結論
技研ホールディングスは、病院の放射線治療室やMRI室の放射線・電磁波を防ぐ工事、道路の斜面を守る法面工事、消波ブロックを作る鋼の型枠の貸し出しを営む会社だ。筆者の結論は、ほぼ適正からやや割高の間である。本業の稼ぎは堅いが、その価値を株主が受け取る道が細いことが一番の理由だ。
本業の利益率は建設業としては高い。放射線を防ぐ工事は専門の技術が要り、型枠は昔に作った資産をほとんど償却し終えて貸し続けている。直近の営業利益率は15%で、ここ8年で最も高い。
一方で、この会社は投資有価証券を約85億円持ち、毎年買い増している。時価総額の2倍近い額だ。そこから入る配当は年2億円を超えるが、株主への配当は年0.2億円にも満たない。株の約半分はフリージアグループの2社が持ち、資本の使い方はその意向で決まる。
筆者は、持っている株の値打ちを、売る方針が示されない限り配当の流れでしか数えない。本業と配当を合わせた稼ぐ力で測ると、価値は今の値段の近くに落ち着く。株主に返す方針が変われば、見方は大きく変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、本業は良いが、資本の配分が悪い会社に見える。型枠は昔の投資をほとんど回収し終え、貸すたびに現金を生む。病院の放射線防護も、失敗の許されない専門の仕事だ。事業だけを見れば、持ち続けたい性質を備えている。
問題は、その現金の行き先だ。本業で稼いだお金は、株主に返されず、別の会社の株に姿を変えて積み上がる。それが本当に株主のためになるのかは、外からは確かめにくい。少数株主にとっては、手の届かない資産だ。
安全域、つまり払う値段と価値の差のゆとりは、持っている株を数えれば大きく見える。しかし、その株が株主に戻る保証はない。筆者は、配当の流れで測った価値を基準にし、株主に返す方針が出るのを待つ。方針が変われば、ここは割安の側に一気に動く。
経営が株主に返す方を選んだ時、この会社の値打ちは一変する。その日がいつ来るのかは、誰にもわからない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は三つある。一つ目は建築関連で、売上の半分を占める。病院の放射線治療室やCT・MRIの部屋を、鉛やコンクリートで囲い、放射線や電磁波が外に漏れないようにする工事だ。子会社のアゼモトメディカルが医療機器の仕組みも扱う。病院の建て替えや機器の入れ替えに合わせて注文が入る。
二つ目は土木関連で、道路や造成地の斜面にコンクリートを吹き付けたり、枠を組んだりして崩れを防ぐ法面工事だ。公共工事が中心で、直近は受注が6割増えた。
三つ目は型枠貸与だ。港や海岸で波を消すテトラポッドのような消波ブロックは、現場で鋼の型枠にコンクリートを流して作る。当社はその型枠を建設会社に貸し、コンクリートの二次製品も売る。型枠の取得額は84億円あるが、ほとんど償却を終えており、貸すたびに高い利益が残る。大きな災害の後の復旧工事で需要が膨らむ。
ほかに不動産の賃貸と海外の事業が少しある。持株会社の下に技研興業、日動技研、筑波工業などの子会社が並ぶ形だ。
売上は2018/03期の118億円から47億円まで縮んだ。大きな工事を絞り、利益の出る専門の仕事に寄せた結果で、利益率はその間に大きく上がった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、型枠と放射線防護の二つにある。消波ブロックの型枠は形ごとに特許や実績があり、全国の港で使われてきた。大量の型枠をそろえて貸せる会社は限られ、新しく入るには大きな投資が要る。放射線を防ぐ工事も、病院が失敗を許さない分野で、実績のある会社に注文が集まる。
ただ、どちらも公共事業と病院の建て替えの波に左右される。型枠は大きな災害がない年は需要が落ち、売上はこの8年で半分になった。
資本効率は見かけほど良くない。本業の利益率は高いが、自己資本の多くは投資有価証券で、ROEは5%前後にとどまる。
経営の資本の使い方に疑問が残る。本業で稼いだ現金を株の買い増しに回し、株主への配当は利益の3%しかない。株の約半分を持つフリージアグループの意向で、この形は長く変わっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
三つの事業は、それぞれ別の市場に立っている。病院の放射線防護は、がんの放射線治療の広がりと、古い病院の建て替えに支えられる。国内の病院の数は減るが、放射線治療やMRIの装置は増え、1病院あたりの工事は大きくなる方向だ。一方で病院の経営は苦しく、建て替えの先送りも多い。
法面工事と型枠は公共事業の市場だ。国土強靱化の予算は続き、災害の復旧と老朽化した施設の補修の需要は底堅い。消波ブロックは、大きな台風や地震の後の復旧で一気に需要が膨らみ、平時は細る。直近は大きな災害がなく、型枠の売上は横ばいだった。
費用の面では、建設資材と人件費の上昇が続く。業界全体では、人手不足で受注に応じきれない会社も出ている。当社は工事の規模が小さく、下請けの手配の難しさが利益を削る場面もある。
競合は、型枠では日建工学や不動テトラなど、放射線防護では大手の建設会社や専門の工事会社だ。どの分野も大きな市場ではなく、数社で分け合う形が続くと筆者は見る。
医療の分野では、放射線治療の装置が高度になり、遮へいに求められる厚さや精度も上がっている。小さな工事会社では対応しにくく、実績のある会社に注文が寄る流れは当社に追い風だ。
資本政策と M&A
資本の使い方が、この会社の評価を決める。配当は年0.18億円で、配当性向は3%に満たない。自社株買いもしていない。その一方で、毎年5億円前後の投資有価証券を買い増し、保有は約85億円に膨らんだ。
株主はフリージア・マクロスが27.5%、夢みつけ隊が22.3%で、フリージアグループで約半分を握る。グループの会社どうしで株を持ち合う形が続いており、少数株主の声で方針が変わる会社ではない。
筆者は、持っている株の価値を、売って株主に返す方針が示されない限り、そこから入る配当の流れでしか数えない。株主優待はない。
TOBや再編の発表はない。グループの方針が変わり、株を売って配当や自社株買いに回すことがあれば、価値の見方は大きく上に変わる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
本業は地味だが強い。型枠はほとんど償却を終え、貸すたびに3割近い利益が残る。災害の多い国で、港と海岸の消波ブロックの需要は消えない。国土強靱化の予算も続く。大きな台風や地震が来れば、型枠の稼働は一気に上がる。
放射線防護の工事も伸びる。がんの放射線治療は広がり、MRIやCTの装置は高度になって部屋の遮へいも厳しくなる。古い病院の建て替えは、先送りされても、いつかは必ず来る。
法面工事の受注は直近で6割増え、繰越の受注も膨らんだ。人手不足で工事の値段は上がり、専門の会社の取り分は増える。
そして持っている株の価値は時価総額を大きく上回る。配当だけでも年2億円を超える。グループの方針が変わり、株を売って株主に返せば、今の値段は大きく安すぎたことになる。
売上を絞って利益の出る仕事に寄せた経営は、規律があると言ってよい。本業の利益率が15%に届いたのは、その成果だ。繰越の受注は30億円と売上の6割を超え、次の数年の土台もある。
慎重な見方
本業の利益率は今が山だ。営業利益率15%はこの8年で最も高く、売上は同じ期間に半分になった。型枠は大きな災害がない年が続けば細り、放射線防護の工事は病院の苦しい経営で先送りされやすい。
型枠はいずれ作り直しが要る。今は償却を終えた型枠を貸しているが、古くなった型枠を作り替える時は、鋼材の値上がりで投資が膨らみ、償却も増える。今の高い利益率は、昔の安い投資の上に乗っている。
資本の使い方はさらに問題だ。本業の現金は株主に返されず、別の会社の株の買い増しに回る。グループで約半分を握る株主の意向で、この形は変わりそうにない。少数株主にとって、持っている株の価値は絵に描いた餅だ。
株の値段が下がれば、自己資本も一緒に縮む。配当の流れも景気で細る。
そもそも、なぜ本業の現金で他社の株を買い続けるのか、その説明は十分ではない。グループの中での資金の動きは、外から見えにくい。少数株主が受け取るのは、利益の3%の配当だけだ。
どちらに重みを置いたか
本業の強さは本物で、強い見方の言い分にも理がある。ただ、持っている株の価値が株主に戻る道が見えない以上、その価値を数に入れるのは早い。慎重な見方の言う資本の使い方の問題は、確率でなく価値の数え方に表した。確率は中立に厚く、上振れと下振れをほぼ同じ重みにした。株主に返す方針が出れば、判断は大きく変わる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 541 円88 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 14 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 272 円44 億円、今との差 +5.5%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 887 円144 億円 | 25 円4 億円 | +253.4% | +13.5% | 73 円12 億円 |
| やや楽観 | 22% | 744 円121 億円 | 15 円3 億円 | +194.3% | +11.4% | 167 円27 億円 |
| 中立 | 38% | 597 円97 億円 | 12 円2 億円 | +136.1% | +9.0% | 232 円38 億円 |
| やや悲観 | 22% | 284 円46 億円 | 12 円2 億円 | +14.8% | +1.4% | 65 円11 億円 |
| 悲観 | 10% | 173 円28 億円 | 9 円2 億円 | −29.5% | −3.4% | 18 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 541 円88 億円 | 14 円2 億円 | +115.0% | +8.0% | 555 円90 億円 |
今の株価時価総額 258 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 防災と病院の建て替えが重なり、本業が厚くなる 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 887 円144 億円
大きな台風や地震の後の復旧と、国土強靱化の予算の上積みが重なり、型枠の稼働が上がる。償却を終えた型枠が多いので、売上の伸びがそのまま利益に乗る。病院では放射線治療とMRIの設備の更新が進み、放射線防護の工事の件数も増える。法面工事は人手不足で専門の会社の取り分が増える。本業の営業利益は今の2倍近くになり、持っている株の配当も増える。株主への配当も少しは増えるが、資本の使い方の形は大きくは変わらない。それでも本業の稼ぐ力だけで、今の値段を大きく上回る価値が生まれる10年になる。資本の使い方がこのままでも、本業の利益と配当の受け取りが厚くなる分、株主の価値は確実に積み上がっていく。
- 建築関連(医療施設の放射線防護・電磁波シールド工事):数量 130(工事の件数(件・推定))× 価格 0.32(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 7 億円。件数 1.18 倍・1 件 1.45 倍
- 土木関連(法面保護工事):数量 80.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.18(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。件数 1.14 倍
- 型枠貸与関連(消波根固ブロック用の鋼製型枠の貸与・二次製品):数量 3,200(貸し出す型枠の基数(基・推定))× 価格 0.01(1 基あたりの年間の売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 7 億円。大きな災害の復旧で稼働が上がる
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 144 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:災害の復旧と病院の更新が同時に重なる必要があり、型枠の稼働が山の年に近い水準で10年続く前提なので、重みは小さく置いた。
やや楽観 22% 国土強靱化と放射線治療の広がりが続く 利益 9 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 744 円121 億円
国土強靱化の予算は続き、法面工事と型枠は今の水準を保つ。病院の放射線治療の広がりで、放射線防護の工事は件数が少し増える。型枠の一部は作り直しが始まり、償却が少し増えるが、利益率は高いままだ。本業の営業利益は今より3割ほど増え、配当の受け取りも物価並みに増える。株主への配当は少し増えるだけで、現金はやはり株の買い増しに回る。本業の堅さが価値を支える筋書きだ。病院の工事は値段が通りやすく、資材の値上がりも転嫁できる。法面工事も人手不足で単価が上がり、利益率は今に近い水準を保つ。持っている株の配当の受け取りも少しずつ増える。
- 建築関連(医療施設の放射線防護・電磁波シールド工事):数量 120(工事の件数(件・推定))× 価格 0.31(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 6 億円。件数 1.09 倍
- 土木関連(法面保護工事):数量 75.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.17(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。件数 1.07 倍
- 型枠貸与関連(消波根固ブロック用の鋼製型枠の貸与・二次製品):数量 3,000(貸し出す型枠の基数(基・推定))× 価格 0.01(1 基あたりの年間の売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。基数を保つ
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 117 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の予算と放射線治療の広がりは開示と政策で確かめられる。ただ型枠は災害の波に左右され、中立より低く置いた。
中立 38% 中立:本業は堅く、株は積み上がるだけ 利益 6 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 597 円97 億円
病院の放射線防護の工事は件数が横ばいで、値段は物価並みに上がる。法面工事は公共事業の予算に沿って件数が少し減る。型枠は災害の少ない年と多い年をならして基数が1割減り、古い型枠の作り直しで償却が少しずつ増える。営業利益率は直近の15%から11%前後に落ち着く。持っている株の配当は物価並みに増え、純利益の3割を支える。株主への配当は今の形のまま少なく、利益の大半は自己資本と株の買い増しに積み上がる。本業は堅いが、株主の手に届く価値は限られる10年になる。グループの方針が変わらない限り、株主の取り分は配当の受け取りと本業の利益の一部にとどまる。
- 建築関連(医療施設の放射線防護・電磁波シールド工事):数量 110(工事の件数(件・推定))× 価格 0.30(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。件数横ばい・1 件 1.34 倍(物価並み)
- 土木関連(法面保護工事):数量 66.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.16(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。件数 0.94 倍・1 件 1.34 倍
- 型枠貸与関連(消波根固ブロック用の鋼製型枠の貸与・二次製品):数量 2,700(貸し出す型枠の基数(基・推定))× 価格 0.01(1 基あたりの年間の売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。基数 0.9 倍・単価 1.34 倍・作り直しの償却を足す
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の山の利益率を下げ、災害の波をならした中心の筋書き。資本の使い方が変わらない前提を最も厚く置いた。
やや悲観 22% 災害の少ない年が続き、病院も先送り 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 284 円46 億円
大きな災害のない年が続き、型枠の稼働が落ちる。病院は人件費の上昇で経営が苦しく、放射線防護の工事は先送りが増える。法面工事も公共事業の予算が絞られ、件数が減る。資材と人件費の上昇を値段に乗せきれず、営業利益率は5%前後に落ちる。持っている株の配当が純利益の大半を占める形になる。株主への配当は少ないまま変わらない。赤字にはならないが、本業の稼ぐ力は細り、株主の価値は伸びない。持っている株の値段も景気で揺れ、自己資本は思ったほど増えない。型枠の作り直しの投資も先送りが続き、貸せる型枠は少しずつ減っていく。
- 建築関連(医療施設の放射線防護・電磁波シールド工事):数量 95.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.27(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。件数 0.86 倍
- 土木関連(法面保護工事):数量 60.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.15(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。件数 0.86 倍
- 型枠貸与関連(消波根固ブロック用の鋼製型枠の貸与・二次製品):数量 2,300(貸し出す型枠の基数(基・推定))× 価格 0.01(1 基あたりの年間の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。基数 0.77 倍
倍率:ROE 1.8%(3.0 ÷ 167)と資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は 3.0 ÷ 7.75% = 39 億円で、その内の PER 10.5 倍とした。悲観の床(売れる資産の税後に戻り方 0.5 を掛けた 28 億円)と並ぶ水準。自己資本 167 億円に対する PBR は 0.19 倍で中立より低い。谷の年は営業利益が 2.1 億円と小さく、今の純負債 15 億円を足した EV ÷ 営業利益は 20 倍を超えるが、配当の受け取りが利益を支える筋書きで、利益の倍率と床の両方で測った。
確率:型枠の売上はこの8年で半分になった実績がある。病院の経営難も続く前提で、上振れの二つとほぼ同じ重みを置いた。
悲観 10% 構造的に負け、資産を抱えるだけの会社に 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 173 円28 億円
防災の予算が他の政策に回され、法面工事と型枠の需要が細る。病院の放射線防護の工事も、大手の建設会社と専門の会社に取られ、本業は赤字に近づく。古い型枠の作り直しも進まず、貸せる型枠が減る。持っている株の配当で会社は回るが、株主への配当は今の少なさのままだ。グループの意向で資本の使い方は変わらず、株の価値は帳簿にあるだけで少数株主には届かない。資産を抱えるだけの会社として、値段は持っている株の一部でしか測られなくなる。持っている株の値下がりで自己資本も縮み、配当の受け取りも細る。少数株主に残るのは、乏しい配当だけになる。
- 建築関連(医療施設の放射線防護・電磁波シールド工事):数量 80.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.25(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。件数 0.73 倍
- 土木関連(法面保護工事):数量 50.0(工事の件数(件・推定))× 価格 0.14(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。件数 0.71 倍
- 型枠貸与関連(消波根固ブロック用の鋼製型枠の貸与・二次製品):数量 1,800(貸し出す型枠の基数(基・推定))× 価格 0.01(1 基あたりの年間の売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。基数 0.6 倍
倍率:本業が赤字の筋書きなので PBR で測る。床は売れる資産の税後から負債を引き、戻り方を掛けた額(floor_assets_oku 28 億円)。今の自己資本 129.2 億円に対する PBR 0.217 倍。市場の倍率は使っていない。
確率:公共事業と病院の波が同時に下を向く筋書きで、資産が厚く清算の心配はないので10%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築関連(医療施設の放射線防護・電磁波シールド工事)
病院の放射線治療室・CT・MRI 室の遮へい工事と医療機器の仕組み。
| 数量工事の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 0.22 | 24 | 4 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.30 | 32 | 5 |
取り方:セグメント売上 24.20 億円・利益 4.28 億円は開示。件数の開示は無く、1 件 0.22 億円で 110 件と推定。数量は病院の放射線治療・画像診断の部屋の数(実質)で、物価の分は 1 件の値段に入れる。
土木関連(法面保護工事)
道路・造成地の斜面の吹付・法枠などの崩落防止工事。
| 数量工事の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.12 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 0.16 | 11 | 1 |
取り方:セグメント売上 8.34 億円・利益 1.39 億円は開示。1 件 0.12 億円で 70 件と推定。直近の受注は 14.6 億円(+60%)で、繰越が 10.6 億円ある。
型枠貸与関連(消波根固ブロック用の鋼製型枠の貸与・二次製品)
消波ブロックを作る鋼製型枠の貸し出しとコンクリート二次製品の販売。
| 数量貸し出す型枠の基数(基・推定) | 価格1 基あたりの年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.00 | 13 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 0.01 | 16 | 4 |
取り方:セグメント売上 13.47 億円・利益 3.77 億円は開示。型枠の基数の開示は無く 3,000 基と推定。型枠の取得額 84 億円はほぼ償却済みで、今の償却費は年 0.5 億円。作り直しの分だけ新しい値段で償却を足す。
リスクと懸念
資本の使い方と少数株主
本業の現金は株主に返されず、投資有価証券の買い増しに回る。フリージアグループで株の約半分を握り、この方針は少数株主の声では変わらない。持っている株の価値が株主に届かないまま、年月だけが過ぎるおそれがある。
持っている株の値下がり
投資有価証券は約85億円で、自己資本の6割を超える。株式市場が崩れれば自己資本は大きく減り、受け取る配当も細る。利益の3割近くはこの配当に頼っている。
災害と公共事業の波
型枠の需要は大きな災害の後の復旧で膨らみ、平時は細る。売上はこの8年で半分になった。国土強靱化の予算が絞られれば、法面工事と型枠の両方が落ちる。
型枠の作り直し
今の高い利益率は、償却を終えた型枠を貸していることに支えられる。作り直す時は鋼材の値上がりで投資が膨らみ、償却が増えて利益率は下がる。
病院の経営難
放射線防護の工事は病院の建て替えと機器の入れ替えに頼る。病院の経営は人件費と物価で苦しく、工事の先送りが続けば売上の半分を占める柱が細る。
今後の分かれ目
- 投資有価証券を売り、配当や自社株買いに回す方針が出たら
- 持っている株の価値が株主に届く道が開く。余った資産として数え、価値の見方を大きく上げる。
- フリージアグループが残りの株の取得を発表したら
- 株主の受け取りは買付けの条件で決まる。分析の前提が変わる。
- 大きな災害の復旧で型枠の稼働が上がったら
- 数年は利益が膨らむ。10年でならせば一時の山として扱う。
- 放射線防護の受注が3年続けて伸びたら
- 病院の需要が本物と確かめられる。やや楽観の重みを上げる。
- 型枠の作り直しの大きな投資が始まったら
- 償却が増えて利益率が下がる。中立の利益率を見直す。
見ておくもの
- 配当と自社株買いの方針
- 投資有価証券の売り買い
- 放射線防護工事の受注と繰越
- 型枠貸与の売上と災害の復旧工事
倍率と資本コストの決め方
三つの事業を件数・基数(実質)×1件の値段(物価込み)で積み、利益率は直近の山より下げた。型枠の償却は物価で増やさず、作り直しの分だけ新しい値段で足した。投資有価証券は売る方針がないので配当を利益に残して価値は足さず、悲観の床にだけ税後×戻り方0.5で入れた。ROEがkを下回るので倍率は1÷k=12.9倍を上限とした。今のPBR0.3倍台やPERは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.25→13.33 倍・やや楽観 PER 11.6→13.33 倍・中立 PER 10.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。同じ特殊土木の大豊建設(8.2%)より借金と循環が軽く、ライト工業(7.5%)より規模が小さく災害の波に揺れる分だけ高い。フリージアグループの意向は k に足さず、余った資産を足さない数え方と戻り方 0.5 で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.50%。