き、繰越工事高が減り、利益率が過去の平均に戻る筋書きは、中立の次に起きやすい。27% を置いた。
悲観 13% 悲観:受注の枯渇と価格競争で、請負が構造的に縮む 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 487 円119 億円
新築の需要が細り、建築の施工量は今の 0.55 倍。単価は 1.18 倍にとどまり、利益率は 1.5% に落ちる。土木も同様に細る。ホテルは海外の損失が出て、利益率は 5%。
営業利益は 8 億円前後。ハノイの投資で減損が出て、純利益は 4 億円にとどまる。配当は下げる。現金は残るが、前受金の戻りで減る。株主に残る価値は、現金と売れる資産の範囲に縮む。
地方の新築が人口減で細り、首都圏の大型案件も取れなくなる。入札で価格競争が戻り、特命の優位も崩れる。創業家に近い持分が厚いので、清算や大きな還元は期待しにくい。
- 建築(民間・官公庁):数量 52.5(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.38(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 440 億円・営業利益 7 億円。施工量 0.55 倍、単価 1.18 倍。利益率 1.5%
- 土木:数量 5.6(施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.85(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。施工量 0.6 倍、単価 1.18 倍。利益率 1.5%
- ホテル:数量 11.8(販売客室数(万室夜・実質。推定))× 価格 2.20(1 室夜あたり売上(万円・名目。料飲を含む))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。客室数 0.8 倍、単価 1.10 倍。利益率 5%
- 広告代理店・ゴルフ場:数量 11.1(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.00(物価指数(今=1.0))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。実質横ばい、物価横ばい。利益率 -2%
倍率:稼ぐ力は小さく、価値は現金と売れる資産が中心になる。今の自己資本 516 億円に 0.23 倍を掛け、床の資産の約 120 億円に合わせた。市場の PBR は根拠にしていない。
確率:構造的に負ける筋書き。地方の新築が細り、価格競争が戻り、海外ホテルで損失が出る。純現金が厚く、自己資本比率が 6 割を超えるので、倒れるまでは想定せず 13% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築(民間・官公庁)
マンション・ホテル・商業施設・学校などの建築工事。長野と首都圏が地盤。
| 数量施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 95.5 | 7.10 | 678 | 38 |
| 10 年後 中立 | 81.2 | 9.66 | 784 | 38 |
取り方:建設事業の売上 748.7 億円のうち、建築の完成工事高 671.6 億円と開発・不動産賃貸などの建設関連 約 7 億円を合わせ約 678 億円。1 人日あたり売上を 7.1 万円(同じ領域の大本組・錢高組と同水準)とみて、施工量を約 95.5 万人日と推定した。営業利益は建設事業 41.3 億円を、建築と土木に配分した推定。
土木
道路・橋・トンネルなどの工事。9 割が競争入札で、規模は小さい。
| 数量施工量(万人日換算。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.4 | 7.50 | 70 | 4 |
| 10 年後 中立 | 8.4 | 10 | 86 | 4 |
取り方:土木の完成工事高 70.3 億円(単体、2026/3 期)。1 人日あたり売上を 7.5 万円とみて施工量を約 9.4 万人日と推定した。営業利益は建設事業 41.3 億円の配分で、建築と同じ 5.4% とした。
ホテル
長野市のホテルと、ソロモン諸島・ベトナムの海外ホテル。利益率が高い。
| 数量販売客室数(万室夜・実質。推定) | 価格1 室夜あたり売上(万円・名目。料飲を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.7 | 2.00 | 29 | 4 |
| 10 年後 中立 | 14.7 | 2.68 | 39 | 6 |
取り方:ホテル事業の売上 29.45 億円・営業利益 4.49 億円(2026/3 期)。客室数と稼働率の開示が無く、1 室夜あたり売上を料飲込みで約 2 万円とみて、販売客室数を約 14.7 万室夜と推定した。
広告代理店・ゴルフ場
広告代理店とゴルフ場。どちらも小さい。
| 数量実質売上(億円・今の値段) | 価格物価指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.1 | 1.00 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.1 | 1.34 | 15 | 0 |
取り方:広告代理店 8.39 億円と、ゴルフ場 2.75 億円の合計。数量の開示が無く、今の値段で見た売上を数量、物価を価格の指数とした。営業利益は 0.22 億円と 0.08 億円。
リスクと懸念
受注の急減
2026 年 3 月期の単体の受注は約 516 億円で、前の期の約 988 億円から 5 割近く減った。繰越工事高は 700 億円と売上の 0.9 年分。受注が戻らなければ、1〜2 年遅れて売上と利益が細る。
発注元の偏り
完成工事高の約 1 割が東急不動産だ。デベロッパーの着工が遅れれば、受注は直ちに細る。首都圏のマンション施工が弱まると、利益の柱を失う。
地方の人口減
長野の新築需要は、人口減で時間とともに縮む。公共工事は国土強靱化で底堅いが、当社の土木は小さい。首都圏で受注を増やせなければ、売上の水準を保てない。
現金が株主に戻らない
創業家に近い財団・会社が約 3 割を持ち、総還元は利益の 3 割に届かない。外部の株主の働きかけで改善する可能性はあるが、戻る保証は無い。現金の一部は前受金の戻りで消える。
ホテルと海外投資
ホテルは小さいが利益率が高く、利益の約 1 割を稼ぐ。ベトナムとソロモン諸島の投資は、為替と政情のリスクを抱える。長野のホテルは古く、建て替えや改装の費用がかさむ。
工事の採算と人手不足
資材高と人件費の上昇を発注者に転嫁できなければ、利益率は下がる。技能者の不足で受注を絞り、売上が伸びない恐れもある。
今後の分かれ目
- 2027 年度の受注高が 700 億円を超え、繰越工事高が回復したら
- 来期以降の売上が支えられ、中立から楽観寄りへ確率を少し移す。500 億円前後が続けば、やや悲観の確率を上げる。
- 外部の株主の働きかけで、総還元性向が 50% を超えたら
- 現金の戻り方を 0.5 から引き上げる根拠になる。余った現金の価値が 5 割増しになる。
- 創業家に近い財団・会社が持株を売却、または TOB の動きが出たら
- 支配株主の構図が変わり、現金の戻り方が変わる。買収価格と少数株主への条件を見て判断する。
- 営業利益率が 4% を割る年が 2 年続いたら
- 特命と選別受注の優位が崩れたと見る。中立の利益率 4.8% を下げて見直す。
- 東急不動産からの受注が 2 年続けて減ったら
- 首都圏のマンション施工の柱が弱まったと見る。建築の施工量を中立より下げて見る。
- ホテル事業が海外で損失を出したら
- 利益率の高い柱が揺らぐ。減損の規模によっては悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 受注高と繰越工事高の四半期の動き
- 営業利益率(建設事業)と、特命の比率
- 総還元性向と、自己株取得の規模
- 純現金と、営業キャッシュ・フロー(前受金の戻り)
- 東急不動産など上位発注元の比率
- オールド・ピーク・グループなど外部株主の保有割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の経済性だけで置いた。10 年後の中立は、事業の ROE が 7% 前後で資本コスト 8% に届かないので、正当化 PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍。縮む地方・弱い堀は k の上乗せと残る割合 1/3 で見ているので重ねて引かず、同じ領域の会社(9.4 倍前後)と揃えて上限の約 8 割の 9.6 倍に置いた。現金は、事業に要る分を除いた余りを別に足し、戻り方を 0.5 とした。市場の PER・PBR や今の株価からは逆算していない。今の株価が倍になっても半分になっても、この計算は動かない。リースは、新リース会計基準で 2028/03 期から BS に載るが、自社の本社・ホテルが中心で影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。償却は、ホテルの建物など既存の設備を取得時の値段のままとし、新しい改装の分だけ高い値段で足される前提で、ホテルの利益率を 15% から 14% へ下げた。保有株の配当は利益に入っているので、価値を別に足していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。赤字の期はなく、財務も堅いので上乗せ(distress)は付けない。受注の急減、創業家に近い持分の厚さ、現金が株主に戻らないリスクは k に足さず、筋書きと確率、現金の戻り方で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。