結論
ナカノフドー建設は、国内でビルや工場を建てる民間向けの建築と、東南アジアでの建設を二本柱にする中堅ゼネコンだ。筆者の結論は「やや割高」。手元の現金は時価総額の7割に当たるが、本業の稼ぎは安定せず、現金も自由には使えない。
直近の決算は絶好調に見える。営業利益は54億円と前の期の6割増で、東南アジアが利益の半分近くを生んだ。ただ、これは繰越工事を一気に消化した山だ。会社自身が今期の営業利益を39億円と、3割落ちると見ている。
強みは財務の軽さだ。実質無借金で、純現金は308億円ある。弱みは三つある。国内の建築は入札と人手で利益が削られ、過去には赤字の期も2度あった。海外の利益は現地の大型案件に左右される。そして大株主の財団が2割を持ち、現金を株主へ戻す力が弱い。
中立の筋書きでは、10年後の営業利益は60億円前後だ。現金のうち事業に要らない分は半分しか価値に数えていない。それでも10年後の価値を資本コストで割り戻すと、今の時価総額に届かない。今の値段は、海外の好調が続くことを織り込みすぎている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ナカノフドー建設は「安全だが、長く持ちたい会社ではない」。
事業の本質は、工事を請け負う手間賃だ。建物を建てる資金は発注者が先に払い、会社は施工の人手を管理して差額を得る。大きな設備は要らず、事業の投下資本は小さい。その意味で、少ない資本で回る良さはある。ただ、稼ぎの大きさは景気と人手に左右され、10年後の利益は予想しにくい。
一番の論点は現金の扱いだ。純現金308億円のうち、約150億円は前受金や未払金に左右される運転資金の波とみて、事業に要る分に数えた。残りの約150億円は余った現金だが、財団が筆頭株主の会社で、戻る保証は弱い。そこで半分しか価値に数えていない。
安全域とは、悪い筋書きでも元本を割りにくいことだ。この会社の悲観の床は、現金と売れる資産で決まり、今の時価総額の6割ほどにとどまる。つまり安全域は、今の値段には十分に乗っていない。
買い増したくなるのは、現金の戻しが明確になった時か、海外の利益が山を越えても落ちないと確かめられた時だ。今はどちらも確かめられていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。一つは国内建設だ。工場、ホテル、倉庫、学校などを、民間の発注者から請け負って建てる。完成工事の約9割は民間向けで、官公庁は1割ほどにとどまる。直近の売上は755億円、利益率は3%に届かない。
もう一つは東南アジアの建設だ。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムに現地法人を持ち、日系企業の工場や商業施設を中心に請け負う。直近の売上は610億円で、1年で2倍以上に増えた。社員も国内の810人に対し、海外は513人と6割まで来ている。
三つ目の不動産賃貸は小さいが、利益率が高い。売上は14億円、営業利益は7億円。東京都内などに賃貸中の建物と土地を持ち、帳簿価額は両方で約125億円だ。このほか再生可能エネルギー(太陽光・風力)と保険代理業を営むが、売上は2億円に満たない。
中期経営計画「中計86」は、国内建設の収益性改善と海外の拡大を掲げる。海外の売上比率を、将来は5割まで引き上げたい考えだ。2025年度からの3年間で、企業買収に35億円、再生可能エネルギーに10億円を投じる計画もある。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「財務は堅いが、堀は浅い」会社だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、国内ではほとんど見えない。
強みは三つある。一つ目は実質無借金の財務だ。純現金は10年間ずっと150億円を超え、直近は308億円ある。二つ目は、東南アジアに40年以上の拠点を持つことだ。シンガポールは1975年、タイは1988年に子会社を作った。日系の発注者と長い付き合いがあり、現地の工事をまとめて頼める窓口になっている。三つ目は、不動産賃貸が毎年6〜7億円の安定した利益を出すことだ。
弱みも三つある。一つ目は、価格を決める力がないことだ。国内の民間工事は相見積りで競うため、材料高をどこまで転嫁できるかは交渉次第になる。二つ目は規模の小ささで、売上が1,400億円に満たない会社は、大型案件の1件で業績が振れる。2022年3月期には営業赤字に落ちた。三つ目は、経営が資本を上手に使っている証拠が乏しいことだ。純現金は10年で倍近くに積み上がったが、配当性向は3割前後で、自社株買いの実績もない。
今期の利益が3割落ちるという会社予想は、足元の好調が一時的だと自ら認めたものだ。筆者はそれを正直な開示と受け取る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、量が伸びにくい成熟市場だ。人口が減り、地方の工事は細る。それでも今は「作れば売れる」局面にある。2024年4月から残業の上限規制が始まり、技能者が足りなくなった。発注者は工事を選んで頼むようになり、値上げは通りやすい。上場ゼネコン50社の2025年度の受注高は16兆円を超え、集計開始以来の最高だった。
ナカノフドー建設は、この中で小さな存在だ。国内の競合は、戸田建設、東急建設、淺沼組、大本組など、同じ中堅の会社が並ぶ。スーパーゼネコンが大型の再開発を押さえる分、中堅は工場や物流施設、ホテルのような中規模の民間工事を奪い合う。官公庁向けは1割と少なく、国土強靱化の予算の恩恵は薄い。
東南アジアは別の市場だ。日系の製造業が工場を建て、物流施設を増やす需要が中心になる。人口は増えるが、現地のゼネコンや、中国・韓国の会社も競合になる。日系の発注者という顧客の縁は強みだが、案件は数が少なく大きいので、1件の採算で年の利益が決まる。
10年後の筆者の見立ては、国内がほぼ横ばい、海外が緩やかに伸びる姿だ。人手不足の中で選別受注を続けられれば、利益率は今の水準を保てる。工事の量は実質で増えないが、物価の分だけ金額は増える。再編は進みやすく、同規模の地場ゼネコンの事業承継型の買収が、規模を積む手段になる。
資本政策と M&A
資本政策は、現金を抱え込む型だ。純現金は10年で170億円から308億円まで積み上がった。同じ期間に自己資本は170億円から498億円と3倍近くに増えた。稼いだ利益の多くが社内に残っている。
還元の方針は、純資産に対する配当率(DOE)で1.5%を下限とし、配当性向30%を目安とする。直近の期の配当は利益の3割で、前の期より大きく増やした。ただ、自社株買いの実績は見当たらない。
筆頭株主は、創業者が設立した財団の大島育英会で、約2割を持つ。保有目的は長期の純投資だ。第2位の関東興業(12.65%)は、その他の関係会社として開示されている。安定株主が厚い分、株主に現金を戻せという外からの圧力は弱い。同時に、第三者に買収される可能性も低いと筆者は考える。
中計86は、3年で50億円の投資を見込む。内訳は企業買収35億円、再生可能エネルギー10億円、人材と情報化5億円だ。買収は海外の事業拡大が狙いで、額は小さい。手元の現金に比べれば、大型の買収で価値を壊す心配は小さい。政策保有株は上場32銘柄で、計41億円と自己資本の1割に満たない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外の拡大が本物なら、この会社の価値は大きく変わる。東南アジアの売上は1年で2倍になり、営業利益は前の期のほぼゼロから24億円に跳ねた。しかも今期は繰越工事の消化で、新しい案件をこなす余力がある。
中計86は、初年度で最終年度の売上と利益の目標を上回った。目標が低すぎたとの見方もできるが、実力が目標より上だったとも言える。海外の売上比率を5割に上げる計画が進めば、成長の源は国内の人口に縛られなくなる。会社は買収に35億円を用意しており、海外で現地の中堅ゼネコンを取り込めば、規模は一段上がる。
資本の面でも、変わる余地がある。純現金は時価総額の7割にあたる。財団が筆頭株主でも、配当性向を5割に上げれば現金は株主に戻る。配当は下限を純資産の1.5%と決めており、前の期は利益の3割に増やした。流れは戻す方向だ。
さらに、国内の人手不足は値上げを通しやすくする。選別受注が定着すれば、国内の利益率は3%台後半へ戻せる。海外が好調を保ち、現金の一部を株主に返せば、10年後の価値は今を大きく上回る。
慎重な見方
今期の利益は山だ。会社自身が、来期の営業利益を3割減の39億円と予想している。山の理由は海外で、東南アジアの売上は前期の2倍を超えた。前期の営業利益は、ほぼゼロだった。海外の採算は案件ごとにぶれる、ということだ。
受注の勢いも落ちている。受注高は前の期比で8%減り、海外の受注は4分の3に減った。海外の繰越工事は164億円も減っている。山を越えれば、売上は元に戻る。
国内の建築も楽ではない。国内の営業利益は15%減り、資材高と人手不足が利益を削った。しかも売上の9割は民間向けで、景気が崩れれば発注は止まる。2022年3月期には営業赤字に落ちた。同規模の会社では、1件の採算の悪化が年の利益を食う。
資本の面でも、期待は持てない。財団が2割、関係会社が1割を持つ構造は、現金を戻す力が弱い。10年間、純現金は増え続けたのに、還元は利益の3割にとどまる。ためた現金が事業に使われない限り、価値は帳簿ほど伸びない。買収に使えば、失敗の恐れもある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断した。海外の好調は事実だが、受注が減り、会社自身が利益の減少を予想している。山の利益を10年の標準に置くのは危うい。そのため、中立の営業利益は直近より1割ほど高い水準にとどめた。
現金の厚みと財務の堅さは、悲観の深さを和らげる。ただ、戻る保証が弱いので、確率は慎重側に寄せた。楽観を6%、悲観を13%にし、やや悲観を27%と厚めにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,405 円826 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 363 円125 億円)。 今の値に割り戻すと 1,390 円478 億円、今との差 +8.3%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,805 円1,651 億円 | 655 円225 億円 | +325.5% | +15.6% | 328 円113 億円 |
| やや楽観 | 16% | 3,759 円1,292 億円 | 486 円167 億円 | +230.9% | +12.7% | 679 円233 億円 |
| 中立 | 38% | 2,823 円970 億円 | 381 円131 億円 | +149.8% | +9.6% | 1,218 円418 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,254 円431 億円 | 276 円95 億円 | +19.3% | +1.8% | 413 円142 億円 |
| 悲観 | 13% | 797 円274 億円 | 204 円70 億円 | −22.0% | −2.5% | 130 円45 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,405 円826 億円 | 363 円125 億円 | +115.7% | +8.0% | 2,768 円951 億円 |
今の株価時価総額 1,283 円441 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 海外が伸び続け、現金の一部が戻る 利益 89 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 4,805 円1,651 億円
海外が柱になる。東南アジアでは日系の工場投資が続き、買収で現地の中堅を取り込む。海外の売上は10年で1.5倍に増え、利益率も4%台後半を保つ。国内は人手不足で選別受注が進み、リニューアルと工場で利益率が4%台半ばまで戻る。不動産賃貸は再生可能エネルギーも加わって伸びる。営業利益は110億円前後になり、過去の山を超える。配当性向は5割に引き上がり、余った現金の一部は買収に使われる。それでも現金は積み上がり、自己資本は860億円台へ増える。財団が筆頭株主でも、資本効率の改善に動く姿だ。ただ、この水準が10年続くには、海外の大型案件を取り続け、人手を確保し続ける必要がある。確率が低いのはそのためだ。
- 国内建設:数量 114(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,138 億円・営業利益 51 億円。114万人日 × 1人日あたり10.0万円、利益率 4.5%
- 東南アジア建設:数量 201(施工量(万人日。現地の技能者を含む延べ作業日数、実質))× 価格 4.69(1人日あたり売上(万円・名目。円換算、材料・外注を含む請負単価))→ 売上 941 億円・営業利益 45 億円。201万人日 × 1人日あたり4.69万円、利益率 4.8%
- 不動産賃貸・その他:数量 1.8(賃貸用地の面積(万㎡。実質))× 価格 14(1㎡あたり年間売上(万円・名目。賃料と保険代理などの手数料))→ 売上 26 億円・営業利益 14 億円。1.78万㎡ × 14.3万円、利益率 55%
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)202 億円。全体の PER 17 倍、時価総額 1,651 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年続けて海外で大型案件を取り続け、国内の値上げも通る必要がある。受注が足元で減っており、確率は低く置いた。
やや楽観 16% 海外の山が高止まりし、国内も採算が保てる 利益 69 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 3,759 円1,292 億円
海外の売上が今の水準近くで高止まりし、国内も物価の値上げが通る。国内の利益率は3%台後半、海外は4%台に乗る。不動産賃貸は小さく伸び、営業利益は80億円ほどになる。配当は利益の3割を超える水準に増えるが、自社株買いは小さい。現金は積み上がり、余った現金のうち戻るのは一部にとどまる。中計86の目標は達成されたと市場に認められ、倍率もやや高く置かれる。ただ、国内の工事量は人口減で増えず、成長は海外頼みだ。景気の波に会社の利益が左右される構造は、変わらない。現金は厚いまま、戻り方は小さく動くだけだ。国内の元請けとしての立場も、10年前とほとんど変わらない。
- 国内建設:数量 105(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.86(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,039 億円・営業利益 37 億円。105万人日 × 9.86万円、利益率 3.6%
- 東南アジア建設:数量 174(施工量(万人日。現地の技能者を含む延べ作業日数、実質))× 価格 4.69(1人日あたり売上(万円・名目。円換算、材料・外注を含む請負単価))→ 売上 818 億円・営業利益 34 億円。174万人日 × 4.69万円、利益率 4.1%
- 不動産賃貸・その他:数量 1.6(賃貸用地の面積(万㎡。実質))× 価格 14(1㎡あたり年間売上(万円・名目。賃料と保険代理などの手数料))→ 売上 23 億円・営業利益 12 億円。1.64万㎡ × 13.9万円、利益率 52%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)240 億円。全体の PER 16.3 倍、時価総額 1,292 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足の追い風と海外拡大が続く姿。中計86の初年度の達成は材料だが、受注減もあり、厚くは置けない。
中立 38% 海外は山から下り、国内は物価並みに伸びる 利益 53 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 2,823 円970 億円
海外は山から下り、平常の水準に戻る。東南アジアの工事量は今の8割ほどに落ち着き、利益率も3%台前半に下がる。国内は量が実質で横ばいからやや減り、物価の分だけ金額が伸びる。人手不足と資材高で利益率は3%に届かない。不動産賃貸は物価並みに伸びる。営業利益は60億円ほどで、今期の山より1割強高い水準だ。配当性向は3割前後で、現金は積み上がり続ける。自己資本は780億円ほどになり、ROEは7%前後にとどまる。大きな成功も失敗もなく、小さな会社が地味に生き残る10年だ。配当は下限の純資産の1.5%を上回り、利益の3割前後が株主に回る。買収は小さな案件にとどまり、現金は積み上がる。
- 国内建設:数量 100(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.78(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 981 億円・営業利益 28 億円。100万人日 × 9.78万円、利益率 2.9%
- 東南アジア建設:数量 140(施工量(万人日。現地の技能者を含む延べ作業日数、実質))× 価格 4.69(1人日あたり売上(万円・名目。円換算、材料・外注を含む請負単価))→ 売上 654 億円・営業利益 22 億円。140万人日 × 4.69万円、利益率 3.3%
- 不動産賃貸・その他:数量 1.5(賃貸用地の面積(万㎡。実質))× 価格 14(1㎡あたり年間売上(万円・名目。賃料と保険代理などの手数料))→ 売上 20 億円・営業利益 10 億円。1.49万㎡ × 13.7万円、利益率 50%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)240 億円。全体の PER 15.05 倍、時価総額 970 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外は山から平常に戻り、国内は横ばいが続く、最も無理のない姿。
やや悲観 27% 海外が細り、国内の採算も薄くなる 利益 34 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,254 円431 億円
海外の大型案件が途切れる。東南アジアの工事量は今の6割に落ち、現地勢との価格競争で利益率は2%台前半まで下がる。国内は地方の民間投資が細り、価格転嫁も止まって利益率は2%を割る。不動産賃貸は小さく、営業利益は35億円ほどにとどまる。会社は配当の下限だけは守るが、増配は止まる。海外で失敗した案件の損失と、買収の資金に現金を使い、余った現金は200億円ほどに減る。ROEは5%前後に落ちる。ただ、財務は堅く、赤字には落ちない。会社の姿は、普通の小さなゼネコンに戻る。強みは財務の軽さだけになり、利益の質は今より落ちる。
- 国内建設:数量 91.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.49(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 864 億円・営業利益 16 億円。91万人日 × 9.49万円、利益率 1.8%
- 東南アジア建設:数量 105(施工量(万人日。現地の技能者を含む延べ作業日数、実質))× 価格 4.55(1人日あたり売上(万円・名目。円換算、材料・外注を含む請負単価))→ 売上 476 億円・営業利益 10 億円。105万人日 × 4.55万円、利益率 2.2%
- 不動産賃貸・その他:数量 1.4(賃貸用地の面積(万㎡。実質))× 価格 13(1㎡あたり年間売上(万円・名目。賃料と保険代理などの手数料))→ 売上 19 億円・営業利益 8 億円。1.41万㎡ × 13.3万円、利益率 45%
倍率:ROE 4.7%(純利益 34 億円 ÷ 自己資本 718 億円)。事業の ROE が資本コスト k 7.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍が上限。海外の失敗と国内の採算悪化で利益の質が落ちた局面を見て、上限の約 7 割 5 分の 9.0 倍に置いた。
確率:小さな会社で価格を決める力が弱く、海外の好調が一時的に終わる展開を、中立に近い厚みで置いた。
悲観 13% 構造的に負け、海外も国内も低採算に落ちる 利益 13 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 797 円274 億円
構造的に負ける。東南アジアで大型工事の失敗が続き、現地勢と中国・韓国の会社に押されて受注が半分近くに減る。海外は赤字が常態になる。国内も民間の設備投資が冷え込み、低採算の入札に頼るしかなくなる。営業利益は10億円ほどで、減損も出る。配当は下限の水準にとどめ、現金は赤字の穴埋めと買収の失敗に使われる。優良なゼネコンとは見られなくなり、価値は稼ぐ力でなく、現金と売れる資産で測られる。財団の保有があるので、買収で救われる展開は期待しにくい。人手不足の中でも、受注を選べる余地はなくなっている。海外の子会社は損失を出し、親会社が資本を入れて支える場面も出る。借金は増えないが、現金が目に見えて減る10年になる。
- 国内建設:数量 82.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 8.76(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 725 億円・営業利益 4 億円。83万人日 × 8.76万円(価格転嫁が止まる)、利益率 0.5%
- 東南アジア建設:数量 78.5(施工量(万人日。現地の技能者を含む延べ作業日数、実質))× 価格 4.20(1人日あたり売上(万円・名目。円換算、材料・外注を含む請負単価))→ 売上 330 億円・営業利益 0 億円。78万人日 × 4.2万円、利益率 0%
- 不動産賃貸・その他:数量 1.3(賃貸用地の面積(万㎡。実質))× 価格 12(1㎡あたり年間売上(万円・名目。賃料と保険代理などの手数料))→ 売上 16 億円・営業利益 6 億円。1.34万㎡ × 12.3万円、利益率 35%
倍率:構造的に優良でなくなり、減損も出た姿。谷の年は純利益 13 億円で稼ぐ力は 150 億円ほどにしかならず、床は売れる資産で測る。純現金の運転資金分を除いた約 215 億円、上場株式の税後約 29 億円、賃貸不動産の簿価の 8 割約 100 億円を足し、海外子会社の純資産の半分約 70 億円を失うとして約 274 億円。今の自己資本 498 億円に対する PBR 0.55 倍(時価総額 274 億円)に置いた。営業利益は 9 億円と小さく、EV ÷ 営業利益は谷の年の数字として参考にならない。
確率:海外の大型工事の失敗と、国内の民間投資の冷え込みが重なる筋書き。過去に赤字の期が2度あり、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内建設
国内でビル・工場・ホテル・倉庫・学校などを、主に民間から請け負って建てる。完成工事の約9割が民間向け。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 103 | 7.30 | 755 | 22 |
| 10 年後 中立 | 100 | 9.78 | 981 | 28 |
取り方:国内建設の売上755億円・営業利益22億円(2026年3月期の決算)。人月の開示は無いので、売上を1人日あたり7.3万円で割り、約103万人日と推定した。単価は戸田建設などの建築より外注比率が高いと見て、低めに置いた。開示値ではなく推定である。
東南アジア建設
シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムの現地法人が、日系企業を中心に工場や商業施設を建てる。
| 数量施工量(万人日。現地の技能者を含む延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。円換算、材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 174 | 3.50 | 610 | 24 |
| 10 年後 中立 | 140 | 4.69 | 654 | 22 |
取り方:東南アジア建設の売上610億円・営業利益24億円(同)。現地は労務費が日本の半分ほどなので、1人日あたり売上を3.5万円とし、約174万人日と推定した。直近は繰越工事を消化した山で、10年の置き方ではこの量を標準にしない。
不動産賃貸・その他
都内などの賃貸ビル・土地の賃料と、再生可能エネルギー、保険代理の手数料。利益率が高い小さな事業。
| 数量賃貸用地の面積(万㎡。実質) | 価格1㎡あたり年間売上(万円・名目。賃料と保険代理などの手数料) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 10 | 15 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 14 | 20 | 10 |
取り方:不動産事業の売上13.7億円と、再生可能エネルギー・保険代理の1.5億円を合わせて15.2億円、営業利益7億円。賃貸用地約14,900㎡(有価証券報告書)を1.487万㎡とし、1㎡あたりの年間売上を10.2万円と置いた。
リスクと懸念
海外の好調が一時的で終わる
東南アジアの売上は1年で2倍になったが、前の期の営業利益はほぼゼロだった。受注高は8%減り、海外の繰越工事も164億円減っている。大型案件の採算が崩れれば、利益の半分近くを生む柱が一気に細る。
人手不足と資材高が国内の利益率を削る
国内の営業利益は直近で15%減った。技能者が足りなければ売上は伸びず、労務費の上昇は利益を直撃する。会社の今期予想は、売上が増えるのに営業利益が3割減る。値上げが通らなければ、さらに削られる。
民間工事に偏り、景気で発注が止まる
国内の完成工事の約9割が民間だ。工場、ホテル、倉庫といった設備投資は景気に敏感で、金利上昇や企業の投資の先送りで一斉に止まりうる。2022年3月期には営業赤字に落ちた。
現金が株主に戻らない
純現金は時価総額の7割まで積み上がった。だが筆頭株主は財団で、配当性向は3割前後、自社株買いの実績もない。現金の一部が事業に使われず眠り、買収に使えば失敗する恐れもある。
現地勢と他国勢との競争
東南アジアでは、日系の大手ゼネコンに加え、現地のゼネコンや中国・韓国の会社が競合になる。日系の発注者という縁は強みだが、案件は数が少なく、失注の影響が大きい。
海外の政治・為替・制度の変化
シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムで事業を営む。進出国の法制度や政治の変化は、会社自身もリスクに挙げている。為替換算調整勘定は直近で15億円増え、円安で純資産が膨らんだ面もある。
今後の分かれ目
- 海外の受注高が反転し、繰越工事が再び増える
- 海外の山が続くとみて、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 配当性向を5割に引き上げる、または自社株買いを始める
- 余った現金の戻り方の評価を上げ、価値を押し上げる。
- 国内建設の営業利益率が2期続けて3.5%を超える
- 選別受注と価格転嫁が定着したとみて、中立の利益率を上げる。
- 来期の営業利益が会社予想の39億円を下回る
- 海外の採算悪化を疑い、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大型の買収(現金の3割超)を発表する
- 現金の価値を落とす可能性を見て、余った現金の評価を下げる。買収先の収益力次第で逆に上げる。
- 財団や関係会社が株式を売る、または第三者が買い増す
- 再編や買収の可能性が高まり、支配構造の変化を価値に織り込む見直しを行う。
見ておくもの
- 海外建設の受注高と繰越工事、営業利益率
- 国内建設の営業利益率と、受注の民間・官公庁の内訳
- 配当性向と自社株買いの有無、純現金の推移
- 中計86の進捗と、買収案件の有無
- 大島育英会・関東興業の保有比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE と資本コスト k 7.75%(基本 7.5% + quality 1.0%)から式で置いた。中立は ROE が7%近くで k に届かず、正当化 PER の上限である 1÷k = 11.8 倍の約8割、9.8 倍にした。今の株価や同業の倍率は見ていない。余った現金は、過去10年の最低の純現金155億円を運転資金とみて、超える分を150億円と分けた。財団が筆頭株主で戻す実績が浅いため、戻り方は0.5に置いた。賃貸不動産と持ち合い株は稼ぎ(賃料・配当)を利益に残すので、価値を余り資産に足していない。悲観の床は過去の PBR でなく、現金と売れる資産の税後から出した。直近の営業利益は海外の山で、会社予想(39億円)を重く見て中立の利益率を置いた。なお、2028年3月期から新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→17 倍・やや楽観 PER 11.8→16.3 倍・中立 PER 11.8→15.05 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスク(海外の大型工事の失敗・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。