結論
三東工業社は、滋賀県甲賀市に本店を置く地方ゼネコンだ。売上の半分が土木、半分が建築で、2026年6月期の売上は104億円、営業利益は4.5億円だった。筆者の結論は、今の時価総額はほぼ妥当で、割安とは言えない、というものだ。
直近の数字は良い。建築の売上が5割近く伸び、土木の利益も増えた。配当総額は0.6億円から0.8億円に増えた。ただ、会社が出した来期の経常利益は前期より12%減る見込みで、配当総額も0.5億円へ減らす。2026年6月期は、山に近い年だった。
見かけの割安さは本物だ。時価総額は26億円、自己資本は38億円で、純現金は24億円ある。ただ、建設会社の現金は、前受けの工事代金や取引先への未払いと表裏の関係にある。全部が株主のものではない。
建設は景気と公共工事の波で利益が大きく動く。過去には、5期で赤字を出した。営業利益率が4%を超えたのは、ここ12年でも数期しかない。
筆者は、現金の半分ほどを余りと見て、本業の利益には低めの倍率をつけた。確かな堀はなく、利益の波を乗り切る財務の堅さが、この会社の価値の中心である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「財務は堅いが、事業の稼ぎが小さく、波が大きい」会社だ。10年後の姿は、今とほぼ同じで、強くなる理由は乏しい。
オーナー利益、つまり株主のものになる利益は、直近で3億円ほどだ。設備投資は軽く、稼ぎの多くが現金になる。ただ、建設会社の現金は、受注の前受けや未払いと表裏の関係にあり、全部を自由に使えるとは限らない。
純現金24億円は、時価総額の9割に当たる。筆者はこのうち半分ほどを余りと見て、戻り方を0.75とした。事業の稼ぎには、資本コストに届かないROEにふさわしい低い倍率をつけた。
経営は借金をせず、危ない買収もしていない。配当を増やす姿勢はあるが、利益の2〜3割と控えめだ。小さな会社が現金を貯めこむ構図は、少数株主に不利に働きやすい。
安全域は、純現金と土木の安定した仕事にある。悲観の場合でも、今の時価総額を大きくは割り込みにくい。ただ、確かな堀がなく、利益の波が大きいので、払う値段に余裕があるとまでは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。土木が売上の約51%、建築が約49%を占め、環境開発はごくわずかだ。2026年6月期の売上は、土木が53億円、建築が51億円、環境開発が0.4億円。1954年設立で、本店は滋賀県甲賀市信楽町にあり、東証スタンダードに上場している。
土木は、道路・河川・造成などの工事で、利益の大半を稼ぐ。2026年6月期の営業利益は3.4億円で、利益率は6.5%と、建築より高い。官公庁の発注が中心とみられ、国土強靱化や老朽インフラの更新が、長期の仕事量を支える。
建築は、民間の建物の工事だ。2026年6月期は売上が47%増え、営業利益は0.9億円と3倍になった。ただ利益率は1.8%と薄く、前期は1%にも届かなかった。大型案件が一つ入るだけで売上が大きく動く。
環境開発は、売上も利益も小さい。2016年には滋賀県の古澤建設の株式80%を取得して子会社にした。会社の規模に対して、買収の実績は小さい。
利益は、受注した工事の粗利と、人件費・外注費の差で決まる。資材高と人手不足が続くなか、価格に転嫁できたかどうかが利益率を左右する。2026年6月期の営業利益率は4.3%と、過去12年で最も良い水準に近い。
優良さと弱いところ
優良さは、地方ゼネコンとして普通だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、地元での実績と官公庁との関係が中心になる。入札と競争の場では、値段を自分で決められる範囲は限られる。
営業利益率は、2015年以降の12年間で1%から4.9%の間を動いた。2023年6月期の4.9%が山で、直近の4.3%はそれに近い。中立でこれ以上を置く理由は見当たらない。
財務は堅い。自己資本比率は61%で、純現金が24億円ある。営業利益が支払利息の45倍に相当し、借金はほぼ気にならない。赤字は2007年6月期から2014年6月期にかけて5期あったが、その後は黒字を保っている。
弱みは、規模の小ささだ。売上100億円の会社では、大型案件の失注や工事の遅れが、一年の利益を大きく動かす。ROEの10年の中央値は5%で、資本コストを下回り続けてきた。財務の堅さは、利益を生む力とは別である。
経営は慎重だ。配当総額は、2021年6月期の0.4億円から2026年6月期の0.8億円まで増やしてきた。ただ、来期は0.5億円に下げる予想で、利益の山と谷を意識した水準にとどめている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設業は、政策に支えられた需要がある。2025年に閣議決定された国土強靱化の中期計画は、2026年度から5年で事業規模が約20兆円強とされる。老朽化した橋・上下水道・道路の更新は、地方の土木の仕事を長期で支える。
一方で、人手の不足が最大の制約だ。2024年4月の残業規制の適用以降、技能労働者の高齢化と不足が構造になった。業界は、仕事を選んで受注し、値段を上げる方向に動いている。上場ゼネコンの多くで、完成工事の粗利率が改善した。
資材は、鋼材・生コンなどが物価を上回って上がる局面が続いた。価格を転嫁できる会社は利益率が上がり、転嫁できない会社は削られる。発注者との力関係が、そのまま利益率の差になる。
競合は、同じ滋賀県・近畿の中小ゼネコンと、全国の準大手が地方に出てくる形だ。公共工事は入札で、民間の建築は相見積もりになる。同業の地方ゼネコンでは、兵庫の会社や京都北部の会社が似た位置にある。
再編の面では、人手と後継者の不足から、地方ゼネコンの合併・買収が増える。時価総額が26億円と小さい会社は、買われる側にも、小さな会社を買う側にもなりうる。筆者は10年の数量を、土木で0.94倍、建築で0.96倍と置く。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実で控えめだ。配当は年1回の期末のみで、2026年6月期は総額0.8億円に増やしたが、2027年6月期は0.5億円の予想だ。利益の2〜3割にとどまる。
自己株は、2020年2月にToSTNeT-3で買い付けた実績がある。ただ、近年の買い戻しは確認できていない。純現金は約24億円で、時価総額に近い。借入はほぼなく、資本の使い道は、配当と少額の出資にとどまる。
買収は、2016年の古澤建設(80%、取得額0.5億円)があるくらいで、大きな買収は見当たらない。事業に要らない現金を分けて足す額は11億円とし、戻り方は0.75とした。
大株主の構成と、政策保有株の有無は確かめられなかった。この点は、戻り方を1.0にしない理由の一つだ。株主優待は確認できなかったので、数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額26億円に対し、純現金は24億円ある。事業を零と見ても、残りの値段は2億円で、売上100億円の会社として安すぎる。直近の営業利益4.5億円は、土木の安定と建築の回復が重なった結果で、受注環境は良い。
国土強靱化の中期計画は、2026年度から5年で約20兆円強とされ、老朽インフラの更新が長く続く。土木は公共の発注が中心で、地方の仕事量は構造的に増える。人手不足で業界が受注を絞る中、実績のある会社には値上げの余地もある。
配当総額は2021年6月期の0.4億円から0.8億円まで増えた。純資産に対する時価総額は0.7倍で、会社が資本の効率を意識すれば、還元の強化は十分に期待できる。小さな会社なので、買い手が現れる可能性もある。さらに、来期の減益予想は会社が保守的に出す癖があるのかもしれず、2026年6月期の経常利益が予想を下回ったことだけで悲観するのは早い。官公庁の工事は、発注の計画が公表されるため、仕事量の見通しは比較的立てやすい。
慎重な見方
2026年6月期は山に近い年だった。経常利益は会社予想の4.9億円を下回り、来期は12%の減益を見込む。配当総額も0.8億円から0.5億円へ下げる予想で、会社自身が、この利益水準が続くと見ていない。
建築は売上が47%増えたが、利益率は1.8%で、大型案件が抜ければ利益も消える。土木は入札で値段を決められず、人件費と資材高を吸収しきれなければ、利益率は落ちる。過去12年で営業利益率が4%を超えたのは、数期しかない。
純現金は大きいが、建設会社の現金は、前受けの工事代金や取引先への未払いと表裏の関係にある。全部が余りではない。ROEの中央値は5%で、資本コストに届かない稼ぎに、高い倍率はつけられない。さらに、公共工事は予算の執行の遅れや、入札での価格競争の激化で、件数も利益率も簡単に動く。小さな会社は、その影響を一年で受ける。人手不足で受注を絞らざるをえなければ、売上の伸びも止まる。配当を増やしても、来期は減らす予想にとどめた経営の慎重さは、利益の先行きに自信がないことの表れとも読める。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが少し強い。強気の見方の言う、純現金と土木の安定は確かだが、2026年6月期の利益は山に近く、現金の全額も価値に足せない。確率は、中立とやや悲観に厚めに置き、悲観は純現金から拘束分を引いた床まで下げた。現金の戻り方は、配当の控えめな姿勢を踏まえて0.75とした。会社が還元を強めれば、この見方は変わる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 9,368 円59 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,436 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 5,317 円33 億円、今との差 +29.7%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,673 円92 億円 | 2,233 円14 億円 | +312.3% | +15.2% | 1,352 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,845 円81 億円 | 1,914 円12 億円 | +260.0% | +13.7% | 2,952 円19 億円 |
| 中立 | 38% | 11,048 円69 億円 | 1,595 円10 億円 | +208.4% | +11.9% | 4,804 円30 億円 |
| やや悲観 | 22% | 5,297 円33 億円 | 957 円6 億円 | +52.5% | +4.3% | 1,376 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,186 円14 億円 | 479 円3 億円 | −35.0% | −4.2% | 320 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,368 円59 億円 | 1,436 円9 億円 | +163.5% | +10.2% | 10,804 円68 億円 |
今の株価時価総額 4,100 円26 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 国土強靱化の波に乗り、土木も建築も伸びる 利益 5 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 14,673 円92 億円
国土強靱化の中期計画の予算が確実に執行され、土木の件数は今の水準を保ち、価格は物価を少し上回って上がる。建築は大型案件を取り続け、件数が1割以上増える。人手不足で業界が受注を絞る中、実績のある会社として値上げが通り、土木の利益率は7%近くに上がる。営業利益は7億円台、純利益は5億円になる。配当は利益の3割を保ち、10年で14億円を戻す。件数を増やさなくても、価格の上昇が利益を押し上げる。筆者は、この筋書きは会社が自力で届く範囲の上限と見ている。大型案件の取り方が最大の分かれ目になる。環境開発は小さいままだが、土木と建築の両輪が回る分、会社全体の稼ぎは厚くなる。
- 土木:数量 53.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 1.39(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 74 億円・営業利益 5 億円。53 件 × 1 件 1.39 億円(今の 1.40 倍)、利益率 6.8%
- 建築:数量 28.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 2.84(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 80 億円・営業利益 3 億円。28 件 × 1 件 2.84 億円(今の 1.40 倍)、利益率 3.2%
- 環境開発:数量 1.0(事業の数(1 件))× 価格 0.58(1 事業あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 事業 × 1 事業 0.58 億円(今の 1.38 倍)、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 15.07 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の予算と値上げの定着が10年続き、建築の大型案件も取れる道。営業利益率は過去の山に並ぶ水準なので、起こる確率は低いと見る。
やや楽観 20% 土木は堅調、建築は薄利のまま回復する 利益 5 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 12,845 円81 億円
土木は、老朽インフラの更新に支えられ、件数がほぼ横ばいを保つ。建築は、民間の建築需要が持ちこたえ、利益率2.9%で安定する。値上げは物価並みから、わずかに上回る水準で定着する。営業利益は6〜7億円で、利益率は直近より高い4.7%になる。配当は利益の3割程度で、10年で12億円を戻す。人手不足は、受注を絞る会社に有利に働く。この筋書きでは、数量より採算を優先する経営が実を結ぶ。土木の安定が、この筋書きの土台だ。建築は利益率が薄く、案件の選び方で上にも下にも動く。派手な成長はなく、仕事量と利益率の両方が緩やかに安定する姿だ。
- 土木:数量 51.5(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 1.36(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 70 億円・営業利益 4 億円。51.5 件 × 1 件 1.362 億円(今の 1.37 倍)、利益率 6.3%
- 建築:数量 26.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 2.78(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。26 件 × 1 件 2.78 億円(今の 1.37 倍)、利益率 2.9%
- 環境開発:数量 1.0(事業の数(1 件))× 価格 0.57(1 事業あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 事業 × 1 事業 0.57 億円(今の 1.36 倍)、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.58 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の土木の好調と建築の回復が続く形。人手不足による値上げが定着する前提が必要で、確率は中程度。
中立 38% 2026年6月期の山から、緩やかに落ち着く 利益 4 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 11,048 円69 億円
土木は、件数が6%減るが、価格が物価並みの1.34倍に上がり、利益率は5.8%に落ち着く。建築は、件数が4%減り、利益率は2.6%に戻る。環境開発は小さいままだ。営業利益は5.7億円、純利益は3.9億円で、利益率は4.3%と、過去12年の山に近い水準にとどまる。配当は利益の3割弱で、10年で10億円を戻す。土木の仕事量は公共予算が支えるが、建築は薄利のまま、案件ごとに利益が動く。筆者が最も起こりやすいと見る姿は、地味な落ち着きだ。財務の堅さは残るが、利益は物価の分だけ増える程度にとどまる。環境開発は小さいまま、会社全体の姿は今から大きくは変わらない。
- 土木:数量 50.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 1.33(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 67 億円・営業利益 4 億円。50 件 × 1 件 1.332 億円(今の 1.34 倍)、利益率 5.8%
- 建築:数量 24.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 2.72(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 65 億円・営業利益 2 億円。24 件 × 1 件 2.72 億円(今の 1.34 倍)、利益率 2.6%
- 環境開発:数量 1.0(事業の数(1 件))× 価格 0.56(1 事業あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 事業 × 1 事業 0.56 億円(今の 1.33 倍)、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.93 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の山に近い利益水準から、会社予想の12%減益に沿って落ち着く形。10年では、物価並みの値上げと、数量の緩やかな減少を置く。
やや悲観 22% 人手不足で採算が悪化し、件数も減る 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 5,297 円33 億円
技能労働者の不足が続き、外注費と人件費が価格の上昇を上回る。土木は件数が1割以上減り、価格は物価に届かず1.30倍にとどまる。建築は、民間の発注が絞られ、利益率が1.5%に落ちる。営業利益は3.6億円、利益率は3.1%まで下がる。配当は縮み、10年で6億円の還元にとどまる。建築は、利益の出ない案件を避けると売上が縮み、取れば採算が悪い、という板挟みになる。それでも赤字には落ちず、純現金が緩衝材になる。ただし、配当を保つには、利益より現金に頼る年が出てくる。工事の採算を守るために件数を絞り、会社の規模は少しずつ縮む。
- 土木:数量 46.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 1.29(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 59 億円・営業利益 3 億円。46 件 × 1 件 1.292 億円(今の 1.30 倍)、利益率 4.5%
- 建築:数量 21.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 2.64(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。21 件 × 1 件 2.64 億円(今の 1.30 倍)、利益率 1.5%
- 環境開発:数量 1.0(事業の数(1 件))× 価格 0.52(1 事業あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 事業 × 1 事業 0.52 億円(今の 1.24 倍)、利益率 20.0%
倍率:ROE 4.1%(事業の純利益÷自己資本)。k 8% を大きく下回るので、PER は 1/k の約 6 割強の 7 倍に置く。
確率:人件費と資材高を価格に転嫁しきれず、件数も減る形。2007年から2014年にかけて5期の赤字があった地方ゼネコンの過去に近い。
悲観 12% 公共工事の縮小と赤字案件で、本業が消える 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,186 円14 億円
公共工事の予算が地方で絞られ、土木の件数が3割近く減る。価格も物価の半分程度しか上がらず、利益率は1.5%に落ちる。建築は赤字案件を抱え、利益率は赤字になる。営業利益はほぼゼロになる。床は、純現金から未成工事受入金や未払いで拘束される分を引いた額に置く。財務制限条項のような縛りは無いが、赤字が続けば配当は止まる。筆者はこの筋書きを、確率は低いが無視できないと見る。会社の規模が小さいほど、一つの大型の赤字案件が一年の利益を吹き飛ばす。環境開発も小さいまま、会社全体の稼ぎは純現金の利息にほぼ頼る形になる。
- 土木:数量 38.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 1.19(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。38 件 × 1 件 1.19 億円(今の 1.20 倍)、利益率 1.5%
- 建築:数量 15.0(年間の完成工事件数(件、推定))× 価格 2.44(1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円。15 件 × 1 件 2.44 億円(今の 1.20 倍)、利益率 -1.0%
- 環境開発:数量 1.0(事業の数(1 件))× 価格 0.50(1 事業あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 事業 × 1 事業 0.5 億円(今の 1.19 倍)、利益率 15.0%
倍率:稼ぐ力が消えるので、今の自己資本(38 億円)に PBR 0.36 を掛けた床(約 14 億円)で置く。
確率:公共工事の絞り込みと建築の赤字案件が重なり、本業の稼ぎがほぼ消える構造的な負けの形。確率は低いが、起これば値打ちは純現金に近づく。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木
道路・河川・造成などの土木工事。官公庁の発注が中心とみられ、利益の大半を稼ぐ。
| 数量年間の完成工事件数(件、推定) | 価格1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 53.0 | 0.99 | 53 | 3 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 1.33 | 67 | 4 |
取り方:件数の開示は無い。完成工事高52.7億円を1件あたり約1億円(地方の公共土木の中小案件)として約53件と置いた推定。利益はセグメント利益3.43億円。
建築
民間の建物の建築工事。大型案件の有無で売上と利益が大きく動く。
| 数量年間の完成工事件数(件、推定) | 価格1 件あたりの完成工事高(億円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25.0 | 2.03 | 51 | 1 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 2.72 | 65 | 2 |
取り方:件数の開示は無い。完成工事高50.7億円を1件あたり約2億円として約25件と置いた推定。利益はセグメント利益0.90億円。
環境開発
環境関連の小さな事業。売上は全体の0.4%。
| 数量事業の数(1 件) | 価格1 事業あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.0 | 0.42 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.56 | 1 | 0 |
取り方:売上0.42億円・セグメント利益0.13億円(前期は0.53億円・0.26億円)。小さいので1事業として置いた。
リスクと懸念
2026年6月期が利益の山
経常利益は前期比35%増だったが会社予想の4.9億円には届かず、来期は12%減の予想。配当総額も0.8億円から0.5億円へ下げる。直近の利益水準は、続かない可能性が高い。
建築の薄い利益率と案件の偏り
建築は売上が47%増えても利益率は1.8%。大型案件の一つで売上が動き、失注や赤字案件で利益が消える。件数が少ないぶん、案件の偏りが一年の利益を左右する。
人手不足と資材高の転嫁
技能労働者の不足で、外注費と人件費は名目で年3〜5%上がる。価格に転嫁できなければ、土木の利益率6%台は守れない。公共は入札、民間は相見積もりで、値段は発注者が決めやすい。
公共工事の予算の波
土木の収益は、国土強靱化などの公共予算に支えられる。予算の執行が遅れる、あるいは地方への配分が絞られれば、件数が減る。
現金の拘束と戻り方
純現金24億円には、未成工事受入金や工事未払金に近い拘束分が含まれると見られる。内訳は確かめられていない。戻り方を0.75に抑えたのはこのためで、配当性向も2〜3割と低い。
今後の分かれ目
- 2027年6月期の経常利益が4億円を超えたら
- 会社予想より好調で、建築の回復が定着した合図。やや楽観の確率を上げてよい。
- 配当性向が4割以上に引き上げられたら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づけてよい。
- 建築で赤字案件が出たら
- 利益率が1%を割る年が続く合図。やや悲観の確率を上げる。
- 大型の受注(20億円超)が複数入ったら
- 売上と利益の押し上げ要因だが、完成時期の偏りに注意。一年の山として扱う。
- 買い手によるTOBが出たら
- 筋書きの外。買付価格と、純現金のうち株主のものになる額を見比べる。
見ておくもの
- 土木・建築の受注高と受注残、粗利率
- 経常利益の会社予想の修正と、配当方針の開示
- 国土強靱化予算の地方への配分と、技能労働者の確保
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト 8% に届かないことから 1/k(約 11.1 倍)を上限とし、同じ領域の会社と同じ上限の 6〜9.5 割に置いた。今の株価・過去の PBR・同業の倍率は倍率の根拠に使っていない。余った現金は 11 億円を分け、戻り方 0.75 で足した。リース債務は目立たず、新リース会計基準で数字の形が変わる点は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→15.07 倍・やや楽観 PER 10→14.58 倍・中立 PER 8.9→13.93 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。