結論
髙松コンストラクショングループは、賃貸マンションや食品・物流施設の建築、道路や港湾の土木、分譲・戸建・管理の不動産を手がける中堅の建設グループだ。筆者の結論は「やや割高」。事業は良くなっているが、株主資本の稼ぐ力が資本コストをまだ超えていないからだ。
2026年3月期は売上3,577億円、営業利益179億円と過去最高を更新した。受注は4,360億円まで積み上がり、粗利率も改善した。建築の利益率が前の期の2%台から7%台に戻ったのが大きい。ただし建築の利益は案件ひとつで振れる。この回復を恒常の姿と見るのは危うい。
物価が年3%で上がる世界では、実質で横ばいでも営業利益は10年で240億円ほどに増える。中立の筋書きはこの水準の少し手前に置いた。国内の建築量は人口減で細るが、同社は賃貸マンションと特殊用途の建築でシェアを伸ばしている。土木は国土強靱化で下支えされる。不動産は戸建・分譲・管理へ広げる途上にある。
問題は資本効率だ。自己資本は利益をためて厚くなり、中立の10年後でもROEは7%前後にとどまる。資本コストの8%台を下回れば、ためた利益は帳簿の額より小さな価値しかない。倍率は1÷kの12倍が上限になり、今の水準からは下がる。
その分、下値には強みがある。借金は軽く、自己資本比率は5割近い。強気の筋書きは、川上(用地・企画)と川下(管理・売却)が利益を押し上げ、ROEが10%に近づく姿だ。そこまで進めば評価は一段上がる。ただし米国の短期回転型の投資や大型の開発案件は、資金の使い方を間違えれば自己資本の効率をさらに下げる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い仕事をする普通の会社」だ。優れた企業とは、少ない元手で高い利益を積み上げ、その利益を再び高い利回りで使える会社を指す。髙松は前半を満たし始めたが、後半はまだ証明されていない。
筆者が最も重く見るのは、ためた利益の使い道だ。今の自己資本の利益率は8%弱。資本コストの8%台にわずかに届かない。この状態で利益を内部にためるほど、帳簿の価値と実際の価値の差が開いていく。経営が不動産開発に資金を振り向けると決めた以上、その開発が資本コストを超えるかが、すべてを決める。
堀は広くない。受注産業なので、値段は市場が決める面が強い。それでも、現場力、受注の入り口、グループ内の連携が積み上がれば、利益率は少しずつ底上げされる。筆者はこの変化を小さくは見ない。
安全域は、今の値段にはほとんどない。借金が軽く、赤字の年もなかった財務は評価できる。だが、利益が実質で横ばいの世界を前提に置くと、倍率の縮みを補うほどの余裕はない。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、資本効率が資本コストを超えるまでは待つ会社だ。買うなら、建築の利益率が落ち着いた後の価格が望ましい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は三つある。建築、土木、不動産だ。2026年3月期の売上は建築が1,728億円、土木が1,007億円、不動産が841億円。利益は建築125億円、土木65億円、不動産61億円で、3事業の利益率はどれも7%前後に並んだ。
建築の中心は髙松建設だ。大阪と東京を地盤に、賃貸マンション、食品工場、冷凍冷蔵倉庫、病院、都市型のデータセンターなどを請け負う。特徴は、建てて終わりにしないことにある。土地を探す段階から相談に乗る「コンサルタント&コンストラクション」を原点に掲げ、土地の売り手と買い手を引き合わせて建築条件付きで売る営業も強めている。
土木は青木あすなろ建設、みらい建設工業、東興ジオテックの3社が担う。青木あすなろ建設は2019年に非公開化してグループに取り込んだ。道路や橋の補修、再生可能エネルギーの工事、港湾の浚渫、のり面や地盤の改良など、国や自治体の発注が多い。景気に左右されにくい反面、利益率は7%前後で頭打ちだ。
不動産は、分譲マンション「ティサージュ」、収益マンション「トリニティ」、首都圏の建売戸建を担うタカマツハウス、マンション管理と仲介の髙松エステートで構成する。2025年7月には、会社分割で新しい子会社も立ち上げた。
会社が描く成長の絵は「スマイルカーブ」だ。建設請負は稼ぎの土台だが利益率が低い。用地取得・企画設計という川上と、管理・賃貸・売却という川下のほうが利益率は高い。中期計画では、川上・川下の売上を合わせて1,480億円、営業利益を105億円まで増やす目標を置いた。海外は米国で、短期に売却する投資型の事業を小さく始めている。
優良さと弱いところ
この会社の強さは「現場の請負力」と「受注の入り口」にある。賃貸マンションや食品・物流の建築では、設計と施工を一体で提案できる。受注は過去最高を更新し続けている。値段を上げても仕事が取れている証拠だ。
ただし、他社がまねできない堀とまでは言えない。建築は入札や相見積もりで値段が決まりやすく、ブランドの力も大手ゼネコンやハウスメーカーには及ばない。利益率が2%台から7%台まで一気に動いたことが、それを物語る。値決めの力は「今は強い」にとどまる。
資本効率は課題だ。過去10年のROEは5〜8%台で、中央値はおよそ7%。資本コストを下回り続けてきた。中期計画の最終年度でも8.1%、長期の目標が10%以上と、会社自身が足りないと認めている。配当を厚くして自己資本の積み上がりを抑える動きは、その裏返しだ。
財務は堅い。自己資本比率は5割近く、利払いの10倍以上を稼ぐ。赤字の期は過去10年ない。創業家に連なる個人と資産管理会社が上位株主に並び、長期の視点で経営できる一方、少数株主の声は届きにくい面もある。
筆者が気にするのは、建設の請負業の「質」だ。完成工事の粗利率が15%を超えた今の水準を保てるかどうかで、10年後の姿が大きく変わる。大型案件が増えるほど、1件の採算割れが全体を傷つける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、量は伸びず、値段が上がる市場だ。人口と世帯数が減るため、床面積や施工量は長い目で細る。一方で、技能労働者の不足と資材高が続き、業界全体が仕事を選び、値段を上げる方向へ切り替わった。上場ゼネコンの約9割で粗利率が改善している。
同社の建築の主戦場は、賃貸マンション、食品工場、冷凍冷蔵倉庫、病院、データセンターだ。賃貸マンションは単身世帯の増加と相続対策に支えられるが、空室率が上がれば新築の採算は落ちる。競合は長谷工コーポレーションや大東建託のほか、準大手・中堅のゼネコンだ。大型案件ほど競合が増え、価格競争が激しくなる。
土木は国土強靱化が追い風になる。2026年度からの5年で、事業規模は約20兆円とされる。老朽化した橋は2035年に建設後50年超が6割を超える。補修と更新の工事は量が増え、同社の得意分野に重なる。ただし人手が足りず、受注を取っても施工が追いつかない制約がある。
不動産は、首都圏の分譲・戸建が好調な一方で、販売価格の高騰で買い控えも出ている。金利が3%台で定着すれば、購入者の負担は重くなる。在庫を抱える業態のため、市況が悪化すると評価損のリスクがある。
全体として、建設は景気の波を受けやすい業種だ。10年のうちに必ず一度は不況の年が来る。同社のように用地を持つ不動産を広げるほど、その波は大きくなる。
資本政策と M&A
資本政策は「配当は厚く、成長投資も増やす」という両にらみだ。中期計画では累進配当を基本とし、配当の下限を前の計画より引き上げた。配当性向は40%を目安にする。2026年3月期は期末配当を大きく増やしており、増益を株主へ分ける姿勢は本物に見える。
一方、3年間の資金計画は攻めている。純利益300億円に借入520億円を足し、不動産の成長資金に200億円、開発事業への参入に250億円を充てる。残りは建設の運転資金、米国やM&Aに回す。借金は軽いので無理はないが、資金の出口が在庫の多い不動産に偏る点には注意が要る。
還元の軸は配当で、自己株買いは前面に出ていない。ROEが資本コストを下回る会社が利益をためる場合は、本来は自己株買いで資本を絞るのが筋だ。今の方針は、開発投資で稼ぐ力を高めるほうに賭けている。
M&Aは土木の補完(地盤・港湾・補修)で積み上げてきた。20社ほどのグループを整理しながら、中核5社に集める方向だ。株主構成は、個人と資産管理会社の上位3者で3割強を持つ。TOBの可能性は10年で2割という推計もあるが、創業家側の動きが前提になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建築の利益率の回復は一時の案件の当たりではない。業界全体で、選別受注と値上げが定着した。上場ゼネコンの約9割で粗利率が改善しており、髙松建設も大型案件を選べる立場に立っている。食品工場、冷凍冷蔵倉庫、データセンター、病院といった特殊用途は、技術が要る分、値段を保ちやすい。受注が過去最高を更新し続けており、その勢いは来期以降の売上に表れる。
土木は国土強靱化の実施中期計画が追い風だ。老朽化した橋や道路の補修と更新は、少なくとも10年は絶えない。青木あすなろ建設、みらい建設工業、東興ジオテックの3社が、大手の下請けから、自ら提案する立場へ変わりつつある。
そして川上・川下の展開が利益を押し上げる。建設請負だけなら利益率は5%に届かない。用地の企画、分譲、建売、管理、仲介を足せば、同じ仕事が何度も収益に変わる。会社は川上・川下の営業利益を105億円まで増やす計画で、実現すれば全社の利益率が一段上がる。
資本効率も改善に向かう。配当の下限を引き上げ、累進配当を掲げた。ROEの長期目標は10%以上だ。自己資本が積み上がる速度より、利益が伸びる速度が上回れば、ROEは資本コストを超える。その時の倍率は今より高くなる。借金が軽いので、機会が来たときの投資余力もある。
慎重な見方
建築の利益率は、前の期の2%台から7%台へ跳ねただけだ。過去10年の営業利益率は3〜6%台で、それより高い水準が続く保証はない。大型案件が増えるほど、1件の不採算が全体の利益を食う。人件費と外注費の上昇が続いており、請負金額に転嫁できなければ、利益はすぐ縮む。
不動産には市況のリスクがある。分譲や建売は在庫を抱える商売で、金利が上がれば購入者の負担が重くなり、売れ残りと評価損につながる。中期計画の資金の多くは、この不動産と開発に向かう。資本コストを下回るROEの会社が、さらに資金を市況に賭けることになる。
自己資本の効率も心配だ。ROEは過去10年、一度も資本コストに届かなかった。利益をためて自己資本が増えるほど、ROEは薄まる。会社が目標にする8%台でさえ、資本コストと同水準にすぎない。10年後のROEは、中立でも7%前後にとどまる。
国内の建築量は人口減で細る。賃貸マンションは空室率が上がり、新築の採算は悪くなる。土木も人手の不足で、受注を取っても施工できない制約がある。創業家に連なる株主が上位に並ぶ構造は、少数株主に不利な判断を許す余地もある。
悪い10年なら、建築は価格競争に戻り、不動産は評価損を出し、固定の本社費が利益を削る。利益が薄いまま、値段だけが物価で上がる世界では、配当の維持も難しくなる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は改善しているが、強気の見方が前提にする利益率の定着は、まだ実績が1年にすぎない。慎重な見方が突く資本効率の弱さと、不動産の市況リスクのほうが、10年の物差しでは重い。このため確率はやや悲観・悲観の側に寄せ、合わせて4割とした。
一方で、借金が軽く、赤字の年がない財務は、悲観の底を深くしない。悲観の床は、資産を売って借金を返した後の残りで測った。強気の筋書きの確率を下げすぎなかったのは、川上・川下の展開が実際に利益に表れ始めているためだ。
結論は、10年の本質価値が今の時価総額を下回る「やや割高」。ROEが資本コストを超えると確かめられた時点で、見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,834 円1,683 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,756 円612 億円)。 今の値に割り戻すと 3,638 円1,267 億円、今との差 −12.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,093 円3,514 億円 | 2,585 円900 億円 | +206.2% | +11.8% | 1,014 円353 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,848 円2,732 億円 | 2,298 円800 億円 | +145.1% | +9.4% | 1,826 円636 億円 |
| 中立 | 34% | 5,624 円1,958 億円 | 2,010 円700 億円 | +84.4% | +6.3% | 2,596 円904 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,897 円660 億円 | 1,379 円480 億円 | −20.9% | −2.3% | 819 円285 億円 |
| 悲観 | 15% | 1,519 円529 億円 | 718 円250 億円 | −46.0% | −6.0% | 336 円117 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,834 円1,683 億円 | 1,756 円612 億円 | +59.2% | +4.8% | 6,590 円2,295 億円 |
今の株価時価総額 4,140 円1,441 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:川上・川下が利益を押し上げ、ROEが10%に近づく 利益 226 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 10,093 円3,514 億円
賃貸マンションと特殊用途の建築で受注が伸び続け、大阪と東京の両方でシェアが上がる。食品・物流・データセンターは技術が要り、値段を保てる。土木は国土強靱化に乗り、3社が自ら提案する立場になる。不動産は用地の企画から売却までを自前で回し、分譲と管理の利益が積み上がる。大型の開発案件は市況の追い風を受けて高く売れる。会社全体の営業利益率は6%近くに乗り、自己資本の効率は資本コストを超える。借金は軽いまま、機会に応じて投資と配当を両立する10年になる。同業の賃貸住宅・ゼネコンに比べ、受注から開発・管理までを一つのグループで完結できる強みが、利益率にはっきり表れる。
- 建築(賃貸マンション・特殊用途・一般建築):数量 71.0(年間の施工延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 44(1万㎡あたりの請負単価(億円。㎡あたり約30万円))→ 売上 3,089 億円・営業利益 216 億円。特殊用途で利益率が高止まり
- 土木(青木あすなろ建設・みらい建設工業・東興ジオテック):数量 10.6(国内土木建設投資(実質・兆円、推定27兆円)× 当社シェア(%))× 価格 140(市場1兆円×シェア1%あたりの売上(100億円))→ 売上 1,480 億円・営業利益 111 億円。GXと強靱化で受注増
- 不動産(分譲・建売戸建・収益物件・管理仲介):数量 2,000(分譲・建売・売却・管理の取扱い戸数相当(戸、推定))× 価格 0.84(1戸相当あたり売上(億円。約6,000万円))→ 売上 1,680 億円・営業利益 134 億円。川上・川下の利益が積み上がる
倍率:事業の純利益 226 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.55 倍、時価総額 3,514 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:川上と川下の拡大が計画どおりに利益へつながり、建築の高い利益率が定着する組み合わせ。条件が多く、実現しても全部は揃いにくいので、確率は低めにした。
やや楽観 18% やや楽観:建築の利益率が高めで定着する 利益 184 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 7,848 円2,732 億円
賃貸マンションの需要は底堅く、建築の利益率は6%台で安定する。値上げが定着した業界で、同社は大型案件を選べる。土木は補修と更新の仕事が増え、利益率は7%台に乗る。不動産は戸建と分譲が育ち、管理収入も積み上がるが、開発は中規模にとどまる。業績は中期計画の方向に沿って伸び、配当は累進で増える。ROEは資本コストにわずかに届く程度で、倍率は1÷kの近くに置ける。大きな失敗はなく、少しずつ良くなる10年になる。自己株買いは少なく、利益は自己資本に積み上がるため、ROEの改善は利益の伸びに頼る形になる。米国や大型開発への投資は小さな範囲にとどまり、回収が遅れても傷は浅い。建設の人手不足は続くが、グループ内の協力会社との連携で施工力は保てる。
- 建築(賃貸マンション・特殊用途・一般建築):数量 66.0(年間の施工延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 42(1万㎡あたりの請負単価(億円。㎡あたり約30万円))→ 売上 2,752 億円・営業利益 184 億円。値上げ定着で利益率6%台
- 土木(青木あすなろ建設・みらい建設工業・東興ジオテック):数量 10.1(国内土木建設投資(実質・兆円、推定27兆円)× 当社シェア(%))× 価格 137(市場1兆円×シェア1%あたりの売上(100億円))→ 売上 1,384 億円・営業利益 98 億円。補修・更新が増える
- 不動産(分譲・建売戸建・収益物件・管理仲介):数量 1,800(分譲・建売・売却・管理の取扱い戸数相当(戸、推定))× 価格 0.82(1戸相当あたり売上(億円。約6,000万円))→ 売上 1,480 億円・営業利益 114 億円。戸建・分譲・管理が育つ
倍率:ROE 8.5%(純利益 184 億円 ÷ 自己資本 2,169 億円)。資本コスト 7.25% を超える分の半分が残るとして、RONIC = 8.37%、国内の建設・不動産が中心なので長期の成長率 g は 3.5%(業種ノートの国内専業 2〜4%)。正当化PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 14.85 倍、1÷k は 12.1 倍。受注産業で利益率の波が大きく不動産の市況にも左右されるので、上限の 10.0 割(14.85 倍)に置いた。
確率:建築の利益率の回復が定着し、不動産の拡大も着実に進む、実績に最も近い上振れの筋書き。
中立 34% 中立:実質で横ばい、利益は物価とともに伸びる 利益 142 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,624 円1,958 億円
国内の建築量は人口減で細るが、同社は賃貸マンションと特殊用途でシェアを伸ばし、床面積は今とほぼ同じ水準を保つ。値段は物価並みに上がり、売上は名目で1.4倍に近づく。建築の利益率は前の期の7%から6%台に落ち着く。土木は国土強靱化に支えられて実質ほぼ横ばい、利益率は7%近く。不動産は戸数が増えるが、市況の波で利益率は7%台前半にとどまる。本社費も物価で増える。この結果、営業利益は実質では少し細り、自己資本は利益のためこみで厚くなってROEは7%弱にとどまる。配当は利益の半分ほどを出し続け、残りは不動産の在庫と土木の施工機械、運転資金に回る。大型の買収や米国での失敗はなく、グループの再編は中核5社への集約で静かに進む。景気の谷が一度来ても、赤字には落ちない。
- 建築(賃貸マンション・特殊用途・一般建築):数量 57.6(年間の施工延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 40(1万㎡あたりの請負単価(億円。㎡あたり約30万円))→ 売上 2,316 億円・営業利益 146 億円。シェア拡大で床面積は横ばい
- 土木(青木あすなろ建設・みらい建設工業・東興ジオテック):数量 9.8(国内土木建設投資(実質・兆円、推定27兆円)× 当社シェア(%))× 価格 134(市場1兆円×シェア1%あたりの売上(100億円))→ 売上 1,309 億円・営業利益 88 億円。実質ほぼ横ばい
- 不動産(分譲・建売戸建・収益物件・管理仲介):数量 1,610(分譲・建売・売却・管理の取扱い戸数相当(戸、推定))× 価格 0.80(1戸相当あたり売上(億円。約6,000万円))→ 売上 1,294 億円・営業利益 95 億円。戸数は増えるが市況で振れる
倍率:事業の純利益 142 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,958 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の建築量の縮小を、シェアの拡大と値上げで打ち消し、実質で横ばいに近い。もっとも事実に近い着地として最も重みを置いた。
やや悲観 25% やや悲観:建築の利益率が元に戻り、不動産が伸びない 利益 75 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,897 円660 億円
建築は価格競争が戻り、利益率が5%まで下がる。賃貸マンションの空室率が上がり、新築の採算が悪くなる。大型案件の一部は不採算になる。土木は人手が足りず、受注を取っても施工が追いつかない。不動産は金利が高止まりして買い手が減り、在庫の回転が遅れる。川上・川下の拡大は計画を下回り、会社が目標にしたROEの8%台には届かない。本社費は物価で増え続け、利益を削る。自己資本だけが厚くなり、資本効率が薄まる10年になる。利益は今の水準を下回るが、財務は堅く、配当は下限を守る。成長投資の失敗で資本効率が悪化する、地味に傷む10年だ。
- 建築(賃貸マンション・特殊用途・一般建築):数量 49.0(年間の施工延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 39(1万㎡あたりの請負単価(億円。㎡あたり約30万円))→ 売上 1,911 億円・営業利益 96 億円。価格競争が戻る
- 土木(青木あすなろ建設・みらい建設工業・東興ジオテック):数量 9.3(国内土木建設投資(実質・兆円、推定27兆円)× 当社シェア(%))× 価格 130(市場1兆円×シェア1%あたりの売上(100億円))→ 売上 1,205 億円・営業利益 70 億円。施工力の不足で伸びない
- 不動産(分譲・建売戸建・収益物件・管理仲介):数量 1,200(分譲・建売・売却・管理の取扱い戸数相当(戸、推定))× 価格 0.78(1戸相当あたり売上(億円。約6,000万円))→ 売上 936 億円・営業利益 56 億円。市況悪化で回転が鈍る
倍率:ROE 3.8%(純利益 75 億円 ÷ 自己資本 1,989 億円)。事業のROEが資本コスト 7.25% を大きく下回り、ためた利益は帳簿の額より小さな価値。1÷k は 12.1 倍だが、利益率が低く不動産の在庫を抱えるので、稼ぐ力の約 7 割の 8.5 倍に置いた(構造的な負けの側として、上限へ引き上げない)。
確率:建築の利益率が過去の水準に戻り、不動産の市況が悪い、実績から素直に外れた下振れの筋書き。過去の振れの大きさを見て、重めに置いた。
悲観 15% 悲観:価格競争の復活と不動産の評価損が重なる 利益 −15 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,519 円529 億円
建築は受注を確保するために安値で請けるようになり、完成工事の粗利が薄くなる。人件費と外注費の上昇を請負金額に転嫁できず、不採算の案件が続く。不動産は市況の悪化で分譲と建売の在庫が売れず、評価損を出す。土木は公共投資が一巡し、人手不足で施工量が落ちる。本社費は物価で増えるのに、売上が減って利益が消える。赤字の年が混じり、配当は下限を維持できず、資産の売却と借入で穴を埋める。優良という評価は失われる。創業家側の持株が重く、経営の立て直しは遅れる。それでも財務は軽く、資産を売って借金を返せば、会社が消えることはない。
- 建築(賃貸マンション・特殊用途・一般建築):数量 37.4(年間の施工延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 38(1万㎡あたりの請負単価(億円。㎡あたり約30万円))→ 売上 1,403 億円・営業利益 35 億円。不採算案件が続く
- 土木(青木あすなろ建設・みらい建設工業・東興ジオテック):数量 8.6(国内土木建設投資(実質・兆円、推定27兆円)× 当社シェア(%))× 価格 125(市場1兆円×シェア1%あたりの売上(100億円))→ 売上 1,070 億円・営業利益 43 億円。公共投資の一巡と人手不足
- 不動産(分譲・建売戸建・収益物件・管理仲介):数量 800(分譲・建売・売却・管理の取扱い戸数相当(戸、推定))× 価格 0.72(1戸相当あたり売上(億円。約6,000万円))→ 売上 576 億円・営業利益 9 億円。在庫の評価損
倍率:赤字に近く、稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本 1,469 億円に対する PBR 0.36 倍(約 525 億円)に置いた。構造的な負けの姿で、中立の PBR を下回る。
確率:建築の不採算案件が続き、不動産の評価損が出て、固定の本社費が利益を食う構造的な負けの筋書き。建設と不動産が同じ年に悪くなる不況を、10年で1度は想定した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築(賃貸マンション・特殊用途・一般建築)
髙松建設を中心とする建築請負。賃貸マンション、食品工場・冷凍冷蔵倉庫、病院、データセンターなど。
| 数量年間の施工延べ床面積(万㎡、推定) | 価格1万㎡あたりの請負単価(億円。㎡あたり約30万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 57.6 | 30 | 1,728 | 125 |
| 10 年後 中立 | 57.6 | 40 | 2,316 | 146 |
取り方:2026年3月期の建築事業の売上1,728億円を、鉄筋コンクリート・鉄骨造の非住居と賃貸マンションの平均的な建築単価(㎡あたり約30万円と推定)で割り、施工延べ床面積57.6万㎡を逆算した。単価は中立で物価並み(10年1.34倍)。床面積は実質で、人口減の国内では縮むがシェア拡大で相殺される。
土木(青木あすなろ建設・みらい建設工業・東興ジオテック)
道路・橋の補修、港湾、地盤改良、再生可能エネルギー工事。国と自治体の発注が中心。
| 数量国内土木建設投資(実質・兆円、推定27兆円)× 当社シェア(%) | 価格市場1兆円×シェア1%あたりの売上(100億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.1 | 100 | 1,007 | 65 |
| 10 年後 中立 | 9.8 | 134 | 1,309 | 88 |
取り方:国内の土木建設投資を27兆円と推定し(業種ノートの建設投資80兆円台のうち土木分)、土木事業の売上1,007億円をそれで割ると当社シェアは約0.37%。数量は市場27兆円×シェア0.373の10.07(兆円×%)、価格は1単位あたり100億円。物価の分は価格に入れ、10年1.34倍。市場は国土強靱化で実質ほぼ横ばい、シェアは据え置く。
不動産(分譲・建売戸建・収益物件・管理仲介)
ティサージュ、トリニティ、タカマツハウス、髙松エステートなど。川上(用地)と川下(管理・売却)の事業。
| 数量分譲・建売・売却・管理の取扱い戸数相当(戸、推定) | 価格1戸相当あたり売上(億円。約6,000万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 0.60 | 840 | 61 |
| 10 年後 中立 | 1,610 | 0.80 | 1,294 | 95 |
取り方:不動産事業の売上841億円を、建売戸建・分譲マンション・収益マンション売却・管理収入を戸数に直した平均1戸相当0.6億円(6,000万円と推定)で割り、取扱い戸数相当を1,400戸と置いた。管理収入は戸数ではないため推定が粗い。単価は物価並み(10年1.34倍)、戸数は実質。
リスクと懸念
建築の利益率の振れ
建築の利益率は前の期の2%台から7%台へ跳ねた。受注産業なので、大型案件が1件不採算になるだけで全体の利益が崩れる。人件費と外注費が上がり続けるなか、請負金額への転嫁が止まれば、この回復は消える。
不動産の市況と在庫
分譲・建売・収益物件は在庫を抱える商売で、金利が上がれば購入者が減り、売れ残りと評価損につながる。中期計画の資金の多くが不動産と開発に向かうため、市況の悪化がそのまま自己資本を傷つける。
資本効率が資本コストを超えない
ROEは過去10年、資本コストに届かなかった。利益をためて自己資本が増えるほど、ROEは薄まる。会社の目標でも最終年度で8.1%にとどまり、10%以上は先の話だ。
国内の建築量の縮小
人口と世帯数の減少で、国内の床面積は長い目で細る。賃貸マンションは空室率が上がれば新築の採算が落ち、食品・物流施設も供給が過剰になれば受注が細る。
人手不足と施工力
技能労働者の不足は、受注を取っても施工が追いつかない制約になる。土木は特に、国土強靱化で量が増えても人が足りず、利益率が頭打ちになる。
支配株主の存在
個人と資産管理会社の上位3者で3割強を持つ。長期の経営がしやすい反面、少数株主の利益に沿わない資本配分や、非公開化の提案が出る可能性が残る。
米国の短期回転型投資
米国の不動産投資は3〜5年で売却する前提だ。規模は小さいが、金利と物件価格の変動に弱く、回収が遅れれば資本効率をさらに下げる。
今後の分かれ目
- 建築セグメントの利益率が2期続けて6%を超えたら
- 強気の筋書きの確率を上げてよい。値上げの定着が実績で裏づけられる。
- 受注が減って建築の粗利率が12%台に戻ったら
- やや悲観の側へ重みを移す。大型案件の採算に黄色信号。
- 不動産の在庫(販売用不動産)が売上の伸びを超えて増え続けたら
- 市況悪化の先行指標として悲観側の確率を上げる。
- 自己株買いなどでROEの目標を前倒しで達成したら
- 資本効率の改善が確認できたとして、やや楽観側の確率を上げる。
- 米国や大型の開発案件で想定外の評価損が出たら
- 資本配分の判断が裏目に出たとして、悲観側の確率を上げる。
- 創業家側からの非公開化やTOBが出たら
- 価格が本質価値を上回る場合は応じ、下回る場合は少数株主の利益を損なう点を重く見る。
見ておくもの
- 建築・土木・不動産の3セグメントの営業利益率(特に建築)
- 受注高と受注残、完成工事の粗利率
- 販売用不動産(在庫)の残高と、開発案件への投資額
- ROE(中期計画の最終年度に8%台、長期に10%以上)と配当・自己株買いの方針
- 上位株主の持株の動き、グループ再編の発表
倍率と資本コストの決め方
数量(延べ床面積・土木の市場×シェア・不動産の取扱い戸数相当)と価格(物価3%を入れた名目)で3事業を積み、中立の営業利益は実質ほぼ横ばいの水準に置いた。倍率は式で決めた。ROEが資本コストに届かない中立は、1÷kの12.1倍を上限として、利益の質に応じて約9割弱の10.5倍とした。今の株価の倍率や過去の倍率は使っていない。強気側は、ROEが資本コストを超える分の半分が残るとして正当化PERを出し、その上限近くに置いた。悲観は赤字に近く、床は売れる資産の税後で測った。建築は請負でリースの問題は小さく、家賃の固定費は大きくない。新リース会計基準で数字の形が変わる点は、今と同じ形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→15.55 倍・やや楽観 PER 12.2→14.85 倍・中立 PER 10.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。個別のリスク(不動産の評価損・案件の不採算・創業家の持株)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。