結論
関電工は、東京電力グループの電気設備工事会社だ。電柱や配線の工事に加え、オフィス、工場、データセンターの電気・空調設備も請け負う。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。会社の質は高く、利益が山の高さにある。
2026 年 3 月期の営業利益率は 11.2% で、過去最高だった。過去 10 年の中心は 6% 前後だ。技能者の不足による単価の上昇に、データセンターと半導体工場の需要が重なった。この高さが 10 年続くとは置きにくい。
強みは、東京電力への依存が小さいことだ。同社向けは単体の完成工事高の 24% にとどまり、残りは民間の電気・空調工事である。受注残は約 6,700 億円で、1 年分の工事を上回る。当面の仕事は見えている。
2026 年 1 月に、筆頭株主の東京電力パワーグリッドが保有株の一部を売り出し、持ち株は 46% から 34% へ下がった。会社は株価を支えるため、自社株買いを追加した。株主基盤は動き始めている。
中立の筋書きは、利益率が 10% 台前半へ戻る姿だ。還元は方針(配当性向 40% 程度)に自社株買いの足しで純利益の 5 割ほどとみるので、自己資本が厚くなり、ROE は 10% 近くに下がる。10 年後の価値は、今の値段を 3 割近く下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、東京電力向けの受注が 24% と低く、民間の需要を自分で取りにいく営業力と、設備を束ねる総合力を持つ点が好ましい。系列の発注に頼る同業より、優良さが長く続きやすい。受注残が 1 年分の完成工事高を上回ることも、近い年の見通しやすさという安全域になる。
財務は健全だ。自己資本比率は 61% で、純現金もある。技能者が足りない局面で、投資と還元の両方に動ける。
一方で、ROE 16.3%、営業利益率 11.2% は、単価の上昇とデータセンターの需要が重なった山である可能性が高い。この持続力を、そのまま信じるべきではない。談合で主導的な役割を認定された過去と、入札に頼る受注の構造は、価格を決める力の持続に疑問を残す。取引先の株を売り切ったため、過去数年の利益を支えた売却益も、今後は期待しにくい。
払う値段の安全域は厚くない。中立の利益率では ROE は 10% 近くで、評価は並みだ。山の分を割り引くと、今の値段は割高に見える。確信度は少し下げて見る会社だ。
何で稼ぐ会社か
事業はほぼ単一の電気設備工事で、大きく 2 つの顔を持つ。
1 つ目は配電だ。東京電力パワーグリッドから、電柱・配線・引込線の建設や改修、送電線の工事、再生可能エネルギーの系統接続を受ける。2025 年 3 月期の単体完成工事高は 5,831 億円で、東京電力グループ向けは 1,417 億円、24% にとどまる。
2 つ目は民間の屋内線・環境設備・情報通信の工事だ。オフィス、商業施設、工場の電気・空調設備を請け負い、完成工事高の約 6 割を占める最大の区分である。ここにデータセンターと半導体工場の受電設備が積み上がっている。
単体で 8,000 人超の技能者を抱え、電気・空調・通信を束ねて提案できることが武器だ。AI、半導体、再生可能エネルギーを成長分野に掲げる。再エネは 2012 年に銚子の風力発電を 18 億円で買ったのが起点で、2026 年 3 月期の売上は 233 億円、前期の約 1.8 倍に伸びた。
技能者の不足で、工事の単価は上がっている。この値上がりを価格に乗せられることが、今の高い利益率の一因だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、電気・空調・通信を束ねる総合力だ。顧客は、ビル全体の設備を 1 社に任せたがる。関電工はそれを一括で請け負える。
もう一つは、依存の小ささだ。東京電力向けは 24% で、電力系の同業では低い。系列の発注に頼らず、データセンター、半導体工場、再開発の民間需要を自分で取りにいける。
受注残も安心材料だ。単体で約 6,700 億円あり、1 年分の完成工事高を上回る。数年先までの収益は、ある程度見通せる。自己資本比率は 61% で、純現金もあり、買収や投資に動く余力がある。
弱みは 2 つある。第一に、価格を自分で決めきれない。官公庁、開発会社、電力会社の入札と相見積りで受注するため、技能者の不足が深まれば、値上げより先に、受注を絞ることになりうる。第二に、談合の過去がある。東京電力が発注した送電線工事で、公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を受けた。取引先の株は 2 銘柄まで減らしており、含み益の上積みは小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の電気工事の受注は、2023 年度で約 3.4 兆円ある。再生可能エネルギーの系統接続、データセンターと半導体工場の受電設備、EV 充電器など、新しい需要が既存の仕事に積み上がっている。
最大の制約は人手だ。2024 年の残業上限規制で、技能者の高齢化と不足が構造になった。単価は上がりやすいが、人が足りなければ受注を絞らざるを得ない。値上げと受注の制約が、同時に起きる業界である。
電力系の電気工事は 7 社ある。関電工は、きんでんに次ぐ規模で、東京電力管内という最大の経済圏を地盤にする。民間工事では、総合電気工事会社やサブコン、つまり設備の専門工事会社とも競う。データセンターと半導体工場の取り合いが、新しい競争の軸になった。
株主の動きもある。2026 年 1 月、東京電力パワーグリッドが約 1,500 億円規模の株を売り出し、持ち株を 34% 台まで下げた。目的は、福島第一原発の廃炉費用と送配電投資の資金確保だ。東電は 33.4% 以上を保つ方針で、完全子会社にする計画ではない。
10 年後を考える。データセンターと半導体の投資は、いずれ一巡する。それでも、古い配電網の更新と再エネの接続は残る。一方で人口と世帯数は減り、オフィスや商業施設の新設は、実質で横ばいから縮小に向かう。投資が海外の立地へ移れば、民間工事の柱は細る。
資本政策と M&A
還元は、配当性向 40% 程度を目安にした安定配当が基本だ。2026 年 3 月期は大きく増配し、2027 年 3 月期も増配を見込む。自社株買いも厚い。2026 年 3 月期は 300 億円を実施し、東京電力パワーグリッドの売り出しに伴う株価への影響を和らげるため、最大 300 億円を追加した。
取引先の株は、ほぼ売り切った。2023 年度に 10 銘柄・簿価 177 億円を減らし、今は 2 銘柄・時価 147 億円程度だ。売却益で利益を押し上げる時期は終わった。
今後 5 年は、カーボンニュートラルに関わる事業と M&A に合計 800 億円を投じる計画だ。再エネの発電・保守が中心になる。買収の中身はまだ見えず、実行力が試される。
筆頭株主は東京電力パワーグリッドで、33.4% 以上を持つ方針を示している。関電工が買収の標的になる見込みは小さい。ただ、東電の資金需要が続けば、追加の売り出しが繰り返される可能性はある。
還元の置き方:開示された方針は配当性向 40% 程度だけで、総還元性向の目標は確かめられない。自社株買いの 300 億円(実施)と追加の最大 300 億円は、東京電力パワーグリッドの売り出しに合わせた一回きりとみて、10 年の還元は配当 4 割に自社株買いの足しで純利益の合計の 5 割とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
関電工は、東京電力向けが 24% と低く、データセンター、半導体工場、再開発の民間需要を自分で取りにいく力を持つ。受注残は約 6,700 億円と 1 年分を上回り、2027 年 3 月期も最高益が見込まれる。人手が足りない業界では、規模の大きい施工集団ほど、受注を確保しやすい。
11.2% の利益率は、単価の上昇を価格に乗せられている証拠だ。電気・空調・通信を束ねる総合力は、ほかの工事会社が簡単にまねできない。再エネ事業は 2026 年 3 月期に売上が約 1.8 倍の 233 億円へ伸び、新しい稼ぎの柱に育つ余地がある。
財務も厚い。自己資本比率は 61% で、純現金がある。今後 5 年に投じる 800 億円の計画を、無理なく実行できる。東京電力パワーグリッドの売り出しは、関電工の経営の自立を広げ、株主の顔ぶれを多様にする。配電の更新と再エネの接続は 10 年後も残り、データセンターの波が複数回来れば、規模・施工力・資本配分のどれでも同業に見劣りしない立場を保てる。
慎重な見方
ROE 16.3%、営業利益率 11.2% は、単価の上昇とデータセンター・半導体の需要が同時に重なった山だ。この水準が 10 年続くとは考えにくい。
電気工事の受注は、官公庁、開発会社、電力会社の入札と相見積りに頼る。価格を決める力は完全ではない。技能者の不足が深まれば、値上げより先に、受注そのものを絞ることになる。
東京電力が発注した送電線工事の談合で、排除措置命令と課徴金納付命令を受けた過去がある。約 1 年間、339 件、約 150 億円分の工事で違反が認定された。業界の受注調整の体質への懸念は消えない。取引先の株は 2 銘柄まで減っており、利益を押し上げた売却益の余地は、ほとんど残っていない。
データセンターと半導体の投資は、立地しだいで海外へ移りうる。国内は人口と世帯数が減り、配電の更新だけでは、民間工事の縮みを埋めきれない。市場は、山の利益に高い倍率を付けている面が大きい。
談合の過去、入札への依存、立地の移転。この 3 つは、数字に出る前に評価を動かしやすい。
どちらに重みを置いたか
東京電力への依存が小さい民間工事の強さと、受注残の厚みには、実現性がある。ただ、ROE 16.3%、営業利益率 11.2% が、単価の上昇と需要が重なった山である可能性は否定できない。売却益の上乗せも、ほぼ一巡した。
筆者は、中立の利益率を 10% 台前半へ戻す姿に置いた。10 年後は、データセンターの投資の一巡と、配電の更新の底堅さの綱引きになる。確率は、強気側と慎重な側のほぼ中間に置いた。還元は方針の範囲に置くので ROE は 10% 近くまで下がる。その結果、価値は今の値段を 3 割近く下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,999 円1.59 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,845 円3,671 億円)。 今の値に割り戻すと 5,272 円1.05 兆円、今との差 +3.3%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 14,490 円2.88 兆円 | 2,591 円5,156 億円 | +234.7% | +12.8% | 2,562 円5,099 億円 |
| やや楽観 | 25% | 10,638 円2.12 兆円 | 2,162 円4,303 億円 | +150.8% | +9.6% | 3,200 円6,369 億円 |
| 中立 | 30% | 7,236 円1.44 兆円 | 1,782 円3,546 億円 | +76.7% | +5.9% | 2,705 円5,384 億円 |
| やや悲観 | 20% | 4,310 円8,579 億円 | 1,480 円2,946 億円 | +13.5% | +1.3% | 1,158 円2,305 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,333 円2,654 億円 | 848 円1,688 億円 | −57.3% | −8.1% | 218 円434 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,999 円1.59 兆円 | 1,845 円3,671 億円 | +92.9% | +6.8% | 9,844 円1.96 兆円 |
今の株価時価総額 5,104 円1.02 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 15% 楽観:データセンターと配電の更新の波を何度も取り込む 利益 1,427 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 14,490 円2.88 兆円
データセンターと半導体工場の大型案件が、国内で何度も立つ。関電工は、電気・空調・通信を束ねる力で、それを取り続ける。技能者の確保にも成功し、民間工事の数量は今より 3 割近く増える。単価は物価より少し上がり、営業利益率は 13% 台を保つ。
配電は、更新と再エネの接続が続き、構造的な柱に育つ。再エネの発電事業も伸びる。取引先の株は少ないが、配当と自社株買いで還元は厚いが、方針の範囲で純利益の 5 割ほど。ROE は 15% 近くになる。
10 年後の関電工は、東京電力の系列という枠を超え、民間の電気設備でも全国で指折りの施工集団になっている。需要の波を何度も取り込む会社へ、評価が変わる。
- 配電・工務関係工事:数量 2,916(技術者数(配電・工務関係、人、推定))× 価格 117(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 3,409 億円・営業利益 392 億円。配電網更新・再エネ接続が構造的な柱に育つ
- 屋内線・環境設備・情報通信工事:数量 7,668(技術者数(人、推定))× 価格 139(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 10,685 億円・営業利益 1,496 億円。データセンター・半導体投資の複数回の波を取り込む(v2:利益率は今の 12% を超えない水準に引き直した)
倍率:事業の純利益 1,427 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.75 倍、時価総額 28,183 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体・データセンターの需要が続き、配電の更新も拡大し、総合力が深まる組み合わせ。実現すれば優良さが大きく高まるが、条件が多い。
やや楽観 25% やや楽観:配電の更新とデータセンター需要が緩やかに続く 利益 1,086 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 10,638 円2.12 兆円
データセンターと半導体の投資は山を越えるが、緩やかな拡大は続く。配電網の更新と再エネの接続が、安定した稼ぎを支える。民間の数量は 2 割ほど増え、単価は物価にほぼ沿って上がる。営業利益率は 12% 台前半を保つ。
技能者の不足は続くが、受注残の厚みと規模で、人も仕事も確保する。還元は方針の範囲で純利益の 5 割ほど。ROE は 12% 台になる。
堅実に強い電気設備工事会社として、過去より高い収益力を保ったまま 10 年を過ごす。ただ、強気の見方のような大きな上振れまでは届かない。
配電と再エネが下支えになり、民間が少し伸びるだけで、増益が続く。
- 配電・工務関係工事:数量 2,770(技術者数(配電・工務関係、人、推定))× 価格 114(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 3,147 億円・営業利益 330 億円。配電網更新・再エネ接続が安定した収益源に
- 屋内線・環境設備・情報通信工事:数量 6,930(技術者数(人、推定))× 価格 134(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 9,259 億円・営業利益 1,157 億円。データセンター需要が緩やかに拡大(v2:利益率は今の 12% を超えない水準に引き直した)
倍率:事業の純利益 1,086 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.83 倍、時価総額 20,449 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:配電の更新と再エネの接続は実現性が高く、データセンターと半導体の需要も緩やかに拡大する組み合わせ。
中立 30% 中立:民間の一巡を、配電の更新が受け止める 利益 783 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 7,236 円1.44 兆円
データセンターと半導体工場という今の需要の柱が一巡する。オフィスや商業施設の新設は、人口と世帯数の減りで、実質の横ばいに向かう。配電は、更新と再エネの接続で緩やかに増える。民間の屋内線・環境設備は、電気・空調・通信を束ねる力で、一巡の穴をどうにか補う。
技能者の不足は深まる。単価は物価にほぼ沿って上がるが、競争もあり、営業利益率は今の 11.2% から 10% 台前半へ下がる。過去 10 年の中心は 6% 前後なので、高い水準は残る。
還元は配当性向 40% 程度の方針に、自社株買いの足しを乗せて純利益の 5 割ほど。自己資本は厚くなり、ROE は 10% 近くに落ち着く。10 年後の関電工は、特需が消えても、なお同業と並ぶ稼ぎを持つ、堅実な会社である。
- 配電・工務関係工事:数量 2,624(技術者数(配電・工務関係、人、推定))× 価格 110(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 2,894 億円・営業利益 261 億円。配電網の更新・再エネ接続が緩やかに増える。利益率は今の水準(9.0%)のまま
- 屋内線・環境設備・情報通信工事:数量 6,248(技術者数(人、推定))× 価格 128(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 7,981 億円・営業利益 878 億円。民間需要が一巡、総合設備マネジメント力で補う。価格は物価(10年1.34倍)にほぼ沿う(v2:利益率は今の 12% を超えない水準に引き直した)
倍率:事業の純利益 783 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.36 倍、時価総額 13,593 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンターと半導体の投資の一巡と、配電の更新・再エネの接続が、ちょうど打ち消し合う姿。業種の中立の前提に沿う、最も重い筋書き。
やや悲観 20% やや悲観:民間の一巡が、配電の更新の効果を上回る 利益 543 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 4,310 円8,579 億円
人口と世帯数の減りが想定より速い。データセンターと半導体の投資の一部は、海外の立地へ移る。民間の数量は伸びず、技能者の不足で受注を絞らざるを得ない。
配電の更新と再エネの接続は続くが、民間の縮みを補うには足りない。同業との競争が激しくなり、単価は物価に届かない。営業利益率は 8% 台まで下がる。
東京電力向けの保守が下支えになり、赤字にはならない。それでも、優良さの評価はじわじわ下がる。会社は存続し、配当も続けるが、成長の物語は弱まる。
人手不足と値下げ圧力が同時に来て、単価で稼ぐ余地が狭まる。
- 配電・工務関係工事:数量 2,479(技術者数(配電・工務関係、人、推定))× 価格 105(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 2,612 億円・営業利益 217 億円。受注を絞り数量が伸び悩む
- 屋内線・環境設備・情報通信工事:数量 5,396(技術者数(人、推定))× 価格 119(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 6,437 億円・営業利益 612 億円。海外立地シフトで数量が細る(v2:利益率は今の 12% を超えない水準に引き直した)
倍率:ROE 7.61%(純利益 543 億円 ÷ 自己資本 7,132 億円)。事業の ROE が資本コスト k 7.25% 以下なので、新しく投じるお金は k に届かず、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。成長の余地は小さく、上限の 8.8 割の 14.26 倍に置いた。
確率:人口減と民間投資の一巡が想定より速く、配電の更新と再エネの接続では補いきれない姿。
悲観 10% 悲観:国内で構造的に負け、民間需要の柱を失う 利益 40 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,333 円2,654 億円
国内の人口減と技能者の不足が加速し、屋内線・環境設備の数量が大きく縮む。価格の転嫁も限界に達し、値下げを迫られる。データセンターと半導体工場の投資は、国内の立地の優位を失い、次の柱を作れない。
配電は、東京電力向けの保守が下支えになるが、新規の再エネや特別高圧の工事は先送りが続く。同業に市場を奪われ、受注調整の体質への疑いも晴れない。
本業の利益だけでは還元を支えきれず、厚い純現金の取り崩しと資産の売却で、配当を保つ。会社は存続するが、成長の柱は残らない。優良さを失った 10 年である。
10 年後には、東京電力向けの保守工事と、小さくなった民間工事だけが残る。市場は関電工を、景気に翻弄される普通の下請けとして扱う。
- 配電・工務関係工事:数量 1,944(技術者数(配電・工務関係、人、推定))× 価格 86(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,680 億円・営業利益 50 億円。系列の保守工事は下支え、新規は先送りが続く
- 屋内線・環境設備・情報通信工事:数量 3,124(技術者数(人、推定))× 価格 91(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 2,832 億円・営業利益 57 億円。海外立地シフトで構造的に需要が縮小
倍率:構造的に受注の採算が崩れた姿。純利益は 40 億円で稼ぐ力は 530 億円ほどにしかならず、床は売れる資産で測る。総資産 6,360 億円を強制売却で 8 割しか回収できず、負債 2,450 億円は全額払うとして残る約 2,650 億円(純現金・縮減済みの政策保有株を含む)を、今の自己資本 3903 億円に対する PBR 0.68 倍(時価総額 2654 億円)に置いた。谷の年は営業利益が 47 億円と小さく、EV ÷ 営業利益は参考にならない。
確率:人口減と民間投資の縮小が深まり、データセンターと半導体の需要も海外の立地へ移る、リーマン級の構造の劣化。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
配電・工務関係工事
東京電力パワーグリッド向けの配電設備(電柱・配線・引込線・機器等)の建設・改修と保守、送電線工事、再生可能エネルギーの系統接続、特別高圧・原子力関連の設備工事。
| 数量技術者数(配電・工務関係、人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,430 | 82 | 2,000 | 180 |
| 10 年後 中立 | 2,624 | 110 | 2,894 | 261 |
取り方:全従業員約8,100人(単体、推定)のうち、配電線工事・工務関係工事(再エネ・原子力・特別高圧)に対応する技術者を全体の約3割(2,430人)と推定した。2025年3月期の単体完成工事高に占める東京電力グループ向け受注(24.3%、出典:The社史)に、系列以外の送電線・再エネ系統接続分を加えた区分。1人当たり完成工事高はこの区分の売上(推定)を人数で割って逆算。数量(技術者数)は実質、単価は物価並みに上がるのが基本
屋内線・環境設備・情報通信工事
データセンター・半導体工場・オフィスビル再開発・商業施設などの民間向け電気設備・空調設備・情報通信工事。配電・工務関係工事を除く全社の完成工事高。
| 数量技術者数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,680 | 95 | 5,419 | 650 |
| 10 年後 中立 | 6,248 | 128 | 7,981 | 878 |
取り方:全社の完成工事高から配電・工務関係工事区分を除いた残り(屋内線・環境設備工事が完成工事高の約6割、出典:株主説明資料分析)。推定技術者数は全従業員から配電区分の推定人数を除いた残り。数量(技術者数)は実質、単価は技能労働者不足による価格転嫁で物価並み以上に上がる想定
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率 11.2% は過去最高で、単価の上昇とデータセンターの需要が重なった山だ。追い風が弱まれば、利益率は急に戻りうる。中立でも 10% 台前半へ下げているが、さらに速く戻れば、今の値段との差は大きく開く。
技能者の不足の深刻化
高齢化と人手不足は構造で、価格転嫁には追い風だ。ただ人が足りなければ、値上げでは補えず、受注の量そのものを絞ることになる。採用と育成の費用も重くなる。
入札で受注の採算が振れる
電気工事の受注は、官公庁、開発会社、電力会社の入札と相見積りに頼り、価格を決めきれない。きんでんやクラフティアとの競争が強まれば、人手不足の下でも単価の上昇が止まる局面がありうる。
データセンター・半導体の需要の一巡と立地の移転
屋内線・環境設備の成長は、データセンターと半導体工場の投資に支えられている。計画の見直しや、国内から海外の立地への移転があれば、受注の柱の一つが細り、利益率の改善も止まる。
談合の疑いの再発
東京電力が発注した送電線工事の談合で、排除措置命令と課徴金納付命令を受けた過去がある。約 1 年間、339 件の工事で違反が認定された。同じ疑いが再び出れば、信用と利益の両方に傷がつく。
売却益の剥落
取引先の株は 2 銘柄・時価 147 億円まで減っており、過去数年に利益を押し上げた売却益の余地は、ほとんど残っていない。本業の増益で、この穴をどこまで埋められるかが、利益の水準を左右する。
東京電力パワーグリッドの追加売り出し
東京電力パワーグリッドは 2026 年 1 月に約 1,500 億円規模の株を売り、持ち株を 34% 台へ下げた。資金の需要が続けば、追加の売り出しが繰り返され、関電工が株価対応の自社株買いを迫られ続ける可能性がある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 11% を超えて、過去最高の水準を保ったまま安定したら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。価格転嫁の定着が実証され、中立の 10% 台前半は低すぎたことになる。
- 国内で、大型のデータセンターや半導体工場の案件が相次いで発表されたら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。屋内線・環境設備の受注の柱が、さらに厚みを増す証拠になる。
- 受注残が、年間の完成工事高に対して高い比率を保ち、さらに積み上がったら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。数年先までの収益の見通しやすさが保たれている証拠になる。
- 談合やコンプライアンスの新たな疑いが出たら
- やや悲観側へ重みを移す。ガバナンスの評価を見直し、優良さの評価を下げる。
- データセンターや半導体工場の投資が、国内から海外へ大きく移ると報じられたら
- やや悲観側へ重みを移す。屋内線・環境設備の需要の柱が細る証拠になる。
- 東京電力パワーグリッドが、大規模な追加売り出しを発表したら
- 株主の顔ぶれの変化で、価値への影響は中立に近い。ただ、関電工が自社株買いで受け止めきれなければ、やや悲観側へ重みを移す。
見ておくもの
- 完成工事高・営業利益率の推移(配電・産業の両区分)
- 受注残(単体)の水準と年間完成工事高に対する比率
- 東京電力パワーグリッドの持株比率と追加売却の有無
- 技能労働者数・採用動向と工事単価の推移
- データセンター・半導体工場向けの新規大型案件の有無
倍率と資本コストの決め方
数量は配電と民間の技術者数(実質)、価格は 1 人あたりの完成工事高(物価 3% を含む名目)で積んだ。東京電力グループ向けが 2 割台前半という開示をもとに区分した。今の過去最高益(ROE 16.3%・営業利益率 11.2%)が続くとは置かず、中立では営業利益率を 10% 台前半、ROE を 14% 台にならした。配電の利益率は、今の水準(9.0%)を超えないようにした。倍率は、新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC = k 7.25% + 1/2 ×(ROE − k))と g 4% から正当化 PER を出し、その 8 割台半ば(やや悲観は 8 割)に置いた。悲観は、谷の利益でなく、総資産の 8 割回収・負債全額払いで残る売れる資産(約 2,650 億円)で測った。今の株価と PER は最後に比べただけで、倍率の根拠にしていない。取引先株は 2 銘柄まで減っており、含み益は余り資産に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→19.75 倍・やや楽観 PER 13.1→18.83 倍・中立 PER 12.5→17.36 倍・やや悲観 PER 11→14.26 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。