結論
ベステラは、製鉄所・発電所・石油化学のプラントを壊す解体の専業会社だ。巨大な設備を安全に倒す独自の工法を持ち、特許は20件を超える。ただし、今の値段は事業の質をほぼ織り込んでおり、筆者は適正圏と見る。
追い風は強い。高炉から電炉への転換、石炭火力の縮小、石化コンビナートの再編で、壊す設備は当分尽きない。会社は市場を年7,000億〜1兆円と見る。受注残は88億円と年商の8割ほどあり、粗利率も上向いた。
重いのは2026年4月の事故だ。川崎の製鉄所の解体現場で作業員が亡くなり、原因は捜査中である。解体は信用で受注が決まる仕事で、結果が出るまで不確実さは消えない。
もう一つは財務の見かけだ。運転資金のために約60億円を借り、現預金は76億円に膨らんだが、純現金は15億円ほどにすぎない。自己資本比率は65%から38%に下がった。
筆者がいちばん見ているのは、監督を増やしながら安全と利益率を両立できるかだ。中計は5年で売上を3倍にするが、前の中計は利益が計画の半分以下で終わった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この事業の経済性は悪くない。壊す設備は今後も出続け、専門性のある会社に仕事が回る。重い設備は要らず、利益のほとんどを株主に回せる。
だが、今の利益は山の側に見える。大型の元請工事が重なり、上半期の営業利益率は約10%だ。過去を見れば、数年で3%台に戻った時期もある。筆者は、この水準が続くとは置かない。
事故は、数字に出ない傷を残す。もし原因が管理の不備にあれば、受注の停止や賠償で、この会社の信用の貯金は大きく減る。逆に、再発防止が実を結べば、安全を売りに伸びる道もある。
運転資金の借入で自己資本比率が下がった点も、安全域を削る。純現金は薄く、工事が止まれば借入返済の重みが増す。
結局、払ってよい値段は、今の時価総額と近い。割安と言える材料も、割高と切る材料も、はっきりしない。待つ価値のある事業だが、急いで持つ理由はない。
何で稼ぐ会社か
事業は、プラント設備の解体工事だ。製鉄所の高炉や煙突、発電所のボイラ、石油化学の貯槽、風力発電の塔までを壊す。顧客は製鉄・電力・石化が、それぞれ売上のおよそ3分の1だ。
稼ぎ方は元請と一次請に分かれる。元請は発注者から直接受け、粗利の目標は3割だ。一次請は大手エンジニアリングや製鉄会社の子会社の下で働き、目標は2割になる。大型案件は元請に寄ってきた。
自社の作業員は少ない。工事監督が施工計画を立て、協力会社の職人を動かす。重機も外から調達するため、設備は小さい。代わりに、売上が増えるほど工事監督の数が足りなくなる。
工事は1年を超えることが多い。顧客からの入金は、協力会社への支払いより約4か月遅れる。この立て替えが運転資金を食うため、2026年は約60億円を借りた。
2026年1月期の売上は111億円、営業利益は7億円だ。かつて手がけた人材サービスや3D計測の子会社は手放し、解体に絞り込んだ。
営業所は東京の本社のほか、関西や中部にも広げる計画だ。大阪の事務所を2026年9月に開き、四日市などコンビナートの近くにも置く。
優良さと弱いところ
強みは、プラントを壊す専門性だ。巨大な貯槽や煙突を安全に倒す工法に特許を持ち、高炉を丸ごと一社で解体できる専業は少ない。一般の解体業者や大手ゼネコンには手が出にくい分野である。
この専門性は堀として中くらいと見る。許可業者は全国で約7万社に増えたが、多くは建物や家屋の解体だ。ただ、製鉄会社や電力会社が相手なら、技術より安全の実績が受注を決める。
利益率は安定しない。過去の営業利益率は12.6%の山から、赤字の年まで振れた。今期の上半期は約10%まで戻ったが、これは大型工事の進み具合と、赤字を避ける選択受注によるものだ。
弱点は三つある。第一は人の数で、工事監督を増やさないと売上が伸びない。第二は安全で、事故が一度起きると信用が傷む。第三は顧客の偏りで、製鉄・電力・石化が同時に動く。
経営は累進配当を掲げ、買収にも慎重だ。ただ、非上場株の投資で約5億円の評価損を出した。本業の外の資金の使い方は、改善の余地がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プラント解体の需要は、設備の老朽化と産業の再編で増える。高度成長期の設備は築50年を超え、石炭火力や高炉は国の脱炭素の方針で減らされる。千葉や水島のコンビナートでは、エチレン設備の集約が進む。
電力では風力発電の解体が加わる。国内に約2,700基あり、買取期間の20年を過ぎた設備から順に出てくる。PCBを処理する施設の解体も本格化している。
ただし、需要の波は大きい。解体は工事の時期が顧客の再編計画で決まり、年によって受注がばらつく。製鉄も石化も、国内の生産縮小は事業者にとって痛みを伴う判断で、先送りもある。
競合は三つの層に分かれる。大手ゼネコンやエンジニアリング会社は元請として大型案件を握り、ベステラは彼らの下で一次請に入ることも多い。一般解体の業者はプラントに参入しつつある。
人手の不足は業界共通だ。労務費と資材費は物価を上回って上がり、値上げが通らなければ利益が削られる。2024年問題の影響で、残業の上限規制も重い。
一方で、一般の解体業者が増えた分、専門の知識と安全の管理を持つ会社の希少さは増している。顧客が価格だけで決める案件は、中小の業者に流れる。
資本政策と M&A
資本政策は累進配当で、配当性向40%を目安に、純資産配当率3.5%以上を下限とする。配当は前期並みの水準を保つ予想で、自己株買いは目立たない。株主優待も続けており、費用は年0.8億円ほどで小さい。
買収は慎重だ。2023年にオダコーポレーションを子会社にし、人材サービスと3D計測の子会社は手放した。創業家の資産管理会社は2025年に吸収合併した。
中計は2031年1月期に売上300億円、営業利益33億円、自己資本利益率20%以上を掲げる。5年累計で営業キャッシュフロー75億円を見込み、借入の活用と拠点の拡大、株主還元に回す。
運転資金の借入は約60億円で、変動金利だ。現金が同額近くあり、純現金は15億円ほどにとどまる。金利が上がる局面では、この借入が利益をじわじわ削る。
投資有価証券は残り7億円ほどに減った。政策保有株は売却を進めている。TOBや非公開化の公表はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
壊す設備は、ここから10年で急に増える。石炭火力は減らされ、高炉は電炉に替わり、コンビナートは集約される。風力の寿命も来る。この仕事を安全に、一社でやり切れる専業はほとんどいない。
受注残は88億円で、年商の8割に当たる。上半期の粗利率は21.8%に上がり、選択受注で赤字の案件を避けている。元請の粗利は3割を目指せる。中計の売上300億円は大きいが、監督の採用は90人超まで進んだ。
運転資金の借入は、大型案件を取るための準備にすぎない。立て替えを当座貸越から長期借入に替え、手数料も減った。事故への対応で社外取締役が主導する委員会を置いた点も、信用の回復につながる。 解体に使う機械の事故件数も、安全管理の強化で下げられるはずだ。
10年後に監督が倍になり、営業利益率が10%を保てば、利益は今の3倍近くになる。今の値段は、その入り口にすぎない。 強気の見方では、事故の影響は短期で終わり、専門性への需要が上回る。
上半期の営業利益は前年の2.5倍になっており、足もとの力は計画を超えている。
慎重な見方
過去の実績が、強気の計画を裏切っている。前の中計は、営業利益が計画の半分以下で終わった。利益率の10%は、数年に一度の山にすぎない。赤字の年も、3%台の年もあった。
事故は、解体という仕事の本質を突く。死者が出た現場の原因は捜査中で、過失が認められれば受注に響く。製鉄所の発注者が、指名を外す可能性もある。賠償や再発防止の費用は、まだ業績予想に入っていない。
財務の見かけも変わった。借入が約60億円増え、自己資本比率は38%に下がった。現預金が厚く見えても、立て替えのお金だ。変動金利の借入は、金利の上昇で利益を食う。
さらに、人が足りない。計画の監督数は毎年未達で、採用が遅れれば売上は伸びない。上半期の特別損失も、非上場株への投資判断を疑わせる。 さらに、期末の受注残が減り始めれば、先の売上の見通しも一気に曇る。
現預金は借入で積んだ分が大きく、強い財務と呼べる水準ではない。利益率が平均に戻れば、今の値段で見える割安さは消える。
どちらに重みを置いたか
事業の追い風は強いが、事故と人手と運転資金の三つの不確実さが、そのまま楽観を抑える。確率は中立に厚く置いた。
強気が指す市場の追い風と受注残の厚みは本物だが、慎重が突く事故の未解決と借入の増加も、事実として重い。
悲観は、事故の影響が長引き、信用を失う筋書きとして1割強に置いた。楽観とやや楽観の合計は、4割弱とした。
事故の結果が出るまでは、どちらにも大きく寄せない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 2,088 円185 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 534 円47 億円)。 今の値に割り戻すと 1,279 円113 億円、今との差 +6.8%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,899 円435 億円 | 958 円85 億円 | +389.3% | +17.2% | 586 円52 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,169 円281 億円 | 699 円62 億円 | +223.1% | +12.4% | 851 円75 億円 |
| 中立 | 36% | 2,013 円179 億円 | 537 円48 億円 | +113.0% | +7.9% | 918 円81 億円 |
| やや悲観 | 22% | 655 円58 億円 | 345 円31 億円 | −16.5% | −1.8% | 220 円20 億円 |
| 悲観 | 10% | 317 円28 億円 | 158 円14 億円 | −60.4% | −8.8% | 47 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,088 円185 億円 | 534 円47 億円 | +119.0% | +8.2% | 2,622 円233 億円 |
今の株価時価総額 1,197 円106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 監督が倍増し、中計に近い形で伸びる 利益 28 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 4,899 円435 億円
事故の原因が現場の個別要因に収まり、再発防止が実を結ぶ。製鉄・電力・石化の再編で大型の元請が続き、監督は190人まで増える。
元請の粗利が3割に近づき、1人あたりの売上は今の1.6倍になる。物価の分に、大型化と生産性の改善が加わる。営業利益率は11%で、中計の水準だ。
海外は小さな実績にとどまるが、風力と環境関連で新しい柱ができる。配当は性向45%に高まる。借入は運転資金に限られ、返済は進む。安全の実績が積み上がり、発注者が価格より信頼を優先する姿が定着する。
人材の採用でも、安全を売りにする会社として選ばれやすくなる。
- プラント解体・メンテナンス:数量 190(工事監督(人)。施工計画を立て協力会社を動かす人数が、売上の上限になる)× 価格 1.95(工事監督1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 371 億円・営業利益 41 億円
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.69 倍、時価総額 435 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計は売上300億円だが、前の中計は利益が計画の半分以下で終わり、監督の採用も計画を下回り続けた。事故を乗り越えて計画に近づく姿は、1割にとどめた。
やや楽観 22% 中計に届かないが、利益率は10%近くを保つ 利益 19 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,169 円281 億円
監督は160人まで増え、売上は290億円弱になる。中計の300億円には届かないが、5年遅れで近づく。元請の比率が上がり、粗利率は2割前後で安定する。 脱炭素解体の工法が特許で守られ、環境価値の説明を求める顧客が増える。
営業利益率は9.8%で、過去の山の水準より少し低い。 営業拠点の増設費用はかかるが、売上の増加で吸収できる。労務費と下請け費用の上昇を、価格にほぼ転嫁できる。製鉄の電炉転換や石化の再編が続き、受注残は年商の半分以上を保つ。
配当は性向4割強。運転資金の借入は段階的に返す。事故の影響は一時的な指名停止にとどまり、受注への傷は浅い。
監督の育成が進み、新人の稼ぐ力が上がるのが利益率の下支えになる。
- プラント解体・メンテナンス:数量 160(工事監督(人)。施工計画を立て協力会社を動かす人数が、売上の上限になる)× 価格 1.80(工事監督1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 288 億円・営業利益 28 億円
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.64 倍、時価総額 281 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:追い風は確かで、上半期の粗利率も改善している。ただ人員計画の未達が続いた経緯があり、中計の7割ほどの到達を現実的な上振れとして2割台に置いた。
中立 36% 監督は増えるが、利益率は平均に戻る 利益 13 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 2,013 円179 億円
監督は135人まで増え、売上は230億円ほどになる。壊す設備の数は増えるが、人の採用が足かせとなり、中計の6割に届く程度だ。1人あたりの売上は、物価と大型化で今の1.4倍になる。
営業利益率は8.5%。上半期の約10%は大型工事の山で、年によって5%台に落ちる年も混じる。選択受注で赤字の案件は避けるが、労務費の上昇を全部は転嫁できない。
配当は性向4割を守る。借入は運転資金として残るが、自己資本比率は5割台に戻る。事故をめぐる賠償は、保険と引当金で吸収できる範囲にとどまる。
ゆるやかな成長が続き、安全と利益率のバランスを取る会社として評価される。
- プラント解体・メンテナンス:数量 135(工事監督(人)。施工計画を立て協力会社を動かす人数が、売上の上限になる)× 価格 1.70(工事監督1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 230 億円・営業利益 20 億円
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.43 倍、時価総額 179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は強いが、利益率は過去に3%台まで落ちた。人手の天井と事故の余波を織り込み、数量は緩やかな増加、利益率は過去の中央値に近い水準を置いた。
やや悲観 22% 事故の余波と人手不足で、利益率が6%に下がる 利益 7 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 655 円58 億円
事故の捜査が長引き、製鉄会社などの発注で指名を絞られる時期が続く。受注の質は落ち、粗利率は18%台まで下がる。監督は110人にとどまる。
1人あたりの売上は物価に追いつかず、今の1.3倍だ。営業利益率は6%で、賠償と再発防止の費用も毎年のようにかかる。売上は170億円ほどになる。
配当は性向4割を守るが、利益が減るので額は下がる。運転資金の借入は残り、金利の上昇で利払いが重くなる。自己資本比率は40%台で推移し、財務の余裕は乏しい。
人の採用が進まず、受注を絞る判断が続く。成長の物語は薄れ、堅実だが目立たない専門会社として扱われる。
- プラント解体・メンテナンス:数量 110(工事監督(人)。施工計画を立て協力会社を動かす人数が、売上の上限になる)× 価格 1.55(工事監督1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 171 億円・営業利益 10 億円
倍率:事業のROEは資本コストを下回る。式のPERの上限は1÷kで、構造的に負けが続く筋書きなので、稼ぐ力から約7割の水準に置いた。
確率:事故の原因や処分が、受注に影響する筋書き。人手の不足と価格競争も重なる。前の中計が利益の半分で終わった実績を踏まえ、2割強に置いた。
悲観 10% 重大事故の責任と信用の失墜で、受注が細る 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 317 円28 億円
事故の捜査で会社の責任が重く認定され、製鉄・電力の大手が指名を外す。監督が離れ、80人に減る。大型の元請は取れず、下請けの小さな仕事が中心になる。
売上は110億円前後、営業利益率は3%に落ちる。賠償や再発防止の費用に加え、非上場株などの評価損も出る。配当は性向4割を守る建前だが、額は小さい。
事業の稼ぐ力は細り、価値は純現金と売れる資産が下支えする。運転資金の借入は返済に追われ、工事の入金を待つ余裕がない。それでも倒産には至らず、規模を縮めて残る。
創業来の技術は残るが、市場での存在感は大きく下がる。
- プラント解体・メンテナンス:数量 80.0(工事監督(人)。施工計画を立て協力会社を動かす人数が、売上の上限になる)× 価格 1.40(工事監督1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業のROEは資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)より、純現金と売れる資産の税後を床とみて、今の自己資本に0.52倍を掛けた。
確率:事故の責任が重く問われ、発注者の信用を失う構造的な負け。解体は信用で受注が決まる事業で、一度失うと戻らない。1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プラント解体・メンテナンス
製鉄・電力・石化のプラント設備、煙突、風力塔の解体と、その施工管理。
| 数量工事監督(人)。施工計画を立て協力会社を動かす人数が、売上の上限になる | 価格工事監督1人あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 92.0 | 1.21 | 111 | 7 |
| 10 年後 中立 | 135 | 1.70 | 230 | 20 |
取り方:売上111.4億円と営業利益7.41億円は2026年1月期の決算の値。工事監督92人は中期経営計画資料にある2026年1月期の見込み。1人あたり売上は111.4÷92で出した。新人の比率が高く、2025年1月期の1.42億円より下がっている。人材サービス等の子会社は売却済みで、単一事業として置く。
リスクと懸念
死亡事故の責任と受注への影響
2026年4月に川崎の製鉄所の解体現場で作業員が亡くなる事故があり、原因は捜査中だ。過失が認められれば、指名停止や賠償、顧客の離反が起きうる。業績予想には、この影響は入っていない。
運転資金と借入の増加
入金が協力会社への支払いより約4か月遅れるため、約60億円を借りた。自己資本比率は65%から38%に下がり、変動金利なので金利上昇が利益を削る。工事が止まれば返済が重くなる。
工事監督の不足
売上の上限は、施工を管理する工事監督の数で決まる。中計は5年で205人を掲げるが、採用も育成も時間がかかる。足りなければ受注を断り、教育前に辞めれば品質も落ちる。
利益率の振れ
営業利益率は過去に赤字から12.6%まで振れた。前の中計は利益が計画の半分以下で終わった。労務費と資材費の上昇を転嫁できないと、上半期の約10%は維持できない。
顧客と案件の偏り
製鉄・電力・石化が売上をほぼ3分の1ずつ占め、大型案件の進み方で四半期の数字が大きく動く。顧客の設備再編が先送りされれば、受注も遅れる。
競合の参入
解体の許可業者は約7万社に増え、一般解体の業者がプラントにも入ってきた。ゼネコンやエンジニアリング会社が内製を進めれば、一次請の仕事が減りうる。
今後の分かれ目
- 事故の調査で会社の過失が重く認定され、大手顧客の指名停止が続いたら
- 悲観の筋書きに近づく。受注残の減り方と、賠償・引当の額を見る。
- 工事監督が計画どおり増え、受注残が年商の半分以上を保ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 通期の粗利率が20%を下回って戻らなければ
- 中立の営業利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 運転資金の借入が膨らみ、自己資本比率が3割台前半まで下がったら
- 金利上昇が純利益を削る。返済の見通しと現預金の動きを見る。
- 非上場株など投資有価証券で追加の評価損が出たら
- 資本配分への信頼が下がる。政策保有株の縮減の進み方を点検する。
見ておくもの
- 事故の捜査の進展と、発注者の対応(指名停止の有無)
- 四半期の受注高、受注残、粗利率
- 工事監督の人数と、1人あたり売上
- 借入残高、現預金、自己資本比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストを上回る筋書きは、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)に、残る割合0.5を入れて上限を出し、中立は8割に置いた。今のPERや同業の倍率は使っていない。数量は工事監督の人数、価格は1人あたり売上で、物価の1.34倍は価格にだけ入れた。償却は小さな固定資産のみで物価では増やしていない。リースは事務所の賃借が中心で、新リース会計の影響は小さい。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.12→15.69 倍・やや楽観 PER 12.44→14.64 倍・中立 PER 10.75→13.43 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。