結論
美樹工業は兵庫県姫路市に本店を置く地場のゼネコンだ。ごみ処理場や病院などの大型の建物を建て、セキスイハイムの家を売る住宅の事業も持つ。筆者の結論は「やや割安」で、一番の理由は、山の利益を割り引いても稼ぐ力が今の値段を上回ることだ。
2025年12月期は大型の工事が重なり、営業利益は過去最高の26億円になった。会社は今期の利益を3割減と見込む。それでも、ならした純利益は10億円を大きく割り込まない。時価総額は約74億円で、ならした利益の7倍程度にすぎない。
弱みは借金だ。売るための収益マンションを短期の借入で抱え、純有利子負債は約77億円ある。金利が上がれば利払いは増える。ただ借金の中身は売れる在庫で、工場や設備ではない。
創業家とみられる個人が上位の株主に並び、配当は利益の3割以上と決めている。10年で地盤の人口は減るが、ごみ処理場や病院の建て替え、東京への進出が仕事の量を支える。山の年を割り引いたうえで、今の値段にはやや安全域があると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが、値段の割に稼ぐ地元の商売」だ。ごみ処理場や病院のような、地元に必ず要る施設を建てる力がある。こうした需要は景気でなく施設の寿命で決まり、10年で消えることはない。
気になるのは2つだ。1つは2025年の利益が山であること。もう1つは、売るためのマンションを借金で抱える形だ。前者は利益をならせば済む。後者は、在庫が売れる限り問題にならないが、不動産の市況が崩れた時に傷が深くなる。
安全域はある。山の年の利益を3割割り引き、利益率を過去の平均よりやや上に置いても、稼ぐ力は今の値段を上回る。資本に対する稼ぎが資本コストに届かない点は割り引くべきだが、それを入れてもなお安い。筆者は、在庫の売却が予定どおり進み、借金が減っていくかを見続けたい。
その2つが確かめられれば、安全域はさらに厚くなる。
何で稼ぐ会社か
事業は建設と住宅の2本の柱だ。2025年12月期は建設が約226億円、住宅が約133億円の売上だった。利益の8割は建設が稼ぐ。
建設は公共と民間の大型の建物と土木だ。淡路島の広域ごみ処理施設や、西脇・多可のごみ処理場のような環境施設に強い。兵庫県内の大型病院の設備工事や、岡山駅南の再開発のホテルも手がける。受注は2025年12月期に約125億円、繰越は約140億円で、決算のあとに約80億円の大型の工事も取った。
住宅は子会社のセキスイハイム山陽などが担う。積水化学のユニット住宅を売り、リフォームや賃貸アパートも建てる。2024年には神戸のリフォーム会社、ヒョウ工務店を買った。自社で土地を買い、ワンルームマンションを1棟ごと建てて投資家に売る仕事もある。
地盤は姫路を中心とする兵庫県の西部から神戸、岡山だ。2022年ごろには東京支店を開き、首都圏でも工事を取り始めた。蓄電池を売る新しい事業も育てている。賃貸の不動産も約66億円持ち、年4億円強の賃料の利益を生む。
社員は本社と支店で250人強、住宅の子会社で200人ほどだ。
優良さと弱いところ
強みは、地元での大型の仕事を取り切る力と、事業の幅だ。ごみ処理場や病院のような大型の公共施設は、技術者の数と実績がないと入札にも参加できない。姫路の地場ゼネコンとして、この種の仕事を続けて取れる会社は多くない。住宅ではセキスイハイムの看板を使え、地元での集客を自前で作らずに済む。
弱みは値決めの力と財務だ。公共工事は入札で、住宅も大手のハウスメーカーと競う。過去12年の営業利益率は3.6〜7.1%で、中央値は4.5%前後だ。2025年12月期の7.1%は過去最高で、毎年続く水準ではない。
財務は、収益マンションの在庫を短期の借入で抱える形だ。マンションが売れなければ借金だけが残る。これまでは売れてきたが、金利と不動産の市況が同時に悪くなれば、在庫は重荷に変わる。
ROEは中央値で6%前後と、資本コストに届かない年が多い。ただ配当は利益の3割以上と決め、2026年には自己株も買った。資本の使い方は、地場ゼネコンとしては前向きな方だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方の建設市場には、追い風と向かい風が同時に吹いている。追い風は古い公共施設の建て替えだ。高度成長期に建てたごみ処理場や病院、学校が一斉に更新の時期を迎えている。自治体は広域でごみ処理を一つにまとめ、大型の施設を建てる。国も2026年度から5年で約20兆円強を国土強靱化に投じる。
向かい風は人口と人手だ。兵庫県の西部は人口が減り、民間の建物と住宅の需要は細る。新築の戸建住宅は全国で年々減っており、住宅の事業はリフォームと賃貸に軸を移している。2024年の残業の規制のあとは技能者の不足が構造になり、業界全体で仕事を選び、値段を上げる流れが定着しつつある。
競合は兵庫県内の地場ゼネコンと、大手・準大手の神戸・大阪の支店だ。環境施設の大型の工事では、プラントの会社と組んで大手と争う。住宅では、積水ハウスや大和ハウスなどの大手と、地元の工務店の間に立つ。
筆者は、この会社の地盤の仕事の量は10年で実質1割弱減ると見る。ただ環境施設の更新と東京での仕事がそれを埋め、全体の量はほぼ横ばいに近い。値段は物価並みに上がり、利益率は2025年の山から過去の平均よりやや上に戻ると考える。
資本政策と M&A
配当は連結の配当性向30%以上を基本とする。2025年12月期は特別配当を含めて大きく増やし、2026年12月期も前の期に近い水準を予定する。2026年2月には約1.6億円の自己株を買い、総還元の拡充を検討すると述べている。2026年10月には1株を3株に分けた。
借金は収益マンションの在庫と工事の立替のためだ。川口のマンションは2026年1月に売り、大阪の玉造と東京の北区も順に売る予定で、売れれば借金は減る。
上位の株主には個人が並び、創業家の影響が強いとみられる。買収の芽は小さいが、配当を厚くする方向に動いている点は評価できる。2024年のヒョウ工務店の買収のように、地元の小さな会社を買って地盤を広げる道もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段は、山の年の利益の5倍にも満たない。会社が見込む今期の利益で見ても7倍程度だ。地場ゼネコンとしては稼ぐ力が強く、それが値段に入っていない。
仕事の柱は、地元に必ず要る施設だ。淡路島の広域ごみ処理施設は約80億円、決算のあとにも約80億円の大型の工事を取った。ごみ処理場や病院は建て替えの時期を迎え、自治体はまとめて大型の施設を建てる。こうした仕事を取れる地元の会社は限られ、値段も通りやすい。
東京支店も育っている。会社は2028年に東京で50億円の売上を見込む。蓄電池の新しい事業も伸びる。住宅はセキスイハイムの看板で集客でき、リフォームの会社も買った。
還元にも前向きだ。配当は利益の3割以上と決め、2026年には自己株も買った。借金は売れる在庫の裏付けがあり、マンションを売れば減る。山の利益を割り引いても、今の値段には余裕がある。
地元の業者が減るほど、大型の仕事を取れる会社の立場は強くなる。
慎重な見方
2025年は特別な年だ。大型の工事の完成が重なり、営業利益率は過去最高の7.1%になった。過去12年の中央値は4.5%前後で、会社自身も今期の利益を3割減と見ている。山の年の利益で安く見えるのは当たり前だ。
借金も軽くない。収益マンションの在庫を短期の借入で抱え、純有利子負債は約77億円ある。短期の金利が上がれば利払いは膨らみ、マンションの売れ行きが鈍れば在庫と借金だけが残る。地場ゼネコンが不動産の在庫を抱えると、過去の不況では命取りになった。
住宅の先行きも暗い。新築の戸建住宅は全国で減り続け、地盤の兵庫県西部は人口が減る。セキスイハイムの看板は、大手のハウスメーカーとの競争から守ってくれない。公共工事は入札で、値段は発注者が握る。
資本に対する稼ぎは中央値で6%前後と、資本コストに届かない。利益をためても株主の価値は増えにくい。
山の年の値段の安さを、安全域と取り違えてはいけない。在庫は売れて初めて現金になる。
どちらに重みを置いたか
山の年を割り引くべきという指摘はもっともだが、割り引いてもなお今の値段は稼ぐ力を下回るという見方の方が強い。環境施設の更新の需要は施設の寿命で決まり、景気の波で消えにくい。確率は中立を中心に、やや楽観をやや悲観より少し厚くした。借金と在庫の重さは、やや悲観と悲観の筋書きで見る。東京と蓄電池の新しい柱は、まだ楽観の材料にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,393 円174 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,564 円50 億円)。 今の値に割り戻すと 3,706 円119 億円、今との差 +63.1%、 期待の年率 +11.8%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,714 円281 億円 | 2,280 円74 億円 | +383.7% | +17.1% | 1,099 円35 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,303 円235 億円 | 1,775 円57 億円 | +299.4% | +14.9% | 1,997 円64 億円 |
| 中立 | 38% | 6,277 円202 億円 | 1,610 円52 億円 | +247.0% | +13.2% | 2,997 円97 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,547 円82 億円 | 1,213 円39 億円 | +65.4% | +5.2% | 752 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 205 円7 億円 | 912 円29 億円 | −50.9% | −6.9% | 112 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,393 円174 億円 | 1,564 円50 億円 | +206.1% | +11.8% | 6,958 円224 億円 |
今の株価時価総額 2,273 円73 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 環境施設と東京で仕事が増え、利益率が高止まり 利益 21 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 8,714 円281 億円
ごみ処理場や病院の建て替えが兵庫と岡山で続き、この会社は大型の工事を取り続ける。東京支店も中期計画どおり育ち、建設の仕事の量は今より1割増える。人手不足で業者が減り、値段は物価をやや上回って上がる。建設の利益率は8%に乗る。
住宅は新築の減少をリフォームと賃貸で埋め、量を保つ。営業利益は今の1.4倍になる。マンションの在庫は順に売れて借金は減り、利払いの重さも和らぐ。配当は利益の3割を超え、自己株の買い戻しも続く。資本に対する稼ぎは7%台まで上がるが、資本コストにはなお届かない。
地元の業者が減り、大型の環境施設を取れる会社が限られることが、値段を支える。
- 建設:数量 165(完成した工事の件数(件・年、推定))× 価格 2.11(1件あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 348 億円・営業利益 28 億円。件数 1.1 倍・単価 1.40 倍・利益率 8%
- 住宅:数量 400(引き渡しの件数(戸建・リフォーム・1棟売りを戸建の件数に換算、推定))× 価格 0.46(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 184 億円・営業利益 8 億円。件数 横ばい・単価 1.38 倍・利益率 4.5%
倍率:事業のROE約7.5%がk 7.5%を下回り、ためた利益は額面未満の価値なのでPERの上限は1÷k=13.33倍。楽観なので上限の10割。
確率:2025年の過去最高に近い利益率が10年続く筋書き。過去12年で7%台は一度だけなので10%。
やや楽観 22% 中期計画の利益率に届き、それを保つ 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 7,303 円235 億円
環境施設の建て替えと東京の仕事が、地盤の人口減を埋める。建設の仕事の量は今と同じで、値段の転嫁も定着する。建設の利益率は7%台前半を保つ。
住宅はリフォームと賃貸アパートで量を保ち、利益率は4%前後で落ち着く。営業利益は今の山の年をやや上回る。収益マンションは予定どおり売れ、借金は在庫の分だけ動く。配当は利益の3割強で、1株あたりの配当は物価とともに増える。会社は堅く稼ぎ続けるが、資本に対する稼ぎは資本コストの手前にとどまる。
東京支店と蓄電池の事業も少しずつ育ち、地盤の縮みを埋める。会社の姿は今とほぼ同じで、規模だけが物価とともに大きくなる。
- 建設:数量 150(完成した工事の件数(件・年、推定))× 価格 2.06(1件あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 309 億円・営業利益 22 億円。件数 横ばい・単価 1.37 倍・利益率 7.2%
- 住宅:数量 400(引き渡しの件数(戸建・リフォーム・1棟売りを戸建の件数に換算、推定))× 価格 0.45(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 181 億円・営業利益 7 億円。件数 横ばい・単価 1.36 倍・利益率 4%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画の営業利益率5.7%を上回り6%で落ち着く筋書き。受注の繰越が厚く、決算後にも大型の工事を取ったので22%。
中立 38% 山から平地へ。利益率は5%台に戻る 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,277 円202 億円
2025年の大型の完成は一巡し、利益率は過去の平均よりやや上の水準に戻る。地盤の人口減で仕事の量は1割弱減るが、環境施設の更新と東京の仕事が下支えする。値段は物価並みに上がり、建設の利益率は6.5%、住宅は3.5%で落ち着く。
営業利益は山の年とほぼ同じ額だが、物価の分を除けば2割強の減益だ。短期の借入は新しい金利に置き換わり、利払いは年2億円ほど増える。配当は利益の3割強で続き、残りは会社に残る。会社は堅く稼ぎ、自己資本は10年で1.5倍に膨らむ。
借金は在庫の売買に合わせて増減し、大きく膨らむことはない。株主の手取りは配当が中心だ。
- 建設:数量 143(完成した工事の件数(件・年、推定))× 価格 2.02(1件あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 287 億円・営業利益 19 億円。件数 0.95 倍・単価 1.34 倍・利益率 6.5%
- 住宅:数量 380(引き渡しの件数(戸建・リフォーム・1棟売りを戸建の件数に換算、推定))× 価格 0.45(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 170 億円・営業利益 6 億円。件数 0.95 倍・単価 1.34 倍・利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 186 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期予想と過去12年の中央値をならした中心の筋書き。
やや悲観 20% 大型の仕事が途切れ、在庫が重くなる 利益 7 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 2,547 円82 億円
ごみ処理場の大型の工事が一巡し、次の大型の仕事が続かない。地盤の人口減で民間の建物も細り、建設の量は今の8割に落ちる。地元の同業と値段を削り合い、建設の利益率は4.5%に下がる。
住宅は新築の減少が続き、リフォームでも埋めきれない。不動産の市況が鈍り、マンションの1棟売りの値段も下がる。在庫を抱える期間が延び、利払いが利益を削る。営業利益は今の半分になる。配当は利益に連れて減り、自己株の買い戻しも止まる。
地元の同業も仕事を求めて値段を下げ、受注の選別もできなくなる。資本に対する稼ぎは3%前後に沈み、ためた利益の値打ちは小さくなる。
- 建設:数量 120(完成した工事の件数(件・年、推定))× 価格 1.88(1件あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 226 億円・営業利益 10 億円。件数 0.8 倍・単価 1.25 倍・利益率 4.5%
- 住宅:数量 320(引き渡しの件数(戸建・リフォーム・1棟売りを戸建の件数に換算、推定))× 価格 0.42(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 133 億円・営業利益 3 億円。件数 0.8 倍・単価 1.25 倍・利益率 2%
倍率:事業のROE約3%でk 7.5%を大きく下回るのでPERの上限は1÷k=11.1倍。稼ぐ力が細り在庫の借金が重い筋書きなので上限の6割強。PBRが0.2倍を下回るのは、純負債が厚く、現金や売れる資産の床が立たないためだ(在庫の不動産は借金の裏付けに消える)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7 倍・時価総額 47 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:環境施設の大型の工事が一巡し、住宅も細る筋書き。過去12年に利益率3.6%の年があるので20%。
悲観 10% 不動産の市況が崩れ、在庫と借金が残る 利益 1 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 205 円7 億円
不動産の市況が崩れ、収益マンションが売れなくなる。在庫の値下げで損が出て、借金だけが残る。同じ時期に公共の大型の工事も途切れ、建設の量は今の3分の2に落ちる。値段は物価に届かず、建設の利益率は2%に沈む。
住宅も新築の減少で量が細り、ほぼ収支とんとんになる。利益は利払いでほとんど消える。配当は細り、会社は借金を返すために賃貸の不動産を手放す。帳簿の自己資本は残っても、稼ぐ力の弱い資本の値打ちは小さい。
地場ゼネコンが不動産の在庫で傷んだ過去の不況と同じ形だ。会社は倒れないが、株主に残る稼ぎはわずかになる。
- 建設:数量 97.5(完成した工事の件数(件・年、推定))× 価格 1.73(1件あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 169 億円・営業利益 3 億円。件数 0.65 倍・単価 1.15 倍・利益率 2%
- 住宅:数量 260(引き渡しの件数(戸建・リフォーム・1棟売りを戸建の件数に換算、推定))× 価格 0.38(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 1 億円。件数 0.65 倍・単価 1.15 倍・利益率 0.5%
倍率:純利益は1億円程度で、純負債が厚く売れる資産の床は立たない(賃貸不動産の時価約72億円は借金の返済に消える)。倍率はやや悲観より下げて6倍。EV(時価総額+純有利子負債77億円)÷営業利益は約22倍で、借金の重さが値打ちを押し下げる。PBRが極めて低いのは、帳簿の自己資本の多くが売れ残りの在庫と事業の資産で、稼がないためだ。
確率:地場ゼネコンが不動産の在庫で傷む負け筋。2007〜2008年に赤字の期があるので10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設
ごみ処理場・病院・学校などの公共施設と民間の建物、土木、設備の工事。
| 数量完成した工事の件数(件・年、推定) | 価格1件あたりの完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 1.50 | 226 | 20 |
| 10 年後 中立 | 143 | 2.02 | 287 | 19 |
取り方:件数は開示が無いので推定。建設の売上225.72億円を、大型の環境施設から地元の小さな工事までの平均を1件1.5億円前後とみて約150件とした。利益は建設のセグメント利益。
住宅
セキスイハイムの戸建住宅の販売、リフォーム、賃貸アパート、収益マンションの1棟売り。
| 数量引き渡しの件数(戸建・リフォーム・1棟売りを戸建の件数に換算、推定) | 価格1件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 0.33 | 133 | 6 |
| 10 年後 中立 | 380 | 0.45 | 170 | 6 |
取り方:件数は推定。住宅の売上133.3億円を、戸建1棟3千万円前後に換算して約400件とした。リフォームの小口と1棟売りの大口を混ぜた換算。
リスクと懸念
山の利益からの戻り
2025年12月期の営業利益率7.1%は過去最高で、会社は今期の利益を3割減と見込む。過去の中央値の4.5%前後に戻れば、利益は山の年の6割強になる。
収益マンションの在庫と借金
売るためのマンションを短期の借入で抱え、純有利子負債は約77億円ある。不動産の市況が崩れれば、値下げの損と借金が残る。
金利の上昇
短期の借入が中心で、金利の上昇がすぐに利払いに響く。借り換えが新しい金利に置き換われば、利払いは年2億円ほど増える。
大型の工事の途切れ
淡路島や西脇・多可のごみ処理場のような大型の工事が利益を押し上げている。更新の一巡で次の大型の仕事が続かなければ、売上は大きく減る。
新築の戸建住宅の減少
全国で新築の戸建住宅は減り続け、地盤の兵庫県西部は人口も減る。セキスイハイムの販売は大手との競争にさらされる。
創業家の影響
上位の株主に個人が並び、創業家の意向が資本の使い方を左右するとみられる。還元の方針が後退すれば、ためた利益の値打ちは下がる。
今後の分かれ目
- 受注が2年続けて300億円を超え、営業利益率が6%を保ったら
- やや楽観の筋書きに近づく。環境施設の更新の波が長く続くと見る。
- 玉造と北区のマンションが予定どおり売れて借金が減ったら
- 在庫の重さが和らぎ、悲観側の確率を下げる。
- マンションの売却が遅れ、在庫の評価損が出たら
- 不動産の市況の悪化と見て、やや悲観に重みを移す。
- 総還元性向の数値目標を示したら
- ためた利益が株主に戻る確かさが増し、価値を上に見直す。
- 東京支店の売上が計画の50億円に届いたら
- 地盤の縮みを埋める柱が育ったと見て、仕事の量の見通しを上げる。
見ておくもの
- 受注工事高と繰越工事高
- 建設と住宅のセグメント利益率
- 販売用不動産と有利子負債の残高
- 配当性向と自己株買い
- 東京支店と蓄電池の売上
倍率と資本コストの決め方
建設は件数(推定)×1件の単価、住宅は引き渡しの件数(推定)×1件の単価で積んだ。2025年は山の年なので、中立は建設の利益率を6.5%(過去12年の山7.1%以下)に戻した。純利益は過去の中央値0.62倍から、短期借入の金利上昇の分(税後約1.3億円)を引いた。ROEはどの筋書きもk 7.5%を下回るので、PERは1÷kの11.1倍を上限に利益の質で置いた。2026年2月の自己株買い1.6億円は株数に入っているので自己資本の起点から外した。今の株価・PER・PBRは見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.1→13.33 倍・やや楽観 PER 10→13.33 倍・中立 PER 8.9→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 7.50%。