結論
ファーストコーポレーションは、首都圏の分譲マンションを建てる専門ゼネコンだ。用地を自分で仕込んで提案する「造注方式」を持つ。筆者の結論は「ほぼ適正」だ。利益のわりに値段は低いが、借入の重さと市況の波を考えると、割安とまでは言えない。
稼ぐ力は上がった。2026年5月期は営業利益と純利益が過去最高で、営業利益率は6%から8%へ上がった。今期の純利益は21億円の見込みだ。
変わったのは事業の形だ。今期は工事の売上が減り、自分で用地を売る不動産の売上が2倍以上に増える計画になっている。その準備で、仕掛けの不動産在庫は1年で75億円から約170億円へ積み上がった。純有利子負債は7億円の純現金から98億円の純負債へ振れた。
中立の筋書きでは、営業利益は10年後に35億円前後。今期の見込みと同じ水準で、物価の分を引けば実質では縮む。それでも、利益のわりに時価総額が小さいため、価値は今の値段とほぼ釣り合う。
筆者がいちばん気にしているのは、積んだ在庫が計画どおり売れるかだ。売れれば借入は減り、売れ残れば利払いと評価損になる。
同じ首都圏のマンションを手がける準大手との差は、用地まで自分で押さえにいく点にある。当たりの利益も、外れの損も、ふつうのゼネコンより大きい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、マンション施工は「毎年仕事を取り直し、市況が崩れれば真っ先に打撃を受ける」事業だ。堀は浅く、利益を長く守る力は強くない。
株主が受け取れる利益は、純利益の6割ほどだと筆者は見る。工場や店は要らないが、造注方式の用地と共同事業の在庫に、お金が出ていく。稼いだ利益が現金で手元に残りにくい。
経営の資本配分は、攻めの部類に入る。借入を増やして在庫を積み、当たれば大きい。外れた時の損失は、小さな会社には重い。配当を3割に抑えているのも、その備えだろう。
安全域は、価格の面では少しある。今期の利益で見た時価総額は7倍ほどで、利益が半分になっても大きく割り込まない。ただ、足元の利益は過去最高に近く、10年後も同じ強さで稼いでいるかは分からない。悲観の筋書きでは、在庫と借入を整理したあとに現金が少し残るだけだ。造注方式が受注の3割に届き、借入が減り始めた時が、見直しの目安になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。工事を請け負う建設事業が売上の75%、自分で用地を仕入れて売る不動産事業が25%だ。どちらも首都圏の分譲マンションが中心になる。
造注方式が、この会社の特色だ。自社で事業用地を確保し、デベロッパーに建築の企画を持ち込む。ふつうのゼネコンは、発注を待つ立場だ。この会社は、仕事を自分でつくりにいく。
共同事業は、さらに踏み込む。マンションの分譲まで手がけ、一つの案件から用地、施工、販売の三つの収益機会を取る。当たれば利益は大きいが、売れ残れば在庫と借入が残る。
2026年5月期の受注高は201億円で、前の期より24%減った。期末の受注残は284億円と、売上1年分に届かない。今期は受注350億円、うち造注方式70億円を見込む。同じ今期に、工事の完成高は205億円へ下がり、事業用地と分譲マンションの売上が231億円に増える。つまり売上の半分以上が、自分で仕込んだ不動産になる。
従業員は少数精鋭で、現場は協力会社の職人が支える。取引先は中堅のデベロッパーが多い。一つの案件は数十億円の規模で、年に何件取れるかが売上を左右する。大手が手がけない中小規模のマンションに、取りこぼしの需要がある。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「型を持つ小さな専門家」だ。ただし堀、つまり他社がまねできない強みは、深くはない。
強みは三つある。一つ目は、造注方式だ。用地から押さえて提案するため、価格だけの入札になりにくい。二つ目は、利益率の改善だ。営業利益率は2期で5%台から8%へ上がった。三つ目は、2026年7月に中央日本土地建物と資本業務提携を結んだことだ。分譲事業での連携で、用地や販売の入り口が広がる。
弱みも三つある。一つ目は、首都圏のマンションに偏ることだ。着工が細ると受注が先に落ちる。二つ目は、借入が重くなったことだ。自己資本比率は34%台で、純負債は自己資本の0.9倍ある。営業活動のキャッシュは1年で約99億円の流出だった。三つ目は、規模の小ささだ。営業利益率は過去に2%を割る年もあり、大型案件の抜けで利益が大きく振れる。
資本の使い方は、これからの試金石になる。借入で在庫を積む形は、当たれば自己資本の稼ぎを押し上げるが、外れれば損失になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
首都圏の分譲マンションは、量が増えない市場に入った。建築費と用地の値上がりで、販売価格は上がり続けている。着工戸数は2024年が約5万戸、2025年は約4万戸と2割減った。会社は2026年の着工も同水準にとどまり、新築の供給は4年連続で減ると見ている。
一方、建てる側は値上げを通しやすい。2024年4月の残業規制以降、技能者の確保が難しくなり、ゼネコンは仕事を選べるようになった。上場ゼネコン50社の利益率は過去最高の水準にある。
競合は、準大手から中堅までのゼネコンと、デベロッパー系の施工会社だ。同じ分野には大手デベロッパー系の施工会社も多い。造注方式で自ら仕事をつくる会社は少なく、そこが差になる。
10年先は、人口が減る日本で、都心の需要は残り、郊外は縮むと筆者は見る。量は実質で横ばいから緩やかな縮小だ。会社の計画は売上1,000億円まで伸ばすとしているが、筆者は物価の分を含めても半分ほどで置く。再編は進み、小さな専門会社は買い手にも売り手にもなりうる。
追い風は、都心の住宅需要と、建て替えの需要だ。向かい風は、金利の上昇と、建築費が分譲価格に載らなくなる時の買い手の離反になる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向30%前後だ。2026年5月期は増配で、今期も増配を見込む。自社株買いの方針は示されていない。
2026年7月、中央日本土地建物と資本業務提携を結び、自己株式60万株を第三者に割り当てた。調達は5.8億円で、発行済みの4.5%にあたる。分譲事業での連携と、経営基盤の強化が狙いだ。
中計「First VISION 2031」は、2028年5月期までに売上500億円を達成し、その先で売上1,000億円と営業利益率8%以上を目指す。2028年5月期の営業利益の目標は、35億円から41億円へ引き上げた。人材への投資を厚くする方針で、販売費と一般管理費は今期20億円に増える。
成長のための投資は、用地と共同事業の在庫に向かう。このため借入が増え、配当に回る分は利益の3割に抑えられている。買収で価値を壊すタイプではないが、借入で在庫を積む資本の使い方は、市況が崩れると重くなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注の戻りが始まった。今期は受注350億円を見込み、うち造注方式は70億円と3倍になる。2026年5月期は営業利益率が6%から8%へ上がり、営業利益と純利益が過去最高になった。
会社は営業利益の目標を、2028年5月期で35億円から41億円へ引き上げた。2026年7月には中央日本土地建物と提携し、分譲での連携が進む。用地と販売の入り口が広がれば、造注方式は伸ばしやすい。
積み上げた不動産在庫は、今期の売上231億円に変わる計画だ。売れれば、借入は減り、営業キャッシュは戻る。配当は2期続けて増える見込みで、性向は3割を保つ。
足元の純利益は19億円で、時価総額142億円に対してPERは7倍ほどにとどまる。建築費が上がる世界では、用地を持つ会社の方が値上げを通しやすい。10年で見ても、売上は物価の分だけで500億円を超える。利益率が7%を保てば、純利益は今の1.2倍になる。堅い受注残と提携が、その土台だ。
慎重な見方
今の利益は、数年の山だ。営業利益率は過去12年で5%台から10%台まで振れ、今の8%は2番目に高い。2024年5月期には、利益率が5%台まで落ちた。
首都圏のマンション着工は、2025年に2割落ちた。建築費と用地が上がり、分譲価格が頭打ちになれば、需要は先に冷える。受注残は284億円と売上1年分に満たず、足元の受注は前の期を24%下回った。会社の予想する350億円への戻りは、確かめられていない。
借入も重い。有利子負債は1年で約77億円増え、純負債は自己資本の0.9倍になった。営業キャッシュは99億円の流出だ。造注方式と共同事業は、売れ残ると在庫と利払いが残る。金利が上がる世界では、その重さが増す。
規模も小さい。大型案件を一つ失えば、利益が大きく振れる。会社の売上1,000億円という目標は、今の2.7倍だ。物価の分を引けば、数量は倍以上に増やす必要がある。人手不足の中で、それだけの工事をこなす人員をどう確保するのかも見えていない。利益の山を越えたあとの谷は、資材高の転嫁が止まった時に来る。
どちらに重みを置いたか
わずかに強気の見方が勝つ。事業の質では慎重な見方の指摘が正しいが、値段が利益に対して低く、中立ではわずかに今の時価総額を上回る。ただ借入が増えた今は、市況が悪くなった時の打撃が大きい。そこで確率は、中立に4割弱を置き、やや悲観を2割台半ばまで厚くし、悲観も1割に置いた。強気の見方が挙げる増益は近い年の話で、10年後の利益を保証しない。中立の営業利益は今期の見込みと同じ水準に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 2,075 円276 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 548 円73 億円)。 今の値に割り戻すと 1,282 円171 億円、今との差 +17.1%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 4,327 円576 億円 | 977 円130 億円 | +384.4% | +17.1% | 477 円64 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,141 円418 億円 | 714 円95 億円 | +252.1% | +13.4% | 810 円108 億円 |
| 中立 | 36% | 2,343 円312 億円 | 564 円75 億円 | +165.4% | +10.3% | 1,046 円139 億円 |
| やや悲観 | 24% | 665 円88 億円 | 413 円55 億円 | −1.5% | −0.2% | 259 円34 億円 |
| 悲観 | 10% | 233 円31 億円 | 75 円10 億円 | −71.9% | −11.9% | 31 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,075 円276 億円 | 548 円73 億円 | +139.5% | +9.1% | 2,623 円349 億円 |
今の株価時価総額 1,095 円146 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 造注方式が当たり続け、売上が2倍近くになる 利益 40 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 4,327 円576 億円
造注方式の受注が全体の3割に育ち、用地の仕込みから設計・施工・販売まで取る案件が増える。建築の施工量は実質で4割強増え、利益率は9%台を保つ。不動産は共同事業の回転が上がり、平均の在庫残高は320億円へ膨らむ。
会社が掲げる売上1,000億円には届かないが、物価の分を含めて780億円ほどに乗る。営業利益は60億円台、純利益は40億円になる。配当性向は4割へ引き上げ、中央日本土地建物との提携も用地の確保に効く。本社費は人材投資で膨らむが、売上の伸びが吸収する。小さな会社が一つの型を磨き切った姿だ。
- 建設(分譲マンションなどの施工):数量 47.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 525 億円・営業利益 50 億円。47 × 11.18、利益率 9.5%
- 不動産(用地の仕入れ・共同事業):数量 320(販売用・仕掛かり不動産の年間の平均残高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.79(平均残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却の回転))→ 売上 252 億円・営業利益 35 億円。320 × 0.787、利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.39 倍、時価総額 576 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の分譲マンションの需要が持ち直し、用地から提案する造注方式と自己資金の不動産売上が噛み合う筋書き。着工が2025年に2割落ちた市場で連続して当たる必要があり、1割弱に置く。
やや楽観 21% 受注が計画の半ばまで伸び、採算も高めで続く 利益 30 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 3,141 円418 億円
受注は計画より緩やかに伸びる。建築の施工量は実質で2割増え、セグメント利益率は9%近くに落ち着く。造注方式で押さえた用地を共同事業や用地販売で売る案件が積み上がり、平均の在庫残高は260億円になる。
売上は650億円近く、営業利益は47億円ほど。配当性向は3割台を保つが、利益の増え方が大きいので自己資本は着実に積み上がる。ROEは11%台で、資本コストを少し超える。過去最高の利益には届かない年もあるが、今の水準を物価の分だけ底上げした姿になる。会社の計画の半分ほどまでしか進まなくても、過去の平均よりは強い会社として残る。
- 建設(分譲マンションなどの施工):数量 39.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 442 億円・営業利益 39 億円。39.5 × 11.18、利益率 8.8%
- 不動産(用地の仕入れ・共同事業):数量 260(販売用・仕掛かり不動産の年間の平均残高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.79(平均残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却の回転))→ 売上 205 億円・営業利益 28 億円。260 × 0.787、利益率 13.5%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.56 倍、時価総額 407 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の受注350億円と自己資金の不動産売上231億円の見通しが当たり、その後も高めに残る姿。会社の計画の半分ほどしか達成しない前提で、やや厚めに置く。
中立 36% 量はほぼ横ばいで、利益は今期の見込み並みにとどまる 利益 22 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 2,343 円312 億円
建築の施工量は実質でほぼ横ばいで、価格は物価並みに上がる。セグメント利益率は今の11%台から8%へ戻る。いまの水準は、共同事業の収益と転嫁が重なった年の高さだと見るからだ。不動産は平均の在庫が1.5倍になり、用地販売と分譲が毎年の利益を支える。
営業利益は35億円前後、純利益は22億円ほどになる。今期の見込みと同じ水準で、物価の分を引けば実質では縮む。本社費は人材投資で物価以上に増える。配当性向は3割台で、自己資本は250億円台まで積み上がる。ROEは9%弱と資本コストの手前に収まり、商売は堅いが資本の稼ぎは伸びない10年だ。
- 建設(分譲マンションなどの施工):数量 33.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 369 億円・営業利益 30 億円。33 × 11.18、利益率 8.0%
- 不動産(用地の仕入れ・共同事業):数量 220(販売用・仕掛かり不動産の年間の平均残高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.79(平均残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却の回転))→ 売上 173 億円・営業利益 22 億円。220 × 0.787、利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.95 倍、時価総額 285 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏のマンション着工が細る一方、建築費の上昇を価格に転嫁できる姿。今のセグメント利益率は建設で過去より高く、一部は戻ると見るのでいちばん厚く置く。
やや悲観 24% マンション需要が冷え、採算が細る 利益 8 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 665 円88 億円
分譲マンションの着工が細り、建築の施工量は実質で2割減る。転嫁は止まり、人件費だけが残るので、セグメント利益率は6%前後まで落ちる。造注方式で用地を持つ分は、売れ行きが鈍ると在庫として残る。
不動産の平均の在庫は160億円に減り、回転は落ちる。本社費は物価で増えるが、売上が減っても落ちない。営業利益は14億円ほど、純利益は8億円前後。借入の利払いが利益を食い、配当は守っても性向は上がる。自己資本は190億円ほどで、ROEは4%台にとどまる。2024年5月期に利益が9億円まで落ちた時と似た姿だが、借入が重い分だけ打たれ方は強い。
- 建設(分譲マンションなどの施工):数量 26.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 296 億円・営業利益 17 億円。26.5 × 11.18、利益率 5.8%
- 不動産(用地の仕入れ・共同事業):数量 160(販売用・仕掛かり不動産の年間の平均残高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.79(平均残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却の回転))→ 売上 126 億円・営業利益 11 億円。160 × 0.787、利益率 9.0%
倍率:ROE 約 4%。ROE が k 8.5% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.1 倍。需要が冷えて借入を抱える局面で、上限の 7 割 2 分の 8.0 倍に置いた。
確率:建築費の高止まりで分譲価格が上がり、首都圏の着工が2025年のような落ち込みを続ける姿。着工が2割減った年がすでにあるため、中立に近い厚みで置く。
悲観 10% 構造的に負け、在庫と借入に押しつぶされる 利益 −12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 233 円31 億円
建築費の高止まりとマンション価格の上昇で、首都圏の分譲が長く冷える。建築の施工量は実質で半分近くまで落ち、受注の取り合いで利益率は2%台になる。造注方式と共同事業で抱えた用地や在庫は、値下げしないと売れない。
不動産は損失が出て、評価損が自己資本を削る。大手デベロッパーも発注を絞り、受注残は急に細る。本社費を払うと営業利益は赤字になり、配当はほぼ出せない。稼ぐ力は戻らず、残るのは現金と売れる資産だけだ。借入を返したあとに残る分が、会社の価値になる。協力会社の離散も起き、立て直しには長い時間がかかる。
- 建設(分譲マンションなどの施工):数量 18.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 188 億円・営業利益 4 億円。18 × 10.43、利益率 2.0%
- 不動産(用地の仕入れ・共同事業):数量 110(販売用・仕掛かり不動産の年間の平均残高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.70(平均残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却の回転))→ 売上 77 億円・営業利益 −4 億円。110 × 0.704、利益率 -5.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、床は売れる資産で測る。今の自己資本 111 億円に PBR 0.28 倍を掛けた約 31 億円。floor_assets_why の内訳と同じ額。
確率:首都圏のマンション需要が構造的に縮み、仕込んだ用地が売れず、評価損と借入の重さが重なる筋書き。売上が半分近くまで落ちた谷は過去にないが、借入が増えた今は無視できず1割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設(分譲マンションなどの施工)
首都圏の分譲マンションを中心に、設計から施工までを請け負う。売上の約75%。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 32.6 | 8.34 | 272 | 30 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 11 | 369 | 30 |
取り方:建設事業の売上は272億円、セグメント利益は約30億円(決算短信)。全社の営業利益29億円は、セグメント利益の合計41億円から本社費など約12億円を引いた形。施工量は労務費を売上の約30%、日当を約2.5万円と置いて約33万人日と推定した。物価の分は価格に入る。
不動産(用地の仕入れ・共同事業)
造注方式の用地や共同事業のマンションを仕入れて開発し、売る。売上の約25%。
| 数量販売用・仕掛かり不動産の年間の平均残高(億円、今の値段で測った実質) | 価格平均残高1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却の回転) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 150 | 0.59 | 88 | 11 |
| 10 年後 中立 | 220 | 0.79 | 173 | 22 |
取り方:不動産事業の売上は88億円、セグメント利益は約11億円(決算短信)。在庫は期初約110億円から期末約197億円(仕掛販売用不動産約170億円・販売用約27億円)へ積み上がり、年間の平均を約150億円と推定した。今期は在庫が売上231億円に変わる計画だが、10年の筋書きは回転を今のまま、価格を物価並みに置く。
リスクと懸念
首都圏マンションの着工が細り続ける
首都圏の分譲マンション着工は2025年に前年比21%減った。建築費と用地の値上がりで分譲価格が上がり、買い手が付きにくくなれば、受注は先に落ちる。受注残は284億円と売上1年分に届かず、市況の悪化がそのまま売上に響きやすい。
借入で積んだ在庫が売れ残る
仕掛販売用不動産は1年で約75億円から約170億円へ増え、営業キャッシュは99億円の流出だった。純有利子負債は98億円になった。造注方式と共同事業の用地や在庫は、売れなければ利払いと評価損になる。金利が3%台に上がる世界では、借入の重さが利益を削る。
好況の山を越えて採算が戻る
営業利益率は8%と、過去12年で2番目に高い。資材高の転嫁が進んだのは需給が締まった数年で、民間投資が冷えれば戻る。2024年5月期には5%台まで落ちた。小さな会社なので、振れ幅は大手より大きい。
会社の計画が高すぎる
中計は売上1,000億円と営業利益率8%以上を掲げる。今の売上の2.7倍で、物価の分を引いても数量を倍以上に増やす必要がある。人手不足で施工量を増やせず、受注が計画に届かない恐れがある。
人手不足で施工量が頭打ちになる
技能者と現場監督を増やせなければ、受注があっても売上にできない。労務費は物価以上に上がる局面もあり、採算を削る。協力会社への依存も大きい。販売費と一般管理費は今期20億円に増え、人材投資が先に出る。
提携先との関係が思惑どおりにならない
中央日本土地建物には4.5%を割り当てた。分譲での連携が効けば強みだが、提携先の都合で用地や販売の優先順位が決まる恐れもある。連携の中身は開示が限られ、効果の大きさは確かめられていない。
今後の分かれ目
- 受注高が2期続けて計画の350億円に届かなかったら
- 造注方式の戻りが遅いと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 造注方式の受注が全体の3割に届いたら
- 自分で仕事をつくる型が定着したと見て、やや楽観の確率を少し増やす。
- 仕掛販売用不動産が減らず、純有利子負債が自己資本の1.5倍を超えたら
- 在庫と借入の重さが表に出たと見て、悲観の確率を上げる。
- 首都圏の分譲マンション着工が2年続けて前年を下回ったら
- 建築の施工量を実質で1割減らし、中立を緩やかな縮小側へ寄せる。
- 中央日本土地建物との共同案件が複数決まったら
- 提携の効果が数字に出たと見て、不動産の在庫と利益を上へ直す。
- 営業利益率が2期続けて7%を割ったら
- 転嫁の局面が終わったと見て、中立の利益率を下げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残
- 造注方式の受注比率
- 仕掛販売用不動産と純有利子負債の残高
- 首都圏の分譲マンション着工戸数
- 営業利益率
- 中央日本土地建物との共同案件
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 8.5%(基本 7.5% + quality 1.5%)に届かない前提で、正当化 PER の上限(1÷k = 約11.1 倍)の 7〜9 割に置いた。悲観は谷の利益でなく、現金・在庫・売掛金の回収から負債を引いた売れる資産(約31億円)で測り、谷の PBR は使っていない。今の株価や PER を見てから決めたわけではない。純負債のため余った現金は無い。中立の営業利益は今期の会社予想と同じ35億円で、会社の中計(2028年5月期に41億円)より低い。リースは軽く、新リース会計の影響は小さいが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。2026年7月の自己株式の割当(5.8億円)は自己資本の起点に足した。株数は従業員向け信託の71万株を含む数で、1株利益の基準(約1,200万株)より多く、保守的に置いた。セグメント別の施工量・在庫の数字は筆者の推定で、誤差がある。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.39 倍・やや楽観 PER 10.3→13.56 倍・中立 PER 9→12.95 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。個別のリスク(提携の効果・在庫の売れ行き)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。