結論
田辺工業は、化学・素材メーカーなどの工場で、配管や電気・計装の工事、設備の保全を請け負う独立系の設備工事会社だ。タイでは表面処理の事業も営む。筆者の結論は「適正」。足元の稼ぎは強いが、その水準が10年続くとは見ず、厚い純現金と保全の安定がそれを受け止める。
2026年3月期の売上高は524億円で、営業利益は48億円と24%増えた。営業利益率は9.1%と、過去の最高を更新した。純現金は96億円で、自己資本比率は59%と厚い。配当は前期から増やした。
ただし今期の会社予想は、売上500億円、営業利益38億円と減収減益だ。前期の受注は13%減った。最大の取引先であるデンカが売上の21%を占め、前期の17%から比重が上がっている。1社に頼る構造は強みでもあり弱みでもある。
筆者は、営業利益率は7%台前半に落ち着くと見る。売上が4割増えても、純利益は40億円前後にとどまり、ROEは資本コスト7.25%を下回る。中計TRY2030は2030年3月期に売上700億円、営業利益率8%、ROE12%を掲げるが、実績の9.1%が山だったと考えるのが筋だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「堅実な保全の会社」だ。借金がなく、顧客の工場に根を張り、技術者が定着している。大きく儲けるタイプではないが、長く持って安心できる性格がある。
株主のものになるお金、つまりオーナー利益は、純利益に近い。設備投資が小さく、再投資の負担が軽いためだ。前期の純利益34億円は、ほとんどが株主に戻せる水準だった。
問題は、その利益の水準だ。営業利益率9.1%は過去の最高で、続くと考えるのは危うい。10年を見れば、景気の波と顧客の再編で、利益は平均に戻りやすい。
経営の資本配分は、堅実だが、積極的ではない。現金が積み上がり、配当性向も方針の下限を下回る。安全域は、純現金の厚さに助けられている。ただし、最大顧客への依存を考えると、価値は計算より少し控えめに見ておきたい。
何で稼ぐ会社か
主力は設備工事事業で、売上の97%、508億円を占める。産業プラントの配管・機械・電気・計装の工事を請け負い、稼働中の工場の定期修理や保全を担う。送電工事、管工事、メカトロニクス(機械と電気制御の組み合わせ)も手がける。
顧客は化学・素材メーカーが中心だ。最大のデンカは完成工事高の21%を占め、化学工場の定期修理が安定した受注の源になる。10%を超える取引先はこの1社だけだ。株主にも第四北越銀行や取引先が並び、地域の産業と結びついた会社だ。
表面処理事業はタイで営み、HDD(ハードディスク)部品の表面処理が中心で、売上は15億円。利益はほぼゼロに近い。鋳造用工業炉は2026年3月期中に廃止した。
海外では、タイ、シンガポール、マレーシアに子会社があり、設備工事を手がける。2023年にはタイで49%出資の会社を設立した一方、2024年に上海の子会社を清算するなど、海外は選別の段階にある。
従業員は連結で1,044人、提出会社で809人。平均年収は692万円で、技能者の確保が事業の天井になる。手持工事は単体で246億円と、売上の半年分ほどある。
優良さと弱いところ
強みは、顧客の工場に入り込んだ保全の仕事だ。工場は止められないため、定期修理や突発の補修の相手は、設備を知り尽くした会社に決まりやすい。切り替えの手間が堀になる。営業利益率が過去10年で5%台から7%を保ってきたのは、この安定性のおかげだ。
ただし堀は強くない。大型の新設工事は入札と競り合いで値段が決まり、資材費や労務費の上昇を価格に乗せにくい。デンカへの依存も、堀の裏返しで、顧客の投資計画が変われば売上が動く。
資本の効率は悪くない。ROEは過去10年の中央値で9.8%、前期は12.3%まで上がった。借金はほぼなく、営業利益は支払利息の95倍もある。取引銀行3行とのコミットメントライン(借入枠)が60億円あり、資金繰りにも余裕がある。
経営は、自己資本比率50%以上を保つ堅実な姿勢だ。配当は連結性向35〜40%を目安とするが、前期の実績は30%で、方針の下限を下回る。余った現金を使い切れていない点は、改善の余地として残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プラント保全の需要は、国内の工場が動き続ける限り切れない。化学・素材・エネルギーの設備は老朽化が進み、更新と補修の仕事は増える方向にある。ただし国内の化学産業は、構造的な過剰設備と海外勢の台頭で、再編と工場の閉鎖が続いており、顧客の投資は読みにくい。
業界のノートでは、プラント・エンジニアリングは、EPC(設計・調達・建設)を担う日揮や千代田化工建設と、保全型の太平電業、レイズネクスト、明星工業、東京エネシスに分かれる。田辺工業は後者に近いが、規模は小さい。保全型は大きな損失を出しにくく、受注の振れも小さい。
価格は、物価3%の世界で、労務費と資材費が上がる。保全工事は顧客との長期の関係で値上げを通しやすい一方、新設の大型案件は価格競争になる。技能者の不足は業界全体の天井で、働き手を確保できる会社が仕事を選べる。
競争相手は、大手の保全会社と地元の工事会社だ。田辺工業は、顧客の工場の近くに拠点を持つことで差をつけている。地域を広げる戦略は、中計の柱の一つだ。
分かれ目は、顧客である化学メーカーの再編と、大型EPC案件を取れるかどうかだ。
資本政策と M&A
還元は、連結配当性向35〜40%を目安に、安定配当と増配を続ける方針だ。前期の配当は総額約10.5億円で、性向は30%。方針の下限を下回る。純現金が96億円あり、還元を引き上げる余力は大きい。自社株買いの大きな実績は確認できない。
政策保有株は上場53銘柄で約3.7億円と小さい。大株主は個人が9.5%、有限会社のケイアンドアイが8.2%、第四北越銀行が4.8%で、特定の支配株主はいない。TOBや再編の話は確認できない。
M&Aは目立たない。2024年に上海の子会社を清算するなど、整理の動きはあるが、買収で規模を広げる姿勢は見えない。新しい設備投資も、富山の作業所の建設(約2.7億円)など、小さい。
資本政策の最大の論点は、余った現金の使い方だ。ROEが資本コストを下回る局面では、現金を積み上げるほど価値は目減りする。性向を方針どおり35%以上にそろえるだけでも、評価の土台は変わる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の質が上がっている。営業利益率は5%台から9.1%まで上がり、純利益は33%増えた。保全の仕事を中心に、価格転嫁が定着し、赤字案件を避ける受注の選別が効いている。中計TRY2030は2030年3月期に売上700億円、営業利益56億円、ROE12%を掲げ、前期の実績はすでに営業利益率の目標に近い。
今期の第1四半期は、売上が10%増え、営業利益が35%増えた。通期予想の減益は、控えめな見積もりにすぎない可能性が高い。
財務は純現金96億円、自己資本比率59%で、余力が大きい。配当性向は30%と方針の下限を下回るので、増配や自社株買いの余地がある。余剰現金が戻れば、ROEは12%に近づく。
顧客の工場の老朽化が進み、保全と更新の需要は長く続く。大型EPC案件への挑戦と、地域の拡大が実れば、売上は700億円を超え、利益率も8%台を保つ。従業員の採用と教育にも力を入れており、新設の教育訓練施設で若手を育てる体制が整っている。技能者を確保できる会社が、仕事を選べる時代に入った。
慎重な見方
前期の営業利益率9.1%は、過去の最高だ。それまでの10年は、5%台から7%の間にあった。山の利益を基準にすると、先を見誤る。今期の会社予想は営業利益が約2割減る。前期の受注は13%減っており、勢いは落ちている。
最大顧客のデンカは売上の21%を占め、前期の17%から比重が上がった。国内の化学産業は再編と工場の閉鎖が続く。顧客が投資を絞れば、売上は一気に落ちる。
タイの表面処理事業は、HDD部品に頼り、利益はほぼゼロに近い。海外は選別と撤退の段階で、拡大の足場とは言いにくい。
配当性向が方針の下限を下回り、純現金が積み上がるのは、資本を使い切れていない証拠でもある。ROEは10年の中央値で9.8%と、資本コストに届く水準にとどまる。技能者の確保も天井になり、売上を伸ばしても利益率は上がりにくい。大型の新設工事は競り合いが激しく、赤字案件を一つ抱えれば、保全で積み上げた利益が消える。海外の再生にも時間がかかる。
どちらに重みを置いたか
保全の安定性と財務の強さは、強気の見方に分がある。一方、前期の利益率が山であり、最大顧客に頼る構造は、慎重な見方が正しい。強気の見方が描く中計の達成は、利益率が9%近くで続くことが前提なので、楽観は7%にとどめた。悪い側はやや悲観24%、悲観12%と置き、顧客の再編と利益率の平均への回帰を確率で表した。純現金と土地、保全の基盤が株主の取り分を支えるため、悲観でも深く沈まない。結果、10年の価値は今の時価総額とほぼ同じで、結論は適正とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,526 円581 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,180 円124 億円)。 今の値に割り戻すと 3,576 円376 億円、今との差 +52.2%、 期待の年率 +11.1%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,615 円1,115 億円 | 1,789 円188 億円 | +427.8% | +18.1% | 868 円91 億円 |
| やや楽観 | 21% | 8,267 円869 億円 | 1,504 円158 億円 | +315.8% | +15.3% | 2,052 円216 億円 |
| 中立 | 36% | 6,388 円671 億円 | 1,304 円137 億円 | +227.3% | +12.6% | 2,769 円291 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,518 円265 億円 | 980 円103 億円 | +48.9% | +4.1% | 840 円88 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,189 円125 億円 | 286 円30 億円 | −37.3% | −4.6% | 177 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,526 円581 億円 | 1,180 円124 億円 | +185.3% | +11.1% | 6,706 円705 億円 |
今の株価時価総額 2,350 円247 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 中計を超え、利益率9%近くを保って現金も戻す 利益 65 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 10,615 円1,115 億円
顧客の工場の老朽化が進み、保全と更新の需要が長く続く。大型EPC案件を取り、地域も広がり、設備工事の完成工事高は1.8倍に近づく。価格転嫁が定着し、赤字案件を避ける受注の選別が効いて、営業利益率は9%台に乗る。最大顧客のデンカへの依存は薄まり、取引先が増える。会社は配当性向を35〜40%の方針どおりに引き上げ、自社株買いも行う。ROEは12%に達する。中計TRY2030の目標は前倒しで超える。純現金は厚いまま、資金繰りにも余裕がある。新しい作業所や教育施設への投資も続け、人材の確保で他社に差をつける。
- 設備工事事業:数量 1,283(従業員数(人、推定))× 価格 0.73(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 933 億円・営業利益 110 億円。従業員+35%・1人当たり売上+36%
- 表面処理(タイ)ほか:数量 122(従業員数(人、推定))× 価格 0.21(1人当たり売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。従業員+30%・単価+25%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.63 倍、時価総額 1,076 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が山の水準で続く必要があり、最大顧客も安定する条件が重いので低く置く。
やや楽観 21% 保全と大型案件が育ち、利益率が8%台を保つ 利益 51 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 8,267 円869 億円
保全の需要が着実に伸び、大型案件も一部で実を結ぶ。設備工事の完成工事高は1.6倍になる。営業利益率は8%台を保つ。最大顧客への依存は残るが、取引先が少しずつ増える。会社は配当性向を35%台に引き上げる。ROEは9%台で資本コストを上回る。技能者は確保できるが、採用コストが上がる。タイの事業は小さな黒字を保つ。デンカ以外の化学・素材メーカーからも保全を受注し、顧客の幅が少しずつ広がる。本社費も物価で増えるが、増収が吸収する。最大顧客以外の取引先が育ち、売上の偏りが少し和らぐ。純現金は厚く、資金繰りの心配はない。
- 設備工事事業:数量 1,121(従業員数(人、推定))× 価格 0.72(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 809 億円・営業利益 91 億円。従業員+18%・1人当たり売上+35%
- 表面処理(タイ)ほか:数量 108(従業員数(人、推定))× 価格 0.20(1人当たり売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。従業員+15%・単価+20%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.02 倍、時価総額 814 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の延長線上で、保全が着実に育つ姿。前期の実績が追い風になるので相応に置く。
中立 36% 売上は伸びるが、利益率は7%台前半に戻る 利益 40 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 6,388 円671 億円
売上は10年で4割増えるが、増収は物価の上昇によるところが大きい。設備工事の人員は4%増にとどまり、1人当たりの完成工事高は物価並みに上がる。営業利益率は7%台前半で、前期の9.1%は例外だったと落ち着く。本社費も物価で増える。営業外では、現金の受取利息が増える。純利益は40億円前後で、前期の35億円からわずかに増える。配当性向は35%程度で、現金は積み上がる。ROEは7%台にとどまる。最大顧客への依存は続き、売上の2割前後を1社が占める構図は変わらない。タイの事業は小さな黒字にとどまり、海外は広がらない。
- 設備工事事業:数量 988(従業員数(人、推定))× 価格 0.72(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 708 億円・営業利益 76 億円。従業員+4%・1人当たり売上+34%
- 表面処理(タイ)ほか:数量 94.0(従業員数(人、推定))× 価格 0.20(1人当たり売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。従業員±0%・単価+20%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.3 倍、時価総額 604 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は伸びるが、利益率は過去の平均へ戻る姿が最もありうるので中心に置く。
やや悲観 24% 顧客の投資が細り、利益率が6%台に落ちる 利益 23 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,518 円265 億円
顧客の化学メーカーが投資を絞り、新設の仕事が細る。設備工事の人員は1割以上減り、受注の選別を迫られる。営業利益率は6%台に落ち、営業利益は30億円前後になる。純利益は23億円ほどで伸びない。配当は性向35%を保つが、増配は止まる。現金は積み上がり、ROEは5%にとどまる。最大顧客の動向で売上が左右される。タイの事業は赤字ぎりぎりのままだ。技能者の確保は難しさを増し、採用の費用が利益を圧迫する。中計の目標は取り下げられ、会社は守りの運営に入る。本社費は物価で増えるため、売上が減ると営業利益率は急に落ちる。受注の選別を強め、赤字案件を避ける動きが強まる。
- 設備工事事業:数量 836(従業員数(人、推定))× 価格 0.67(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 559 億円・営業利益 52 億円。従業員-12%・1人当たり売上+25%
- 表面処理(タイ)ほか:数量 84.6(従業員数(人、推定))× 価格 0.18(1人当たり売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。従業員-10%・単価+10%
倍率:事業の ROE 4.7% は資本コスト 7.25% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、PER は 1÷k=12.1 倍の 7 割、8.5 倍。
確率:今期の減益予想と受注の減少、顧客の再編を踏まえ、やや厚めに置く。
悲観 12% 最大顧客の再編と価格競争で、利益が消える 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,189 円125 億円
最大顧客の再編で工場が閉鎖され、保全の仕事が大きく減る。設備工事の人員は3分の1減り、価格競争で単価の伸びも止まる。営業利益率は5%を割り、本社費を吸収できず営業利益はほぼゼロになる。タイの表面処理事業は赤字になる。配当は大きく減る。現金は取り崩されるが、自己資本比率は50%を保つ。会社は不採算の拠点を閉じ、縮小均衡に入る。配当は最低限に絞られ、純現金は厚いものの、使い道を見つけられないまま時間が過ぎる。株主からの圧力も強まる。一方で保全の基盤は残り、赤字には沈まない。工場の再編で失う仕事を、他社の保全の仕事で穴埋めする努力が続く。
- 設備工事事業:数量 618(従業員数(人、推定))× 価格 0.59(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 363 億円・営業利益 20 億円。従業員-35%・1人当たり売上+10%
- 表面処理(タイ)ほか:数量 65.8(従業員数(人、推定))× 価格 0.17(1人当たり売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。従業員-30%・単価±0%(赤字)
倍率:稼ぐ力はほぼ 0 とみる。株主に残るのは、純現金の半分、自社の土地建物、手持工事の回収分。今の自己資本 280 億円に掛ける PBR 0.446 倍で約 125 億円(床の内訳は floor_assets_why)。
確率:最大顧客の再編と技能者不足が重なる姿。保全の基盤と財務の厚さを考え、12%にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
設備工事事業
産業プラントの配管・機械・電気計装、設備保全、送電、管工事、メカトロニクス。
| 数量従業員数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 950 | 0.53 | 508 | 64 |
| 10 年後 中立 | 988 | 0.72 | 708 | 76 |
取り方:売上507.9億円(開示)を、従業員約950人(連結1,044人から表面処理ほかの約94人を除いた推定)で割った。1人当たり0.535億円(約5,350万円。協力会社への外注を含む)。セグメント利益64.4億円(12.7%、本社費の配賦前)。単価は賃金・資材・外注費の上昇を乗せ、中立で物価並みの10年1.34倍。
表面処理(タイ)ほか
タイのHDD部品などの表面処理と、廃止した鋳造用工業炉。
| 数量従業員数(人、推定) | 価格1人当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 94.0 | 0.17 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 0.20 | 19 | 1 |
取り方:表面処理14.8億円と鋳造用工業炉の廃止事業1.0億円の合計15.8億円(開示)を、約94人(推定)で割った。セグメント利益は合計0.5億円。タイの賃金・物価の上昇は物価よりやや緩いとみて、中立は10年1.20倍。
リスクと懸念
最大顧客への依存
デンカが完成工事高の21%を占め、前期の17%から比重が上がった。国内の化学産業は過剰設備の解消と再編が続いており、顧客の投資計画の変更や工場の閉鎖が、売上と利益を大きく動かす。
利益率の山
前期の営業利益率9.1%は過去の最高で、10年前は4%台、2024年3月期は5.2%だった。今期の会社予想は営業利益が約2割減る。山の水準を基準にすると、先の利益を見誤る。
受注の減少
前期の連結受注高は462億円で、前年より13%減った。単体の手持工事は246億円と、売上の半年分ほど。大型案件を取れなければ、売上は予想を下回る。
技能者の確保と労務費
従業員は連結で1,044人。工事の天井は、働き手の数で決まる。残業規制と採用難で、売上の伸びが制約され、労務費の上昇を受注価格に転嫁できなければ、利益率が落ちる。
海外事業の不確実性
タイの表面処理事業は、HDD部品に依存し、利益がほぼゼロに近い。2024年に上海の子会社を清算するなど、海外は選別の段階で、アセアン諸国の景気と為替の影響も受ける。
資本の使い方
純現金96億円を積み上げ、配当性向は方針の下限を下回る。ROEが資本コストに届かない局面で現金を持ち続ければ、価値は目減りする。株主の入れ替わりも、方向は読みにくい。
施工品質と労働災害
プラントの工事は、施工の欠陥や労働災害が、取引停止や賠償につながる。顧客の工場では、事故の影響が大きい。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の38億円を上回る
- 保全の価格転嫁が続いていることを示し、本質価値は中立から楽観寄りに近づく。
- 最大顧客のデンカが工場の再編や閉鎖を発表する
- 売上が大きく減り、慎重な筋書きに近づく。
- 配当性向を35〜40%の方針どおりに引き上げ、自社株買いも行う
- 資本効率の改善が進み、倍率の上限に近い評価へ近づく。
- 受注高が2期連続で減る
- 売上の先細りが確かになり、やや悲観以下の確率を引き上げる。
- 大型EPC案件の受注が決まる
- 売上700億円の目標が現実味を帯び、楽観の確率を引き上げる。
- タイの表面処理事業が赤字に転じる
- 海外事業の整理が進む。利益への影響は小さいが、撤退の判断が焦点になる。
見ておくもの
- 受注高・手持工事高と最大顧客の売上比率
- 営業利益率(会社予想は今期7.7%、中計は8%)
- 配当性向と自社株買いなど資本政策の発表
- 化学・素材メーカーの設備投資と工場の再編
- 技能者の採用と労務費
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、設備工事は従業員数(実質)× 1人当たり完成工事高(物価3%込みの名目)で積んだ。営業利益率は前期の9.1%が過去の山と見て、7%台前半に置いた。本社費も物価で増やした。倍率は資本コスト 7.25%(基本 7.5% + 循環0.25・値決め0.25・寿命0.25)と弱い堀から出し、ROE が k を下回るため PER は 1÷k まで、中立は上限の 8.5 割に置いた。悲観は純現金の半分と土地建物と手持工事の回収分から出し、過去の PBR の底は使っていない。今の時価総額は最後に比べただけだ。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→16.63 倍・やや楽観 PER 10.9→16.02 倍・中立 PER 10.3→15.3 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.75%(循環+0.25・値決め+0.25・寿命+0.25)を足した 8.25%。最大顧客への依存は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。