結論
新日本空調は、半導体工場や病院、オフィスビルの空調を設計し、施工する工事会社だ。売上は約 1,550 億円で、高砂熱学工業やダイダンと並ぶ空調工事の準大手にいる。筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。会社の力は本物だが、利益率が異例の高さにある。
2026 年 3 月期の営業利益率は 9.8% だった。10 年前は 2% 台で、過去 20 年の中心も 2〜6% だ。受注は過去最高で、短期の見通しは明るい。ただ、この高さが 10 年続くとは置きにくい。
稼ぎの源は単純だ。建物や工場が建つたび、古い設備を替えるたびに工事を受ける。国内の工事量は人手不足と人口減で頭打ちになる。物価の上昇は工事価格に乗る。数量は横ばい、値段は物価並みという地味な成長を、筆者は中心に見る。
財務は厚い。借金を差し引いても 240 億円ほどの現金があり、自己資本比率は 61% だ。ただし工事会社の現金は、顧客から先に受け取る前受金などの預かり分が混じる。全部が自由なお金ではない。
中立の筋書きは、利益率が 8% へ戻る姿だ。会社は特別に儲かる工事会社から、普通に強い工事会社へ評価が移る。会社は 2029 年度に営業利益率 12% を目指すが、そこまで伸びる姿は上位の筋書きに置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い工事会社だが、特別な堀を持つ会社とは見ない。10 年後も事業は残る。空調は建物の命に関わり、更新が途切れないからだ。
ただ、オーナーとして持ち続けたいかと言われると、判断は割れる。人に頼る事業で、下請けの立場が続き、利益率は景気と人手不足の波に乗って上がり下がりする。そのうえ、今の利益率は山の高さにある。
良い点は 3 つある。無借金に近い財務、軽い設備投資、増配を続ける方針だ。利益のうち株主が自由に使える分は多く、経営は還元に前向きだ。
安全域は薄い。中立の筋書きは今の値段に届かず、上位の筋書きで初めて報われる。払う値段としては、利益率が戻る分をあらかじめ割り引いておきたい。
筆者の見立てでは、この会社の本質価値は、普通に強い工事会社の利益を、資本コストで割り引いたところにある。山の利益に高い倍率を掛けるのは避ける。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は、空調設備の設計と施工だ。オフィス・商業施設・病院などの一般建築と、半導体工場・データセンター・製薬や原子力の施設といった産業施設に分かれる。産業施設は温度・湿度・清浄度の管理が厳しく、難度も単価も高い。
顧客はゼネコンと、工場や施設を持つ発注者だ。ゼネコンの下請けで受ける形が多く、価格を自分で決めきれない場面は残る。受注から完成まで 1〜2 年かかるので、受注済みで未完成の工事、つまり繰越工事が先の売上を決める。2027 年 3 月期の第 1 四半期末の繰越工事は約 1,700 億円で、売上の 1 年分を超える。
2026 年 3 月期は受注が約 1,780 億円(前の年より 15% 増)、営業利益が約 150 億円(33% 増)と、どちらも過去最高に近かった。半導体を含む生産施設とデータセンター、都心の大規模なオフィス開発が重なった。
工事は人が現場で行う。大きな機械や店舗を持たないので、設備投資は軽い。そのぶん稼いだ利益を株主へ返しやすい。
新しい分野として、宇宙環境の制御や陸上養殖にも手を出している。利益を左右する規模ではなく、筆者は小さな芽として見る。会社は省エネ・脱炭素の改修と、デジタルによる現場の効率化を次の柱に置く。
優良さと弱いところ
優良さの中身は、難しい工事を任される技術力だ。半導体のクリーンルームや原子力施設は、失敗が許されず、実績のある数社に発注が集まる。新日本空調はその数社の一角にいる。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは、強いとまでは言えない。顧客の多くはゼネコン経由の入札や相見積りで、同業 8 社が同じ土俵で競る。利益率が上がったのは、人手不足のなかで業界が仕事を選ぶようになった面が大きい。会社だけの力で得た高さではない。
資本の使い方は堅実だ。無借金に近く、自己資本比率は 6 割ある。2026 年 3 月期の ROE は 14.7% で、過去 10 年の中央値 9.8% を大きく上回る。これは利益率の山が生んだ数字で、筆者は長く続くとは見ない。
弱みは、規模と立場だ。売上は最大手の高砂熱学工業より小さく、下請けの構造のなかで価格交渉力は限られる。工期の遅れや資材の高騰で、大型案件の採算が崩れる危うさも持つ。
それでも、赤字の期は過去 20 年で 2009 年 3 月期だけだ。工事会社として傷みにくい体質は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空調工事の需要は 3 つの柱で動く。新築の建物、産業施設、そして既存ビルの更新だ。新築のオフィスは人口の減少で伸びにくい。産業施設は、半導体とデータセンターの投資が追い風になっている。更新は、築 30 年を超えたビルの空調の入れ替えと、省エネ・脱炭素の改修が積み上がる。
業界は同業 8 社を中心に回る。高砂熱学工業、大気社、三機工業、ダイダンなどが並ぶ。半導体やデータセンターのような高度な工事ほど、上位の数社に受注が集まる。海外の企業が国内の工事に参入する例は少ない。
2024 年 4 月の残業規制のあと、技能者の不足が重くなった。業界は、取れる仕事を選び、取った仕事の値段を上げる方向に動いた。上場の工事会社の多くで粗利益率が上がったのは、そのためだ。
筆者が気にするのは、この好採算がどこまで続くかだ。人手不足が続く限り選別受注は続く。しかし今の利益率は、過去 20 年の中心の 2 倍近い。10 年の間には、ゼネコンの工事費の抑制や同業の受注競争が戻る場面があると見る。
もう 1 つは立地だ。半導体とデータセンターの大型投資が国内に残るか、海外へ移るかで、産業施設の工事量は大きく変わる。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。新しい中期経営計画(2026 年度から)は、株主資本配当率の下限を 5% に置き、増配を続ける累進配当を掲げる。期間の還元は累計で 300 億円規模、自社株買いは 200 万株ほどを目安にする。
買収は選んで行う。会社は成長投資に 300 億円規模を充て、M&A も対象に含める。これまで大きな買収で価値を壊した例はない。ただ、買収で数字を伸ばす型の会社ではなく、期待も置かない。
政策保有株は純資産比 20% 未満へ減らす。売却で出る資金は、還元と投資に回る。
株主には、三井住友銀行・三井物産・三井不動産・日本電設工業・東芝など、取引のある会社や金融機関が並ぶ。親会社はない。外国人の持ち株は 1 割に満たず、TOB の標的になる規模や形でもない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
データセンターと半導体の国内投資は、まだ始まったばかりだ。生成 AI の計算基盤は電力と冷却を食う。空調は工事全体のなかで比重が大きく、難しい案件ほど実績のある数社に発注が集まる。新日本空調は半導体と原子力の工事で実績があり、その数社に入る。
しかも国内の技能者は足りない。工事会社が仕事を選べる時代は、10 年は続く。受注は過去最高で、繰越工事は売上の 1 年分を超える。利益率は 9.8% まで上がったが、会社は 2029 年度に 12% を目指す。値上げが定着した今の水準は、山ではなく新しい平常だ。
財務も強い。無借金に近く、配当は下限を決めて増やす。自社株買いも使う。ROE は 15% に近く、資本コストをはっきり上回る。この資本効率が続けば、10 年後も今の値段を超える価値になる。
新しい中期計画は成長投資に 300 億円規模を充てる。買収や新分野で稼ぎを足せば、数字はさらに上へ伸びる。計画を達成する力は、直近の実績が示している。
ほかの工事会社と比べても、半導体や原子力のような難しい工事の経験は厚い。技能者を確保し、現場の効率化を進めれば、同じ人数でより多くの利益を出せる。デジタルの活用も、人手が上限になった時代には効く。
慎重な見方
利益率の 9.8% は、過去 20 年の中心の 2 倍近い。この高さが続いたことはない。理由は、人手不足による選別受注と、ゼネコンの工事費が好況で膨らんだことだ。景気が変われば、元請けは下請けの値段を叩き直す。
新日本空調は最大手ではなく、値決めの力は限られる。ゼネコンの下請けで、同業 8 社と同じ入札に出る。半導体とデータセンターの大型投資は、国内に残るとは限らない。米国や中東へ移れば、国内に残るのは既存ビルの更新だけだ。
会社が掲げる営業利益 240 億円、ROE 18% は、今の山をさらに上へ伸ばす計画だ。計画どおりなら、今の値段はようやく妥当になる。実績の平均に戻る可能性を考えると、今の値段は期待を先に払い過ぎている。
堅い財務は事実だが、現金の一部は前受金など預かり分で、全部が株主のものではない。さらに成長投資の 300 億円が買収に向かえば、資本の使い方でも当たり外れが出る。
最後に、利益の質の問題がある。受注が過去最高でも、工事の採算が確定するのは完成の時点だ。山の途中で高い採算が見えても、完成までに資材と人件費が動けば、数字は簡単に変わる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。利益率が過去の 2 倍近い山にあり、筋書きの多くで 10 年後の利益率は今より下がる。強気の見方が正しい条件は、国内の大型投資が続き、値決めまで強くなることだ。
ただ、財務の堅さと還元の厚みは確かなので、悲観の深さは限る。確率は中立に 35%、やや悲観に 26% を置き、やや悲観より下に 38% を寄せた。最上位は 7% にとどめた。
配当の厚みと無借金に近い財務は、悲観側の下値を支える。一方で、工事会社の利益は山と谷の差が大きい。山の高さにある今の利益を、そのまま続くものとして評価しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,590 円2,087 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,575 円716 億円)。 今の値に割り戻すと 3,389 円1,541 億円、今との差 +14.1%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,039 円4,110 億円 | 2,089 円950 億円 | +274.7% | +14.1% | 779 円354 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,063 円3,212 億円 | 1,869 円850 億円 | +200.7% | +11.6% | 1,786 円812 億円 |
| 中立 | 35% | 5,297 円2,409 億円 | 1,671 円760 億円 | +134.6% | +8.9% | 2,439 円1,109 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,271 円1,032 億円 | 1,319 円600 億円 | +20.9% | +1.9% | 933 円424 億円 |
| 悲観 | 12% | 836 円380 億円 | 1,056 円480 億円 | −36.3% | −4.4% | 227 円103 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,590 円2,087 億円 | 1,575 円716 億円 | +107.6% | +7.6% | 6,164 円2,803 億円 |
今の株価時価総額 2,970 円1,351 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% データセンターと半導体が続き、12% 近い利益率を保つ 利益 205 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 9,039 円4,110 億円
データセンター、半導体、製薬の工場が国内で建ち続け、古いビルの空調更新も加わる。工事量は今より 1 割ほど増え、価格は物価並みに上がる。
会社が掲げる 2029 年度の営業利益 240 億円の線に近い姿で、10 年後も利益率は 11% 前後に残る。クリーンルームや原子力施設のような難しい工事に強いことが、値引き競争を避ける力になる。
稼いだ利益は配当と自社株買いで厚く返し、買収は小さな補完にとどまる。自己資本は増え過ぎず、ROE は 13% ほどを保つ。
上位の筋書きだが、ゼネコンの下請けという立場は変わらない。値決めの主導権を握り切る形ではない。
- 空調設備の設計・施工:数量 3,360(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.69(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,325 億円・営業利益 256 億円。工事量 3,360(今の 1.12 倍)× 0.6919 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 205 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍。全体の PER 19.09 倍、時価総額 3,913 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の大型投資が 10 年途切れず、受注の採算も今の山を保つ道。条件が重なるので 7% にとどめた。
やや楽観 20% 更新需要と産業投資が支える 利益 166 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 7,063 円3,212 億円
データセンターと半導体の勢いは一巡するが、水準は 10 年前より高いまま残る。そこへ築 30 年を超えたビルの空調の入れ替え、省エネ改修が積み重なる。
工事量は 6% ほど増え、価格は物価並みに上がる。営業利益率は 9〜10% で落ち着く。今の 9.8% を大きくは崩さないが、これ以上は上がらない。
人手が足りないため、取れる仕事を選んで採算を守る動きが業界全体で続く。会社の ROE は 11% 台で、資本コストを上回り続ける。
配当は累進の方針どおりに増え、自社株買いも続く。株主への還元が自己資本の積み上がりを抑えるため、ROE は高い水準を保てる。ただ、利益そのものが大きく伸びる筋書きではなく、評価は今より穏やかになる。
- 空調設備の設計・施工:数量 3,180(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.69(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,200 億円・営業利益 209 億円。工事量 3,180(今の 1.06 倍)× 0.6919 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 166 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.27 倍、時価総額 3,033 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:産業向けの投資が山を越えても高い水準で残り、更新と省エネ改修が下支えする道。上位のレンジとして 2 割を置いた。
中立 35% 利益率が平常に戻る 利益 131 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 5,297 円2,409 億円
新築の空調は人口の減少で伸びない。データセンターと半導体の投資も、勢いは弱まる。それでも古いビルの更新と省エネ改修が需要を支え、工事量は今とほぼ同じ水準になる。
価格は物価に合わせて上がる。人件費も同じだけ上がるので、利益率が自然に下がることはない。ただ、今の 9.8% は技能者不足による選別受注が生んだ山でもある。中立では 8% に戻ると見る。
過去 20 年の営業利益率は 2〜6% が中心だった。8% はそれより高く、値上げが定着した分は残る姿だ。会社は 2029 年度に 12% を目指すが、10 年先まで同じ高さが続くとは置かない。
- 空調設備の設計・施工:数量 3,000(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.69(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,076 億円・営業利益 166 億円。工事量 3,000(今の 1.00 倍)× 0.6919 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 131 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.1 倍、時価総額 2,240 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工事量は横ばい、価格は物価並み、利益率は今の山から 8% へ戻る道。過去 20 年の平均よりは高く落ち着く形で、最大の 35% を置いた。
やや悲観 26% 下請けの価格競争が戻る 利益 91 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,271 円1,032 億円
ゼネコンの下請けという構造のなかで、元請けの工事費の抑制と同業の受注競争が戻る。選別受注が緩み、取れる仕事を取る動きに変わる。
工事量は 5% ほど減り、価格は物価に届かず 10 年で 1.30 倍にとどまる。営業利益率は 6% まで下がる。リーマン後の谷(利益率 2% 台)ほどではないが、今の山からは 4 ポイント近い下げだ。
ROE は資本コストを割る。それでも財務は堅く、配当は続けられる。
会社は普通の設備工事会社として評価される。特別な技術を持つ会社という見方は薄れ、利益の質は景気と受注の波に左右される形になる。倍率は、利益が資本コストを割る分だけ低く見る。
- 空調設備の設計・施工:数量 2,850(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.67(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,913 億円・営業利益 115 億円。工事量 2,850(今の 0.95 倍)× 0.6712 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 6.0%
倍率:余った現金・余り資産 71 億円を分けると、事業の純利益 90 億円(税後利息を除く)・事業の自己資本 1,139 億円・事業の ROE 7.5%。事業の ROE が資本コスト k 7.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍。ROE が資本コストに届かず、伸びも堀の持ちも低く見て、上限の 8.2 割の 10 倍に置いた。事業 91 億円 × 10 倍 + 余り 0 億円(帳簿 0 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 910 億円。
確率:元請けの工事費抑制と同業の受注競争が戻り、利益率が過去の高い側(6% 台)へ落ちる道。山の高さを考えると十分ありうるので、26% と厚めに置いた。
悲観 12% 国内の投資が海外へ移り、価格競争だけが残る 利益 38 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 836 円380 億円
半導体工場とデータセンターの新設が米国や中東に流れ、国内には既存ビルの更新だけが残る。この更新は同業 8 社が取り合うため、価格が下がる。
工事量は 18% ほど減り、価格は物価の半分ほどしか上がらない。営業利益率は 3% に落ち、純利益は今の 3 分の 1 以下になる。大型案件で採算を読み違えれば、赤字の年も出る。
それでも無借金に近い財務は崩れない。手元の現金が会社を支え、配当は大きく削るが続ける。ここまで落ちると、稼ぐ力で測った価値は今の時価総額を大きく下回る。
会社が掲げた高い目標は遠のき、経営は還元より体質の立て直しに資金を使うことになる。
- 空調設備の設計・施工:数量 2,460(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.63(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,550 億円・営業利益 46 億円。工事量 2,460(今の 0.82 倍)× 0.6299 億円(今の 1.22 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:余った現金・余り資産 0 億円を分けると、事業の純利益 38 億円(税後利息を除く)・事業の自己資本 960 億円・事業の ROE 4.0%。事業の ROE が資本コスト k 7.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍。半導体・データセンター向けの高い採算が消え、純利益が細るので、上限の 8.2 割の 10 倍に置いた。事業 38 億円 × 10 倍 + 余り 0 億円(帳簿 0 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 380 億円。
確率:半導体・データセンターの投資が国内から海外へ移り、価格競争だけが残る構造的な負け筋。大型案件の採算悪化など下請けの典型的な事故も含めて 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
空調設備の設計・施工
オフィス・病院・半導体工場・データセンター・原子力施設などの空調と、関連する衛生設備の工事。売上のほぼ全部。
| 数量施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.52 | 1,549 | 151 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 0.69 | 2,076 | 166 |
取り方:開示は事業別に細かくないので、全社を 1 つの事業として置いた。工事は人が制約になるため、数量は施工にあたる人の稼働(人年)とし、約 3,000 人年と推定した(1 人あたり完成工事高は約 5,200 万円)。売上 1,549 億円と営業利益 151 億円は 2026 年 3 月期の実績。国内が大半で海外は小さいため分けない。物価の上昇分は価格に入れる。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率は 10 年前の 2% 台から 9.8% へ上がった。人手不足による選別受注と元請けの好況が支えた面が大きい。ゼネコンの工事費抑制や同業の受注競争が戻れば、6% 台まで落ちる。中立の筋書きでも 8% へ戻す前提を置いている。
半導体・データセンター投資が海外へ移る
産業施設は難度が高く単価も高い。この大型投資が国内に残るか、米国や中東へ流れるかで工事量が変わる。流れれば国内の既存ビル更新だけが残り、受注の質が落ちる。
ゼネコンの下請けという立場
受注の多くはゼネコン経由で、価格を自分で決めきれない。同業 8 社が同じ入札で競り、元請けの都合で値引きを求められる場面が戻りうる。最大手ほどの値決めの力はない。
大型案件の採算
工事は 1〜2 年かけて完成する。資材の高騰、工期の遅れ、設計変更で、受注時に見込んだ利益が消える例は業界で繰り返されてきた。大型案件が集中するほど、1 件の失敗が年の利益に響く。
技能者の確保
残業規制のあと、現場の人手が供給の上限になった。人を増やせない会社は仕事を断るしかなく、賃金の上昇が利益率を圧迫する。人の確保は成長の天井でもある。
成長投資・買収の使い方
会社は成長投資に 300 億円規模を充て、買収も含める。本業と離れた分野や割高な買収で資本を傷める可能性がある。宇宙環境制御や陸上養殖のような新分野は、まだ利益の裏付けがない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 10 年を通じて 10% を超えたまま続く
- 選別受注と値上げが新しい平常になったことを示す。強気の筋書きに近づき、本質価値は今の値段を上回る方向へ動く。
- 半導体・データセンターの大型工場が国内で相次いで中止・延期される
- 産業施設の受注が細る。繰越工事が減り、利益率の山が早く崩れる。やや悲観以下の筋書きの確率が上がる。
- ゼネコンが工事費の抑制を強め、下請けの値引きを求める
- 価格が物価に届かず、利益率は 6% 台へ落ちる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 大型の買収を発表する
- 買収額と相手の稼ぐ力しだいで価値が動く。割高な買収なら資本効率を壊す。小さな補完なら影響は小さい。
- 政策保有株の売却が進み、資金が自社株買いに回る
- 株主還元が厚くなり、自己資本が増え過ぎず ROE が保たれる。中立の価値をわずかに押し上げる。
- 財務の堅さを使って大型の自社株買いを行う
- 1 株の価値は増える。ただ事業の価値そのものは変わらない。割高な価格での買い付けなら効果は薄い。
見ておくもの
- 受注高と繰越工事高(売上の何年分か)
- 完成工事の総利益率と営業利益率の推移
- 半導体・データセンター向け受注の件数と国内立地
- ゼネコンの工事費の動きと下請けへの発注価格
- 配当方針(DOE 下限・累進)と自社株買いの実績
- 政策保有株の残高と売却の進み方
倍率と資本コストの決め方
売上は「施工量 × 1 人あたり完成工事高」で積み、物価 3% は価格に入れた。中立の工事量は 10 年で 1.00 倍、利益率は 8% とした。倍率は k 7.25%(基本 7.5% + quality 0.75%)・g 4% の正当化 PER の上限の 9 割台に置き、中立は ROE が k を上回るので 1÷k(12.1 倍)の床を割らせない。悲観は稼ぐ力(PER 上限 1÷k)で測り、谷の PBR や今・過去の PER は使っていない。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。工事会社で店舗や倉庫の賃借は小さく、新リース会計基準(2028/03 期)の影響は小さい。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→19.09 倍・やや楽観 PER 13→18.27 倍・中立 PER 12.5→17.1 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。個別のリスク(大型案件の採算・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。