結論
オリエンタル白石は、コンクリート橋(PC橋)と、地中に巨大な箱を沈めて掘るニューマチックケーソンを主力とする、特殊土木の中堅だ。2026年3月期は売上高689億円、営業利益53億円、純利益34億円。売上の8割強を建設事業が占める。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正、割安とも割高とも言い切れない、というものだ。理由は二つある。利益が山を過ぎていること。そして、会社が資本コストをやっと上回る程度にしか稼げていないことだ。営業利益率は2024年3月期の9.7%を頂点に7.8%まで下がり、会社は今期さらに5%台への減益を見込む。前の中期計画は売上も利益も目標に届かなかった。
良い面もある。純現金が約100億円あり、自己資本比率は6割を超える。2008年に経営が行き詰まった会社が、いまは財務の厚い会社に変わった。伊藤忠商事が筆頭株主に入り、新しい中期計画は総還元性向70%程度を掲げる。
ただ、主力のPC橋は新設が細り、補修補強で穴を埋める構図だ。ケーソンは大型工事の遅れと事故で利益が振れる。10年でならした利益は今より1.5倍ほどに伸びるが、資本の厚さが利益率を薄めるため、倍率は高くならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オリエンタル白石は「良い技術を持つが、良い商売とまでは言えない会社」だ。
まず、利益の質を見る。建設は工事が進むほど立て替えるお金が増え、稼いだ利益の多くが運転資金に吸われる。ROEは6%台で、資本コストに届いていない。純現金が厚いのは安心材料だが、その現金が稼ぎを生んでいない面もある。
次に、堀と経営。特許から出発した技術は本物だが、公共工事の価格を決める力は限られる。ケーソンの事故や鋼構造物の再製作で信頼を傷めた経緯があり、経営の腕を信じるには、中期計画の営業利益68億円を達成する実績が要る。
最後に、安全域。今の時価総額は自己資本を下回るが、PBR1倍割れは割安の根拠にならない。稼ぐ力が資本コストにぎりぎり届く会社の価値は、帳簿の自己資本に等しいか少し下だ。10年先まで持ち続けたい会社ではあるが、払ってよい値段に大きな余白はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は建設事業で、売上の82%を占める。残りは鋼橋を作る鋼構造物事業が11%、作業船を持つ港湾事業などが数%だ。
建設の中心は三つある。一つ目はPC橋やPC土木だ。PCとは、コンクリートに鋼線で圧力をかけて強くする工法で、高速道路や鉄道の橋を架ける。会社の源流は、この工法の特許を日本で実施するために作られた。二つ目はニューマチックケーソンだ。地中に置いた鉄筋コンクリートの箱に圧縮空気を送り、中で人や機械が掘って沈める。橋脚の基礎や地下の大型構造物に使う。三つ目は老朽化した橋の補修補強で、受注残が積み上がっている。
PC建築は物流倉庫などの建築で、利益の割合は小さい。
鋼構造物事業は鋼橋の設計・製作・架設を行う。鋼橋の発注が減る中で、再製作を迫られた大きな工事を抱え、収益は立て直しの途中だ。港湾事業は新しい作業船を含む2船体制で、国の港湾工事を請け負う。
発注者は国や高速道路会社、鉄道会社、自治体が中心だ。海外は台湾とインドネシアに絞る。
収益の山は工事の完成時期に偏り、期末に集中する。大型ケーソンは1件で数十億円になり、着工と完成の時期が年の利益を左右する。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、特許の歴史が育てた技術と実績にある。
PC橋はピーエス・コンストラクション、住友三井建設などとの競争になる。大手ゼネコンが手を出しにくいニッチだが、橋の新設自体が細っており、堀が深くても市場が狭い。ケーソンは大手ゼネコンも持つ工法で、会社の強みは経験の長い技術者と大型の実績だ。補修補強は点検が制度になった分、需要は安定している。
弱い所ははっきりしている。公共工事は入札で価格が決まる。大型ケーソンの着工遅れや事故が続き、前の中期計画では営業利益が目標の62億円に届かず53億円だった。連結子会社の鋼構造物事業も大型の遅れで足を引っ張った。ROEは6%台と、資本コストに届いていない。
資本の使い方は変わってきた。以前は配当性向50%だったが、新計画は自己資本に対する配当4%を新たに掲げ、総還元性向を70%程度とする。筆者はこの転換を評価する。ただ、投資総額200億円のうち100億円が使い道の決まらない「戦略投資」で、ここが資本の無駄になるかが最大の宿題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の土木需要は底堅いが、新設は細る。道路橋は約73万橋あり、建設後50年を超える橋の割合は2025年の42%から2035年には65%に上がる。政府は2026年度から5年間で20兆円強の国土強靱化を進め、上下水道や橋の老朽化対策に約10兆円を充てる。補修補強は伸びる側にいる。
一方で、PC橋の新設と鋼橋は減る。新設の橋は路線の整備が一巡し、鋼橋は発注量が落ちている。会社は補修補強と自治体の包括的な維持管理で、この穴を埋めようとしている。
制約は人手だ。2024年の残業規制以降、技能者が足りず、受注できる量に上限がある。そのかわり、資材と人件費の上昇を価格に載せる流れは定着した。
ケーソンは大都市の再開発、下水道の貯留施設、橋脚の基礎などが需要先だ。大型工事は数が少なく、1件の遅れが年の利益を揺らす。
同業は、大成建設傘下のピーエス・コンストラクション、補修に特化したショーボンドホールディングスなど。補修ではショーボンドの技術と実績が先行しており、会社は自治体向けの維持管理で差別化を図る。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。2026年3月期までは配当性向を軸にしていたが、新しい中期計画は2029年3月期までに配当を自己資本の4%、総還元性向を70%程度とする。3年で還元100億円を見込む。
同じ期間の投資は200億円。うち経常投資が60億円、成長投資が40億円、使い道を決めていない戦略投資が100億円である。戦略投資にはM&Aも含まれ、会社は資本コストを上回る収益とシナジーが見込める相手に限ると言う。
株主構成では、伊藤忠商事が2023年5月の資本業務提携に伴う第三者割当で議決権の12%余りを持つ筆頭株主になった。商社の販路や海外の人脈を使って、台湾・インドネシアなどの海外と新規事業を広げる狙いがある。他方、増資で株数は増え、一株の価値は薄まった。
純現金は約100億円だが、工事の前受金や未払金の見合いが大きい。会社も借入を含めて自己資本に対する借入の比率0.2倍程度まで使う前提で、現金を余らせて眠らせる姿勢ではない。買収される側になる可能性は、伊藤忠が筆頭株主にいるため低く、10年で完全子会社化まで進む確率を1割強とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
老朽化した橋の補修補強は、10年単位で続く確実な仕事だ。会社はPC技術を土台に、橋の診断から補修までを一貫して請け負える。自治体の包括維持管理が広がれば、小さな自治体が頼れる相手になる。
ケーソンも見直す価値がある。都市の再開発と下水の貯留施設は途切れず、大型工事は少数の会社しか受けられない。遅れた工事が完成すれば、利益は一気に戻る。前の中期計画で営業利益が53億円だったのは、事故と遅延という一時的な要因が重なったからだ。
新しい中期計画は営業利益68億円、ROE8%以上、総還元性向70%程度と数字を明示した。伊藤忠の販路で台湾・インドネシアが育ち、環境事業が新たな柱になる可能性もある。純現金と厚い自己資本があるため、損失が出ても耐えられる。
時価総額は自己資本を下回り、計画どおりなら還元だけで毎年1割近い利回りになる。
鋼構造物の再構築が済めば、連結の足を引っ張る赤字が消える。それだけで営業利益は数億円増え、利益率の改善が見えやすくなる。
慎重な見方
利益はすでに山を過ぎた。営業利益率は2024年3月期の9.7%から7.8%に落ち、今期は5%台への減益を会社自身が見込む。第1四半期の経常利益も市場予想を大きく下回った。
前の中期計画は売上も利益もROEも未達だった。新しい計画の営業利益68億円は、過去最高に近い水準で、同じ未達の繰り返しになりかねない。大型工事の遅れ、事故、連結子会社の損失という癖は、一度の計画で直るものではない。
主力のPC橋は新設が細り、鋼橋の発注も減っている。補修補強は伸びるが、ショーボンドなど先行する会社が強い。人手が足りないため、需要が増えても売上は伸ばせない。
戦略投資100億円は使い道が決まっていない。買収は、資本コストを超える収益を出せないまま終わる例が多い。ROEが資本コストに届かない会社が現金を積んで買収に動くのは、価値を壊す典型だ。
会社は海外を台湾とインドネシアに絞ると言うが、小さな会社が遠い国で大型工事を取れば、見積もりの甘さで損を出す危険がある。日本の建設会社の海外進出は、損失で終わる例が多い。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠があるが、慎重な見方がやや強い。補修補強の需要は確かだが、会社の稼ぐ力は資本コストをかろうじて超える程度で、利益率の回復は実績が伴っていない。中立に最も厚く確率を置き、やや悲観と悲観の合計を3割台半ば、強気側を3割弱とした。悲観は、大型工事の損失と鋼構造物の赤字が続き、公共の補修が先送りされる構造的な負けまで掘った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 478 円615 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 203 円261 億円)。 今の値に割り戻すと 373 円480 億円、今との差 +12.0%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 887 円1,142 億円 | 283 円364 億円 | +251.4% | +13.4% | 94 円120 億円 |
| やや楽観 | 20% | 685 円881 億円 | 249 円320 億円 | +180.4% | +10.9% | 187 円240 億円 |
| 中立 | 38% | 540 円695 億円 | 224 円288 億円 | +129.4% | +8.7% | 290 円374 億円 |
| やや悲観 | 22% | 234 円301 億円 | 160 円206 億円 | +18.4% | +1.7% | 87 円112 億円 |
| 悲観 | 12% | 107 円138 億円 | 85 円110 億円 | −42.2% | −5.3% | 23 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 478 円615 億円 | 203 円261 億円 | +104.4% | +7.4% | 680 円876 億円 |
今の株価時価総額 333 円429 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 補修補強とケーソンが当たり、計画の利益率が定着する 利益 72 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 887 円1,142 億円
橋の老朽化が進み、国土強靱化の予算が執行され、補修補強と自治体の包括維持管理が伸びる。土木の施工量は今より1割余り増える。ケーソンは都市の再開発と下水の貯留施設で大型工事が途切れず、遅れていた工事が完成して利益が戻る。伊藤忠の人脈で台湾・インドネシアの受注が育ち、環境事業も小さな柱になる。鋼構造物は再構築が進んで黒字になり、港湾は船の稼働が上がる。営業利益率は過去の山と同じ9%台後半に達する。人手の制約があるので売上は1,000億円ほどが限度だ。還元は総還元性向70%程度を守り、ROEは10%台に乗る。
- PC橋・ケーソン・補修補強:数量 53.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 721 億円・営業利益 83 億円。施工量1.12倍、価格1.34倍、営業利益率11.5%(現在の水準を保つ)
- PC建築:数量 14.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 131 億円・営業利益 9 億円。施工量1.1倍、利益率7%
- 鋼構造物(鋼橋):数量 9.9(施工量(万人日換算。実質。推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。鋼材を含む))→ 売上 106 億円・営業利益 3 億円。施工量1.0倍、利益率3%(再構築が完了)
- 港湾・工場製品ほか:数量 120(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 0.55(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 4 億円。事業規模1.2倍、利益率6%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.86 倍、時価総額 1,142 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修補強の拡大、ケーソンの遅れの解消、海外の黒字化が重ならなければならない。前の中期計画が未達だった履歴から8%にとどめる。
やや楽観 20% 中期計画に近い姿で、利益率が少し戻る 利益 60 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 685 円881 億円
補修補強の受注が積み上がり、自治体の維持管理が広がる。ケーソンは遅れた大型工事を片づけ、事故が減って利益が安定する。PC橋の新設は細るが、補修補強がその穴を埋める。鋼構造物の再構築は進むが、鋼橋の発注減で利益は薄いままだ。台湾・インドネシアは小さな黒字で、戦略投資は買収を含めて資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。営業利益率は8%台後半で、売上は1,000億円に届かない。総還元性向70%程度は守られ、ROEは9%ほどになる。優良とまでは言えないが、安定した特殊土木の会社として評価される。売上と利益の伸びは物価と補修の積み上がりが中心で、数量が急に伸びる筋書きではない。
- PC橋・ケーソン・補修補強:数量 50.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 682 億円・営業利益 72 億円。施工量1.06倍、価格1.34倍、営業利益率10.5%
- PC建築:数量 13.2(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 124 億円・営業利益 8 億円。施工量1.04倍、利益率6.2%
- 鋼構造物(鋼橋):数量 9.1(施工量(万人日換算。実質。推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。鋼材を含む))→ 売上 98 億円・営業利益 1 億円。施工量0.92倍、利益率1.5%
- 港湾・工場製品ほか:数量 110(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 0.55(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。事業規模1.1倍、利益率4%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.69 倍、時価総額 881 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修補強が伸び、遅れた工事が片づく筋書きで、会社の中期計画に近い。需要の足場は固いので2割を置く。
中立 38% 補修が穴を埋め、利益率は山から戻ったまま 利益 51 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 540 円695 億円
施工量はほぼ横ばいで、売上の伸びは物価の分にほぼ限られる。PC橋の新設と鋼橋は細るが、補修補強とケーソンが穴を埋める。大型工事の遅れは時々起き、営業利益率は9%台前半の過去の山には届かず、7%台後半で落ち着く。鋼構造物は黒字と赤字の間をさまよい、港湾は小さな黒字にとどまる。戦略投資は小さな買収に使われ、収益は資本コストを少し上回る程度だ。総還元性向70%程度は守られ、ROEは8%近辺になる。会社の中期計画の2031年3月期の売上900億円に近い水準に届くが、営業利益率は計画の下にとどまる。筆者はこの姿を、会社の実力に最も近い見立てとして置く。
- PC橋・ケーソン・補修補強:数量 48.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 643 億円・営業利益 61 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率9.5%(現在の推定11.5%から戻る)
- PC建築:数量 12.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 119 億円・営業利益 7 億円。施工量1.0倍、利益率5.5%
- 鋼構造物(鋼橋):数量 8.4(施工量(万人日換算。実質。推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。鋼材を含む))→ 売上 90 億円・営業利益 0 億円。施工量0.85倍、収支均衡
- 港湾・工場製品ほか:数量 100(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 0.55(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。事業規模1.0倍、利益率3%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.63 倍、時価総額 695 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:二人の議論の落としどころで最も厚い。補修の需要は確かだが、人手で数量が頭打ち、利益率は直近の山から戻ったままの姿とみる。
やや悲観 22% 補修の予算が先送りされ、利益率が過去並みに沈む 利益 33 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 234 円301 億円
公共予算の制約で、点検はしても補修は先送りされる運用が広がる。施工量は今より1割ほど減り、入札の競争が強まって物価の上昇分を価格に載せきれない。ケーソンでは大型工事の遅れや事故が再び出て、利益が大きく振れる。鋼橋の発注は細り、鋼構造物は赤字が続く。営業利益率は5%台に落ち、ROEは5%と資本コストに届かない。会社は黒字を保つが、還元は少し絞られる。戦略投資で買った会社が期待どおり稼げず、現金の一部が失われる。構造は壊れないが、2020年代半ばの利益は一時の追い風だったと市場が受け入れる10年になる。
- PC橋・ケーソン・補修補強:数量 43.2(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 562 億円・営業利益 42 億円。施工量0.9倍、価格1.30倍、営業利益率7.5%
- PC建築:数量 11.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.10(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 106 億円・営業利益 4 億円。施工量0.92倍、利益率4%
- 鋼構造物(鋼橋):数量 6.9(施工量(万人日換算。実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目。鋼材を含む))→ 売上 71 億円・営業利益 −1 億円。施工量0.7倍、赤字
- 港湾・工場製品ほか:数量 90.0(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 0.53(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 0 億円。事業規模0.9倍、利益率1%
倍率:ROE 5.1%(純利益33億円÷自己資本642億円)。ROEがk 7.5%に届かないので、伸びても価値は増えず、PERの上限は1÷k=12.9倍。公共の補修が先送りされ、入札が厳しくなる局面で、上限の7割の9.0倍に置いた。
確率:公共予算の制約で補修が先送りされ、価格競争が強まる局面。会社の過去の利益率の動きを見ても起きやすい姿なので2割強を置く。
悲観 12% 大型工事の損失と鋼橋の赤字が続き、優良さを失う 利益 17 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 107 円138 億円
ケーソンの大型工事で事故や追加の損失がまた出て、受注を絞らざるを得なくなる。鋼構造物は再製作の損失に続き赤字が止まらず、一部の撤退を迫られる。補修予算の先送りと入札競争の激化で、土木の利益率は5%まで下がる。戦略投資の買収は失敗し、現金が食われる。作業船は稼働が上がらず、港湾は赤字になる。純利益は17億円ほどまで落ちる。もう優良な特殊土木の会社とは見なされず、信用に傷がついて受注も細る。還元は配当を絞って維持するだけになる。純現金があるため破綻はしないが、株主のための利益はほとんど残らない。経営陣の交代や、親しい取引先との再編の話が出てもおかしくない局面である。
- PC橋・ケーソン・補修補強:数量 38.4(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 13(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 480 億円・営業利益 24 億円。施工量0.8倍、価格1.25倍、営業利益率5%
- PC建築:数量 10.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 8.75(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 94 億円・営業利益 2 億円。施工量0.85倍、利益率2.5%
- 鋼構造物(鋼橋):数量 5.0(施工量(万人日換算。実質。推定))× 価格 9.60(1人日あたり売上(万円・名目。鋼材を含む))→ 売上 48 億円・営業利益 −2 億円。施工量0.5倍、赤字
- 港湾・工場製品ほか:数量 80.0(事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 0.51(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 −1 億円。事業規模0.8倍、赤字
倍率:稼ぐ力は純利益17億円で、k 7.5%で割ると約220億円。ROEは3%でkに届かず、PERの上限は1÷k=12.9倍。ただし悲観はやや悲観(9.0倍)より倍率を高くしない。その9割の8.1倍とし、今の自己資本531億円に対する0.26倍にあたる。営業利益が小さいのでEV÷営業利益の見方は意味がない。
確率:ケーソンの事故再発、鋼構造物の赤字継続、補修予算の先送りが重なる構造的な負け。過去に経営が行き詰まった履歴があるが、今は純現金で耐える力が増したので1割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
PC橋・ケーソン・補修補強
PC橋やPC土木、ニューマチックケーソン、橋の補修補強。国や高速道路会社、自治体が主な発注者。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 48.0 | 10 | 480 | 55 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 13 | 643 | 61 |
取り方:建設事業の売上は568.9億円(売上の82.4%)。そこから建築を引いた約480億円を土木と推定し、営業利益も開示がなく、全社53億円と事業ごとの粗利率から約55億円と推定した。労務量は開示がなく、PC部材などの材料を含むので1人日あたり売上を10万円とみて約48万人日と置いた。物価の分は価格に入り、数量は人手の制約を受ける実質の量。
PC建築
プレキャストコンクリートを使った物流倉庫・工場・集合住宅などの建築。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.7 | 7.00 | 89 | 7 |
| 10 年後 中立 | 12.7 | 9.38 | 119 | 7 |
取り方:建設事業のうち建築を売上の約13%、89億円と推定し、営業利益を7億円と置いた(開示なし)。1人日あたり売上を同領域の建築請負にあわせて7万円とみて約12.7万人日と置いた。
鋼構造物(鋼橋)
鋼橋の設計・製作・架設。連結子会社が担い、鋼橋の発注減と再製作工事で収益が傷んでいる。
| 数量施工量(万人日換算。実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。鋼材を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.9 | 8.00 | 79 | −6 |
| 10 年後 中立 | 8.4 | 11 | 90 | 0 |
取り方:売上構成は鋼構造物が11.5%、約79億円。中期計画は再製作の完遂で収益回復を掲げており、営業損益は赤字と推定して約6億円の赤字と置いた(開示なし)。鋼材を含み1人日あたり売上を8万円とみて約9.9万人日と換算した。
港湾・工場製品ほか
作業船を持つ港湾事業、PC部材の外販、関係会社の小さな事業。
| 数量事業の規模(億円。今の値段で測った実質、推定) | 価格規模1億円あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.41 | 41 | −3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.55 | 55 | 2 |
取り方:全社売上689億円から上の三つを引いた約41億円。港湾は2船体制の稼働率が課題で小さな赤字と推定した。事業に投じている資産の規模は開示がなく約100億円と推定し、売上をその比率で割った。
リスクと懸念
ケーソン工事の遅れと事故
前の中期計画が未達だった主因は、大型ケーソンの着工遅延と事故だった。大型工事は数が少なく、1件の遅れが年の営業利益の1割以上を動かす。安全文化の立て直しを重点課題に掲げるが、効果は実績が出るまで分からない。
鋼構造物事業の赤字
鋼橋の発注量が減り、再製作と再架設を迫られた工事も抱える。会社は事業の再構築で回復を掲げるが、市場が縮む中で黒字化できるかは不確かだ。撤退や追加の損失が出れば、全社の利益を数億円単位で削る。
PC橋の新設の縮小
道路・鉄道の新設橋は路線整備が一巡し、数が細る。補修補強で穴を埋められなければ、主力の土木の数量が減る。補修では先行するショーボンドなどとの競争になる。
戦略投資の失敗
投資総額200億円のうち100億円は使い道が決まっていない。買収は資本コストを超える収益を出せないまま終わる例が多い。ROEが資本コストにやっと届く会社が現金を使うので、失敗した時の価値の毀損は大きい。
人手不足と公共予算
技能者が足りず、受注を増やしても施工量が伸びない。公共工事の発注者は予算の上限で値段を決めるため、補修の先送りや入札競争が強まれば価格を転嫁しきれない。
財務の脆さの履歴
2008年に巨額の赤字で自己資本が大きく減り、経営が行き詰まった。今は純現金と自己資本比率6割超で状況は違うが、大型工事の損失が重なれば体力を失う。過去20年に株式の希薄化が3回あり、増資への耐性も弱い。
今後の分かれ目
- 補修補強の受注残が積み上がり、自治体の包括維持管理を複数受注する
- 強気側へ確率を移してよい。土木の利益率が10%台を保つ根拠になる。
- ケーソンで新たな大型工事の遅れや事故が出る
- 慎重側へ確率を寄せる。前の中期計画と同じ癖が直っていないと分かるので、利益率の戻りを小さく見る。
- 鋼構造物事業の損失が縮小し、黒字に転じる
- 連結事業の再構築が実を結んだサインで、中立の鋼構造物の収支均衡を黒字側に直す。
- 戦略投資の100億円で、資本コストを大きく上回る買収が発表される
- 事業の幅が広がるなら評価を上げる。割高な買収なら、慎重側の確率を厚くする。
- 伊藤忠商事が持ち株を増やす、または買い取りを提案する
- 買収価格は事業価値より高く出る可能性がある。10年の筋書きとは別に上振れとして考える。
- 総還元性向70%が守られず、配当の自己資本に対する4%の方針が崩れる
- 資金繰りか損失のサインとして、やや悲観以下の筋書きを重くする。
見ておくもの
- 土木・建築・鋼構造物の部門別営業利益率(とくに鋼構造物の黒字化)
- 補修補強の受注残と自治体の包括維持管理の受注件数
- ケーソン大型工事の進捗と事故の有無
- 戦略投資100億円の使い道と買収の採算
- 総還元性向と純現金の推移、伊藤忠商事の持ち株比率
倍率と資本コストの決め方
セグメントは労務量(実質)と1人日あたり売上(名目)で積み、物価3%を価格に入れ、数量は人手の制約から0.85〜1.0倍を基本とした。本社費は各部門に含めた形で営業利益を置いた。倍率は k 7.5%(基本7.5%に循環+0.25%)とg 4%から式で出し、今・過去・同業の市場の倍率は見ていない。中立はROEがkのすぐ上に落ち、PERは下限1÷kに近いので、今の株価が倍でも半分でも動かない。悲観のPERは稼ぐ力(純利益÷k)で確かめた。営業利益は家賃を費用に入れた今と同じ形(新リース会計基準の適用前の形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.7→15.86 倍・やや楽観 PER 11.9→14.69 倍・中立 PER 12→13.63 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。