結論
第一カッター興業は、コンクリートの構造物を切る・穴をあける工事の専門会社だ。橋、道路、ビル、プラントの更新と補修に欠かせない仕事で、売上の97%がこの切断・穿孔工事にあたる。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を上回る、つまり割安寄りというものだ。
強みは、全国に拠点を持つ規模と、現場で動ける技術者の数だ。この業界は地域の中小業者が多く、全国で同じ品質を出せる会社は少ない。社員は約590人で、現場の担当は5年で2割以上増えた。人を先に採る投資が、いまの利益率を押し下げている。
利益率は12%前後から8%台に落ちた。高速道路の更新工事が減り、外注費と人件費が膨らんだためだ。会社は2027年6月期に9%台、計画の最終年度に10%を見込む。筆者は、中立の姿を10年で10%近辺と置いた。過去12年の山の14%には届かない。
財務は圧倒的に強い。純現金は時価総額の約6割にあたり、自己資本比率は86%ある。余った現金のうち、株主に戻る分は半分と見た。会社は配当性向30%以上と10億円の自社株買いを決めたが、現金をためてきた過去もある。
数字の上では、10年の稼ぐ力と現金で、今の値段を大きく超える価値が出る。ただし、人手不足と建設コストの上昇を価格に転嫁できるかが、結論を左右する。
バリュー投資の観点から
本質価値の見方は単純だ。この会社が10年かけて稼ぐ現金と、手元の余った現金を足す。稼ぎは、仕事の数量と値段、人件費の動きで決まる。
事業の経済性は悪くない。機械と人を増やす投資は、仕事が増えれば回収できる。自己資本が200億円を超え、ROEが7〜8%台なのは、事業が悪いからではなく、現金が厚いからだ。現金を除けば、事業のROEはもっと高い。
安全域は、現金にある。時価総額の約6割が純現金で、悲観の筋書きでも、現金と稼ぐ力で下値は一定の額に支えられる。
一方、株主が自由に使える利益は、見た目の純利益より慎重に見る。工事の機械と車両は、使うほど摩耗し、更新に現金が出る。人も育てるのに年数がかかる。会社がためた現金を、投資に回すのか、株主に戻すのかが、10年の価値を分ける。
筆者は、資本の使い方が改善しつつあると見る。ただ、実績を確かめるには、2〜3年はかかる。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は切断・穿孔工事だ。ダイヤモンドの刃を使い、コンクリートの壁や床、橋の桁、道路の舗装を、必要な形に切り、穴をあける。ビルの改修で配管用の穴をあけるのも、高速道路の古い床板を取り外すのも、この会社の仕事だ。ウォータージェットやレーザーなど、粉じんと振動を抑える新しい工法にも対応する。
顧客は、ゼネコン、道路会社、設備工事会社、デベロッパーなどだ。工事の種類は幅広く、1件ごとの金額は小さい。ただ、取引先が多いため、特定の1社に売上が偏る構図ではない。高速道路の更新は大型案件になり、年によって受注が大きく動く。
収益は、現場で働く人と機械の稼働で決まる。売上の大半は自社の施工だが、忙しい時には外注に頼る。外注は利益率を下げるため、自社施工を増やす人員の採用が重要になる。会社は5年で現場の担当を約3割増やした。
残りの3%はビルメンテナンスだ。首都圏の大手デベロッパーの物件を中心に広げているが、先行投資で利益は小さい。
拠点は全国に広がるが、西日本は手薄だった。いま大阪と松山に営業所を開き、土地の取得も進めている。予防保全の新規事業やレーザー工法の提携先探しも、中期計画の柱に置いている。
優良さと弱いところ
強みは、全国の網と技術者の層だ。コンクリートを切る仕事は、一見単純だが、構造物を傷めず、騒音と粉じんを抑え、期日どおりに終える技が要る。大型の現場ほど、実績のある会社が選ばれる。筆者は、この会社が首位級であることを、会社の説明と過去の業績の安定から見た。
堀は深くない。工法は特殊だが、機械は買える。人を集められれば、同業は同じ仕事ができる。入札や相見積もりで値段が決まる場面も多い。そこで、残る割合は普通(1/2)とした。
収益力は、数字で見ると悪くない。過去10年のROEの中央値は11.8%で、2021年6月期は営業利益率が14.3%に達した。ただ、直近の2期は8%台に落ちた。2025年6月期は、会社の計画25億円に対して16億円にとどまった。
経営は慎重だ。無借金で、利益をためる傾向が強かった。近年は配当性向を引き上げ、自社株買いも決めた。ただ、10年で純現金が30億円から85億円に増えた事実は、資本の使い方が緩かったことを示す。
弱みは、人手不足と賃金の上昇だ。基本給のベースアップを3年続けた。値段に転嫁できなければ、利益率はさらに圧迫される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のインフラは、作る時代から維持する時代に移った。橋やトンネル、高速道路、下水道は、高度成長期に造られたものが多く、更新と補修の需要は10年単位で続く。高速道路会社の更新計画は2030年代まで続くとされ、切断・穿孔工事はその取り外しと補修の主力工程にあたる。
2025年に起きた道路陥没事故のあと、下水道管の点検と補修への関心は高まった。会社の決算説明でも、下水道の維持・補修が国の予算になる影響が質問に挙がった。ただ、予算が実際の発注になるまでには時間がかかる。
民間の需要は、ビルの改修、プラントの維持、設備投資に伴う工事だ。建物の更新は、新築より改修の比重が高まる。ただし、人口の減少と、建設会社の人手不足で、工事の総量が大きく伸びる構図ではない。実質の市場は、10年で横ばいか少し増える程度と見た。
市場の大きさは、開示が無い。筆者は国内の切断・穿孔工事を約1,600億円と推定した。会社の売上が約200億円で、シェアは1割強にあたる。根拠は、首位級の売上と、地域の中小業者が多いという構造からの推定で、確かな数字ではない。
競争は、人と機械の確保が中心だ。全国に拠点を持つ会社は少ない。新しい工法やレーザーでは、設備の投資と提携先の確保が要る。
資本政策と M&A
会社は、2025年から2027年の中期計画で、3年に85億円の投資を掲げた。内訳は、設備と研究開発に35億円、人材とシステムに10億円、拠点とM&Aに40億円だ。M&Aは、同業との統合、施工の前後を補う会社、西日本の候補、レーザー工法の提携先を探している。まだ具体的な案件は出ていない。
還元は、2026年6月期から配当性向30%以上を掲げる。2026年6月期の年間配当は前期より約1割増えた。2026年8月には、上限10億円、70万株の自社株買いを決めた。発行済株式の約6%にあたり、目的に株主構成の安定化を挙げている。
ただ、10年で純現金が30億円から85億円に積み上がった実績がある。投資枠の85億円も、利益で賄える額だ。筆者は、余った現金が株主に届く割合を半分と置いた。
2027年6月期の目標は、売上245億円、営業利益24.5億円だった。会社の予想はこれを下回り、計画は未達が続いている。長期の目標は、2036年6月期に売上510億円、営業利益86.5億円だが、筆者はこれを置かない。
株の需給では、自社株買いが材料になる。買収される側になる可能性は、現金が厚く、時価総額が小さい点から低くはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国の更新投資は長期の約束だ。高速道路、橋、下水道は、作り直す時期に入っている。この会社は全国に拠点を持ち、人と機械の層が厚い。人手が足りない業界で、同じ品質を出せる数少ない会社として、仕事は増え、値段も上げやすくなる。
2025年6月期の減益は、高速道路工事の谷と、人を先に採った一時の費用が重なったものだ。その人員は、いま仕事を回す力になっている。自社施工が増えれば外注が減り、利益率は戻る。実際、2026年6月期の第3四半期までの累計で、切断・穿孔の利益は約18%増えた。
財務は、純現金が時価総額の約6割にある。会社は配当性向を引き上げ、自社株買いを決めた。余った現金が戻れば、株主の取り分は大きい。西日本の拠点、レーザー工法、予防保全という新しい柱が育てば、中期計画の10%を超える利益率も見えてくる。
建設コストと物価が上がる時代は、機械と人の層が厚い会社ほど、値段を通しやすい。小さな競合は、人を採れずに仕事を断る。その分の仕事が、この会社に回ってくる。
慎重な見方
切断・穿孔は、参入の壁が低い。機械は買え、人を集めれば同じ仕事ができる。高速道路工事は、年によって発注が大きく動き、谷になれば利益は削られる。2025年6月期は、会社の計画25億円に対して、16億円にとどまった。計画を外す会社だ。
人件費は上がり続ける。基本給のベースアップを3年続け、現場の担当も増やした。工事の値段に転嫁できなければ、利益率は10%に届かない。同業との競争や、ゼネコンの値下げ圧力は、数量が増えても利益を細らせる。
現金は厚いが、株主に届く保証は無い。10年で純現金は30億円から85億円に積み上がった。新しい自社株買いも、上限10億円と小さい。投資枠のM&Aが高値づかみに終われば、現金は目減りする。人口の減少で、国内の工事の総量も伸びない。
良い数字が出た期も、売却益や営業外の収益が押し上げた面がある。本業の利益が戻ったと言えるのは、利益率が10%近くに戻ってからだ。それまでは、現金を価値に数えすぎない方がいい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の方が、確率は高いと見た。需要は長期の更新に支えられ、人と機械の層は簡単には崩せない。慎重な見方の、人件費と値段の指摘は的を射ており、利益率は過去の山には戻らないと置いた。
中立は、利益率が10%近辺に戻る姿で、確率は最も高い38%にした。やや悲観は、人件費が転嫁できず8%を割る姿で、24%を置いた。悲観は、競争で値段が崩れ、利益がほぼ消える姿で、8%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 2,794 円314 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 786 円88 億円)。 今の値に割り戻すと 1,903 円214 億円、今との差 +45.3%、 期待の年率 +10.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,897 円663 億円 | 1,226 円138 億円 | +443.7% | +18.5% | 570 円64 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,337 円488 億円 | 1,049 円118 億円 | +311.2% | +15.2% | 1,185 円133 億円 |
| 中立 | 38% | 2,883 円324 億円 | 800 円90 億円 | +181.2% | +10.9% | 1,400 円157 億円 |
| やや悲観 | 24% | 955 円107 億円 | 502 円57 億円 | +11.2% | +1.1% | 350 円39 億円 |
| 悲観 | 8% | 548 円62 億円 | 401 円45 億円 | −27.6% | −3.2% | 76 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,794 円314 億円 | 786 円88 億円 | +173.3% | +10.6% | 3,580 円403 億円 |
今の株価時価総額 1,310 円147 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:更新需要が増え、利益率が13%台に戻る 利益 37 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 5,897 円663 億円
国の更新投資が増え、市場は実質で1割広がる。全国と西日本の拠点網でシェアは14%台に上がり、値段も人手不足を背景に物価を少し上回って上がる。
営業利益率は13%台に戻り、過去の山の14%に近づく。営業利益は約49億円、純利益は36億円を超える。レーザー工法と予防保全が柱になり、M&Aも成功する姿だ。
余った現金は、配当と自社株買いで株主に戻る。ただ、この筋書きは、人手の確保、受注、新事業のすべてがうまくいく必要がある。会社が掲げる長期の目標には届かない。
人手不足が追い風になり、規模のある会社に仕事が集まる。自社施工の比率が上がり、外注費が減る。値上げの交渉も、以前より通りやすくなる。
- 切断・穿孔工事:数量 1,760(国内の切断・穿孔工事の市場(億円・今の値段で測った実質、筆者の推定))× 価格 20.0%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 352 億円・営業利益 63 億円。市場1.10倍、シェア14.5%、値段1.38倍
- ビルメンテナンス:数量 220(管理する物件・契約の数(件、推定))× 価格 0.07(1件あたりの平均売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。件数1.7倍、値段1.4倍
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 17.48 倍、時価総額 663 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高速道路・下水道の更新が前倒しで発注され、人も確保できる必要がある。計画を外してきた実績があり、8%にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:更新需要が続き、利益率が11〜12%に戻る 利益 29 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 4,337 円488 億円
高速道路と民間の改修が続き、市場は実質で6%広がる。西日本の拠点が立ち上がり、シェアは13%台に上がる。値段は物価並みか少し上だ。
営業利益率は11〜12%に戻り、営業利益は約38億円になる。外注が減り、自社施工が増えた効果だ。
余った現金は、会社の方針どおり配当性向30%以上と自社株買いで戻る。レーザーなどの新事業は小さく、利益を大きくは動かさない。
外注が減って自社施工が増え、人員の増加が稼働に変わる。値上げは一部の工種に限られ、市場全体の値段を押し上げるほどではない。拠点の増設も、利益の足を引っ張らなくなる。
高速道路の更新は年ごとに波があるが、下水道や民間の改修が谷を埋める。賃上げの負担は、値段と稼働の改善で吸収される。会社の中期計画の最終年度の目標には届かないが、直近の8%台からは確かに抜け出す。
- 切断・穿孔工事:数量 1,696(国内の切断・穿孔工事の市場(億円・今の値段で測った実質、筆者の推定))× 価格 18.5%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 314 億円・営業利益 53 億円。市場1.06倍、シェア13.6%、値段1.36倍
- ビルメンテナンス:数量 170(管理する物件・契約の数(件、推定))× 価格 0.07(1件あたりの平均売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。件数1.3倍、値段1.38倍
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 16.2 倍、時価総額 488 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年6月期の谷から、人員の増加が稼働に変わる姿は十分ありうる。実績はまだ半年で、22%を置いた。
中立 38% 中立:更新需要は横ばい、利益率は9〜10%まで戻る 利益 21 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 2,883 円324 億円
市場は実質で3%増え、横ばいに近い。シェアは西日本の拠点で少し上がり、12〜13%になる。値段は物価並みの1.34倍だ。
営業利益率は9〜10%に戻る。過去12年の平均の10%台前半と、直近の8%台の間にあたる。営業利益は約28億円、純利益は約21億円になる。人件費の上昇と、建設コストの上昇で更新の機械投資は膨らむが、償却は取得価額のままで増えにくい。
純現金は積み上がる。会社は配当性向30%以上と自社株買いを続けるが、余った現金の半分は事業に留まると見た。新しい工法は、利益を大きくは動かさない。
- 切断・穿孔工事:数量 1,648(国内の切断・穿孔工事の市場(億円・今の値段で測った実質、筆者の推定))× 価格 17.2%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 283 億円・営業利益 42 億円。市場1.03倍、シェア12.8%、値段1.34倍
- ビルメンテナンス:数量 150(管理する物件・契約の数(件、推定))× 価格 0.07(1件あたりの平均売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。件数1.15倍、値段1.34倍
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.13 倍、時価総額 324 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要は続くが、人件費の上昇を転嫁しきれない。会社の計画は未達が続いており、利益率は会社の目標よりやや低く置いた。最も確率の高い姿に38%を置いた。
やや悲観 24% やや悲観:人件費が転嫁できず、利益率が5%前後に落ちる 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 955 円107 億円
人手不足が続き、賃上げを値段に転嫁できない。公共の発注は横ばいで、市場は実質で5%縮む。シェアもわずかに落ち、値段は物価より低い1.26倍にとどまる。
営業利益率は5%に近づき、営業利益は約11億円に落ちる。人員は増やしたが稼働が追いつかず、外注に頼る年が続く。
純現金は目減りしないが、投資や買収に回り、株主に届く額は小さくなる。会社の計画は、またも未達に終わる。
新しい拠点は稼働が上がらず、費用だけが先に出る。工法の新しさで値段を取る場面も少ない。ゼネコンの値下げ圧力が、数量の伸びを打ち消す。
- 切断・穿孔工事:数量 1,520(国内の切断・穿孔工事の市場(億円・今の値段で測った実質、筆者の推定))× 価格 15.2%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 230 億円・営業利益 25 億円。市場0.95倍、シェア12.0%、値段1.26倍
- ビルメンテナンス:数量 130(管理する物件・契約の数(件、推定))× 価格 0.06(1件あたりの平均売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。件数横ばい、値段1.26倍
倍率:事業のROEは約3%でkを大きく下回る。正当化PERは1÷kの約12.9倍が上限だが、稼ぐ力が弱い分、その約6割の8.0倍に置いた。
確率:賃上げが続き、公共工事の値段が上がらなければ起こりうる。計画未達の実績があり、24%を置いた。
悲観 8% 悲観:競争で値段が崩れ、利益がほぼ消える 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 548 円62 億円
更新工事の発注が絞られ、民間の改修も減る。市場は実質で15%縮み、シェアも落ちる。値段は物価に追いつかず、1.15倍にとどまる。
営業利益率は1%台に落ち、営業利益は約2億円になる。人件費の上昇だけが残る。2011年6月期の2.8%を下回る水準だ。
稼ぐ力では価値を測れず、純現金の一部と事業の細い利益で値段が決まる。人を抱えたまま仕事が減る、重い姿だ。
投資と採用を急いだ分が、固定費として残る。会社は人員の整理か、拠点の縮小を迫られる。ただ、無借金で現金が厚く、存続の不安は小さい。
株主にとっては、事業の価値より、手元の現金が下値を支える姿になる。配当は維持されるが、増配や自社株買いは止まる。M&Aは見送られ、現金はそのまま残る。
- 切断・穿孔工事:数量 1,360(国内の切断・穿孔工事の市場(億円・今の値段で測った実質、筆者の推定))× 価格 12.7%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 172 億円・営業利益 16 億円。市場0.85倍、シェア11.0%、値段1.15倍
- ビルメンテナンス:数量 100(管理する物件・契約の数(件、推定))× 価格 0.06(1件あたりの平均売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。件数0.8倍、赤字
倍率:稼ぐ力では測れない。事業の細い利益の資本化と、運転資金を除いた純現金に戻り方の半分を掛けた額を合わせて約62億円とし、今の自己資本198.7億円に対して0.31倍とした。
確率:同業や新規参入との値下げ競争、公共工事の縮小、新事業の失敗が重なる姿。構造的な負けとして8%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
切断・穿孔工事
ダイヤモンドの刃や水・レーザーで、コンクリートの構造物を切る・穴をあける工事。橋・道路・ビル・プラントの更新と補修が中心。
| 数量国内の切断・穿孔工事の市場(億円・今の値段で測った実質、筆者の推定) | 価格市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,600 | 12.2% | 194 | 27 |
| 10 年後 中立 | 1,648 | 17.2% | 283 | 42 |
取り方:売上約194億円は、第3四半期累計で全体の約97%を占めることから推定した。市場の大きさは開示が無く、筆者が約1,600億円と推定し、シェアは約12%となる。セグメント利益は、第3四半期累計の26.3億円と連結営業利益の差から、本社費約11億円を戻して年約27億円と見た。
ビルメンテナンス
首都圏の大手デベロッパーの物件を中心にした、ビルの維持管理・清掃・点検。先行投資で利益は小さい。
| 数量管理する物件・契約の数(件、推定) | 価格1件あたりの平均売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 130 | 0.05 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.07 | 10 | 1 |
取り方:売上は約6.5億円で、第3四半期累計の4.9億円から年換算した。件数は開示が無く、1件あたり約0.05億円と推定して約130件と置いた。
リスクと懸念
人手不足と賃金の上昇
現場の担当を増やし、基本給のベースアップも3年続けた。工事の値段に転嫁できなければ、利益率は10%に届かない。採用と定着が続かなければ、受注を断る年も出る。
高速道路工事への偏り
2025年6月期の減益は、高速道路の更新工事の減少が最大の要因だった。年によって発注が大きく動き、谷の年には利益が計画を大きく外れる。
計画の未達
2025年6月期は、営業利益が計画25億円に対し16億円にとどまった。中期計画の最終年度の目標も、会社の予想はそれを下回る。計画への信頼は高くない。
現金の使い方
85億円の純現金は、M&Aと拠点投資に使われうる。まだ具体的な案件は無いが、高値で買えば、株主の取り分は目減りする。
新しい工法・事業の不確実性
レーザー工法と予防保全は、提携先の探索の段階だ。育てば柱になるが、利益に効くには年数がかかり、失敗すれば投資の回収は難しい。
同業の競争
機械は買え、人を集めれば同じ仕事ができる。公共の入札や、ゼネコンの値下げ圧力が続けば、数量が増えても利益は細る。
今後の分かれ目
- 2027年6月期の営業利益が会社の予想の20億円を上回り、利益率が10%に近づいたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。人員の増加が稼働に変わった証拠になる。
- 2027年6月期の営業利益が16億円を下回ったら
- やや悲観・悲観へ確率を移す。賃上げを転嫁できていない可能性が高い。
- 自社株買いや増配が続いたら
- 余った現金の戻り方の評価を上げ、1.0に近づける。
- 大型のM&Aが発表されたら
- 買収額と事業の稼ぐ力を確かめる。高値なら現金の価値を引き下げる。
- 高速道路や下水道の更新の発注量が大きく増えたら
- 数量の見通しを上げる。ただし人手がボトルネックなら、利益には直結しない。
見ておくもの
- 四半期ごとの切断・穿孔の利益率と、外注費の動き
- 高速道路・下水道の更新工事の受注
- 現場の担当の人数と、離職の動き
- 自社株買いの実行額と、配当性向
- M&Aの案件と、西日本の営業所の立ち上がり
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価や過去・同業のPERは使っていない。資本コストは基本7.5%に品質+0.25%を足して7.75%、長期の成長率は4%とした。10年の営業利益率は、中立で10%近辺と置き、過去12年の山の14%を下回る。会社の目標(10%)と、直近の8%台の間で、人件費の上昇を転嫁しきれない面を入れた。市場の大きさは開示が無く、筆者の推定(約1,600億円)で置いた。余った現金は約50億円で、戻り方は半分とした。実行済みの自社株買いは、株数に入っているため自己資本の起点と還元から外した。中立の自己資本の流れは、純利益の合計と還元の合計から機械で計算され、検査の線形の仮定と食い違う分は、2027年6月期に利益が一度落ちる会社予想による。結果として本質価値は今の時価総額を上回るが、その主因は半分強を占める現金と、物価の上昇による利益の名目の増加だ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→17.48 倍・やや楽観 PER 11.9→16.2 倍・中立 PER 12.9→14.13 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。