結論
三機工業は、ビルや工場の空調・給排水・電気設備を設計し、施工する中堅の設備工事会社だ。2026 年 3 月期は営業利益が前期の 1.3 倍の 280 億円になり、利益率も 11% と過去最高だった。
筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。会社の実力に疑いはない。ただ営業利益率は、過去 20 年の中心である 2〜5% を大きく超えている。この高さが 10 年続くとは置きにくい。
稼ぎの源は単純だ。顧客の建物や工場が建つたび、また古い設備を替えるたびに、工事の仕事が生まれる。国内の工事量は人手不足で頭打ちだが、半導体工場やデータセンターのような難しい仕事は、実績のある数社に集まる。三機工業は、その一角にいる。
財務は強い。実質的に無借金で、自己資本比率は 55% ある。利益率が下がっても、会社が傷む心配は小さい。配当は純資産の 5% 以上を守る方針で、自社株買いも使う。
筆者が好ましく見るのは、工事会社は工場も店舗も持たず、人と技術で稼ぐ点だ。大きな設備投資が要らないので、稼いだ利益の多くを株主に返せる。中立の筋書きは利益率が 9% 台へ戻る姿で、そのとき会社は「特別に儲かる会社」から「普通に強い設備工事会社」へ評価が移る。
バリュー投資の観点から
事業の本質は、他人の建物に入る専門工事だ。自社で土地や設備を持たず、受注した仕事を人の腕で仕上げる。大きな設備投資が要らず、利益の多くを株主に返せる。この点は、バリュー投資の観点では好ましい。
一方で、10 年先の姿は読みにくい。受注は景気と顧客の投資判断に左右され、工事ごとの採算にもばらつきがある。「ここは 10 年後も変わらず儲かる」と言い切れる事業ではない。
ここ 2 年で営業利益は 2 倍以上になった。この変化の半分は一時の追い風で、半分は会社の努力だと筆者は見る。採算を見て案件を選ぶ姿勢は本物の改善だ。しかし、需要が落ち着けば、同業の値引きが戻る。
経営の質を測る材料は、数字の上では堅実という一点に尽きる。派手な買収に走らず、無借金を保ち、配当の下限を純資産で決めた。この地味さを、筆者は好ましいと考える。機械システムの赤字を片づけ切れていない点だけは、減点だ。
払う値段については、中立の筋書きでも今の時価総額を下回る。本質価値が今より低く出る以上、安全域は薄い。持ち続けたい会社だが、今の値段では、買う理由が弱いと見る。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は建築設備事業で、売上の 8 割以上、利益のほぼすべてを占める。空調、給排水衛生、電気の 3 つを一括で請けられるのが特徴だ。オフィスや商業施設向けの一般の工事と、半導体工場・データセンター・製薬工場向けの産業空調に分かれる。産業空調は温度と湿度を細かく管理する必要があり、設計が難しい分だけ価格も取りやすい。
顧客の中心は、建物を建てる元請けのゼネコンと、工場を持つメーカーだ。ゼネコンの下に入る形が多く、受注は景気と設備投資の波を受ける。売上の 9 割超は国内で、海外は東南アジアの日系工場が中心だが、まだ小さい。
工事の売上は、受注から完成まで 1〜2 年かかる。だから受注残が先行指標になる。2026 年 3 月期の受注高は 2,900 億円台で前期より 1 割増え、受注残は 2,500 億円と 2 割近く増えた。売上の 1 年分ほどが、すでに積み上がっている。
残りの事業は小さい。環境システムは、官公庁が発注する上下水処理施設の機械・電気設備工事で、景気の波は小さいが利益も薄い。機械システムは搬送機器の製造で、赤字が続く。不動産は保有ビルの賃貸で、小さな利益を足す。
中期経営計画では、施工の最適化、脱炭素の技術、ビルの設計データや ICT の活用という 3 つの柱を掲げている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、空調・衛生・電気を一括で出せる総合力と、半導体やデータセンターの大型工事を仕上げた実績だ。発注者は工事の安さより、失敗しない相手を選ぶ。空気の汚れ一つが製品の歩留まりを落とす工場では、なおさらである。
顧客の基盤も強みになる。三井系を含む大手ゼネコンやメーカーとの長い付き合いが、受注の安定を支える。ただし規模は同業の最大手より小さく、大型の産業案件で高砂熱学や新日本空調と競うときは、技術者の数が勝負を分ける。
資本効率は急に上がった。ROE は 2020 年ごろの 8% 台から、直近は 19% 台になった。利益が増えた分だけ割り算の分子が大きくなり、自己資本は増えたが、利益の伸びのほうが速かった。
弱い点は 3 つある。ゼネコンの下に入る立場で、価格を決める力に限りがあること。機械システムが何年も赤字で、手当てが遅いこと。そして、いまの利益率が過去に比べて異例に高いことだ。筆者がいちばん気にしているのは、3 つ目である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の空調・設備工事は、人口で需要が増えない成熟市場だ。新築のオフィスは東京など一部に偏り、地方は減る。ただ、需要の質が変わってきた。
一つは産業用だ。半導体工場とデータセンターは、空調の量も難度も大きい。国内の新工場の投資が、ここ数年の受注を押し上げた。もう一つは更新と省エネだ。1990 年代までに建った多くのビルが、空調の入れ替え時期を迎えている。脱炭素の流れで、電気代を下げる改修の需要も続く。国内の空調工事の市場は、2030 年度までに 1 割強の拡大が見込まれている。
ただし、産業用の投資は景気と顧客の判断で止まりやすい。データセンターは米国や中東への投資が目立ち、国内に十分な量が来るかは分からない。
同業は 8 社ほどある。高砂熱学工業、大気社、ダイダン、新日本空調、新菱冷熱工業などだ。大型案件は上位数社に集まるが、小さな案件では価格競争が起きる。いまは各社とも利益率が改善しているが、需要が落ち着けば取り合いが戻る。
人手不足は最大の制約だ。技能者の確保が工事量を決めるので、売上を伸ばす力は、人を集める力と工事の効率で決まる。2024 年の残業規制で、この制約は強まった。
資本政策と M&A
還元の方針は、純資産に対する配当を 5% 以上に保つことだ。自社株買いは機動的に行い、持つ自己株は発行済株式の 5% 程度までとし、超えた分は消却する。2026 年 5 月には 1 株を 3 株に分割した。
中期経営計画 2027 の目標は、2027 年度に売上 3,000 億円、営業利益 300 億円だ。3 年の自社株買いは 400 万株程度を見込む。成長投資は 500 億円ほどで、東南アジアでの提携や、デジタル技術の取り込みに使う。実績の営業利益は 280 億円で、目標の水準にすでに迫っている。
気になる点が一つある。2025 年 8 月に決めた自社株買いは、上限 100 万株のところ、実際は 18 万株で終えた。株価が上がりすぎたときに無理に買わない姿勢とも読めるが、還元の約束としては弱い。
取引先の株を持つ政策保有株は縮減する方針で、売却益が毎年のように特別利益に入る。2026 年 3 月期は 36 億円だった。この利益は繰り返せない一時のもので、本質価値の計算には入れない。買収は大きなものがなく、価値を壊した記録はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
三機工業の利益率は、追い風だけで上がったわけではない。会社が受注の時点で採算を選び、施工の最適化を進めたからだ。この改善は、需要が落ち着いても残る。
需要の質も変わった。半導体工場とデータセンターは、空調の難度が高く、価格を取りやすい。老朽化したビルの空調更新と省エネ改修は、新築の波とは別に続く。人手不足の時代に、空調・衛生・電気を一括で出せる会社は、元請けから頼られやすい。
財務は実質無借金で、自己資本比率は 55% ある。利益率が数ポイント下がっても、会社は傷まない。配当は純資産の 5% 以上、自社株買いも加わる。
受注残は 2,500 億円と、売上の 1 年分ほどある。会社は 2027 年度の営業利益 300 億円の目標を、もう実績で超えようとしている。次の計画では、さらに上を狙える。受注の大型化で、元請けより発注者に近い位置の案件も増えている。利益率の高さは一過性でなく、構造の変化として続く可能性が十分にある。三機工業が 2025 年に創立 100 年を迎え、次の 5 年の計画を「深化と共創」と名づけたことも、攻めの姿勢を示している。
慎重な見方
過去 20 年の営業利益率は 2〜5% が中心だった。今の 11% は、その倍以上だ。景気や顧客の投資が一巡すれば、同業は受注を取り合い、ゼネコンも工事費を抑えにかかる。下請けの構造では、価格を決める力に限りがある。
半導体とデータセンターの投資は、ここ数年の大きな追い風だった。ただし、データセンターは米国や中東への投資が目立ち、国内に十分な量が来るとは限らない。受注残が厚いのは、足元の話にすぎない。
国内の工事量は、人手不足で増やしにくい。売上の伸びは、物価の転嫁に頼る部分が大きい。物価を超える値上げができなくなれば、利益の伸びは止まる。
利益が 2 倍になったあとの会社には、期待が先に織り込まれる。2013 年 3 月期の谷では純損失を出し、PBR は 0.33 倍まで下がった。今の利益を前提に置くことの危うさを、この実例が示している。
自社株買いの上限 100 万株に対し、実際は 18 万株で止まった点も、還元の確かさを割り引く材料だ。機械システムの赤字も、まだ片づいていない。
どちらに重みを置いたか
会社の実力と財務は強気の見方が優勢だが、利益率が 10 年続く点は慎重な見方に分がある。筆者は、中立の筋書きを、利益率が 11% から 9% 台へ戻る姿に置いた。
確率は、やや悲観に厚く寄せた。強気は 8%、やや強気は 20%、中立は 35% で、残りの 37% をやや悲観 25%、悲観 12% に分けた。利益率が倍になった直後の会社は、平常に戻る確率のほうが高いと見るからだ。
会社の質を高く評価することと、今の値段を高いと見ることは、矛盾しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,201 円3,366 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 908 円1,389 億円)。 今の値に割り戻すと 1,669 円2,552 億円、今との差 −33.9%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,843 円5,877 億円 | 1,133 円1,733 億円 | +97.1% | +7.0% | 398 円609 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,178 円4,860 億円 | 1,050 円1,606 億円 | +67.5% | +5.3% | 846 円1,293 億円 |
| 中立 | 35% | 2,711 円4,145 億円 | 974 円1,490 億円 | +45.9% | +3.9% | 1,290 円1,972 億円 |
| やや悲観 | 25% | 997 円1,525 億円 | 837 円1,280 億円 | −27.4% | −3.1% | 458 円701 億円 |
| 悲観 | 12% | 500 円764 億円 | 476 円728 億円 | −61.4% | −9.1% | 117 円179 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,201 円3,366 億円 | 908 円1,389 億円 | +23.1% | +2.1% | 3,109 円4,755 億円 |
今の株価時価総額 2,525 円3,861 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% データセンターと半導体が長く続き、高い利益率を保つ 利益 319 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 3,843 円5,877 億円
半導体工場とデータセンターの空調が国内で増え続け、ビルの更新も脱炭素の流れで途切れない。三機工業は空調・衛生・電気の一括提供で大型案件を取り続け、施工の標準化で人手の壁を越える。値上げは物価を超えて通り、利益率は今に近い高さを保つ。東南アジアの提携も実を結び、海外が小さな柱になる。強い堀と高い資本効率を保ったまま、自己資本を積み、還元も厚くできる。理想に近い 10 年である。環境システムは上下水の更新で伸び、機械システムも黒字に届く。ライバルが人手不足で受注を絞る中、三機工業は採用と育成に先に投資した分だけ、案件を選び続けられる。
- 建築設備(空調・衛生・電気):数量 4,900(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.71(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 3,464 億円・営業利益 433 億円。工事量 4,900(今の 1.17 倍)× 0.7070 億円(今の 1.40 倍)、利益率 12.5%
- 環境システム(上下水処理):数量 760(施工量(人年・実質))× 価格 0.58(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 438 億円・営業利益 22 億円。工事量 760(今の 1.09 倍)× 0.5762 億円(今の 1.34 倍)、利益率 5.0%
- 機械システム・不動産:数量 340(売上相当の実質量(人年換算))× 価格 0.56(1 人年あたり売上(億円・名目))→ 売上 190 億円・営業利益 6 億円。工事量 340(今の 1.13 倍)× 0.5584 億円(今の 1.34 倍)、利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 319 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.69 倍、時価総額 5,643 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の設備投資が 10 年途切れず、かつ価格転嫁も通り続ける必要がある。人手の制約も重く、実現のハードルは高い。
やや楽観 20% 更新需要に支えられ、着実に成長 利益 270 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 3,178 円4,860 億円
産業用の追い風は一段落するが、古いビルの空調更新と省エネ改修が新築の落ち込みを埋める。三機工業は、採算を見て案件を選ぶ姿勢を保つ。利益率は今よりやや低い水準で落ち着く。施工量は 1 割ほど増えるが、成長の大半は単価の上昇が担う。環境システムは、上下水の老朽化対策で公共工事が続く。機械システムの赤字はほぼ消える。配当は純資産の 5% 以上を守り、自社株買いも続ける。資本効率は高めのまま、堅実な優良会社として 10 年が過ぎる。協力会社の確保には苦労するが、BIM などの設計データを使った標準化で、施工量の伸びを支える。海外は東南アジアの提携先を通じて、わずかに伸びる。
- 建築設備(空調・衛生・電気):数量 4,650(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.69(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 3,217 億円・営業利益 370 億円。工事量 4,650(今の 1.11 倍)× 0.6919 億円(今の 1.37 倍)、利益率 11.5%
- 環境システム(上下水処理):数量 720(施工量(人年・実質))× 価格 0.58(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 415 億円・営業利益 17 億円。工事量 720(今の 1.03 倍)× 0.5762 億円(今の 1.34 倍)、利益率 4.0%
- 機械システム・不動産:数量 320(売上相当の実質量(人年換算))× 価格 0.56(1 人年あたり売上(億円・名目))→ 売上 179 億円・営業利益 2 億円。工事量 320(今の 1.07 倍)× 0.5584 億円(今の 1.34 倍)、利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 270 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.08 倍、時価総額 4,612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:産業用の投資が一巡しても、既存ビルの空調更新と省エネ改修が続く想定。業界の見通しの上位レンジにあたる。
中立 35% 利益率は平常に戻り、普通に強い会社に 利益 233 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,711 円4,145 億円
新築の空調は人口の減少で伸びず、半導体とデータセンターの投資も勢いを失う。それでも更新と省エネが需要を下支えし、施工量は 5% ほど増える。利益率は今の 11% から 9% 台へ戻る。元請けや同業との競争で、値上げの余地が縮むからだ。環境システムは公共の仕事で堅実に続き、機械システムの赤字はほぼ消えて小さな黒字になる。10 年後の三機工業は、特別な超過利益が消えた、地味だが堅実な設備工事の優良会社になる。配当は利益とともに増え、還元は純利益の 6 割を超える。自己資本の積み上がりは緩やかで、ROE は 11% 前後に落ち着く。人手の制約から、売上の伸びの大半は物価の転嫁による。
- 建築設備(空調・衛生・電気):数量 4,410(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.68(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,984 億円・営業利益 322 億円。工事量 4,410(今の 1.05 倍)× 0.6767 億円(今の 1.34 倍)、利益率 10.8%
- 環境システム(上下水処理):数量 700(施工量(人年・実質))× 価格 0.58(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 403 億円・営業利益 14 億円。工事量 700(今の 1.00 倍)× 0.5762 億円(今の 1.34 倍)、利益率 3.5%
- 機械システム・不動産:数量 300(売上相当の実質量(人年換算))× 価格 0.56(1 人年あたり売上(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 0 億円。工事量 300(今の 1.00 倍)× 0.5584 億円(今の 1.34 倍)、利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 233 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.54 倍、時価総額 3,854 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の空調需要は人口で増えないが、更新・省エネ・産業用で底堅い。利益率は過去最高から平常へ戻り、会社の強みは残るという中心の筋書き。
やや悲観 25% 競争が戻り、利益率が昔に近づく 利益 148 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 997 円1,525 億円
好況の間に同業が人と設備を増やし、需要が落ち着いた後に受注の奪い合いが始まる。元請けも工事費を抑えにかかり、価格転嫁の力が弱まる。営業利益率は 6% 台まで下がる。国内の工事量は人手不足と需要の頭打ちで伸びない。環境システムは薄利になり、機械システムの赤字は残る。堀が崩れたわけではないが、「いまは特別に儲かる会社」という評価は外れる。それでも無借金で、配当は守られる。自己資本は緩やかにしか積み上がらず、ROE は資本コストの少し上に落ちる。海外の提携も、競争の厳しさから利益に結びつきにくい。人員の維持費だけが重く残る。
- 建築設備(空調・衛生・電気):数量 4,200(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.66(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,779 億円・営業利益 208 億円。工事量 4,200(今の 1.00 倍)× 0.6616 億円(今の 1.31 倍)、利益率 7.5%
- 環境システム(上下水処理):数量 660(施工量(人年・実質))× 価格 0.56(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 369 億円・営業利益 9 億円。工事量 660(今の 0.94 倍)× 0.5590 億円(今の 1.30 倍)、利益率 2.5%
- 機械システム・不動産:数量 260(売上相当の実質量(人年換算))× 価格 0.54(1 人年あたり売上(億円・名目))→ 売上 141 億円・営業利益 −3 億円。工事量 260(今の 0.87 倍)× 0.5417 億円(今の 1.30 倍)、利益率 -2.0%
倍率:余った現金・余り資産 100 億円を分けると、事業の純利益 147 億円(税後利息を除く)・事業の自己資本 1,772 億円・事業の ROE 7.9%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.75% + 残る割合 1/2 ×(ROE 8.27% − k)= 8.26%、長期の成長率 g 4% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 12.1 倍。ROE が資本コストをわずかに上回るだけで、伸びも堀の持ちも低く見て、上限の 7.5 割の 9.1 倍に置いた。事業 148 億円 × 9.1 倍 + 余り 0 億円(帳簿 0 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 1,334 億円。
確率:過去 20 年の利益率は 2〜5% が中心。今の高さが 10 年続く保証はなく、下請けの構造では利益率が昔に近づく可能性が高い。
悲観 12% 国内の成長の柱を失い、優良さが消える 利益 51 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 500 円764 億円
半導体とデータセンターの大型投資が米国や中東へ移り、国内の新しい工事が細る。残るのは既存ビルの更新と、価格だけで競う仕事だ。値引き競争で営業利益率は 2〜3% に落ち、大型案件の採算悪化も重なる。機械システムは赤字を垂れ流し続け、整理が遅れる。会社は存続し、配当も手元の現金から払い続ける。還元の合計は純利益を上回るが、無借金なので耐えられる。かつての高い資本効率は戻らない。投資家は三機工業を、景気に翻弄される普通の下請けとして扱う。ROE は 3% 台に落ちる。新しい工場や大型のデータセンターが国内で立たず、ライバルも同じ仕事を奪い合うので、値下がりは続く。それでも実質無借金で、会社が傷むことはない。
- 建築設備(空調・衛生・電気):数量 3,500(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.63(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,192 億円・営業利益 77 億円。工事量 3,500(今の 0.83 倍)× 0.6262 億円(今の 1.24 倍)、利益率 3.5%
- 環境システム(上下水処理):数量 600(施工量(人年・実質))× 価格 0.54(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 322 億円・営業利益 6 億円。工事量 600(今の 0.86 倍)× 0.5375 億円(今の 1.25 倍)、利益率 2.0%
- 機械システム・不動産:数量 200(売上相当の実質量(人年換算))× 価格 0.52(1 人年あたり売上(億円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 −5 億円。工事量 200(今の 0.67 倍)× 0.5209 億円(今の 1.25 倍)、利益率 -5.0%
倍率:構造的に負けて営業利益 66 億円・純利益 51 億円まで細る姿で、稼ぐ力は 600 億円ほどにしかならず、床は売れる資産で測る。総資産 2,195 億円を強制売却で 8 割しか回収できず、負債 982 億円は全額払うとして残る約 770 億円(無借金で厚い現金・政策保有株を含む)を、今の自己資本 1213 億円に対する PBR 0.63 倍(時価総額 764 億円)に置いた。
確率:半導体・データセンターの投資が海外へ移り、国内は価格競争だけが残る構造的な負け筋。大型案件の採算悪化や、機械システムの赤字の長期化も入る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築設備(空調・衛生・電気)
ビル・工場・半導体工場・データセンターの空調、給排水衛生、電気設備を設計し、施工する本業。売上の 8 割以上、利益のほぼすべてを稼ぐ。
| 数量施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,200 | 0.51 | 2,121 | 280 |
| 10 年後 中立 | 4,410 | 0.68 | 2,984 | 322 |
取り方:2026 年 3 月期の外部売上 2,121 億円、セグメント利益 280 億円(利益率 13.2%。全社の費用は別枠で引く)。開示は国内と海外を分けないが、国内が連結の 9 割超なので国内を主とみる。工事は人手が制約になるので、数量は施工に携わる人の稼働(人年)で置き、1 人あたり約 5,050 万円の完成工事高とした。物価の上昇分は価格に入れる。
環境システム(上下水処理)
官公庁が発注する上下水処理施設などの機械・電気設備工事。景気の波が小さい公共の仕事。
| 数量施工量(人年・実質) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 0.43 | 301 | 12 |
| 10 年後 中立 | 700 | 0.58 | 403 | 14 |
取り方:2026 年 3 月期の外部売上 301 億円、セグメント利益 11.5 億円(利益率 3.8%)。受注は前年の大型案件の反動で減った。人年は建築設備の 6 分の 1 の規模と推定し、1 人あたり 4,300 万円とした。
機械システム・不動産
搬送機器の製造販売(機械システム)と、保有ビルの賃貸(不動産)。機械システムは赤字が続き、不動産が少し支える。
| 数量売上相当の実質量(人年換算) | 価格1 人年あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.42 | 125 | −1 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.56 | 168 | 0 |
取り方:機械システムの外部売上 98 億円・損失 9 億円と、不動産の売上 26 億円・利益 8 億円の合計。製造と賃貸が混ざるので、売上を 300 人年相当 × 約 4,170 万円と置いて便宜的に分けた。
リスクと懸念
利益率が平常に戻る
営業利益率は 11% と、過去 20 年の中心(2〜5%)を大きく超えている。同業の値引きや元請けの工事費抑制が戻れば、売上が伸びても利益は伸びない。いちばん大きな不確実性だ。2013 年 3 月期には純損失に落ちた実例があり、戻る方向の力は常にある。利益の半分が薄れれば、本質価値の見方も大きく変わる。
半導体・データセンターの投資の波
ここ数年の受注を押し上げた産業向けは、顧客の判断と世界の設備投資で止まりやすい。データセンターが米国や中東に偏れば、国内の大型案件は思ったほど増えない。受注残が厚くても、新しい大型の数が減れば、2 年ほど先の売上に響く。
人手不足で工事量が増えない
技能者の確保が工事量の上限を決める。賃金の上昇を価格に転嫁できなければ、利益を削る。採用と協力会社の維持に失敗すると、受注があっても施工できない。人を増やすには時間がかかり、採用の競争は他の建設職種とも続く。
大型案件の採算悪化
工事は一つひとつが大きく、工期の遅れや資材高、設計変更で赤字になる案件が出る。一件で利益が傷む構造は、業界に共通する。会社は受注時に採算を選ぶが、選別が完全に当たるとは限らない。一件の失敗が年間の利益を数割押し下げることもある。
ゼネコンの下に入る立場
多くの案件で元請けのゼネコンの下に入るため、価格を決める力に限りがある。ゼネコンが工事費を抑えにかかる局面では、採算の守り方が試される。協力会社への発注単価の上昇も、吸収する場面が出てくる。地方や小さな案件では、特に値引きの圧力を受けやすい。
機械システムの赤字と還元の確かさ
搬送機器の機械システムは何年も赤字が続き、受注も減っている。会社全体の利益が大きいので目立たないが、手当てが遅れると利益の足を引く。整理や撤退を決めれば一時の損失は出るが、長い目では身軽になる。自社株買いが上限の 2 割も使われなかった点も、還元の約束を割り引く材料だ。
今後の分かれ目
- 受注高が 2 期連続で前年を下回ったら
- やや悲観の筋書きに確率を寄せる。受注残が薄くなり、利益率の戻りが早まる。
- 営業利益率が 12% を超えて保たれたら
- 強気側の確率を上げてよい。ただし、同業も同じ水準に追いつくかを確かめる。
- 国内のデータセンターや半導体工場で、大型の受注を続けて取ったら
- やや強気の筋書きの確率を上げる。産業向けの追い風が続く証拠になる。
- 大型案件で数十億円規模の損失が出たら
- 利益の質を見直す。受注時に採算を選ぶ方針が崩れた兆しかを確認する。
- 機械システムの整理や売却を決めたら
- 利益のぶれが減り、中立の利益率を少し引き上げてよい。
- 景気が急に冷え、企業の設備投資が凍結されたら
- 10 年の悲観の筋書きが近い。ただし財務が強いので、床は自己資本で見る。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残、受注時の利益率
- 営業利益率の推移(11% 台を保てるか)
- データセンター・半導体向けの大型案件の受注の有無
- 機械システムの損益と、整理の動き
- 次の中期経営計画(2028 年度から)の数値目標と還元方針
倍率と資本コストの決め方
売上は「施工量 × 1 人年あたり完成工事高」で積み、物価 3% は価格に入れた。国内の工事量は人手不足で頭打ちとし、中立の 10 年で 1.05 倍とした。倍率は k 7.75%(基本 7.5% + quality 0.75%)・g 4% 以内の正当化 PER の上限の 9 割に置いた。今の 16.8 倍には寄せていない。同じ領域の高砂熱学・ダイダンと物差しをそろえ、quality の差(高砂は値決め力の分だけ低い)で k を分けた。悲観は総資産 8 割回収・負債全額払いで残る売れる資産で測った。純現金は時価総額の 8.5% で 1 割に満たないため、余った現金は分けていない。工事会社で店舗や倉庫の賃借が小さく、新リース会計基準(2028/03 期)の影響は小さい。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。政策保有株の売却益は一時の利益として入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→17.69 倍・やや楽観 PER 13→17.08 倍・中立 PER 12.4→16.54 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。