結論
西松建設は、トンネル・ダム・橋などの土木に強い準大手ゼネコンだ。筆者の結論は「やや割高」。利益は急回復したが、資本の効率と財務の厚みが、まだ今の値段を支えきれない。
利益の戻りは本物だ。建築の採算は、2年前の赤字すれすれから6%台へ戻った。土木は7%を超える利益率を保つ。営業利益は直近で280億円と、過去10年でも上位に入る。
ただし直近の利益率は、景気と人手不足の追い風を受けた姿だ。国内の建設は、会社自身が「2030年以降は停滞・縮小」と見ている。しかも自己資本比率は28%、純有利子負債は時価総額の9割にのぼる。金利が上がれば、利益はその分だけ削られる。
中立の筋書きでは、営業利益は10年後に360億円ほどになる。ただ、借金の利息が増えるため、純利益は今の水準から大きく伸びない。価値は今の時価総額に届かない。
筆者は、伊藤忠商事が筆頭株主として控える点を、下値を支える材料と見る。それでも安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ゼネコンは「毎年、仕事を取り直す商売」だ。利益は景気の山と谷で大きく振れる。西松建設も、過去20年に赤字の期が3回あり、2023年3月期には建築と国際で合わせて約94億円の赤字を出した。
株主が自由に使える利益は、この会社では多くない。工事が増えれば、完成工事の未回収金が先に膨らみ、運転資金が要る。借金が増えれば、利息という固定の支払いが利益を食う。2028年度に自己資本比率を35%へ上げる計画は、この弱みを会社自身が認めたものだ。
安心できる点もある。政策保有株を減らして資本を整え、土木で稼ぐ力を保ち、伊藤忠が後ろに控える。ただ、これらが利益の質を変えるのは、10年という時間がかかる。
安全域は薄い。楽観の筋書きなら今の値段を上回るが、中立では届かない。わかりやすい事業でも、払う値段が価値を超えるなら、筆者は手を出さない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は建築と土木だ。直近の売上は建築が約2,170億円、土木が約1,220億円。建築はオフィス・工場・データセンター・物流施設などを、民間のデベロッパーや製造業から請け負う。土木は道路・鉄道・ダム・トンネルなど、国や自治体の発注が中心だ。
土木は利益の質が高い。山岳トンネルの施工と、古くなったトンネルや橋の補修・更新が得意分野だ。直近の利益率は7%台で、建築より高い。国土強靱化の予算が続く間は、土台として働く。
三つ目は環境・都市開発だ。売上は約250億円と小さいが、利益は約77億円と大きい。不動産を持って貸し、育ててから売る事業で、会社の利益の4分の1以上を稼ぐ。ただし売却益は年ごとにぶれる。2026年4月に、再生可能エネルギーなどを担う部門とこの事業を統合した。
四つ目の国際は、ODA、つまり日本政府の援助による海外のインフラ工事が中心だ。売上は300億円台で、直近は約24億円の赤字だった。受注の先送りや大型工事の遅れが続き、前の中期計画の売上目標も届かなかった。
会社は新しい中期経営計画で、2028年度に売上5,000億円・営業利益350億円を掲げた。国内の建設を厚くしつつ、国際と都市開発を第二・第三の柱にする方針だ。2035年度には営業利益650億円を目標にする。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、「土木に強みを持つ、財務の薄い準大手」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、スーパーゼネコンほど深くない。
強みは三つある。一つ目は、山岳トンネルと既設トンネル・橋の補修という、技術の要る土木の実績。二つ目は、ここ数年で建築の採算管理を立て直した点。三つ目は、自社で持つ不動産から安定した利益を得ている点だ。会社は「粘り強さ」と「まとめ上げる力」を現場力と呼ぶ。
弱みも三つある。一つ目は、価格を決める力が弱い点。入札と相見積りが多く、人手不足の追い風がやめば採算が戻りやすい。二つ目は、国際事業が赤字続きで、海外の大型工事の管理に課題を残す点。三つ目は、財務の薄さだ。自己資本比率は28%にとどまり、完成した工事の未回収金が増えるほど資金が要る。
資本の使い方は、方向は正しい。政策保有株、つまり取引のために持つ他社株を、純資産比で16.8%から15%未満へ減らす。売却で得た現金は還元と投資に回る。ただ、還元の目安は純資産の5%程度(DOE)で、利益の伸びに応じて増える形ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設は、2030年ごろまでは追い風だが、そのあとは量が増えない市場だ。国土強靱化の計画は、2026年度から5年で事業規模20兆円強にのぼる。老朽化した橋・トンネル・上下水道の更新が続く。民間もデータセンターや工場の投資が強い。
追い風の裏に、人手不足がある。2024年4月に残業の上限規制が始まり、技能者の確保が難しくなった。受け手のゼネコンが仕事を選べるようになり、価格転嫁も通る。上場ゼネコン50社の2025年度は、受注も利益も過去最高だった。
準大手の競争相手は、安藤・間、熊谷組、戸田建設、奥村組、東急建設だ。顧客が地方や公共に広がる分、価格を決める力はスーパーゼネコンより弱い。西松建設の強みは、トンネルや補修のような技術が要る土木にある。ここは参入が難しく、価格競争になりにくい。
10年先は、投資が一巡し、人口減で新しく建てる需要が細る。実質の量は横ばいか緩やかな縮小と筆者は見る。差がつくのは、人手を節約する技術と、採算の悪い仕事を断る力だ。会社が山岳トンネルの無人化施工に取り組むのも、そこを狙っている。
再編は進みやすい。後継者不足の地場ゼネコンを買う動きや、準大手どうしの統合が、この領域の次の焦点になる。
資本政策と M&A
資本政策は、大株主の動きと切り離せない。2021年、村上系のファンドが株を取得し、会社は約544億円の自己株式の公開買付けで応じた。同じ年の12月に、伊藤忠商事が約10%を引き受けて資本業務提携を結んだ。伊藤忠は2025年5月の開示で、議決権の約22%を持つ。
伊藤忠が上限に近い大株主として控える意味は二つある。一つは、物言う株主に株が流れにくくなったこと。もう一つは、商社の持つ建材調達と不動産開発の力を、施工と組み合わせられることだ。外から強引に買われる確率は低いと筆者は考える。
新しい中期計画で、会社は3年間で成長投資とM&Aに約1,500億円を使う。内訳は、不動産が1,000億円(売却して回収するため純額はほぼゼロ)、GX・まちづくりが300億円、成長領域が200億円だ。還元は純資産の5%(DOE)程度、3年で300億円ほどとなる。
買収の実績は小さい。今回の計画は、後継者難の地場ゼネコンなどを買い、国内建設の領域を広げる色が濃い。買い方を間違えると、薄い自己資本を一気に傷める。借金で買うのか、資産売却で賄うのかを、筆者は見ていく。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造が変わった。建設業は、受け手が仕事を選べる時代に入った。西松建設は建築の採算を立て直し、直近で営業利益は280億円と、前の計画の目標250億円を超えた。新しい計画の350億円は、足元の延長で届く水準だ。
土木はさらに強い。山岳トンネルの無人化施工や、トンネル覆工の再生、橋の床版の取り替えなど、人手を減らす技術を持つ。国土強靱化の20兆円は、この分野の需要をそのまま押し上げる。人手不足が深まるほど、技術の差が価格に出る。
資本の面でも変わる。政策保有株を純資産の15%未満へ減らし、不動産は売って入れ替える。投資先行から、利益を積み上げる局面へ切り替えるのが会社の方針だ。伊藤忠との協業で、不動産開発や資材調達の力も借りられる。
国際はまだ赤字だが、規模が小さいぶん、黒字化の効果は大きい。2035年度の営業利益650億円は、国内建設以外の事業を3分の1に育てる前提だ。実現すれば、景気の波に強い会社になる。
慎重な見方
今の利益は、景気と人手不足がそろった山の姿だ。建築の採算は2年前にほぼゼロだった。それが倍以上に戻ったのは、価格転嫁が通る需給のおかげで、会社の力だけではない。値上げ疲れや民間投資の一巡で、再び崩れうる。
財務が薄い。自己資本比率は28%、純有利子負債は2,000億円近くにのぼる。借金の利息は、借り換えのたびに上がる。営業利益が横ばいでも、純利益は縮む。会社自身も、2027年3月期の純利益を前期より減らす計画だ。
還元の仕組みも物足りない。純資産の5%という目安は、利益が増えても配当が増えるわけではない。しかも2025年度のROE13%は、政策保有株の売却益83億円を含む。除くと約10%で、会社が自ら認める資本コスト7〜8%を、わずかに上回る程度だ。
国際は赤字が続く。大型工事の遅れで、前の計画の売上目標も届かなかった。次の買収で外せば、薄い自己資本が傷む。10年先は国内の量が減る。大きな成長は描きにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。事業の質や土木の強みでは強気の見方に分があるが、値段を決めるのは、借金の重さと景気の振れを織り込んだうえで、資本コストを超えられるかどうかだ。ここで慎重な見方の指摘が勝つ。確率は中立に4割弱を置き、残りを慎重側にやや厚くした。悲観を1割強に置いたのは、過去の赤字の経験と、国際・開発の失敗の余地を無視できないからだ。一方、伊藤忠が筆頭株主として控えるため、悲観の確率は戸田建設などと同じ水準にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,370 円2,515 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,718 円1,073 億円)。 今の値に割り戻すと 4,712 円1,860 億円、今との差 −11.7%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 12,521 円4,944 億円 | 3,396 円1,341 億円 | +198.4% | +11.6% | 1,114 円440 億円 |
| やや楽観 | 17% | 9,314 円3,677 億円 | 3,189 円1,259 億円 | +134.3% | +8.9% | 2,125 円839 億円 |
| 中立 | 38% | 7,343 円2,899 億円 | 3,044 円1,202 億円 | +94.7% | +6.9% | 3,947 円1,559 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,544 円1,399 億円 | 2,533 円1,000 億円 | +13.9% | +1.3% | 1,641 円648 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,482 円585 億円 | 886 円350 億円 | −55.6% | −7.8% | 260 円103 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,370 円2,515 億円 | 2,718 円1,073 億円 | +70.4% | +5.5% | 9,088 円3,588 億円 |
今の株価時価総額 5,335 円2,106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 土木の技術差と都市開発で稼ぎが定着 利益 356 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 12,521 円4,944 億円
10年間、人手不足が価格に転嫁され続ける。建築は6%台後半から7%の利益率を保ち、土木は8%に届く。山岳トンネルの無人化施工と、トンネル・橋の補修が、他社の追随しにくい稼ぎ場になる。国土強靱化の予算も、更新需要として切れ目なく続く。
国際は黒字へ転じる。ODA案件の管理が改善し、施工量が倍に増えて、利益率は6%に近づく。環境・都市開発は、保有物件を高採算のものへ入れ替え、利益が育つ。会社の2035年度の目標650億円には届かないが、営業利益は550億円前後になる。
借金は計画どおり減り、金利上昇の痛みも小さい。自己資本比率は35%を超え、格付けの上昇で調達の利息も下がる。伊藤忠との協業で、資材調達と不動産開発の取り込みも進む。ROEは10%を超え、資本コストをはっきり上回る。国内の量は実質で横ばいだが、値段と技術でそれを補う、最も良い姿だ。
- 建築:数量 319(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.85(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 3,140 億円・営業利益 220 億円。建築:施工量・残高 318.7 × 価格 9.8532、利益率 7.0%
- 土木:数量 170(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,766 億円・営業利益 141 億円。土木:施工量・残高 170.2 × 価格 10.3776、利益率 8.0%
- 国際:数量 84.2(施工量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 846 億円・営業利益 51 億円。国際:施工量・残高 84.2 × 価格 10.05、利益率 6.0%
- 環境・都市開発・その他:数量 1,483(運用・開発している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.42(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。賃貸と売却の回転))→ 売上 621 億円・営業利益 137 億円。環境・都市開発:施工量・残高 1483.2 × 価格 0.4188、利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 356 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.16 倍、時価総額 4,685 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の追い風と海外の黒字化と買収の成功が、10年続く筋書き。重なる必要があり、確率は低い。
やや楽観 17% 計画どおり350億円を超え、海外も黒字化 利益 274 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 9,314 円3,677 億円
会社の中期計画がほぼ実現する。人手不足の追い風が続き、建築の利益率は6%台半ば、土木は7%台前半を保つ。国際は黒字化し、施工量も6割ほど増える。環境・都市開発は、資産を入れ替えながら着実に積み上がる。
営業利益は440億円ほどになる。借金は計画どおり圧縮され、自己資本比率は35%に近づく。金利上昇で利息は増えるが、利益の伸びがそれを吸収する。政策保有株の整理も予定どおり進み、売却代金は成長投資に回る。
ROEは9%近くまで上がり、資本コストをわずかに上回る。ただし国内の量が実質で増えない制約は、最後まで残る。2030年代半ばには、民間の建築需要の波が一巡する。土木の更新工事が、その落ち込みをやわらげる。
- 建築:数量 304(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 2,904 億円・営業利益 192 億円。建築:施工量・残高 303.5 × 価格 9.5676、利益率 6.6%
- 土木:数量 162(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,633 億円・営業利益 118 億円。土木:施工量・残高 162.1 × 価格 10.0768、利益率 7.2%
- 国際:数量 67.4(施工量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 677 億円・営業利益 30 億円。国際:施工量・残高 67.4 × 価格 10.05、利益率 4.5%
- 環境・都市開発・その他:数量 1,154(運用・開発している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.42(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。賃貸と売却の回転))→ 売上 483 億円・営業利益 97 億円。環境・都市開発:施工量・残高 1153.6 × 価格 0.4188、利益率 20.0%
倍率:事業の純利益 274 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.45 倍、時価総額 3,411 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画がほぼ達成され、国際が小幅の黒字になる筋書き。足元の実績が計画を上回って進んでおり、中立より少し低い確率を置く。
中立 38% 量は横ばい、価格だけ上がる成熟 利益 217 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 7,343 円2,899 億円
建築の施工量は実質で3%ほど減り、価格だけが物価並みに上がる。利益率は6%へ戻り、土木は6%台半ばを保つ。国土強靱化は10年の前半を支えるが、後半は新設の需要が細る。国際は施工量が5割増え、小幅な黒字にとどまる。
環境・都市開発は、資産を入れ替えながら緩やかに伸びる。営業利益は360億円ほどで、会社の2028年度の計画を、10年かけてようやく超える水準だ。借金の利息は借り換えで増える。純利益は215億円前後と、今の水準から大きく伸びない。
ROEは7%台で、資本コストの手前にとどまる。還元は純資産の5%を守るが、自己資本は薄くならず、資本効率の改善は小幅にとどまる。堅実だが、株主にとっては物足りない10年になる。大きな失敗も、大きな成功もない。人手不足の中で採算を守る力が、会社の差になる。
- 建築:数量 294(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 2,817 億円・営業利益 169 億円。建築:施工量・残高 294.4 × 価格 9.5676、利益率 6.0%
- 土木:数量 162(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,633 億円・営業利益 106 億円。土木:施工量・残高 162.1 × 価格 10.0768、利益率 6.5%
- 国際:数量 63.2(施工量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 635 億円・営業利益 19 億円。国際:施工量・残高 63.2 × 価格 10.05、利益率 3.0%
- 環境・都市開発・その他:数量 906(運用・開発している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.42(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。賃貸と売却の回転))→ 売上 380 億円・営業利益 68 億円。環境・都市開発:施工量・残高 906.4 × 価格 0.4188、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 217 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,630 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の量は実質で横ばいか少し減り、価格は物価並み。会社の改善策が部分的に効く、最も標準的な姿。
やや悲観 27% 地方の縮小と金利負担で採算が細る 利益 136 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 3,544 円1,399 億円
人手不足の追い風が止み、価格転嫁が止まる。建築の施工量は実質で1割減り、利益率は5%に戻る。土木も、公共工事の競争が厳しくなり、5%台半ばに下がる。国際は赤字を脱せず、黒字化の目標は先送りになる。
営業利益は250億円台まで下がる。借金の借り換えで利息が増え、純利益は140億円ほどに縮む。会社は還元の目安を守ろうとするが、自己資本比率は目標の35%に届かず、30%前後のまま足踏みする。
政策保有株の売却代金は、運転資金の穴埋めに回る。都市開発も、金利が上がる局面で売却益が細る。市場からは「資本コストを稼げない会社」と見られる。地方の需要は縮み、採算の悪い工事を取らざるを得なくなる。
- 建築:数量 273(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 2,614 億円・営業利益 131 億円。建築:施工量・残高 273.2 × 価格 9.5676、利益率 5.0%
- 土木:数量 149(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,502 億円・営業利益 83 億円。土木:施工量・残高 149.1 × 価格 10.0768、利益率 5.5%
- 国際:数量 42.1(施工量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 423 億円・営業利益 4 億円。国際:施工量・残高 42.1 × 価格 10.05、利益率 1.0%
- 環境・都市開発・その他:数量 742(運用・開発している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.42(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。賃貸と売却の回転))→ 売上 311 億円・営業利益 37 億円。環境・都市開発:施工量・残高 741.6 × 価格 0.4188、利益率 12.0%
倍率:ROE 5.1%(純利益 136 億円 ÷ 自己資本 2,654 億円)。事業の ROE が資本コスト k 8.25% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.4 倍。借金が重く利益が縮む局面で、上限の 7 割の 8.0 倍に置いた。
確率:借金の重さと、地方・公共の縮小が重なる。財務の薄い分、準大手の中でもこの筋書きが起きやすいとみて、中立に近い厚みで置いた。
悲観 11% 構造的に負け、低採算と借金で優良でなくなる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,482 円585 億円
構造的に負ける。人手不足の追い風がやみ、地方と公共の工事が縮み、受注を選べなくなる。建築は利益率が2%まで落ち、土木も3%に下がる。国際は大型工事で再び損失を出し、赤字が膨らむ。
借金の借り換えで利息が増え、営業利益は70億円ほどに縮んで、純利益はほぼゼロになる。不動産の評価損も出て、自己資本は目減りする。完成工事の未回収金が膨らむと、資金繰りの余裕も薄れる。
配当は大きく削られ、還元は過去の蓄えと資産の売却で賄う。優良な会社とは見られなくなり、財務の体力も弱る。伊藤忠などによる再編の動きが出てもおかしくない。稼ぐ力の回復は見えない。じわじわ効いた縮みが、どこかの年に急に表へ出る。
- 建築:数量 243(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 8.93(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 2,167 億円・営業利益 43 億円。建築:施工量・残高 242.8 × 価格 8.925、利益率 2.0%
- 土木:数量 130(施工量(万人日、実質))× 価格 9.40(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,219 億円・営業利益 37 億円。土木:施工量・残高 129.7 × 価格 9.4、利益率 3.0%
- 国際:数量 33.7(施工量(万人日換算、実質。推定))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 316 億円・営業利益 −13 億円。国際:施工量・残高 33.7 × 価格 9.375、利益率 -4.0%
- 環境・都市開発・その他:数量 494(運用・開発している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.39(残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。賃貸と売却の回転))→ 売上 193 億円・営業利益 0 億円。環境・都市開発:施工量・残高 494.4 × 価格 0.3906、利益率 0.0%
倍率:構造的に優良でなくなり、不動産の評価損も出た姿。純利益はほぼゼロで稼ぐ力は小さく、床は売れる資産で測る。総資産約 6,860 億円(自己資本 1,949 億円 ÷ 自己資本比率 28.4%)を強制売却で 8 割しか回収できず約 5,490 億円、負債約 4,910 億円は全額払うとして残る約 580 億円を、今の自己資本 1,949 億円に対する PBR 0.30 倍(時価総額 585 億円)に置いた。営業利益は 70 億円ほどで、EV(時価総額 + 純有利子負債 1,846 億円)÷ 営業利益は 36 倍と高いが、谷の年の数字であり、床は稼ぐ力でなく売れる資産で測っているので、倍率の根拠にしない。
確率:国内の採算悪化と、国際・開発の失敗が重なる。財務の薄い会社だが、伊藤忠が筆頭株主として控えるため、準大手の中でほぼ同じ1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築
オフィス・工場・データセンター・物流施設などを請け負って建てる。売上の過半を占める主力。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 304 | 7.14 | 2,167 | 138 |
| 10 年後 中立 | 294 | 9.57 | 2,817 | 169 |
取り方:建築事業の売上2,167億円・区分利益138億円(有価証券報告書のセグメント)を労務量で割った。開示は無いので、同じ準大手の戸田建設の置き方にそろえ、1人日あたり売上を7.14万円と置いて施工量を約304万人日と推定した。物価の分は価格に入る。
土木
山岳トンネル・道路・鉄道・ダム・橋の補修など、官公庁発注が中心。利益率が建築より高い。
| 数量施工量(万人日、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 162 | 7.52 | 1,219 | 91 |
| 10 年後 中立 | 162 | 10 | 1,633 | 106 |
取り方:土木事業の売上1,219億円・区分利益91億円。建築と同じ要領で、1人日あたり売上を7.52万円と置き、施工量を約162万人日と推定した。土木は機械・材料の割合がやや高く、単価は建築よりやや高い。
国際
ODA(日本政府の援助)を中心とした海外のインフラ・建設工事。直近は赤字。
| 数量施工量(万人日換算、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 42.1 | 7.50 | 316 | −24 |
| 10 年後 中立 | 63.2 | 10 | 635 | 19 |
取り方:国際事業の売上316億円・区分利益は約24億円の赤字。同じ要領で約42万人日の施工量に換算した。為替は150円で一定とみて、円建ての単価で置いた。数量は実物(施工量の万人日)で、10 年の 1.5 倍は赤字の国際事業を受注の積み増しで黒字化する筋書き。名目の市場の伸びは置いていない(物価は価格側の 1.34 倍だけ)。
環境・都市開発・その他
自社で不動産を保有・開発して貸し、育てて売る事業(アセットバリューアッド)と、再生可能エネルギーなど。その他を含む。
| 数量運用・開発している資産の残高(億円、今の値段で測った実質。推定) | 価格残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。賃貸と売却の回転) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 824 | 0.31 | 258 | 75 |
| 10 年後 中立 | 906 | 0.42 | 380 | 68 |
取り方:アセットバリューアッド事業の売上250億円・利益77億円に、その他(売上7.5億円・利益約マイナス2億円)を合わせた。資産の残高は開示されないので、売上が賃貸収入と売却を合わせて残高の3割強で回ると仮置きし、約820億円と推定した。売却益で利益がぶれやすい点は筋書きで考える。
リスクと懸念
景気の谷で受注と採算が崩れる
ゼネコンの利益は景気の山と谷で大きく振れる。西松建設も、2023年3月期は建築と国際で合わせて約94億円の赤字を出した。今の利益率は、価格転嫁が通る需給のもとの姿だ。民間の再開発や工場投資が一巡すれば、先に崩れるのは新規受注の採算になる。
金利上昇で利払いが増える
純有利子負債は約1,850億円で、時価総額の9割にのぼる。借金は借り換えのたびに新しい金利になる。営業利益が横ばいでも、年に数十億円規模で純利益が削られうる。2027年3月期の純利益も、会社は前期より減る計画だ。
国際事業の赤字が止まらない
国際は直近で約24億円の赤字だった。ODA案件の受注の先送りと、大型工事の管理の難しさが原因だ。前の中期計画の売上目標も届かなかった。新計画は国際を第二の柱に育てるが、外せば薄い自己資本が傷む。
買収の失敗で資本を傷める
新しい中期計画は、3年で成長投資とM&Aに約1,500億円を使う。後継者難の地場ゼネコンなどを買う色が濃い。自己資本比率は28%と薄く、割高な買収や、買収後の人材流出が起きれば、財務目標の35%が遠のく。
売却益に頼る利益のぶれ
2025年度は、政策保有株の売却益83億円がROEを13%まで押し上げた。除くと約10%だ。残り玉が減れば、この上乗せは消える。環境・都市開発の利益も、不動産の売却益が年ごとにぶれる。直近の利益を、そのまま続くものと読むと危うい。
大株主の動きで需給が変わる
伊藤忠商事は議決権の約22%を持つ筆頭株主だ。協業の深まりは追い風だが、持ち分が動けば株の需給が変わる。反対に買い増しや統合の話が出れば、会社の姿が変わりうる。いずれも会社自身の稼ぐ力とは別の材料だ。
今後の分かれ目
- 建築の区分利益率が2期続けて4%を割ったら
- 価格転嫁の局面が終わったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 国際事業が2期連続で黒字になったら
- 管理の改善が確かめられたとして、やや楽観の確率を少し増やし、国際の利益率を上方に直す。
- 自己資本比率が35%に向かい、純有利子負債が減り始めたら
- 金利負担の懸念が和らぎ、資本コストの上乗せ(借金の分)を下げる余地が出る。
- M&Aを借金で行い、自己資本比率が25%台に下がったら
- 財務リスクが増したと見て、やや悲観の確率を上げ、倍率の上限を下げる。
- 伊藤忠商事が持ち分を引き上げる、または大型の再編・TOBが出たら
- 買収価格が価値を上回るなら、その差が上方の材料になる。再編後の資本効率次第で評価を見直す。
- 2028年3月期の営業利益が計画の350億円に近づいたら
- 中立の利益を上方に直し、中立〜やや楽観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 建築・土木の完成工事の粗利率と受注高の推移
- 国際事業の損益と、ODA案件の受注・進捗
- 純有利子負債と自己資本比率(35%目標への歩み)
- 政策保有株の売却額と、その代金の使い道
- M&Aの案件と買収額、環境・都市開発の不動産売却益
- 伊藤忠商事の持ち分の変化と協業の中身
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立は ROE 7.6% が資本コスト k 8.25%(基本 7.5% + quality 1.25%)に届かない前提で、正当化 PER の上限(1÷k = 約 11.4 倍)に ROE÷k(0.90)と 9 割を掛けた 9.2 倍に置いた。やや悲観・悲観は構造的な負け(稼ぐ力と売れる資産)から置き、谷の PBR は使っていない。悲観の床は、総資産の 8 割回収・負債全額払いで残る約 580 億円を今の自己資本に対する PBR で表した。今の株価や PER(約 8 倍)を見てから決めたわけではない。10 年の純利益は、営業利益から利息の増加分(借り換えで年 46 億円規模)を引いて積んだ。直近の純利益 241 億円には政策保有株の売却益 83 億円が入るので、その分を除いて事業の利益から組んだ。数量は人日で推定した値で、数量と価格の分け方には誤差がある。純現金ではなく純有利子負債が重いため、余った現金は分けていない。なお、2028 年 3 月期から新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。理由は quality_why。会社自身は株主資本コストを 7〜8% と見ているが、財務の薄さから筆者はやや高く置いた。個別のリスク(買収の実行・国際の赤字・不祥事など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。